説明

画像形成システム及び装置

【課題】装置の処理能力を低下させる恐れのあるブロードキャストパケットを使用せずに確度の高い時刻を維持することができる画像形成システム及び装置を提供することを目的とする。
【解決手段】印刷装置は、ステップS51において自身の電源投入時、又はステップS55において情報処理装置から印刷データを受信したときに、ステップS56において画像形成システム内に存在する情報処理装置又は印刷データを送信してきた情報処理装置に対して、NTP又はSNTPを利用して時刻情報を要求する。ステップS57及びステップS59において当該印刷装置は、当該要求に対して情報処理装置が応答してきた時刻設定情報に基づいて自身の時刻情報を設定又は修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻情報を有する情報処理装置からネットワークを通じて前記時刻情報を認識する画像形成システム及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークに接続されたコンピュータ等の電子機器の時刻を合わせるためのプロトコルには主にNTP(Network Time Protocol)又はSNTP(Simple Network Time Protocol)の二種類がある。NTPを利用するシステムは、LAN(Local Area Network)上の時刻情報を提供するNTPサーバの時刻情報を取得して内部時計を合わせ込むNTPクライアントによって構成されている。NTPサーバはさらにその上位の階層のNTPサーバから時刻設定情報を受け取って時刻調整を行う仕組みになっている。この仕組みにおいて最上位のNTPサーバはUTC(協定世界時)になっており、このプロトコルを使用することで精度の良い時刻情報を持つことができる。NTPは複雑な手続が必要なため、手続を簡略化したSNTPが多用されている。最下位の電子機器はこのプロトコルを使用し電子機器の負荷を軽減し、正確な時刻設定を行えるようにしている。
【0003】
このプロトコルを使用して、ネットワークに接続された情報処理装置、印刷装置間において、情報処理装置における印刷用のデバイスドライバ(プログラム)に、NTP又はSNTPのサーバ機能を入れ、印刷装置にNTP又はSNTPクライアント機能を入れることによって時刻情報の交信を行う。
【0004】
前述した情報処理装置及び印刷装置として、例えばコンピュータ及びプリンタがあるが、近年これらの装置を用いて時刻情報を提示させたり印刷させたりする機会が増えてきている。このような装置は、ネットワークで相互に接続されることが多く、互いに通信を行うこれらの装置の時刻がずれていると異なる時刻情報による矛盾が生じてしまうため、前述したNTP又はSNTPを利用してこれらの装置の時刻を合わせる技術が開発されている。前述した技術としては、例えば特許文献1が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−163242号公報
【0006】
具体的には、この特許文献1には、ネットワークに接続される同種の装置に向けて応答を要求するブロードキャストパケットを送出し、応答が返ってきた装置に対してさらに時刻情報を要求して、得られた時刻設定情報を用いて時刻を修正する技術が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ネットワークに接続されている装置はそのパケットを受信した後、そのパケットが自己に対して発信されたものであるか否かを判断した後、そのパケットを処理するか否かを決めなければならないため、ネットワークに接続される装置間で相手先を特定しないブロードキャストパケットを多用すると、接続された装置個々の処理能力を低下させてしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明はこの様な実情に鑑みてなされたものであり、装置の処理能力を低下させる恐れのあるブロードキャストパケットを使用せずに確度の高い時刻を維持することができる画像形成システム及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像形成システムは、時刻情報を管理する時計手段、前記情報処理装置より時刻設定情報を取得する時刻情報取得手段、前記時刻情報取得手段により取得された時刻設定情報に基づいて前記時計手段の時刻情報を設定する設定手段を備えた画像形成装置を有するものであって、前記時刻情報取得手段は、前記複数の情報処理装置のうち、前記画像情報を出力した情報処理装置から時刻設定情報を取得することを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、画像形成装置が有する時刻情報取得手段によって、当該画像形成装置に対して画像情報を出力した情報処理装置から時刻設定情報を取得し、取得した時刻設定情報を設定手段によって時計手段に設定することによって、画像形成装置と、画像情報を出力した情報処理装置の時刻情報を同期させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、電子機器の処理能力を低下させる恐れのあるブロードキャストパケットを使用することなく、正確な時刻を記録媒体を介してユーザーに提示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は第一の実施の形態として示す画像形成システム15の構成図である。第一の実施の形態における画像形成システム15は、パーソナルコンピュータ又はワークステーションからなるNTPサーバとしての情報処理装置13a、パーソナルコンピュータ又はワークステーションからなる複数の情報処理装置13b〜13n、及び画像形成装置である複数の印刷装置11a〜11nがLANによって接続されている。このLANは、有線LAN、無線LAN又は電力線を使用したLAN(PLC:Power Line Communication)等において実現することができる。以下、複数の情報処理装置13a〜13nと、複数の印刷装置11a〜11nについては特に区別しない場合には、それぞれ情報処理装置13、印刷装置11と総称するものとする。
【0014】
図2は第一の実施の形態として示す印刷装置11の構成図である。印刷装置11は、プログラムを制御するCPU(Central Processing Unit)21と、CPU21が実行するプログラムを格納するROM22(Read Only Memory)と、CPU21がプログラムを実行するために必要な読み出し及び/又は書き込みを行うRAM(Random Access Memory)23と、情報処理装置13及び画像形成装置である印刷装置11と通信を行うLANインタフェース(I/F)24と、内部パスを通じてCPU21によって制御されていると供に、日付及び時間を管理する時計手段としての時計IC25によって構成されている。ROM22は初期設定を保持しておく動作中書き換え可能なものとプログラム用に書き換え不可のものを混載する。
【0015】
このような印刷装置11はCPU21が実行するプログラムソフトウェアにより制御されるが、以下、図3を用いてこれらのプログラムソフトウェアの構成について説明する。
【0016】
図3に示すプログラムソフトウェアは、印刷装置11のホストである情報処理装置13用のプログラムソフトウェア31と印刷装置11に内蔵されているプログラムソフトウェア37とに大別されて構成される。
【0017】
印刷装置11のホストである情報処理装置のプログラムソフトウェア31は、情報処理装置13を制御するOS(Operating System)32、NTP又はSNTP機能を有し、画像情報を印刷装置11に出力する際に印刷するための言語・情報に変換するためのプリンタドライバ34、印刷装置11における時計IC25の管理する日時の読み込み又は書き込み処理を行う時計制御ドライバ35、通信制御用のデバイス制御を行う通信制御ドライバ36、及びNTP又はSNTPの情報を、OS32を通じて送信するための通信ポートを設定するNTP又はSNTPユーティリティ33によって構成されている。
【0018】
また、印刷装置11に内蔵されているプログラムソフトウェア37は、NTP又はSNTPの制御を行い、ネットワークを通じて情報処理装置13と交信を行う時刻情報取得手段としての通信制御ソフトウェア38、及び通信制御ソフトウェア38が取得した時刻設定情報に基づいて、時計IC25に対して日付又は時間の読み出し又は書き込みを行う設定手段としての時計制御ソフトウェア39によって構成されている。
【0019】
以下、図4を参照して第一の実施の形態の動作を説明する。この場合において、情報処理装置13の識別情報であるIPアドレスはユーザーにより予め印刷装置11に手動設定されていることとする。このとき、情報処理装置13b〜13nのそれぞれの時刻は、NTPサーバとしての情報処理装置13aにより全て一致しているものとする。
【0020】
印刷装置11は、ステップS51において印刷装置11の電源が投入されると、この電源投入時、及び電源投入後、一定間隔でステップS52において一定間隔で情報処理装置13に対し時刻設定情報を要求する。
【0021】
このとき、情報処理装置13から応答が得られる場合と、例えば情報処理装置13の電源が入っていないことにより前述する応答が得られない場合がある。このことをステップS53において通信制御ソフトウェア38が判断する。
【0022】
以下、情報処理装置13から応答が得られた場合について説明する。
【0023】
通信制御ソフトウェア38がNTP又はSNTPにより情報処理装置13内のプログラムソフトウェア31に対して日付及び時刻設定情報を要求すると、当該要求を通信制御ドライバ36を通じて受信したOS32は、NTP又はSNTPユーティリティ33により設定された通信ポートを通じてプリンタドライバ34に対して時刻設定情報を送信する。当該設定を受信したプリンタドライバ34はNTP又はSNTPによるアクセスであると認識して、OS32を通じて情報処理装置13内の図示しない時計ICから日付及び時刻設定情報を取得する。当該日付及び時刻設定情報は通信制御ドライバ36から通信制御ソフト38を通じて時計制御ソフト39に送信される。時計制御ソフトウェア39はステップS54において当該日付及び時刻設定情報に基づき時計IC25の日付及び時刻を設定する。
【0024】
以下、情報処理装置13から応答が得られなかった場合について説明する。
【0025】
この場合において、情報処理装置14は通信をすることができないと判断し、通常の画像情報待ち受け状態に遷移し、ステップS55において情報処理装置13から画像情報を受信するまで待機する。ステップS56において時計制御ソフトウェア39は情報処理装置13から印刷要求があって画像情報を受信した際に、ステップS56において当該画像情報を出力した情報処理装置13に対し時刻情報を要求する。情報処理装置13から時刻情報に関する応答が無かった場合は、ステップS57において同一の情報処理装置13に対して繰り返し時刻設定情報を要求する。この結果受信した時刻設定情報に基づいて、時計制御ソフトウェア39は、ステップS58において時計IC25の日付及び時刻を設定する。時刻設定情報を取得した後、印刷装置11は、ステップS59において情報処理装置13から受信した画像情報について通常印刷を開始する。この場合において、画像情報と共に日付及び時刻を記録媒体に提示する旨の要求があれば、時計IC25に設定されている日付及び時刻設定情報に基づいて日付及び時刻を印刷し、ユーザーに対し提示することができる。
【0026】
上記の様に、印刷装置11の電源投入時及び電源投入後に情報処理装置13に対して一定間隔で時刻設定情報を要求することで、情報処理装置13が交信可能となったとき印刷装置11の時計IC25と情報処理装置13の図示しない時計ICの日付及び時刻を同期させることができる。また、NTP又はSNTP機能を情報処理装置13と印刷装置11に内蔵することにより、同様の効果を得ることができる。すなわち、情報処理装置13が図示しない外部のNTP又はSNTPサーバからより確度の高い時刻設定情報を取得することによって印刷装置11の時刻の確度を高めることができる。
【0027】
同様に、印刷装置11の電源投入時及び電源投入後に情報処理装置13に対して一定間隔で時刻設定情報を要求し、また情報処理装置13から応答が得られない場合は画像情報が出力されたとき、すなわち情報処理装置13と通信可能となった時点で当該情報処理装置13に時刻設定情報を要求することで、印刷装置11は自身で時間を、バックアップ電池を使用して記憶しておく必要がなくなる。すなわち、印刷装置11の時計IC25専用のバックアップ電池を設置する必要がなくなる。同様に、部品点数の削減によるコストの低下を図ることができる。
【0028】
第二の実施の形態における画像形成システムについて説明する。
【0029】
本発明に係る第二の実施の形態として示す画像形成システムは、先に図1に示した様に、複数の印刷装置11と情報処理装置13とが、第一の実施の形態と同様に有線LAN、無線LAN又は電力線を使用したLAN(PLC:Power Line Communication)等に接続されて構成される。
【0030】
第二の実施の形態は、第一の実施の形態と印刷装置11内における通信制御ソフトウェア38の構成が異なるため、その点について説明する。第一の実施の形態においては印刷装置11にNTP又はSNTPで交信できるドライバがインストールされた情報処理装置13の固有の識別情報であるIPアドレスが、印刷装置11に内蔵されているプログラムソフトウェア37に設定されていることが前提であったが、第一の実施の形態においては、印刷装置11に内蔵されているプログラムソフトウェア37に情報処理装置13のIPアドレスが設定されていない場合に、時刻設定が行えないことになる。これに対して、第二の実施の形態は情報処理装置13のIPアドレスが印刷装置11に内蔵されているプログラムソフトウェア37に設定されていない場合においても時刻設定を行うことができる。
【0031】
印刷装置11は、ステップS61で印刷装置11の電源投入時に情報処理装置13のIPアドレスが設定されていないことから、時計制御ソフトウェア39はNTP又はSNTPにより日付又は時刻設定情報の要求をすることができない。故に、印刷装置11は、ステップS62において情報処理装置13より画像情報を受信するまで待機する。印刷装置11の電源投入後最初の画像情報が出力されたとき、時計制御ソフトウェア39は、情報処理装置13は通信可能であると判断し、ステップS63においてNTP又はSNTPにて時刻設定情報を要求する。このとき何らかの理由で、画像情報を出力した情報処理装置13が当該要求に応答しない場合は、ステップ64において、時計制御ソフトウェア39は、当該要求を繰り返し発信し続ける。これに対して、画像情報を出力した情報処理装置13が応答した場合、当該要求を受信した情報処理装置13用のプログラムソフトウェア31は、ステップS65において第一の実施の形態と同様の手順で日付及び時刻設定情報を送信する。この場合において時計制御ソフトウェア39は、ステップS66において情報処理装置13から出力された画像情報の通信パケットから情報処理装置13のIPアドレスを抽出して、その値を情報処理装置13のIPアドレスとしてROM22領域に保存する。その後、ステップS67において、当該印刷装置11は当該情報処理装置13が出力してきた画像情報に基づいて通常の印刷作業を開始し、ステップS68において通常の処理へ移行する。
【0032】
上記の様に、印刷装置11の電源投入時に情報処理装置13のIPアドレスが印刷装置11に登録されていない場合であっても、印刷装置11の時計IC25は、電源投入後最初に画像情報を受信したときにNTP又はSNTP機能を利用して日付及び時刻の設定を行うことで、印刷装置11内の時計IC25の刻む時刻を情報処理装置13と同期させることができる。
【0033】
同様に、情報処理装置13から出力されてきた画像情報から当該情報処理装置13のIPアドレスと抽出し、プログラムソフトウェア37に登録することで第一の実施の形態に示す処理と同一の処理を繰り返すことが可能になる。
【0034】
同様に、NTP又はSNTP機能を情報処理装置13及び印刷装置11に内蔵することによって、情報処理装置13が交信可能となったとき、印刷装置11の時計IC25と情報処理装置13の図示しない時計ICの日付及び時刻を同期させることができる。すなわち、情報処理装置13が図示しない外部のNTP又はSNTPサーバから、より確度の高い時刻設定情報を取得することによって印刷装置11の時刻の確度を高めることができる。
【0035】
同様に、印刷装置11の電源投入時及び電源投入後に情報処理装置13に対して一定間隔で時刻設定情報を要求し、また情報処理装置13から応答が得られない場合は画像情報が出力されたときに当該情報処理装置13に時刻情報を要求することで、印刷装置11の時計IC25専用のバックアップ電池を設置する必要がなくなる。すなわち、部品点数の削減によるコストの低下を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】画像形成システムの構成図である。
【図2】印刷装置の構成図である。
【図3】印刷装置及び情報処理装置のプログラムの構成図である。
【図4】第一の実施の形態のフローチャートである。
【図5】第二の実施の形態のフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
11 印刷装置
13 情報処理装置
15 画像形成システム
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 LANインタフェース
25 時計IC
31 情報処理装置用プログラムソフトウェア
32 オペレーティング・システム
33 NTP又はSNTPユーティリティ
34 プリンタドライバ
35 時計制御ドライバ
36 通信制御ドライバ
37 印刷装置用プログラムソフトウェア
38 通信制御ソフトウェア
39 時計制御ソフトウェア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して入力された画像情報に基づいて画像を形成する画像形成装置と、前記ネットワークに接続され前記画像情報を出力する複数の情報処理装置とを有する画像形成システムにおいて、
前記画像形成装置は、
時刻情報を管理する時計手段と、
前記情報処理装置より時刻設定情報を取得する時刻情報取得手段と、
前記時刻情報取得手段により取得された時刻設定情報に基づいて前記時計手段の時刻情報を設定する設定手段とを備え、
前記時刻情報取得手段は、前記複数の情報処理装置のうち、前記画像情報を出力した情報処理装置から時刻設定情報を取得することを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記時刻設定情報は、前記情報処理装置を識別するための識別情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
ネットワークに接続された外部装置から入力された画像情報に基づいて画像を形成する画像形成装置において、
時刻情報を管理する時計手段と、
前記ネットワークに接続された外部装置より時刻に関する情報を取得する時刻情報取得手段と、
前記時刻情報取得手段により取得された情報に基づいて前記時計手段の時刻情報を設定する設定手段とを備え、
前記時刻情報取得手段は、前記画像情報を出力した外部装置から時刻に関する情報を取得することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記時刻情報は、前記外部装置を識別するための識別情報を含むことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−88416(P2006−88416A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274492(P2004−274492)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】