説明

画像形成ユニット及び画像形成装置

【課題】感光体ドラムの回転速度を通常よりも高速回転で連続印字しても画像に掠れや白スジが発生しない現像部を備えた画像形成ユニット及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】キャリア47がドクターブレード41と現像ローラ13との圧接部に入り込まないようにしてトナーの追随性を良くするために、ドクターブレード42の先端の曲げの曲率半径Aμmmの45度の位置の接線43cの接点44と現像ローラ13の面との間の距離よりも直径が大きなキャリア47を用いる。計算では、キャリア47の粒径の半径Cを計算すると、ドクターブレード42の曲げの半径Aの0.1714倍である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成ユニット及び画像形成装置に係わり、更に詳しくは感光体ドラムの回転速度を通常よりも高速回転で連続印字しても画像に掠れや白スジが発生しない現像部を備えた画像形成ユニット及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トナーを用いて電子写真方式でトナー像を像担持体上に形成し、このトナー像を用紙に直接または間接に転写し、この転写トナー像を定着装置で用紙に定着して画像を形成する画像形成装置が知られている。
【0003】
このような画像形成装置は、例えば、給紙ユニット、ベルトユニット、トナー供給ユニット、現像装置、定着装置等の複数の内部装置を備えている。中でも現像装置は、ホスト機器から送信された又はスキャナで走査した画像データに忠実なトナー画像を現像することが重要であるとされている。
【0004】
一例として、現像ローラの表面をフィルム研磨装置を用いて加工し、十点平均粗さRzと算術平均粗さRaの値が、Ra/Rz<0.15、且つ、2μm<Rz<11μmになるように構成することによって、トナーの搬送性が良好で且つ画像カブリの発生しない現像装置を備えた画像形成装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
この特許文献1に記載の説明及び図1を見ると、この画像形成装置は、電子写真式のカラー画像記録装置であり、タンデム型の4色の画像形成ユニットを備えた画像形成装置であることがわかる。
【0006】
一般に、このような画像形成装置の印字速度は、例えば感光体ドラムの周面の線速として100mm/秒程度に設定して使用される。これは、この印字速度が比較的良好な画像が得られる印字速度であるからである。
【0007】
ところで、近年、印字処理の高速化の要望が強くなっている。これに応じて回転駆動系の長時間使用可能な許容限界まで回転速度を上げるとすると、感光体ドラムの周面の線速として140mm/秒程度まで上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−85079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記特許文献1の画像形成装置と同等の電子写真式のタンデム型カラー画像記録装置を用い、感光体ドラム周面の線速を140mm/秒程度の高速にして、ベタ印字の試し印字処理を繰り返し行うと、形成画像に掠れが出るという問題が発生する。画像の掠れは現像器の供給ローラに供給されるトナーが不十分なときに発生する現象である。
【0010】
印字速度を上げると供給ローラも高速回転するが、供給ローラが高速回転すると、その遠心力によって非磁性のトナーが供給ローラの円周から軸の輻射方向にはじき飛ばされ、供給ローラに付着することが出来なくなり、上記の画像掠れが発生することが判明した。
【0011】
供給ローラの回転速度を低下させればこの問題は解決するが、現像ローラや感光体ドラムを高速回転させたまま、供給ローラのみ回転速度を落とすと、供給ローラから現像ローラへのトナー供給量が低下して画像形成そのものが不十分なものになる。
【0012】
したがって、高速回転する現像ローラに対して供給ローラの回転速度も一定の比率で高速に維持する必要がある。ここに近年の高速印字の要望に対する画像形成装置側の二律背反的な解決すべき課題が残されていた。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、感光体ドラムの回転速度を通常よりも高速回転で連続印字しても画像に掠れや白スジが発生しない現像部を備えた画像形成ユニット及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置の画像形成ユニットは、静電潜像が形成される感光体ドラムに対向する開口部を有する現像器と、該現像器の上記開口部に一部が配置され残部が上記現像器内に配置され、上記現像器内に収納される磁性キャリアと非磁性一成分トナーからなる現像剤を表面に保持して、上記現像剤の上記非磁性一成分トナーを上記感光体ドラムの静電潜像に付与すべく、回転搬送する現像ローラと、上記現像器内において、上記開口部よりも上記現像ローラの回転搬送方向上流側に配設され、上記現像ローラに圧接し、上記現像剤を上記現像ローラに供給するトナー供給ローラと、上記現像器内において、上記開口部と上記トナー供給ローラとの中間に配置され、上記現像剤を、上記現像ローラの周面上に薄層状に形成すべく規制するドクターブレードと、を少なくとも備え、上記ドクターブレードは、上記現像ローラに圧接する先端部が曲率半径Aの折り曲げ部から成り、上記現像剤の上記磁性キャリアは、直径がA×0.342以上のもののみから成る、ように構成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、感光体ドラムの回転速度を通常よりも高速回転で連続印字しても画像に掠れや白スジが発生しない現像部を備えた画像形成ユニット及び画像形成装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1〜4に係る画像形成ユニットを備えたカラー画像形成装置(プリンタ)の内部構成を説明する断面図である。
【図2】(a)は実施例1〜3に係る画像形成ユニットの現像ローラを中心とする部分を切り出して示す拡大断面図、(b)はその現像ローラとドクターブレードの一部のみを更に拡大して示す図である。
【図3】(a)は実施例2、3に係る画像形成ユニットの球形のキャリアがドクターブレードの先端で詰まらない条件について検討した図、(b)は検討の結果得られた具体例を示す図である。
【図4】(a)は実施例4に係る画像形成ユニットの外観斜視図、(b)は(a)のA−A´断面矢視図、(c)は(a)のトナーカートリッジを取り除いて示す図である。
【図5】(a)は図4(b)に示す画像形成ユニットを矢印Bで示す斜め左下方向から見上げた斜視図、(b),(c)は(a)の破線丸Cで示す部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1に係る画像形成ユニットを備えたカラー画像形成装置(以下、単にプリンタという)の内部構成を説明する断面図である。図1に示すプリンタ1は、電子写真式で二次転写方式のタンデム型のカラー画像形成装置であり、画像形成部2、中間転写ベルトユニット3、給紙部4、及び両面印刷用搬送ユニット5で構成されている。
【0019】
上記画像形成部2は、同図の右から左へ4個の画像形成ユニット6(6M、6C、6Y、6K)を多段式に並設した構成からなる。
【0020】
上記4個の画像形成ユニット6のうち上流側(図の右側)の3個の画像形成ユニット6M、6C及び6Yは、それぞれ減法混色の三原色であるマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の色トナーによるモノカラー画像を形成し、画像形成ユニット6Kは、主として文字や画像の暗黒部分等に用いられるブラック(K)トナーによるモノクロ画像を形成する。
【0021】
上記の各画像形成ユニット6は、トナー容器(トナーカートリッジ)に収納されたトナーの色を除き全て同じ構成である。したがって、以下ブラック(K)用の画像形成ユニット6Kを例にしてその構成を説明する。
【0022】
画像形成ユニット6は、最下部に感光体ドラム7を備えている。この感光体ドラム7は、その周面が例えば有機光導電性材料で構成されている。この感光体ドラム7の周面近傍を取り巻いて、クリーナ8、帯電ローラ9、光書込ヘッド11、及び現像器12の現像ローラ13が配置されている。
【0023】
現像器12は、上部のトナー容器に同図にはM、C、Y、Kで示すようにマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)のいずれかのトナーを収容し、中間部には下部へのトナー補給機構を備えている。
【0024】
また、現像器12の下部には側面開口部に上述した現像ローラ13を備え、内部にトナー撹拌部材、現像ローラ13にトナーを供給するトナー供給ローラ、現像ローラ13上のトナー層を一定の層厚に規制するドクターブレード等を備えている。
【0025】
中間転写ベルトユニット3は、本体装置のほぼ中央で図の前後両側のほぼ端から端まで扁平なループ状になって延在する無端状の転写ベルト14と、この転写ベルト14を掛け渡されて転写ベルト14を図の反時計回り方向に循環移動させる駆動ローラ15と従動ローラ16を備えている。
【0026】
上記の転写ベルト14は、トナー像を直接ベルト面に転写(一次転写)されて、そのトナー像を更に用紙に転写(二次転写)すべく用紙への転写位置まで搬送するので、ここではユニット全体を中間転写ベルトユニットといっている。
【0027】
この中間転写ベルトユニット3は、上記扁平なループ状の転写ベルト14のループ内にベルト位置制御機構17を備えている。ベルト位置制御機構17は、転写ベルト14を介して感光体ドラム7の下部周面に押圧する導電性発泡スポンジから成る一次転写ローラ18を備えている。
【0028】
ベルト位置制御機構17は、マゼンタ(M)、シアン(C)及びイエロー(Y)の3個の画像形成ユニット6M、6C及び6Yに対応する3個の一次転写ローラ18を鉤型の支持軸を中心に同一周期で回転移動させる。
【0029】
そして、ベルト位置制御機構17は、ブラック(K)の画像形成ユニット6Kに対応する1個の一次転写ローラ18を上記3個の一次転写ローラ18の周期と異なる回転移動周期で回転移動させて転写ベルト14を感光体ドラム7から離接させる。
【0030】
すなわち、ベルト位置制御機構17は、中間転写ベルトユニット3の転写ベルト14の位置を、フルカラーモード(4個全部の一次転写ローラ18が転写ベルト14に当接)、モノクロモード(画像形成ユニット6Kに対応する一次転写ローラ18のみが転写ベルト14に当接)、及び全非転写モード(4個全部の一次転写ローラ18が転写ベルト14から離れる)に切換える。
【0031】
上記の中間転写ベルトユニット3には、上面部のベルト移動方向最上流側の画像形成ユニット6Mの更に上流側に、ベルトクリーナユニットが配置され、下面部のほぼ全面に沿い付けるように平らで薄型の廃トナー回収容器19が着脱自在に配置されている。
【0032】
また、この中間転写ベルトユニット3には、ベルト移動方向最下流側の端面に近接して濃度センサ20が配設されている。
【0033】
給紙部4は、上下2段に配置された2個の給紙カセット21を備え、2個の給紙カセット21の給紙口(図の右方)近傍には、それぞれ用紙取出ローラ22、給送ローラ23、捌きローラ24、待機搬送ローラ対25が配置されている。
【0034】
待機搬送ローラ対25の用紙搬送方向(図の鉛直上方向)には、転写ベルト14を介して従動ローラ16に圧接する二次転写ローラ26が配設されて、用紙への二次転写部を形成している。
【0035】
この二次転写部の下流(図では上方)側にはベルト式熱定着装置27が配置されて、ベルト式熱定着装置27の更に下流側には、定着後の用紙をベルト式熱定着装置27から搬出する搬出ローラ対28、及びその搬出される用紙を装置上面に形成されている排紙トレー29に排紙する排紙ローラ対31が配設されている。
【0036】
両面印刷用搬送ユニット5は、上記搬出ローラ対28と排紙ローラ対31との中間部の搬送路から図の右横方向に分岐した開始返送路32a、それから下方に曲がる中間返送路32b、更に上記とは反対の左横方向に曲がって最終的に返送用紙を反転させる終端返送路32c、及びこれらの返送路の途中に配置された4組の返送ローラ対33a、33b、33c、33dを備えている。
【0037】
上記終端返送路32cの出口は、給紙部4の下方の給紙カセット21に対応する待機搬送ローラ対25への搬送路に連絡している。
【0038】
また、本例において中間転写ベルトユニット3の上面部には、クリーニング部35及び取り込みローラ36が配置されている。
【0039】
クリーニング部35は、転写ベルト14の上面に当接して廃トナーを擦り取って除去し、取り込みローラ36はクリーニング部35が除去した廃トナーを引き継いで、図示を省略したベルトクリーナユニットの一時貯留部に溜め込み、その溜め込まれた廃トナーを搬送スクリューにより落下筒内を上部まで搬送し、落下筒を介して廃トナー回収容器19に送り込んでいる。
【0040】
また、上記のクリーニング部35を適度の圧力で転写ベルト14に圧接させるために、中間転写ベルトユニット3側には、下方から転写ベルト14をクリーニング部35に向けて押圧する押圧ローラ37が設けられている。
【0041】
図1に示すように、このプリンタ1は、従来の用紙に直接トナー像を転写する方式ではなく、待機搬送ローラ対25により二次転写部まで鉛直方向に搬送される用紙に中間転写ベルト14を介してトナー像を転写する方式となっている。
【0042】
したがって、用紙の搬送路に発生する用紙ジャム等の不具合を回復するメンテナンス処理時には、図1の右側を開放するのみで対処できるようになっている。
【0043】
そして、用紙ジャム等の不具合はキット類の配設部では発生しないので、図1の左側に集中するキット類などの消耗品の着脱の操作は、長手方向に入れ替え操作するだけの小さなスペースで良いように構成されている。
【0044】
これにより、キット間の寸法は、可及的に縮小されており、装置本体全体の小型化が図られている。また、光書込みヘッド自体も小型化され、感光体ドラムに、より近接している構成となっている。
【0045】
図2(a)は、画像形成ユニット6の現像ローラ13を中心とする部分を切り出して示す拡大断面図であり、同図(b)はその現像ローラ13とドクターブレードの一部のみを更に拡大して示す図である。
【0046】
図2(a)には、静電潜像が形成される感光体ドラム7と、この感光体ドラム7に対向する開口部38を有する現像器12と、この現像器12の開口部38に一部が配置され残部が現像器12内に配置された現像ローラ13を示している。
【0047】
現像ローラ13は、半導電性を有するウレタンゴム性で、表面粗さが約6μm(Rz)であり、表面に現像剤を担持して搬送する能力を持っている。また、感光体ドラム7と現像ローラ13は、一定の喰い込み状態で圧接した状態で配置されている。
【0048】
更に、図2(a)には、現像器12内において、開口部38よりも現像ローラ13の回転搬送方向上流側に配設されたトナー供給ローラ41(以下、単に供給ローラ41という)を示している。供給ローラ41と現像ローラ13も一定の喰い込み状態で圧接した状態で配置されている。
【0049】
更に、図2(a)には、現像器12内に収納される磁性キャリアと非磁性一成分トナーからなる現像剤39を示している。また、現像剤39を攪拌する攪拌部材34を示している。種々の実験の結果では、非磁性トナーに2成分現像方式で使用されている磁性キャリアを混入したものを現像剤39とすることによって、現像ローラ13のトナー搬送能力が高まることが判明した。
【0050】
これは、非磁性トナー(以下、単にトナーという)に磁性キャリア(以下、単にキャリアという)を混入させると、トナーとキャリアが摩擦帯電しキャリアにトナーが付着する。その結果、現像剤39は、トナーとキャリアが一体となった大きな自重を持った状態で供給ローラ41に付着することになる。
【0051】
トナーは単体であったときよりも、現像剤39の状態では供給ローラ41の高速回転による遠心力でも吹き飛ばされにくくなる。その結果、供給ローラ41は、図の矢印方向すなわち反時計回り方向に回転しながら、現像剤39に混入されたトナーを、より多く現像ローラ13に供給することができるようになる。
【0052】
現像ローラ13は、現像剤39を表面に担持して、現像剤39のトナーを感光体ドラム7の静電潜像に付与すべく、現像剤39を図の矢印方向すなわち反時計回り方向に回転搬送する。
【0053】
更に、図2(a)には、現像器12内において、開口部38と供給ローラ41との中間に配置されたドクターブレード42を示している。図2(b)に拡大して示すドクターブレード42は、厚さほぼ100μmの板バネ材(SUS)で構成されている。
【0054】
図2(b)に示すドクターブレード42は、右上の先端42aがドクターブレードの先端で自由端になっている。左端側42bはその先が図2(b)では図示を省略されているが、図2(a)に示したように、延長した先端は現像器12に固定されている。
【0055】
ドクターブレード42は、現像ローラ13に圧接する先端1mmの部分を角度65度で折り曲げられ、その折り曲げ曲率半径をAmmに形成されている。ドクターブレード42は、折り曲げ曲率半径Ammで折り曲げられたR部分が一定の荷重で現像ローラ13の周面に押し当たるように板バネ材のバネ性を利用して設置されている。
【0056】
これにより、ドクターブレード42は、現像剤39を、現像ローラ13の周面上に所定の厚さの薄層状に形成すべく薄層の厚さ規制する。本例では、上述したように、トナーにキャリアを混入させた現像剤39を用いることにより、ベタ画像の高速印刷で、供給ローラ41を高速回転させても、形成画像の掠れが解消する。
【0057】
ところが、このようにトナーにキャリアを混入した現像剤を用いると、印刷が進むにつれ、キャリアがドクターブレード42と現像ローラ13との間に詰まり、トナーの搬送を阻害し、所謂白スジと呼ばれる画像が出現するようになる。
【0058】
白スジの発生を回避するには、ドクターブレード42の先端に入り込まない非常に大きなキャリアを用いればよいことは明白である。しかしながら、大きいキャリアを使用する場合、現像剤39により多くのキャリアを混入しないとトナー供給の追従性を改善することができない。これは大きいキャリアは単位重量当りに保持できるトナーの量が少ないことに起因すると考えられる。
【0059】
そこで、より小さいキャリアで且つドクターブレード42の先端部に詰まらない大きさのキャリアを作り出す実験を行った。先ず、図2(b)に示すドクターブレード42のRの付いた曲げ部と現像ローラ13との圧接部にキャリアが入ったときのキャリアが受ける力について考察する。
【0060】
キャリアはドクターブレード42にあたる位置によって受ける力の方向が変わる。すなわち、キャリアがドクターブレード42に接したときの接線の角度が接線43aのように角度45度以下であれば垂線方向の力が強く働く。他方、キャリアがドクターブレード42に接したときの接線の角度が接線43bのように角度45度以上であれば水平方向に強い力が働く。
【0061】
一方、キャリアは、現像ローラ13の回転によって水平方向の力を受けるが、キャリア自体は現像ローラ13への付着力が弱いため搬送力は小さい。つまり、ドクターブレード42によって水垂直方向の力が加わらなければ、キャリアは、ドクターブレード41と現像ローラ13との圧接部方向へは入り込みにくい。
【0062】
さらに、トナー自身も摩擦電荷によって現像ローラ13に付着し搬送される。このトナーが、詰まりかけたキャリアの下に入り込むようになり、キャリアは垂直方向の力を受け上方に持ち上げられる力を受ける。以上のことから、45度の角度の位置以上でキャリアとドクターブレード42が接するようにすることで、キャリアの詰まりは回避できると考えられる。
【0063】
図3(a)は球形のキャリアがドクターブレード42の先端で詰まらない条件について検討した図を示し、図3(b)は検討結果得られた具体例を示す図である。
【0064】
ここで、図2(b)に示したように、ドクターブレード42の先端1mmの部分を曲げ角度65°で且つ図3(a)に示すように曲げの曲率半径をAμmmとする。そして、45度の曲率半径の位置におけるドクターブレード42の接線43cの接点44と曲率半径Aμmmの曲率中心45から下ろした鉛直線46との間の距離をBμmとする。
【0065】
更に、曲率半径Aμmの45度の位置の接線43cの接点44の位置に入ったキャリア47の半径をCμm、キャリア47の中心から接点44までの鉛直方向の距離をDμmとすると、
【0066】
B×B+B×B=A×A
であり、これから
B=A/√2 ・・・・・(1)
が得られる。また、
D×D+D×D=C×C
であり、これから
D=C/√2 ・・・・・(2)
が得られる。また、
A−B=C+D
であり、上記の式(1)と(2)を代入して
A−A/√2=C+C/√2
(1−1/√2)A=(1+1/√2)C
C=((1−1/√2)/(1+1/√2))A
C=0.1714×A ・・・・(3)
が得られる。
【0067】
これにより、曲率半径の45°の位置でドクターブレード42に接するためのキャリア47の粒径の半径Cを計算すると、ドクターブレード42の曲げの半径Aの0.1714倍であることが解る。
【0068】
したがって、図3(b)に示す曲率半径300μmのドクターブレード42を使用した場合のキャリア47の大きさを計算すると、キャリア47の半径は51μmとなる。粒径(直径)にすると102μmとなる。
【0069】
すなわち、前述したように曲率半径の45°の接線の接点の位置が、粒形物が入り込んで凝集する、入り込まずに攪拌されているかの分岐点になると考えると、凝集物(キャリア)の粒形物の直径の分岐点は102μmということになる。
【0070】
また、特には図示しないが、ドクターブレード42の先端曲げの曲率半径が200μmのものを用いると、キャリア47の直径は68μmになる。
【0071】
この理論に基づいて、実験機として、カラーページプリンタ、SPEEDIAN3600(カシオ計算機株式会社製)を用いることにした。このプリンタの本来の印字速度は108mm/secであるが、実験では、印字速度を150mm/secの高速回転に設定して使用した。
【0072】
現像装置には、先端の曲げ曲率半径300μmのドクターブレード42を装着し、平均粒径7.5μmのトナー200gに、平均粒径120μmのキャリア10gを混合した現像剤39を投入して印字を開始した。
【0073】
印字率を各色1.7%とし、2枚間欠にて印字を繰り返し行った。結果は、高速印字にも関わらず、トナーの追従不良による画像掠れは発生しなかった。しかしトナーが無くなる段階で白スジが見られるようなった。
【実施例2】
【0074】
実施例2として、実施例1で使用したものと同じキャリア47を、150メッシュ(目開き105μm)に通し、メッシュ上に残ったキャリアを用いて実施例1の場合と同様に印字を繰り返した。結果は、トナー無しまで、白スジも画像掠れも無い良好な画像を得ることが出来た。
【0075】
すなわち、平均粒径120μmのうち、直径が105μmを超えるキャリア47のみを使用すると、トナー無しまで、白スジも画像掠れも無い良好な画像を得ることが出来ることが判明した。
【実施例3】
【0076】
次に、実施例3として、 現像装置に、先端の曲げ曲率半径が200μmのドクターブレードを装着し、平均粒径6.0μmのトナー200gに平均粒径90μmのキャリアを混合した現像剤を投入し、印字を実施した。
【0077】
尚、キャリアには、あらかじめ200メッシュ(目開き74μm)を通して、74μm以下のものを除去したものを用いた。結果は、小粒径のキャリアであるにも関わらずトナーの良好な追従性を示し、キャリア詰まりによる白スジの発生もみられなかった。
【0078】
すなわち、平均粒径90μmのうち、直径が74μmを超えるキャリアのみを使用すると、この場合も、トナー無しまで、白スジも画像掠れも無い良好な画像を得ることが出来ることが判明した。
【0079】
このように、非磁性一成分トナーに、ドクターブレードに詰まらない大きさのキャリアを混入させることにより、高速印字でもトナーの追従不良による画像掠れの発生が無く白スジも無い良好な画像が得られる。
【0080】
また、投入するキャリアの直径の大きさを、ドクターブレード先端の曲げの曲率半径の0.342以上という適正な大きさに設定することより、少ない量のキャリアで十分な効果が得られるようになる。
【実施例4】
【0081】
ところで、図1に示すプリンタ1では、作りたてのトナーは物性が安定していないことや、ドクターブレードと現像ローラの表面との馴染み具合、ドクターブレードの裏側付近のトナーの凝集の度合(トナーの動き具合)等、現像部が安定状態にならないとトナーが十分帯電されず、均一な画像が得られない場合がある。
【0082】
そこで、画像形成ユニットの製造工程においては、通常、現像部の状態を安定化させる手段として、現像装置にトナーを充填して、画像形成ユニットを30秒程度、空回転(印字を伴わないベタ画像の現像処理)を実施することが一般的に採用されている。
【0083】
図4(a)は実施例4に係る画像形成ユニットの外観斜視図であり、同図(b)は同図(a)のA−A´断面矢視図、同図(c)は同図(a)のトナーカートリッジを取り除いて示す図である。尚、図4(a),(b),(c)には、図1ないし図3(a),(b)と同一の構成部分には図1ないし図3(a),(b)と同一の番号を付与して示している。
【0084】
図4(a),(b)に示すように、画像形成ユニット6の現像器12は、現像部48と、この現像部48に着脱自在はトナーカートリッジ49から成る。現像部48においては、現像ローラ13、感光体ドラム7、クリーナ8等が一体化されている。
【0085】
上述した空回転の場合は、図4(a),(b),(c)に示すように、現像ローラ13から感光体ドラム7に現像されたトナー像は全てクリーナ8のクリーニングブレード51によってクリーナ8内に掻き落とされて廃トナーとなる。
【0086】
そして、廃トナーは、クリーナ8内に配置されている廃トナー搬送コイル52により廃トナー搬送経路A53の下端部に集積される。廃トナー搬送経路A53は、内蔵の搬送スクリュウ装置により廃トナーを上方に搬送して、廃トナー搬送経路B54に廃トナーを引き渡す。
【0087】
廃トナーの搬送を引き継いだ廃トナー搬送経路B54は、内蔵の搬送スクリュウ装置により廃トナーをユニットの長手方向に沿って水平に搬送し、ユニットの端部から短手方向に直角に曲がる廃トナー搬送経路C55に廃トナーを引き渡す。
【0088】
廃トナーは、廃トナー搬送経路C55から廃トナー排出口56を介して、トナーカートリッジ49の内部に配設されている廃トナー収容部に収容される。
【0089】
このような場合、廃トナーは、廃トナー搬送コイル52から廃トナー排出口56を経て廃トナー収容部に収容されるまでの各経路の引継ぎ部で僅かの量が滞留する。使用する場所に設置済みのプリンタであれば問題無いが、工場からの輸送途上であると振動等で滞留している廃トナーが僅かの間隙から飛散することが考えられる。
【0090】
また、輸送による振動等で搬送経路内で廃トナーが片寄ったり、一部に凝集した状態になることも考えられる。この様な状態から使用すると、廃トナー搬送コイルや搬送スクリュウ装置に過負荷が掛かり性能上望ましくない。
【0091】
また、クリーナ内だけなら工場での試験運転で説明がつくが、新品であるにも関らず、他の搬送経路やトナーカートリッジ49の廃トナー収容部にまで廃トナーが残留しているのは、ユーザが抱くイメージとしても望ましくない。そこで、本例では、クリーナ8から廃トナー搬送経路A53に引き渡す直前にクリーナ8内の廃トナーを清掃して除去するようにする。
【0092】
図5(a)は、図4(b)に示す画像形成ユニット6を矢印Bで示す斜め左下方向から見上げた斜視図であり、図5(b),(c)は、図5(a)の破線丸Cで示す部分の拡大図である。図5(b)に示すように、クリーナ8の廃トナー搬送経路A53に近接する端部には、廃トナー清掃孔57が設けられる。
【0093】
これにより試験空運転時に感光体ドラムから除去されて廃トナー搬送コイル52により廃トナー搬送経路A53に引き渡す位置まで搬送されてきた廃トナーは、廃トナー清掃孔57から掃除機等による吸引で除去される。
【0094】
廃トナー除去後は、図5(c)に示すように、廃トナー清掃孔57を蓋58で覆って画像形成ユニット6を製品として完成させる。尚、蓋58は専用部品であっても良いし、製品銘板等のラベルであっても良い。
【0095】
このように、本例によれば、廃トナーをクリーナから除去する廃トナー清掃孔57を特別に設けたので、梱包・輸送する前に試験空運転で発生する廃トナーを清掃でき、これにより、輸送時の振動で廃トナーが飛散するトラブルが防止されるとともに、新品であることのイメージを損なうことなくユーザに装置を引き渡すことができる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
【0097】
静電潜像が形成される感光体ドラムに対向する開口部を有する現像器と、
該現像器の前記開口部に一部が配置され残部が前記現像器内に配置され、前記現像器内に収納される磁性キャリアと非磁性一成分トナーからなる現像剤を表面に保持して、前記現像剤の前記非磁性一成分トナーを前記感光体ドラムの静電潜像に付与すべく、回転搬送する現像ローラと、
前記現像器内において、前記開口部よりも前記現像ローラの回転搬送方向上流側に配設され、前記現像ローラに圧接し、前記現像剤を前記現像ローラに供給するトナー供給ローラと、
前記現像器内において、前記開口部と前記トナー供給ローラとの中間に配置され、前記現像剤を、前記現像ローラの周面上に薄層状に形成すべく規制するドクターブレードと、
を少なくとも備え、
前記ドクターブレードは、前記現像ローラに圧接する先端部が曲率半径Aの折り曲げ部から成り、
前記現像剤の前記磁性キャリアは、直径がA×0.342以上のもののみから成る、
ことを特徴とする画像形成ユニット。
[付記2]
【0098】
前記ドクターブレードは、厚さ100μmの板バネ材であり、前記現像ローラに圧接する先端1mmの部分を角度65度で折り曲げられ、その折り曲げ曲率半径を0.30mmに形成され、
前記現像剤の前記磁性キャリアは、平均粒径120μmの中の粒径105μmを超えるもののみから成り、前記現像剤の総量を210gとしたときの混合量が10gとなる割合で混合され、
前記現像剤の前記非磁性一成分トナーは、平均粒径7.5μm、前記現像剤の総量を210gとしたときの混合量が200gとなる割合で混合される、
ことを特徴とする付記1記載の画像形成ユニット。
[付記3]
【0099】
前記ドクターブレードは、前記先端1mm部分の折り曲げ曲率半径を0.20mmに形成され、
前記現像剤の前記磁性キャリアは、平均粒径90μmの中の粒径74μmを超えるもののみから成る、
ことを特徴とする付記2記載の画像形成ユニット。
[付記4]
【0100】
付記1ないし3のいずれか1つに記載の画像形成ユニットを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、感光体ドラムの回転速度を通常よりも高速回転で連続印字しても画像に掠れや白スジが発生しない現像部を備えた画像形成ユニット及び画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 プリンタ
2 画像形成部
3 中間転写ベルトユニット
4 給紙部
5 両面印刷用搬送ユニット
6(6M、6C、6Y、6K) 画像形成ユニット
7(7m、7c、7y、7k) 感光体ドラム
8 クリーナ
9 帯電ローラ
11 光書込ヘッド
12 現像器
13 現像ローラ
14 転写ベルト
15 駆動ローラ
16 従動ローラ
17 ベルト位置制御機構
18 一次転写ローラ
19 廃トナー回収容器
20 濃度センサ
20−1 視野(読み取り範囲)
21 給紙カセット
22 用紙取出ローラ
23 給送ローラ
24 捌きローラ
25 待機搬送ローラ対
26 二次転写ローラ
27 ベルト式熱定着装置
28 搬出ローラ対
29 排紙トレー
31 排紙ローラ対
32a 開始返送路
32b 中間返送路
32c 終端返送路
33a、33b、33c、33d 返送ローラ対
34 攪拌部材
35 クリーニング部
36 取り込みローラ
37 押圧ローラ
38 開口部
39 現像剤
41 トナー供給ローラ(供給ローラ)
42 ドクターブレード
42a 先端(自由端)
42b 左端側
43a、43b、43c 接線
44 接点
45 曲率中心
46 鉛直線
47 キャリア
48 現像部
49 トナーカートリッジ
51 クリーニングブレード
52 廃トナー搬送コイル
53 廃トナー搬送経路A
54 廃トナー搬送経路B
55 廃トナー搬送経路C
56 廃トナー排出口
57 廃トナー清掃孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される感光体ドラムに対向する開口部を有する現像器と、
該現像器の前記開口部に一部が配置され残部が前記現像器内に配置され、前記現像器内に収納される磁性キャリアと非磁性一成分トナーからなる現像剤を表面に保持して、前記現像剤の前記非磁性一成分トナーを前記感光体ドラムの静電潜像に付与すべく、回転搬送する現像ローラと、
前記現像器内において、前記開口部よりも前記現像ローラの回転搬送方向上流側に配設され、前記現像ローラに圧接し、前記現像剤を前記現像ローラに供給するトナー供給ローラと、
前記現像器内において、前記開口部と前記トナー供給ローラとの中間に配置され、前記現像剤を、前記現像ローラの周面上に薄層状に形成すべく規制するドクターブレードと、
を少なくとも備え、
前記ドクターブレードは、前記現像ローラに圧接する先端部が曲率半径Aの折り曲げ部から成り、
前記現像剤の前記磁性キャリアは、直径がA×0.342以上のもののみから成る、
ことを特徴とする画像形成ユニット。
【請求項2】
前記ドクターブレードは、厚さ100μmの板バネ材であり、前記現像ローラに圧接する先端1mmの部分を角度65度で折り曲げられ、その折り曲げ曲率半径を0.30mmに形成され、
前記現像剤の前記磁性キャリアは、平均粒径120μmの中の粒径105μmを超えるもののみから成り、前記現像剤の総量を210gとしたときの混合量が10gとなる割合で混合され、
前記現像剤の前記非磁性一成分トナーは、平均粒径7.5μm、前記現像剤の総量を210gとしたときの混合量が200gとなる割合で混合される、
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成ユニット。
【請求項3】
前記ドクターブレードは、前記先端1mm部分の折り曲げ曲率半径を0.20mmに形成され、
前記現像剤の前記磁性キャリアは、平均粒径90μmの中の粒径74μmを超えるもののみから成る、
ことを特徴とする請求項2記載の画像形成ユニット。
【請求項4】
請求請1ないし3のいずれか1項に記載の画像形成ユニットを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−220663(P2012−220663A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85322(P2011−85322)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】