説明

画像形成方法及び画像形成システム

【課題】電子写真方式の画像形成装置を用いて、シリコンゴム成型品の表面に所望のフルカラー画像を印刷できる画像形成方法及び画像形成システムを実現する。
【解決手段】シリコンゴム成型品(42)の表面についてケイ酸化炎処理を行って酸化シリコン層(51)を形成する。続いて、酸化シリコン層上にシランカップリング剤を含むプライマー層(52)を形成する。電子写真方式の画像形成装置に画像情報を入力し、転写シート(31)上にトナー像を形成し、形成されたトナー像を熱転写処理により前記シリコンゴム成型品のプライマー層上に転写する。熱転写工程において、トナー像がシリコンゴム成型品の表面に転写されると共に転写されたトナー像がシリコンゴム成型品の表面に定着される。尚、転写シートを用いず、ケイ酸化炎処理及びプライマー処理されたシリコンゴム成型品の表面にトナー像を直接転写し、その後加熱処理を行ってトナー像を定着することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末を収納するシリコンケースのようなシリコンゴム成型品の表面に所望の画像を形成する画像形成方法及び画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やスマートフォン等の携帯端末は、落とすと床面からの衝撃を受け故障の原因となる。そのため、携帯端末はシリコンゴム製のケース内に収納されて携帯される場合が多い。シリコンゴム製の収納ケース(シリコンケース及びシリコンカバー)は、優れた弾性力を有するので、床面に落としても衝撃が吸収され、故障に至らない利点がある。また、使用されるシリコンケースとして、ケースの表面に種々の模様や絵柄を印刷したシリコンケースを利用する人も多々存在する。この場合、模様や絵柄はスクリーン印刷により印刷されている。
【0003】
一方、ケースの表面に所有者が希望する画像が形成されたシリコンケースを希望する人も多数存在する。シリコンケースに所望の画像を形成する方法として、インクジェットプリンタを用いる方法が既知である(例えば、特許文献1参照)。このインクジェットプリンタを用いて所望の画像を印刷する場合、所望の画像情報をインジェットプリンタに入力し、プリンタヘッドからシリコンケースの表面にシリコン系インクのジェット流を直接噴射し、シリコンケースの表面に画像が形成されている。
【特許文献1】特開2007−326994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコンゴムは、良好な弾性反発力を有するので、携帯端末のカバーケースとして有益な材料である。しかしながら、シリコンは、高い離型性を有するため、模様や画像を印刷するのに高度な技術を必要とする。また、印刷されたインクをシリコンの表面に定着させるためにも高度な技術が必要である。
【0005】
スクリーン印刷によりケース表面に多色の画像や模様を印刷する場合、複数の刷版を必要とし、且つ位置合せを行ないながら複数回印刷する必要があるため、使用者にとって独自の絵柄を形成する場合、印刷コストが高価になる欠点がある。このため、単色刷りの模様を印刷するのが主流となっている。
【0006】
また、インクジェットプリンタを用いてケースの表面に画像を形成する場合、インクジェットプリンタの画像形成速度が遅いため、1つの画像を印刷するのに長時間かかる欠点がある。また、インクジェットプリンタを用いてシリコンケースの表面に画像を形成する場合、価格が高価なシリコン系のインクが用いられるため、1つのシリコン成型品に画像を形成する際のコストが高価になる欠点があった。さらに、インクジェットプリンタにおける液滴のサイズは比較的大きく、しかも、シリコンゴムの表面において拡がり易いため、高解像度の画像を再現するには限界があった。
【0007】
一方、現在広く流通している電子写真式の画像形成装置は、再現されるべき画像情報を入力するだけで、所望のフルカラー画像を安価に形成できる利点がある。しかも、電子写真式の画像形成装置の処理速度は高速であるため、インクジェットプリンタよりも一層高速で所望の画像を再現できる利点もある。さらに、電子写真式の画像形成装置において用いられるトナーの粒子径は、インクジェットプリンタで用いられる液滴のサイズよりもはるかに小さいため、高解像度の画像を再現することが可能である。従って、現在流通しているプリンタ等の電子写真式の画像形成装置を用いてシリコン成型品の表面に所望の画像が印刷できれば、携帯端末のユーザーのニーズに十分に対応することが可能である。しかしながら、上述したように、シリコンゴム材料は高い離型性を有するため、電子写真方式の画像形成装置により作成されたトナー像をシリコンケースの表面に転写することは極めて困難である。しかも、トナーに用いられる樹脂材料はスチレン系樹脂及びポリエステル系樹脂が主流であり、シリコンゴム材料はこれらの樹脂材料に対して高い離型性を有するため、転写されたトナー像をケース表面に剥がれることなく定着させることも困難である。
【0008】
上述したシリコンゴムの離型特性より、現時点では電子写真式画像形成装置を利用してシリコンゴム成型品の表面に所望の画像を再現することは実用化されていないのが実情である。しかしながら、現在実用化されている電子写真方式の画像形成装置を用いてシリコンゴム成型品の表面に所望のフルカラー画像が再現できれば、所望の高解像度画像を再現することが可能になり、シリコンケースやシリコンカバーの利用範囲が拡大される利点が達成される。
【0009】
本発明の目的は、電子写真方式の画像形成装置を用いて、シリコンゴム成型品の表面に所望のフルカラー画像を印刷できる画像形成方法及び画像形成システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による画像形成方法は、入力された画像情報に基づいてトナー像を形成する電子写真方式の画像形成装置を用い、シリコンゴム成型品の表面に所望の画像を形成する画像形成方法であって、
シリコンゴム成型品の表面にケイ酸化炎処理を行って酸化シリコン層を形成する工程と、
前記酸化シリコン層上にシランカップリング剤を含むプライマー層を形成する工程と、
電子写真方式の画像形成装置に画像情報を入力し、転写シート上にトナー像を形成する工程と、
前記転写シート上に形成されたトナー像を、熱転写処理により前記シリコンゴム成型品のプライマー層上に転写する熱転写工程とを有し、
前記熱転写工程において、トナー像がシリコンゴム成型品の表面に転写されると共に転写されたトナー像がシリコンゴム成型品の表面に定着されることを特徴とする。
【0011】
本発明では、再現されるべき画像情報を電子写真式の画像形成装置に入力し、入力した画像情報に対応したトナー像を形成する。続いて、形成されたトナー像を一旦転写シートに転写し、転写シート上に形成されたトナー像をシリコンゴム成型品の表面に転写する。転写シート上に形成されたトナー像は熱転写処理によりシリコンゴム成型品の表面に熱転写し、熱転写処理中にトナー像をシリコンゴム成型品の表面に定着する。尚、シリコンゴム成型品として、シリコンケースやシリコンカバーのような携帯電話等を収納するように3次元構造体として成型加工された成型品、薄いシート状に成型加工されたシリコンゴム成型品、及びその他のシリコンゴムで構成される各種シリコンゴム成型品が含まれる。また、シリコンゴム成型品の色として、白色の成型品だけでなく種々のカラーのシリコンゴム成型品が含まれる。
【0012】
前述したように、電子写真式の画像形成装置に用いられるスチレン系トナーやポリエステル系のトナーに対して、シリコンゴムは高い離型性を有するため、転写シート上に存在するトナー像をシリコンゴム成型品の表面に直接転写することは極めて困難である。そこで、本発明では、シリコンゴム成型品の表面について表面改質処理を行うと共に熱転写処理によりトナー像をシリコンゴム成型品の表面に転写する。すなわち、シリコンゴムに対する表面改質処理と熱転写処理との相乗作用により転写シート上のトナー像をシリコンゴムの表面に転写すると共に同時に転写されたトナー像をシリコンゴムの表面に定着する。
【0013】
シリコンゴム表面に対する表面改質処理として、コロナ処理、プラズマ処理、火炎を用いる酸化処理等が知られている。本発明者がシリコンゴムについて種々の表面改質処理の実験を行った結果、トナー像定着性の観点より、火炎を用いるケイ酸化炎処理が極めて有効であることが判明した。そこで、本発明では、例えば携帯端末の外形と整合するように成型加工されたシリコンゴム成型品を用意し、燃焼ガス中に有機シラン化合物を供給して火炎処理を行う。ここで、燃焼ガスとして、例えばプロパンガス、ブタンガス、LPG(液化石油ガス)、LNG(液化天然ガス)を用いることができる。そして、燃焼ガス中に酸素ガスや空気を供給して燃焼させて火炎を形成する。さらに、形成された火炎中に有機シラン化合物の蒸気を供給することによりケイ酸炎が形成される。有機シラン化合物として、例えばテトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のアルコキシシランを用いることができる。
【0014】
ケイ酸炎が形成された通路上をシリコンゴム成型品を所定の速度で通過させることにより、ケイ酸化炎処理が行われる。すなわち、ケイ酸炎の直下を通過する間にシリコンゴム成型品の表面には、数10nm程度の厚さの酸化シリコン層が形成される。尚、ケイ酸炎の通過時間として、例えば1秒程度に設定される。
【0015】
本発明では、ケイ酸化炎処理により形成された酸化シリコン層上にプライマー層を形成する。プライマーとして、シランカップリング剤を含有するプライマー又はシランカップリング剤を主成分とするプライマーを用いることができる。さらに、シランカップリング剤に加えて、アクリル系ポリマ、ポリエステル系ポリマ、エポキシ系ポリマ等の各種ポリマ材料を含むプライマーを用いことができる。さらに、下地のシリコンゴムは弾性を有するので、弾性を有するプライマー層も有益であり、シランカップリング剤と、変成シリコーンやエポキシ・変成シリコーンと、アクリル系やポリエステル系等のポリマとを含むプライマーを用いることができる。
【0016】
ここで重要なことは、本発明者の実験結果によれば、シリコンゴム成型品の表面にケイ酸化炎処理を行っただけではシリコンゴム成型品の表面にトナー像を形成することができなかった。また、シリコンゴム成型品の表面ケイ酸化炎処理を行わず、シランカップリング剤を含むプライマー層又はシランカップリング剤を主成分とするプライマー層を形成しただけの場合、転写されたトナー像が一旦溶融固定されるものの、プライマー層がシリコンゴム成型品の表面から剥ぎ落ちてしまい、シリコンゴム成型品の表面に強固に定着されたトナー像を形成することができなかった。すなわち、シリコンゴム成型品の表面にケイ酸化炎処理を行って酸化シリコン層を形成すると共にシランカップリング剤を含むプライマーを用いるプライマー処理の両方の処理を行って初めてトナー像をシリコンゴム成型品の表面に転写及び定着させることができ、ケイ酸化炎処理とシランカップリング剤を含むプライマー処理との相乗効果によりトナー像をシリコンゴム成型品の表面に強固に定着することが可能になる。
【0017】
上述した発明者の実験結果は以下のように解される。すなわち、ケイ酸化炎処理により酸化シリコン層を形成し、その上にトナー像を転写しただけでは、酸化シリコンとトナーの樹脂成分との間に十分な相溶性が形成されず、トナーと酸化シリコン層との間に十分な接合強度が得られなかったものと解される。また、ケイ酸化炎処理を行わず、シリコンゴム成型品の表面にシランカップリング剤を含むプライマー層を直接形成しただけでは、トナーとプライマーとの間の相溶性は確保されるものの、シリコンゴムの表面とプライマー層との間に接合強度が確保されないため、プライマーと溶融したトナーとが成型品の表面から剥ぎ落ちるものと解される。上述した認識に基づき、本発明では、ケイ酸化炎処理とシランカップリング剤を含むプライマー処理との相乗作用を利用して、シリコンゴム成型品の表面にトナー像を形成する。
【0018】
本発明では、転写シート上に形成されたトナー像は、熱転写処理によりシリコンゴム成型品のプライマー層上に転写する。転写シートの背面側から例えば加熱パッドを押圧して加熱すると、転写シート上のトナーは溶融する。この場合、転写シート表面のヌレ性とプライマー層のヌレ性の高低により溶融トナーが転移する。すなわち、転写シートの表面は溶融トナーに対するヌレ性は低く、プライマー層は溶融トナーに対して高いヌレ性を有しているため、溶融したトナーは転写シート側からプライマー層側に転移する。尚、加熱パッドの温度は、トナーに含まれる樹脂成分の溶融温度以上の温度に設定され、例えば70℃〜150℃の温度範囲に設定する。
【0019】
本発明の重要な利点は、加熱転写処理を行うことにより、トナー像がシリコンゴム側に転移すると共に転移したトナー像がシリコンゴム表面に定着されることである。すなわち、転写シートの裏面側から加熱パッドを押し当てることにより、トナーが溶融すると共に溶融トナーからプライマー層に熱が供給され、プライマー層が架橋反応を起こし、架橋反応により溶融トナーがプライマー層に強固に定着されるものと考えられる。この結果、熱転写処理を行うだけで、トナー像をシリコンゴム表面に転写できると共に、転写されたトナー像をケイ酸化炎処理により形成され酸化シリコン層及びプライマーに含まれるシランカップリング剤を介してシリコンゴム成型品の表面に定着することが可能である。
【0020】
本発明による別の画像形成方法は、入力された画像情報に基づいてトナー像を形成する電子写真方式の画像形成装置を用い、シリコンゴム成型品の表面に所望の画像を形成する画像形成方法であって、
シリコンゴム成型品の表面にケイ酸化炎処理を行って酸化シリコン層を形成する工程と、
前記酸化シリコン層上にシランカップリング剤を含むプライマー層を形成する工程と、
電子写真方式の画像形成装置に画像情報を入力し、入力された画像情報に対応したトナー像を形成し、形成されたトナー像を前記シリコンゴム成型品のプライマー層上に転写する工程と、
前記シリコンゴム成型品に転写されたトナー像について加熱処理を行ってシリコンゴム成型品の表面に定着させる熱定着工程とを有することを特徴とする。
【0021】
本発明による画像形成方法においては、シリコンゴムの成型品として、シート状に成型加工された薄い厚さのシリコンゴム成型品及び立体形状に成型加工されたシリコンゴム成型品を用いることができる。例えば厚さが0.5mm程度の薄いシート状のシリコンゴム成型品の表面に所望の画像を形成する場合、電子写真式の画像形成装置にシート状のシリコンゴム成型品を直接セットし、形成されたトナー像をシリコンゴム成型品の表面に直接転写することも可能である。すなわち、シリコンゴム材料は誘電体であるから、通常の記録紙と同様に、搬送されるシリコンゴムのシートの背面側から転写ローラを当接させることにより、感光体上に形成されたトナー像をシリコンゴムのシートの表面に転写することが可能であり、転写されたトナー像は静電吸着した状態でシートの表面上に維持される。そして、シリコンゴム成型品の表面に転写されたトナー像は、一例として画像形成装置に配置されている加熱定着装置を通過させることにより、トナー像をシリコンゴム成型品の表面に定着させることができる。すなわち、加熱定着装置を通過する間に、シリコンゴム成型品の表面に転写されたトナーが溶融すると共にプライマー層に架橋反応が起こり、溶融したトナー像を成型品の表面に定着することが可能である。
【0022】
熱定着工程として、トナー像が形成されている表面に、例えば60℃〜150℃程度の温度に設定された加熱パッドを押し当て、熱と圧力との2つの作用により定着することもできる。また、シリコンゴム成型品を加熱源が配置されているオーブン内を通過させることにより熱定着することも可能であり、さらに、高エネルギーの光ビームや光パルスを照射してトナー像を定着するフラッシュ定着方式を用いることも可能である。
【0023】
本発明による画像形成システムは、入力された画像情報に基づいてトナー像を形成する電子写真方式の画像形成装置を用いてシリコンゴム成型品の表面に所望の画像を形成する画像形成システムであって、
再現されるべき画像情報を受け取ってトナー像を形成し、形成されたトナー像を転写シート上に転写する電子写真方式の画像形成装置と、
転写シート上に形成されているトナー像を、ケイ酸化炎処理により形成された酸化シリコン層及び前記酸化シリコン層上に形成され、シランカップリング剤を含むプライマー層を有するシリコンゴム成型品の表面に熱転写処理により転写する熱転写手段とを有し、
前記熱転写処理により、転写シート上のトナー像はシリコンゴム成型品のプライマー層上に転写されると共に転写されたトナー像がシリコンゴム成型品の表面に定着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明においては、シリコンゴム成型品の表面に対してケイ酸化炎処理により酸化シリコン層を形成すると共にその上にシランカップリング剤を含むプライマー層を形成し、電子写真式の画像形成装置により形成されたトナー像をシリコンゴム成型品のプライマー層上に転写し、加熱処理によりトナー像をシリコンゴム成型品の表面に定着させているので、シリコンゴム成型品の表面に所望の高解像度の画像を再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による画像形成システムの一例を示す図である。
【図2】画像形成装置の一例を示す図である。
【図3】ケイ酸化炎処理を説明するための図である。
【図4】熱転写処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は本発明による画像形成システムの全体構成を示す図である。インターネット1に接続した受付サーバ2を設け、希望者からの画像印刷要求を受け付ける。ハードコピー(印刷画像)の画像情報3は、スキャナ4により電子画像情報に変換されて受付サーバ2に供給される。さらに、受付サーバ2は、インターネット1に接続されているサーバ5や携帯端末6から送信されてくる画像印刷要求も受け付けることができる。受付サーバ2は、受信した画像情報について識別番号を付与し、信号処理装置7に送出する。信号処理装置7は、入力した画像情報を識別番号と共にメモリに記憶する。また、信号処理装置7は、画像反転手段を有し、用いられる電子写真方式の画像形成装置の特性に応じて受信した画像情報から左右反転した反転画像を形成することができる。
【0027】
入力した画像情報は、電子写真方式の画像形成装置8に供給する。電子写真方式の画像形成装置として、入力された画像情報に基づいてトナー像を形成するフルカラー又はモノクロの画像形成装置を用いることができる。画像形成装置8において、入力した画像情報に基づいて感光体上にトナー像を形成し、形成されたトナー像を転写シート上に転写し、トナー像が転写された転写シートを排出する。尚、1つの感光体上にシアン、マゼンダ、イエロー及び黒の4色のトナー像を形成するタイプの画像形成装置を用いる場合、反転した画像情報が供給される。また、4色のトナー像を1次転写ベルト上に形成し、1次転写ベルト上に形成されたトナー像を転写シート上に転写するタイプの画像形成装置を用いる場合、反転されていない画像情報が画像形成装置に供給される。
【0028】
転写シートとして、トナーに対して離型性を有する転写紙が用いられる。例えば、合成樹脂シート等の表面に シリコン樹脂やフッソ樹脂等を含有する離型層がコーティングされた離型性シートは、溶融トナー又は半溶融したトナーに対して高い離型性を有するので、転写シートとして好適である。
【0029】
トナー像が転写された転写シートは、搬送装置を介し排出され、熱転写装置9に供給される。熱転写装置9には、表面改質処理されたシリコンゴム成型品も供給する。本例では、シリコンゴム成型品として、白色のシリコンゴム成型品を用いる。シリコンゴム成型品は、ケイ酸化炎処理装置10に供給され、ケイ酸化炎処理装置の火炎の下側に沿って所定の速度で搬送され、火炎を通過する間にシリコンケースの表面に例えば数10nm程度の厚さの酸化シリコン層が形成される。
【0030】
表面に酸化シリコン層が形成されたシリコンゴム成型品は、プライマーコータ11に移送され、酸化シリコン層上にプライマー層が形成される。本発明では、プライマー層として、シランカップリング剤を含むプライマーが用いられる。また、シランカップリング剤に加えて、アクリル系ポリマ、スチレン系ポリマ、又はポリエステル系ポリマのいずれかのポリマを含むプライマーを用いることができる。特に、トナーの樹脂成分と同一の樹脂成分を含むプライマーも好適であり、トナーがポリエステル系樹脂又はスチレン系樹脂を含む場合、シランカップリング剤と、ポリエステル系ポリマ又はスチレン系ポリマとを含有するプライマーも好適である。さらに、シランカップリング剤と、例えば変成シリコーンやエポキシ・変成シリコーンのような弾性を有するポリマとを含むプライマーを用いることができる。尚、プライマー層は、コータにより形成されるだけでなく、スプレイ法等の種々のコィーティング方法を用いて酸化シリコン層上にプライマー層を形成することも可能である。
【0031】
熱転写装置9において、トナー像が形成されている転写シートとプライマー層が形成されたシリコンゴム成型品は、シリコンゴム成型品のプライマー層と転写シート上のトナー像が形成された面とが対向するように重ね合わせ、転写シートの背面側から加熱処理を行う。加熱処理として、例えば転写シートの背面側から加熱パッドを押し当て、トナーを溶融し、溶融したトナーをシリコンゴム成型品のプライマー層側に転写する。転写シートには離型層が形成され、溶融したトナーに対するヌレ性は低い。これに対して、シリコンゴム成型品のプライマー層は溶融トナーに対して良好なヌレ性を有するため、溶融したトナーは転写シート側からプライマー層側に転移する。同時に、加熱パッドから供給された熱がプライマー層に伝導し、プライマー層が加熱され、プライマー層に架橋反応が発生する。この結果、溶融したトナーは、プライマー層の架橋反応により、プライマー層に強固に定着される。従って、熱転写処理により、転写シート上のトナー像がプライマー層側に転写されると共に、転写したトナー像がプライマー層に定着される。
【0032】
熱転写装置の加熱手段である加熱パッドは、トナーの溶融温度以上の温度に設定され、例えば70℃〜150℃に設定することができる。加熱時間は、加熱温度に応じて設定する。
【0033】
図2は本発明による画像形成システムに用いられる電子写真式画像形成装置の一例を示す図である。本例では、入力した画像情報に基づき、シアン、マゼンダ、イエロー及び黒の4色のトナー像をそれぞれ形成する4つの画像形成ユニットを有し、4色のカラー画像を一次転写ベルトに転写し、転写ベルト上のカラー画像を転写シートに転写するフルカラー画像形成装置について説明する。シアン、マゼンダ、イエロー及び黒の画像を形成する4つの画像形成ユニット20〜23を配置する。これらの画像形成ユニットは、図面上感光ドラムだけを図示するが、感光ドラムを帯電する帯電装置、画像光を照射する露光装置、現像装置、及びクリーニング装置を有し、画像情報に基づいて各カラーのトナー像を形成する。各画像形成ユニット20〜23により形成されたトナー像は、同期して搬送される一次(中間)転写ベルト24上に重ね合わされて転写される。
【0034】
一次転写ベルト24は、4本のベルト搬送ローラ25〜28と1個のテンションローラ29に張架され、各画像形成ユニットのトナー像の形成タイミングに同期して走行する。一次転写ベルト24上に転写されたトナー像は、転写ローラ30により、同期して送られてくる転写シート31上に転写される。転写後、一次転写ベルト24は、クリーニング装置32によりブレードクリーニングされ残留トナーや紙粉が除去されて画像形成工程が終了する。4色のトナー像が転写された転写シート31は、排紙され、搬送装置を介して熱転写工程へ移送される。尚、転写シート31上に転写されたトナー像は、静電気力により転写シート上に吸着した状態に維持されるので、トナー像が形成されている転写シートを搬送装置により移送してもトナー像が乱れる不具合は生じない。
【0035】
次に、シリコンゴム成型品の表面改質について説明する。本発明では、シリコンゴム成型品の表面改質処理として、燃焼化学気相蒸着法を利用したケイ酸化炎処理とシランカップリング剤を含むプライマー処理の2つの処理が行われる。図3は、ケイ酸化炎処理工程を示す図である。2本の搬送ローラ40a及び40b上に搬送ベルト41を張架する。搬送ベルトとして、耐熱性を有する金属ベルトを用いる。搬送ベルト上にシリコンゴム成型品42を配置し、矢印方向に所定の速度で搬送する。搬送ベルトの上方に火炎43を放出するバーナー44を配置する。バーナー44には、燃焼ガスであるLPGが収容されている第1のボンベ45、酸素が収容されている酸素ボンベ46及び有機シラン化合物が収容されているボンベ47を接続する。
【0036】
燃焼ガスと酸素とが燃焼して火炎43が形成されると共に火炎中に有機シラン化合物の蒸気を供給する。このようにして形成された火炎中にシリコンゴム成型品を通過させると、シリコンゴム成型品の火炎43と対向する表面42aには厚さが数10nm程度の酸化シリコン膜が形成され、シリコンゴム成型品の表面は酸化シリコン層に変成される。尚、火炎の温度は約1000℃程度であるが、シリコンゴム成型品に対する火炎に対する通過時間は1秒程度であるため、シリコンゴム成型品が熱損傷を受ける不具合は生じない。
【0037】
続いて、シリコンゴム成型品の酸化シリコン膜が形成された表面にプライマー処理を行う。用いるプライマー剤として、シランカップリング剤と各種ポリマ材料とを含むプライマーを用いる。ポリマ材料の一例として、アクリル系ポリマ、スチレン系ポリマ、ポリエステル系ポリマを用いることができる。また、これらのポリマに変成シリコーンを含有させることもできる。プライマーの一例として、シランカップリング剤を5〜15%、アクリル樹脂を5〜15%、トルエンを35〜45%、及びイソプロピルアルコールを35〜45%含むプライマーが用いられる。そして、プライマーコータにより、酸化シリコン層上にプライマー層を形成する。
【0038】
図4は熱転写装置における処理工程を示す図である。画像が転写されるシリコンゴム成型品42は、その内側形状に対応する形状の台座50上に配置する。シリコンゴム成型品の画像形成される面には、酸化シリコン層51及びプライマー層52が形成されている。そして、プライマー層52と対向するようにトナー像が形成されている転写シート31を配置する。転写シート31の上方に、加熱パッド53を昇降自在に配置する。加熱パッド53の内部には、ヒータ53aを設け、加熱パッドの表面温度を例えば60〜150℃に設定する。尚、本例では、配置位置として、下から上方に向けてシリコンゴム成型品、転写シート及び加熱パッドをこの順序で設けたが、勿論この配置順序を逆にし、上方から下方に向けてシリコンゴム成型品、転写シート及び加熱パッドを配置することも可能である。尚、転写シート上に存在するトナーは、静電吸着した状態で転写シート上に存在するため、トナー像形成面が下側を向くように配置しても、トナー像が乱れる不具合は生じない。
【0039】
続いて、図4(B)に示すように、シリコンゴム成型品42の表面と当接させ、その状態で加熱パッド53を降下させ、加熱パッド53から押圧力を作用し、転写シート31をシリコンゴム成型品42の表面に圧着し、熱転写処理を行う。熱転写処理中に、トナーは溶融し、転写シート31からシリコンゴム成型品の表面側に転写される。同時に、シリコンゴム成型品の表面に形成されたプライマー層も加熱され架橋反応が生じ、溶融したトナーはプライマー層に定着される。尚、トナーに含まれる樹脂成分の溶融温度を考慮して、加熱パッドの温度、加熱パッドの押圧力及び加熱時間を設定する。
【0040】
図4(C)に示すように、所定の加熱時間が経過した後、加熱パッド53及び転写シート31を上方に移動させ、シリコンゴム成型品から転写シートを分離させる。この状態において、トナー像はシリコンゴム成型品の表面に転写されると共にその表面に強固に定着される。この結果、1つの処理工程によりトナー像はシリコンゴム成型品側に転写されると共にその表面に強固に定着される。
【0041】
次に、電子写真方式の画像形成装置に、厚さの薄いシート状のシリコンゴム成型品や立体形状のシリコンゴム成型品を装着し、例えば感光ドラム上に又は転写ベルト上に形成されたトナー像を直接シリコンゴム成型品の表面に転写する実施例について説明する。現在の市場においては、シート状に成型加工されたシリコンゴム成型品の表面に所望の画像を形成することも要請されている。この場合、例えば厚さが0.5mm程度の薄いシリコンゴム成型品は、記録紙と同程度の機械的強度を有するシート状部材の場合、記録紙の代わりにシート状のシリコンゴム成型品を供給することも可能である。この場合、シリコンゴムは誘電体であるから、画像形成装置の転写装置をそのまま利用して、感光体上に形成されたトナー像をシリコンゴム成型品の表面に転写することが可能である。そして、転写されたトナー像を保持するシート状のシリコンゴム成型品を熱定着ローラを通過させる加熱処理を行うことにより、シリコンゴム成型品上に形成された未定着トナー像を定着することも可能である。
【0042】
すなわち、シート状に成型加工されたシリコンゴム成型品の表面についてケイ酸化炎処理を行って酸化シリコン層を形成する。続いて、酸化シリコン層上にシランカップリング剤を含むプライマー層を形成する。このシート状のシリコンゴム成型品を市販の電子写真式の画像形成装置に装着する。続いて、再現されるべき画像情報を画像形成装置に送出し、トナー像を形成する。同時にトナー像の形成と同期してシート状のシリコンゴム成型品を供給すると、感光体上に形成されたトナー像はシリコンゴム成型品上に転写される。トナー像が転写されたシリコンゴム成型品を、画像形成装置に搭載されているヒートロール定着装置を通過させる。ヒートロール定着装置を通過する間に、ヒートローラから供給される熱によりトナーが溶融されてプライマー層上に定着される。このように、本例では、トナー像を転写シート上に転写することなく、トナー像を直接シリコンゴム成型品の表面上に転写することが可能であり、転写されたトナー像は静電気力によりシリコンゴム成型品の表面に静電吸着した状態に維持される。従って、加熱手段を用いてトナー像を加熱融着させることにより、シリコンゴム成型品の表面に所望の画像を定着することが可能である。尚、本例においては、プリンタ装置を立体形状のシリコンゴム成型品を搬送できるように変更を加えることにより、シート状のシリコンゴム成型品だけでなく、シリコンケースのような立体形状のシリコンゴム成型品の表面に直接トナー像を転写し、転写されたトナー像を熱定着によりシリコンゴム成型品の表面に定着することもできる。尚、熱定着工程として、加熱パッドを用いる方法が用いられ、トナー像が形成されたシリコンゴム成型品を加熱源が配置されたオーブン内を通過させることにより定着することができ、或いは、フラッシュ定着方式により定着することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 インターネット
2 受付サーバ
3 画像情報
4 スキャナ
5 サーバ
6 携帯端末
7 信号処理装置
8 画像形成装置
9 熱転写装置
10 ケイ酸化炎処理装置
11 プライマーコータ
20〜23 画像形成ユニット
24 1次転写ベルト
30 転写ローラ
31 転写シート
40a,40b 搬送ローラ
41 搬送ベルト
42 シリコンゴム成型品
43 火炎
44 バーナー
45 第1のボンベ
46 第2のボンベ
47 第3のボンベ
50 台座
51 酸化シリコン層
52 プライマー層
53 加熱パッド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像情報に基づいてトナー像を形成する電子写真方式の画像形成装置を用い、シリコンゴム成型品の表面に所望の画像を形成する画像形成方法であって、
シリコンゴム成型品の表面にケイ酸化炎処理を行って酸化シリコン層を形成する工程と、
前記酸化シリコン層上にシランカップリング剤を含むプライマー層を形成する工程と、
電子写真方式の画像形成装置に画像情報を入力し、転写シート上にトナー像を形成する工程と、
前記転写シート上に形成されたトナー像を、熱転写処理により前記シリコンゴム成型品のプライマー層上に転写する熱転写工程とを有し、
前記熱転写工程において、トナー像がシリコンゴム成型品の表面に転写されると共に転写されたトナー像がシリコンゴム成型品の表面に定着されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成方法において、前記プライマーは、シランカップリング剤に加えて、アクリル系ポリマ、ポリエステル系ポリマ又はスチレン系ポリマのいずれかのポリマを含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成方法において、前記熱転写工程において、前記転写シートのトナー像が形成されている表面と前記シリコンゴム成型品のプライマー層が形成されている面とが重ね合わされ、転写シートの背面側から加熱手段により加熱してトナーを溶融することにより、トナー像がシリコンゴム成型品のプライマー層に転写されると共に、転写されたトナー像がプライマー層に定着されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の画像形成方法において、前記シリコンゴム成型品は、収納される器材の形状に整合するように成型加工処理が施されていると共に白色のシリコンゴム材料により構成され、白色のシリコン基材の表面に所望のフルカラー画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成方法において、前記シリコンゴム成型品として、携帯端末を収納する白色のシリコンケース又はシリコンカバーが用いられ、シリコンケース又はシリコンカバーの表面に所望のフルカラー画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
入力された画像情報に基づいてトナー像を形成する電子写真方式の画像形成装置を用い、シリコンゴム成型品の表面に所望の画像を形成する画像形成方法であって、
シリコンゴム成型品の表面にケイ酸化炎処理を行って酸化シリコン層を形成する工程と、
前記酸化シリコン層上にシランカップリング剤を含むプライマー層を形成する工程と、
電子写真方式の画像形成装置に画像情報を入力し、入力された画像情報に対応したトナー像を形成し、形成されたトナー像を前記シリコンゴム成型品のプライマー層上に転写する工程と、
前記シリコンゴム成型品に転写されたトナー像について加熱処理を行ってシリコンゴム成型品の表面に定着させる熱定着工程とを有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
入力された画像情報に基づいてトナー像を形成する電子写真方式の画像形成装置を用いてシリコンゴム成型品の表面に所望の画像を形成する画像形成システムであって、
再現されるべき画像情報を受け取ってトナー像を形成し、形成されたトナー像を転写シート上に転写する電子写真方式の画像形成装置と、
転写シート上に形成されているトナー像を、ケイ酸化炎処理により形成された酸化シリコン層、及び前記酸化シリコン層上に形成され、シランカップリング剤を含むプライマー層を有するシリコンゴム成型品に熱転写処理により転写する熱転写手段とを有し、
前記熱転写処理により、転写シート上のトナー像はシリコンゴム成型品のプライマー層上に転写されると共に転写されたトナー像がシリコンゴム成型品の表面に定着されることを特徴とする画像形成システム。
【請求項8】
入力された画像情報に基づいてトナー像を形成する電子写真方式の画像形成装置を用いてシリコンゴム成型品の表面に所望の画像を形成する画像形成システムであって、
インターネットを介して送られてくる画像情報を受信する手段と、
受信した画像情報に基づいてトナー像を形成し、形成されたトナー像を転写シート上に転写する電子写真方式の画像形成装置と、
転写シート上に形成されているトナー像を、ケイ酸化炎処理により形成された酸化シリコン層、及び酸化シリコン層上に形成され、シランカップリング剤を含むプライマー層を有するシリコンゴム成型品のプライマー層に熱転写処理により転写する熱転写手段とを有し、
前記熱転写処理により、転写シート上のトナー像はシリコンゴム成型品のプライマー層上に転写されると共に転写されたトナー像がシリコンゴム成型品の表面に定着されることを特徴とする画像形成システム。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の画像形成システムにおいて、前記プライマーは、シランカップリング剤に加えて、アクリル系ポリマ、ポリエステル系ポリマ又はスチレン系ポリマのいずれかのポリマを含むことを特徴とする画像形成システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−73202(P2013−73202A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214385(P2011−214385)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(591221167)ミツマ技研株式会社 (17)
【Fターム(参考)】