説明

画像形成方法及び画像形成装置

【課題】肉眼での判読が容易な複写不能な画像を簡単に形成可能な画像形成方法及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】黒色用紙に金属光沢トナーを用いて、複写不能な金属光沢画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
複数の像担持体と、複数の現像手段と、複数の像担持体のそれぞれに転写材を搬送するように循環移動する搬送手段と、前記転写材に像担持体上の色トナー像を順次転写する複数の転写手段とを具備し、前記複数の現像手段のうちの1つが、金属光沢トナーにより、転写後のトナー像が複写不能である金属光沢画像を形成する現像手段であることを特徴とするタンデム型画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法及び画像形成装置に係り、特に、複写不能な画像を形成可能な画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、用紙に記録された情報の機密を守るため、静電複写装置によって複写されても複写情報が判読できない、または判読困難とする複写防止用紙が知られている。この複写防止用紙は、所定の機密領域にアルミ箔を貼り付けたり、箔押しするなどの方法によって反射層を設けたものである。この反射層に黒色等の濃色でプリントしたものは、複写すると判読が困難となる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、このようなアルミ箔に黒色文字を印字する方法では、用紙の大部分がアルミ箔である金属光沢部分であるため、文字、情報等を肉眼で判読することが難しいという欠点があった。また、金属箔を箔押しにより用紙に形成する方法は、箔押しに時間がかかるという欠点があった。
【0004】
なお、肉眼で容易に判読可能な、複写防止機能を有する印刷物として、黒色印刷層上にパールインキ印刷層を積層し、パールインキ印刷層上に黒色トナーで印字したものが知られている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この印刷物は、黒色印刷層及びパールインキ印刷層の2層を積層した特別の用紙を使用しなければならないという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平6−155975号公報
【0006】
【特許文献2】実開昭59−99781号公報
【0007】
【特許文献3】特開2006−218690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情の下になされ、肉眼での判読が容易な複写不能な画像を簡単に形成可能な画像形成方法及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、黒色用紙に金属光沢トナーを用いて、複写不能な金属光沢画像を形成することを特徴とする画像形成方法を提供する。
本発明の第2の態様は、用紙の少なくとも一部に黒色トナーでベタ画像を形成する工程、及び前記ベタ画像内に金属光沢トナーを用いて、複写不能な金属光沢画像を形成する工程を具備することを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0010】
本発明の第3の態様は、それぞれ表面に静電潜像が形成され、並設された複数の像担持体と、前記複数の像担持体上にそれぞれ所定の色トナー像を形成する複数の現像手段と、転写材を担持搬送して前記複数の像担持体上に形成された色トナー像を前記転写材に順次転写するか、前記色トナー像を自身に一旦転写させた後に別途搬送される転写材に一括転写させるべく循環移動する転写搬送手段とを具備するタンデム型の画像形成装置であって、前記複数の現像手段のうちの1つが、金属光沢トナーにより、前記転写材に転写後のトナー画像が複写不能である金属光沢画像を形成する現像手段であることを特徴とするタンデム型画像形成装置を提供する。
【0011】
本発明の第4の態様は、それぞれ表面に静電潜像が形成され、並設された複数の像担持体と、前記複数の像担持体上にそれぞれ所定の色トナー像を形成する複数の現像手段と、転写材を担持搬送して前記複数の像担持体上に形成された色トナー像を前記転写材に順次転写するか、前記色トナー像を自身に一旦転写させた後に別途搬送される転写材に一括転写させるべく循環移動する転写搬送手段とを具備するタンデム型の画像形成装置であって、前記複数の現像手段のうちの1つが、黒トナーにより黒色ベタ画像を形成する現像手段であり、他の現像手段のうちの1つが、金属光沢トナーにより、前記転写材に転写後のトナー画像が複写不能である金属光沢画像を、前記黒色ベタ画像内に形成する現像手段であることを特徴とするタンデム型画像形成装置を提供する。
【0012】
以上の本発明の第1〜第4の態様において、前記金属光沢トナーとして、銀色金属粉を含む銀色トナーを用いることが出来る。
また、前記銀色金属粉として、銀粉又はアルミ粉を用いることが出来る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、肉眼での判読が容易な複写不能な画像を簡単に形成可能な画像形成方法及び画像形成装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の第1の実施形態に係る画像形成方法は、黒色用紙に金属光沢トナーを用いて、複写不能な金属光沢画像を形成することを特徴とする。
このような画像形成方法に使用される金属光沢トナーとしては、銀色金属粉を含む銀色トナーを用いることが出来、銀色金属粉としては、銀粉又はアルミ粉を用いることが出来る。
【0015】
金属光沢トナー例えば銀色トナーは、通常のトナーの製造プロセスにより製造することが出来る。例えば、結着樹脂、銀色金属粉、必要に応じてその他添加剤を混合した後、2軸混練機や加圧ニーダー、オープンロールなどの混練機で混練し、得られた混練物を冷却した後、ジェットミル等の粉砕機で粉砕し、更に風力分級機等で分級することにより得ることができる。
【0016】
銀色金属粉の粒径は、例えば平均粒径0.2〜2μm程度のものがよい。粒径が大きすぎると、銀色トナーは紙への定着性が悪くなり、小さすぎると、取り扱いが困難となる。
銀色金属粉の量は、トナー全体に対して、40〜60質量%程度であることが好ましい。銀色金属粉の量が多すぎると、銀色トナーは紙への定着性が悪くなり、少なすぎると、複写不能効果が得にくくなる。
【0017】
本実施形態に用いる銀色トナーに用いる結着樹脂としては、従来公知のものが使用できる。例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、およびスチレン−ブタジエン共重合体などのスチレン系樹脂をはじめ、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル樹脂。エポキシ樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、キシレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示でき、これらの樹脂を二種類以上組み合わせて用いてもよい。なお、これらの樹脂のうち、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0018】
本実施形態に用いる銀色トナーには、必要に応じて、従来公知の離型剤を添加することができる。そのような離型剤としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のオレフィン系ワックスや、カルナウバワックス、ライスワックス、カイガラムシワックス等の天然ワックス、合成エステルワックス等が挙げられる。低温定着性や高速印字性能を向上させるには、離型剤の融点は60〜100℃程度と比較的低い方が好ましく、具体的には、カルナウバワックスや、合成エステルワックスが好ましい。環境への影響を考慮すると、天然物系のカルナウバワックスがより好ましい。離型剤の添加量は、トナー全体に対して、1〜10質量%であることが好ましい。
【0019】
本実施形態に用いる銀色トナーには、必要応じて、従来公知の帯電制御剤を添加することができる。例えば、正帯電制御剤として、4級アンモニウム塩、アミノ基を含有する樹脂等が、負帯電制御剤として、サルチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、カリックスアレン型のフェノール系縮合物、カルボキシル基を含有する樹脂などがある。帯電制御剤の配合量は、トナー全体に対して、0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0020】
銀色トナーの粒径は特に限定されないが、通常5〜10μmとなるように調整される。このようにして得られた銀色トナーに対し、流動性向上、帯電性調整、耐久性向上のため、外添剤を添加することができる。外添剤としては、無機微粒子が一般的であり、シリカ、チタニア、アルミナ等が挙げられ、そのうち疎水化処理されたシリカが好ましく、日本アエロジル、CABOT等で市販されている。1次粒子径として、7〜40nmのものが良く、機能向上のため2種類以上を混ぜ合わせても良い。
【0021】
本発明の第1の実施形態に係る画像形成方法において、図1に示すように、黒色用紙1に、上述した銀色トナーを用いて画像2をプリントすると、銀色の画像2がプリントされた印刷物が得られる。画像2は、背景が黒色であるため、肉眼により明瞭に視認可能である。このような印刷物を電子写真複写機により複写すると、銀色トナーによる画像2は、露光の際に鏡面反射を生じ、黒色に印字されるため、背景の黒色と区別がつかず、判読不能となる。
【0022】
本発明の第2の実施形態に係る画像形成方法は、用紙の少なくとも一部に黒色トナーでベタ画像を形成した後、このベタ画像内に金属光沢トナーを用いて、複写不能な金属光沢画像を形成することを特徴とする。
即ち、上述した本発明の第1の実施形態に係る画像形成方法が、図1に示すように、黒色用紙1に、上述した銀色トナーを用いて画像2をプリントしているのに対し、本実施形態では、図2に示すように、通常の白色用紙11に黒色トナーでベタ画像12を形成した上で、そのベタ画像12に上述した銀色トナーを用いて画像13をプリントするものである。この方法によると、黒色のベタ画像12を背景にして銀色の画像13がプリントされた印刷物が得られる。このような印刷物では、第1の実施形態と同様、黒色のベタ画像を背景とする銀色トナーによる画像13は、肉眼により明瞭に視認可能である。また、電子複写機により複写すると、露光の際に鏡面反射を生じ、黒色に印字されるため、背景の黒色ベタ画像12と区別がつかず、判読不能となる。
【0023】
なお、図2に示す例では、黒色トナーによるベタ画像の形成は、用紙11の一部に対しなされたが、用紙11の前面に形成してもよい。この場合には、図1に示す例と同様の印刷物が得られるが、黒色用紙を準備することなく、白色用紙を用いることが出来るという利点がある。
【0024】
以上説明した第1及び第2の実施形態に係る複写不能な画像の形成は、図3に示すようなタンデム型画像形成装置を用いて行うことが出来る。以下、本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置として、タンデム型画像形成装置について説明する。
図3に示すように、この画像形成装置(本体装置)30は、その後面(図の左方)に開閉トレー31を備え、下部には本体装置前方(図の右方)から着脱自在な用紙カセット32を備えている。用紙カセット32には、多枚数の用紙が載置・収容されている。
【0025】
本体装置30は、その上面に上蓋33を備えている。上蓋33の前部側方には図では示されていないが、電源スイッチ、液晶表示装置、複数の入力キー等が配設されている。上蓋33は、その後部が本体装置30の後部上面とともに排紙トレー34を形成している。
【0026】
本体装置30の内部には、略中央に、偏平なループ状の用紙搬送ベルト(以下、単にベルトという)35が前後に延在して配置され、そのループの水平方向の両端部を駆動ローラ36と従動ローラ37に保持されている。このベルト35は、駆動ローラ36により駆動され、図の矢印Rで示す反時計回り方向に循環移動する。このベルト35の上循環部に沿って、4個の感光体ドラム38(38a、38b、38c、38d)が、用紙搬送方向(図の右から左方向)に多段式に並設されている。
【0027】
これらの感光体ドラム38(38a、38b、38c、38d)を各々取り囲むようにして(以下、代表的に感光体ドラム38dの周囲装置についてのみ符号を付して示す)、クリーナ41、初期化帯電ローラ42、書込ヘッド43、及び現像器44(44d)が配置されている。また、接触型のシート転写器39が、ベルト35を介して感光体ドラム38に圧接して転写部を形成している。なお、感光体ドラム38a、38b、38cに対しては、それぞれ現像器44a、44b、44cが配置されている。
【0028】
現像器(現像ホッパー)44(44d)は、その下部開口部に回転可能に支持された現像ローラ45を備えている。この現像ローラ45は、感光体ドラム38周面に当接して、現像部を形成している。書込ヘッド43は、上蓋33の裏面に支持部材46を介して配設されており、上蓋33の開閉に伴って円弧を描いて昇降し、上蓋33の閉成により降下して、初期化帯電ローラ42と現像ローラ45との間に位置決めされて、記録部を形成している。
【0029】
ベルト35の上循環部の上流側端部には、吸着ローラ47が、ベルト35を介して従動ローラ37に圧接され、ここに用紙搬入部を形成している。吸着ローラ47は、用紙搬入部に搬入されてくる用紙に吸着バイアスを印加しながらベルト35を押圧し、ベルト35に用紙を静電的に吸着させる。
【0030】
通常のタンデム型カラー画像形成装置では、上記用紙搬送方向最上流の感光体ドラム38aに対する現像器44aから感光体ドラム38cに対応する現像器44cまでの各現像器には、減法混色の三原色 であるM(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)の各色トナーがそれぞれ収容され、最下流の感光体ドラム38dに対応する現像器44dには、黒色トナーが収容されている。
【0031】
このようなタンデム型カラー画像形成装置を、本発明の複写不能な画像形成に適用する場合、感光体ドラム38aないし38dのうちいずれかの感光体ドラムに対応する現像器(44a〜44dのいずれか)には、銀色トナーが収容されており、その上流側の感光体ドラムに対応する現像器には、黒色トナーが収容されている。この場合、これら以外の現像器にはトナーを収容せず、銀色トナーによる画像形成のみを行うことが可能であるが、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)の各色トナーを収容してもよい。
【0032】
なお、感光体ドラムを5個配置し、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)の各色トナー、黒色トナー、及び銀色トナーをそれぞれ収容する5つの現像器を設けることも可能である。
ベルト35より更に搬送方向上流側(図の右方)には、待機ロール対48、その下方に給紙案内路49が配置され、給紙案内路49の下端部には、給送ロール対51が配設されている。給送ロール対51の上流(下方)に、前述した用紙カセット32の給紙端が位置している。用紙カセット32の給紙端上方に、給紙コロ52が配設されている。給紙コロ52は、一回転毎に、用紙カセット32に収容されている最上部の用紙一枚を取り出して、給送ロール対51へ給紙する。
【0033】
一方、ベルト35よりも用紙搬送方向下流(図の左方)には、定着器53、排紙ロール対54、切り換えレバー55が設けられる。定着器53は、断熱性の匡体内に組み付けられた圧接ローラ、定着ローラ、発熱ローラ、用紙分離爪、周面清掃器、オイル塗布部材、サーミスタ等から構成され、用紙上に転写されたトナー像を紙面に熱定着させる。
【0034】
切り換えレバー55は、同図に示すように下の位置にあるときは、上方の排出路56及び排紙ロール対57を介して排紙トレー34へ用紙を案内する。一方、上に回動しているときは、本体装置後面に開成される開閉トレー31へ用紙を案内する。
ベルト35と用紙カセット32の間には、回路基板を装着可能な電装部58が配設され、その回路基板には複数の電子部品からなる制御装置が搭載されている。
【0035】
制御装置は、コントローラ部とエンジン部からなり、コントローラ部はCPU(中央演算処理装置)、ROM(読出し専用メモリ)、EEPROM(再書込み可能な読出し用メモリ)、フレームメモリ、イメージデータ転送回路等を備えていて、ホストコンピュータ等から入力される印刷データを解析し、印字用データを作成してエンジン部に転送する。
【0036】
エンジン部は、CPUやROM等を備え、その入力側にはコントローラ部からのデータや指令信号、温度センサの出力、用紙検知センサの出力等が入力され、出力側には不図示のモータを駆動するモータドライバ、そのモータの駆動を各部に伝達する駆動系を切り替えるクラッチドライバ、書込ヘッド43を上記印字用データに基づいて駆動する印字ドライバ、初期化帯電ローラ42、現像ローラ45、転写器、吸着ローラ47、後述するトナー供給ローラ、ドクターブレード、現像部掬いシート等に所定のバイアス電圧を供給するバイアス電源ドライバ等が接続されている。エンジン部は、コントローラ部からのデータや指令信号、温度センサの出力、用紙検知センサの出力等に基づいて各部を駆動制御する。
【0037】
次に、以上説明したカラー画像形成装置30の基本的な動作について説明する。先ず、電源が投入され、使用する用紙の紙質、枚数、印字モード、その他の指定がキー入力あるいは接続するホスト機器からの信号として入力されると、図示しない駆動機構により給紙コロ52が一回転して、用紙カセット32に載置収容されている用紙を給送ロール対51を介して待機ロール対48へ給送する。待機ロール対48は、回転を一時停止して、一対のローラで形成される挟持部に用紙先端を当接させた状態で、搬送タイミングを待機する。
【0038】
続いて、駆動ローラ36が反時計回り方向に回転し、従動ローラ37が従動して、同じく反時計回り方向に回転する。これにより、ベルト35は、上循環部が4個の感光体ドラム38a、38b、38c、38dに当接して、全体が反時計回り方向へ循環移動する。
【0039】
これと共に、各現像器44a、44b、44c、44d及び感光体ドラム38a、38b、38c、38dが印字タイミングに合わせて順次駆動される。感光体ドラム38は時計回り方向に回転し、初期化帯電ローラ42は、感光体ドラム38周面に一様な高マイナス電荷を付与し、書込ヘッド42は、その感光体ドラム38周面に画像信号に応じて露光を行って、低電位部を形成する。これにより、上記初期化による高マイナス電位部と、露光による低マイナス電位部からなる静電潜像が形成される。現像器44の現像ローラ45は、その静電潜像の低電位部にトナーを転移させて、感光体ドラム38周面上にトナー像を形成(反転現像)する。即ち、黒色トナーを収容する現像器により対応する感光体ドラムに黒ベタ画像を形成するとともに、銀色トナーを収容する現像器により対応する感光体ドラムに金属光沢画像を形成する。
【0040】
最上流の感光体ドラム38aの周面上のトナー像の先端が、ベルト35との対向点に回転搬送されてくるタイミングで、その対向点に用紙の印字開始位置が一致するように、待機ロール対48が回転を開始して、用紙を用紙搬入部へ給送する。
従動ローラ37と吸着ローラ47は、給送された用紙をベルト35と共に挟持して搬送する。用紙は、ベルト35に吸着され、感光体ドラム38aと転写器により形成されている最初の転写部へ搬送される。
【0041】
転写器は、転写バイアス電源から出力される転写電流をベルト35を介して用紙に印加する。この転写器から印加される転写電流により、いずれかの感光体ドラムの黒色ベタ画像が用紙に転写される。続いて、他の感光体ドラムと転写器により形成されている下流の転写部において銀色トナー像が転写される。
【0042】
このようにして、黒色ベタ画像と銀色トナー像を転写された用紙は、ベルト35から分離して定着器53に搬入される。定着器53は、トナー像を用紙に熱定着させる。この画像定着後、用紙は、排紙ロール対54によって後面の開閉トレー31上にトナー像を上にして、又は上部の排紙トレー34上にトナー像を下にして排出される。
このようにして得られた印刷物では、第2の実施形態と同様、黒色のベタ画像を背景とする銀色トナーによる画像は、肉眼により明瞭に視認可能である。また、電子複写機により複写すると、露光の際に鏡面反射を生じ、黒色に印字されるため、背景の黒色ベタ画像と区別がつかず、判読不能となる。
【0043】
以上のように動作する本発明の一実施例に従ったカラー画像形成装置30において、上記の現像器44(44a、44b、44c、44d)は、感光体ドラム38(38a、38b、38c、38d)上に安定したトナー画像を形成するために、以下のような構成とされている。
【0044】
図4は、上記現像器44の主要部を模式的に示す側断面図である。同図に示す現像器44は、カラー画像形成装置30に着脱自在であり、ドラムユニットとともに一つの画像形成ユニットを構成する現像ユニットとされている。現像器44は、トナーホッパーを兼ねる匡体61を備え、その匡体61の下部開口に導電性ゴムローラからなる現像ローラ45を回転可能に保持し、匡体61の内部には、トナー62を収容し、このトナー62に埋没するように配設されたトナー攪拌部材63を備えている。
【0045】
また、現像器44の最下部には、スポンジ体から成る供給ローラ64が現像ローラ45に圧接して配置されている。現像ローラ45には、その斜め右上周面に圧接して金属製の板バネ状のドクターブレード65が配設され、下部周面に当接して現像部掬いシート(導電性規制シート)66が配設されている。この現像部掬いシート66には、バイアス電源71を含む後述する導電性規制シートバイアス手段が設けられている。ドクターブレード65の両側部には、匡体61開口部の内部と外部を隔絶してトナー62の漏出を防止するための封止部材67が配設されている。
【0046】
ところで、感光体ドラム38への現像を終った後の現像ローラ45周面上に残留する非現像部分のトナー62を、現像メモリの解消のために匡体61内で掻き落とすために必要とされる供給ローラ64の摺擦力は、トナー62の現像ローラ45への付着力によって異なる。すなわち、付着力の強いトナーに対しては強い摺擦力を必要とするが、付着力の弱いトナーに対しては弱い摺擦力で間に合う。このトナー62の現像ローラ45への付着力は、略トナー62の帯電能力によって決定されるといってよい。すなわち、摩擦帯電量の小さいものほど付着力が弱く、したがって現像ローラ45から掻き落とし易い。
【0047】
しかしながら、トナー62の摩擦帯電量は、現像時に生じ、不具合となる非画像部分への付着現像(以下、感光体かぶりという)と密接な関係を有しており、帯電量の少ないトナーほど感光体かぶりを発生させ易い。したがって、このような感光体かぶりを生じさせないためには、トナー62の摩擦帯電量を高くする必要がある。そして、トナー62の摩擦帯電量を高くすると現像ローラ45への付着力が増すから、供給ローラ64に強い摺擦力を与える必要が生じてくる。
【0048】
このような強い摺擦力で長時間の回転を繰り返すと、トナーの帯電能力の低下や流動性の低下などトナー特性の劣化を引き起こすので好ましくない。例えば、帯電量が低下すると、上述した感光体かぶりが発生し、流動性が低下すると網点印刷の現像欠落が発生する。
【0049】
このような問題を抱えている現像器44において、本発明の一実施例においては、先ず、現像ローラ45を、芯金とこの芯金を取り巻く円筒状の半導電性(10Ωcm)のウレタンゴムとで形成し、芯金には「−250V」の現像バイアスをバイアス電源68から印加する。また、供給ローラ64を、芯金とこの芯金を取り巻く円筒状の半導電性(10Ωcm)のウレタンスポンジとで構成し、芯金には「−500V」の供給バイアスをバイアス電源69から印加する。
【0050】
更に、ドクターブレード65を弾性金属板で形成し、このドクターブレード65にも上記バイアス電源69から「−500V」のドクターバイアスを印加する。そして、供給ローラ64の上流側に位置する現像部掬いシート66を導電性部材(10Ωcm)で構成して、これに0V(0ボルト)から現像ローラ45の現像バイアス電圧までの範囲のシートバイアス電圧をバイアス電源71により印加するようにしている。
【0051】
このように、現像部掬いシート66を導電性部材で構成して、これに0Vから現像ローラ45の現像バイアス電圧までの範囲のシートバイアス電圧を印加するのは、現像ローラ45上に付着するトナー62の電荷を減少させるためである。これにより、供給ローラ64による弱い摺擦力によっても、容易に現像ローラ45上に付着して戻ってきた非現像部分のトナーを掻き取ることができるようにしている。
【0052】
なお、図4に示す現像器44においては、便宜上、上記現像ローラ45への現像バイアス電圧の印加をバイアス電源68により行い、上記現像部掬いシート66へのシートバイアス電圧の印加をバイアス電源71により個別に行う例で説明しているが、電源はこのように個別に設ける必要はない。すなわち、本発明における実際の現像ユニット構成では、例えばユニット内に抵抗素子を含む分圧回路を備え、装置本体の共通バイアス電源により現像ローラ45と現像部掬いシート66の各々に分圧されたバイアス電圧を印加するようにしている。
【実施例】
【0053】
以下、本発明に係る銀色トナーおよび黒色トナーを製造し、画像形成を行った実施例について説明する。
<銀色トナーの作製>
下記の配合組成のトナー成分を合計3kgになるように計量し、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで3分間混合した。
【0054】
ポリエステル樹脂(軟化点126℃、ガラス転移点65℃) 43質量部
銀粉(AgCC−BO:平均粒径1μm 福田金属箔粉社製) 50質量部
カルナバワックス1号粉末(加藤洋行輸入品) 6質量部
帯電制御剤(LR−147:日本カーリット社製) 1質量部
混合物を二軸型押出機で、4kg/hの押出速度で溶融混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)により粗砕した。
【0055】
粗砕物を衝突板式ジェット粉砕機及び風力分級機により、粉砕分級を行い、平均粒径6.5μmの銀色着色微粒子を得た。
以上のようにして得た銀色着色微粒子1kgに対し、下記のシリカ微粒子1を15g、シリカ微粒子2を3g、下記の割合で20Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで2分間混合し、篩別して銀色トナーを作製した。
【0056】
銀色着色微粒子 100質量部
シリカ微粒子1(RY−50:日本アエロジル(株)製) 1.5質量部
シリカ微粒子2(TG−810G:キャボット(株)製) 0.3質量部
<黒色トナーの作製>
下記の配合組成のトナー成分を合計3kgになるように計量し、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで3分間混合した。
【0057】
ポリエステル樹脂(軟化点126℃、ガラス転移点65℃) 88質量部
カーボンブラック(BP−L:キャボット(株)製) 5質量部
カルナバワックス1号粉末(加藤洋行(株)輸入品) 6質量部
帯電背制御剤(LR−147:日本カーリット(株)製) 1質量部
混合物を二軸型押出機で、4kg/hの押出速度で溶融混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)により粗砕した。
【0058】
粗砕物を衝突板式ジェット粉砕機及び風力分級機により、粉砕分級を行い、平均粒径6.5μmの黒色着色微粒子を得た。
以上のようにして得た黒色着色微粒子1kgに対し、下記のシリカ微粒子1を15g、シリカ微粒子2を3g、下記の割合で20Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで2分間混合し、篩別して黒色トナーを作製した。
【0059】
黒色着色微粒子 100質量部
シリカ微粒子1(RY−50:日本アエロジル(株)製) 1.5質量部
シリカ微粒子2(TG−810G:キャボット(株)製) 0.3質量部
実施例1
銀色トナーをカシオ計算機(株)製N3500(非磁性一成分現像方式)プリンターのトナーカートリッジに充填して、図1に示す黒色シート1上に、文字情報2を印字したところ、文字情報2は銀色の金属光沢を有し、肉眼で容易に文字情報を認識することが出来た。なお、N3500プリンターの印字速度はカラーで毎分24枚である。
【0060】
この原稿をデジタル方式の複写機にて複写したところ、文字情報2は鏡面反射して、全面黒色の複写画像が得られ、肉眼での判読は不能であった。
実施例2
図2に示すように、白色の用紙11を用い、最初に所定の複写不能領域に黒色トナーを用いて黒色ベタ画像12を形成し、次いでその黒色ベタ画像12上に銀色トナーを用いて文字情報13を印字した。その結果、文字情報13は銀色の金属光沢を有し、肉眼で容易に認識することが出来た。
【0061】
この原稿をデジタル方式の複写機にて複写したところ、文字情報13は鏡面反射して、黒色ベタ画像12内では全面黒色の複写画像が得られ、肉眼での判読は不能であった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成方法を説明する図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る画像形成方法を説明する図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るタンデム型画像形成装置を示す図。
【図4】図3に示すタンデム型画像形成装置の現像器を示す図。
【符号の説明】
【0063】
30…カラー画像形成装置、31…開閉トレー、32…用紙カセット、33…上蓋、34…排紙トレー、35…用紙搬送ベルト、36…駆動ローラ、37…従動ローラ、38、38a、38b、38c、38d…感光体ドラム、39…シート転写器、41…クリーナ、42…初期化帯電ローラ、43…書込ヘッド、44a、44b、44c、44d…現像器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色用紙に金属光沢トナーを用いて、複写不能な金属光沢画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
用紙の少なくとも一部に黒色トナーでベタ画像を形成する工程、及び
前記ベタ画像内に金属光沢トナーを用いて、複写不能な金属光沢画像を形成する工程を具備することを特徴とする画像形成方法。
【請求項3】
前記金属光沢トナーは、銀色金属粉を含む銀色トナーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記銀色金属粉は、銀粉又はアルミ粉であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
それぞれ表面に静電潜像が形成され、並設された複数の像担持体と、
前記複数の像担持体上にそれぞれ所定の色トナー像を形成する複数の現像手段と、
転写材を担持搬送して前記複数の像担持体上に形成された色トナー像を前記転写材に順次転写するか、前記色トナー像を自身に一旦転写させた後に別途搬送される転写材に一括転写させるべく循環移動する転写搬送手段と
を具備するタンデム型の画像形成装置であって、
前記複数の現像手段のうちの1つが、金属光沢トナーにより、前記転写材に転写後のトナー像が複写不能である金属光沢画像を形成する現像手段であることを特徴とするタンデム型画像形成装置。
【請求項6】
それぞれ表面に静電潜像が形成され、並設された複数の像担持体と、
前記複数の像担持体上にそれぞれ所定の色トナー像を形成する複数の現像手段と、
転写材を担持搬送して前記複数の像担持体上に形成された色トナー像を前記転写材に順次転写するか、前記色トナー像を自身に一旦転写させた後に別途搬送される転写材に一括転写させるべく循環移動する転写搬送手段と
を具備するタンデム型の画像形成装置であって、
前記複数の現像手段のうちの1つが、黒トナーにより黒色ベタ画像を形成する現像手段であり、
他の現像手段のうちの1つが、金属光沢トナーにより、前記転写材に転写後のトナー画像が複写不能である金属光沢画像を、前記黒色ベタ画像内に形成する現像手段であることを特徴とするタンデム型画像形成装置。
【請求項7】
前記金属光沢トナーは、銀色金属粉を含む銀色トナーであることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記銀色金属粉は、銀粉又はアルミ粉であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−72334(P2010−72334A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239582(P2008−239582)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】