説明

画像形成方法及び画像形成装置

【課題】小粒径、高円形度のトナーを用いても、使用初期からクリーニング不良等の画像不良なく安定した画像を形成する。
【解決手段】クリーニングブレードに対する、ヘイドン摩擦試験機により測定した初期平均動摩擦係数が0.3以下であり、平均動摩擦係数推移の評価試験で測定した平均動摩擦係数と感光体の回転数との関係を表わすグラフ曲線が局所的にピークを有する電子写真感光体を用い、式(1)、(2)を満たすまで、感光体の画像形成領域全面に帯電、露光および現像の工程を行った後、転写工程を実施することなく、クリーニング工程を行い、その後、帯電、露光、現像、転写およびクリーニングからなる一連の工程を実施する画像形成方法。式(1):μn>μn+50 式(2):μn−μn+50<0.02

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式を用いて、過酷な環境下で使用しても、高品質な画像を長期にわたって提供できる画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真装置は、複写機としてばかりでなく、近年需要の伸びの著しいコンピュータやワードプロセッサの出力手段であるプリンタとしても、利用されている。これらは従来のオフィスユースに加え、パーソナルユースが増大したため、低コスト、省エネ、メンテナンスフリーといった経済性が重視される。
さらには、パーソナルユースの増大により、使用される環境差も大きくなっており、より広範囲の使用環境を想定した検討が必要となっている。
【0003】
このような電子写真装置に代表される画像形成装置においては、一般に、帯電器、露光器および現像器等によって感光体の表面にトナー像を形成し、このトナー像を紙等の記録材に転写する。トナー像転写後の記録材は、定着器によって表面にトナー像が定着された後、画像形成装置本体の外部に排出される。一方、トナー像転写後の感光体は、記録材に転写されないで表面に残ったトナー(転写残トナー)がクリーニング装置のクリーニング部材によって除去される。このクリーニング部材としては、例えば、ブレード状(クリーニングブレード)、ブラシ状(クリーニングブラシ)又はローラ状(クリーニングローラ)に形成された部材が使用される。いずれのクリーニング部材も感光体表面に所定の圧力で当接され、これにより、感光体表面を摺擦することで、感光体表面の転写残トナーを掻き取るようにしている。
【0004】
なかでも、ウレタンゴムなどの弾性材料からなるブレードによって転写残トナーを掻き落とすクリーニングブレードが、構成が簡単でコンパクトで低コストであり、しかもトナー除去機能も優れているため広く実用化されている。クリーニングブレードのゴム材料としては、高硬度で弾性に富み、耐磨耗性、機械的強度、耐油性及び耐オゾン性に優れているウレタンゴムが一般的に用いられている。
【0005】
また、使用初期の感光体においては表面が非常に均一でありクリーニングブレードとの密着性が高く、使用初期の感光体表面の潤滑性をある程度高くする必要があるために、潤滑性付与化合物を感光体に添加することが一般的に行われている。
【0006】
一般に、電子写真方式の画像形成装置においては、感光体のクリーニングに際し、クリーニング部材と感光体表面とは、所定の相対速度で相対移動することになる。このときの両者間の摩擦特性は、クリーニング性の良否に係る重要な特性である。
【0007】
クリーニング部材と感光体表面との間に作用する摩擦力は、低すぎるとクリーニング不良の要因となり、逆に高すぎるとクリーニング部材もしくは感光体の損傷又はクリーニング部材のめくれもしくは欠けといった故障の要因となる。また、不適正な摩擦力の領域で感光体およびクリーニング部材を使用していると転写残トナー等の除去が不十分となり、転写残トナーが感光体表面に固着して、画像欠陥を引き起こす不都合もある。
【0008】
そこで、従来より、クリーニング不良改善のため、摩擦力に着目した提案がなされている。 例えば、感光体としての像担持体とクリーニングブレードの摩擦係数を規定した提案(特許文献1、2参照)、および安定した摩擦係数保持のために潤滑剤塗布機構を画像形成装置に設ける提案(特許文献3、4参照)がある。
また、使用初期における感光体のクリーニング不良改善のために感光体の初期の潤滑性を極めて高くする方法が提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−108300公報
【特許文献2】特開2007−178619公報
【特許文献3】特開2005−024953公報
【特許文献4】特開2006−251751公報
【特許文献5】特開2002−082468公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、画質向上のために、トナー粒径の小径化さらにはトナー粒子の高円形化が顕著であるが、トナーの粒径の小径化および高円形化が進むにつれ、感光体の表面のクリーニング不良、ひいては縦スジ状の画像不良が顕在化しやすい。
特に使用初期においては、感光体の表面が非常に均一でありクリーニングブレードとの密着性が高いため、クリーニングブレードのメクレ又はブレードのビビリによりクリーニング不良がより発生しやすい状態となる。
【0011】
上記のような方法では、しかしながら、このような初期の潤滑性を高めた感光体を用いた場合、初期使用においては問題が解決されるものの、ある特定の使用時期において感光体のクリーニング不良が発生しやすい状態になることが明らかとなった。
さらには、感光体を過酷な使用環境下において使用した場合、その問題が特に顕著に発生することが本発明者らによって明らかとなった。
【0012】
従って、本発明の目的は、小粒径かつ高円形度のトナーを用い、過酷な環境下で使用しても、感光体の使用初期からクリーニング不良、ひいては画像不良がなく安定した画像を提供できる画像形成方法および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の前記の目的は、次に述べる画像形成方法により達成される。
【0014】
本発明は、電子写真感光体を用い、該電子写真感光体に対して帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程およびクリーニングブレードによるクリーニング工程からなる一連の工程を行う画像形成方法であって、
該トナーには外添処理が施されており、
該電子写真感光体は、該クリーニングブレードに対する、ヘイドン摩擦試験機により測定した初期平均動摩擦係数が0.3以下であり、また、
(a)帯電工程、印字率2%相当の露光工程および現像工程を行い、(b)その後、転写工程を実施することなく、クリーニング工程を行い、該電子写真感光体を25回転させるごとに該一連の工程を中断し、該電子写真感光体のクリーニングブレードに対する平均動摩擦係数を、ヘイドン摩擦試験機を用いて測定して平均動摩擦係数の推移を評価する平均動摩擦係数推移の評価試験において、
測定した平均動摩擦係数をy軸、電子写真感光体の回転数をx軸としてグラフにプロットした場合、得られるグラフ曲線が局所的にピークを有するものであり、
電子写真感光体の回転数がn回転時と電子写真感光体の回転数がn+50回転時の平均動摩擦係数をそれぞれμn、μn+50としたとき、式(1)、(2)を満たすまで、電子写真感光体の画像形成領域全面に帯電工程、露光工程および現像工程を行った後、転写工程を実施することなく、クリーニング工程を行い、その後、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程およびクリーニング工程からなる一連の工程を実施することを特徴とする画像形成方法を提供する。
式(1): μn > μn+50
式(2): μn − μn+50 < 0.02
【0015】
また、本発明は、前記感光体とクリーニングブレードとの動摩擦係数推移の情報を基に、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程およびクリーニング工程の一連の工程からなる画像形成を行う時期を決定することを特徴とする電子写真装置も提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、小粒径かつ高円形度のトナーを用い、感光体を過酷な環境下で使用しても、使用初期からクリーニング不良等の画像不良がなく安定した画像を提供できる画像形成方法及び画像形成装置を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例1で用いた感光体とトナーで画像データの全画素数に占める前記印字画素の数の比率である印字率2%相当の露光、現像工程を行った後、転写材に転写することなく、感光体上のトナーをクリーニングする動作を行った際、その直後の該感光体とクリーニングブレードの母線方向のヘイドン摩擦試験機による平均動摩擦係数をy軸、ドラム回転数をx軸としてプロットした図である。
【図2】図2は、本発明で用いる、感光体の動摩擦係数を測定するためのヘイドン摩擦試験機の構成を示す概略図である。
【図3】図3は、ヘイドン摩擦試験機のクリーニングブレード部(303)付近の拡大図である。
【図4】図4は、本発明の画像形成装置の概略構成図である。
【図5】図5は、本発明の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジの一部を示す拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の全体の概要を説明する。
本発明者らは、初期感光体表面を高潤滑にした場合、感光体(以下、「感光ドラム」ということもある)の回転数をx軸、感光体表面とクリーニングブレードとの平均動摩擦係数をy軸として、両者の関係をグラフにプロットした場合、得られるグラフ曲線は、図1に示すように局所的にピークを有する平均動摩擦係数推移を示すことが分かった。また、この推移に対して詳しく調べたところ、平均動摩擦係数の変化が大きいところで感光体のクリーニング不良が発生しやすく、平均動摩擦係数の変化がある一定の値以下になるとクリーニング不良が発生しなくなることを突き止めた。
【0019】
この原因についてはすべて明らかになってはいないが、おおよそ次のように考えている。
使用初期においては感光体表面の高潤滑付与物質の存在により低動摩擦係数を示すが、感光体表面がクリーニングブレード又は転写材もしくは接触帯電部材等の接触部材で徐々に摺擦されると平均動摩擦係数は上昇する。
【0020】
一方で、感光体を使用していくにつれ、感光体の表面は、トナーの付着によりトナーに外添されたシリカ、チタニア等の外添剤で徐々に覆われ、その結果外添剤が感光体表面とクリーニングブレードとの間に入り込み、コロの役割を果たすため、平均動摩擦係数は減少していき、飽和状態になると一定の平均動摩擦係数に収束する。
【0021】
従って、感光体表面とクリーニングブレードとの平均動摩擦係数の推移は高潤滑付与物質の消失による平均動摩擦係数の上昇と感光体表面への外添剤付着による平均動摩擦係数の減少との総和によって決定されるといえる。
【0022】
この高潤滑付与物質の消失速度と外添剤の付着速度との違いが、感光体表面のクリーニングブレードに対する平均動摩擦係数の推移にピークを生じさせる原因と考えられる。
【0023】
また、この平均動摩擦係数の推移において平均動摩擦係数の変化が大きいところでは、感光体表面におけるクリーニングブレードの挙動が不安定化し、クリーニング不良につながると推測され、また、平均動摩擦係数の変化が小さいと感光体表面におけるクリーニングブレードの挙動が安定し、良好なクリーニング効果が得られると考えられる。
【0024】
本発明は、上述の点に鑑み、電子写真感光体を用い、該電子写真感光体に対して帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程およびクリーニングブレードによるクリーニング工程からなる一連の工程を行う画像形成方法であって、
該トナーには外添処理が施されており、
該電子写真感光体は、該クリーニングブレードに対する、ヘイドン摩擦試験機により測定した初期平均動摩擦係数が0.3以下であり、また、
(a)帯電工程、印字率2%相当の露光工程および現像工程を行い、(b)その後、転写工程を実施することなく、クリーニング工程を行い、該電子写真感光体を25回転させるごとに該一連の工程を中断し、該電子写真感光体のクリーニングブレードに対する平均動摩擦係数を、ヘイドン摩擦試験機を用いて測定して平均動摩擦係数の推移を評価する平均動摩擦係数推移の評価試験において、
測定した平均動摩擦係数をy軸、電子写真感光体の回転数をx軸としてグラフにプロットした場合、得られるグラフ曲線が局所的にピークを有するものであり、
電子写真感光体の回転数がn回転時と電子写真感光体の回転数がn+50回転時の平均動摩擦係数をそれぞれμn、μn+50としたとき、式(1)、(2)を満たすまで、電子写真感光体の画像形成領域全面に帯電工程、露光工程および現像工程を行った後、転写工程を実施することなく、クリーニング工程を行い、その後、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程およびクリーニング工程からなる一連の工程を実施することを特徴とする画像形成方法を提供する。この画像形成方法により、使用初期からクリーニング不良等の画像不良なく安定した画像を提供できる。
式(1): μn > μn+50
式(2): μn - μn+50 < 0.02
【0025】
次に、感光体とクリーニングブレードとの母線方向の平均動摩擦係数の測定方法について、図2および図3を参照して説明する。
【0026】
本発明において、平均動摩擦係数については、23℃/55%RH環境下で、ヘイドン摩擦試験機(ヘイドン表面性測定機TYPE−14(新東科学(株)製)を平面状以外の被測定物も測定できるように改造した改造機)を用いて測定した。この測定機の概略構成を図2に示す。
【0027】
平均動摩擦係数の測定時に被測定物に当接させる部材としては、本発明の画像形成に用いるクリーニングブレードであり、寸法は幅5mm×長さ10mmに切断して用いる。
【0028】
クリーニングブレード303は、図3に示すように、厚さ方向に上部ホルダー311と下部ホルダー312との間に挟み、長さ方向にホルダーからの長さ8mmを自由長となるように固定する。被測定物302とクリーニングブレード303との当接角は22.5°に設定する。313はネジである。
【0029】
次に、図2に示すように、被測定物302とクリーニングブレード303とがちょうど接触する位置で平衡を取り、分銅306を皿305に載せて分銅306の質量100gを用いて荷重をかける。そして、台301に載せた被測定物302を図3に示す矢印方向に100mm/minの速度で移動させる。
【0030】
次に、被測定物302に対してクリーニングブレード303が通過する動トルクを、横アーム304を介した荷重変換器309の機構により摩擦力に変換して読み取る。
平均動摩擦係数は、一般的に、下記式(A)から求まる。
平均動摩擦係数=摩擦力÷荷重 (A)
なお、図2および図3中の符号をまとめると、301は被測定物302を載せる台、302は被測定物、303はクリーニングブレード、304は横アーム、305は分銅306を載せる皿、306は分銅、307は縦アーム、308はバランス分銅、309は荷重変換器、310は台移動装置、311は上部ホルダー、312は下部ホルダー、313はネジである。
【0031】
次に、感光体について説明する。
本発明に使用する感光体は特に制限はないが、初期感光体とクリーニングブレードとの母線方向のヘイドン摩擦試験機により測定した平均動摩擦係数が0.3以下である。初期の平均動摩擦係数が0.3より大きくなると初期感光体の表面が非常に均一であるため、感光体表面とクリーニングブレードとの密着性が非常に高く、ブレードメクレまたはブレード鳴き等の問題が発生しやすい。
【0032】
本発明では、感光体の最表層に高潤滑付与物質を添加することにより高潤滑な感光体表面を形成するのが好ましい。高潤滑付与物質としては、シリコーンオイルおよびシロキサン変性樹脂等、公知のものが使用できるが、中でもシロキサン変性樹脂を用いるとより高潤滑な感光体表面が形成でき、更に好ましくは粘度平均分子量が10000以下のシロキサン樹脂を用いると更なる高潤滑性の感光体表面が得られる。
【0033】
次に、トナーについて説明する。
本発明におけるトナーは特に制限はないが、外添処理が施されている。外添処理とは、例えば耐久濃度変動、カブリ等の弊害をなくすためにトナー自体の帯電量を一定の範囲に保つ効果を有するために無機微粉体(外添剤と言うこともある)を添加することであり、更には感光体とトナーとのクリーニング性を高める効果も有している。また、遊離外添剤とは、現像器内において、無機微粉体がトナー粒子に埋め込まれておらず、トナー粒子やキャリアに非常に弱い力で付着しているものや、現像剤中、単独で存在しているものを指す。
トナーは、無機微粉体を含有しており、前記無機微粉体の一次粒径が30nm以上300nm以下であり、前記無機微粉体のトナー粒子からの遊離率が10.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。更に好ましくは一次粒径が1nm以上50nm以下の無機微粉体を更に合わせて含有させると、トナー流動性がより向上し前記した、一次粒径が30nm以上300nm以下の無機微粉体の遊離率を制御しやすくなる。
前記無機微粉体の遊離率が50.0質量%を超えると、感光体表面への無機微粉体の付着量が過剰に多くなり、平均動摩擦係数は早期に安定化するが、画像流れまたは帯電不良といった画像不良または画像不良の原因が発生しやすい。
【0034】
また、前記無機微粉体の遊離率が10.0質量%を下回ると、感光体表面への無機微粉体の付着量が少なすぎ、平均動摩擦係数が高くなりすぎて、ブレードメクレまたはブレード鳴き等の問題が発生しやすい。
【0035】
次に、無機微粉体の遊離率について説明する。
本発明における無機微粉体の遊離率は、添加した無機微粉体のそれぞれの遊離率の総和で表される。前記遊離率を測定する方法は、トナー粒子に対して遊離している無機微粒子を検出することができる方法であれば特に限定されないが、トナー粒子の炭素原子に対する無機微粒子の遊離率を測定する方法が好ましい。
【0036】
本発明における無機微粉体の遊離率の算出は以下のように行った。
サンプルの準備
遊離前トナー:後述する実施例で作製した各種トナーをそのまま用いた。
遊離後トナー:50ml容量のバイアルに「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤)の2質量%水溶液20gを秤量し、トナー1gと混合する。この混合液をいわき産業社製「KM Shaker」(model: V.SX)にセットし、speedを50に設定して30秒間振とうする。その後、混合液を遠心分離機にて処理し(1000rpmにて5分間)、トナーと水溶液とを分離する。上澄液を分離し、沈殿しているトナーを真空乾燥することで乾固させる。
外添剤除去トナー:外添剤除去トナーとは、シリカ、チタニア、チタン酸ストロンチウムなどの外添剤を除いた状態を意味し、トナー粒子とみなす事ができる。サンプル調製方法はイソプロパノールの如きトナーを溶解しない溶媒中にトナーを入れ、超音波洗浄機にて10分振動を与える。その後、遠心分離機(1000rpmにて5分間)にて、トナーと溶液を分離する。上澄液を分離し、沈殿しているトナーを真空乾燥することで乾固させる。
また、シリカ、チタニア、チタン酸ストロンチウムなどの外添剤の存在量については、トナーから外添剤を取り除いた後、トナー粒子に対して蛍光X線分析やプラズマ発光分析(ICP)などの公知の分析方法を用いてSi、Ti等の定量を行うことが出来る。
【0037】
後述の実施例において、トナー粒子中の各元素の測定は、次に述べる蛍光X線分析を用いて行い、その詳細はJIS−KO119に準ずる。
(i)使用装置について
蛍光X線分析装置3080(理学電気(株))
試料プレス成型機MAEKAWA Testing Machine(MFG Co,LTD製)
(ii)測定条件について
測定電位、電圧 50kV、50〜70mA
2θ角度 a
結晶板 LiF
測定時間 60秒
(iii)トナー粒子からの無機微粉体の遊離率の算出方法について
まず、上記方法にて遊離前トナー、遊離後トナーおよび外添剤除去トナーの元素の強度を求める。その後、下記式に基づき遊離率を算出する。
遊離率=100−(遊離後トナーの元素の強度−外添剤除去トナーの元素の強度)/(遊離前トナーの元素の強度−外添剤除去トナーの元素の強度)×100
【0038】
次に、本発明の画像形成装置の一例について図4および図5を参照して説明する。
図4は画像形成装置の概略構成図である。この画像形成装置は、電子写真方式かつプロセスカートリッジ着脱式のレーザビームプリンタである。このプリンタにはパソコン・画像読取装置等の外部ホスト装置(不図示)が接続してある。そして、プリンタはホスト装置からコントローラ部(不図示)に入力する画像情報をプリントする。コントローラ部はホスト装置と信号の授受、さらには、作像機器と信号の授受をし、作像シーケンス制御を司る。
【0039】
図4において、1は画像形成装置本体としてのプリンタ本体、2はプリンタ本体1に対して着脱可能なプロセスカートリッジである。プロセスカートリッジ2についての詳細は図5を用いて後述する。
【0040】
図5において、20は像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」と記す)である。感光ドラム20はプリントスタート信号に基づいて矢印R1の時計方向に120.0mm/sの周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。感光ドラム20には帯電バイアスが印加される帯電部材(帯電ローラ)30を接触させてあり、帯電ローラ30は感光ドラム20に従動して矢印R2方向に従動回転する。回転する感光ドラム20の周面がこの帯電ローラ30により所定の極性・電位に一様に帯電される。本実施例では負の所定電位に帯電される。この帯電ローラ30については後述する。
【0041】
図4に示すように、感光ドラムの帯電面に対して、露光手段である露光装置(レーザスキャナユニット)3により画像情報のレーザ走査露光Lがなされる。図5に示すように、露光装置3から出力されたレーザ光Lはカートリッジ2の上面の露光窓部53からカートリッジ内に入光して感光ドラム20の面を像露光する。露光装置3はホスト装置からコントローラ部へ入力された画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調(オン/オフ変換)されたレーザ光を出力して、感光ドラム20の一様帯電面を走査露光する。レーザ光が照射された感光ドラム面部分(露光明部)の電位が減衰して画像情報に対応した静電潜像が感光ドラム面に形成される。本例は画像情報部を露光するイメージ露光方式である。
【0042】
その静電潜像は、現像装置40の現像剤担持体としての現像スリーブ(現像ローラ)41上の現像剤によって現像される。本例では現像装置40は、現像剤として磁性一成分トナー(以下、「トナー」と記す)を用いたジャンピング現像方式である。また、静電潜像の露光明部をネガトナーで現像する反転現像方式である。
【0043】
一方、所定の制御タイミングにて、シートトレイ部4のピックアップローラ5が駆動されて、シートトレイ部4に積載収納されている記録媒体であるシート材(用紙)Pが1枚分離給送される。シート材Pは、給紙ローラ・搬送ローラ(不図示)を含む搬送路を通り、転写ガイド6を経由して、感光ドラム20と転写用帯電ローラ7との当接部である転写ニップ部に所定の制御タイミングにて導入される。そして、シート材Pが転写ニップ部を挟持搬送されていく過程において、転写用帯電ローラ7にトナーと逆極性の転写バイアスが印加されて、感光ドラム20面のトナー像がシート材Pの面に順次に静電転写されていく。
【0044】
転写ニップ部を出たシート材は、感光ドラム20面から分離されて搬送ガイド8に沿って定着装置9の定着ローラ9aと加圧ローラ9bの当接部である定着ニップ部へ導入される。シート材分離後の感光ドラム面はクリーニング装置50のクリーニングブレード50aにより転写残トナー等の残留汚染物の除去を受けて清掃され、再び、帯電から始まる作像プロセスに繰り返して供される。
【0045】
定着装置9に導入されたシート材Pは定着ニップ部を挟持搬送されていく過程において、トナー像の加熱・加圧定着処理を受ける。定着装置9を出たシート材は搬送ローラを含む上行搬送路を通り、排紙ローラ10により排紙トレイ11に排紙される。
【0046】
図4に記載の本例のプリンタにおいてプロセスカートリッジ2について図5を用いて説明する。図5はプロセスカートリッジ2の部分の拡大横断面図である。図5に記載する通り、プロセスカートリッジ2は、像担持体である感光ドラム20と、帯電ローラ30と、現像装置40と、クリーニング装置50と、の4種のプロセス装置を一体的にカートリッジ化し、プリンタ本体1に対し着脱可能としている。
【0047】
カートリッジ2は、プリンタ本体1の開閉部(不図示)を開いてプリンタ本体1内を開放して、ガイド部(不図示)に案内されて着脱される。カートリッジ2がプリンタ本体1に装着されたとき、カートリッジ2の上側には露光装置3が位置し、下側にはシートトレイ部4が位置している。
【0048】
感光ドラム20と帯電ローラ30はクリーニング装置50の枠体51に取り付けて配設してある。クリーニング装置50のクリーニングブレード50aは弾性ゴムブレードからなっており、この感光ドラム20と、帯電ローラ30と、クリーニング装置50とでクリーニングユニットを構成させている。現像装置40は、開口部に現像スリーブ41を回転自在に配設した現像容器(現像室および現像剤供給室を含む)44と、トナーTを収納した現像剤収納室(以下、トナー室と記す)45とを結合させて、クリーニングユニットとは別体の現像ユニットとして構成させている。
次に、本発明における、前記帯電工程、露光工程および現像工程を行った後、転写工程を実施することなく、クリーニングする動作中の現像されたトナー量について説明する。
本発明における、上述のトナー量は、電子写真感光体の長手方向に対して均一であることが好ましい。感光体表面とクリーニングブレードとの動摩擦係数変化は、前述の通り、感光体表面にトナー中の外添剤の一部が付着する為であると推測され、その変化量は、感光体表面に付着する外添剤量に起因すると推測されるため、トナー量が電子写真感光体の長手方向に対して均一であることは、より一層の、クリーニング不良などの画像欠陥の無い安定した画像を得ることができる。
次に、前記帯電工程、露光工程および現像工程を行った後、転写工程を実施することなく、感光体上のトナーをクリーニングする動作中の電子写真感光体上の印字率について説明する。
本発明における上述の、感光体の印字率は、25%以上であることが好ましい。前述の通り、感光体表面とクリーニングブレードとの平均動摩擦係数推移は、感光体表面に付着する外添剤量に起因すると推測されるため、感光体の印字率を25%以上にすることにより、画像出力前工程の感光体の回転数nを少なくすることでき、その結果、画像出力前工程を短縮することができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
[感光体1の作製]
押し出し・引き抜き工程により製造された、長さ246.0mm、直径24mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)を支持体とした。
次に、導電性粒子としての酸素欠損型SnOを被覆したTiO粒子(粉体抵抗率100Ω・cm、SnOの被覆率(質量比率)は40%)55部、結着樹脂としてのフェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分60%)30部、溶剤としてのメトキシプロパノール30部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散して、分散液を調製した。
この分散液に、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、平均粒径2μm)3.5部、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)0.001部を添加して攪拌し、導電層用塗布液を調製した。
この導電層用塗布液を、23℃、60%RH環境下で、支持体上に浸漬塗布し、これを30分間140℃で乾燥・熱硬化させることによって、平均膜厚30μmの導電層を形成した。
【0051】
次に、導電層上に、N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学産業(株)製)4.5部および共重合ナイロン樹脂(アミランCM8000、東レ(株)製)1.5部を、メタノール64部/n−ブタノール30部の混合溶媒に溶解して得られたバリア層用塗布液を浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.6μmのバリア層を形成した。
【0052】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部およびシクロヘキサノン250部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で1時間分散し、次に、酢酸エチル250部を加えて電荷発生層用塗布液を調製した。
この電荷発生層用塗布液を、バリア層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.16μmの電荷発生層を形成した。
【0053】
次に、下記構造式で示されるアミン化合物10部、
【化1】

ポリカーボネート樹脂(商品名:Z200、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部および高潤滑付与物質として下記式
【化2】

で示されるポリカーボネート樹脂で、かつ、下記式
【化3】

で示される末端構造を有するポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:20000)0.5部をジメトキシメタン30部/クロロベンゼン70部の混合溶媒に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。
この電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、これを30分間110℃で乾燥させることによって、膜厚が11μmの電荷輸送層を形成した。
【0054】
このようにして、支持体上に導電層、バリア層、電荷発生層および電荷輸送層を形成してなる電子写真感光体を作製した。
また、このときの初期感光体の平均動摩擦係数は0.05であった。
【0055】
[感光体2の作製]
感光体1の作製における電荷輸送層用塗布液を調製する工程において高潤滑付与物質の粘度平均分子量を9600とした以外は感光体1の作製条件と同様の条件で感光体2を作製した。
また、このときの初期感光体の平均動摩擦係数は0.06であった。
【0056】
[感光体3の作製]
感光体1の作製における電荷輸送層用塗布液を調整する工程において高潤滑付与物質をジメチルシリコンオイル(商品名:KF96−1000CS、信越化学工業(株)製)0.001部に換えて添加した以外は感光体1の作製条件と同様の条件で感光体3を作製した。
また、このときの初期感光体の平均動摩擦係数は0.48であった。
【0057】
[感光体4の作製]
感光体1の作製における電荷輸送層用塗布液を調整する工程において高潤滑付与物質を添加しない以外は感光体1の作製条件と同様の条件で感光体4を作製した。
また、このときの初期感光体の平均動摩擦係数は1.13であった。
【0058】
[トナー1の作製]
<磁性酸化鉄の製造>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対して1.0〜1.1当量の苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液をpH9に維持しながら、空気を吹き込み、80〜90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9〜1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8に維持して、空気を吹込みながら酸化反応を進め、酸化反応の終期にpHを約6に調整し、酸化反応を終了した。生成した酸化鉄粒子を洗浄、濾過して一旦取り出し、乾燥せずに別の水中に再分散させた後、再分散液のpHを調整し、十分撹拌しながらシランカップリング剤[n‐C1021Si(OCH33]を磁性酸化鉄100部に対し2部添加し、十分撹拌した。生成した疎水性酸化鉄粒子を常法により洗浄、濾過、乾燥し、次いで凝集している粒子を解砕処理し、疎水性の磁性酸化鉄を得た。
【0059】
<磁性トナーの製造>
イオン交換水709部に0.1mol/リットル−Na3PO4水溶液451部を投入し60℃に加温した後、1.0mol/リットル−CaCl2水溶液67.7部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
一方、下記の処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合した。
スチレン 78部
n−ブチルアクリレート 22部
飽和ポリエステル樹脂(酸価8、Mp12000) 5部
負荷電性制御剤 2部
(T−77;モノアゾ染料系のFe化合物(保土谷化学工業社製))
疎水性の磁性酸化鉄 80部
ジビニルベンゼン 0.5部
この単量体組成物を60℃に加温し、そこにエステルワックス(mp.70℃)15部を混合溶解し、これに重合開始剤ブチルパーオキサイド2部を溶解して重合性単量体系を得た。
前記水系媒体中に上記重合性単量体系を投入し、60℃、N雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて10,000rpmで15分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、80℃で8時間反応させた。反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えてCa3(PO42を溶解し、濾過、水洗、乾燥してトナー粒子を得た。
【0060】
<ペロブスカイト型微粒子の製造例>
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得られた含水酸化チタンを純水で洗浄した。さらにNaOHを添加して洗浄した。次に該含水酸化チタンスラリーに塩酸を添加してスラリーのpHを1.0としてチタニアゾル分散液を得た。該チタニアゾル分散液にNaOHを添加し、pHを6.0として純水を用いてデカンテーションによって洗浄した。
以上のようにして得られた含水率90%のメタチタン酸160gを窒素置換した反応容器に入れ、Sr(OH)2・8HO58.4gを加え、さらに蒸留水を加えてスラリーに調整した。窒素雰囲気中で該スラリーを70℃まで12℃/Hで昇温し、70℃で1時間反応を行った。反応後40℃まで冷却し、窒素雰囲気下において上澄み液を除去し、2.5リットルの純水を加えてデカンテーションを行う操作を2回繰り返して洗浄を行った後、更に1.5リットルの純水を加えたスラリーに、固形分に対して2wt%のステアリン酸亜鉛を添加して攪拌した後ヌッチェで濾過を行った。得られたケーキを110℃の大気中で4時間乾燥した。
得られたチタン酸ストロンチウムは、一次粒子の平均径が110nmであった。また立方体状の粒子形状及び/又は直方体状の粒子形状を有する粒子の含有率は83個数%、帯電量の絶対値は15mC/Kgであった。
このペロブスカイト型微粒子0.3部と先に得たトナー粒子100部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で周速38.9m/sで10分間混合したのち、ヘキサメチルジシラザン処理した後シリコーンオイルで処理した、一次粒径が5nmの疎水性シリカ微粉体1.5部を添加し更に4分間混合して、磁性トナー1(重量平均粒径6.0μm)を製造した。
このトナーの無機微粉体遊離率を測定したところ、遊離率は4.2%であった。
【0061】
[トナー2の製造]
トナー1の製造においてペロブスカイト型微粒子とトナー粒子を混合する時間を4分間に変えた以外はトナー1の製造と同様に製造した。
このトナーの無機微粉体遊離率を測定したところ、遊離率は10.3%であった。
【0062】
[トナー3の製造]
トナー1の製造においてペロブスカイト型微粒子とトナー粒子を混合する時間を2分間に変えた以外はトナー1の製造と同様に製造した。
このトナーの無機微粉体遊離率を測定したところ、遊離率は20.5%であった。
【0063】
[トナー4の製造]
トナー1の製造においてペロブスカイト型微粒子とトナー粒子を混合する時間を1分間に変えた以外はトナー1の製造と同様に製造した。
このトナーの無機微粉体遊離率を測定したところ、遊離率は49.5%であった。
【0064】
[トナー5の製造]
トナー1の製造においてペロブスカイト型微粒子とトナー粒子を混合する時間を30秒に変えた以外はトナー1の製造と同様に製造した。
このトナーの無機微粉体遊離率を測定したところ、遊離率は70.8%であった。
【0065】
[平均動摩擦係数推移の測定(評価試験)]
評価装置として、ヒューレットパッカード製レーザービームプリンター(商品名HP LaserJet P1006)を改造して転写工程を取り除いた装置を用いた。
HP LaserJet P1006のプロセスカートリッジに、先に作製した感光体を装着し、トナー容器に先に製造したトナーを充填して評価を行った。
摩擦係数推移の評価は、画像データの全画素数に占める印字画素の数の比率である印字率2%の文字画像を転写工程を経ることなく連続してプリント操作 (具体的には、帯電−露光−現像−クリーニングからなる一連の工程) を行い、回転数をモニタしながら感光体25回転ごとに装置を止めて(上記一連の工程を中断して)その時の感光体とプロセスカートリッジに搭載された未使用のクリーニングブレードとの平均動摩擦係数を測定し、平均動摩擦係数の推移から、局所的な平均動摩擦係数のピークの有無の確認を行った。
[画像出力前工程の感光体の回転数nの算出]
【0066】
上記改造機を用いて各々の実施例に示した感光体とトナーを用いたプロセスカートリッジを搭載し、各々の実施例に示した画像情報とトナー濃度で、転写工程を経ることなく連続してプリント操作を行い、感光体の回転数をモニタしながら感光体25回転ごとに装置を止めてその時の感光体とプロセスカートリッジに搭載された未使用のクリーニングブレードとの平均動摩擦係数を測定し、平均動摩擦係数の推移から、式(1)、(2)を満たすnを求めた。
式(1): μn > μn+50
式(2): μn − μn+50 < 0.02
(上記式中、:μnは感光体の回転数がn回転の時の平均動摩擦係数を、μn+50は感光体の回転数がn+50回転の時の平均動摩擦係数を示す。)
【0067】
[画像評価]
上記改造機を用いて各々の実施例に示した感光体とトナーを用いたプロセスカートリッジを搭載し、各々の実施例に示した画像情報とトナー濃度で、転写工程を経ることなく連続してプリント操作を行い、各々の実施例に示した回転数まで連続してプリント操作を行い、感光体上のトナーをクリーニングする動作を行ったのち、別のヒューレットパッカード製レーザービームプリンター(HP LaserJet P1006(転写工程あり)にプロセスカートリッジに装着し、印字率2%の文字画像をレター紙にて7秒毎に1枚出力する間欠モードでプリント操作を行い、1000枚の画像出力を行った。
尚、評価環境は0℃環境下で行った。
この出力画像を用いて、1枚づつ画像不良について評価を行った。
なお、画像の評価の基準は以下のとおりである。
クリーニング不良に起因する縦スジ状の画像不良に関して、
A:画像不良が全くなし、
B:最大で1cm未満の画像不良が観測される、
C:最大で1cm以上5cm未満の画像不良が観測される、
D:最大で5cm以上10cm未満の画像不良が観測される、
E:最大で10cm以上の画像不良が観測される。
また、その他不具合を含めた実使用上の評価基準として、
A:実使用上全く問題なし、
B:不良がわずかに確認されるが実使用上問題なし、
C:不良が確認され、実使用にやや不具合が予想される、
D:不良が多く確認され実使用できない、
E:実使用不可とした。
【0068】
[実施例1]
感光体1とトナー1を用いたプロセスカートリッジを用いてピークの有無を調べたところ、ピークを有することが確認された。
また、画像出力前工程の感光体の回転数nの算出において、感光体の長手方向に均一な、印字率10%の画像情報を用いてnを算出したところn=350であった。
そこで画像出力前工程感光体の回転数を350として(すなわち、画像形成を行う時期を感光体の回転数が350になった後として)評価した。結果を表1に示す。
【0069】
[実施例2]
実施例1における画像出力前工程の感光体の回転数を400とした以外は実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0070】
[実施例3]
実施例1のプロセスカートリッジを用いて、画像出力前工程において、ドラム長手方向に対して印字率を1%〜10%まで暫時変化させた画像情報を用いてnを算出したところn=450であった。
そこで画像出力前工程の感光体の回転数を450として評価した。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例4]
実施例1のプロセスカートリッジを用いて、画像出力前工程において、ドラム長手方向に均一な、印字率30%の画像情報を用いてnを算出したところn=225であった。
そこで画像出力前工程の感光体の回転数を225として評価した。結果を表1に示す。
【0072】
[実施例5]
実施例1における感光体1を感光体2に換えたプロセスカートリッジを用いてピークの有無を調べたところ、ピークを有することが確認された。
また、実施例1と同じ画像情報を用いてnを算出したところ、n=250であった。
そこで画像出力前工程の感光体の回転数を250として評価した。結果を表1に示す。
【0073】
[実施例6]
実施例1におけるトナー1をトナー2に換えたプロセスカートリッジを用いてピークの有無を調べたところ、ピークを有することが確認された。
また、実施例1と同じ画像情報を用いてnを算出したところ、n=300であった。
そこで画像出力前工程の感光体の回転数を300として評価した。結果を表1に示す。
【0074】
[実施例7]
実施例1におけるトナー1をトナー3に換えたプロセスカートリッジを用いてピークの有無を調べたところ、ピークを有することが確認された。
また、実施例1と同じ画像情報を用いてnを算出したところ、n=225であった。
そこで画像出力前工程の感光体の回転数を225として評価した。結果を表1に示す。
【0075】
[実施例8]
実施例1におけるトナー1をトナー4に換えたプロセスカートリッジを用いてピークの有無を調べたところ、ピークを有することが確認された。
また、実施例1と同じ画像情報を用いてnを算出したところ、n=150であった。
そこで画像出力前工程の感光体の回転数を150として評価した。結果を表1に示す。
【0076】
[実施例9]
実施例1におけるトナー1をトナー5に換えたプロセスカートリッジを用いてピークの有無を調べたところ、ピークを有することが確認された。
また、実施例1と同じ画像情報を用いてnを算出したところ、n=125であった。
そこで画像出力前工程の感光体の回転数を125として評価した。結果を表1に示す。
【0077】
[実施例10]
実施例1における感光体1を感光体2にし、トナー1をトナー2に換えたプロセスカートリッジを用いてピークの有無を調べたところ、ピークを有することが確認された。
また、実施例4と同じ画像情報を用いてnを算出したところ、n=75であった。
そこで画像出力前工程の感光体の回転数を75として評価した。結果を表1に示す。
【0078】
[比較例1]
実施例1における感光体1を感光体3に換えたプロセスカートリッジを用いてピークの有無を調べたところ、ピークを有することが確認された。
実施例1と同じ画像情報を用いてnを算出したところ、n=200であった。
そこで画像出力前工程感光体の回転数を200として評価した。結果を表1に示す。
【0079】
[比較例2]
実施例1における感光体1を感光体4に換えたプロセスカートリッジを用いて評価したところ、ブレードメクレが発生し、評価できなかった。結果を表1に示す。
【0080】
[比較例3]
実施例1における画像出力前工程の感光体の回転数を100とした以外は実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0081】
[比較例4]
実施例1における画像出力前工程の感光体の回転数を1とした以外は実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0082】
[比較例5]
実施例1のプロセスカートリッジを用いて、画像出力前工程において、感光体1回転あたり25mm四方のパッチ画像を1つ出力させた画像情報を用いてnを算出したところ算出する工程中にブレードメクレが発生した。結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
以上の結果から分かるように、本発明によれば、小粒径かつ高円形度のトナーを用い、過酷な環境下においても使用初期からクリーニング不良等に起因する画像不良なく安定した画像を提供できる画像形成方法および画像形成装置を提供することができる。
【0085】
さらには、感光体の表面に含有させる高潤滑付与物質の規定とトナーの外添剤遊離率の規定により、画像出力前工程の感光体の回転数を減らすことができ、画像出力までの時間が短縮することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体を用い、該電子写真感光体に対して帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程およびクリーニングブレードによるクリーニング工程からなる一連の工程を行う画像形成方法であって、
該トナーには外添処理が施されており、
該電子写真感光体は、該クリーニングブレードに対する、ヘイドン摩擦試験機により測定した初期平均動摩擦係数が0.3以下であり、また、
(a)帯電工程、印字率2%相当の露光工程および現像工程を行い、(b)その後、転写工程を実施することなく、クリーニング工程を行い、該電子写真感光体を25回転させるごとに該一連の工程を中断し、該電子写真感光体のクリーニングブレードに対する平均動摩擦係数を、ヘイドン摩擦試験機を用いて測定して平均動摩擦係数の推移を評価する平均動摩擦係数推移の評価試験において、
測定した平均動摩擦係数をy軸、電子写真感光体の回転数をx軸としてグラフにプロットした場合、得られるグラフ曲線が局所的にピークを有するものであり、
電子写真感光体の回転数がn回転時と電子写真感光体の回転数がn+50回転時の平均動摩擦係数をそれぞれμn、μn+50としたとき、式(1)、(2)を満たすまで、電子写真感光体の画像形成領域全面に帯電工程、露光工程および現像工程を行った後、転写工程を実施することなく、クリーニング工程を行い、その後、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程およびクリーニング工程からなる一連の工程を実施することを特徴とする画像形成方法。
式(1): μn > μn+50
式(2): μn − μn+50 < 0.02
【請求項2】
前記帯電工程、露光工程および現像工程を行った後、転写工程を実施することなく、クリーニングする動作中の現像されたトナー量が、電子写真感光体の長手方向に対し均一であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記帯電工程、露光工程および現像工程を行った後、転写工程を実施することなく、感光体上のトナーをクリーニングする動作中の電子写真感光体上の印字率が25%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
該電子写真感光体の最表層にシロキサン樹脂を含有し該シロキサン樹脂の粘度平均分子量が10000以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記トナーが無機微粉体を含有しており、該無機微粉体の一次粒径が30nm以上300nm以下であり、また、該無機微粉体のトナー粒子からの遊離率が10.0質量%以上50.0質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記感光体とクリーニングブレードとの動摩擦係数推移の情報を基に、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程およびクリーニング工程の一連の工程からなる画像形成を行う時期を決定することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−27766(P2011−27766A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170096(P2009−170096)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】