説明

画像形成装置、及び画像形成方法

【課題】リアルタイムに個々の記録用紙に応じた精度の高い補正を行う。
【解決手段】処理液を塗布した記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、記録媒体の一部又は全面に所定パターンを形成するパターン形成手段と、前記パターン形成手段により前記パターンが形成された記録媒体に前記処理液を塗布し、前記処理液が塗布された後の記録媒体上の前記パターンを読み取るパターン読取手段と、前記パターン読取手段により読み取ったパターンの伸縮量を算出する伸縮量算出手段と、前記伸縮量算出手段により算出された伸縮量に応じて画像データを伸縮させる画像データ伸縮手段とを有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、インク等の液体を用いて記録用紙に記録を行う記録装置として、インクジェット式記録装置(以下、「記録装置」という。)が知られている。この記録装置には、記録用紙を搬送方向に搬送する搬送機構と、搬送機構によって装置内に搬送されてきた記録用紙に対してインクを噴射する記録ヘッドとが設けられている。記録装置は、例えばホストコンピュータから画像データを受信すると、記録ヘッドから記録用紙に各種インクを噴射し、画像データに基づく画像を記録用紙に記録する。
【0003】
また、従来では、記録用紙に画像を記録する前に、インクの滲みの低減や発色の向上等の画質の向上、インク等の色材と記録用紙との定着性の向上等を目的として、記録用紙に処理液を塗布することが知られている。ここで、記録用紙は、事前に塗布された処理液を吸収して伸縮し、その後の乾燥により伸縮とは逆の動きをすることがある。なお、この伸縮の程度は、記録装置の設置環境(例えば湿度等)や、記録用紙の構成によって変動する。このように伸縮した記録用紙に画像が記録されると、その後の乾燥による記録用紙の動きにより、記録用紙の画像が所望の寸法よりも拡大又は縮小されてしまう。
【0004】
そこで、従来では、事前に第1色液体と第2色液体とを塗布する間に処理液を塗布し、第1色液体で形成した第1の基準マークと第2の色液体で形成した第2の基準マークとを用いて位置ずれ量を検出し、それを用いて補正する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、従来では、事前に処理液付与後の経過時間に対する記録媒体の変形量を取得し、その変形量を用いて補正量を求める方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。更に、従来では、表面用紙の四隅の余白部に印刷した測定用トンボにより用紙の膨張・収縮状態を把握し、裏面印刷時の画像の拡大・縮小率を決定する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に示すような手法では、予め記録用紙の変化量や補正量を把握する必要があり、そのためのデータの蓄積や事前評価が必要となる。また、記録用紙に画像を記録するタイミングでリアルタイムに補正値を算出するわけではなく、あくまで予測補正値を用いて補正するだけである。更に、記録用紙の変化量は、記録用紙のロットや記録用紙の紙面内位置、処理液の塗布ムラによっても異なる。
【0006】
また、上記特許文献3に示すような手法では、表面用紙の四隅の余白部における用紙の膨張・収縮状態を把握するだけである。したがって、上述したように記録用紙の紙面内位置の変化量のばらつきや、処理液の塗布ムラ等により生じる部分部分の伸縮状態を検知し、適切な補正を行うことができない。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、リアルタイムに個々の記録用紙に応じた精度の高い補正を行う画像形成装置、及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、処理液を塗布した記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、記録媒体の一部又は全面に所定パターンを形成するパターン形成手段と、前記パターン形成手段により前記パターンが形成された記録媒体に前記処理液を塗布し、前記処理液が塗布された後の記録媒体上の前記パターンを読み取るパターン読取手段と、前記パターン読取手段により読み取ったパターンの伸縮量を算出する伸縮量算出手段と、前記伸縮量算出手段により算出された伸縮量に応じて画像データを伸縮させる画像データ伸縮手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、処理液を塗布した記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、前記記録媒体に前記処理液を塗布し、前記処理液が塗布された前後における記録媒体の一部又は全面の紙紋のパターンを読み取るパターン読取手段と、前記パターン読取手段により読み取ったパターンの伸縮量を算出する伸縮量算出手段と、前記伸縮量算出手段により算出された伸縮量に応じて画像データを伸縮させる画像データ伸縮手段とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、処理液を塗布した記録媒体に画像を形成する画像形成装置における画像形成方法であって、記録媒体の一部又は全面に所定パターンを形成するパターン形成手順と、前記パターン形成手順により前記パターンが形成された記録媒体に前記処理液を塗布し、前記処理液が塗布された後の記録媒体上の前記パターンを読み取るパターン読取手順と、前記パターン読取手順により読み取ったパターンの伸縮量を算出する伸縮量算出手順と、前記伸縮量算出手順により算出された伸縮量に応じて画像データを伸縮させる画像データ伸縮手順とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、処理液を塗布した記録媒体に画像を形成する画像形成装置における画像形成方法であって、記録媒体に前記処理液を塗布し、前記処理液が塗布された前後における記録媒体の一部又は全面の紙紋のパターンを読み取るパターン読取手順と、前記パターン読取手順により読み取ったパターンの伸縮量を算出する伸縮量算出手順と、前記伸縮量算出手順により算出された伸縮量に応じて画像データを伸縮させる画像データ伸縮手順とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リアルタイムに個々の記録用紙に応じた精度の高い補正を行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置の機能構成の一例を示す図である。
【図3】従来における画像寸法の変動を説明するための図である。
【図4】本実施形態における画像寸法の変動を説明するための図である。
【図5】本実施形態に係る画像形成処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
<画像形成装置の概略図>
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の概略構成の一例を示す図である。図1に示す画像形成装置10は、例えばインク及び処理液を用いて記録媒体上に画像形成を行うインクジェット記録装置等である。ここで、記録媒体は、例えばインク等の液滴により画像や文書が記録される媒体を示し、以下の説明では一例として記録用紙を用いて説明する。
【0016】
図1に示すように、画像形成装置10は、給紙部11と、処理液付与部12と、インク打滴部13と、乾燥部14と、排紙部15とを有するように構成される。
【0017】
給紙部11は、画像を記録する記録用紙Aを供給する。給紙部11は、記録用紙Aを積載する給紙台110と、給紙台110と接続されたフィーダボード111とを有する。フィーダボード111は、給紙台110の前方(図1の例では給紙台110の左側)に設けられる。給紙台110の記録用紙Aは、一枚ずつフィーダボード111に送り出される。
【0018】
処理液付与部12は、記録用紙Aに処理液を付与する。処理液付与部12は、渡し胴120と、圧胴(処理液、浸透抑制剤ドラム)121と、マーキング吐出ヘッド122と、処理液吐出ヘッド123とを有するように構成される。
【0019】
渡し胴120は、フィーダボード111により送り出された記録用紙Aを圧胴121に受け渡す。圧胴121の表面に対向する位置には、圧胴121の回転方向(図1の例では反時計回り方向)の上流側から順に、マーキング吐出ヘッド122と、処理液吐出ヘッド123とが設けられている。
【0020】
マーキング吐出ヘッド122は、圧胴121上の記録用紙Aに、所定パターンとしてのドットやドットの集合、グリッド線等の寸法測定用パターン(記録パターン)を記録する。
【0021】
ここで、寸法測定用パターンは、人間が視認困難又は視認できないが機械等により可読可能なパターンが好ましく、例えば極めて小さなドットや、イエロー(Y)のように視認困難な色、ブラックライトを用いて初めて視覚可能な液体等により形成されるパターンとする。本実施形態では、この寸法測定用パターンを、記録用紙A上に、例えば等間隔に記録しておくことにより、処理液による記録用紙Aの伸縮量(伸縮率)を求める。なお、伸縮率とは、例えば水分等を吸収した記録用紙Aの伸縮する割合を示す。
【0022】
なお、マーキング吐出ヘッド122を記録用紙Aの紙紋を読み取るセンサに置き換えても良い。すなわち、紙の表面等には、例えば顕微鏡等で観察することができる極微細のムラ(紙紋)があり、同一紙面内でも同じ紙紋が存在することはない。したがって、このような紙紋を予め読み取っておくことで、処理液を塗布した後の紙紋の形状変化から、記録用紙Aの伸縮量を求めることが可能となる。なお、紙紋の例としては、例えば特開2007−004479号公報等を参照することができる。
【0023】
処理液吐出ヘッド123は、圧胴121上に保持される記録用紙Aに対して処理液を打液する。この処理液は、例えば、インク打滴ヘッド134から吐出されるインクに含有される色材を凝集させる作用等を有する。
【0024】
上述したように、本実施形態では、記録用紙Aに対して処理液を付与する手段として打滴方式を用いたが、本発明においてはこれに限定されず、例えばローラ塗布方式、スプレー方式等の各種方式を用いて処理液を付与しても良い。なお、打滴方式の場合には、インクの打滴箇所及びその周辺のみ選択的に浸透抑制剤を付与することが可能である。
【0025】
インク打滴部13は、記録用紙Aに、例えばインク等の液滴を打滴する。インク打滴部13は、渡し胴130と、圧胴131と、渡し胴132と、センサ133と、インク打滴ヘッド134とを有するように構成される。
【0026】
渡し胴130は、圧胴(処理液、浸透抑制剤ドラム)121と圧胴(描画ドラム)131との間に、これらに対接するようにして設けられる。渡し胴130は、圧胴121上において、処理液が付与され、固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された記録用紙Aを圧胴131に受け渡す。
【0027】
圧胴131の表面に対向する位置には、圧胴121の回転方向(図1の例では反時計回り方向)の上流側から順に、センサ133と、インク打滴ヘッド134とが設けられている。
【0028】
センサ133は、インク打滴ヘッド134の上流に設けられ、記録用紙Aの寸法測定用パターン又は紙紋を読み取る。これにより、インク打滴ヘッド134により記録用紙Aに画像を記録する前に、記録用紙Aの伸縮量(伸縮率)を把握する。例えば、記録用紙Aの伸縮量は、記録用紙Aの搬送方向と、搬送方向の直交方向のそれぞれについて求めると良い。
【0029】
インク打滴ヘッド134は、図1の例では反時計回り方向の上流側から順に、圧胴131の表面に対向する位置に、例えばマゼンタ(M)、ブラック(K)、シアン(C)、イエロー(Y)の4色のインクにそれぞれ対応したインク打滴ヘッド134M、134K、134C、134Yを有する。インク打滴ヘッド134M、134K、134C、134Yは、それぞれの色に対応するインクの液滴を圧胴131に保持された記録用紙Aに向かって吐出する。
【0030】
なお、インク打滴ヘッド134は、処理液吐出ヘッド123と同様に液体を吐出する方式の記録ヘッド(液体吐出ヘッド)が適用される。また、インク打滴ヘッド134には、インク貯蔵、装填部が設けられ、インク打滴ヘッド134に供給するインクを貯蔵するインクタンクを含む。
【0031】
インク貯蔵、装填部には、インクタンク内の液体残量が少なくなるとそれを報知する報知手段(例えば、表示手段、警告音発生手段等)を備え、各色間の誤装填を防止する機構を有する。インクタンクは、所要の流路を介して対応するインク打滴ヘッド134に連通され、各インク打滴ヘッド134に対応するインクを供給する。
【0032】
インク打滴ヘッド134は、画像信号に応じて記録用紙Aに対してそれぞれ対応する色のインクを打滴して画像を形成する。本実施形態では、インク打滴ヘッド134は、センサ133により検知し、算出された記録用紙Aの伸縮量に応じて、伸縮させた画像データに基づき、画像を記録する。
【0033】
なお、インク打滴ヘッド134は、それぞれ圧胴131に保持される記録用紙Aの画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、インク吐出面には画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列したフルライン型のヘッドを有する。また、インク打滴ヘッド134は、それぞれ圧胴131の回転方向(記録用紙Aの搬送方向)との直交方向に延在するように固定設置されている。
【0034】
フルライン型のヘッドは、インク色ごとに記録用紙Aの画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有する。したがって、各インク打滴ヘッド134は、記録用紙Aの搬送方向(副走査方向)に相対的に移動する動作を1回行うこと(1回の副走査)で、記録用紙Aの画像形成領域に1次画像を記録することが可能となる。これにより、記録用紙Aの搬送方向と直交する方向に往復するシリアル(シャトル)型ヘッドと比べて、高速印字を可能とし、プリント生産を向上させる。
【0035】
なお、画像形成装置10は、例えば最大菊半サイズの記録用紙までの記録が可能であり、圧胴131には、例えば記録用紙幅720mmに対応した直径810mmドラムが用いられる。また、各インク打滴ヘッド134のインク吐出体積は例えば2plであり、記録密度は主走査方向(記録用紙Aの幅方向)及び副走査方向(記録用紙Aの搬送方向)共に例えば1200dpiである。
【0036】
また、本実施形態では、上述のようにCMYKの4色の構成を示したが、インク色や色数の組み合わせについては限定されず、必要に応じて、R(赤)、G(緑)、B(青)のインク、淡インク、濃インク、特別色インク等を追加しても良い。また、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系のインクを吐出するヘッドを追加しても良く、各色ヘッドの配置順序に特に限定されるものではない。
【0037】
乾燥部14は、記録用紙A上に形成された画像を乾燥させる。乾燥部14は、圧胴140と、印字検出部141と、乾燥ユニット142と、排紙胴143とを有するように構成される。圧胴(乾燥ドラム)140は、圧胴131と圧胴140とに対接するように設けられている渡し胴132を介して圧胴131上の記録用紙Aが受け渡される。
【0038】
圧胴140の表面に対向する位置には、圧胴140の回転方向(図1の例では反時計回り方向)の上流側から順に、印字検出部141と、乾燥ユニット142とが設けられている。印字検出部141は、インク打滴部13の印字結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、読み取った打滴画像からノズルの目詰まり等の吐出不良を検出する。
【0039】
乾燥ユニット142は、温度や風量を所定の範囲で制御可能な熱風乾燥機を含み、圧胴140上の記録用紙Aが対向する位置を通過する際、熱風乾燥機により加熱した空気(熱風)を記録用紙Aの表面に吹き付ける。
【0040】
なお、加熱乾燥方法としては、圧胴140の内部に設置したヒータ等の発熱体を用いて記録用紙Aを下面から加熱したり、記録用紙Aの上面に熱風を当てて加熱したりしても良く、赤外線ヒータ等を用いて上面から加熱しても良い。また、これらの加熱乾燥方法を組み合わせて用いても良い。
【0041】
排紙部15は、画像が形成された記録用紙Aを搬送して排出する。排紙部15は、排紙台150と、排紙用チェーン151とを有するように構成される。排紙台150は、記録用紙Aを積載する。
【0042】
排紙用チェーン151は、画像が定着された記録用紙Aを受ける排紙胴143に設けられたスプロケットと排紙台150の上方に設けられたスプロケットとの間に掛け渡され、複数の排紙用グリッパを備え、排紙胴143から排紙台150に記録用紙Aを排紙する。
【0043】
<画像形成装置の機能構成>
次に、図2を用いて、上述した画像形成装置10の機能構成の一例について説明する。図2は、本実施形態に係る画像形成装置の機能構成の一例を示す図である。
【0044】
図2に示すように、画像形成装置10は、パターン設定手段21と、パターン形成手段22と、パターン読取手段23と、伸縮量算出手段24と、画像データ伸縮手段25とを有するように構成される。
【0045】
パターン設定手段21は、パターン形成手段22により形成される寸法測定用パターンを設定する。パターン設定手段21は、例えばパターンの内容(ドットの大きさ、ドットの色、ドットの集合、ドットの配列、グリッド線等)、パターンの形成領域、記録用紙Aの用紙サイズや種類、処理液の種類、処理液の塗布領域等を設定する。なお、パターン設定手段21における設定は、本実施形態における処理の実行前に予め設定されても良く、所定のタイミングでユーザ等により任意に変更しても良い。
【0046】
パターン形成手段22は、パターン設定手段21により設定された設定情報に基づいて、記録用紙Aに形成する寸法測定用パターンを生成する。なお、パターン形成手段22は、例えば図1のマーキング吐出ヘッド122等に相当する。
【0047】
パターン形成手段22は、例えば寸法測定用パターンを、記録用紙Aの一部又は全面に形成する。ここで、記録用紙Aの一部とは、例えば、用紙の中心を基準にした矩形又は円形の所定範囲を含む領域でも良く、用紙の全面のうち、上記領域以外の領域であっても良い。このように、どの領域に寸法測定用パターンを形成するかについては、パターン設定手段21により設定すると良い。
【0048】
また、寸法測定用パターンは、人間が視認困難又は視認できない機械等により可読可能なパターンが好ましく、例えば極めて小さなドットや、イエロー(Y)のように視認困難な色、ブラックライトを用いて初めて視覚可能な液体等により形成すると良い。
【0049】
また、寸法測定用パターンは、所定の大きさのドット、該ドットの集合、及び所定の太さのグリッド線のマス目パターン等、少なくとも1つを等間隔に配置したパターン、又は所定の色のドット、該ドットの集合、所定の色のグリッド線のマス目パターン等、少なくとも1つを等間隔に配置したパターンとして形成すると良い。
【0050】
パターン読取手段23は、パターン形成手段22により寸法測定用パターンが形成された記録用紙Aに、処理液を塗布し、処理液が塗布された後の記録用紙A上の寸法測定用パターンを読み取る。また、パターン読取手段23は、処理液塗布前にセンサにより記録用紙Aの紙紋を読み取っておき、処理液を塗布した記録用紙Aの紙紋の形状変化を読み取っても良い。なお、パターン読取手段23は、例えば図1のセンサ133等に相当する。
【0051】
伸縮量算出手段24は、パターン読取手段23により読み取られた寸法測定用パターンの伸縮量(伸縮率)を算出する。伸縮量算出手段24は、寸法測定用パターンのパターンの位置又は間隔の変化等に基づいて伸縮量を算出する。
【0052】
ここで、伸縮量は、例えば記録用紙Aの搬送方向と、搬送方向に対する直交方向のそれぞれについて求めると良い。また、伸縮量は、記録用紙Aの全面に対して1つの値を求めても良く、記録用紙Aを所定の領域に分割し、分割した領域ごと、又は指定した領域(例えば記録用紙A上の処理液を塗布した領域のみ等)に対する値として求めても良い。
【0053】
このように、記録用紙A上の領域ごとに伸縮量を求めることで、例えば記録用紙A上に均一に処理液を塗布して生じる記録用紙A上の伸縮量のばらつきに対しても、記録用紙A上の処理液の塗布ムラにより生じる伸縮量のばらつきに対しても、領域ごとの伸縮量を精度高く求めることが可能となる。
【0054】
画像データ伸縮手段25は、伸縮量算出手段24により算出された伸縮量に応じて、画像データを伸縮する。画像データ伸縮手段25は、伸縮量算出手段24により分割した領域ごとに伸縮量を求めることが可能となるため、各領域の伸縮量に応じて画像データを伸縮させる。これにより、例えば記録用紙の伸縮により生じる画像寸法の変動に対して精度の高い補正を行うことが可能となる。
【0055】
<従来における画像寸法の変動>
次に、図3を用いて、従来における処理液を塗布した場合の画像寸法の変動について説明する。図3は、従来における画像寸法の変動を説明するための図である。
【0056】
図3(A)は、画像を記録するための記録用紙Aを示し、図3(B)は、図3(A)に示す記録用紙Aに、処理液としての溶剤を塗布した状態を示している。また、図3(C)は、膨張した記録用紙Aに画像を形成した状態を示し、図3(D)は、記録用紙Aが乾燥した状態を示している。
【0057】
従来では、図3(A)に示す用紙サイズの記録用紙Aに溶剤が塗布されると、図3(B)に示すように、水分を吸収して記録用紙Aの用紙サイズが膨張する。また、図3(C)に示すように、膨張した状態の記録用紙Aに、膨張前の用紙サイズに対応した画像データが形成される。したがって、図3(C)に示す状態の記録用紙Aが乾燥により水分が失われて縮小した場合、図3(D)に示すように、所望の画像データの寸法よりも縮小された画像が形成されることになる。
【0058】
<本実施形態における画像寸法の変動>
次に、図4を用いて、本実施形態における処理液を塗布した場合の画像寸法の変動について説明する。図4は、本実施形態における画像寸法の変動を説明するための図である。
【0059】
図4(A)は、画像を記録するための記録用紙Aを示し、図4(B)は、寸法測定用パターン(記録パターン)が形成された記録用紙Aを示している。また、図4(C)は、図4(B)に示す記録用紙Aに、処理液としての溶剤を塗布した状態を示している。また、図4(D)は、膨張した記録用紙Aに画像を形成した状態を示し、図4(E)は、記録用紙Aが乾燥した状態を示している。
【0060】
本実施形態では、図4(A)に示す用紙サイズの記録用紙Aに対して、図4(B)に示すように、寸法測定用パターンが記録用紙Aの全体に形成される。ここで、寸法測定用パターンは、パターン形成手段22により、例えばイエロー(Y)のように視認困難な色や、ブラックライトを用いて初めて視覚可能な液体等のグリッド線として形成される。なお、このグリッド線の寸法測定用パターンは、機械等により可読可能とする。
【0061】
次に、図4(C)に示すように、寸法測定用パターンが形成された記録用紙Aに、溶剤が塗布されると、記録用紙Aは水分を吸収して用紙サイズが膨張する。このとき、記録用紙Aの膨張に合わせてグリッド線の寸法測定用パターンも拡大した状態となる。
【0062】
次に、拡大した状態のグリッド線を読み取り、読み取ったグリッド線の伸縮量(伸縮率)に応じて画像データを拡大し、図4(D)に示すように、拡大したグリッド線に合わせて拡大された画像が記録用紙Aに形成される。
【0063】
これにより、本実施形態では、図4(E)に示すように、記録用紙Aが乾燥により水分が失われて縮小した場合でも、記録用紙Aの縮小に応じて画像も縮小するため、所望の寸法の画像を得ることが可能となる。
【0064】
なお、図4では、パターン形成手段22により形成される寸法測定用パターンの一例としてグリッド線のパターンを示したが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、例えば所定の大きさ、所定の色のドット、ドットの集合を等間隔に配列したパターンや、その他の直線、曲線、模様、記号等を用いたもの、又はそれらを組み合わせたパターンを用いても良い。
【0065】
また、本実施形態では、パターン形成手段22によりパターンを形成せずに、例えば記録用紙Aの紙紋パターンを用いて、上述のように読み取られた紙紋の伸縮量に合わせて、記録用紙Aに形成する画像データを伸縮させても良い。また、パターン形成手段22により形成されたパターンと紙紋パターンとを両方用いて、記録用紙Aに形成する画像データを伸縮させても良い。
【0066】
<本実施形態に係る画像形成処理の流れ>
次に、図5を用いて、本実施形態に係る処理液を塗布して画像を形成する画像形成処理の流れについて説明する。図5は、本実施形態に係る画像形成処理の流れを示すフローチャートである。
【0067】
図5に示すように、画像形成装置10は、画像データを取得すると(S10)、パターン設定手段21により設定された設定情報に基づいて、パターン形成手段22により記録用紙Aに対する寸法測定用パターンが生成され、記録用紙A上に寸法測定用パターンを記録する(S11)。
【0068】
次に、画像形成装置10は、寸法測定用パターンが記録された記録用紙A上に処理液を塗布し(S12)、パターン読取手段23により処理液を塗布した後の記録用紙A上の寸法測定用パターンを読み取る(S13)。
【0069】
次に、伸縮量算出手段24は、パターン読取手段23により読み取られた寸法測定用パターンの伸縮量を算出する(S14)。次に、画像データ伸縮手段25は、伸縮量算出手段24により算出された伸縮量に応じて、画像データを伸縮する(S15)。
【0070】
画像形成装置10は、画像データ伸縮手段25により伸縮された画像データに基づき、記録用紙Aに画像を記録し(S16)、画像を記録した記録用紙Aを乾燥させ(S17)、乾燥させた記録用紙Aを排出し、処理を終了する。これにより、記録用紙A上に所望の寸法が保持された画像を得ることが可能となる。
【0071】
上述したように、本実施形態によれば、リアルタイムに個々の記録用紙に応じた精度の高い補正を行うことが可能となる。また、紙のロット差による影響を受けず、紙面内の所定の領域ごとの補正量を得ることが可能となるため、紙面内の変化量のばらつきや処理液の塗布ムラに対応した精度の高い補正を行うことが可能となる。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 画像形成装置
11 給紙部
12 処理液付与部
13 インク打滴部
14 乾燥部
15 排紙部
21 パターン設定手段
22 パターン形成手段
23 パターン読取手段
24 伸縮量算出手段
25 画像データ伸縮手段
110 給紙台
11 フィーダボード
120,130,132 渡し胴
121,131,140 圧胴
122 マーキング吐出ヘッド
123 処理液吐出ヘッド
133 センサ
134 インク打滴ヘッド
141 印字検出部
142 乾燥ユニット
143 排紙胴
150 排紙台
151 排紙用チェーン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開2009−255523号公報
【特許文献2】特開2010−082935号公報
【特許文献3】特開2005−223381号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を塗布した記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
記録媒体の一部又は全面に所定パターンを形成するパターン形成手段と、
前記パターン形成手段により前記パターンが形成された記録媒体に前記処理液を塗布し、前記処理液が塗布された後の記録媒体上の前記パターンを読み取るパターン読取手段と、
前記パターン読取手段により読み取ったパターンの伸縮量を算出する伸縮量算出手段と、
前記伸縮量算出手段により算出された伸縮量に応じて画像データを伸縮させる画像データ伸縮手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
処理液を塗布した記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
記録媒体に前記処理液を塗布し、前記処理液が塗布された前後における記録媒体の一部又は全面の紙紋のパターンを読み取るパターン読取手段と、
前記パターン読取手段により読み取ったパターンの伸縮量を算出する伸縮量算出手段と、
前記伸縮量算出手段により算出された伸縮量に応じて画像データを伸縮させる画像データ伸縮手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記伸縮量算出手段は、前記パターンの位置又は間隔の変化に基づいて伸縮量を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記伸縮量算出手段は、前記記録媒体を所定の領域に分割し、分割した領域ごとに伸縮量を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記所定パターンは、所定の大きさのドット、該ドットの集合、及び所定の太さのグリッド線の少なくとも1つを等間隔に配置したパターンであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記所定パターンは、所定の色のドット、該ドットの集合、及び所定の色のグリッド線の少なくとも1つを等間隔に配置したパターンであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記所定パターンは、所定の液体を用いて形成されたドット、該ドットの集合、及びグリッド線の少なくとも1つを等間隔に配置したパターンであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
処理液を塗布した記録媒体に画像を形成する画像形成装置における画像形成方法であって、
記録媒体の一部又は全面に所定パターンを形成するパターン形成手順と、
前記パターン形成手順により前記パターンが形成された記録媒体に前記処理液を塗布し、前記処理液が塗布された後の記録媒体上の前記パターンを読み取るパターン読取手順と、
前記パターン読取手順により読み取ったパターンの伸縮量を算出する伸縮量算出手順と、
前記伸縮量算出手順により算出された伸縮量に応じて画像データを伸縮させる画像データ伸縮手順とを有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
処理液を塗布した記録媒体に画像を形成する画像形成装置における画像形成方法であって、
記録媒体に前記処理液を塗布し、前記処理液が塗布された前後における記録媒体の一部又は全面の紙紋のパターンを読み取るパターン読取手順と、
前記パターン読取手順により読み取ったパターンの伸縮量を算出する伸縮量算出手順と、
前記伸縮量算出手順により算出された伸縮量に応じて画像データを伸縮させる画像データ伸縮手順とを有することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−27981(P2013−27981A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163610(P2011−163610)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】