説明

画像形成装置、該装置の画像形成方法、及び画像形成用プロセスカートリッジ

【課題】近接放電による帯電方式を採用した画像形成装置において、近接放電に起因する感光体表面の劣化を防止することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成工程が繰り返しなされる間に、所定の帯電条件で放電領域において必要量の保護物質が継続して均一に該被帯電体1の表面に塗布される画像形成装置が提供される。該塗布手段がプレ塗布手段と塗布手段からなり、該保護物質が該プレ塗布手段を介して塗布手段に塗布され、且つ、放電領域において被帯電体1の表面に存在する保護物質の元素割合[%]が、XPSによる測定で、6.23×10−3×(Vpp − 2×Vth)×f/v [%]以上である画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、該画像形成装置による画像形成方法、及び画像形成装置用プロセスカートリッジに関し、より詳細には、接触または非接触の近接放電による帯電方式を採用した画像形成装置において、近接放電に起因する感光体表面の劣化を防止する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プロセスを採用した画像形成装置においては、像担持体(以下、被帯電体または感光体ともいう)としての感光体表面を帯電させる帯電手段を有している。帯電手段で用いる帯電方式の一つとして、近接放電による帯電方式がある。これは、感光体表面に帯電部材を接触させたり非接触で近接させたりして近接放電により感光体表面の帯電を行う方式である。
【0003】
近年、高画質化、装置の小型化などがますます望まれる中、帯電装置も高画質化と小型化が課題となっている。このような課題に対して、像担持体に接触又は近接させた帯電部材を用いる近接放電方式を用いた帯電装置は、大掛かりな帯電装置を必要としないため有効である。
【0004】
しかし近接放電による帯電方式は感光体表面の近傍に放電が集中するため、感光体表面を劣化させることが分かった。近接放電による感光体表面の劣化は機械的摺擦とは違い、像担持体への当接部材がない場合においても発生する。
【0005】
図1は、近接放電による感光体表面の劣化状態を調べるために、感光体表面に帯電部材のみを非接触状態で近接配置し、連続約150時間の帯電実験を行ったときの、感光体表面の膜厚の変化を測定した結果である。
【0006】
実験に使用した感光体は電荷輸送層にポリカーボネートを用いた有機感光体であり、感光体に対して当接する部材を全て取り除き、DCバイアスにACバイアスを重畳した電圧が印加された非接触帯電ローラを用いて帯電を行った。この結果、感光体表面の膜の削れ量が次第に多くなり、感光体の膜厚が次第に減少している事実がわかった。膜厚減少のメカニズムについては今のところ検討中で明らかになってはいないが、膜厚が減少した感光体を分析したところ、感光体を構成するポリカーボネートが分解されたと考えられるカルボン酸などが検出された。このように近接放電によって感光体を構成する成分が分解されたと考えられる物質が検出されたことから、感光体の膜厚減少のメカニズムとしては、次のようなことが考えられる。
【0007】
図2において、(a)と(b)は、近接放電によって感光体1表面が劣化する場合の感光体表面の状態を、帯電ローラ2aを感光体表面から微小ギャップをもって対向させた状態を例にとって示した説明図である。
【0008】
近接放電を行うと、感光体表面の放電領域では放電により発生した粒子(オゾン、電子、励起分子、イオン、プラズマなど)のエネルギーが感光体表面の電荷輸送層1aに照射される。このエネルギーが感光体表面を構成する分子の結合エネルギーに共鳴、吸収され、図2の(a)に示すように、電荷輸送層1aは、樹脂分子鎖の切断による分子量低下、高分子鎖の絡み合い度の低下、樹脂の蒸発等の化学的劣化を生じる。このような近接放電による感光体の化学的劣化によって、感光体表面の電荷輸送層1aは次第にその膜厚を減少させてしまうと考えられる。
【0009】
このように、従来から対策が講じられてきた機械的摺擦による膜厚減少への対策とは別に、近接放電に起因する感光体表面の化学的劣化による膜厚減少への対策が必要であることが分かった。
【0010】
なお上記近接放電による感光体表面の膜厚減少は放電で生じる粒子のエネルギーによって発生すると考えられるため、ポリカーボネートに限らず他の材質の感光体を用いた場合においても発生すると考えられる。
【0011】
これまで感光体表面の膜厚減少を防止するために採られていた対策としては、次のようなものがあった。例えば、感光体をアモルファスシリコンカーバイトで表面コートして耐磨耗性を向上させたものがある。また、例えば感光体表層の電荷輸送(CTL)層にアルミナ等の無機物を分散させて耐磨耗性を向上させた有機感光体を用いるようにしたものがある(特許文献1及び2参照)。しかしこのような構成では機械的磨耗に対する耐久性は向上できるが、近接放電による感光体表面の化学的劣化を防止することはできない。
【0012】
また特許文献3および4には、後述する課題を解決するための手段における放電劣化防止手段の具体的な実施例と同様に像担持体表面にステアリン酸亜鉛を塗布する手段を備えた画像形成装置が記載されている。しかしながら、このステアリン酸亜鉛を塗布する手段は、感光体表面のクリーニング不良を防止したりするため感光体表面を低摩擦係数化する目的で塗布するものである。
また特許文献5および6には、放電劣化防止手段の具体的な実施例と同様に像担持体表面にステアリン酸亜鉛を塗布する手段を備えた画像形成装置が記載されている。これらの技術は放電によって感光体の特性が変化する事、具体的には感光体表面に異物が付着しやすくなる事を課題としており、放電によるハザードを防止するためにステアリン酸亜鉛を用いるという点において本発明と近似する。
【特許文献1】特開2002−207308号公報
【特許文献2】特開2002−229227号公報
【特許文献3】特開2002−55580号公報
【特許文献4】特開2002−244487号公報
【特許文献5】特開2002−244516号公報
【特許文献6】特開2002−156877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本出願人の検討により、近接放電による感光体表面劣化を防止させるために必要とされる条件は、感光体表面を低摩擦化するために必要とされる条件とは異なる事が明らかになった。例えば後述するように、感光体表面を低摩擦化することができても、放電による劣化を防止することができない条件が存在する。
【0014】
また従来の技術では放電領域における感光体表面の保護物質の存在状態について深く検討したものは存在しない。しかし本出願人の検討により、放電による感光体表面の膜厚減少を防止するために必要な保護物質の存在状態は帯電条件等に依存する事が明らかになった。すなわち帯電条件を考慮せずに放電領域において感光体表面に保護物質を存在させたとしても、保護物質の存在状態が適切ではないために感光体の膜厚が減少したり、あるいは必要以上に保護物質が存在したりする。また、特許文献3にある様に、保護物質を固形化し棒状にした保護物質の供給源を用意し、ブラシ形態のローラを介して被クリーニング部材(感光体)に供給する方法は、装置の小型化・安価には向くが、本来発明の目的の為に保護物質としての必要最小限かつ被クリーニング部材表面の全面にわたる塗布状態に向かないことが判明した。従って、本発明の目的は画像形成工程が繰返しなされているとき、常に必要量の保護部材が継続して均一に被クリーニング部材へ供給する機構を提供することである。
【0015】
さらに、画像形成装置においては環境条件などに応じて帯電電圧を変化させる制御を行うことがあるが、帯電条件等と保護物質の存在状態との関係がわからないと帯電電圧を変化させた場合に必要な保護物質の量を判断できず、感光体の劣化を充分防止できなくなる恐れがある。
【0016】
したがって、本発明は以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、近接放電による帯電方式を採用した画像形成装置において、近接放電に起因する感光体表面の劣化を防止することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
即ち、上記目的は、請求項1に記載されるが如く、
少なくとも、移動する被帯電体と、
被帯電体に対して接触または接近して設けられた帯電部材に交流成分を含む直流電圧を印加することによって生じる放電を利用して被帯電体を帯電させる帯電手段と、
帯電手段によって帯電した被帯電体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
潜像形成手段によって形成された静電潜像の画像部にトナーを付着して現像させる現像手段と、
被帯電体表面を保護する保護物質を被帯電体表面に塗布する塗布手段と、
を有する画像形成装置において、
該塗布手段がプレ塗布手段と塗布手段からなり、該保護物質が該プレ塗布手段を介して塗布手段に塗布され、且つ
放電領域において被帯電体表面に存在する保護物質の元素割合[%]が、XPSによる測定で、
6.23×10−3×(Vpp − 2×Vth)×f/v [%]
以上であることを特徴とする画像形成装置により達成される。
【0018】
(式中、Vppは帯電部材に印加する交流成分の振幅[V]、fは帯電部材に印加する交流成分の周波数[Hz]、Gpは帯電部材表面と被帯電体表面との最近接距離[μm]、vは帯電部材と対向する被帯電体表面の移動速度[mm/sec]、Vthは放電開始電圧である。またVthの値は、被帯電体の膜厚をd[μm]、被帯電体の比誘電率をεopc、被帯電体と帯電部材の間の空間における比誘電率をεairとしたとき、312+6.2×(d/εopc+Gp/εair)+√(7737.6×d/ε)である)
請求項1に記載の発明によれば、繰り返しの画像形成工程がなされる間に、保護物質の特待の塗布手段により副作用を防止し、被帯電体、つまり感光体表面の変質、いわゆる白濁を防止することが可能となる。
【0019】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の発明において、前記放電領域において被帯電体表面に存在する保護物質の元素割合[%]が、XPSによる測定で、
9.10×10−3×(Vpp − 2×Vth)×f/v [%]
以上であることを特徴とする。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、近接放電に起因する被帯電体、つまり感光体表面の膜厚減少を防止することが可能となる。
【0021】
請求項3にかかる発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記保護物質はラメラ結晶紛体であることを特徴とする。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、ラメラ結晶は両親媒性分子が自己組織化した層状構造を有しているので、せん断力を受けると層間でへき開して被帯電体表面に広がっていくので、少量の保護物質でも効果的に感光体表面を覆うことができる。
【0023】
請求項4にかかる発明は、
移動する被帯電体と、
被帯電体に対して接触または近接して設けられた帯電部材に交流成分を含む直流電圧を印加することによって生じる放電を利用して被帯電体を帯電させる帯電器と、
帯電器によって帯電させられた被帯電体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、
潜像形成手段によって形成された静電潜像の画像部にトナーを付着させる現像手段と、
被帯電体表面を保護する保護物質を被帯電体表面に塗布する塗布手段と、
を有する画像形成装置において、
該塗布手段がプレ塗布手段と塗布手段からなり、該保護物質が該プレ塗布手段を介して塗布手段に塗布され、
前記保護物質がラメラ結晶体の脂肪酸金属塩であり、
放電領域において被帯電体表面に存在する脂肪酸金属塩に含まれる金属元素の元素割合[%]が、XPSによる測定で、
1.52×10−4×(Vpp − 2×Vth)×f/v [%]
以上であることを特徴とする画像形成装置により達成される。
【0024】
(式中、Vppは帯電部材に印加する交流成分の振幅[V]、fは帯電部材に印加する交流成分の周波数[Hz]、Gpは帯電部材表面と被帯電体表面との最近接距離[μm]、vは帯電部材と対向する被帯電体表面の移動速度[mm/sec]、Vthは放電開始電圧である。またVthの値は、被帯電体の膜厚をd[μm]、被帯電体の比誘電率をεopc、被帯電体と帯電部材の間の空間における比誘電率をεairとしたとき、312+6.2×(d/εopc+Gp/εair)+√(7737.6×d/ε)である)
請求項4に記載の発明によれば、繰り返しの画像形成工程がなされるに、保護物質の特待の塗布手段により副作用を防止し、被帯電体、つまり感光体表面の変質、いわゆる白濁を防止することが可能となる。
【0025】
請求項5にかかる発明は、請求項4に記載の発明において、前記放電領域において被帯電体表面に存在する脂肪酸金属塩に含まれる金属元素の元素割合[%]が、XPSによる測定で、
2.22×10−4×(Vpp − 2×Vth)×f/v [%]
以上であることを特徴とすることを特徴とする。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、近接放電に起因する被帯電体、つまり感光体表面の膜厚減少を防止することが可能となる。
【0027】
請求項6にかかる発明は、請求項4または5に記載の発明において、前記脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする。
【0028】
請求項6に記載の発明によれば、前記脂肪酸金属塩であるステアリン酸亜鉛は、帯電される感光体の全表面に微紛化容易なラメラ結晶の極薄い均一な塗布状態を形成するので、優れた保護効果の提供が可能となる。
【0029】
請求項7にかかる発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、帯電部材と被帯電体との最近接距離が1〜100[μm]であることを特徴とする。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、帯電部材への保護物質の付着が起こりにくい非接触帯電であるので、放電領域において保護物質の存在量を安定させることができる。
【0031】
請求項8にかかる発明は、請求項7に記載の発明において、前記帯電部材の表面層が樹脂材料であることを特徴とする。
【0032】
請求項8に記載の発明によれば、帯電部材の変形が抑制され、保護物質の存在量が局所的、突発的に乱されるのを抑制できる。
【0033】
請求項9にかかる発明は、請求項3〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記保護物質を被帯電体表面に塗布するための塗布手段と被帯電体とが接触する部分での塗布手段の速度が被帯電体表面の移動速度とは異なっていることを特徴とする。
【0034】
請求項9に記載の発明によれば、ラメラ結晶がへき開して被帯電体表面に広がるので効率の良い保護物質の供給が可能となる。
【0035】
請求項10にかかる発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記帯電部材周囲の環境状態を検出する検出器と、検出された環境状態に基づいて被帯電体表面への保護物質の供給量を制御する制御部とをさらに有することを特徴とする。
【0036】
請求項10に記載の発明によれば、温度や湿度と言った環境状態に応じて放電開始電圧が変化する場合においても、保護物質の最適な量を適応的に決定することができる。
【0037】
請求項11にかかる発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、
前記現像手段は被帯電体表面に残留した転写残トナーを除去する手段を兼ねており、
前記帯電器は帯電部材と被帯電体との最近接距離Gpが0[μm]である接触帯電方式の帯電器であり、
前記現像手段に対して被帯電体表面の移動方向下流側、かつ、前記帯電器に対して被帯電体表面の移動方向上流側に、前記被帯電体表面に残留した転写残トナーを帯電させるトナー帯電手段を有することを特徴とする。
【0038】
請求項11に記載の発明によれば、クリーナレス方式において転写残トナーを被帯電体上に鏡像力で固定することによって、保護物質による放電からの保護効果を有効に機能させることができる。
【0039】
請求項12にかかる発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の発明において、前記被帯電体に接する塗布手段と該塗布手段に接するプレ塗布手段が弾性を有するローラからなり、更に該プレ塗布手段上の保護物質を規制する規制手段を有することを特徴とする。
【0040】
請求項12に記載の発明によれば、プレ塗布手段と規制手段があると、塗布手段上の保護物質が容易に均一化されるので、より均一に被帯電体に保護物質の層が形成できる。
【0041】
請求項13にかかる発明は、請求項12に記載の発明において、前記保護物質が、粉体状又はバー状であることを特徴とする。
【0042】
請求項13に記載の発明によれば、一旦保護物質を転移するプレ塗布手段があり、次の塗布手段で保護物質が被帯電体上に形成される過程があるため、保護物質の塗布状態が容易に均一化される。その結果、保護物質の形状が粉体状であっても、バー状であっても形状に左右されることなく、均一な塗布状態が形成できる。
【0043】
請求項14にかかる発明は、請求項13に記載の発明において、前記被帯電体の表面の移動速度と該被帯電体に接する塗布手段の表面の移動速度が同一又は異なっていることを特徴とする。
【0044】
請求項14に記載の発明によれば、塗布手段に均一な保護物質の塗布状態があるので、この一部又は全部を被帯電体に転移するだけで被帯電体の表面に均一な保護物質の塗布状態が形成できる。また、両者に速度差をつけると、ニップに保護物質を擦り付ける力(せん断力)が働くので、保護物質の微粒子が場合更に細かくなり、均一な保護物質の塗布状態が被帯電体に形成できる。
【0045】
請求項15にかかる発明は、請求項14に記載の発明において、前記プレ塗布手段の表面の移動速度と該プレ塗布手段に接する塗布手段の表面の移動速度が同一又は異なっていることを特徴とする。
【0046】
請求項15に記載の発明によれば、一旦、プレ転写手段に保護物質の塗布状態を形成し、これを速度が同一の場合は圧力にて
保護物質の微粒子を細かくし、速度が異なる場合はせん断力にて保護物質の微粒子を細かくすることで、塗布手段上に保護物質の塗布状態を緻密かつ均一に形成できる。その結果、保護物質を転移するだけで被帯電体の表面に均一な保護物質の状態が形成できる。
【0047】
請求項16にかかる発明は、請求項1〜15に記載の画像形成装置を用いて、少なくとも被帯電体表面上への近接帯電方式の帯電、該被帯電体表面上での画像露光による静電潜像形成、該静電潜像のトナーによる現像、該現像によって可視像化されたトナー像の記録媒体への転写、該帯電体表面上の転写残トナーのクリーニング、及び該被帯電体上の残留電荷の除電からなる画像形成工程が繰り返しなされる間に、所定の帯電条件で放電領域において必要量の保護物質が継続して均一に該被帯電体表面に塗布されることを特徴とする画像形成方法によって達成できる。
【0048】
請求項16に記載の発明によれば、繰り返しの画像形成工程がなされるに、保護物質の特待の塗布手段により副作用を防止し、近接放電に起因する被帯電体、つまり感光体表面の変質、いわゆる白濁を防止することが可能となり、該感光体表面の膜厚減少を防止できる画像方法を提供できる。
【0049】
請求項17にかかる発明は、
移動する被帯電体と、
被帯電体に対して接触または近接して設けられた帯電部材に交流成分を含む電圧を印加することによって生じる放電を利用して被帯電体を帯電させる帯電器と、
帯電器によって帯電させられた被帯電体表面を画像情報に応じて除電することによって形成された静電潜像の画像部にトナーを付着させる現像手段と、
放電領域において被帯電体表面に存在する保護物質の元素割合[%]が、XPSによる測定で、
6.23×10−3×{Vpp−2×Vth}×f/v [%]
以上となるように被帯電体表面に保護物質を供給させる供給器と、
を一体に構成したプロセスカートリッジによって達成される。
【0050】
(式中、Vppは帯電部材に印加する交流成分の振幅[V]、fは帯電部材に印加する交流成分の周波数[Hz]、Gpは帯電部材表面と被帯電体表面との最近接距離[μm]、vは帯電部材と対向する被帯電体表面の移動速度[mm/sec]、Vthは放電開始電圧である。またVthの値は、被帯電体の膜厚をd[μm]、被帯電体の比誘電率をεopc、被帯電体と帯電部材の間の空間における比誘電率をεairとしたとき、312+6.2×(d/εopc+Gp/εair)+√(7737.6×d/ε)である)
請求項17に記載の発明によれば、繰り返しの画像形成工程がなされる間に、保護物質の特待の塗布手段により副作用を防止し、被帯電体、つまり感光体表面の変質、いわゆる白濁を防止することが可能となるプロセスカートリッジを提供できる。
【0051】
請求項18にかかる発明は、請求項17の発明において、前記放電領域において被帯電体表面に存在する保護物質の元素割合[%]が、XPSによる測定で、
9.10×10−3×(Vpp − 2×Vth)×f/v [%]
以上であることを特徴とする。
【0052】
請求項18に記載の発明によれば、近接放電に起因する被帯電体、つまり感光体表面の膜厚減少を防止することが可能となるプロセスカートリッジを提供できる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、接触或いは非接触の近接放電による帯電方式を採用した画像形成装置において、近接放電に起因する感光体表面の劣化を防止することができるという優れた効果がある。また、保護部剤を感光体に薄く均一に塗布できる塗布手段を用いるので、過多に塗布することによるムダ、副作用を抑制できる。更に、硬いファーブラシを使用した場合に多く発生する有機感光体の摩耗を抑制できる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、本発明が適用される画像形成装置について実施形態で説明する。
【0055】
[実施形態1]
図3を参照するに、後述する各実施例に共通した構成を有する画像形成装置の一例を示し、実施態様1として説明する。この画像形成装置は、有機感光体からなる像担持体としての感光体1を備えている。
【0056】
図3において感光体1は、図示しない駆動装置により回転駆動され、その表面が近接帯電方式の帯電手段2の帯電ローラ2aにより所定の極性に帯電される。帯電された感光体1の表面は、露光手段3によって露光され画像情報に応じた静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像手段4から感光体1の表面に供給される現像剤としてのトナーにより現像されて、トナー像として可視像化される。
【0057】
一方、図示しない給紙部からは記録媒体としての転写紙Pが感光体1に向けて給送される。この転写紙Pには、感光体1に対向配置されている転写手段5によって感光体1上のトナー像が転写紙P上に転写される。トナー像が転写された転写紙Pは、感光体1から分離した後、転写材搬送経路に沿って定着手段6に搬送されて、トナー像が定着される。
【0058】
転写紙にトナー像を転写した後の感光体1上に残留している残留トナーとしての転写残トナーは、クリーニング装置7によって感光体1上から除去される。また、転写残トナー が除去された後の感光体表面の残留電荷は、除電手段9により除去される。このようにして、感光体1は繰り返し使用される。
【0059】
本実施形態の画像形成装置は、保護物質塗布手段10を有している。この保護物質塗布手段10は、内部に粉体状の保護物質を搭載した例である。粉体状の保護物質はプレ転移手段12を介して転移手段11を経て感光体に保護物質を供給される。
【0060】
尚、詳細については後述する。
【0061】
また本実施形態の画像形成装置では、感光体、帯電部材、現像装置、クリーニング装置が一体に構成され、画像形成装置本体から着脱可能なプロセスカートリッジとして構成されている。かかるプロセスカートリッジは一体に交換されるので、塗布装置10に含有される保護物質の量、感光体の初期膜厚などを相互に適切な量に設定する事が容易であり、本発明に適している。
【0062】
次に本実施形態1の画像形成装置に用いる帯電手段2について説明する。この帯電装置2は、近接放電を用いて感光体を帯電する。近接放電を用いて感光体を帯電する方法としては、回動可能なローラ状の帯電部材(以下、帯電ローラという)2aを感光体に接触させて配置する接触帯電方式と、帯電ローラを感光体に非接触に配置する非接触帯電方式とがある。本実施形態1においては、非接触帯電方式を用いている。
【0063】
本発明は接触帯電方式にも適用できるが、接触帯電方式においては感光体表面との接触性を向上させ、かつ感光体に機械的ストレスを与えない弾性部材を用いる事が好ましい。しかし弾性部材を用いた場合には帯電ニップ幅が広くなり、これによって帯電ローラ側に保護物質が付着しやすくなることがある。よって、高耐久化の為には、非接触帯電方式を採用する方が有利である。本実施形態1においては、感光体表面における少なくとも画像形成領域に対して所定の帯電ギャップ14をもって対向するよう帯電ローラ2aを配置した非接触帯電方式を採用した。
【0064】
図4は、本実施形態1の画像形成装置に用いる帯電装置2の説明図である。
【0065】
帯電ローラ2aは軸部21aとローラ部21bとからなる。ローラ部21bは軸部21aの回転によって回動可能であり、感光体1表面のうち画像が形成される画像形成領域11に対向する部分は感光体1と非接触である。帯電ローラは、その長手方向(軸方向)の寸法が画像形成領域よりも少し長く設定されており、その長手方向の両端部にスペーサ22を設けている。これら2つのスペーサを感光体表面両端部の非画像形成領域18に当接させることによって、感光体1と帯電ローラとの間に微小なギャップ19を形成している。この微小なギャップ19は、帯電ローラと感光体1との最近接部における距離が5〜100[μm]に維持できるよう構成している。このギャップ19のより好ましい範囲は、30〜65[μm]であり、本実施形態1の装置では、50μmに設定した。また、軸部21aをスプリングからなる加圧バネ15によって感光体側に加圧している。これにより、微小なギャップ19を精度よく維持することができる。また、帯電ローラはスペーサ22を介して感光体表面に連れ回って回転する。
【0066】
帯電ローラ2aには帯電用の電源16を接続している。これにより、感光体表面と帯電ローラ表面との間の微小な空隙での近接放電により、感光体表面を均一に帯電する。印加電圧は、本実施形態1においては直流成分であるDC電圧に交流成分であるAC電圧を重畳した交番電圧を用いている。帯電ローラ2aに印加する印加電圧としてDC電圧にAC電圧を重畳させた交番電圧を印加すると、微小ギャップ変動による帯電電位のばらつきなどの影響が抑制されて均一な帯電が可能となる。
【0067】
帯電ローラ2aは円柱状を呈する導電性支持体としての芯金と、芯金の外周面上に形成された抵抗調整層を有する。帯電ローラ2aの表面は硬質であることが望ましい。ローラ部材としてはゴム部材も使用できるが、ゴム部材のように変形しやすい部材であると感光体1との微小ギャップ19の均一な維持が困難となり、作像条件によっては帯電ローラ2aの中央部のみが感光体表面に突発的に接触する可能性がある。帯電ローラ2aが感光体表面に局所的或いは突発的に接触する事によって生じる保護物質の乱れに対応することは困難であるため、非接触帯電方式を使用する場合にはたわみが少ない硬質の部材が望ましい。
表面が硬質な帯電ローラ2aの具体例としては、例えば、抵抗調整層を高分子型イオン導電剤が分散する熱可塑性樹脂組成物(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン及びその共重合体等)により形成し、抵抗調整層の表面を硬化剤により硬化皮膜処理されたものが挙げられる。また硬化皮膜処理は、例えば、イソシアネート含有化合物を含む処理溶液に抵抗調整層を浸漬させることにより行われるが、抵抗調整層の表面に改めて硬化処理皮膜層を形成することにより行われてもよい。本実施形態では、帯電ローラ2aをφ10mm(直径10mm)で形成した。
本実施形態の感光体1は負帯電性の有機感光体であり、φ30mmのドラム状導電性支持体上に感光層を設けたものである。
【0068】
導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0069】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0070】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
【0071】
次に感光層について説明する。感光層は単層でも積層でもよいが、説明の都合上、先ず電荷発生層と電荷輸送層で構成される場合から述べる。
【0072】
電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生層には公知の電荷発生物質を用いることが可能であり、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられ用いられる。これら電荷発生物質は単独でも、2種以上混合してもかまわない。
【0073】
電荷発生層は、電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
【0074】
必要に応じて電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。結着樹脂の添加は、分散前あるいは分散後どちらでも構わない。
【0075】
ここで用いられる溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられるが、特にケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が良好に使用される。これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0076】
電荷発生層は、電荷発生物質、溶媒及び結着樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコンオイル等のいかなる添加剤が含まれていても良い。
【0077】
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。
【0078】
電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
【0079】
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により単独あるいは2種以上の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0080】
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
【0081】
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
【0082】
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
【0083】
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0084】
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は解像度・応答性の点から、25μm以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)に異なるが、5μm以上が好ましい。
【0085】
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。
【0086】
本発明は感光層が単層構成の感光体にも適用できる。かかる感光体としては、上述した電荷発生物質を結着樹脂中に分散した感光体が使用できる。感光層は電荷発生物質および電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0087】
結着樹脂としては先に電荷輸送層で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましく、さらに好ましくは50〜150重量部である。感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。感光層の膜厚は、5〜25μm程度が適当である。
【0088】
本発明の感光体においては、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
【0089】
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0090】
また、感光体の最表面層に保護層を設けることも可能であり、耐摩耗性を高める上で有効である。例えば耐磨耗性を向上させるためにアモルファスシリコンで表面コートした感光体や、電荷輸送層のさらに表面にアルミナや酸化スズ等を分散させた最表面層を設けた有機感光体などを用いる事もできる。
【0091】
以上説明したように、本発明に用いることができる感光体1の構成は特定の構成に限定されるものではない。導電性支持体の上に電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層のみを設けた1層構成や、導電性支持体の上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層とが積層された構成や、導電性支持体の上に電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層を設けて更に感光層表面に保護層を設けた構成や、導電性支持体の上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層とが積層され更に電荷輸送層上に保護層が設けられた構成や、導電性支持体の上に電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層と電荷発生物質を主成分とする電荷発生層とが積層され更に電荷発生層上に保護層が設けられた構成など、種々の層構成を有する感光体に適用可能である。
【0092】
本出願人の研究によって、帯電装置として近接放電を用いた場合、感光体表面の劣化が生じることが分かった。この劣化は感光体表面を近接放電に直接さらすために生じるものであって、感光体表面への当接部材がない場合においても生じることがわかった。即ち近接放電による感光体表面劣化は、機械的摺擦とは別のメカニズムで発生するものである事が分った。そこで、本実施形態においては、その特徴として、近接放電による感光体表面劣化を防止するための放電劣化防止手段を設けている。以下に、その具体的な構成について詳細を説明する。
【0093】
次に、保護物質が放電による像担持体の劣化を抑制する作用を果たすことを示す実験結果について説明する。ただし、棒状の保護物質を供給源として、ファーブラシを介して感光体の表面に保護物質を塗布する従来の方法を例にとった。
【0094】
図5(a)は、感光体上に保護物質32を存在させることによって、近接放電による感光体劣化が抑制されることを確かめるための実験装置の概略構成図である。図5(b)、感光体表面を保護物質存在部Aと非存在部Bとに分けた状態の説明図である。
【0095】
この実験を行うために、予め帯電ローラ2aと保護物質塗布手段30以外の部材を全て取り払い、保護物質塗布手段30は感光体1の軸方向半分の表面領域に保護物質32を塗布するよう構成した。そして、感光体1と共に帯電手段2と保護物質塗布手段30の駆動を継続して行い、感光体表面の劣化状態を調べた。実験条件は以下の通りである。
・帯電条件:
Vpp(AC電圧のピークツーピーク値)=2.12[kV]
f(AC電圧の周波数)=877.2[Hz]
DC電圧値=−660[V]
・感光体表面の移動速度v=125[mm/s]
・保護物質:ステアリン酸亜鉛
・ファーブラシ31の線速=216[mm/sec]
図5(b)に示すように、感光体1長手方向の半分の領域Aには表面に保護物質としてのステアリン酸亜鉛が塗布され、残り半分の領域Bは感光体1表面がそのまま露出した状態となっている。また、感光体1表面劣化の指標として、感光層の膜削れ量を測定した。
【0096】
図6は、上記実験1を200時間の継続して行った結果を示したグラフである。
【0097】
保護物質32がない領域Bでは、時間の経過とともに膜削れ量が増加していき、200時間経過後には膜厚が約2.5[μm]減少した。これに対して、保護物質32のある領域Aでは、膜厚の減少は8分の1以下に抑制されていた。さらに、200時間経過後に実験に使用した感光体表面を目視観察したところ、保護物質32のない領域Bでは、感光体表面が白く変色し変質していたのに対して、保護物質32のある領域Aでは、新品の感光体1と同様に鏡面を保っていた。
【0098】
以上の実験結果から、保護物質32が存在することによって、放電による感光体表面の劣化が抑制されることが明らかになった。
【0099】
次に、従来技術との差異を明確にし、また適切な保護物質の量を設定するために行った実験について説明する。
【0100】
まず特許文献3、4のごとく、低摩擦係数化の目的でステアリン酸亜鉛を用いる従来技術との差異について説明する。
【0101】
本実施形態においては、保護物質32としてステアリン酸亜鉛を用いた。ステアリン酸亜鉛は従来の画像形成装置においても低摩擦係数化の目的で感光体表面に塗布されていたが、本出願人の検討により、低摩擦係数作用を得るために必要なステアリン酸亜鉛の存在状態と放電による感光体表面の劣化を防止するために必要なステアリン酸亜鉛の存在状態とは異なることが明らかになった。
【0102】
本出願人は放電自体によって感光体1の膜厚が減少する現象への対策として、何か放電による劣化を緩和するものを表面に塗布すれば膜厚減少が防げるのではと考えた。そしてステアリン酸亜鉛を用いて様々な条件で感光体表面に塗布を繰り返したところ、膜厚減少を防げる条件が明らかになった。
【0103】
従来技術との差異を明確にするために、ステアリン酸亜鉛を潤滑剤として感光体表面に塗布する場合と、放電による感光体表面劣化を防止するための保護物質32として感光体表面に塗布する場合との違いについて以下に説明する。
【0104】
表1は、感光体表面へのステアリン酸亜鉛の単位面積当たり塗布量を0.0002[mg/mm2]と、0.0016[mg/mm2]の2通りに変化させた場合に、感光体表面劣化の発生の有無を調べた結果である。また、図7は、この2通りの塗布量でステアリン酸亜鉛塗布を行ったときの感光体表面の摩擦係数の時間による変化を示したグラフである。尚、摩擦係数の測定は、オイラーベルト法によるものである。
【0105】
【表1】

表1の結果より、ステアリン酸亜鉛を0.0002[mg/mm2]塗布した場合には、感光体表面の膜厚が減少しており表面が劣化していた。ステアリン酸亜鉛を0.0016[mg/mm2]塗布した場合には、感光体表面の膜厚は減少しておらず表面が劣化していなかった。この結果から、塗布量が0.0002[mg/mm2]では、近接放電による感光体表面劣化を防止可能な保護物質50を形成するには塗布量が不足しており、塗布量が0.0016[mg/mm2]ではそのための塗布量を満たしていると言える。
【0106】
また、図7の結果より、ステアリン酸亜鉛を0.0002[mg/mm2]塗布した場合mと、0.0016[mg/mm2]塗布した場合Mとは、何れの場合にも、ある程度の時間経過後には感光体表面の摩擦係数が0.1程度となった。
【0107】
この程度低い摩擦係数であれば、機械的磨耗による感光体表面の膜削れは防止することができる。表1及び図7の結果から、ステアリン酸亜鉛を潤滑剤として塗布して感光体表面を低摩擦係数化するためには、塗布量が0.0002[mg/mm2]で十分であるが、感光体表面を近接放電による劣化から保護するためには塗布量を0.0016[mg/mm2]より多くする必要があることが分かる。すなわち感光体を低摩擦係数化するための条件と感光体表面を近接放電による劣化から保護するための条件とは異なっており、近接放電による劣化から保護するための条件は従来技術からは導き出せない。
【0108】
次に特許文献5、6のごとく、放電によって感光体表面に異物が付着しやすくなるという課題に対する従来技術との差異について説明する。
【0109】
放電による感光体特性の変化を防止するためにステアリン酸亜鉛などを感光体表面に塗布させる技術については従来から開示されていたが、感光体表面に保護物質を存在させる際の条件について深く検討されてはいなかった。
【0110】
本出願人の検討により、感光体表面を近接放電による劣化から保護するための条件は帯電条件と密接な関係があることが明らかになった。この事実を示す実験結果について説明する。
【0111】
帯電ローラと感光体のみから構成される実験系を用いて3つの実験を行い、感光体表面の劣化状態を調べた。いずれの実験も感光体1、帯電ローラ2a、塗布装置30のみから構成される実験系で実施した。
【0112】
第一の実験では、帯電ローラに印加するAC電圧のピークツーピーク電圧値Vppを2.2[kV]、2.6[kV]、3.0[kV]と変化させ、AC電圧の周波数fは1350[Hz]に固定し、DC電圧は−600[V]とした。また感光体表面の移動速度vは113[mm/s]とした。
【0113】
Vppの変化を横軸に、感光体の膜厚減少量を縦軸にとって本実験の結果をプロットしたのが図8である。
【0114】
図8から、感光体膜厚の減少は明らかにVppに比例している。
【0115】
また、Vppが約1.9[kV]のときに膜厚減少が0となっている。この点について本出願人は次のように考えている。
【0116】
AC電圧を印加した時、帯電部材に印加する電圧が所定の値以上とならないと帯電部材表面と感光体表面との間で放電が開始される事が知られている。本出願人の研究によれば、非接触帯電の場合、帯電部材表面と被帯電表面との最近接距離をGp[μm]としたときに帯電部材に印加する電圧が以下の値以上となると帯電部材表面と感光体表面との間で放電が開始される。以下、この値を放電開始電圧Vthと記す。
【0117】
Vth=312+6.2×(d/εopc+Gp/εair)+√(7737.6×d/ε)[V]
ここで感光体の膜厚をd[μm]、感光体の比誘電率をεopc、感光体と帯電部材の間の空間における比誘電率をεairと記している。
【0118】
AC電圧のVppが上記Vthの2倍以上となったときに帯電部材と感光体との間で双方向に放電が発生する。
【0119】
本例では帯電ローラと感光体との間のギャップは50μm、感光体の比誘電率は約3、膜厚は30μm、感光体と帯電部材の間の空間における比誘電率は約1であったので、上記式に当てはめるとVth=962[V]となり、帯電部材に印加する電圧が962[V]以上となると帯電部材表面と感光体表面との間で放電が開始され、またVppが約1924[V]を越えるとAC電圧による放電が開始されると考えられる。放電現象として支配的なのはAC電圧によって生じる双方向放電であり、このためVppが約1.9[kV]を越えると感光体膜厚の減少が始まると考えられる。
【0120】
第二の実験では、帯電ローラに印加するAC電圧の周波数fを500[Hz]、900[Hz]、1400[Hz]、2000[Hz]、4000[Hz]と変化させ、AC電圧のピークツーピーク電圧値Vppは2.2[kV]に固定し、DC電圧は−600 [V]とした。また感光体表面の移動速度vは104[mm/s]とした。
【0121】
fの変化を横軸に、感光体の膜厚減少量を縦軸にとって本実験の結果をプロットしたのが図9である。
【0122】
図9から、感光体膜厚の減少は明らかにfに比例している。このように感光体膜厚の減少は帯電条件に依存しており、具体的にはVpp、fに比例している。
【0123】
そこで本出願人は感光体膜厚の減少が、Vpp−2×Vthに比例し、fに比例し、また感光体の移動速度が遅いと同じ帯電条件でも単位面積あたりに照射される放電エネルギーが大きいと予測されることから感光体表面の移動速度vに反比例すると予測した。そして第三の実験として、感光体表面の放電による劣化を防止するために必要な保護物質の量を求めるための実験として、Vpp、f、保護物質の量を変えながら感光体表面の劣化の有無を調べた。その結果を表2に示す。
【0124】
【表2】

但しX={Vpp−2×Vth}×f/vである。
【0125】
本実験において保護物質の量はステアリン酸亜鉛の元素割合[%]によって表されている。感光体表面の存在する微量の保護物質の量を測定する事は困難であるが、本出願人は保護物質中の特徴的な元素(Zn)を測定する事によって感光体表面に必要な保護物質に関する知見を得る事に成功した。ステアリン酸亜鉛の元素割合[%]はPHI社製Quantum2000型 走査型X線電子分光装置(XPS)を用いて、X線源AlKα、分析領域100μmφの条件で測定した。
【0126】
Znの測定値(元素割合)は帯電部材への電圧印加をせずにステアリン酸亜鉛を塗布しつづけ、5時間経過した段階で感光体表面を測定した場合の値である。すなわち帯電部材へ電圧を印加した状態での実験をまず実施して白濁の有無や膜厚減少量を調べ、その後、帯電部材への電圧印加を行わないことを除き同じ条件で5時間画像形成装置を動作させて亜鉛の存在量を測定した。
【0127】
本実施形態で使用した感光体1では表面層(電荷輸送層)には亜鉛が存在しないので、測定されたZnは全て保護物質であるステアリン酸亜鉛に由来している。その意味で、Znは保護物質の量を表す特徴的な元素と言える。ステアリン酸亜鉛以外の保護物質を使用した場合であっても、感光体には存在しない特徴的な元素が保護物質中に含まれていれば保護物質の量に関する知見を得ることが出来る。
【0128】
次にステアリン酸亜鉛の分子式が[CH3(CH2)16 COO]2Znである事を考慮すると、1のZnに対し36のC、4のO、70のHが存在する。このうちHはXPSでは検出されないので、XPSにより検出される保護物質の元素割合はZnの元素割合の41倍となる。
【0129】
表2の結果からXとZnの関係をプロットして白濁の有無の境界を表す直線を求めると、放電による感光表面の劣化(白濁)を防止するために必要なステアリン酸亜鉛の量は元素割合で
1.52×10-4×{Vpp−2×Vth}×f/v [%]
以上であることが分かる。ここでVpp[V]は帯電部材に印加するAC電圧のピークツーピーク電圧(AC電圧の最高値と最低値との差)、f[Hz]は帯電部材に印加するAC電圧の周波数、v[mm/s]は感光体表面の移動速度である。さらに表2の結果からXとZnの関係をプロットして膜厚減少の有無の境界を表す直線を求めると、ステアリン酸亜鉛の量が元素割合で
2.22×10-4×{Vpp−2×Vth}×f/v [%]
以上であると、膜厚の減少がほとんど発生しないことが分かる。
【0130】
以上に説明したXとZnの関係を図10に示す。
【0131】
こうして得られた亜鉛元素の含有割合に基づいてXPSで測定される保護物質全体の元素割合を計算すると、元素割合で
6.23×10−3×{Vpp−2×Vth}×f/v [%]
であれば感光体の劣化(白濁)が防止でき、
9.10×10−3×{Vpp−2×Vth}×f/v [%]
以上であると、膜厚の減少もほとんど発生しないことが分かる。
【0132】
なぜステアリン酸亜鉛の塗布量によって、感光体表面を近接放電による劣化から保護できたりできなかったりするのか、その理由については、次のように考えられる。近接放電による感光体1の帯電を行う場合、感光体表面の放電領域では放電により発生した粒子(電子、励起分子、イオン、プラズマなど)のエネルギーが感光体表面層に照射される。このエネルギーが感光体表面を構成する分子の結合エネルギーに共鳴、吸収され、電荷輸送層は樹脂分子鎖の切断による分子量低下、高分子鎖の絡み合い度の低下などの化学的劣化を生じて膜厚を減少させてしまうと考えられる。
【0133】
一方、感光体表面に保護物質が存在すると、放電によって発生した粒子のエネルギーが直接照射されるのは保護物質であるため、感光体自身は放電によって発生した粒子の直接照射を免れることになる。従って、保護物質自身が放電により発生した粒子のエネルギーを吸収し、感光体表面の化学的劣化を緩和すると考えられる。図4に示した実験においても、感光体1の保護物質がない領域Bの感光体表面は感光体を構成する分子の残骸が分析から検出されているのに対して、保護物質のある領域Aでは感光体を構成する分子の残骸が検出されておらず、保護物質の下の感光体表面は劣化していなかった。そしてこの領域Aでは、保護物質として供給したステアリン酸亜鉛が化学的に変化、分解した物質が検出されていた。
【0134】
このような検討によれば、上記保護物質32としては種々の物質を用いることが可能である。本実施形態の画像形成装置においてはステアリン酸亜鉛を保護物質32として用いているが、ステアリン酸亜鉛は保護物質32の一例であり、各種の脂肪酸塩、ワックス、シリコンオイル等他の物質を保護物質32として用いることも可能である。
【0135】
脂肪酸塩のうちでも脂肪酸金属塩は、金属元素がXPSによって測定される特徴的な元素となりやすく、塗布量などの条件を設定する上で測定が行いやすい。したがって本実施形態のように帯電条件に応じて最適な量の保護物質を感光体表面に供給する装置を設計する上で好適である。
【0136】
脂肪酸としてはウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンダデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、アラキドン酸、カプリル酸、カプリン酸、カプロン酸などが挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムなどの金属との塩が挙げられる。
【0137】
保護物質としてはステアリン酸亜鉛のようなラメラ結晶紛体を使用すると好適である。ラメラ結晶は両親媒性分子が自己組織化した層状構造を有しており、せん断力が加わると層間にそって結晶が割れて滑りやすい。この作用が低摩擦係数化に効果があるのであるが、放電からの感光体表面保護の観点から見た場合にも、せん断力を受けて均一に感光体表面を覆っていくラメラ結晶の特性は少量の保護物質によって効果的に感光体表面を覆うことが出来るので保護物質として望ましい。
【0138】
ラメラ結晶の性質を充分に利用して放電から感光体表面を保護するためには、保護物質塗布装置30は感光体表面との間で線速差を有し、せん断力を作用させつつ保護物質を塗布する事が望ましい。
【0139】
また本発明のように放電による劣化から感光体表面を保護する事を目的とした時には、保護物質塗布装置30はクリーニング装置と帯電装置との中間に設ける事が望ましい。放電領域に到達する前にクリーニング装置によって保護物質が除去されてしまうことを防止するためである。
【0140】
尚、例えば感光体上に塗付された保護物質がステアリン酸亜鉛である場合には、近接放電を受けて劣化すると粘性を発生する。他の種々の保護物質を使用する場合においても劣化した保護物質は速やかに感光体上から除去することが一般に望ましいと考えられる。かかる観点からは、感光体表面から劣化した保護物質32を除去する除去部材を設けることが望ましい。また劣化した保護部材は現像領域において現像装置内に混入することがある。このような保護物質の混入はトナー帯電量の変動を引き起こす可能性があるので、変動に強い2成分磁気ブラシ現像を用いる事が望ましい。
【0141】
ここで本実施形態の画像形成装置では、帯電ローラ周囲の環境を検出するための温湿度検出器を有している。さらに本実施形態の画像形成装置は、図示せぬコントローラ中に、ファーブラシの回転速度と感光体表面に供給される保護物質の量とを対応させた第一のテーブルと、温湿度検出器によって検出された帯電ローラ周囲の環境と帯電条件とを対応させた第二のテーブルと、ファーブラシの回転速度を制御する塗布制御部と、帯電条件を制御する帯電制御部と、帯電条件に応じて必要な保護部材の量を算出するコンピュータを有している。
【0142】
より具体的には、第一のテーブルとして、ファーブラシの回転速度と、上記XPSによる測定の結果得られるZnの元素割合とが対応させられたテーブルを有している。また第二のテーブルは、帯電ローラ周囲の環境が変化する事によって放電開始電圧が変化した場合でも確実にAC電圧による放電を発生させるために、温湿度値と放電に必要なVppの値とを対応させたテーブルとなっている。
【0143】
さらに帯電条件に応じて必要な保護部材の量を算出するために、コンピュータは、帯電条件から1.52×10-4×{Vpp−2×Vth}×f/v [%]、または2.22×10-4×{Vpp−2×Vth}×f/v [%]の式に従って必要なステアリン酸亜鉛の元素割合を算出する。
【0144】
かかる構成において、本実施形態の画像形成装置は、画像形成開始指令が入力されるとまず温湿度検出器によって温度および湿度(環境条件)を検出し、検出された温度および湿度から第二のテーブルによって帯電条件(Vpp値)を求め、帯電条件に基づいてコンピュータを用いて必要なZnの元素割合を算出し、算出されたZnの元素割合に基づいて第一のテーブルからファーブラシの回転速度を求める。こうして得られた帯電条件(Vpp値)に応じて塗布制御部が最適な回転速度でファーブラシを回転させ、また帯電制御部は帯電部材に印加する電圧を制御しつつ帯電を開始させる。
【0145】
このような制御によって、環境に応じて帯電条件が変化した場合においても、最適な保護物質を感光体表面に供給して感光体の劣化を防止させる事が可能となる。
【0146】
なお1.52×10-4×{Vpp−2×Vth}×f/v [%]の式に従って必要なステアリン酸亜鉛の元素割合を算出する場合には、感光体の膜厚が減少していることを加味してVthを算出する必要がある。そこでコントローラはさらに、累積放電時間を記憶するための記憶手段と累積放電時間から感光体の膜厚を導くための第3のテーブルを持ち、第3のテーブルによって累積放電時間に対応した感光体膜厚を導き出してVthを計算する。
【0147】
[実施形態2]
なお本発明は図3に示したような画像形成装置のみに適用されるものではなく、放電を用いて被帯電体表面を帯電させる装置一般に使用可能である。
【0148】
一例として、図3の画像形成装置において専用のクリーニング装置7を取り除き、転写残トナーを現像装置4で回収させるクリーナレス方式の画像形成装置においても本発明は適用できる。このクリーナレス方式の画像形成装置においては、帯電ローラ2aはゴム材料から構成され、感光体1に接触させられた接触帯電ローラ(Gp=0[μm])であるものとする。
【0149】
このような画像形成装置においては塗布装置30による保護物質塗布の際に感光体上に転写残トナーが多く存在し、このため転写残トナーが存在する場所は感光体表面に保護物質を塗布することができない。しかし放電から感光体表面を保護するためには何らかの物質が感光体表面に存在すればよいので、保護物質の代わりにトナーが感光体表面に存在したとしても本発明の効果は発揮できる。すなわち転写残トナーの影響を考慮せずに、ステアリン酸亜鉛の元素割合[%]を
1.52×10-4×{Vpp−2×Vth}×f/v [%]
以上とすれば感光体の劣化(白濁)が防止でき、
2.22×10-4×{Vpp−2×Vth}×f/v [%]
以上とすれば感光体の膜厚減少が防止できる。
【0150】
ただし転写残トナーが存在すると、塗布装置30や接触帯電ローラと感光体とが速度差(意図的に設けられた速度差または感光体の偏芯などによって生じる意図的でない速度差)を有して接触した時に転写残トナーが移動する事がある。トナーが移動してしまうと、それまでトナーが存在した領域には保護物質32もトナーも存在しないことになり、このような領域が多くなる事によって本発明に既定する条件が満たされなくなると放電による劣化が悪化してしまう。そこで本実施形態では塗布装置30に負の電圧を印加する。例えば塗布装置30に−1000{V}程度の電圧を印加させると感光体上のトナーは強く負帯電して感光体への付着力(鏡像力)が強まる。これによって、接触帯電方式においてもトナーの位置が移動しづらくなり、放電から感光体表面を保護する事が容易となる。
【0151】
[実施形態3]
本実施形態の画像形成装置には、図3に示すように粉体状の保護物質14を感光体表面に供給するための保護物質塗布手段10を設けている。この保護物質塗布手段10は、塗布部材としてのプレ塗布手段12と塗布手段11及び規制手段13からなり、保護物質塗布手段10の中にある粉体状の保護物質を、2つの塗布手段を介して感光体に粉体状の保護物質を塗布(一旦、プレ塗布手段にて保護物質の均一塗布状態を形成し、これを塗布手段に少なくともその一部を移動させるので、「転移」ということもある)するものである。
【0152】
即ち、粉体状の保護物質はその粒径の分布が大きい場合、又は塊になっている場合があるので、プレ塗布手段上に一旦塗布したこれらの粉体状の保護物質にもう1つの塗布手段11によりせん断力が与えられ、より均一に微細粒子に粉砕され、感光体へ塗布されることになる。このとき粉体規制手段13はプレ塗布手段12の長さ方向に塗布量が疎密にならない様にするとともに、余分な粉体状の保護物質を掻き落す役割も持っている。
【0153】
前述の様に、本発明の表面保護物質は代表的なものとして、例えば微粒子状のラメラ結晶が上げられるが、この物質は結晶中にラメラと呼ばれる幾重にも重なった層状構造を有している。具体的化合物にはステアリン酸亜鉛が上げられる。
【0154】
この結晶にせん断力が加わると層間に沿って結晶が割れ易い性質がある。その為に滑り摩擦に対して潤滑効果を有していることが知られている。また、極めて微細に割れた結晶が表面の凹凸を隠蔽する効果を有していることも知られている。しかもステアリン酸亜鉛の結晶は透明性が高いので、本発明に好都合であることも知られている。
【0155】
即ち、例えば、感光体の表面粗さを山と谷で表現すると、潤滑効果については、少なくとも山の部分にステアリン酸亜鉛があれば接触する部材表面との間に該ステアリン酸亜鉛が存在するので、その効果が発現する。一方、表面の保護効果については、山にも谷にもステアリン酸亜鉛があって初めて所期の効果が出てくることになる。この違いは重要である。更に、感光体が長期の使用により表面粗さが大きくなるとこの違いが一層明確になる。大きくなった山にも谷にも同時に適切にステアリン酸亜鉛を適切量供給する本発明の手段が必須なものになる。
【0156】
本発明ではステアリン酸亜鉛微粉末の供給により、主に後者の凹凸隠蔽に対する効果に特徴があるものである。帯電される感光体の全表面に微粉化容易なラメラ結晶の極薄い均一な塗布状態(塗布膜といってもよい)を形成することにより効果的に表面を隠蔽するので、本発明の課題に対して優れた保護効果が現れるものである。
【0157】
市販品のステアリン酸亜鉛の場合、前述の様に粒径分布があることが知られている。一般的に粒径が数〜数十μmあり製造法や原材料の純度、熱履歴によって性状、粒度、形状が変化するといわれている。本発明の塗布手段10を使用すれば余計な加工をせずに使用できるという効果もある。
【0158】
本発明において、感光体の表面に薄く且つ均一にこの保護物質を塗布するが、粉体状の保護物質を使用するのが好ましい実施形態である。プレ塗布手段とこれに続く塗布手段を組み合せて、長期にわたる使用においても感光体の全面に保護物質を必要最小限且つ均一に供給することができる。棒状に固形化された形状であっても、像担持体の表面に塗布できるが、従来の方法ではもっぱら前記の潤滑作用を目的としている為、ある場所では必要以上に過多の塗布箇所があったり、逆に少なかったり、又表面に凹凸があって谷の部分に保護物質が供給されなかったりするが、これでも十分であった。しかし、本発明の目的では極めて不十分であったので、塗布手段に種々の工夫がなされた。
【0159】
プレ塗布手段12は、通常ゴム等の弾性体が好ましい。プラスチック、金属等の固いものでも構わない。ファーブラシの様に芯に繊維を植毛した棒状体であってもよい。ただし、プレ塗布手段12にファーブラシを使用する場合、転移手段11に保護物質を供給することが主な役割になり、せん断力は転移手段11と感光体の間で与えられる。
【0160】
塗布手段11は、通常ローラ状のゴム等の弾性体を使用する。プラスチック等の固いものでも使用できるが、弾性体の様に感光体との接触においてニップ部が生じるものが良い。適切な食い込み量があるとよい。感光体に接して、表面の微細な凹凸に対応して、或いは僅かなうねりがある場合においても、粉体状の保護物質を微量に供給できる弾性体が好ましい。
【0161】
塗布手段11に使用される素材は耐久性からウレタンゴムが好ましい。後述するように電圧印加して使用することがある場合、イオン導電性材料等の導電性制御材を含有してもよい。
【0162】
この塗布手段11は感光体の表面形状による凹凸があった場合、或いは僅かなうねりがある場合においても、これらの山のみならす谷にも保護物質を塗布できるように適度の弾性的変形がある素材が好ましい。硬度40°〜90°(アスカーC硬度計、荷重1kg)である。
【0163】
また、塗布手段11は粉体状の保護物質を擦り付ける動作をすることが好ましい。その為に塗布手段11の表面に適度な面粗さがあることが好ましい。面粗さはRz表示で示すと、5μm以下、通常0.01μm〜4μmである。好ましくは、0.1〜3μmである。Rzが5μm以上では、感光体にキズが付く。Rzが0.01μm以下では、保護物質の塗布が困難になる。
【0164】
さらにまた、塗布手段11の表面に溝状構造があってもよい。溝の深さは0.01〜1mm、幅は0.01〜1mmである。例えば、深さ0.5mm幅0.5mmのスパイラル状の周期的な溝が設けられていると、塗布手段11の材質によるが、塗布手段11が感光体表面に接した場合、押圧力でスパイラル状構造が弾性変形し、その表面を適度に擦り同時に溝に保持した保護物質を供給或いは余剰の保護物質を持ち去る効果があるので、好ましい。又、例えば、発泡構造を有する弾性体であってもよい。表面に個々の泡が現れている構造では、この泡に保護物質が保持されて、都合が良い。
【0165】
これらの表面構造は、プレ塗布手段にも適用可能である。
【0166】
また、塗布手段11は感光体に食込みがあってもよい。食込み量は塗布手段11と感光体の材質で異なるが、適切な食込み量があると表面保護物質を効果的に擦り付けることができる。食込み量は1mm以下、好ましくは0.1〜0.5mmである。要は弾性体が変形し、または戻りの動作で保護物質を擦り付ける動作があればよい。
【0167】
そして、表面保護物質を擦り付ける動作について、塗布手段11、プレ塗布手段12、感光体の表面の移動に速度差があってもよい。速度差がない場合よりも効果的に表面保護物質を擦り付けることができる。塗布手段11の表面の速度は感光体線速の0.1倍〜10倍である。塗布手段12の表面の速度は塗布手段11の表面の0.1倍〜10倍である。但し、感光体の摩耗量が大きい場合、速度差がない連れまわりが良い。連れまわりでは速度差が殆どない。
【0168】
図11にプレ塗布手段12のローラと塗布手段11のローラが反対方向に回転し且つローラ径を同じにし、プレ塗布手段12の回転速度を大きくすることにより、ニップで両ローラの線速度に差をつけた場合を示した。保護物質の紛体は主に両方のローラから圧力を受けると同時に、擦り付ける動作が大きくなり、細かく粉砕された保護物質を少量塗布する効果が大きくなる。その結果、感光体の表面により微細な粉末が供給されると同時に薄い塗布状態が層状に形成される効果が大きくなると考えられ、好ましい。更に、塗布手段11と感光体の線速度に差をつけると、保護物質を擦り付ける動作ができ効果的に少量の保護物質を感光体の表面に転移できる。
【0169】
図12には、プレ塗布手段12のローラと塗布手段11のローラが同じ方向に回転し且つローラ径を同じにすることで、ニップで線速度に差をつける場合を示した。保護物質の紛体は主に両方のローラから圧力を受けると同時に、擦り付ける動作が大きくなり、細かく粉砕された保護物質を少量塗布する効果が大きくなる。その結果、より微細な粉末が感光体の表面に供給されると同時に薄い塗布状態が層状に形成され転移される効果が大きくなると考えられる。これも好ましい。更に、塗布手段11の表面と感光体表面の移動方向を同じ向きに回転させ、速度差をつけると、保護物質を擦り付ける動作ができ効果的に少量の保護物質を感光体の表面に転移できる。
【0170】
また、図13にプレ塗布手段12のローラと塗布手段11のローラが反対方向に回転し、両者のニップで速度差が無い場合、保護物質の紛体は主に両方のローラから圧力を受け、保護物質を細かく粉砕する効果が大きくなる。その結果、より微細な粉末が感光体の表面に供給されるので好ましい。そして、塗布手段11と感光体表面を同じ方向に回転すると、塗布手段の回転速度が小さい場合でも、速度差が大きくできて、保護物質を擦り付ける動作が効果的になる。
【0171】
例示した様に、速度差をつくることで、表面保護物質が満遍なく感光体の表面に擦り付けられて、好ましい。本発明に使用することができるラメラ結晶は、それだけ微粉化し、余分な付着を防ぐことができる。
【0172】
塗布手段11とプレ塗布手段12の組合せでは、両方がゴム等の弾性体が好ましい。また、転写手段11がゴム等の弾性体であり、プレ転写手段12がファーブラシの組合せも使用できるが、ローラに比べて保護物質を均一に満遍なく塗布することが難しい。又、塗布手段11をファーブラシにすることができるが、ブラシの繊維を硬くないと耐久性が不足し、反対の硬くすると感光体の摩耗を促進することが多く、不利である。
【実施例】
【0173】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0174】
図11の構成からなる以下の条件の塗布手段を用意し、図5(a)にある感光体、帯電手段、塗布手段を揃えて感光体の膜厚変化と表面の白濁の有無を観察した。但し、X=8000にした。その結果を表3、4及び、図14に示す。
【0175】
1、ローラ状の塗布手段
・ウレタンゴムローラ(外径20mm、面粗さ3μm以下、アスカーC硬度70(1kg荷重))
・フレ/円筒度:0.05/0.06
・凹み、脹らみ:4μm以下
・線速比(対感光体):1.5
・回転数:90rpm(感光体と同じ方向に回転)
・感光体への食込み量:0.3mm
2、ローラ状のプレ塗布手段
・発泡ポリウレタンローラ(外径20mm、面粗さ3μm以下、アスカーFP硬度70)
・メッシュ数:60個/インチ(泡の直径約200μm)
・線速比(対塗布手段):1.5
・回転数:100rpm(塗布手段と反対方向に回転)
・塗布手段への食込み量:1.0mm
更に、規制手段ウレタンゴム板をプレ塗布手段に設けた。規制量はトレーリング方向で先端腹当てにしたところ、大きなステアリン酸亜鉛粒子の塊を規制十分規制できた。市販のステアリン酸亜鉛(体積平均粒径2.2μm)のものを塗布手段に供給した。プレ塗布手段上の塗布厚は約0.2mg/cmであった。
【0176】
【表3】

【0177】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】従来の画像形成装置において、感光体表面に帯電部材のみを非接触状態で近接配置し、連続約150時間の帯電を行った場合の感光体表面の膜厚の変化を測定したグラフを示す図である。
【図2】従来の画像形成装置において、近接放電によって感光体表面が劣化する場合の感光体表面の状態を示す図である。
【図3】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の画像形成装置における帯電装置を示す概念図である。
【図5】(a)は本発明の画像形成装置において、感光体上に保護物質を存在させることによって、近接放電による感光体劣化の抑制を確認するための実験装置の概略図であり、(b)は本発明の画像形成装置の感光体表面を保護物質存在部と非存在部とに分けた状態を示す図である。
【図6】本発明の画像形成装置の感光体表面の劣化状態を実験するために帯電条件を200時間継続して行った結果のグラフを示す図である。
【図7】本発明の画像形成装置の感光体表面に対するステアリン酸亜鉛の塗布量の違いにより、放電による時間経過後の感光体表面の摩擦係数のグラフを示す図である。
【図8】本発明の画像形成装置の感光体表面の劣化状態を実験するために感光体の膜厚減少量と帯電ローラに印加した電圧との関係のグラフを示す図である。
【図9】本発明の画像形成装置の感光体表面の劣化状態を実験するために感光体の膜厚減少量と帯電ローラに印加した電圧の周波数との関係のグラフを示す図である。
【図10】本発明の画像形成装置において放電による感光体表面の劣化を防止するために必要なステアリン酸亜鉛の元素割合のグラフを示す図である。
【図11】本発明の画像形成装置におけるプレ塗布手段のローラと塗布手段のローラが反対方向に回転し、両者のニップで速度差をつけた場合の感光体表面に保護物質を塗布する図を示す。
【図12】本発明の画像形成装置におけるプレ塗布手段のローラと塗布手段のローラが同じ方向に回転し、両者のニップで速度差をつけた場合の感光体表面に保護物質を塗布する図を示す。
【図13】本発明の画像形成装置におけるプレ塗布手段のローラと塗布手段のローラが反対方向に回転し、両者のニップで速度差がない場合の感光体表面に保護物質を塗布する図を示す。
【図14】本発明の実施例において、感光体の膜厚変化と感光体表面のステアリン酸亜鉛の存在量との関係のグラフを示す図である。
【符号の説明】
【0179】
1 被帯電体(感光体)
2 帯電手段
2a 帯電ローラ
3 露光手段
4 現像手段
5 転写手段
6 定着手段
7 クリーニング
8 クリーニングブレード
9 徐電手段
10 保護物質塗布手段
11 塗布手段
12 プレ塗布手段
13 規制手段
14 粉末状保護手段
15 加圧バネ
16 電源
17 画像形成領域
18 非画像形成領域
19 微小なギャップ
21a 軸部
21b ローラ部
22 スペーサ
30 保護物質塗布手段
31 ファーブラシ
32 保護物質
50 感光体表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、移動する被帯電体と、
被帯電体に対して接触または接近して設けられた帯電部材に交流成分を含む直流電圧を印加することによって生じる放電を利用して被帯電体を帯電させる帯電手段と、
帯電手段によって帯電した被帯電体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
潜像形成手段によって形成された静電潜像の画像部にトナーを付着して現像させる現像手段と、
被帯電体表面を保護する保護物質を被帯電体表面に塗布する塗布手段と、
を有する画像形成装置において、
該塗布手段がプレ塗布手段と塗布手段からなり、該保護物質が該プレ塗布手段を介して塗布手段に塗布され、且つ
放電領域において被帯電体表面に存在する保護物質の元素割合[%]が、XPSによる測定で、
6.23×10−3×(Vpp − 2×Vth)×f/v [%]
以上であることを特徴とする画像形成装置。
(式中、Vppは帯電部材に印加する交流成分の振幅[V]、fは帯電部材に印加する交流成分の周波数[Hz]、Gpは帯電部材表面と被帯電体表面との最近接距離[μm]、vは帯電部材と対向する被帯電体表面の移動速度[mm/sec]、Vthは放電開始電圧である。またVthの値は、被帯電体の膜厚をd[μm]、被帯電体の比誘電率をεopc、被帯電体と帯電部材の間の空間における比誘電率をεairとしたとき、312+6.2×(d/εopc+Gp/εair)+√(7737.6×d/ε)である)
【請求項2】
前記放電領域において被帯電体表面に存在する保護物質の元素割合[%]が、XPSによる測定で、
9.10×10−3×(Vpp − 2×Vth)×f/v [%]
以上であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記保護物質はラメラ結晶紛体であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
移動する被帯電体と、
被帯電体に対して接触または近接して設けられた帯電部材に交流成分を含む直流電圧を印加することによって生じる放電を利用して被帯電体を帯電させる帯電器と、
帯電器によって帯電させられた被帯電体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、
潜像形成手段によって形成された静電潜像の画像部にトナーを付着させる現像手段と、
被帯電体表面を保護する保護物質を被帯電体表面に塗布する塗布手段と、
を有する画像形成装置において、
該塗布手段がプレ塗布手段と塗布手段からなり、該保護物質が該プレ塗布手段を介して塗布手段に塗布され、
前記保護物質がラメラ結晶体の脂肪酸金属塩であり、
放電領域において被帯電体表面に存在する脂肪酸金属塩に含まれる金属元素の元素割合[%]が、XPSによる測定で、
1.52×10−4×(Vpp − 2×Vth)×f/v [%]
以上であることを特徴とする画像形成装置。
(式中、Vppは帯電部材に印加する交流成分の振幅[V]、fは帯電部材に印加する交流成分の周波数[Hz]、Gpは帯電部材表面と被帯電体表面との最近接距離[μm]、vは帯電部材と対向する被帯電体表面の移動速度[mm/sec]、Vthは放電開始電圧である。またVthの値は、被帯電体の膜厚をd[μm]、被帯電体の比誘電率をεopc、被帯電体と帯電部材の間の空間における比誘電率をεairとしたとき、312+6.2×(d/εopc+Gp/εair)+√(7737.6×d/ε)である)
【請求項5】
前記放電領域において被帯電体表面に存在する脂肪酸金属塩に含まれる金属元素の元素割合[%]が、XPSによる測定で、
2.22×10−4×(Vpp − 2×Vth)×f/v [%]
以上であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする請求項4または5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
帯電部材と被帯電体との最近接距離が1〜100[μm]であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記帯電部材の表面層が樹脂材料であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記保護物質を被帯電体表面に塗布するための塗布手段と被帯電体とが接触する部分での塗布手段の速度が被帯電体表面の移動速度とは異なっていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記帯電部材周囲の環境状態を検出する検出器と、検出された環境状態に基づいて被帯電体表面への保護物質の供給量を制御する制御部とをさらに有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記現像手段は被帯電体表面に残留した転写残トナーを除去する手段を兼ねており、
前記帯電器は帯電部材と被帯電体との最近接距離Gpが0[μm]である接触帯電方式の帯電器であり、
前記現像手段に対して被帯電体表面の移動方向下流側、かつ、前記帯電器に対して被帯電体表面の移動方向上流側に、前記被帯電体表面に残留した転写残トナーを帯電させるトナー帯電手段を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記被帯電体に接する塗布手段と該塗布手段に接するプレ塗布手段が弾性を有するローラからなり、更に該プレ塗布手段上の保護物質を規制する規制手段を有することを特徴とする請求項1〜11記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記保護物質が、粉体状又はバー状であることを特徴とする請求項12記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記被帯電体の表面の移動速度と該被帯電体に接する塗布手段の表面の移動速度が同一又は異なっていることを特徴とする請求項13記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記プレ塗布手段の表面の移動速度と該プレ塗布手段に接する塗布手段の表面の移動速度が同一又は異なっていることを特徴とする請求項14記載の画像形成装置。
【請求項16】
請求項1〜15に記載の画像形成装置を用いて、少なくとも被帯電体表面上への近接帯電方式の帯電、該被帯電体表面上での画像露光による静電潜像形成、該静電潜像のトナーによる現像、該現像によって可視像化されたトナー像の記録媒体への転写、該帯電体表面上の転写残トナーのクリーニング、及び該被帯電体上の残留電荷の除電からなる画像形成工程が繰り返しなされる間に、所定の帯電条件で放電領域において必要量の保護物質が継続して均一に該被帯電体表面に塗布されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項17】
移動する被帯電体と、
被帯電体に対して接触または近接して設けられた帯電部材に交流成分を含む電圧を印加することによって生じる放電を利用して被帯電体を帯電させる帯電器と、
帯電器によって帯電させられた被帯電体表面を画像情報に応じて除電することによって形成された静電潜像の画像部にトナーを付着させる現像手段と、
放電領域において被帯電体表面に存在する保護物質の元素割合[%]が、XPSによる測定で、
6.23×10−3×{Vpp−2×Vth}×f/v [%]
以上となるように被帯電体表面に保護物質を供給させる供給器と、
を一体に構成したプロセスカートリッジ。
(式中、Vppは帯電部材に印加する交流成分の振幅[V]、fは帯電部材に印加する交流成分の周波数[Hz]、Gpは帯電部材表面と被帯電体表面との最近接距離[μm]、vは帯電部材と対向する被帯電体表面の移動速度[mm/sec]、Vthは放電開始電圧である。またVthの値は、被帯電体の膜厚をd[μm]、被帯電体の比誘電率をεopc、被帯電体と帯電部材の間の空間における比誘電率をεairとしたとき、312+6.2×(d/εopc+Gp/εair)+√(7737.6×d/ε)である)
【請求項18】
前記放電領域において被帯電体表面に存在する保護物質の元素割合[%]が、XPSによる測定で、
9.10×10−3×(Vpp − 2×Vth)×f/v [%]
以上であることを特徴とする請求項17に記載のプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−3614(P2006−3614A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179669(P2004−179669)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】