画像形成装置およびその制御方法
【課題】 印刷時におけるバンディングの振幅を予測し、予測した振幅に基づいてバンディング補正処理を行うことで、より好適な補正を実現する。
【解決手段】 電子写真方式により画像を形成する画像形成装置であって、画像形成のために周期的な運動をするデバイスと、前記デバイスの基準状態において作成された、前記デバイスに起因する濃度変動を補正するためテーブルを保持する保持手段と、前記基準状態とは異なる状態における前記変動の振幅を予測する予測手段と、前記予測手段によって予測された振幅に基づいて、前記テーブルを調整する調整手段とを有する。
【解決手段】 電子写真方式により画像を形成する画像形成装置であって、画像形成のために周期的な運動をするデバイスと、前記デバイスの基準状態において作成された、前記デバイスに起因する濃度変動を補正するためテーブルを保持する保持手段と、前記基準状態とは異なる状態における前記変動の振幅を予測する予測手段と、前記予測手段によって予測された振幅に基づいて、前記テーブルを調整する調整手段とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスによる画像形成を行う画像形成装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を像担持体上に走査することで画像を形成するレーザビームプリンタや複写機等、いわゆる電子写真方式の画像形成装置が知られている。電子写真方式の画像形成装置においては一般に、帯電、露光、現像、転写、定着、クリーニング等の複数のプロセスを経て画像を形成する。
【0003】
ここで、一般的な電子写真プロセスについて説明する。まず帯電手段が、像担持体である感光体を一様に帯電させた後、露光手段が感光体に画像信号に応じたレーザ光を露光し、感光体上に静電潜像を形成する。このときレーザ光が走査する方向を主走査方向といい、この主走査方向と直行する副走査方向に順次感光体を回転させながら、静電潜像を形成する。その後、現像手段が感光体上の静電潜像を現像し、感光体上にトナー像を形成する。その際、現像手段がトナーを帯電させた後、略等速度で回転する現像ローラーを用いて感光体へトナーを供給し、このトナーを静電潜像に付着させてトナー像を形成する。そして、感光体上のトナー像を記録媒体上に転写し、定着することで画像を形成する。なお、感光体上に残った転写残トナーはクリーニング手段により回収される。
【0004】
このような画像形成装置では、各種の原因によって形成された画像に濃淡による横縞(以下、バンディングと記述する)が発生し、画像の品質を著しく損なうという問題があった。
【0005】
例えば、現像ローラーの回転速度が変動することによって、バンディングが発生する場合がある。現像ローラーの回転速度が高いと、供給されるトナーが多くなる。その結果、静電潜像に付着するトナーも多くなり、形成される画像は本来形成したい画像の濃度よりも薄くなる。また、現像ローラーの回転速度が低いと、供給されるトナーが少なくなる。その結果、静電潜像に付着するトナーも少なくなり、形成される画像は本来形成したい画像の濃度よりも濃くなる。
【0006】
そこで、中間転写ベルト上に形成した画像の読み取り結果に基づいて、露光量を補正する方法が開示されている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−140402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のバンディングは、画像形成装置が連続して稼働すると、画像形成に関わるデバイスの物理特性が変化することにより、バンディングの振幅が変化することがある。しかしながら、特許文献1の方法によれば、ある時点における補正用画像の読み取り結果に基づいて、その後一定期間の補正処理を行っているため、補正が良好に行えない場合があった。
そこで本発明の目的は、印刷時におけるバンディングの振幅を予測し、予測した振幅に基づいてバンディング補正処理を行うことで、より好適な補正を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、電子写真方式により画像を形成する画像形成装置であって、画像形成のために周期的な運動をするデバイスと、前記デバイスの基準状態において作成された、前記デバイスに起因する濃度変動を補正するためテーブルを保持する保持手段と、前記基準状態とは異なる状態における前記変動の振幅を予測する予測手段と、前記予測手段によって予測された振幅に基づいて、前記テーブルを調整する調整手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、印刷時におけるバンディングの振幅を予測し、予測した振幅に基づいてバンディング補正処理を行うことで、より好適な補正を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置の構成を示すブロック図
【図2】現像ローラーの回転軸のずれを示す模式図
【図3】バンディング補正に関わる構成を示すブロック図
【図4】補正テーブル生成処理のフロー図
【図5】補正画像データ生成処理のフロー図
【図6】パッチの模式図
【図7】(a)は濃度プロファイルの一例、(b)は(a)を現像ローラーの回転周期毎に切り出したもの、(c)は(b)を平均化して得られる波形、を示す模式図
【図8】バンディング特性テーブルの一例
【図9】補正テーブルの一例
【図10】電流印加履歴の一例
【図11】抵抗対振幅テーブルの一例
【図12】バンディングの振幅が変化する様子の一例
【図13】効果を示す図
【図14】バンディング補正に関わる構成を示すブロック図
【図15】補正テーブル生成処理のフロー図
【図16】保持する温度対振幅テーブルの一例
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明を好適な実施例に従って詳細に説明する。なお、以下の実施例において示す構成は一例にすぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0013】
<実施例1>
図1は、本実施例に示す画像形成装置の構成図である。図1に示す画像形成装置は、エンジン10とコントローラ11からなる。エンジン10は、中間転写ベルト101に沿って、中間転写ベルト101回転方向R1の上流から、CMYK各色の画像形成部100a、100b、100c、100d、濃度センサ120、二次転写装置102、中間転写ベルトクリーニング装置104を有する。また、二次転写装置102の下流側には、定着装置103が配置されている。シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y),ブラック(K)各色の画像形成部100a、100b、100c、100dは、同様の処理を行う。画像形成部100aは、感光体ドラム1001a、帯電装置1002a、露光装置1003a、現像装置1004a、一次転写装置1005a、クリーニング装置1006a、回転位相取得部121aを有する。画像形成部100b、100c、100dについても同様である。
【0014】
以下に、画像形成装置の動作を詳細に説明する。まず、画像形成装置が行う画像形成処理について説明する。画像形成部100a、100b、100c、100dは、各色トナーを使用してそれぞれの感光体上にトナー像を形成し、中間転写ベルト101に順次一次転写する。画像形成装置で用いられるトナーは一般に、CMYKの4色である。本実施例では、画像形成部100aはCトナー、画像形成部100bはMトナー、画像形成部100cはYトナー、画像形成部100dはKトナーを使用する。なお、画像形成部及び使用する色は4種類に限らない。例えば、淡インクやクリアインクがあってもよい。また、各色の画像形成部の順番も本実施例に限定されるものではなく、任意でよい。トナー像形成は、画像形成部100a、100b、100c、100dの順に一定時間ずつタイミングをずらし、並行して実施される。まず、画像形成部100aが有する感光体ドラム1001aは、外周面に帯電極性が負極性である有機光導電体層を有し、矢印R3方向に回転する。
【0015】
(帯電)
帯電装置1002aは、負極性の電圧を印加され、感光体ドラム1001aの表面に帯電粒子を照射することにより、感光体ドラム1001aの表面を一様な負極性の電位に帯電する。帯電された感光体ドラム1001aは、矢印R3方向に回転する。
【0016】
(露光)
露光装置1003aは、コントローラから取得する制御信号にもとづいてレーザ光を駆動し、感光体ドラム1001a上にレーザ光を走査する。これにより、帯電した感光体ドラム1001aの表面に静電潜像を形成する。
【0017】
(現像)
現像装置1004aは、略等速度で回転する現像ローラーを用いて、負極性に帯電させたトナーを感光体ドラム1001aへ供給する。これにより、感光体ドラム1001a上の静電潜像にトナーを付着させ、静電潜像を反転現像する。本実施例で用いる現像ローラーは、アルミ円筒上にカーボンを分散させることで電気抵抗の調整がされた導電ゴムをコートしたものを用いている。
【0018】
(一次転写)
一次転写装置1005aは、正極性の電荷を印加され、負極性に帯電している感光体ドラム1001a上に担持されたトナー像を中間転写ベルト101へ一次転写する。
【0019】
(クリーニング)
クリーニング装置1006aは、一次転写装置1005aを通過した感光体ドラム1001a上に残留した残トナー像を除去する。
【0020】
ここまでは、Cの画像形成部100aをについて説明したが、画像形成部100b、100c、100dについても同様である。カラー画像を形成する場合、これまでの帯電、露光、現像、一時転写、クリーニングの各工程は、各色の画像形成部100a、100b、100c、100dにおいて順次進められる。その結果、中間手転写ベルト上には、4色のトナー像が重なった画像が形成される。
【0021】
(二次転写)
二次転写装置102は、中間転写ベルト101に担持されたトナー像を、矢印R2方向に移動する記録媒体Pへ二次転写する。
【0022】
(定着)
定着装置103は、トナー像を二次転写された記録媒体Pに加圧加熱などの処理を施し、画像を定着させる。
【0023】
(ベルトクリーニング)
中間転写ベルトクリーニング装置104は、二次転写装置102を通過した中間転写ベルト101上に残留した残トナーを除去する。
【0024】
以上、画像形成処理について説明した。以上のような電子写真方式を用いて画像を形成する画像形成装置では、各種原因によってバンディングが発生する。ここで、現像ローラーに起因するバンディングについて詳細に説明する。以下、各画像形成部と各画像形成部が有する構成に付随する符号a、b、c、dは省略する。例えば、画像形成部100は、画像形成部100a、100b、100c、100dを示す。
【0025】
現像処理において、現像装置1004の現像ローラーが現像位置まで搬送するトナーは、時間当たりの搬送量が常に一定となることが望ましい。そのため一般に、現像ローラーは断面が真円の円柱であって、2つの底面の重心を通る直線を軸にして等速回転するように制御される。また、現像ローラー及びトナーは常に一定の電位に帯電されている。
【0026】
ところが、現像ローラーの回転速度にむらが生じ、バンディングが発生することがある。現像ローラーの回転が速い時には現像ローラーが搬送するトナーの量が多くなり、遅い時には少なくなることで画像の濃度が変動し、バンディングが発生する。現像ローラーの回転速度むらは、現像ローラーを駆動するモータの速度むらや、現像ローラーとモータを連結するギアの不良などによって生ずる。
【0027】
また、現像ローラーの回転軸のずれによってもバンディングが発生する。図2は現像ローラーの回転軸のずれを示す模式図である。図2(a)は現像ローラー表面と感光体表面が遠い状態を示し、図2(b)は現像ローラー表面と感光体表面が近い状態を示す。現像ローラーの回転軸にずれがある場合、図2(a)の状態と図2(b)の状態とが、現像ローラーの回転周期に同期して交互に繰り返される。すると、前者では現像効率が低くなり、後者では高くなることでバンディングが発生する。
【0028】
この様に現像ローラーにおける各種原因によって画像の濃淡が変化し、バンディングが発生する。
【0029】
以上説明したバンディングは、各種原因によってその振幅が変化する。振幅が変化する主要因の一つとして、現像ローラーの導電ゴム部の電気抵抗が通電により変化することが挙げられる。より具体的には、画像形成処理中の電圧印加に伴う現像電流により、導電ゴム部内に通電経路が増加するために、徐々に電気抵抗が低下してしまう。同時に、現像ローラーの電気抵抗による電圧降下量が小さくなることにより、現像バイアスが初期設定値よりも上昇する。現像バイアスが上昇すると、現像コントラストが大きくなり、現像量が増加(形成される画像の濃度が上昇)する。これがバンディングの振幅を大きくする要因となる。一方、現像ローラーの電気抵抗が一時低下した後、画像形成処理を休止し続けると、現像ローラーの電気抵抗は徐々に上昇し、やがて定常時の電気抵抗に戻る。
【0030】
図12に、バンディングの振幅が変化する様子の一例を示す。図12(a)および(b)ともに横軸は画像の副走査方向の位置、縦軸は各副走査方向における平均濃度を表している。図12(a)が示すバンディングは、現像ローラーが定常時の電気抵抗である場合のバンディングである。また図12(b)が示すバンディングは連続印字によって現像ローラーの電気抵抗が低下している場合のバンディングである。図12(b)が示すバンディングは、図12(a)が示すバンディングと比較して、その振幅が大きいことがわかる。従って、現像ローラーの電気抵抗が定常時(基準状態)である時点に作成されたバンディングを補正するためのテーブルは、図12(b)のバンディングは必ずしも補正できない。
【0031】
本実施例では、現像ローラーの回転周期に同期して発生するバンディングに対してバンディング補正処理を行う。その際、バンディング補正処理の対象となる画像を形成する時刻での現像ローラーの電気抵抗を予測する。予測された電気抵抗(以下、予測抵抗とする)に基づいて、当該時刻において予測されるバンディングの振幅(以下、予測振幅と記述する)を算出し、バンディングの補正すべき量を調整する。
【0032】
図3は、本実施例の画像形成装置がバンディング補正処理を行う構成を示したブロック図である。履歴格納部1107は、電流印加履歴と基準抵抗を格納する。調整率算出部1106は、履歴格納部1107に格納された電流印加履歴と基準抵抗に基づいて、調整率を算出する。調整率算出部1106は、算出した調整率を階調補正部1104に出力する。濃度センサ120は、画像形成部100a、100b、100c、100dを通過して中間転写ベルト101上に一次転写されたトナー像の濃度を検出する。検出した濃度は、バンディング波形算出部1101へ出力する。回転位相取得部121a、121b、121c、121dは、現像装置1004a、1004b、1004c、1004dそれぞれが有する現像ローラーの回転位相を取得する。回転位相取得部121は、各現像ローラーの回転位相をバンディング波形算出部1101と階調補正部1104に出力する。バンディング波形算出部1101は、濃度センサから取得するトナー像の濃度と回転位相取得部121から取得する回転位相に基づいて、バンディング波形を算出する。算出方法については後述する。バンディング波形算出部1101は、算出したバンディング波形を補正テーブル生成部1102へ出力する。補正テーブル生成部1102は、バンディング波形算出部1101から取得したバンディング波形に基づいて補正テーブルを生成し、補正テーブル格納部1103へ出力する。補正テーブル格納部1103は補正テーブル生成部1102から補正テーブルを受け取り、格納する。画像入力部111は、外部から入力画像データを受け取り、YMCK各色の色画像データを生成し、階調補正部1104に出力する。階調補正部1104は、画像入力部111から取得した各色の色画像データと回転位相取得部121から取得した回転位相に基づいて、各色の色画像データを補正する。補正には、補正テーブル格納部1103に格納された補正テーブルを、調整率算出部1106が算出した調整率で調整して用いる。階調補正部1104は、補正した各色の色画像データを画像処理部1105へ出力する。画像処理部1105は、階調補正部1104から補正した各色の色画像データを受け取り、通常のガンマ処理やハーフトーン処理を施し、画像形成装置113が出力可能なハーフトーン画像データを生成する。画像処理部1105は生成したハーフトーン画像データを画像形成制御部113へ出力する。画像形成制御部113は、画像処理部1105から受け取ったハーフトーン画像データに基づいてエンジン10へ制御信号を出力し、画像形成処理を行う。
【0033】
以下に、本実施例におけるバンディング補正処理について詳細に説明する。本実施例が行うバンディング補正処理は、補正テーブル生成処理と、補正画像データ生成処理との2つからなる。
【0034】
[補正テーブル生成処理]
まず、補正テーブル生成部1102が補正テーブルを生成する。図4は、補正テーブル生成処理のフローを示す図である。補正テーブル生成処理は、画像形成部100a、100b、100c、100dそれぞれが形成する各色の画像データに対して実施する。これまでと同様に、各構成に付随する符号a、b、c、dは省略する。例えば、画像形成部100は、画像形成部100a、100b、100c、100dを示す。補正テーブル生成処理は、所定のタイミングで繰り返し実施される。所定のタイミングとは例えば、画像形成装置に電源が投入された直後や、前回の補正テーブル生成処理から100回の画像形成処理を実施した後などである。補正テーブル生成処理において、補正テーブル格納部1103に格納される補正テーブルおよび履歴格納部1107に格納される基準抵抗が算出される。従って、補正テーブル生成処理を実施する度に、補正テーブル及び基準抵抗が更新される。また補正テーブルおよび基準抵抗は、電源が切断されると同時に破棄される。ここで更新される補正テーブルは、画像データが表す階調ごとに位相に応じて補正すべき階調を導出するためのテーブルである。この時、補正テーブル生成処理時に発生しているバンディングを好適に補正するよう作成される。また、ここで更新される基準抵抗は、補正テーブル生成処理を実施する時における現像ローラーの電気抵抗である。補正画像データ生成処理では、補正テーブル生成時とは異なる条件下である画像形成時における現像ローラーの電気抵抗を予測し、予測抵抗を算出する。そして、ここで更新された基準抵抗と予測抵抗に基づいて、画像形成時に発生するバンディングを好適に補正するよう保持している補正テーブルを調整する。ステップS410において、基準抵抗算出処理を行う。以下に、ステップS410において行う基準抵抗算出処理について詳細に説明する。ステップS411において、電流印加履歴取得処理を行う。まず調整率算出部1106は、履歴格納部1107から電流印加履歴を取得する。電流印加履歴は、前回の補正テーブル生成処理でパッチ形成処理を終了した時刻からの期間について、各時刻での印加電流を記録した情報である。ただし、電源投入から現在までの間に補正テーブル生成処理を実施していない場合、電流印加履歴は電源投入時刻から現在までの期間を示す。さらに、取得した電流印加履歴に、今回の補正テーブル生成処理におけるパッチ形成処理を終了するまでに、印加する予定の電流を追加して記録する。図10は、ここで今回のパッチ形成処理を終了するまでの電流印加予定を追加した後の電流印加履歴一例である。プリントジョブ期間に印加された電流は、電流印加履歴が予め示していた履歴である。今回のパッチ形成処理が終わるまでに印加される電流は、ステップS411において電流印加履歴に追加された情報である。ステップS412において、前基準抵抗取得処理を行う。調整率算出部1106は、履歴格納部1107から前回実施した補正テーブル生成処理で算出し格納した基準抵抗(前基準抵抗)を取得する。なお、電源投入から現在までの間に補正テーブル生成処理を実施しておらず、履歴格納部1107に基準抵抗が格納されていない場合は、後述する定常時の電気抵抗Rmaxを取得する。ステップS413において、基準抵抗算出処理を行う。調整率算出部1106は、ステップS411で取得した電流印加履歴と、ステップS412で取得した前基準抵抗とに基づいて現像ローラーの基準抵抗を算出する。補正テーブルを作成する時点における基準抵抗は、後に調整率を算出する際に必要になる。詳細については後述する。ステップS414において、基準抵抗更新処理を行う。調整率算出部1106は、ステップS413において算出した基準抵抗を履歴格納部1107へ出力する。履歴格納部1107は受け取った新しい基準抵抗を基準抵抗として更新する。以上で、ステップS410で行う基準抵抗算出処理を終了する。
【0035】
ステップS420において、パッチ形成処理を行う。
【0036】
図6はパッチの模式図である。パッチは、階調の異なる複数のベタ部から構成されている。ここでは、図5に示す通り、5つの異なる階調のベタ部が形成される。各ベタ部は、長方形で均一な階調で表現された画像であり、副走査方向の長さが、現像ローラーの周期の5倍よりも長くなるよう設計されている。なお、副走査方向の長さは、現像ローラーの周期の5倍以上に限らない。要求される補正精度、許容される処理時間・使用メモリ容量などにより、適宜定めればよい。パッチ形成処理は、前述の画像形成処理と同様に画像形成部100が形成したトナー像を中間転写ベルト101へ一次転写することで実施される。パッチ形成処理において、回転位相取得部121は、パッチ形成開始からの回転位相を取得し、バンディング波形算出部1101へ出力する。ステップS430において、パッチ読み取り処理を行う。濃度センサ120は、ステップS420において中間転写ベルト101上に転写されたパッチの濃度を検出する。濃度センサ120は複数の読み取り部を有しており、それぞれの読み取り部は、ステップS420で形成したパッチを構成する各ベタ部に1対1で対応している。つまりここでは、濃度センサ120は少なくとも5つの読み取り部を有している。そして、中間転写ベルト101の移動に伴い、各読み取り部の下を、各読み取り部に対応するベタ部が通過する。各読み取り部は、ベタ部の濃度を一定の微小間隔で検知し、濃度検知信号をバンディング波形算出部1101へ出力する。つまり、各読み取り部から得られる濃度情報は、連続的な情報ではなく離散的な位相における情報である。濃度を検知する微小間隔は、現像ローラーの周期や中間転写ベルト101の搬送スピード、要求される補正精度などを考慮して、適宜定めればよい。
【0037】
以下のステップS440及びステップS450は、パッチを構成するベタ部に対してそれぞれ行う。ステップS440において、濃度プロファイル算出処理を行う。図7(a)はステップS440において算出される濃度プロファイルの一例である。まず、バンディング波形算出部1101は、濃度センサ120から取得した濃度検知信号を副走査方向に順次配列する。次に、バンディング波形算出部1101は、回転位相取得部121からバッチ形成開始時の回転位相を受け取る。さらに、配列した濃度検知信号とバッチ形成時の回転位相とを同期させて、濃度プロファイルを算出する。つまり、図7(a)に示す図は、横軸が現像ローラーの回転位相に対応し、縦軸が濃度を示している。ここでは、現像ローラー4回転分の濃度プロファイルが生成されていることがわかる。
【0038】
ステップS450において、バンディング波形算出処理を行う。まず、バンディング波形算出部1101は、図7(b)で示すように、ステップS440において算出した濃度プロファイルを現像ローラーの回転周期ごとに切り出す。ここでは、4つの波形が切り出される。次に切り出した4つの波形を平均化し、図7(c)で示すようなバンディング波形を算出する。このバンディング波形は、パッチを構成する複数階調のベタ部に対してそれぞれ算出する。本実施例では、5つの異なる階調のベタ部がパッチに形成されているので、5つのバンディング波形が得られることになる。さらに、算出したバンディング波形に対して、副走査方向のスムージング処理及び傾き補正処理をする。副走査方向のスムージング処理は、高周波なバンディング成分を除去するための処理である。高周波なバンディング成分は、バンディングに再現性がない場合や、補正処理の位相にずれが生じた場合に、濃度むらを強調してしまう可能性が高い。そのため、スムージング処理により高周波なバンディング成分を除去することが好ましい。また傾き補正処理は、バンディング波形の始点(位相が0)の値と終点(位相が2π)の値から傾きを求め、これら2つの傾きが等しくなるように行う。バンディング波形に基づいて作成する補正テーブルは、以下に説明する補正画像形成処理において繰り返し用いられるため、傾き補正処理を行い、バンディング波形の始点と終点の間に連続性を確保することが好ましい。
【0039】
以下のステップS460、S470、及び、ステップS480は、現像ローラーの位相ごとに繰り返し行う。ここで処理対象の位相は、ステップS450において濃度センサ120が検出した濃度に基づいて算出されたバンディング波形が保持する位相全て(以下、全位相と記述する)である。
【0040】
ステップS460において、バンディング特性取得処理を行う。まず、補正テーブル生成部1102は、全位相の内、バンディング特性取得処理を未実施のものを1つ選択し、処理対象位相とする。次に、ステップS450で生成した5つの階調に対応する各バンディング波形から、選択した処理対象位相における濃度を取得する。そして図8(a)に示すように、階調と濃度を対応付けて、プロットする。次に、階調方向の補間処理を行い、画像形成装置が表現可能な全ての階調(以下、全階調と記述する)に対して濃度を算出する。以上の処理により、図8(b)に示すバンディング特性テーブルを生成する。なお、ここでの補間処理は、線形補間などの一般的な方法を用いることができる。
【0041】
ステップS470において、補正テーブル作成処理を行う。補正テーブル作成処理は、S460において選択した処理対象位相において、以下の処理を全階調に対して繰り返し行う。まず、補正テーブル生成部1102は、ある階調に対して、目標濃度を取得する。補正テーブル生成部1102は、各階調に対する目標濃度をテーブルや関数などの形態で予め保持している。次に、ステップS460において算出されたバンディング特性テーブルから、取得した目標濃度に対応する階調を補正階調として取得する。以上の処理を各階調に対して行い、階調と補正階調を対応付けて補正テーブルを作成する。図9は、ステップS470において算出された補正テーブルを示す。
【0042】
ステップS480において、補正テーブル格納処理を行う。補正テーブル生成部1102は、ステップS470において作成された補正テーブルを補正テーブル格納部1103へ出力する。補正テーブル格納部1103は受け取った補正テーブルを格納する。
【0043】
ここで、ステップS413における基準抵抗算出処理について詳細に説明する。調整率算出部1106は、ステップS411で取得した電流印加履歴(図10)と、ステップS412で取得した前基準抵抗とに基づいて、式(1)および式(2)により基準抵抗(時刻t4における現像ローラーの電気抵抗)を算出する。
【0044】
性質1:(ゼロでない)一定の電流が印加されている期間においては、各時刻tでの現像ローラーの電気抵抗R(t)は以下の式(1)に従う。
【0045】
|R(t)−Rmin|=R0×a−kt ・・・式(1)
これは、現像ローラーの電気抵抗が、電流が印加される時間の経過に伴って減少し続け、やがて定数Rminに収束することを意味する。
【0046】
性質2:電流が印加されていない期間においては、各時刻tでの現像ローラーの電気抵抗R(t)は以下の式(2)に従う。
【0047】
|R(t)−Rmax|=R0×a−kt ・・・式(2)
これは、現像ローラーの電気抵抗が、電流が印加されない時間の経過に伴って増加し続け、やがて定数Rmaxに収束することを意味する。
【0048】
なお、式(1)及び式(2)中のR0は、各期間の開始時刻での現像ローラーの電気抵抗である。また、電気抵抗の収束値であるRmax及びRmin、並びに電気抵抗の収束速度を決定するa及びkは、現像ローラーの材質等によって異なる定数であるので、予め実験等により算出しておく。なお電気抵抗Rmaxは、現像ローラーの定常時の電気抵抗を示す。
【0049】
図10が示す電流印加履歴において、前基準抵抗は時刻t0における現像ローラーの電気抵抗である。時刻t0からt1までの間、ジョブがないため電流は印加されず、前基準抵抗から定常時の電気抵抗に収束していく。(前基準抵抗が定常時の電気抵抗Rmaxに等しい時は、時刻t1まで維持される。)時刻t1からt2までに行われるプリントジョブにより電流が印加されるため、現像ローラーの電気抵抗は徐々に低下する。さらに時刻t2からt3までの間に定常時の電気抵抗Rmaxに近づくように増加し、時刻t3からt4までに行われる補正テーブル生成処理のための電流印加により再び現像ローラーの電気抵抗が低下する。
【0050】
従って、まず、前基準抵抗をRoとして式(2)により時刻t1における電気抵抗を算出する。次に式(1)により、時刻t2における電気抵抗を算出する。このような処理を繰り返し、時刻t4における電気抵抗を算出し、基準抵抗として出力する。
【0051】
[補正画像データ生成処理]
次に、補正画像データ生成処理を行う。図5は、補正画像データ生成処理のフローを示す図である。
【0052】
ステップS510において、画像データ入力処理を行う。まず画像データ入力部111は、外部から入力画像データを受け取る。次に画像入力部111は、受け取った入力画像データをもとに各色の色画像データを生成する。後述する階調補正処理S530とハーフトーン画像生成処理S540は、ここで生成された各色の色画像データそれぞれに対して行う。
【0053】
ステップS520において、調整率算出部1106は調整率算出処理を行う。以下に、ステップS520における調整率算出処理について詳細に説明する。まず、調整率算出部1106は、画像形成時における現像ローラーの電気抵抗を予測する。本ステップは前述のステップS410と同様に実施される。この時取得する電流印加履歴は、前述の補正テーブル生成処理でパッチ形成処理を終了した時刻t4から現在までの期間における電流印加に履歴である。またこの時取得する基準抵抗は、前述のステップS414において更新された値である。つまり、t4から現時点(画像形成する時点の時刻)までの履歴に基づいて、式(1)および式(2)から、現時点での電気抵抗を予測する。次に、調整率算出部1106は、基準振幅を算出する。基準振幅は、前回補正テーブル生成処理を実施した時に算出された基準抵抗に対応するバンディングの振幅値である。その際、予め作成し保持している抵抗対振幅テーブルを用いる。図11は調整率算出部1106が保持している抵抗対振幅テーブルの一例である。バンディングの振幅は現像ローラーの電気抵抗に依存して変化する。抵抗対振幅テーブルはRmaxからRminまでの各電気抵抗におけるバンディングの振幅を記録している。この抵抗対振幅テーブルから、ステップS410で算出した基準抵抗に対応する振幅を取得し、基準振幅とする。さらに、調整率算出部1106は、画像形成時の振幅を算出する。画像形成時の振幅は、画像形成時点において予測されるバンディングの振幅値(以下、予測振幅値とする)である。基準振幅の算出と同様に、画像形成時における予測抵抗に対応する振幅を予測振幅として取得する。最後に以下の式(3)で調整率を算出する。
【0054】
調整率=予測振幅/基準振幅 ・・・式(3)
ステップS530において、階調補正処理を行う。階調補正部1104は、ステップS510において生成された各色の色画像データのうち、階調補正処理が未実施のものを1つ選択し、選択した色画像データに対して階調補正処理を行う。
【0055】
ステップS540において、ハーフトーン画像データ生成処理を行う。画像処理部1105は、ステップS530において階調補正処理された色画像データに対して、通常のガンマ補正処理、及びハーフトーン処理を行い、ハーフトーン画像データを生成する。そして画像処理部1105は、生成したハーフトーン画像データを画像形成制御部113へ出力する。
【0056】
以下に、ステップS530において行われる階調補正処理について詳細に説明する。
【0057】
本実施例の階調補正処理は、各色の色画像データにおいて副走査方向位置の等しい画素群(以下、ラインと記述する)に対して一括処理を行う。そしてラインごとの処理を副走査方向の画素数分繰り返す。例として、各色の色画像データが縦(副走査方向)1000画素、横(主走査方向)800画素である場合、横方向800画素の1ラインに対して一括処理を行い、これを1000ライン分繰り返す。
【0058】
ステップS531において、補正位相算出処理を行う。まず、階調補正部1104は、回転位相取得部121が出力する回転位相を取得する。次に、取得した回転位相と、処理対象ラインの副走査方向画素位置と、処理対象ラインが現像されるまでの時間と、現像ローラーの平均回転速度から、処理対象ラインが現像される時点の現像ローラーにおける位相を算出し、これを補正位相とする。
【0059】
ステップS532において、補正テーブル取得処理を行う。階調補正部1104は、補正テーブル格納部1103から補正位相に最も近い位相に対応する補正テーブルを読み出す。
【0060】
ステップS533において、補正テーブル調整処理を行う。
【0061】
階調補正部1104は、調整率に基づいて補正テーブルを書き換える。以下に補正テーブル調整処理の一例を示す。補正テーブルは前述の通り、画像データが表す各階調に対する補正階調を記録している。なお補正階調とは、補正により目指すべき階調のことを示す。ここでは、画像データの各階調xに対する補正階調C(x)を、以下の式(4)で求まる調整後補正階調C´(x)で置き換える。
【0062】
C´(x)=(C(x)−x)×調整率+x ・・・式(4)
式(4)は、C(x)−xで表される補正量を、調整率倍に大きく(あるいは小さく)することを意味する。これにより、現像ローラーの電気抵抗の変動を考慮した補正階調を算出することができる。ステップS533における補正テーブル調整処理により、調整後補正テーブルが算出される。
【0063】
ステップS534において、画像データ補正処理を行う。ここでの処理は、処理対象ラインにおける画素ごとに行われる。階調補正部1104は、ステップS533において得られた調整後補正テーブルを用いて、処理対象ラインにおける注目画素を表す色画像データの階調を補正する。補正テーブルから注目画素を表す色画像データの階調に基づいて、補正階調を導出し、色画像データの階調を補正する。処理対象ラインにおける全ての画素に繰り返しステップS534を行い、処理対象ラインに対するステップS534を完了する。以上、ステップS531からステップS534までの処理を、各色の色画像データの全てのラインに対して繰り返し行う。全てのラインに対して処理を終えたら、補正画像データ生成処理を終了する。
【0064】
以上本実施例による効果を説明する。図13は、バンディングが発生した画像の平均濃度およびそれぞれに対してバンディング補正をした後の平均濃度を示す。図中、実線のグラフはいずれも補正を行わない場合にバンディングが発生している画像の平均濃度、点線のグラフはいずれも補正を行った場合の平均濃度である。
【0065】
図13(a)は、補正テーブル生成処理を実施した直後に、補正テーブルを調整せずにそのまま用いてバンディング補正を行う例を示している。補正テーブルは、補正テーブル生成処理を実施した時点で発生していたバンディングを好適に補正するよう作成されている。そのため、現像ローラーの電気抵抗にほとんど変化のない直後であれば、バンディングを好適に補正することができる。
【0066】
図13(b)は、振幅が変化したバンディングに対して、補正テーブルを調整せずにそのまま用いて補正を行う例を示している。補正が十分でなく、バンディングが残存している。連続して画像形成を繰り返すと、電流が印加される時間の経過に伴い、現像ローラーの電気抵抗の低下が無視できなくなってくる。従って画像を形成する時には、補正テーブルを作成した際のバンディングの振幅とは変化しているため、図13(a)の時に用いた補正テーブルでは十分な補正効果を得られない。
【0067】
図13(c)は本実施例により現像ローラーの電気抵抗の変動を考慮し、補正テーブルを調整した上で補正を行う例を示している。この処理により、画像形成時に発生するバンディングを好適に補正する事ができる。
【0068】
以上説明したように、本実施例では、バンディングの振幅は現像ローラーの電気抵抗に依存して変動することを考慮してバンディングの振幅を予測し、予測した振幅に基づいてバンディング補正処理を行う。これにより、補正テーブルを作成した条件とは異なる条件下で画像を形成する場合にも、好適にバンディングを補正することができる。また、一度作成した補正テーブルを適切に調節することができるため、再度パッチ測定等の処理を行い、補正テーブルを作成し直す必要がない。
【0069】
なお、本実施例では、電流印加履歴から現像ローラーの電気抵抗を予測したが、これに限定されず、プリントジョブ履歴から現像ローラーの電気抵抗を予測してもよい。
【0070】
また、本実施例でのバンディングの振幅予測は、現像ローラーの電気抵抗の変化に着目して行ったが、バンディングの振幅に相関があるならば、他の要因に着目して同様の処理を行ってもよい。画像形成処理を連続して行う際、現像ローラーと感光体ドラム1001との摩擦により現像ローラーの温度が上昇し、バンディングの振幅が変化する事がある。例として、その現象に着目する構成が考えられる。
【0071】
さらに、本実施例で用いた現像ローラーは、ジョブの実行を連続して行う際にバンディングの振幅が増加し、ジョブを実行せず休止し続ける際にバンディングの振幅が減少する特質をもつが、これに限定されるものではない。モジュールを構成する部材の材質等によって、バンディングの振幅の増減傾向が上記と異なる場合もあるが、その場合も本実施例と同様の構成及び処理により、好適にバンディングを抑制することができる。
【0072】
さらに、調整率算出処理S520において基準振幅を算出する際、現像ローラーの電気抵抗とバンディングの振幅とを対応付けて記録している抵抗対振幅テーブルを用いる構成について説明したが、これに限定されるものではない。他の例として、現像ローラーの電気抵抗からバンディングの振幅を算出する関数を用いてもよい。
【0073】
さらに、本実施例でのバンディング補正処理は、特に現像ローラーに起因して発生するバンディングを補正する例について説明したが、補正対象となるバンディングはこれに限定されるものでない。周期的な運動をするデバイスに起因して発生するバンディングであれば、本実施例と同様の処理を行うことにより、適切なバンディング補正をすることができる。
【0074】
本実施例では、補正テーブル生成処理および補正画像データ生成処理を実施する度に、現像ローラーの電気抵抗の予測を実施する例について説明したが、これに限定されるものではない。別の例として、現像ローラーの電気抵抗の予測を(例えば1秒毎などの)高い頻度で行う構成が考えられる。その場合、履歴格納部1107に格納される電流印加履歴は、前回現像ローラーの電気抵抗を予測してから現在までのごく短い期間についてである。ごく短い期間についてであれば、電流印加履歴は2つ、即ち、「その期間、常にONであった」または「その期間、常にOFFであった」のいずれかに近似して保持する事ができる。これにより、電流印加履歴を保持するために必要な記憶領域を削減する事が出来る。
【0075】
<実施例2>
実施例1では、補正テーブルを作成した時と画像を形成する時の現像ローラーの電気抵抗の変化に着目した。
【0076】
本実施例では、補正テーブルを作成した時とは異なる周辺環境の温度に着目してバンディングの振幅を予測し、予測した振幅に基づいてバンディング補正処理を行う構成について説明する。以下、実施例1と同一の構成及び処理については、同一の番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0077】
本実施例の画像形成装置が行う画像形成処理、及びそのための構成は、実施例1と同様である。
【0078】
図14は、本実施例の画像形成装置がバンディング補正処理を行う構成を示したブロック図である。本実施例の構成は、実施例1の構成に温度センサ122を追加したものである。温度センサ122は、周辺環境の温度を取得し、調整率算出部1106に出力する。
【0079】
以下に、本実施例におけるバンディング補正処理について詳細に説明する。本実施例が行うバンディング補正処理も実施例1と同様に、補正テーブル生成処理と、補正画像データ生成処理との2つからなる。
【0080】
[補正テーブル生成処理]
まず、補正テーブル生成部1102が補正テーブルを生成する。図15は、本実施例における補正テーブル生成処理のフローを示す図である。本実施例における補正テーブル作成処理は、実施例1と比較して、基準抵抗予測処理S410に替えて基準温度取得処理S1610を行う点で異なる。補正テーブル生成処理を実施する度に、補正テーブル格納部1103に格納されている補正テーブル、及び、履歴格納部1107に格納されている基準温度が更新される。またこれらは、電源が切断されると同時に破棄される。ここで更新される基準温度は、補正テーブルが生成された時点での温度である。温度を取得する処理は、後述する補正画像データ生成処理においても実施される。そして、ここで取得した基準温度と補正画像データ生成処理において取得する画像形成時温度に基づいて、画像形成時に発生するバンディングを好適に補正するよう補正テーブルを調整する。ステップS1610において、基準温度取得処理を行う。温度センサ122は温度を検出し、履歴格納部1107に格納している基準温度を検出した温度で更新する。続けて、実施例1で説明したステップS420からステップS480までの処理を実施する。
【0081】
[補正画像データ生成処理]
次に、補正画像データ生成処理を行う。本実施例における補正画像データ生成処理は、実施例1と比較して、調整率算出処理S520の処理内容のみ異なる。
【0082】
以下に、ステップS520において行う本実施例の調整率算出処理について詳細に説明する。まず、調整率算出部1106は、画像形成時温度を算出する。次に、調整率算出部1106は、基準振幅を算出する。基準振幅は、前回補正テーブル生成処理を実施した時点でのバンディングの振幅である。その際、予め作成し保持している温度対振幅テーブルを用いる。図16は調整率算出部1106が保持している温度対振幅テーブルの一例である。バンディングの振幅は温度に依存して変化する。温度対振幅テーブルは各温度におけるバンディングの振幅を記録している。この温度対振幅テーブルから、ステップS410で検出した基準温度に対応する振幅を取得し、基準振幅とする。さらに、調整率算出部1106は、画像形成時振幅を算出する。画像形成時振幅は、画像形成時点でのバンディングの振幅である。上記で基準振幅を算出したのと同様に、画像形成時抵温度に対応する振幅を取得し、画像形成時振幅とする。
【0083】
最後に以下の式(5)で調整率を算出する。
【0084】
調整率=画像形成時振幅/基準振幅 ・・・式(5)
以上説明したように、本実施例では、周辺環境の温度による画像形成装置の変化を考慮し、一度作成した補正テーブルを調節した上でバンディング補正処理を行う。これにより、より好適なバンディング補正を実現することができる。なお、着目すべき環境情報は温度に限定されず、湿度・気圧などに着目してもよい。
【0085】
また温度・湿度・気圧などの環境情報を取得するために、本実施例で例示したように各種センサを備える構成の他に、ユーザが当該情報を入力するためのインターフェイスを備える構成も考えられる。
【0086】
<その他の実施例>
前述の実施例では画像形成装置が、パッチ画像を測定した結果に基づいて補正テーブルを作成できる構成を備えていた。しかしながら、必ずしも画像形成装置が補正テーブルを作成できなくてもよい。本発明によれば、補正テーブルを作成した時点とは異なる条件下において、画像形成に関わるデバイスに変化が生じていても、画像形成時における予測振幅に基づいて、補正テーブルを調節することができる。これにより補正テーブルを作成した時点とは異なる条件下であっても、新たに補正テーブルを作成することなく適切に補正することができる。
【0087】
また、前述の実施例では補正テーブル作成処理のたびに必ず、基準状態(温度や抵抗)を算出していたが、これに限らない。例えば、補正テーブル作成処理は、画像形成に関わる環境やデバイスが十分定常時にある場合にのみ実施するような構成でもよい。その場合、例えば実施例1であれば、常に基準抵抗を定常時の電気抵抗Rmaxとすることもできる。
【0088】
なお、上述した各実施形態は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上記実施形態の各工程や機能を実現するソフトウェア(コンピュータプログラム)を、ネットワークや記憶媒体を介してシステムに供給し、そのシステムのコンピュータ(またはCPU等)が上記プログラムを読み込んで実行する処理である。上記コンピュータプログラムや、それを記憶したコンピュータ可読記憶媒体も本発明の範疇に含まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスによる画像形成を行う画像形成装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を像担持体上に走査することで画像を形成するレーザビームプリンタや複写機等、いわゆる電子写真方式の画像形成装置が知られている。電子写真方式の画像形成装置においては一般に、帯電、露光、現像、転写、定着、クリーニング等の複数のプロセスを経て画像を形成する。
【0003】
ここで、一般的な電子写真プロセスについて説明する。まず帯電手段が、像担持体である感光体を一様に帯電させた後、露光手段が感光体に画像信号に応じたレーザ光を露光し、感光体上に静電潜像を形成する。このときレーザ光が走査する方向を主走査方向といい、この主走査方向と直行する副走査方向に順次感光体を回転させながら、静電潜像を形成する。その後、現像手段が感光体上の静電潜像を現像し、感光体上にトナー像を形成する。その際、現像手段がトナーを帯電させた後、略等速度で回転する現像ローラーを用いて感光体へトナーを供給し、このトナーを静電潜像に付着させてトナー像を形成する。そして、感光体上のトナー像を記録媒体上に転写し、定着することで画像を形成する。なお、感光体上に残った転写残トナーはクリーニング手段により回収される。
【0004】
このような画像形成装置では、各種の原因によって形成された画像に濃淡による横縞(以下、バンディングと記述する)が発生し、画像の品質を著しく損なうという問題があった。
【0005】
例えば、現像ローラーの回転速度が変動することによって、バンディングが発生する場合がある。現像ローラーの回転速度が高いと、供給されるトナーが多くなる。その結果、静電潜像に付着するトナーも多くなり、形成される画像は本来形成したい画像の濃度よりも薄くなる。また、現像ローラーの回転速度が低いと、供給されるトナーが少なくなる。その結果、静電潜像に付着するトナーも少なくなり、形成される画像は本来形成したい画像の濃度よりも濃くなる。
【0006】
そこで、中間転写ベルト上に形成した画像の読み取り結果に基づいて、露光量を補正する方法が開示されている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−140402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のバンディングは、画像形成装置が連続して稼働すると、画像形成に関わるデバイスの物理特性が変化することにより、バンディングの振幅が変化することがある。しかしながら、特許文献1の方法によれば、ある時点における補正用画像の読み取り結果に基づいて、その後一定期間の補正処理を行っているため、補正が良好に行えない場合があった。
そこで本発明の目的は、印刷時におけるバンディングの振幅を予測し、予測した振幅に基づいてバンディング補正処理を行うことで、より好適な補正を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、電子写真方式により画像を形成する画像形成装置であって、画像形成のために周期的な運動をするデバイスと、前記デバイスの基準状態において作成された、前記デバイスに起因する濃度変動を補正するためテーブルを保持する保持手段と、前記基準状態とは異なる状態における前記変動の振幅を予測する予測手段と、前記予測手段によって予測された振幅に基づいて、前記テーブルを調整する調整手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、印刷時におけるバンディングの振幅を予測し、予測した振幅に基づいてバンディング補正処理を行うことで、より好適な補正を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置の構成を示すブロック図
【図2】現像ローラーの回転軸のずれを示す模式図
【図3】バンディング補正に関わる構成を示すブロック図
【図4】補正テーブル生成処理のフロー図
【図5】補正画像データ生成処理のフロー図
【図6】パッチの模式図
【図7】(a)は濃度プロファイルの一例、(b)は(a)を現像ローラーの回転周期毎に切り出したもの、(c)は(b)を平均化して得られる波形、を示す模式図
【図8】バンディング特性テーブルの一例
【図9】補正テーブルの一例
【図10】電流印加履歴の一例
【図11】抵抗対振幅テーブルの一例
【図12】バンディングの振幅が変化する様子の一例
【図13】効果を示す図
【図14】バンディング補正に関わる構成を示すブロック図
【図15】補正テーブル生成処理のフロー図
【図16】保持する温度対振幅テーブルの一例
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明を好適な実施例に従って詳細に説明する。なお、以下の実施例において示す構成は一例にすぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0013】
<実施例1>
図1は、本実施例に示す画像形成装置の構成図である。図1に示す画像形成装置は、エンジン10とコントローラ11からなる。エンジン10は、中間転写ベルト101に沿って、中間転写ベルト101回転方向R1の上流から、CMYK各色の画像形成部100a、100b、100c、100d、濃度センサ120、二次転写装置102、中間転写ベルトクリーニング装置104を有する。また、二次転写装置102の下流側には、定着装置103が配置されている。シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y),ブラック(K)各色の画像形成部100a、100b、100c、100dは、同様の処理を行う。画像形成部100aは、感光体ドラム1001a、帯電装置1002a、露光装置1003a、現像装置1004a、一次転写装置1005a、クリーニング装置1006a、回転位相取得部121aを有する。画像形成部100b、100c、100dについても同様である。
【0014】
以下に、画像形成装置の動作を詳細に説明する。まず、画像形成装置が行う画像形成処理について説明する。画像形成部100a、100b、100c、100dは、各色トナーを使用してそれぞれの感光体上にトナー像を形成し、中間転写ベルト101に順次一次転写する。画像形成装置で用いられるトナーは一般に、CMYKの4色である。本実施例では、画像形成部100aはCトナー、画像形成部100bはMトナー、画像形成部100cはYトナー、画像形成部100dはKトナーを使用する。なお、画像形成部及び使用する色は4種類に限らない。例えば、淡インクやクリアインクがあってもよい。また、各色の画像形成部の順番も本実施例に限定されるものではなく、任意でよい。トナー像形成は、画像形成部100a、100b、100c、100dの順に一定時間ずつタイミングをずらし、並行して実施される。まず、画像形成部100aが有する感光体ドラム1001aは、外周面に帯電極性が負極性である有機光導電体層を有し、矢印R3方向に回転する。
【0015】
(帯電)
帯電装置1002aは、負極性の電圧を印加され、感光体ドラム1001aの表面に帯電粒子を照射することにより、感光体ドラム1001aの表面を一様な負極性の電位に帯電する。帯電された感光体ドラム1001aは、矢印R3方向に回転する。
【0016】
(露光)
露光装置1003aは、コントローラから取得する制御信号にもとづいてレーザ光を駆動し、感光体ドラム1001a上にレーザ光を走査する。これにより、帯電した感光体ドラム1001aの表面に静電潜像を形成する。
【0017】
(現像)
現像装置1004aは、略等速度で回転する現像ローラーを用いて、負極性に帯電させたトナーを感光体ドラム1001aへ供給する。これにより、感光体ドラム1001a上の静電潜像にトナーを付着させ、静電潜像を反転現像する。本実施例で用いる現像ローラーは、アルミ円筒上にカーボンを分散させることで電気抵抗の調整がされた導電ゴムをコートしたものを用いている。
【0018】
(一次転写)
一次転写装置1005aは、正極性の電荷を印加され、負極性に帯電している感光体ドラム1001a上に担持されたトナー像を中間転写ベルト101へ一次転写する。
【0019】
(クリーニング)
クリーニング装置1006aは、一次転写装置1005aを通過した感光体ドラム1001a上に残留した残トナー像を除去する。
【0020】
ここまでは、Cの画像形成部100aをについて説明したが、画像形成部100b、100c、100dについても同様である。カラー画像を形成する場合、これまでの帯電、露光、現像、一時転写、クリーニングの各工程は、各色の画像形成部100a、100b、100c、100dにおいて順次進められる。その結果、中間手転写ベルト上には、4色のトナー像が重なった画像が形成される。
【0021】
(二次転写)
二次転写装置102は、中間転写ベルト101に担持されたトナー像を、矢印R2方向に移動する記録媒体Pへ二次転写する。
【0022】
(定着)
定着装置103は、トナー像を二次転写された記録媒体Pに加圧加熱などの処理を施し、画像を定着させる。
【0023】
(ベルトクリーニング)
中間転写ベルトクリーニング装置104は、二次転写装置102を通過した中間転写ベルト101上に残留した残トナーを除去する。
【0024】
以上、画像形成処理について説明した。以上のような電子写真方式を用いて画像を形成する画像形成装置では、各種原因によってバンディングが発生する。ここで、現像ローラーに起因するバンディングについて詳細に説明する。以下、各画像形成部と各画像形成部が有する構成に付随する符号a、b、c、dは省略する。例えば、画像形成部100は、画像形成部100a、100b、100c、100dを示す。
【0025】
現像処理において、現像装置1004の現像ローラーが現像位置まで搬送するトナーは、時間当たりの搬送量が常に一定となることが望ましい。そのため一般に、現像ローラーは断面が真円の円柱であって、2つの底面の重心を通る直線を軸にして等速回転するように制御される。また、現像ローラー及びトナーは常に一定の電位に帯電されている。
【0026】
ところが、現像ローラーの回転速度にむらが生じ、バンディングが発生することがある。現像ローラーの回転が速い時には現像ローラーが搬送するトナーの量が多くなり、遅い時には少なくなることで画像の濃度が変動し、バンディングが発生する。現像ローラーの回転速度むらは、現像ローラーを駆動するモータの速度むらや、現像ローラーとモータを連結するギアの不良などによって生ずる。
【0027】
また、現像ローラーの回転軸のずれによってもバンディングが発生する。図2は現像ローラーの回転軸のずれを示す模式図である。図2(a)は現像ローラー表面と感光体表面が遠い状態を示し、図2(b)は現像ローラー表面と感光体表面が近い状態を示す。現像ローラーの回転軸にずれがある場合、図2(a)の状態と図2(b)の状態とが、現像ローラーの回転周期に同期して交互に繰り返される。すると、前者では現像効率が低くなり、後者では高くなることでバンディングが発生する。
【0028】
この様に現像ローラーにおける各種原因によって画像の濃淡が変化し、バンディングが発生する。
【0029】
以上説明したバンディングは、各種原因によってその振幅が変化する。振幅が変化する主要因の一つとして、現像ローラーの導電ゴム部の電気抵抗が通電により変化することが挙げられる。より具体的には、画像形成処理中の電圧印加に伴う現像電流により、導電ゴム部内に通電経路が増加するために、徐々に電気抵抗が低下してしまう。同時に、現像ローラーの電気抵抗による電圧降下量が小さくなることにより、現像バイアスが初期設定値よりも上昇する。現像バイアスが上昇すると、現像コントラストが大きくなり、現像量が増加(形成される画像の濃度が上昇)する。これがバンディングの振幅を大きくする要因となる。一方、現像ローラーの電気抵抗が一時低下した後、画像形成処理を休止し続けると、現像ローラーの電気抵抗は徐々に上昇し、やがて定常時の電気抵抗に戻る。
【0030】
図12に、バンディングの振幅が変化する様子の一例を示す。図12(a)および(b)ともに横軸は画像の副走査方向の位置、縦軸は各副走査方向における平均濃度を表している。図12(a)が示すバンディングは、現像ローラーが定常時の電気抵抗である場合のバンディングである。また図12(b)が示すバンディングは連続印字によって現像ローラーの電気抵抗が低下している場合のバンディングである。図12(b)が示すバンディングは、図12(a)が示すバンディングと比較して、その振幅が大きいことがわかる。従って、現像ローラーの電気抵抗が定常時(基準状態)である時点に作成されたバンディングを補正するためのテーブルは、図12(b)のバンディングは必ずしも補正できない。
【0031】
本実施例では、現像ローラーの回転周期に同期して発生するバンディングに対してバンディング補正処理を行う。その際、バンディング補正処理の対象となる画像を形成する時刻での現像ローラーの電気抵抗を予測する。予測された電気抵抗(以下、予測抵抗とする)に基づいて、当該時刻において予測されるバンディングの振幅(以下、予測振幅と記述する)を算出し、バンディングの補正すべき量を調整する。
【0032】
図3は、本実施例の画像形成装置がバンディング補正処理を行う構成を示したブロック図である。履歴格納部1107は、電流印加履歴と基準抵抗を格納する。調整率算出部1106は、履歴格納部1107に格納された電流印加履歴と基準抵抗に基づいて、調整率を算出する。調整率算出部1106は、算出した調整率を階調補正部1104に出力する。濃度センサ120は、画像形成部100a、100b、100c、100dを通過して中間転写ベルト101上に一次転写されたトナー像の濃度を検出する。検出した濃度は、バンディング波形算出部1101へ出力する。回転位相取得部121a、121b、121c、121dは、現像装置1004a、1004b、1004c、1004dそれぞれが有する現像ローラーの回転位相を取得する。回転位相取得部121は、各現像ローラーの回転位相をバンディング波形算出部1101と階調補正部1104に出力する。バンディング波形算出部1101は、濃度センサから取得するトナー像の濃度と回転位相取得部121から取得する回転位相に基づいて、バンディング波形を算出する。算出方法については後述する。バンディング波形算出部1101は、算出したバンディング波形を補正テーブル生成部1102へ出力する。補正テーブル生成部1102は、バンディング波形算出部1101から取得したバンディング波形に基づいて補正テーブルを生成し、補正テーブル格納部1103へ出力する。補正テーブル格納部1103は補正テーブル生成部1102から補正テーブルを受け取り、格納する。画像入力部111は、外部から入力画像データを受け取り、YMCK各色の色画像データを生成し、階調補正部1104に出力する。階調補正部1104は、画像入力部111から取得した各色の色画像データと回転位相取得部121から取得した回転位相に基づいて、各色の色画像データを補正する。補正には、補正テーブル格納部1103に格納された補正テーブルを、調整率算出部1106が算出した調整率で調整して用いる。階調補正部1104は、補正した各色の色画像データを画像処理部1105へ出力する。画像処理部1105は、階調補正部1104から補正した各色の色画像データを受け取り、通常のガンマ処理やハーフトーン処理を施し、画像形成装置113が出力可能なハーフトーン画像データを生成する。画像処理部1105は生成したハーフトーン画像データを画像形成制御部113へ出力する。画像形成制御部113は、画像処理部1105から受け取ったハーフトーン画像データに基づいてエンジン10へ制御信号を出力し、画像形成処理を行う。
【0033】
以下に、本実施例におけるバンディング補正処理について詳細に説明する。本実施例が行うバンディング補正処理は、補正テーブル生成処理と、補正画像データ生成処理との2つからなる。
【0034】
[補正テーブル生成処理]
まず、補正テーブル生成部1102が補正テーブルを生成する。図4は、補正テーブル生成処理のフローを示す図である。補正テーブル生成処理は、画像形成部100a、100b、100c、100dそれぞれが形成する各色の画像データに対して実施する。これまでと同様に、各構成に付随する符号a、b、c、dは省略する。例えば、画像形成部100は、画像形成部100a、100b、100c、100dを示す。補正テーブル生成処理は、所定のタイミングで繰り返し実施される。所定のタイミングとは例えば、画像形成装置に電源が投入された直後や、前回の補正テーブル生成処理から100回の画像形成処理を実施した後などである。補正テーブル生成処理において、補正テーブル格納部1103に格納される補正テーブルおよび履歴格納部1107に格納される基準抵抗が算出される。従って、補正テーブル生成処理を実施する度に、補正テーブル及び基準抵抗が更新される。また補正テーブルおよび基準抵抗は、電源が切断されると同時に破棄される。ここで更新される補正テーブルは、画像データが表す階調ごとに位相に応じて補正すべき階調を導出するためのテーブルである。この時、補正テーブル生成処理時に発生しているバンディングを好適に補正するよう作成される。また、ここで更新される基準抵抗は、補正テーブル生成処理を実施する時における現像ローラーの電気抵抗である。補正画像データ生成処理では、補正テーブル生成時とは異なる条件下である画像形成時における現像ローラーの電気抵抗を予測し、予測抵抗を算出する。そして、ここで更新された基準抵抗と予測抵抗に基づいて、画像形成時に発生するバンディングを好適に補正するよう保持している補正テーブルを調整する。ステップS410において、基準抵抗算出処理を行う。以下に、ステップS410において行う基準抵抗算出処理について詳細に説明する。ステップS411において、電流印加履歴取得処理を行う。まず調整率算出部1106は、履歴格納部1107から電流印加履歴を取得する。電流印加履歴は、前回の補正テーブル生成処理でパッチ形成処理を終了した時刻からの期間について、各時刻での印加電流を記録した情報である。ただし、電源投入から現在までの間に補正テーブル生成処理を実施していない場合、電流印加履歴は電源投入時刻から現在までの期間を示す。さらに、取得した電流印加履歴に、今回の補正テーブル生成処理におけるパッチ形成処理を終了するまでに、印加する予定の電流を追加して記録する。図10は、ここで今回のパッチ形成処理を終了するまでの電流印加予定を追加した後の電流印加履歴一例である。プリントジョブ期間に印加された電流は、電流印加履歴が予め示していた履歴である。今回のパッチ形成処理が終わるまでに印加される電流は、ステップS411において電流印加履歴に追加された情報である。ステップS412において、前基準抵抗取得処理を行う。調整率算出部1106は、履歴格納部1107から前回実施した補正テーブル生成処理で算出し格納した基準抵抗(前基準抵抗)を取得する。なお、電源投入から現在までの間に補正テーブル生成処理を実施しておらず、履歴格納部1107に基準抵抗が格納されていない場合は、後述する定常時の電気抵抗Rmaxを取得する。ステップS413において、基準抵抗算出処理を行う。調整率算出部1106は、ステップS411で取得した電流印加履歴と、ステップS412で取得した前基準抵抗とに基づいて現像ローラーの基準抵抗を算出する。補正テーブルを作成する時点における基準抵抗は、後に調整率を算出する際に必要になる。詳細については後述する。ステップS414において、基準抵抗更新処理を行う。調整率算出部1106は、ステップS413において算出した基準抵抗を履歴格納部1107へ出力する。履歴格納部1107は受け取った新しい基準抵抗を基準抵抗として更新する。以上で、ステップS410で行う基準抵抗算出処理を終了する。
【0035】
ステップS420において、パッチ形成処理を行う。
【0036】
図6はパッチの模式図である。パッチは、階調の異なる複数のベタ部から構成されている。ここでは、図5に示す通り、5つの異なる階調のベタ部が形成される。各ベタ部は、長方形で均一な階調で表現された画像であり、副走査方向の長さが、現像ローラーの周期の5倍よりも長くなるよう設計されている。なお、副走査方向の長さは、現像ローラーの周期の5倍以上に限らない。要求される補正精度、許容される処理時間・使用メモリ容量などにより、適宜定めればよい。パッチ形成処理は、前述の画像形成処理と同様に画像形成部100が形成したトナー像を中間転写ベルト101へ一次転写することで実施される。パッチ形成処理において、回転位相取得部121は、パッチ形成開始からの回転位相を取得し、バンディング波形算出部1101へ出力する。ステップS430において、パッチ読み取り処理を行う。濃度センサ120は、ステップS420において中間転写ベルト101上に転写されたパッチの濃度を検出する。濃度センサ120は複数の読み取り部を有しており、それぞれの読み取り部は、ステップS420で形成したパッチを構成する各ベタ部に1対1で対応している。つまりここでは、濃度センサ120は少なくとも5つの読み取り部を有している。そして、中間転写ベルト101の移動に伴い、各読み取り部の下を、各読み取り部に対応するベタ部が通過する。各読み取り部は、ベタ部の濃度を一定の微小間隔で検知し、濃度検知信号をバンディング波形算出部1101へ出力する。つまり、各読み取り部から得られる濃度情報は、連続的な情報ではなく離散的な位相における情報である。濃度を検知する微小間隔は、現像ローラーの周期や中間転写ベルト101の搬送スピード、要求される補正精度などを考慮して、適宜定めればよい。
【0037】
以下のステップS440及びステップS450は、パッチを構成するベタ部に対してそれぞれ行う。ステップS440において、濃度プロファイル算出処理を行う。図7(a)はステップS440において算出される濃度プロファイルの一例である。まず、バンディング波形算出部1101は、濃度センサ120から取得した濃度検知信号を副走査方向に順次配列する。次に、バンディング波形算出部1101は、回転位相取得部121からバッチ形成開始時の回転位相を受け取る。さらに、配列した濃度検知信号とバッチ形成時の回転位相とを同期させて、濃度プロファイルを算出する。つまり、図7(a)に示す図は、横軸が現像ローラーの回転位相に対応し、縦軸が濃度を示している。ここでは、現像ローラー4回転分の濃度プロファイルが生成されていることがわかる。
【0038】
ステップS450において、バンディング波形算出処理を行う。まず、バンディング波形算出部1101は、図7(b)で示すように、ステップS440において算出した濃度プロファイルを現像ローラーの回転周期ごとに切り出す。ここでは、4つの波形が切り出される。次に切り出した4つの波形を平均化し、図7(c)で示すようなバンディング波形を算出する。このバンディング波形は、パッチを構成する複数階調のベタ部に対してそれぞれ算出する。本実施例では、5つの異なる階調のベタ部がパッチに形成されているので、5つのバンディング波形が得られることになる。さらに、算出したバンディング波形に対して、副走査方向のスムージング処理及び傾き補正処理をする。副走査方向のスムージング処理は、高周波なバンディング成分を除去するための処理である。高周波なバンディング成分は、バンディングに再現性がない場合や、補正処理の位相にずれが生じた場合に、濃度むらを強調してしまう可能性が高い。そのため、スムージング処理により高周波なバンディング成分を除去することが好ましい。また傾き補正処理は、バンディング波形の始点(位相が0)の値と終点(位相が2π)の値から傾きを求め、これら2つの傾きが等しくなるように行う。バンディング波形に基づいて作成する補正テーブルは、以下に説明する補正画像形成処理において繰り返し用いられるため、傾き補正処理を行い、バンディング波形の始点と終点の間に連続性を確保することが好ましい。
【0039】
以下のステップS460、S470、及び、ステップS480は、現像ローラーの位相ごとに繰り返し行う。ここで処理対象の位相は、ステップS450において濃度センサ120が検出した濃度に基づいて算出されたバンディング波形が保持する位相全て(以下、全位相と記述する)である。
【0040】
ステップS460において、バンディング特性取得処理を行う。まず、補正テーブル生成部1102は、全位相の内、バンディング特性取得処理を未実施のものを1つ選択し、処理対象位相とする。次に、ステップS450で生成した5つの階調に対応する各バンディング波形から、選択した処理対象位相における濃度を取得する。そして図8(a)に示すように、階調と濃度を対応付けて、プロットする。次に、階調方向の補間処理を行い、画像形成装置が表現可能な全ての階調(以下、全階調と記述する)に対して濃度を算出する。以上の処理により、図8(b)に示すバンディング特性テーブルを生成する。なお、ここでの補間処理は、線形補間などの一般的な方法を用いることができる。
【0041】
ステップS470において、補正テーブル作成処理を行う。補正テーブル作成処理は、S460において選択した処理対象位相において、以下の処理を全階調に対して繰り返し行う。まず、補正テーブル生成部1102は、ある階調に対して、目標濃度を取得する。補正テーブル生成部1102は、各階調に対する目標濃度をテーブルや関数などの形態で予め保持している。次に、ステップS460において算出されたバンディング特性テーブルから、取得した目標濃度に対応する階調を補正階調として取得する。以上の処理を各階調に対して行い、階調と補正階調を対応付けて補正テーブルを作成する。図9は、ステップS470において算出された補正テーブルを示す。
【0042】
ステップS480において、補正テーブル格納処理を行う。補正テーブル生成部1102は、ステップS470において作成された補正テーブルを補正テーブル格納部1103へ出力する。補正テーブル格納部1103は受け取った補正テーブルを格納する。
【0043】
ここで、ステップS413における基準抵抗算出処理について詳細に説明する。調整率算出部1106は、ステップS411で取得した電流印加履歴(図10)と、ステップS412で取得した前基準抵抗とに基づいて、式(1)および式(2)により基準抵抗(時刻t4における現像ローラーの電気抵抗)を算出する。
【0044】
性質1:(ゼロでない)一定の電流が印加されている期間においては、各時刻tでの現像ローラーの電気抵抗R(t)は以下の式(1)に従う。
【0045】
|R(t)−Rmin|=R0×a−kt ・・・式(1)
これは、現像ローラーの電気抵抗が、電流が印加される時間の経過に伴って減少し続け、やがて定数Rminに収束することを意味する。
【0046】
性質2:電流が印加されていない期間においては、各時刻tでの現像ローラーの電気抵抗R(t)は以下の式(2)に従う。
【0047】
|R(t)−Rmax|=R0×a−kt ・・・式(2)
これは、現像ローラーの電気抵抗が、電流が印加されない時間の経過に伴って増加し続け、やがて定数Rmaxに収束することを意味する。
【0048】
なお、式(1)及び式(2)中のR0は、各期間の開始時刻での現像ローラーの電気抵抗である。また、電気抵抗の収束値であるRmax及びRmin、並びに電気抵抗の収束速度を決定するa及びkは、現像ローラーの材質等によって異なる定数であるので、予め実験等により算出しておく。なお電気抵抗Rmaxは、現像ローラーの定常時の電気抵抗を示す。
【0049】
図10が示す電流印加履歴において、前基準抵抗は時刻t0における現像ローラーの電気抵抗である。時刻t0からt1までの間、ジョブがないため電流は印加されず、前基準抵抗から定常時の電気抵抗に収束していく。(前基準抵抗が定常時の電気抵抗Rmaxに等しい時は、時刻t1まで維持される。)時刻t1からt2までに行われるプリントジョブにより電流が印加されるため、現像ローラーの電気抵抗は徐々に低下する。さらに時刻t2からt3までの間に定常時の電気抵抗Rmaxに近づくように増加し、時刻t3からt4までに行われる補正テーブル生成処理のための電流印加により再び現像ローラーの電気抵抗が低下する。
【0050】
従って、まず、前基準抵抗をRoとして式(2)により時刻t1における電気抵抗を算出する。次に式(1)により、時刻t2における電気抵抗を算出する。このような処理を繰り返し、時刻t4における電気抵抗を算出し、基準抵抗として出力する。
【0051】
[補正画像データ生成処理]
次に、補正画像データ生成処理を行う。図5は、補正画像データ生成処理のフローを示す図である。
【0052】
ステップS510において、画像データ入力処理を行う。まず画像データ入力部111は、外部から入力画像データを受け取る。次に画像入力部111は、受け取った入力画像データをもとに各色の色画像データを生成する。後述する階調補正処理S530とハーフトーン画像生成処理S540は、ここで生成された各色の色画像データそれぞれに対して行う。
【0053】
ステップS520において、調整率算出部1106は調整率算出処理を行う。以下に、ステップS520における調整率算出処理について詳細に説明する。まず、調整率算出部1106は、画像形成時における現像ローラーの電気抵抗を予測する。本ステップは前述のステップS410と同様に実施される。この時取得する電流印加履歴は、前述の補正テーブル生成処理でパッチ形成処理を終了した時刻t4から現在までの期間における電流印加に履歴である。またこの時取得する基準抵抗は、前述のステップS414において更新された値である。つまり、t4から現時点(画像形成する時点の時刻)までの履歴に基づいて、式(1)および式(2)から、現時点での電気抵抗を予測する。次に、調整率算出部1106は、基準振幅を算出する。基準振幅は、前回補正テーブル生成処理を実施した時に算出された基準抵抗に対応するバンディングの振幅値である。その際、予め作成し保持している抵抗対振幅テーブルを用いる。図11は調整率算出部1106が保持している抵抗対振幅テーブルの一例である。バンディングの振幅は現像ローラーの電気抵抗に依存して変化する。抵抗対振幅テーブルはRmaxからRminまでの各電気抵抗におけるバンディングの振幅を記録している。この抵抗対振幅テーブルから、ステップS410で算出した基準抵抗に対応する振幅を取得し、基準振幅とする。さらに、調整率算出部1106は、画像形成時の振幅を算出する。画像形成時の振幅は、画像形成時点において予測されるバンディングの振幅値(以下、予測振幅値とする)である。基準振幅の算出と同様に、画像形成時における予測抵抗に対応する振幅を予測振幅として取得する。最後に以下の式(3)で調整率を算出する。
【0054】
調整率=予測振幅/基準振幅 ・・・式(3)
ステップS530において、階調補正処理を行う。階調補正部1104は、ステップS510において生成された各色の色画像データのうち、階調補正処理が未実施のものを1つ選択し、選択した色画像データに対して階調補正処理を行う。
【0055】
ステップS540において、ハーフトーン画像データ生成処理を行う。画像処理部1105は、ステップS530において階調補正処理された色画像データに対して、通常のガンマ補正処理、及びハーフトーン処理を行い、ハーフトーン画像データを生成する。そして画像処理部1105は、生成したハーフトーン画像データを画像形成制御部113へ出力する。
【0056】
以下に、ステップS530において行われる階調補正処理について詳細に説明する。
【0057】
本実施例の階調補正処理は、各色の色画像データにおいて副走査方向位置の等しい画素群(以下、ラインと記述する)に対して一括処理を行う。そしてラインごとの処理を副走査方向の画素数分繰り返す。例として、各色の色画像データが縦(副走査方向)1000画素、横(主走査方向)800画素である場合、横方向800画素の1ラインに対して一括処理を行い、これを1000ライン分繰り返す。
【0058】
ステップS531において、補正位相算出処理を行う。まず、階調補正部1104は、回転位相取得部121が出力する回転位相を取得する。次に、取得した回転位相と、処理対象ラインの副走査方向画素位置と、処理対象ラインが現像されるまでの時間と、現像ローラーの平均回転速度から、処理対象ラインが現像される時点の現像ローラーにおける位相を算出し、これを補正位相とする。
【0059】
ステップS532において、補正テーブル取得処理を行う。階調補正部1104は、補正テーブル格納部1103から補正位相に最も近い位相に対応する補正テーブルを読み出す。
【0060】
ステップS533において、補正テーブル調整処理を行う。
【0061】
階調補正部1104は、調整率に基づいて補正テーブルを書き換える。以下に補正テーブル調整処理の一例を示す。補正テーブルは前述の通り、画像データが表す各階調に対する補正階調を記録している。なお補正階調とは、補正により目指すべき階調のことを示す。ここでは、画像データの各階調xに対する補正階調C(x)を、以下の式(4)で求まる調整後補正階調C´(x)で置き換える。
【0062】
C´(x)=(C(x)−x)×調整率+x ・・・式(4)
式(4)は、C(x)−xで表される補正量を、調整率倍に大きく(あるいは小さく)することを意味する。これにより、現像ローラーの電気抵抗の変動を考慮した補正階調を算出することができる。ステップS533における補正テーブル調整処理により、調整後補正テーブルが算出される。
【0063】
ステップS534において、画像データ補正処理を行う。ここでの処理は、処理対象ラインにおける画素ごとに行われる。階調補正部1104は、ステップS533において得られた調整後補正テーブルを用いて、処理対象ラインにおける注目画素を表す色画像データの階調を補正する。補正テーブルから注目画素を表す色画像データの階調に基づいて、補正階調を導出し、色画像データの階調を補正する。処理対象ラインにおける全ての画素に繰り返しステップS534を行い、処理対象ラインに対するステップS534を完了する。以上、ステップS531からステップS534までの処理を、各色の色画像データの全てのラインに対して繰り返し行う。全てのラインに対して処理を終えたら、補正画像データ生成処理を終了する。
【0064】
以上本実施例による効果を説明する。図13は、バンディングが発生した画像の平均濃度およびそれぞれに対してバンディング補正をした後の平均濃度を示す。図中、実線のグラフはいずれも補正を行わない場合にバンディングが発生している画像の平均濃度、点線のグラフはいずれも補正を行った場合の平均濃度である。
【0065】
図13(a)は、補正テーブル生成処理を実施した直後に、補正テーブルを調整せずにそのまま用いてバンディング補正を行う例を示している。補正テーブルは、補正テーブル生成処理を実施した時点で発生していたバンディングを好適に補正するよう作成されている。そのため、現像ローラーの電気抵抗にほとんど変化のない直後であれば、バンディングを好適に補正することができる。
【0066】
図13(b)は、振幅が変化したバンディングに対して、補正テーブルを調整せずにそのまま用いて補正を行う例を示している。補正が十分でなく、バンディングが残存している。連続して画像形成を繰り返すと、電流が印加される時間の経過に伴い、現像ローラーの電気抵抗の低下が無視できなくなってくる。従って画像を形成する時には、補正テーブルを作成した際のバンディングの振幅とは変化しているため、図13(a)の時に用いた補正テーブルでは十分な補正効果を得られない。
【0067】
図13(c)は本実施例により現像ローラーの電気抵抗の変動を考慮し、補正テーブルを調整した上で補正を行う例を示している。この処理により、画像形成時に発生するバンディングを好適に補正する事ができる。
【0068】
以上説明したように、本実施例では、バンディングの振幅は現像ローラーの電気抵抗に依存して変動することを考慮してバンディングの振幅を予測し、予測した振幅に基づいてバンディング補正処理を行う。これにより、補正テーブルを作成した条件とは異なる条件下で画像を形成する場合にも、好適にバンディングを補正することができる。また、一度作成した補正テーブルを適切に調節することができるため、再度パッチ測定等の処理を行い、補正テーブルを作成し直す必要がない。
【0069】
なお、本実施例では、電流印加履歴から現像ローラーの電気抵抗を予測したが、これに限定されず、プリントジョブ履歴から現像ローラーの電気抵抗を予測してもよい。
【0070】
また、本実施例でのバンディングの振幅予測は、現像ローラーの電気抵抗の変化に着目して行ったが、バンディングの振幅に相関があるならば、他の要因に着目して同様の処理を行ってもよい。画像形成処理を連続して行う際、現像ローラーと感光体ドラム1001との摩擦により現像ローラーの温度が上昇し、バンディングの振幅が変化する事がある。例として、その現象に着目する構成が考えられる。
【0071】
さらに、本実施例で用いた現像ローラーは、ジョブの実行を連続して行う際にバンディングの振幅が増加し、ジョブを実行せず休止し続ける際にバンディングの振幅が減少する特質をもつが、これに限定されるものではない。モジュールを構成する部材の材質等によって、バンディングの振幅の増減傾向が上記と異なる場合もあるが、その場合も本実施例と同様の構成及び処理により、好適にバンディングを抑制することができる。
【0072】
さらに、調整率算出処理S520において基準振幅を算出する際、現像ローラーの電気抵抗とバンディングの振幅とを対応付けて記録している抵抗対振幅テーブルを用いる構成について説明したが、これに限定されるものではない。他の例として、現像ローラーの電気抵抗からバンディングの振幅を算出する関数を用いてもよい。
【0073】
さらに、本実施例でのバンディング補正処理は、特に現像ローラーに起因して発生するバンディングを補正する例について説明したが、補正対象となるバンディングはこれに限定されるものでない。周期的な運動をするデバイスに起因して発生するバンディングであれば、本実施例と同様の処理を行うことにより、適切なバンディング補正をすることができる。
【0074】
本実施例では、補正テーブル生成処理および補正画像データ生成処理を実施する度に、現像ローラーの電気抵抗の予測を実施する例について説明したが、これに限定されるものではない。別の例として、現像ローラーの電気抵抗の予測を(例えば1秒毎などの)高い頻度で行う構成が考えられる。その場合、履歴格納部1107に格納される電流印加履歴は、前回現像ローラーの電気抵抗を予測してから現在までのごく短い期間についてである。ごく短い期間についてであれば、電流印加履歴は2つ、即ち、「その期間、常にONであった」または「その期間、常にOFFであった」のいずれかに近似して保持する事ができる。これにより、電流印加履歴を保持するために必要な記憶領域を削減する事が出来る。
【0075】
<実施例2>
実施例1では、補正テーブルを作成した時と画像を形成する時の現像ローラーの電気抵抗の変化に着目した。
【0076】
本実施例では、補正テーブルを作成した時とは異なる周辺環境の温度に着目してバンディングの振幅を予測し、予測した振幅に基づいてバンディング補正処理を行う構成について説明する。以下、実施例1と同一の構成及び処理については、同一の番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0077】
本実施例の画像形成装置が行う画像形成処理、及びそのための構成は、実施例1と同様である。
【0078】
図14は、本実施例の画像形成装置がバンディング補正処理を行う構成を示したブロック図である。本実施例の構成は、実施例1の構成に温度センサ122を追加したものである。温度センサ122は、周辺環境の温度を取得し、調整率算出部1106に出力する。
【0079】
以下に、本実施例におけるバンディング補正処理について詳細に説明する。本実施例が行うバンディング補正処理も実施例1と同様に、補正テーブル生成処理と、補正画像データ生成処理との2つからなる。
【0080】
[補正テーブル生成処理]
まず、補正テーブル生成部1102が補正テーブルを生成する。図15は、本実施例における補正テーブル生成処理のフローを示す図である。本実施例における補正テーブル作成処理は、実施例1と比較して、基準抵抗予測処理S410に替えて基準温度取得処理S1610を行う点で異なる。補正テーブル生成処理を実施する度に、補正テーブル格納部1103に格納されている補正テーブル、及び、履歴格納部1107に格納されている基準温度が更新される。またこれらは、電源が切断されると同時に破棄される。ここで更新される基準温度は、補正テーブルが生成された時点での温度である。温度を取得する処理は、後述する補正画像データ生成処理においても実施される。そして、ここで取得した基準温度と補正画像データ生成処理において取得する画像形成時温度に基づいて、画像形成時に発生するバンディングを好適に補正するよう補正テーブルを調整する。ステップS1610において、基準温度取得処理を行う。温度センサ122は温度を検出し、履歴格納部1107に格納している基準温度を検出した温度で更新する。続けて、実施例1で説明したステップS420からステップS480までの処理を実施する。
【0081】
[補正画像データ生成処理]
次に、補正画像データ生成処理を行う。本実施例における補正画像データ生成処理は、実施例1と比較して、調整率算出処理S520の処理内容のみ異なる。
【0082】
以下に、ステップS520において行う本実施例の調整率算出処理について詳細に説明する。まず、調整率算出部1106は、画像形成時温度を算出する。次に、調整率算出部1106は、基準振幅を算出する。基準振幅は、前回補正テーブル生成処理を実施した時点でのバンディングの振幅である。その際、予め作成し保持している温度対振幅テーブルを用いる。図16は調整率算出部1106が保持している温度対振幅テーブルの一例である。バンディングの振幅は温度に依存して変化する。温度対振幅テーブルは各温度におけるバンディングの振幅を記録している。この温度対振幅テーブルから、ステップS410で検出した基準温度に対応する振幅を取得し、基準振幅とする。さらに、調整率算出部1106は、画像形成時振幅を算出する。画像形成時振幅は、画像形成時点でのバンディングの振幅である。上記で基準振幅を算出したのと同様に、画像形成時抵温度に対応する振幅を取得し、画像形成時振幅とする。
【0083】
最後に以下の式(5)で調整率を算出する。
【0084】
調整率=画像形成時振幅/基準振幅 ・・・式(5)
以上説明したように、本実施例では、周辺環境の温度による画像形成装置の変化を考慮し、一度作成した補正テーブルを調節した上でバンディング補正処理を行う。これにより、より好適なバンディング補正を実現することができる。なお、着目すべき環境情報は温度に限定されず、湿度・気圧などに着目してもよい。
【0085】
また温度・湿度・気圧などの環境情報を取得するために、本実施例で例示したように各種センサを備える構成の他に、ユーザが当該情報を入力するためのインターフェイスを備える構成も考えられる。
【0086】
<その他の実施例>
前述の実施例では画像形成装置が、パッチ画像を測定した結果に基づいて補正テーブルを作成できる構成を備えていた。しかしながら、必ずしも画像形成装置が補正テーブルを作成できなくてもよい。本発明によれば、補正テーブルを作成した時点とは異なる条件下において、画像形成に関わるデバイスに変化が生じていても、画像形成時における予測振幅に基づいて、補正テーブルを調節することができる。これにより補正テーブルを作成した時点とは異なる条件下であっても、新たに補正テーブルを作成することなく適切に補正することができる。
【0087】
また、前述の実施例では補正テーブル作成処理のたびに必ず、基準状態(温度や抵抗)を算出していたが、これに限らない。例えば、補正テーブル作成処理は、画像形成に関わる環境やデバイスが十分定常時にある場合にのみ実施するような構成でもよい。その場合、例えば実施例1であれば、常に基準抵抗を定常時の電気抵抗Rmaxとすることもできる。
【0088】
なお、上述した各実施形態は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上記実施形態の各工程や機能を実現するソフトウェア(コンピュータプログラム)を、ネットワークや記憶媒体を介してシステムに供給し、そのシステムのコンピュータ(またはCPU等)が上記プログラムを読み込んで実行する処理である。上記コンピュータプログラムや、それを記憶したコンピュータ可読記憶媒体も本発明の範疇に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式により画像を形成する画像形成装置であって、
画像形成のために周期的な運動をするデバイスと、
前記デバイスの基準状態において作成された、前記デバイスに起因する濃度変動を補正するためのテーブルを保持する保持手段と、
前記基準状態とは異なる状態における前記変動の振幅を予測する予測手段と、
前記予測手段によって予測された振幅に基づいて、前記テーブルを調整する調整手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成装置の稼働履歴を取得する取得手段を有し、
前記予測手段は前記ジョブ履歴を用いて前記振幅を予測することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
環境情報を検知する環境情報検知手段を有し、
前記予測手段は、前記環境情報に基づいて前記デバイスの前記基準状態とは異なる状態における前記変動の振幅を予測することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記基準状態における振幅と、前記予測手段により予測された振幅とに基づいて調整率を算出し、前記調整率を用いて前記テーブルを調整することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記デバイスは現像ローラーであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記稼働履歴は、前記デバイスへの電流印加履歴を示すことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記稼働履歴は、プリントジョブ履歴であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
コンピュータに読み込み込ませ実行させることで、前記コンピュータを請求項1乃至7の何れか一項に記載された画像形成装置として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
電子写真方式により画像を形成するための画像処理方法であって、
保持手段、予測手段、調整手段とを有し
前記保持手段は、画像形成のために周期的な運動をするデバイスの基準状態において作成された、前記デバイスに起因する濃度変動を補正するためテーブルを保持し、
前記予測手段は前記基準状態とは異なる状態における前記変動の振幅を予測し、
前記調整手段は、前記予測手段によって予測された振幅に基づいて、前記テーブルを調整することを特徴とする画像処理装置。
【請求項1】
電子写真方式により画像を形成する画像形成装置であって、
画像形成のために周期的な運動をするデバイスと、
前記デバイスの基準状態において作成された、前記デバイスに起因する濃度変動を補正するためのテーブルを保持する保持手段と、
前記基準状態とは異なる状態における前記変動の振幅を予測する予測手段と、
前記予測手段によって予測された振幅に基づいて、前記テーブルを調整する調整手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成装置の稼働履歴を取得する取得手段を有し、
前記予測手段は前記ジョブ履歴を用いて前記振幅を予測することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
環境情報を検知する環境情報検知手段を有し、
前記予測手段は、前記環境情報に基づいて前記デバイスの前記基準状態とは異なる状態における前記変動の振幅を予測することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記基準状態における振幅と、前記予測手段により予測された振幅とに基づいて調整率を算出し、前記調整率を用いて前記テーブルを調整することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記デバイスは現像ローラーであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記稼働履歴は、前記デバイスへの電流印加履歴を示すことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記稼働履歴は、プリントジョブ履歴であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
コンピュータに読み込み込ませ実行させることで、前記コンピュータを請求項1乃至7の何れか一項に記載された画像形成装置として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
電子写真方式により画像を形成するための画像処理方法であって、
保持手段、予測手段、調整手段とを有し
前記保持手段は、画像形成のために周期的な運動をするデバイスの基準状態において作成された、前記デバイスに起因する濃度変動を補正するためテーブルを保持し、
前記予測手段は前記基準状態とは異なる状態における前記変動の振幅を予測し、
前記調整手段は、前記予測手段によって予測された振幅に基づいて、前記テーブルを調整することを特徴とする画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−88717(P2013−88717A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230909(P2011−230909)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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