説明

画像形成装置および画像形成システム

【課題】機密度の高い画像データの印刷を適切に管理することができる、画像形成装置および画像形成システムを提供する。
【解決手段】ジョブ情報取得部401は、印刷ジョブからジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報を取得する。ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報が、予め登録されたジョブ投入許可条件を満足するとジョブ投入許可部402が判定した場合、ジョブ保持部403は当該印刷ジョブを保持する。識別情報入力部404を通じて入力されたユーザ識別情報が、ジョブ保持部403が保持する印刷ジョブから取得されたジョブ種識別情報に対応づけられた印刷許可条件を満足すると印刷許可部405が判定した場合、印刷実行部406は当該印刷ジョブを画像形成部140に入力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィス等において、スキャナ、ファクシミリ、プリンタ、複写機等の機能を備える複合機(MFP:Multi Function Peripheral)が使用されている。複合機は、例えば、LAN(Local Area Network)等のネットワークを通じてパーソナルコンピュータ等の情報処理端末と接続された状況で使用されることが多い。そして、情報処理端末から入力された画像データを用紙上に印刷する画像形成装置として機能したり、情報処理端末において使用される画像データを取得する画像読取装置として機能したり、文書画像データを検索可能に蓄積する文書管理装置として機能したりする。
【0003】
このような複数のユーザにより使用される複合機では、セキュリティを確保することも求められている。例えば、情報処理端末と複合機とは離れて配置されていることが多いため、情報処理端末から複合機へ画像データを送信して印刷を行う場合には、複合機において出力された機密度の高い印刷物を、その複合機を共用する他のユーザに見られたり、持ち去られたりする可能性がある。また、複合機に機密度の高い画像データを蓄積した場合、当該複合機を使用可能なユーザに、その機密度の高い画像データを複製される可能性がある。そのため、セキュリティを確保するための種々の方法が実現されている。
【0004】
例えば、前者の問題に対しては、複合機に対して印刷ジョブをパスワードとともに送信し、複合機において、当該印刷ジョブの実行時にそのパスワードの入力が要求されるプライベート印刷機能を有する複合機が提案されている。また、後者の問題に対しては、画像データの登録時に、その画像データを再利用することができるユーザを指定するファイリング機能を有する複合機が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、このような複合機を使用することにより、データの漏洩を防止しつつ、機密文書を特定人に渡すことも可能になる。すなわち、特定人を印刷者として指定したプライベート印刷や、特定人を再利用者として指定したファイリング機能を使用すれば、当該特定人に画像データ自体を配布する必要がないため、画像データを配布する場合に比べて、画像データが漏洩する可能性を低減することができる。また、この手法では、画像データを印刷した紙媒体を配布する場合のように、機密漏洩防止のために、特定人と配布人とが直接対面する必要もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−084275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、設計図、仕様書、原価表等の技術情報、月度経費集計、顧客リスト等の営業情報、人事情報等の社内情報をはじめとする機密度の高い情報が、大量の電子データとして保持されており、これらの情報の機密管理が特に重要視されている。すなわち、これらの情報にアクセスできる者を制限するだけではなく、電子データ自体の複製や画像データとしての出力(印刷)の状況をも管理することが求められている。電子データ自体の複製を禁止する技術は種々存在しているが、出力(印刷)を管理することは容易ではない。
【0008】
例えば、その電子データにアクセスできる者を少数にし、そのアクセス権限を有する者が、上述のプライベート印刷やファイリング機能を使用して、特定人に対して印刷許可する運用では、そのアクセス権限を有する者の意思により、出力(印刷)を管理することはできる。しかしながら、そのアクセス権限の有する者の意思に、当該アクセス権限を有する者を選定した上位権限者の意思が反映されるとは限らない。すなわち、意図的であるか否かに関わらず、アクセス権限を有する者は、本来、印刷(紙媒体による複製)を許可すべきでない者に印刷を許可する可能性がある。特に、上述のファイリング機能では、画像データの再利用を許可された者は、画像データ自体にアクセス可能である。そのため、再利用を許可された者がさらに、再利用を許可することも考えられる。この場合、当該画像データを最初に登録した者の意思に関係なく、再利用可能者が増大することになる。
【0009】
一方、機密管理の責任者のみが画像データとしての印刷を他者に許可するようにすれば、画像データとしての出力(印刷)を管理することは可能になる。しかしながら、情報量が膨大であり、また、機密情報であっても、仕様書等は、客先への提出等、日常業務で使用することもあるため、責任者のみが機密管理を行う手法は現実的な方法ではない。
【0010】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであって、機密度の高い画像データの印刷を適切に管理することができる、画像形成装置および画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用している。すなわち、本発明に係る画像形成装置は、画像形成部、ジョブ情報取得部、ジョブ投入許可部、ジョブ保持部、識別情報入力部、印刷許可部および印刷実行部を備える。画像形成部は、画像データを用紙上に印刷する。ジョブ情報取得部は、新たに投入された印刷ジョブから、ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報を取得する。ここで、ジョブ種識別情報は、印刷ジョブの種別を識別する情報であり、ジョブ投入者識別情報は印刷ジョブを投入したユーザを識別する情報である。なお、「投入された印刷ジョブ」には、画像形成装置に接続された外部機器から入力された印刷ジョブだけでなく、画像形成装置自体に蓄積されている画像データを印刷するために画像形成装置において生成された印刷ジョブも含まれる。ジョブ投入許可部は、ジョブ情報取得部が取得した、ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報が、予め登録されたジョブ投入許可条件を満足するか否かを判定する。ジョブ保持部は、ジョブ投入許可部がジョブ投入許可条件を満足すると判定した場合、当該ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報を有する印刷ジョブを保持する。識別情報入力部には、ユーザ識別情報が入力される。印刷許可部は、識別情報入力部を通じて入力されたユーザ識別情報が、ジョブ種識別情報と対応づけて予め登録された印刷許可条件を満足するか否かを判定する。ここで、ユーザ識別情報は、ユーザを識別する情報である。印刷実行部は、識別情報入力部を通じて入力されたユーザ識別情報が、ジョブ保持部が保持する印刷ジョブから取得されたジョブ種識別情報に対応づけられた印刷許可条件を満足すると印刷許可部が判定した場合、当該印刷ジョブを画像形成部に入力する。
【0012】
この画像形成装置では、印刷ジョブにジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報が付随しており、まず、当該ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報に基づいて、印刷ジョブの投入を許可するか否かが判定される。したがって、画像形成装置に印刷ジョブを投入する権限を有していない者は、印刷ジョブを投入することができない。なお、印刷ジョブ投入権限を有するユーザは、印刷ジョブの種別ごとに予め画像形成装置に登録されている。例えば、設計仕様書、顧客リスト、月度経費集計等、画像形成装置に投入される印刷ジョブの内容に応じたジョブ種識別情報を印刷ジョブに付随させることで、権限を有しない者による印刷ジョブの投入が確実に防止できる。
【0013】
また、この画像形成装置では、印刷ジョブの実行(画像データとして印刷)の際に、印刷が許されているユーザであるか否かが判定される。したがって、印刷ジョブの実行が許されていないユーザは、画像形成装置に投入されている印刷ジョブを実行することができない。なお、印刷実行権限を有するユーザは、印刷ジョブの種別ごとに予め画像形成装置に登録されている。
【0014】
このように、この画像形成装置では、画像形成装置へ印刷ジョブを投入できるユーザと、画像形成装置において印刷ジョブを実行できるユーザとが、画像形成装置に登録されているため、例えば、意図的であるか否かに関わらず、印刷ジョブ投入権限を有しているユーザが、本来、印刷を許可すべきでないユーザに印刷を許可することができない。すなわち、機密度の高い画像データの印刷を適切に管理することができる。
【0015】
上記画像形成装置において、ジョブ保持部は、予め指定された時間保持を継続した印刷ジョブを消去する構成を採用することができる。この構成では、ジョブ保持部に、機密度の高い印刷ジョブが放置され続けることを防止できる。
【0016】
また、上記画像形成装置において、印刷許可部は、識別情報入力部を通じて入力されたユーザ識別情報が、ジョブ種識別情報と対応づけられた複数のユーザ識別情報のいずれかと一致する場合に印刷許可条件を満足すると判定し、ジョブ保持部は、複数のユーザ識別情報に含まれる特定のユーザ識別情報に基づく画像形成部における印刷が完了したときに、当該印刷に対応する印刷ジョブを消去する構成を採用することもできる。この構成では、印刷ジョブを実行可能な特定のユーザに、より確実に印刷物を配布することができる。
【0017】
また、他の観点では、本発明は、画像形成装置、ジョブ投入許可装置および印刷実行装置を備える画像形成システムを提供することもできる。画像形成装置は、画像データを用紙上に印刷する。ジョブ投入許可装置は、ジョブ情報取得部、ジョブ投入許可部およびジョブ保持部を備える。ジョブ情報取得部は、画像形成装置に新たに投入される印刷ジョブから、ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報を取得する。ジョブ投入許可部は、ジョブ情報取得部が取得した、ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報が、予め登録されたジョブ投入許可条件を満足するか否かを判定する。ジョブ保持部は、ジョブ投入許可部がジョブ投入許可条件を満足すると判定した場合、当該ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報に対応する印刷ジョブを保持する。また、印刷実行装置は、識別情報入力部、印刷許可部および印刷実行部を備える。識別情報入力部には、ユーザ識別情報が入力される。印刷許可部は、識別情報入力部を通じて入力されたユーザ識別情報が、ジョブ種識別情報と対応づけて予め登録された印刷許可条件を満足するか否かを判定する。印刷実行部は、識別情報入力部を通じて入力されたユーザ識別情報が、ジョブ投入許可装置のジョブ保持部が保持する印刷ジョブから取得されたジョブ種識別情報に対応づけられた印刷許可条件を満足すると印刷許可部が判定した場合、当該印刷ジョブを画像形成装置に入力する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡便な操作により、機密度の高い画像データの印刷を適切に管理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における複合機の全体構成を示す概略構成図
【図2】本発明の一実施形態における複合機の操作パネルを示す模式図
【図3】本発明の一実施形態における複合機のハードウェア構成を示す図
【図4】本発明の一実施形態における複合機を示す機能ブロック図
【図5】本発明の一実施形態における複合機が実施する印刷ジョブ投入手順の一例を示すフロー図
【図6】本発明の一実施形態におけるジョブ投入許可リストの一例を示す図
【図7】本発明の一実施形態における複合機が実施する印刷実行手順の一例を示すフロー図
【図8】本発明の一実施形態における印刷許可リストの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。以下では、デジタル複合機として本発明を具体化する。
【0021】
図1は本実施形態におけるデジタル複合機の全体構成の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、複合機100は、画像読取部120および画像形成部140を含む本体101と、本体101の上方に取り付けられたプラテンカバー102とを備える。本体101の上面には原稿台103が設けられており、原稿台103はプラテンカバー102によって開閉されるようになっている。また、プラテンカバー102は、原稿搬送装置110を備えている。
【0022】
原稿台103の下方には、画像読取部120が設けられている。画像読取部120は、走査光学系121により原稿の画像を読み取りその画像のデジタルデータ(画像データ)を生成する。原稿は、原稿台103や原稿搬送装置110に載置することができる。走査光学系121は、第1キャリッジ122や第2キャリッジ123、集光レンズ124を備える。第1キャリッジ122には線状の光源131およびミラー132が設けられ、第2キャリッジ123にはミラー133および134が設けられている。光源131は原稿を照明する。ミラー132、133、134は、原稿からの反射光を集光レンズ124に導き、集光レンズ124はその光像をラインイメージセンサ125の受光面に結像する。この走査光学系121において、第1キャリッジ122および第2キャリッジ123は、副走査方向135に往復動可能に設けられている。第1キャリッジ122および第2キャリッジ123を副走査方向135に移動することによって、原稿台103に載置された原稿の画像をイメージセンサ125で読み取ることができる。原稿搬送装置110にセットされた原稿の画像を読み取る場合、画像読取部120は、第1キャリッジ122および第2キャリッジ123を画像読取位置に合わせて一時的に固定し、画像読取位置を通過する原稿の画像をイメージセンサ125で読み取る。イメージセンサ125は、受光面に入射した光像から、例えば、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色に対応する原稿の画像データを生成する。生成された画像データは、画像形成部140において用紙に印刷することができる。また、ネットワークインタフェイス161によりネットワーク162を通じて外部機器へ送信することもできる。
【0023】
画像形成部140は、画像読取部120で得た画像データや、ネットワーク162に接続された外部機器から受信した画像データを用紙に印刷する。なお、図1では、外部機器として情報処理端末170のみを例示している。
【0024】
画像形成部140は、感光体ドラム141を備える。感光体ドラム141は一定速度で一方向に回転する。感光体ドラム141の周囲には、回転方向の上流側から順に、帯電器142、露光器143、現像器144、中間転写ベルト145が配置されている。帯電器142は、感光体ドラム141表面を一様に帯電させる。露光器143は、一様に帯電した感光体ドラム141の表面に、画像データに応じて光を照射し、感光体ドラム141上に静電潜像を形成する。現像器144は、その静電潜像にトナーを付着させ、感光体ドラム141上にトナー像を形成する。中間転写ベルト145は、感光体ドラム141上のトナー像を用紙に転写する。画像データがカラー画像である場合、中間転写ベルト145は、各色のトナー像を同一の用紙に転写する。なお、RGB形式のカラー画像は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)形式の画像データに変換され、各色の画像データが露光器143に入力される。
【0025】
画像形成部140は、手差しトレイ151、給紙カセット152、153、154等から、中間転写ベルト145と転写ローラ146との間の転写部に用紙を給送する。手差しトレイ151や各給紙カセット152、153、154には、様々なサイズの用紙を載置または収容することができる。画像形成部140は、ユーザの指定した用紙や、自動検知した原稿のサイズに応じた用紙を選択し、選択した用紙を給送ローラ155により手差しトレイ151やカセット152、153、154から給紙する。給紙された用紙は搬送ローラ156やレジストローラ157で転写部に搬送する。トナー像を転写した用紙は、搬送ベルト147により定着器148に搬送される。定着器148は、ヒータを内蔵した定着ローラ158および加圧ローラ159を有しており、熱と押圧力によってトナー像を用紙に定着する。画像形成部140は、定着器148を通過した用紙を排紙トレイ149へ排紙する。
【0026】
図2は複合機が備える操作パネルの外観の一例を示す図である。ユーザは、操作パネル200を用いて、複合機100に複写開始やその他の指示を与えたり、複合機100の状態や設定を確認したりすることができる。操作パネル200には、タッチパネル付きディスプレイ201や操作キー203が配置されている。ディスプレイ201は、操作ボタンやメッセージ等を表示する液晶ディスプレイ等からなる表示面と、当該表示面上の押圧位置を検出するセンサとを備える。押圧位置の検知方法は特に限定されない。抵抗膜方式、静電容量方式、表面弾性波方式、電磁波方式等、任意の方式を採用することができる。ユーザは、自身の指やタッチペン202を使用して、ディスプレイ201を通じて入力を行うことができる。
【0027】
ディスプレイ201は、ボタン表示部204、メッセージ表示部205およびステータス表示部206を有する操作画面を表示する。ボタン表示部204には、複数のタブ208が用意されており、各タブにはそのタブのカテゴリーに応じた操作ボタンが配列されている。「簡単設定」タブは、基本的な設定に使用される操作ボタンを有する。図2の例では、用紙サイズ、複写倍率、濃度、印刷面、ページ集約、後処理を設定するための操作ボタンが配列されている。例えば「濃度」ボタン207を押圧する操作をユーザが行うと、濃度を選択するための「薄い」、「ふつう」、「濃い」等の選択ボタンを有するポップアップ画面がその操作ボタン上に重ねて表示され、ユーザの選択(押圧)によりその濃度が設定される。図2の例では、「簡単設定」タブの他、「原稿/用紙/仕上げ」タブ、「カラー/画質」タブ、「レイアウト/編集」タブ、「応用/その他」タブも設けられている。ユーザは、タブボタン208を選択する操作を行うことによって、これらのタブの表示に切り替えることができる。一つのタブが選択されている間、操作画面上で他のタブやその要素は隠れている。
【0028】
メッセージ表示部205には、複写が可能か否か、複写部数などの設定をユーザに通知するメッセージが表示される。なお、本実施形態の複合機100は、複合機100を使用する場合に、ユーザの利用資格を確認するユーザ認証処理(ログイン処理)が実施される構成になっている。図2は、当該ユーザ認証処理が実施される前の状態を示しており、メッセージ表示部205には当該状態を示す「認証してください」のメッセージが表示されている。
【0029】
ステータス表示部206には、必要に応じて装置ステータス情報が表示される。この表示には、複合機100が備える各種センサの検知結果が反映される。装置ステータス情報とは、装置は動作可能な状態にあるが、異常への対応を促す警告をユーザに通知するメッセージを意味する。例えば、用紙残量が少ない旨、原稿台103が汚れている旨、ファクシミリのメモリ受信が設定されている場合にファックス文書がメモリに格納された旨等が含まれる。また、用紙切れや搬送ジャム等が装置ステータス情報に含まれてもよい。
【0030】
操作キー203は、主電源キー209、テンキー210やスタートキー211、クリアキー212、LogOutキー213等を含む。例えば、主電源キー209は、複合機100の主電源のON、OFFの切り替えに使用される。テンキー210は、複写部数の指定や複写倍率の設定に用いることができる。ユーザがそれらの設定をすると、複合機100は、メッセージ表示部205に、例えば、「コピーできます(設定あり)」のようなメッセージを表示し、ユーザによる設定が行われたことを通知する。スタートキー211は、複写や画像印刷の開始指示に使用される。ユーザは、自身でした設定を解除する場合、クリアキー212を操作する。ユーザによる設定を機械が受け付けているかどうかは上述のメッセージで判断することができるので、その設定が不要になればクリアキー212を操作すればよい。特に限定されないが、本実施形態では、上述のユーザ認証処理により、ユーザの利用資格が確認されるまで、操作パネル200を通じた操作が禁止される構成になっている。認証されたユーザが複合機使用後にLogOutキー213を押下する、あるいは、操作パネル200に対する操作および画像読取部120や画像形成部140の動作がない時間が認証後に所定時間継続すると、複合機100は認証処理が実施される前の状態に戻るように構成されている。
【0031】
図3は、複合機における制御系のハードウェア構成図である。本実施形態の複合機100は、CPU(Central Processing Unit)301、RAM(Random Access Memory)302、ROM(Read Only Memory)303、HDD(Hard Disk Drive)304および原稿搬送装置110、画像読取部120、画像形成部140における各駆動部に対応するドライバ305が内部バス306を介して接続されている。ROM303やHDD304等はプログラムを格納しており、CPU301はその制御プログラムの指令にしたがって複合機100を制御する。例えば、CPU301はRAM302を作業領域として利用し、ドライバ305とデータや命令を授受することにより上記各駆動部の動作を制御する。また、HDD304は、画像読取部120により得られた画像データや、外部機器からネットワークインタフェイス161を通じて受信した画像データの蓄積にも用いられる。
【0032】
内部バス306には、操作パネル200や各種のセンサ307、ICカードリーダ308も接続されている。操作パネル200は、ユーザの操作を受け付け、その操作に基づく信号をCPU301に供給する。また、ディスプレイ201は、CPU301からの制御信号にしたがって上述の操作画面を表示する。センサ307は、プラテンカバー102の開閉検知センサや原稿台103上の原稿検知センサ、定着器148の温度センサ、搬送される用紙または原稿の検知センサなど各種のセンサを含む。CPU301は、例えばROM303に格納されたプログラムを実行することで、以下の各手段(機能ブロック)を実現するとともに、これらセンサからの信号に応じて各手段の動作を制御する。
【0033】
図4は、本実施形態の複合機の機能ブロック図である。図4に示すように、本実施形態の複合機100はネットワーク162を介して情報処理端末170とデータの授受が可能な状態で接続されている。
【0034】
まず、情報処理端末170について説明する。情報処理端末170はパーソナルコンピュータ等により構成され、ネットワークインタフェイス171を介してネットワーク162と接続されている。また、情報処理端末170は印刷ジョブ生成部172を備える。
【0035】
印刷ジョブ生成部172は、ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報を伴う印刷ジョブを生成し、生成した印刷ジョブを複合機100へ送信する。印刷ジョブ生成部172は、例えば、情報処理端末170上で動作するプリンタドライバであり、情報処理端末170において実行されるワードプロセッサソフトウェア、表計算ソフトウェア、図形描画ソフトウェア等の種々のアプリケーションにより作成された文書画像データを所定のPDL(Page Description Language)等で記述された印刷ジョブに変換する。なお、情報処理端末170は、複合機100と同様に、CPU、RAM、ROM、およびHDDを備える。CPUは、例えばROMやHDDに格納されたプログラムを、RAMを作業領域として実行することで、印刷ジョブ生成部172を実現する。
【0036】
本実施形態では、印刷ジョブ生成部172が生成する印刷ジョブはジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報と対応づけられている。ここでは、印刷ジョブがジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報を含むことで当該対応づけがなされている。
【0037】
ジョブ種識別情報は印刷ジョブの種別を識別するための情報である。印刷ジョブの種別とは、複合機100にその印刷ジョブを投入することを許可されたユーザの範囲および複合機100に投入された印刷ジョブを実行(印刷)することを許可されたユーザの範囲が同一である特定のグループを意味する。したがって、ジョブ種識別情報は、少なくとも、当該特定のグループを識別する情報を含む。
【0038】
特に限定されないが本実施形態では、上記アプリケーションが作成した、特定種の文書画像データ(ファイル)には、その種類ごとに、既定のルールにしたがって、共通部分を含む名称(ファイル名)が付与される。そして、当該文書画像データに基づいて印刷ジョブ生成部172が作成した印刷ジョブは、印刷ジョブ名として当該ファイル名が付与される。この場合、印刷ジョブ名に共通部分を有する印刷ジョブが同一グループに属する印刷ジョブになり、当該共通部分がジョブ種識別情報になる。ここで、特定種の文書画像データは、例えば、設計図、月度経費集計、顧客リスト等の機密度の高い情報を含む文書画像データであり、それぞれ、「設計」の文字に製品の品番を示す記号を付加したファイル名、「月度経費」の文字に、月度および部門を示す記号を付加したファイル名、「顧客」の文字に製品の品番を示す記号を付加したファイル名等が付与される。このようなファイル名管理は、アプリケーション上(あるいは基幹システム上)での使用可能ファイル名をソフトウェア的に制限すること、およびファイル名変更をソフトウェア的に禁止することにより実現可能である。
【0039】
ジョブ投入者識別情報は、印刷ジョブを投入したユーザを識別する情報である。本実施形態では、ユーザが情報処理端末170の使用を開始する際に、ユーザ識別情報の入力が要求される構成になっており、印刷ジョブ生成時に、印刷ジョブ生成部172が当該ユーザ識別情報をジョブ投入者識別情報として印刷ジョブに付与する。ユーザ識別情報は、ユーザを特定することができる情報であればよい。本実施形態では、各ユーザに一義的に割り当てられたユーザIDをユーザ識別情報として使用する。なお、ユーザ識別情報の入力は、印刷ジョブ生成時に要求される構成であってもよい。
【0040】
続いて、複合機100について説明する。図4に示すように複合機100は、ジョブ情報取得部401、ジョブ投入許可部402、ジョブ保持部403、識別情報入力部404、印刷許可部405および印刷実行部406を備える。なお、複合機100自体も、複写やHDD304に保持されている文書画像データの出力指示を受けた際にジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報を伴う印刷ジョブを生成可能である。
【0041】
ジョブ情報取得部401は、新たに投入された印刷ジョブに含まれるジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報を取得する。なお、新たに投入された印刷ジョブには、複合機100において生成された印刷ジョブや、ネットワークインタフェイス161を介して情報処理端末170等の外部機器から入力された印刷ジョブが含まれる。
【0042】
ジョブ投入許可部402は、ジョブ情報取得部401が取得した、ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報が、予め登録されたジョブ投入許可条件を満足するか否かを判定する。特に限定されないが、本実施形態では、ジョブ投入許可部402には、ジョブ種識別情報と印刷ジョブの投入が可能な者のユーザ識別情報(ジョブ投入可能者ID)とを対応づけて記録したジョブ投入許可リストが予め登録されている。そして、ジョブ情報取得部401が取得した、ジョブ種識別情報とジョブ投入者識別情報との組み合わせが、ジョブ投入許可リストに含まれている場合、ジョブ投入許可部402はジョブ投入許可条件を満足すると判定する。
【0043】
ジョブ投入許可部402がジョブ投入許可条件を満足すると判定した場合、当該ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報を有する印刷ジョブ(すなわち、新たに発生した印刷ジョブ)はジョブ保持部403に保持される。ジョブ保持部403に保持された印刷ジョブは、画像形成部140における印刷を待機する状態にある。
【0044】
識別情報入力部404は、複合機100への、ユーザを識別するための識別情報の入力に使用される。上述のように、本実施形態では、ユーザ識別情報は、各ユーザに一義的に割り当てられたユーザIDである。
【0045】
本実施形態では、識別情報入力部404はICカードリーダ308により構成されている。ICカードリーダ308の読取位置に可搬記憶媒体であるICカードが配置されたときに、ICカードリーダ308がICカードに記憶されているユーザ識別情報を読み取る。また、ICカードに代えて、磁気カードやUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の他の可搬記憶媒体を使用することもできる。この場合、識別情報入力部404は可搬記憶媒体に対応する構成(磁気ガードリーダ、USBインターフェイス等)になる。また、可搬記憶媒体を使用することなく、タッチパネル201に表示されるソフトウェアキーボード、あるいはテンキー210を識別情報入力部404として用いて、ユーザ識別情報を入力する構成であってもよい。この場合、操作パネル200は、少なくともユーザ識別情報の入力を許可するように構成される。
【0046】
印刷許可部405は、識別情報入力部404を通じて入力されたユーザ識別情報が、ジョブ種識別情報と対応づけて予め登録された印刷許可条件を満足するか否かを判定する。特に限定されないが、本実施形態では、印刷許可部405には、ジョブ種識別情報と印刷を実行可能な者のユーザ識別情報(印刷可能者ID)とを対応づけて記録した印刷許可リストが予め登録されている。そして、ジョブ保持部403が保持する印刷ジョブから取得されたジョブ種識別情報と識別情報入力部404を通じて入力されたユーザ識別情報との組み合わせが印刷許可リストに含まれている場合、印刷許可部405は印刷許可条件を満足すると判定する。
【0047】
印刷実行部406は、識別情報入力部404を通じて入力されたユーザ識別情報が、ジョブ保持部403が保持する印刷ジョブから取得されたジョブ種識別情報に対応づけられた印刷許可条件を満足すると印刷許可部405が判定した場合、当該印刷ジョブを画像形成部140に入力する。これにより、印刷ジョブが実行される。
【0048】
また、本実施形態の複合機100は、図4に示すように、認証部411、計時部412を備えている。認証部411は、識別情報入力部404を通じて入力されたユーザ識別情報と予め登録された認証条件とを照合する。本実施形態では、認証部411に、複合機100の使用を許可する者のユーザIDを記録した使用許可者リストが予め登録されており、識別情報入力部404が取得したユーザIDが使用許可者リストに含まれる場合、認証部411は、認証条件を満足すると判定する。認証部411は、認証条件を満足する場合はログイン処理を実施し、そのユーザによる複合機100の使用を許可する。また、認証条件を満足しない場合はログイン処理を実施せず、複合機100の使用を禁止する。特に限定されないが、本実施形態では、認証条件を満足するまで、操作パネル200を通じた操作を受け付けない状態にすることで、複合機100の使用を禁止している。なお、本実施形態では、ジョブ投入許可リストおよび印刷許可リストに記録されている、ユーザ識別情報は、使用許可者リストに含まれている。また、計時部412は、時刻を計時し、その時刻情報を出力するタイマーで構成される。ここでは、計時部412は、年、月、日、時、分、秒を計時可能な構成になっている。
【0049】
図5は、複合機100が実行する印刷ジョブ投入手順の一例を示すフロー図である。当該手順は、例えば、新たな印刷ジョブを認識したこと、すなわち、自機での印刷ジョブの生成あるいは外部機器からの印刷ジョブの入力をトリガとして進行する(ステップS501Yes)。なお、以下では、情報処理端末170から複合機100に印刷ジョブが入力され、当該印刷ジョブのジョブ情報をジョブ情報取得部401が取得する事例により説明する。
【0050】
まず、ユーザは、情報処理端末170において、文書画像データを印刷する指示を入力する。ここでは、複合機100が出力先に指定されている。ユーザが、印刷実行を指示すると、当該指示に基づいて印刷ジョブ生成部172が印刷ジョブを生成する。このとき、印刷ジョブ生成部172は、ジョブ種識別情報を含むファイル名(印刷ジョブ名)、およびジョブ投入者識別情報として機能する、印刷ジョブを生成したユーザのユーザ識別情報を印刷ジョブに含める。
【0051】
印刷ジョブの生成を完了した印刷ジョブ生成部172は、ネットワークインタフェイス171を通じて、出力先に指定された複合機100へ印刷ジョブを送信する。ネットワーク162を介して印刷ジョブを受信したネットワークインタフェイス161は、ジョブ情報取得部401に受信した印刷ジョブを入力する。
【0052】
ジョブ情報取得部401は、入力された印刷ジョブからジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報を抽出する(ステップS502)。ジョブ情報取得部401は、抽出したジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報の組み合わせがジョブ投入許可条件を満足するか否かをジョブ投入許可部402に問い合わせる(ステップS503)。
【0053】
図6は、ジョブ投入許可部402に予め登録されているジョブ投入許可リストの一例を示す図である。図6に示すように、ジョブ投入許可リスト601は、ジョブ種識別情報とジョブ投入可能者IDとを対応づけて記録するテーブルである。図6の例では、「設計」、「月度経費」、「顧客」等のジョブ種識別情報が登録されている。そして、各ジョブ種識別情報に、ジョブ投入が可能な者のユーザIDがそれぞれ登録されている。
【0054】
図6の例では、ジョブ種識別情報「設計」に、ユーザID「A001」が対応づけられている。また、ジョブ種識別情報「月度経費」に、ユーザID「A002」および「A003」が対応づけられている。また、ジョブ種識別情報「顧客」に、ユーザID「A002」が対応づけられている。したがって、この例では、ジョブ種識別情報が「設計」であるグループに属する印刷ジョブは、ユーザIDが「A001」であるユーザしか複合機100に投入できない。例えば、印刷ジョブ名が「設計LA1234」である印刷ジョブは、ジョブ種識別情報が「設計」であるグループに属するので、ユーザ「A001」しか複合機100に投入できない。
【0055】
同様に、ジョブ種識別情報が「月度経費」であるグループに属する印刷ジョブは、ユーザIDが「A002」または「A003」であるユーザしか複合機100に投入できない。また、ジョブ種識別情報が「顧客」であるグループに属する印刷ジョブは、ユーザIDが「A002」であるユーザしか複合機100に投入できない。
【0056】
ジョブ投入許可部402は、入力されたジョブ種識別情報とジョブ投入者識別情報との組み合わせがジョブ投入許可リストに含まれていない場合、ジョブ投入許可条件を満足しないと判定し、その旨をジョブ情報取得部401に通知する(ステップS503No)。当該通知を受けたジョブ情報取得部401はその印刷ジョブを消去する(ステップS505)。このとき、ジョブ情報取得部401が当該印刷ジョブの送信元に、印刷ジョブを受け入れられない旨を通知してもよい。
【0057】
一方、入力されたジョブ種識別情報とジョブ投入者識別情報との組み合わせがジョブ投入許可リストに含まれている場合、ジョブ投入許可部402は、ジョブ投入許可条件を満足すると判定し、その旨をジョブ情報取得部401に通知する(ステップS503Yes)。当該通知を受けたジョブ情報取得部401はその印刷ジョブをジョブ保持部403に入力する(ステップS504)。また、このとき、ジョブ情報取得部401は、ジョブ保持部403に入力した印刷ジョブのジョブ種識別情報を印刷許可部405に入力する。特に限定されないが、本実施形態では、ジョブ情報取得部401は、ジョブ種識別情報を含む印刷ジョブ名を印刷許可部405に入力する。印刷許可部405は、後述の消去指示が入力されるまで当該印刷ジョブ名を保持する。
【0058】
このように、本実施形態の複合機100では、複合機100に印刷ジョブを投入する権限を有していない者は、印刷ジョブを投入することができない。また、当該印刷ジョブの投入可否は、複合機100におけるジョブ投入許可リストの登録内容のみで管理することができる。
【0059】
続いて、以上のようにしてジョブ保持部403に保持された印刷ジョブの出力手順について説明する。図7は、複合機100が実行する印刷実行手順の一例を示すフロー図である。当該手順は、複合機100に対するユーザ識別情報の入力をトリガとして進行する(ステップS701Yes)。
【0060】
まず、ユーザは、複合機100の識別情報入力部404を通じてユーザ識別情報(ユーザID)を入力して複合機100にログインする。上述のとおり、認証部411は、識別情報入力部404から入力されたユーザ識別情報が使用許可者リストに含まれている場合は、当該ユーザの操作パネル200を通じた操作を受け付ける状態にし、使用許可者リストに含まれていない場合は、操作パネル200を通じた操作を受け付けない状態を維持する。
【0061】
認証部411が、認証条件を満足する(ユーザ識別情報が使用許可者リストに含まれている)と判定した場合、その旨を印刷許可部405へ通知する。当該通知を受けた印刷許可部405は、識別情報入力部404から入力されたユーザ識別情報、およびジョブ情報取得部401から入力されたジョブ種識別情報の組み合わせが印刷許可条件を満足するか否かを判定する(ステップS702)。上述のように、本実施形態では、ジョブ情報取得部401から印刷ジョブ名が入力されているため、印刷許可部405は、当該印刷ジョブ名からジョブ種識別情報を抽出し、当該判定を実施する。なお、印刷許可部405に複数の印刷ジョブ名が保持されている場合、当該判定は、印刷許可部405に保持されている印刷ジョブ名のそれぞれについて実施される。
【0062】
図8は、印刷許可部405に予め登録されている印刷許可リストの一例を示す図である。図8に示すように、印刷許可リスト801は、ジョブ種識別情報と印刷可能者IDとを対応づけて記録するテーブルである。図8の例では、図6に示すジョブ投入許可リストと同様に、「設計」、「月度経費」、「顧客」等のジョブ種識別情報が登録されている。そして、各ジョブ種識別情報に、印刷が可能な者のユーザIDがそれぞれ登録されている。
【0063】
図8の例では、ジョブ種識別情報「設計」に、ユーザID「A001」、「A002」、「A003」および「B012」が対応づけられている。また、ジョブ種識別情報「月度経費」に、ユーザID「A002」および「A004」が対応づけられている。また、ジョブ種識別情報「顧客」に、ユーザID「A002」が対応づけられている。したがって、この例では、ジョブ種識別情報が「設計」であるグループに属する印刷ジョブは、ユーザIDが「A001」、「A002」、「A003」または「B012」であるユーザが画像形成部140において印刷できる。同様に、ジョブ種識別情報が「月度経費」であるグループに属する印刷ジョブは、ユーザIDが「A002」または「A004」であるユーザが画像形成部140において印刷できる。ジョブ種識別情報が「顧客」であるグループに属する印刷ジョブは、ユーザIDが「A002」であるユーザしか画像形成部140において印刷できない。なお、この例では、ジョブ種識別情報が「月度経費」であるグループに属する印刷ジョブは、ユーザ「A003」は、印刷ジョブを投入可能であるが、印刷ジョブを実行できない。このような設定は、例えば、印刷ジョブ投入のみを代理実行する者を指定する場合に有用である。
【0064】
印刷許可部405は、抽出したジョブ種識別情報と識別情報入力部404から入力されたユーザ識別情報との組み合わせが印刷許可リストに含まれていない場合、印刷許可条件を満足しないと判定する(ステップS702No)。例えば、ジョブ保持部403に、ユーザ「A001」によって投入された、ジョブ種識別情報「設計」に属する印刷ジョブ「設計LA1234」が保持されている状態で、ユーザIDが「A005」であるユーザが複合機100にログインしたとすると、印刷許可部405は、印刷許可条件を満足しないと判定する。印刷許可条件を満足しないと判定した場合、印刷許可部405は特別な処理を行うことなく、手順が終了する。
【0065】
一方、抽出したジョブ種識別情報と識別情報入力部404から入力されたユーザ識別情報との組み合わせが印刷許可リストに含まれている場合、印刷許可部405は、印刷許可条件を満足すると判定し、印刷許可条件を満足した印刷ジョブ名を印刷実行部406に通知する(ステップS702Yes)。例えば、ジョブ保持部403に、上述の印刷ジョブ「設計LA1234」が保持されている状態で、ユーザIDが「B012」であるユーザが複合機100にログインしたとすると、印刷許可部405は、印刷許可条件を満足すると判定する。
【0066】
特に限定されないが、本実施形態では、印刷ジョブ名が通知された印刷実行部406は、ディスプレイ201に、「印刷が許可された印刷ジョブがあります。印刷しますか?」等のユーザに印刷の実行要否を問い合わせるメッセージを表示し、ユーザから「印刷する」または「印刷しない」の回答を受け付けるように構成されている(ステップS703)。ユーザからの回答が「印刷しない」である場合、印刷実行部406は特別な処理を行うことなく、手順が終了する(ステップS703No)。
【0067】
また、ユーザからの回答が「印刷する」である場合、印刷実行部406は、入力された印刷ジョブ名に対応する印刷ジョブをジョブ保持部403から読み出して画像形成部140へ入力する(ステップS703Yes、S704)。これにより、印刷ジョブが実行(印刷)される。印刷実行部406は、印刷完了まで待機し(ステップS705No)、印刷が完了すると、ジョブ保持部403に印刷が完了した印刷ジョブの消去を指示する(ステップS705Yes、S706)。印刷ジョブの消去が完了すると、ジョブ保持部403は、印刷許可部405にその旨を入力する。このとき、印刷許可部405は、消去された印刷ジョブに対応する印刷ジョブ名を消去する。これにより、印刷許可部405には、ジョブ保持部403に保持されている印刷ジョブの印刷ジョブ名が常時保持されることになる。なお、本実施形態では、印刷ジョブ名としてファイル名を使用しているため、同一の印刷ジョブ名を有する印刷ジョブがジョブ保持部403に保持される可能性がある。この場合、計時部412から出力される時刻情報に基づいて、投入時刻を示すタイムスタンプ等を印刷ジョブ名に付加した新たな印刷ジョブ名を、複合機100内での管理に使用する構成とすれば、何ら問題は発生しない。
【0068】
このように、本実施形態の複合機100では、印刷ジョブの実行の際にも、印刷ジョブを実行する権限を有する者であるか否かが判定され、印刷ジョブを実行する権限を有していない者には、複合機100に投入されている印刷ジョブの実行が許可されない。また、当該印刷ジョブの実行可否は、複合機100における印刷許可リストの登録内容のみで管理することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態の複合機100では、複合機100へ印刷ジョブを投入できるユーザと、複合機100において印刷ジョブを実行できるユーザとが、予め複合機100に登録されている。そのため、例えば、意図的であるか否かに関わらず、印刷ジョブ投入権限を有しているユーザが、本来、印刷を許可すべきでないユーザに印刷を許可することを確実に防止することができる。すなわち、機密度の高い画像データの印刷を適切に管理することができる。また、複合機100におけるジョブ投入許可リストおよび印刷許可リストの登録内容のみで当該管理を実現できるため、非常に簡便である。
【0070】
なお、上記では、ユーザがログインした際に、印刷が許可された印刷ジョブがある旨をユーザに通知するとともに、印刷の要否の回答のみを要求する構成とした。しかしながら、セキュリティをより高める観点では、ユーザの正当性をより確実に確認するために、印刷指示の際に、操作パネル200を通じた特別のパスワードの入力を要求する構成を採用することもできる。この場合、パスワードは、複合機100に予め設定されていてもよく、ジョブ投入の際に印刷ジョブ自体に設定されてもよい。
【0071】
また、複合機100において、ジョブ保持部403は、計時部412が出力する時刻情報に基づいて、予め指定された時間(例えば、2時間)保持を継続した印刷ジョブを自動的に消去する構成を採用することができる。この構成では、ジョブ保持部403に、印刷が実行されない印刷ジョブが放置され続けることを防止できる。その結果、複合機100のメモリ等が不当に占有されることを防止でき、また、セキュリティの観点では、機密度の高い印刷ジョブが放置され続け、ジョブ投入者ですら印刷ジョブを投入したこと忘れてしまうような状況が発生することを未然に防止することができる。
【0072】
また、上述の複合機100では、印刷許可リストにおいて、1つのジョブ種識別情報に複数の印刷可能者IDが登録されている場合、いずれのユーザであってもその印刷ジョブを実行することができる。しかしながら、印刷ジョブ生成時に、当該複数の印刷可能者IDに含まれる特定のユーザを印刷者として指定する構成を採用してもよい。この構成では、印刷ジョブを実行可能な特定のユーザのみに、確実に印刷物を配布することができる。なお、印刷者の指定は、例えば、ジョブ投入許可条件を満足すると判定したジョブ投入許可部402が印刷許可部405にジョブ種識別情報を通知し、当該通知に応じて印刷許可部405が情報処理端末170に当該ジョブ種識別情報を有する印刷ジョブを実行可能なユーザを通知し、当該通知されたユーザの中から指定印刷者を情報処理端末170において選択する構成により容易に実現可能である。そして、選択されたユーザ識別情報を含む印刷ジョブを印刷ジョブ生成部172が生成し、印刷許可部405が印刷許可条件を判定する際に、当該指定されたユーザ識別情報との一致をさらに判定することで、指定ユーザのみによる印刷を実現することができる。
【0073】
以上説明したように、この複合機100では、複合機100に予め登録されているユーザのみに印刷ジョブの投入が許可され、当該印刷ジョブの実行も複合機100に予め登録されているユーザのみに許可される。そのため、複合機100への登録という簡便な操作により、画像データの印刷を適切に管理することができる。当該手法は、特に、機密度の高い画像データの管理に好適である。
【0074】
なお、上述した実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では、ジョブ種識別情報としてファイル名に含まれる共通部分を使用したが、特定のグループを識別可能な情報であれば、任意の情報を使用することができる。例えば、各グループに一義的に割り当てられた識別子(特定の文字列等からなるID)がファイル名に応じて、別途付加される構成であってもよい。
【0075】
また、図5、図7に示したフローチャートは、等価な作用を奏する範囲において、各ステップの順序を適宜変更可能である。例えば、図5では、印刷ジョブ投入前にジョブ情報のみを複合機100に送信し、ジョブ投入許可条件を満足する場合のみに印刷ジョブを送信する構成であっても同様の効果を得ることができる。また、図7では、印刷実行部406が印刷ジョブを読み出したステップS703において、ジョブ保持部403が対応する印刷ジョブを消去する構成であっても同様の効果を得ることができる。
【0076】
加えて、上述の実施形態では、デジタル複合機として本発明を具体化したが、デジタル複合機に限らず、プリンタ、複写機等、印刷機能を有する任意の画像形成装置に本発明を適用することも可能である。
【0077】
また、上記では、画像形成装置である複合機が、画像形成部、ジョブ情報取得部、ジョブ投入許可部、ジョブ保持部、識別情報入力部、印刷許可部および印刷実行部を全て備える構成を説明したが、各部が、適宜、別体で構成され、ネットワーク等を通じて接続された画像形成システムとして構成されていてもよい。例えば、上述のジョブ情報取得部、ジョブ投入許可部およびジョブ保持部を備えるジョブ投入許可装置が、識別情報入力部、印刷許可部および印刷実行部を備える印刷実行装置と、画像データを用紙上に印刷する画像形成装置とは別体で構成されている場合であっても、上記実施形態の複合機と同様の効果を得ることができる。このような画像形成システムでは、例えば、複数台の画像形成装置に対してジョブ投入許可装置および印刷実行装置を共通化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、機密度の高い画像データの印刷を適切に管理することができ、画像形成装置および画像形成システムとして有用である。
【符号の説明】
【0079】
100 複合機
140 画像形成部
161、171 ネットワークインタフェイス
200 操作パネル
401 ジョブ情報取得部
402 ジョブ投入許可部
403 ジョブ保持部
404 識別情報入力部
405 印刷許可部
406 印刷実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを用紙上に印刷する画像形成部と、
新たに投入された印刷ジョブから、ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報を取得するジョブ情報取得部と、
前記ジョブ情報取得部が取得した、ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報が、予め登録されたジョブ投入許可条件を満足するか否かを判定するジョブ投入許可部と、
前記ジョブ投入許可部がジョブ投入許可条件を満足すると判定した場合、当該ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報を有する前記印刷ジョブを保持するジョブ保持部と、
ユーザ識別情報が入力される識別情報入力部と、
前記識別情報入力部を通じて入力されたユーザ識別情報が、ジョブ種識別情報と対応づけて予め登録された印刷許可条件を満足するか否かを判定する印刷許可部と、
前記識別情報入力部を通じて入力されたユーザ識別情報が、前記ジョブ保持部が保持する印刷ジョブから取得されたジョブ種識別情報に対応づけられた印刷許可条件を満足すると前記印刷許可部が判定した場合、当該印刷ジョブを前記画像形成部に入力する印刷実行部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記ジョブ保持部は、予め指定された時間保持を継続した印刷ジョブを消去する、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記印刷許可部は、前記識別情報入力部を通じて入力されたユーザ識別情報が、ジョブ種識別情報と対応づけられた複数のユーザ識別情報のいずれかと一致する場合に印刷許可条件を満足すると判定し、
前記ジョブ保持部は、前記複数のユーザ識別情報に含まれる特定のユーザ識別情報に基づく前記画像形成部における印刷が完了したときに、当該印刷に対応する印刷ジョブを消去する、請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
画像データを用紙上に印刷する画像形成装置と、
前記画像形成装置に新たに投入される印刷ジョブから、ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報を取得するジョブ情報取得部、
前記ジョブ情報取得部が取得した、ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報が、予め登録されたジョブ投入許可条件を満足するか否かを判定するジョブ投入許可部、
前記ジョブ投入許可部がジョブ投入許可条件を満足すると判定した場合、当該ジョブ種識別情報およびジョブ投入者識別情報に対応する印刷ジョブを保持するジョブ保持部、
を備える、ジョブ投入許可装置と、
ユーザ識別情報が入力される識別情報入力部、
前記識別情報入力部を通じて入力されたユーザ識別情報が、ジョブ種識別情報と対応づけて予め登録された印刷許可条件を満足するか否かを判定する印刷許可部、
前記識別情報入力部を通じて入力されたユーザ識別情報が、前記ジョブ投入許可装置のジョブ保持部が保持する印刷ジョブから取得されたジョブ種識別情報に対応づけられた印刷許可条件を満足すると前記印刷許可部が判定した場合、当該印刷ジョブを前記画像形成装置に入力する印刷実行部、
を備える、印刷実行装置と、
を備える画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−10252(P2013−10252A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144384(P2011−144384)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】