画像形成装置および画像形成方法
【課題】放射線硬化型インクを用いたインクジェットプリンタシステムにおいて被記録媒体上に打滴されたインクの厚みを平坦化してレリーフ感を解消する。
【解決手段】放射線硬化型インクを記録媒体に対してインク液滴として吐出するインク吐出手段と、前記記録媒体上に吐出されたインク液滴中の色材成分と溶媒成分を分離する溶媒分離手段と、前記分離された溶媒成分を除去する溶媒除去手段と、前記溶媒を除去した後のインク液滴に対し放射線を照射して硬化させる硬化手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置を提供することにより前記課題を解決する。
【解決手段】放射線硬化型インクを記録媒体に対してインク液滴として吐出するインク吐出手段と、前記記録媒体上に吐出されたインク液滴中の色材成分と溶媒成分を分離する溶媒分離手段と、前記分離された溶媒成分を除去する溶媒除去手段と、前記溶媒を除去した後のインク液滴に対し放射線を照射して硬化させる硬化手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置を提供することにより前記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成方法に係り、特に、放射線硬化型インクを用いたインクジェットプリンタシステムにおいて被記録媒体上に打滴されたインクの厚みを平坦化してレリーフ感を解消する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置として、多数のノズルを配列させたインクジェットヘッド(インク吐出ヘッド)を有するインクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)が知られている。このインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドと記録媒体を相対的に移動させながら、ノズルからインクを液滴として吐出して、記録媒体上にドットを形成することにより、画像を形成するものである。
【0003】
ところで、インクジェットプリンタに用いられるインクとして、紫外線(UV)及び電子線(EB)等といった放射線の照射を受けることにより硬化する放射線硬化型インクがある。放射線硬化型インクは、例えば、色材と、重合性モノマー又はオリゴマーと、光触媒反応によりモノマー又はオリゴマーの架橋反応や重合反応を進行させる光重合開始剤、光重合促進剤等とを含んで組成され、放射線の照射による架橋反応又は重合反応によって硬化する。
【0004】
このような放射線硬化型インクで記録するインクジェットプリンタシステムにおいては、溶媒成分を全て硬化させるため、記録媒体上の印字箇所が凸状に盛り上がり、印字物にレリーフ感(段差感)が生じたまま記録媒体上に定着されてしまうため、印字物の用途によっては問題となる。
【0005】
これに対し、放射線硬化型インクを用いたインクジェット記録装置によって被記録体上に打滴されたインク滴の厚みを調整して、印刷品質及び保管性能を良好にしようとしたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0006】
これは、可変情報を記録する放射線硬化型インクを用いたインクジェット記録装置と、固定情報を記録する他方式の画像形成装置を組み合わせた記録装置であり、インクジェット記録装置によって打滴されたインク滴の厚みを調整する方法として、研磨、加圧、加熱あるいは補助露光機によるインク厚み制御を用いるようにしたものである。
【特許文献1】特開2003−136697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものには、以下のような問題がある。すなわち、まず対象とする画像記録装置がインクジェット記録装置と他方式の画像形成装置による記録を組み合わせた記録装置に限定されてしまっている。
【0008】
また、インクジェット記録装置によって打滴されたインク滴の厚みを調整する方法が、研磨による方法の場合には必要な色材も除去してしまうため印字濃度が低下する虞れがあり、さらに研磨による粉末の発生により画像が汚れるという問題もある。
【0009】
また、インク滴厚みの調整を加圧によって行う場合には、インクのドット径、線幅等が広がるため、濃度や解像度の低下を引き起こすという問題がある。また、インク滴厚みの調整を加熱によって行う場合にも同様にインクのドット径、線幅等が広がるため、濃度や解像度の低下を引き起こすという問題がある。
【0010】
さらに、インク滴厚みの調整を補助露光機によって行う方法は、インク厚みを増して固定情報部に合わせるものであり、インク厚みを低減してインク滴の凸形状をなくし平坦化する目的には使用できない。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、放射線硬化型インクを用いたインクジェットプリンタシステムにおいて被記録媒体上に打滴されたインクの厚みを平坦化してレリーフ感を解消することのできる画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、放射線硬化型インクを記録媒体に対してインク液滴として吐出するインク吐出手段と、前記記録媒体上に吐出されたインク液滴中の色材成分と溶媒成分を分離する溶媒分離手段と、前記分離された溶媒成分を除去する溶媒除去手段と、前記溶媒を除去した後のインク液滴に対し放射線を照射して硬化させる硬化手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0013】
これにより、記録媒体上のインク液滴の溶媒量が減るため、ドット径、線幅の広がりによる印字濃度の低下、解像度の低下を起こすことなく、インク厚みを低減し、平坦な印字物を得ることができ、レリーフ感を解消することができる。
【0014】
また、請求項2に示すように、前記溶媒除去手段は、多孔質部材により前記溶媒成分を吸収することを特徴とする。
【0015】
これにより、高速で溶媒成分を除去することが可能で構造が簡単で低コストとなる。
【0016】
また、請求項3に示すように、前記画像形成装置において、さらに、前記溶媒成分の除去量を制御する溶媒除去量制御手段を有することを特徴とする。
【0017】
これにより、記録媒体の種類やインク吐出量に応じて適切に溶媒を除去できるため確実にレリーフ感を解消することができる。
【0018】
また、請求項4に示すように、前記溶媒除去量制御手段は、前記溶媒除去手段と前記記録媒体との距離、または前記溶媒除去手段と前記記録媒体との間の押圧力、または前記溶媒除去手段と前記記録媒体との接触長さあるいは接触時間のいずれか一つを制御することを特徴とする。
【0019】
これにより、記録媒体上でのインクによる画像形成層の厚さを制御性を向上させることができる。
【0020】
また、請求項5に示すように、前記溶媒分離手段は、2液反応により前記インク液滴中に色材凝集物を形成することを特徴とする。
【0021】
これにより、高速で溶媒成分を分離することができ、確実に溶媒成分のみを除去することができる。
【0022】
また、請求項6に示すように、前記溶媒分離手段は、電気泳動効果を利用して溶媒成分の分離を行うことを特徴とする。
【0023】
これにより、処理液なしで溶媒成分を分離することができ、さらに溶媒除去時に溶媒除去手段への色材成分の付着を防止することができる。
【0024】
また、同様に前記目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、放射線硬化型インクを記録媒体に対してインク液滴として吐出し、前記記録媒体上に吐出されたインク液滴中の色材成分と溶媒成分を分離し、前記分離された溶媒成分を除去し、前記溶媒を除去した後のインク液滴に対し放射線を照射して硬化させることを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0025】
これにより、ドット径、線幅の広がりによる印字濃度の低下、解像度の低下を起こすことなく、インク厚みを低減し、平坦な印字物を得ることができ、レリーフ感を解消することができる。
【0026】
また、請求項8に示すように、前記画像形成方法において、前記除去した溶媒成分を回収して、色材成分を加えて新たなインクとして再利用することを特徴とする。
【0027】
これにより、比較的高価なモノマーを再利用することでコスト低減を図ることができ、さらに不用な廃液を出すこともない。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明に係る画像形成装置および画像形成方法によれば、記録媒体上のインク液滴の溶媒量が減るため、ドット径、線幅の広がりによる印字濃度の低下、解像度の低下を起こすことなく、インク厚みを低減し、平坦な印字物を得ることができ、レリーフ感を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る画像形成装置および画像形成方法について詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の第1実施形態の概略を示す全体構成図である。本実施形態は、放射線硬化型インクと処理液を反応させて色材と溶媒を分離し、溶媒部分を除去して、残りを放射線の照射で固めることによって、被記録媒体上のインク滴を平坦化するものである。
【0031】
そのため、図1に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド(インク用ヘッド)12BK、12M、12C、12Y、及び処理液を吐出する処理液用ヘッド12Sとを備えた印字部12を有している。
【0032】
また、各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yに供給する各色(BK(黒)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)のインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14及び処理液用ヘッド12Sに供給する処理液を貯蔵する処理液タンク15が設けられている。ここで用いられるインクは、上述したように紫外線(UV)あるいは電子線(EB)等の放射線の照射により硬化する放射線硬化型インクであり、処理液は、このインクと反応してインク色材の凝集物を生成して色材と溶媒を分離するものである。
【0033】
記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20が設けられている。また、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を給紙部18から印字部12側へ搬送するベルト搬送部22が設けられている。ベルト搬送部22は、印字部12のノズル面(各ヘッドのインクあるいは処理液の吐出面)に対向して配置されている。
【0034】
また、デカール処理部20とベルト搬送部22との間には、記録紙16を所定の長さにカットするカッター24が設けられている。印字部12の後段には、溶媒を吸収除去するための多孔質ローラ26及び放射線硬化型インクを硬化させるための放射線源28が配置されている。
【0035】
さらに、ベルト搬送部22の後段には、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部30が設けられている。
【0036】
インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路14aを介して印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yと連通されている。インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する表示手段あるいは警告音発生手段等の報知手段を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。また、処理液用タンク15も同様に所要の管路15aを介して処理液用ヘッド12Sと連通されており、また処理液の残量が少なくなったことを報知する手段が併設されている。
【0037】
給紙部18は、図1に示す例では、ロール紙(連続用紙)のマガジン32が示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを備えてもよい。また、ロール紙のマガジン32に代えて、またはこれと併用してカット紙を積層装填したカセットから用紙を供給してもよい。
【0038】
複数種類の記録紙16を利用可能な構成にした場合には、記録紙16の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録紙16の種類を自動的に判別するようにしてもよい。この場合、記録紙16の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0039】
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジン32に装填されていたことによる巻き癖が残りカールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジン32の巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム34で記録紙16に熱を加える。このとき、多少記録紙16の印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を調整することが好ましい。
【0040】
図1に示すように、ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッター24が設けられており、このカッター24によってロール紙が所望のサイズにカットされる。カッター24は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃24Aと、この固定刃24Aに沿って移動する丸刃24Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃24Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃24Bが配置されている。なお、カット紙のみを使用する場合には、カッター24は不要である。
【0041】
デカール処理後、カットされた記録紙16は、ベルト搬送部22へと送られる。ベルト搬送部22は、2つのローラ36、37の間に無端状の搬送ベルト(静電吸着ベルト)38が巻き掛けられた構造を有している。ベルト搬送部22は、少なくとも各ヘッド12BK、12M、12C、12Y及び12Sのノズル面に対向する部分が平面をなすように構成されている。
【0042】
搬送ベルト38は、静電吸着ベルトであり、静電気力によって記録紙16を搬送ベルト38表面に吸着固定しながら記録紙16を搬送する。搬送ベルト38は、導電性部材から構成されており、図示は省略するが直流電源が電気的に接続されている。
【0043】
搬送ベルト38が巻かれているローラ36、37の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、搬送ベルト38は図1において反時計回りに駆動される。これによって、記録紙16は、搬送ベルト38上に保持されて図1中を右から左へと搬送される。
【0044】
各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yは、当該インクジェット記録装置10が対象とする記録紙16の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。また、処理液用ヘッド12Sもこれと同様である。
【0045】
図1に示すように、印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yは、記録紙16の搬送方向に沿って上流側から黒(BK)、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の色順に配置され、各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yが記録紙16の搬送方向(副走査方向)と略直交する方向(主走査方向)に沿って延在するように固定設置される。
【0046】
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0047】
なお、ここで主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、用紙の幅方向(記録紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字をするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
【0048】
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
【0049】
また本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
【0050】
ベルト搬送部22により記録紙16を搬送しつつ、処理液用ヘッド12Sからまず処理液を吐出した後、各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yからそれぞれの色のインクを吐出することによって記録紙16上にカラー画像が形成される。このとき、記録紙16上で処理液とインクが混合すると2液が反応して色材の凝集物が生成され、インクが色材の凝集物と溶媒とに分離される。なお、2液反応について詳しくは後述する。
【0051】
多孔質ローラ26は、印字部12の後段に配置され、インクと処理液の反応によって分離された溶媒を吸収して除去するものである。また、搬送ベルト38を挟んで多孔質ローラ26と対向して補助ローラ40が設けられている。
【0052】
多孔質ローラ26の後段に配置された放射線源28は、色材の凝集物と溶媒除去後記録紙16上に残った溶媒成分に放射線を照射して硬化させるものである。例えばインクがUV硬化型インクであれば、放射線源28としてはUV光源が用いられる。
【0053】
このように記録紙16のインク滴から溶媒を除去し、色材凝集物及び残りの溶媒成分を硬化させて平坦化した記録紙16は、ベルト搬送部22の後段に配置された排紙部30から排出される。なお、図示は省略したが、排紙部30には例えばオーダー別に画像を集積するソータが設けられている。
【0054】
次に、印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yの構造について説明する。インク色毎に設けられている各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yの構造は共通しているため、以下これらを代表して符号50によって印字ヘッドを表すものとする。
【0055】
図2(a)は、印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図2(b)は、その一部の拡大図である。
【0056】
図2(a)に示すように、本実施形態の印字ヘッド50は、インクを液滴として吐出するノズル51、インクを吐出する際インクに圧力を付与する圧力室52、図2(a)では図示を省略した共通流路から圧力室52にインクを供給するインク供給口53を含んで構成される圧力室ユニット54が千鳥状の2次元マトリクス状に配列され、ノズル51の高密度化が図られている。
【0057】
また、図2(b)に示すように、各圧力室52を上方から見た場合に、その平面形状は略正方形状をしており、圧力室52には、その対角線の一方の端にノズル51が形成され、他方の端にインク供給口53が設けられている。なお、圧力室52の平面形状はこのような正方形に限定されるものではない。
【0058】
また、図3は他の印字ヘッドの構造例を示す平面透視図である。図に示すように、複数の短尺ヘッド50’を2次元の千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、これらの複数の短尺ヘッド50’全体で印字媒体の全幅に対応する長さとなるようにして1つの長尺のフルラインヘッドを構成するようにしてもよい。
【0059】
図4は、図2(a)あるいは図2(b)中の4−4線に沿った断面図であり、一つの圧力室ユニット54の側断面を示すものである。
【0060】
図4に示すように、圧力室52は、ノズル51と連通するとともに、供給口53を介して共通流路55と連通している。共通流路55は、インク供給源たるインク貯蔵/装填部14のインクタンクと連通している。インクタンクから供給されるインクは、共通流路55を介して各圧力室52に分配供給されるようになっている。
【0061】
圧力室52の天面は薄板の振動板56で構成され、振動板56には個別電極57を備えた圧電素子(圧電アクチュエータ)58が接合されている。振動板56は共通電極を兼ねており、個別電極57と共通電極(振動板)56に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形して圧力室52の容積が変化する。この圧力室52の容積の変化に伴う圧力室52内のインクの圧力変化によってノズル51からインクが吐出される。インク吐出後、次の吐出に備えて、共通流路55から供給口53を通って新しいインクが圧力室52に充填される。
【0062】
図5はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60は印字ヘッド50にインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示省略)からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を替える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。
【0063】
図5に示したように、インクタンク60と印字ヘッド50を繋ぐ管路の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは印字ヘッド50のノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0064】
なお、図5には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0065】
また、インクジェット記録装置10には、ノズルの乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
【0066】
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
【0067】
キャップ64は、図示しない昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。昇降機構は、電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aのノズル領域をキャップ64で覆うようになっている。
【0068】
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したブレード移動機構により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル面50A)に摺動可能である。ノズル面50Aにインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル面50Aに摺動させることでノズル面50Aを拭き取り、ノズル面50Aを清浄するようになっている。
【0069】
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、そのノズル51近傍のインク粘度が上昇した場合、粘度が上昇して劣化したインクを排出すべく、キャップ64に向かって予備吐出が行われる。
【0070】
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内のインク)に気泡が混入した場合、印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われ、粘度が上昇して固化した劣化インクが吸い出され除去される。
【0071】
すなわち、印字ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用の圧力発生手段(図示省略、後述)が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(圧力発生手段の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かって圧力発生手段を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード66等のワイパーによってノズル面50Aの汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
【0072】
また、ノズル51や圧力室52内に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、上述したような吸引動作を行う。
【0073】
すなわち、ノズル51や圧力室52のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル51内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、圧力発生手段を動作させてもノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、印字ヘッド50のノズル面50Aに、キャップ64を当てて圧力室52内の気泡が混入したインク又は増粘インクをポンプ67で吸引する動作が行われる。
【0074】
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、図5で説明したキャップ64は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得る。
【0075】
また、好ましくは、キャップ64の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
【0076】
図6はインクジェット記録装置10のシステム構成(制御系)を示す要部ブロック図である。
【0077】
図6において、インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84、処理液用ヘッドドライバ86、溶媒除去量制御手段88、硬化手段ドライバ90等を備えている。
【0078】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ92から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載してもよい。
【0079】
ホストコンピュータ92から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなどの磁気媒体を用いてもよい。
【0080】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、溶媒除去量制御手段88、硬化手段ドライバ90等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ92との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ94を制御する制御信号を生成する。
【0081】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ94を駆動するドライバ(駆動回路)である。硬化手段ドライバ90は、システムコントローラ72からの指示にしたがって硬化手段である放射線源28を駆動するドライバである。
【0082】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0083】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図6において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0084】
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド50の圧力発生手段を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0085】
処理液用ヘッドドライバ86は、ヘッドドライバ84と同様に、プリント制御部80から与えられるドットデータに基づいて、処理液用ヘッド12Sの吐出駆動用アクチュエータを駆動して、記録紙16上の所定の位置に処理液を吐出するようにするものである。
【0086】
溶媒除去量制御手段88は、溶媒除去手段である多孔質ローラ26を制御して溶媒除去量を制御するものである。具体的な制御の方法としては、多孔質ローラ26を切り替えたり、多孔質ローラ26と記録紙16上の着弾液滴との距離を可変にしたり、あるいは多孔質ローラ26の着弾液滴(記録紙16)に対する圧力(押圧力)を可変にする等の方法がある。これについて詳しくは後述する。
【0087】
硬化手段ドライバ90は、硬化手段である放射線源28を駆動して、溶媒除去後のインク液滴に対して放射線を照射して、色材凝集物と溶媒除去で残った溶媒成分を硬化させるものである。
【0088】
また、本インクジェット記録装置10は、メディア検出部94を備えている。メディア検出部94は、記録紙16の種類やサイズを検出するものである。メディア検出部94としては特に限定されるものではないが、例えば給紙部18のマガジン32に付されたバーコード等の情報を読み込む手段、用紙搬送路中の適当な場所に配置されたセンサ(用紙幅検出センサ、用紙の厚みを検出するセンサ、用紙の反射率を検出するセンサ等)が用いられ、あるいはこれらの適当な組み合わせでもよい。また、これら自動検出の手段に代えてあるいはこれらと併用して、所定のユーザインターフェースからの入力によって紙種やサイズ等の情報を指定する構成としてもよい。
【0089】
メディア検出部94によって取得された情報は、システムコントローラ72やプリント制御部80に通知され、処理液やインクの吐出制御あるいは溶媒除去量制御等に利用される。
【0090】
印刷すべき画像データは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、画像メモリ74に蓄えられる。この段階では、例えばRGBの画像データが画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80において既知の画像処理方法、例えばディザ法や誤差拡散法などの手法によってインク色毎のドットデータに変換される。
【0091】
こうして、プリント制御部80で生成されたドットデータに基づいて印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yが駆動制御され、印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yからインクが吐出される。記録紙16の搬送速度に同期した印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yからのインク吐出を制御することにより、記録紙16上に画像が形成される。また、このときインク吐出に先立ちインク吐出位置に対して処理液用ヘッド12Sから処理液が吐出され、インクと処理液とを反応させてインク色材と溶媒を分離し、以下説明する溶媒除去方法によって記録紙16上のインク液滴から溶媒が除去される。
【0092】
次に、記録紙16上のインク液滴から溶媒を除去する方法について説明する。
【0093】
図1に示したように、各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yの紙搬送方向(図の右から左方向)の上流側には処理液用ヘッド12Sが配置されるとともに、各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yの紙搬送方向下流側には、多孔質ローラ26が配置されている。処理液用ヘッド12Sは、印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yの構成と同様であり、処理液用ヘッド12Sの各ノズルから記録紙16に対して処理液を吐出する。
【0094】
図7は、印字部12及び多孔質ローラ26周辺部の拡大図である。図7においては、特に印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yは一つの印字ヘッド50で代表して示されている。
【0095】
図7に示すように、処理液用ヘッド12Sは、印字ヘッド50がインクを吐出する前に、予め印字ヘッド50による記録紙16上の打滴位置に対して、処理液Sを打滴する。
【0096】
処理液用ヘッド12Sから記録紙16上に打滴された処理液S1は、記録紙16上に着弾し、図に矢印で示す記録紙16の紙搬送方向への搬送に伴って、印字ヘッド50の真下に移動させられる。記録紙16の搬送に伴い、印字位置が印字ヘッド50の真下に来たところで印字ヘッド50から、インク滴Dが記録紙16上の処理液S1の真上から重なって着弾するように打滴される。
【0097】
これにより、処理液S1とインク滴Dとの2液が混合した混合液E1が記録紙16上に形成される。
【0098】
本実施形態で用いている処理液は、インクと混合した場合に色材の凝集物を生成する性質を有している。そのため、混合液E2に示すように、処理液とインクとの2液の間で反応して色材成分が凝集する。
【0099】
色材の凝集物を生成させる手段としては、アニオン性の色材とカチオン性の化合物を反応させたり、顔料系インクをpH変化により分散破壊を起こしたり、顔料系インクを多価金属塩と反応により分散破壊を起こしたりする等の方法がある。
【0100】
生成した色材凝集物は、混合液E3に示すように、下方に沈降し、色材凝集物からなる色材層E31と溶媒からなる溶媒層E32との分離された混合液E3に変化する。
【0101】
多孔質ローラ26は、金属ローラ26aの表面に多孔質部材26bが配置された構造を有している。多孔質ローラ26の最下部と記録紙16との間には微小な隙間が形成されるように、多孔質ローラ26は配置されている。また、多孔質ローラ26は、記録紙16の搬送方向と同方向に回転する。このとき、記録紙16との相対速度が略0となるように回転することで、インクの擦れによる画像の乱れを防止している。
【0102】
多孔質ローラ26内部の金属ローラ26aは、内部が空洞の円管状をしており、図示は省略するがその側面には多数の孔が開いており、また図示を省略したポンプによって吸引することで内部が負圧にされている。また、多孔質部材26bの孔径は、色材凝集物の径に比べて十分小さく形成されている。
【0103】
そして、記録紙16の搬送に伴い、色材層E31と溶媒層E32に分離した混合液E3が多孔質ローラ26の真下に移動すると、混合液E4に示すように、溶媒層E32の溶媒は、多孔質部材26bの毛細管現象及び金属ローラ26a内部の負圧によって、多孔質ローラ26内部に吸収されていく。このように、分離した溶媒の大部分を多孔質ローラ26の多孔質部材26bによって吸収するのであるが、後段で画像を放射線照射で硬化させて定着させるために必要な分量の溶媒は記録紙16側に残す必要があるため、すべての溶媒は吸収しないようにする。
【0104】
さらに、溶媒吸収時には、記録紙16上に形成される画像に強い圧力が加わらない構造とすることが望ましい。例えば、多孔質ローラ26の表面を柔軟な材料としたり、多孔質ローラ26に対向する補助ローラ40を柔軟な材料とすることが考えられる。あるいは、多孔質ローラ26の真下のすぐ上流及び下流に補助ローラを配置して、真下には補助ローラ40を配置しないようにして、多孔質ローラ26が記録紙16を押し圧したときに、搬送ベルト38の撓みによってその圧力を逃がすような構造としてもよい。
【0105】
多孔質ローラ26によって溶媒を吸収した結果、混合液E4は、色材凝集物と少量の溶媒成分(例えばUVモノマー等)が残った略色材のみの混合液E5となる。
【0106】
次に、この色材凝集物と少量の溶媒成分が残った混合液E5に対して、放射線源28から放射線を照射して硬化させる。例えば、今、用いているインクがUV硬化型インクであって溶媒成分がUVモノマーである場合には、放射線源28としては、UV光源を用いて、UV光(紫外線)を照射することで硬化させることができる。この結果、硬化し平坦化された混合液E6が得られる。このようにしてインクの厚みを平坦化して、レリーフ感を解消することができる。
【0107】
なお、多孔質ローラ26で吸収した溶媒成分は、負圧によって多孔質ローラ26内部に吸収され、内部に設けられた回収経路を介して回収され、外部の貯蔵部に貯蔵される。回収した液体の溶媒成分は、フィルタ等で不純物を除去した後、遠心分離、化学分離等でモノマー成分を分離した後、色材等のインク成分を加えて新たなインクとして再利用するようにすることが好ましい。
【0108】
また、多孔質ローラ26で溶媒を吸収して除去する際、多孔質ローラ26と記録紙16との距離を可変にして、記録紙16の種類、打滴された溶媒量、搬送速度等に応じて、多孔質ローラ26と記録紙16(溶媒)との距離を制御することによって、除去する溶媒量を制御するようにしてもよい。
【0109】
除去する溶媒量を制御する方法としては、多孔質ローラ26と記録紙16との距離を可変にして制御する方法の他に、多孔質ローラ26の記録紙16への押圧力を可変にして制御する方法や、溶媒吸収部材と記録紙16上の溶媒との接触長さ(接触面積)あるいは接触時間を制御する方法などが考えられる。
【0110】
図8に、多孔質ローラ26の記録紙16に対する押圧力を制御することによって溶媒除去量を制御する方法を示す。
【0111】
多孔質ローラ26は、図示を省略した移動機構によって、上下に移動可能であり、多孔質ローラ26を上下に移動することで、記録紙16に対する押圧力が制御される。このとき、図8に示すように、搬送ベルト38の下側の多孔質ローラ26の真下にあたる位置には補助ローラを配置せず、多孔質ローラ26の真下に対し、その上流側と下流側にそれぞれ補助ローラ40a、40bが配置されている。これにより、多孔質ローラ26が下へ移動した場合に、搬送ベルト38及び記録紙16が多孔質ローラ26の押圧力に応じて下側に撓むようになっている。その結果、多孔質ローラ26と記録紙16との接触長さ(接触面積)が増大し、さらに接触時間も増加するようになっている。
【0112】
図8(a)は、多孔質ローラ26と記録紙16との間の圧力が小さい場合を示す。このように圧力が小さい場合には、搬送ベルト38及び記録紙16は、ほぼ真横に移動し、多孔質ローラ26と記録紙16(溶媒)との接触長さ(接触面積)は小である。
【0113】
これに対し、図8(b)は、多孔質ローラ26と記録紙16との間の圧力が大きい場合を示す。このように圧力が大きい場合には、その圧力に応じて搬送ベルト38及び記録紙16は下側に撓み、多孔質ローラ26と記録紙16(溶媒)との接触長さ(接触面積)は大きくなる。また接触している長さが増大したため、その分接触している時間も増加し、溶媒を吸収する量も増加する。
【0114】
また、図9に、多孔質ローラではなく多孔質ベルトを用いて接触長さを制御する例を示す。
【0115】
図9に示すように、この例では、多孔質ローラ26の代わりに、3つのローラ41a、41b、41cの周りに巻き掛けられた多孔質ベルト27が用いられる。この多孔質ベルト27は、その表面が多孔質の溶媒吸収部材で構成されており、搬送ベルト38とは逆回りに回転し、搬送ベルト38上の記録紙16と接触する部分が記録紙16と同方向に移動するようになっている。
【0116】
また、ローラ41aとローラ41bは、それぞれ左右方向に移動可能で、ローラ41cは、上下方向に移動可能であり、各ローラ間の距離を可変とすることができるように構成されている。
【0117】
図9(a)においては、ローラ41cは下に位置し、ローラ41a及びローラ41b間の距離が最大の状態であり、多孔質ベルト27と記録紙16との接触長さ(接触面積)は最大となっている。
【0118】
また図9(b)においては、ローラ41cが上に移動し、ローラ41a及びローラ41bはその間の距離を縮めるように移動し、多孔質ベルト27と記録紙16の接触長さ(接触面積)は小さくなっている。
【0119】
このようにして、多孔質ベルト27と記録紙16との接触長さ(接触面積)を制御することにより、接触時間も制御され、溶媒除去量が制御される。また、接触時間の制御は搬送速度を制御することによって行ってもよい。以上説明した距離、圧力、接触長さ等を制御する手段が図6の溶媒除去量制御手段88に相当する。
【0120】
また、以上説明した実施形態においては、印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yの前段に1つ処理液用ヘッド12Sを配置するとともに、後段に1つ多孔質ローラ26を配置していたが、処理液用ヘッド12S及び多孔質ローラ26の配置はこのような構成に限定されるものではない。
【0121】
例えば、図10に示すように、各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Y毎にそれぞれの各上流及び下流に、処理液用ヘッド12S−1、12S−2、12S−3、12S−4及び多孔質ローラ26−1、26−2、26−3、26−4を配置するようにしてもよい。このように構成した場合には、各色インク毎に、まず処理液を吐出して、色インクを吐出したらすぐにその色インクについての溶媒を除去し、最後にまとめて放射線源28から放射線を照射して各色材凝集物と残った溶媒成分を硬化させることになる。
【0122】
以上説明したように、本実施形態によれば、放射線硬化型インク中の色材と溶媒(例えばUVモノマー)を分離させ、溶媒を多孔質部材に吸収することで溶媒を除去するようにしたため、溶媒量が減少することにより、ドット径、線幅の広がりによる印字濃度の低下、解像度の低下を引き起こすことなく、インク厚みを低減し、平坦な印字物を得ることができ、レリーフ感を解消することができる。
【0123】
また、色材と溶媒の分離手段として、酸や金属イオンを用いた顔料の分散状態破壊、アニオン、カチオン反応を用いた染料、または顔料の凝集物の作成等の2液反応を利用するようにしたため、高速で色材と溶媒の分離を行うことができ、溶媒のみを除去することが可能となった。
【0124】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0125】
前述した第1実施形態は、インクと処理液の2液反応による凝集を利用して色材成分と溶媒を分離したものであったが、本第2実施形態は、電界を印加することによる電気泳動効果を利用して色材成分と溶媒を分離するものである。
【0126】
図11は、第2実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の概略構成図である。なお、図11では、画像を印字する部分、溶媒を除去する部分及び硬化させる部分のみを表示し、給紙部、排紙部、インク貯蔵/装填部等は省略している。
【0127】
図11に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置110は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド112BK、112M、112C、112Y及び記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送するベルト搬送部122を有している。
【0128】
ここで用いられるインクは前述した第1実施形態と同様に紫外線(UV)あるいは電子線(EB)等の放射線の照射によって硬化する放射線硬化型インクである。またベルト搬送部122は、各印字ヘッド112BK、112M、112C、112Yのノズル面に対向して配置されている。
【0129】
各印字ヘッド112BK、112M、112C、112Yの下流側には、記録紙116上に打滴されたインク滴を帯電させるためのコロナ帯電器196及びインク滴の溶媒成分を吸収除去するための多孔質ローラ126がそれぞれ配置されている。さらに、これら全ての後段には、インク滴を硬化させるために放射線を照射する放射線源128が1つ配置されている。
【0130】
ベルト搬送部122は、ローラ136、137間に無端状の静電吸着ベルト(搬送ベルト)138が巻き掛けられた構造を有している。静電吸着ベルト138は、導電性部材から構成されており、直流電源111が電気的に接続されている。直流電源111の他端は、多孔質ローラ126に電気的に接続されている。直流電源111により直流電圧が印加されると、静電吸着ベルト138と多孔質ローラ126との間に電界が印加され、静電吸着効果によって、記録紙116は静電吸着ベルト138上に吸着保持される。
【0131】
静電吸着ベルト138が巻かれているローラ136、137の少なくとも一方に図示を省略したモータの動力が伝達されることにより、静電吸着ベルト138は、図11中反時計回り方向に駆動され、静電吸着ベルト138上に保持された記録紙116は、図の右から左へと搬送される。
【0132】
各印字ヘッド112BK、112M、112C、112Yの構成は、前述した第1実施形態と同様である。静電吸着ベルト138によって記録紙116を搬送しつつ各印字ヘッド112BK、112M、112C、112Yからそれぞれの色のインクを吐出することにより記録紙116上にカラー画像が形成される。
【0133】
各印字ヘッド112BK、112M、112C、112Yから記録紙116上に吐出されたインク滴の色材成分は、コロナ帯電器196によって、帯電させられ、多孔質ローラ126によって電気泳動効果を利用して色材成分と溶媒成分に分離され、溶媒成分のみが吸収除去される。その後、後段の放射線源128から放射線を照射して色材成分と残った溶媒成分が硬化される。
【0134】
以下、電気泳動効果を利用した溶媒分離及び溶媒除去について説明する。
【0135】
図12は、コロナ帯電器196び多孔質ローラ126周辺部の拡大図である。
【0136】
各印字ヘッド112BK、112M、112C、112Yの構成は同様であるので、図12においては、特に印字ヘッド112Yについて説明する。
【0137】
前述したように、直流電源111(図11参照)によって、静電吸着ベルト138と多孔質ローラ126との間に電界が印加されている。例えば、図12に示すように、静電吸着ベルト138はプラスに帯電し、多孔質ローラ126はマイナスに帯電しているとする。
【0138】
印字ヘッド112Yから記録紙116上にインク滴D2が打滴され、記録紙116の搬送の伴い図の右から左方向に移動する。コロナ帯電器196の下に来ると、コロナ帯電器196による帯電処理によってインク滴D3のマイナスに帯電している色材成分が確実に記録紙側に移動する。
【0139】
図12のインク滴D4に示すように、インク滴D4中の色材成分はマイナスに帯電しており、また静電吸着ベルト138はプラスに帯電しているため、色材成分は静電吸着ベルト138に引き寄せられるように静電引力が作用するため、色材成分は下方に沈降し溶媒と分離される。
【0140】
また、さらに搬送されインク滴D5のように多孔質ローラ126に近づくと、多孔質ローラ126もマイナスに帯電しているため、マイナスに帯電している色材成分は、静電斥力によりさらに沈降が促進され、色材成分と溶媒成分との分離が確実に行われる。
【0141】
そして、インク滴D6に示すように、多孔質ローラ126の表面に形成された多孔質部材126bによって溶媒成分が吸収される。このとき、静電吸着ベルト138は、色材成分と逆の極性に帯電しているとともに、多孔質ローラ126は色材成分と同極性に帯電しているため、多孔質ローラ126が溶媒成分を吸収する際、色材成分が多孔質ローラ126側に移動するのが抑制され、多孔質ローラ126の表面に色材成分が付着するのをより一層防止することが可能となる。
【0142】
その後放射線源128から放射線の照射を受けてインク滴D7として硬化定着させられる。なお、多孔質ローラ126の内部126aに回収された溶媒成分は、前述した第1実施形態と同様にして再利用する。
【0143】
このように、本実施形態によれば、コロナ帯電器196により、色材成分を帯電させて、電気泳動効果を利用することで、処理液を使用することなく、色材成分と溶媒成分を確実に分離することができる。
【0144】
本実施形態においては、このように電気泳動効果を利用して色材と溶媒の分離を行うようにしたため、処理液なしで分離ができ、また色材凝集物を記録紙側に集めることで溶媒吸収部材への付着を防ぐことができる。
【0145】
また、上述したいずれの実施形態においても、吸収した溶媒は回収し、別装置で再処理、再インク化して再利用するかあるいは装置内で色材を付与してインクとして再利用するようにしているため、比較的高価なUVモノマー等の溶媒のコストを削減することができるとともに、不用な廃液が発生することもない。
【0146】
なお、以上の実施形態の他に、例えば、水系UVインクのUVモノマー、オリゴマー成分と水とを分離し、UV照射によりモノマー、オリゴマーを硬化させ、残った水を除去するようにしてもよい。または、分離させた状態で水を除去してからUV硬化させるようにしてもよい。
【0147】
以上、本発明の画像形成装置および画像形成方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の第1実施形態の概略を示す全体構成図である。
【図2】(a)は、印字ヘッドの構造例を示す平面透視図であり、図2(b)は、その一部の拡大図である。
【図3】他の印字ヘッドの構造例を示す平面透視図である。
【図4】図2(a)、(b)中の4−4線に沿った断面図である。
【図5】本実施形態のインクジェット記録装置のインク供給系を示す概略図である。
【図6】本実施形態のインクジェット記録装置の制御系を示す概略ブロック図である。
【図7】印字部12及び多孔質ローラ26周辺部の拡大図である。
【図8】(a)、(b)は、多孔質ローラと記録紙との圧力を制御する様子を示す説明図である。
【図9】(a)、(b)は、多孔質ベルトと記録紙との接触長さを制御する様子を示す説明図である。
【図10】第1実施形態のインクジェット記録装置の他の例を示す概略構成図である。
【図11】本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の第1実施形態の概略を示す全体構成図である。
【図12】第2実施形態におけるコロナ帯電器び多孔質ローラ周辺部の拡大図である。
【符号の説明】
【0149】
10…インクジェット記録装置、12…印字部、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、18…給紙部、20…デカール処理部、22…ベルト搬送部、24…カッター、26…多孔質ローラ、27…多孔質ベルト、28…放射線源、38…搬送ベルト、88…溶媒除去量制御手段、90…硬化手段ドライバ、196…コロナ帯電器
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成方法に係り、特に、放射線硬化型インクを用いたインクジェットプリンタシステムにおいて被記録媒体上に打滴されたインクの厚みを平坦化してレリーフ感を解消する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置として、多数のノズルを配列させたインクジェットヘッド(インク吐出ヘッド)を有するインクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)が知られている。このインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドと記録媒体を相対的に移動させながら、ノズルからインクを液滴として吐出して、記録媒体上にドットを形成することにより、画像を形成するものである。
【0003】
ところで、インクジェットプリンタに用いられるインクとして、紫外線(UV)及び電子線(EB)等といった放射線の照射を受けることにより硬化する放射線硬化型インクがある。放射線硬化型インクは、例えば、色材と、重合性モノマー又はオリゴマーと、光触媒反応によりモノマー又はオリゴマーの架橋反応や重合反応を進行させる光重合開始剤、光重合促進剤等とを含んで組成され、放射線の照射による架橋反応又は重合反応によって硬化する。
【0004】
このような放射線硬化型インクで記録するインクジェットプリンタシステムにおいては、溶媒成分を全て硬化させるため、記録媒体上の印字箇所が凸状に盛り上がり、印字物にレリーフ感(段差感)が生じたまま記録媒体上に定着されてしまうため、印字物の用途によっては問題となる。
【0005】
これに対し、放射線硬化型インクを用いたインクジェット記録装置によって被記録体上に打滴されたインク滴の厚みを調整して、印刷品質及び保管性能を良好にしようとしたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0006】
これは、可変情報を記録する放射線硬化型インクを用いたインクジェット記録装置と、固定情報を記録する他方式の画像形成装置を組み合わせた記録装置であり、インクジェット記録装置によって打滴されたインク滴の厚みを調整する方法として、研磨、加圧、加熱あるいは補助露光機によるインク厚み制御を用いるようにしたものである。
【特許文献1】特開2003−136697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものには、以下のような問題がある。すなわち、まず対象とする画像記録装置がインクジェット記録装置と他方式の画像形成装置による記録を組み合わせた記録装置に限定されてしまっている。
【0008】
また、インクジェット記録装置によって打滴されたインク滴の厚みを調整する方法が、研磨による方法の場合には必要な色材も除去してしまうため印字濃度が低下する虞れがあり、さらに研磨による粉末の発生により画像が汚れるという問題もある。
【0009】
また、インク滴厚みの調整を加圧によって行う場合には、インクのドット径、線幅等が広がるため、濃度や解像度の低下を引き起こすという問題がある。また、インク滴厚みの調整を加熱によって行う場合にも同様にインクのドット径、線幅等が広がるため、濃度や解像度の低下を引き起こすという問題がある。
【0010】
さらに、インク滴厚みの調整を補助露光機によって行う方法は、インク厚みを増して固定情報部に合わせるものであり、インク厚みを低減してインク滴の凸形状をなくし平坦化する目的には使用できない。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、放射線硬化型インクを用いたインクジェットプリンタシステムにおいて被記録媒体上に打滴されたインクの厚みを平坦化してレリーフ感を解消することのできる画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、放射線硬化型インクを記録媒体に対してインク液滴として吐出するインク吐出手段と、前記記録媒体上に吐出されたインク液滴中の色材成分と溶媒成分を分離する溶媒分離手段と、前記分離された溶媒成分を除去する溶媒除去手段と、前記溶媒を除去した後のインク液滴に対し放射線を照射して硬化させる硬化手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0013】
これにより、記録媒体上のインク液滴の溶媒量が減るため、ドット径、線幅の広がりによる印字濃度の低下、解像度の低下を起こすことなく、インク厚みを低減し、平坦な印字物を得ることができ、レリーフ感を解消することができる。
【0014】
また、請求項2に示すように、前記溶媒除去手段は、多孔質部材により前記溶媒成分を吸収することを特徴とする。
【0015】
これにより、高速で溶媒成分を除去することが可能で構造が簡単で低コストとなる。
【0016】
また、請求項3に示すように、前記画像形成装置において、さらに、前記溶媒成分の除去量を制御する溶媒除去量制御手段を有することを特徴とする。
【0017】
これにより、記録媒体の種類やインク吐出量に応じて適切に溶媒を除去できるため確実にレリーフ感を解消することができる。
【0018】
また、請求項4に示すように、前記溶媒除去量制御手段は、前記溶媒除去手段と前記記録媒体との距離、または前記溶媒除去手段と前記記録媒体との間の押圧力、または前記溶媒除去手段と前記記録媒体との接触長さあるいは接触時間のいずれか一つを制御することを特徴とする。
【0019】
これにより、記録媒体上でのインクによる画像形成層の厚さを制御性を向上させることができる。
【0020】
また、請求項5に示すように、前記溶媒分離手段は、2液反応により前記インク液滴中に色材凝集物を形成することを特徴とする。
【0021】
これにより、高速で溶媒成分を分離することができ、確実に溶媒成分のみを除去することができる。
【0022】
また、請求項6に示すように、前記溶媒分離手段は、電気泳動効果を利用して溶媒成分の分離を行うことを特徴とする。
【0023】
これにより、処理液なしで溶媒成分を分離することができ、さらに溶媒除去時に溶媒除去手段への色材成分の付着を防止することができる。
【0024】
また、同様に前記目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、放射線硬化型インクを記録媒体に対してインク液滴として吐出し、前記記録媒体上に吐出されたインク液滴中の色材成分と溶媒成分を分離し、前記分離された溶媒成分を除去し、前記溶媒を除去した後のインク液滴に対し放射線を照射して硬化させることを特徴とする画像形成方法を提供する。
【0025】
これにより、ドット径、線幅の広がりによる印字濃度の低下、解像度の低下を起こすことなく、インク厚みを低減し、平坦な印字物を得ることができ、レリーフ感を解消することができる。
【0026】
また、請求項8に示すように、前記画像形成方法において、前記除去した溶媒成分を回収して、色材成分を加えて新たなインクとして再利用することを特徴とする。
【0027】
これにより、比較的高価なモノマーを再利用することでコスト低減を図ることができ、さらに不用な廃液を出すこともない。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明に係る画像形成装置および画像形成方法によれば、記録媒体上のインク液滴の溶媒量が減るため、ドット径、線幅の広がりによる印字濃度の低下、解像度の低下を起こすことなく、インク厚みを低減し、平坦な印字物を得ることができ、レリーフ感を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る画像形成装置および画像形成方法について詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の第1実施形態の概略を示す全体構成図である。本実施形態は、放射線硬化型インクと処理液を反応させて色材と溶媒を分離し、溶媒部分を除去して、残りを放射線の照射で固めることによって、被記録媒体上のインク滴を平坦化するものである。
【0031】
そのため、図1に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド(インク用ヘッド)12BK、12M、12C、12Y、及び処理液を吐出する処理液用ヘッド12Sとを備えた印字部12を有している。
【0032】
また、各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yに供給する各色(BK(黒)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)のインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14及び処理液用ヘッド12Sに供給する処理液を貯蔵する処理液タンク15が設けられている。ここで用いられるインクは、上述したように紫外線(UV)あるいは電子線(EB)等の放射線の照射により硬化する放射線硬化型インクであり、処理液は、このインクと反応してインク色材の凝集物を生成して色材と溶媒を分離するものである。
【0033】
記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20が設けられている。また、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を給紙部18から印字部12側へ搬送するベルト搬送部22が設けられている。ベルト搬送部22は、印字部12のノズル面(各ヘッドのインクあるいは処理液の吐出面)に対向して配置されている。
【0034】
また、デカール処理部20とベルト搬送部22との間には、記録紙16を所定の長さにカットするカッター24が設けられている。印字部12の後段には、溶媒を吸収除去するための多孔質ローラ26及び放射線硬化型インクを硬化させるための放射線源28が配置されている。
【0035】
さらに、ベルト搬送部22の後段には、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部30が設けられている。
【0036】
インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路14aを介して印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yと連通されている。インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する表示手段あるいは警告音発生手段等の報知手段を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。また、処理液用タンク15も同様に所要の管路15aを介して処理液用ヘッド12Sと連通されており、また処理液の残量が少なくなったことを報知する手段が併設されている。
【0037】
給紙部18は、図1に示す例では、ロール紙(連続用紙)のマガジン32が示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを備えてもよい。また、ロール紙のマガジン32に代えて、またはこれと併用してカット紙を積層装填したカセットから用紙を供給してもよい。
【0038】
複数種類の記録紙16を利用可能な構成にした場合には、記録紙16の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録紙16の種類を自動的に判別するようにしてもよい。この場合、記録紙16の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0039】
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジン32に装填されていたことによる巻き癖が残りカールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジン32の巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム34で記録紙16に熱を加える。このとき、多少記録紙16の印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を調整することが好ましい。
【0040】
図1に示すように、ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッター24が設けられており、このカッター24によってロール紙が所望のサイズにカットされる。カッター24は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃24Aと、この固定刃24Aに沿って移動する丸刃24Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃24Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃24Bが配置されている。なお、カット紙のみを使用する場合には、カッター24は不要である。
【0041】
デカール処理後、カットされた記録紙16は、ベルト搬送部22へと送られる。ベルト搬送部22は、2つのローラ36、37の間に無端状の搬送ベルト(静電吸着ベルト)38が巻き掛けられた構造を有している。ベルト搬送部22は、少なくとも各ヘッド12BK、12M、12C、12Y及び12Sのノズル面に対向する部分が平面をなすように構成されている。
【0042】
搬送ベルト38は、静電吸着ベルトであり、静電気力によって記録紙16を搬送ベルト38表面に吸着固定しながら記録紙16を搬送する。搬送ベルト38は、導電性部材から構成されており、図示は省略するが直流電源が電気的に接続されている。
【0043】
搬送ベルト38が巻かれているローラ36、37の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、搬送ベルト38は図1において反時計回りに駆動される。これによって、記録紙16は、搬送ベルト38上に保持されて図1中を右から左へと搬送される。
【0044】
各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yは、当該インクジェット記録装置10が対象とする記録紙16の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。また、処理液用ヘッド12Sもこれと同様である。
【0045】
図1に示すように、印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yは、記録紙16の搬送方向に沿って上流側から黒(BK)、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の色順に配置され、各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yが記録紙16の搬送方向(副走査方向)と略直交する方向(主走査方向)に沿って延在するように固定設置される。
【0046】
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0047】
なお、ここで主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、用紙の幅方向(記録紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字をするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
【0048】
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
【0049】
また本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
【0050】
ベルト搬送部22により記録紙16を搬送しつつ、処理液用ヘッド12Sからまず処理液を吐出した後、各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yからそれぞれの色のインクを吐出することによって記録紙16上にカラー画像が形成される。このとき、記録紙16上で処理液とインクが混合すると2液が反応して色材の凝集物が生成され、インクが色材の凝集物と溶媒とに分離される。なお、2液反応について詳しくは後述する。
【0051】
多孔質ローラ26は、印字部12の後段に配置され、インクと処理液の反応によって分離された溶媒を吸収して除去するものである。また、搬送ベルト38を挟んで多孔質ローラ26と対向して補助ローラ40が設けられている。
【0052】
多孔質ローラ26の後段に配置された放射線源28は、色材の凝集物と溶媒除去後記録紙16上に残った溶媒成分に放射線を照射して硬化させるものである。例えばインクがUV硬化型インクであれば、放射線源28としてはUV光源が用いられる。
【0053】
このように記録紙16のインク滴から溶媒を除去し、色材凝集物及び残りの溶媒成分を硬化させて平坦化した記録紙16は、ベルト搬送部22の後段に配置された排紙部30から排出される。なお、図示は省略したが、排紙部30には例えばオーダー別に画像を集積するソータが設けられている。
【0054】
次に、印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yの構造について説明する。インク色毎に設けられている各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yの構造は共通しているため、以下これらを代表して符号50によって印字ヘッドを表すものとする。
【0055】
図2(a)は、印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図2(b)は、その一部の拡大図である。
【0056】
図2(a)に示すように、本実施形態の印字ヘッド50は、インクを液滴として吐出するノズル51、インクを吐出する際インクに圧力を付与する圧力室52、図2(a)では図示を省略した共通流路から圧力室52にインクを供給するインク供給口53を含んで構成される圧力室ユニット54が千鳥状の2次元マトリクス状に配列され、ノズル51の高密度化が図られている。
【0057】
また、図2(b)に示すように、各圧力室52を上方から見た場合に、その平面形状は略正方形状をしており、圧力室52には、その対角線の一方の端にノズル51が形成され、他方の端にインク供給口53が設けられている。なお、圧力室52の平面形状はこのような正方形に限定されるものではない。
【0058】
また、図3は他の印字ヘッドの構造例を示す平面透視図である。図に示すように、複数の短尺ヘッド50’を2次元の千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、これらの複数の短尺ヘッド50’全体で印字媒体の全幅に対応する長さとなるようにして1つの長尺のフルラインヘッドを構成するようにしてもよい。
【0059】
図4は、図2(a)あるいは図2(b)中の4−4線に沿った断面図であり、一つの圧力室ユニット54の側断面を示すものである。
【0060】
図4に示すように、圧力室52は、ノズル51と連通するとともに、供給口53を介して共通流路55と連通している。共通流路55は、インク供給源たるインク貯蔵/装填部14のインクタンクと連通している。インクタンクから供給されるインクは、共通流路55を介して各圧力室52に分配供給されるようになっている。
【0061】
圧力室52の天面は薄板の振動板56で構成され、振動板56には個別電極57を備えた圧電素子(圧電アクチュエータ)58が接合されている。振動板56は共通電極を兼ねており、個別電極57と共通電極(振動板)56に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形して圧力室52の容積が変化する。この圧力室52の容積の変化に伴う圧力室52内のインクの圧力変化によってノズル51からインクが吐出される。インク吐出後、次の吐出に備えて、共通流路55から供給口53を通って新しいインクが圧力室52に充填される。
【0062】
図5はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60は印字ヘッド50にインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示省略)からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を替える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。
【0063】
図5に示したように、インクタンク60と印字ヘッド50を繋ぐ管路の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは印字ヘッド50のノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0064】
なお、図5には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0065】
また、インクジェット記録装置10には、ノズルの乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
【0066】
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
【0067】
キャップ64は、図示しない昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。昇降機構は、電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aのノズル領域をキャップ64で覆うようになっている。
【0068】
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したブレード移動機構により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル面50A)に摺動可能である。ノズル面50Aにインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル面50Aに摺動させることでノズル面50Aを拭き取り、ノズル面50Aを清浄するようになっている。
【0069】
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、そのノズル51近傍のインク粘度が上昇した場合、粘度が上昇して劣化したインクを排出すべく、キャップ64に向かって予備吐出が行われる。
【0070】
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内のインク)に気泡が混入した場合、印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われ、粘度が上昇して固化した劣化インクが吸い出され除去される。
【0071】
すなわち、印字ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用の圧力発生手段(図示省略、後述)が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(圧力発生手段の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かって圧力発生手段を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード66等のワイパーによってノズル面50Aの汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
【0072】
また、ノズル51や圧力室52内に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、上述したような吸引動作を行う。
【0073】
すなわち、ノズル51や圧力室52のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル51内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、圧力発生手段を動作させてもノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、印字ヘッド50のノズル面50Aに、キャップ64を当てて圧力室52内の気泡が混入したインク又は増粘インクをポンプ67で吸引する動作が行われる。
【0074】
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、図5で説明したキャップ64は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得る。
【0075】
また、好ましくは、キャップ64の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
【0076】
図6はインクジェット記録装置10のシステム構成(制御系)を示す要部ブロック図である。
【0077】
図6において、インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84、処理液用ヘッドドライバ86、溶媒除去量制御手段88、硬化手段ドライバ90等を備えている。
【0078】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ92から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載してもよい。
【0079】
ホストコンピュータ92から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなどの磁気媒体を用いてもよい。
【0080】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、溶媒除去量制御手段88、硬化手段ドライバ90等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ92との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ94を制御する制御信号を生成する。
【0081】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ94を駆動するドライバ(駆動回路)である。硬化手段ドライバ90は、システムコントローラ72からの指示にしたがって硬化手段である放射線源28を駆動するドライバである。
【0082】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0083】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図6において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0084】
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド50の圧力発生手段を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0085】
処理液用ヘッドドライバ86は、ヘッドドライバ84と同様に、プリント制御部80から与えられるドットデータに基づいて、処理液用ヘッド12Sの吐出駆動用アクチュエータを駆動して、記録紙16上の所定の位置に処理液を吐出するようにするものである。
【0086】
溶媒除去量制御手段88は、溶媒除去手段である多孔質ローラ26を制御して溶媒除去量を制御するものである。具体的な制御の方法としては、多孔質ローラ26を切り替えたり、多孔質ローラ26と記録紙16上の着弾液滴との距離を可変にしたり、あるいは多孔質ローラ26の着弾液滴(記録紙16)に対する圧力(押圧力)を可変にする等の方法がある。これについて詳しくは後述する。
【0087】
硬化手段ドライバ90は、硬化手段である放射線源28を駆動して、溶媒除去後のインク液滴に対して放射線を照射して、色材凝集物と溶媒除去で残った溶媒成分を硬化させるものである。
【0088】
また、本インクジェット記録装置10は、メディア検出部94を備えている。メディア検出部94は、記録紙16の種類やサイズを検出するものである。メディア検出部94としては特に限定されるものではないが、例えば給紙部18のマガジン32に付されたバーコード等の情報を読み込む手段、用紙搬送路中の適当な場所に配置されたセンサ(用紙幅検出センサ、用紙の厚みを検出するセンサ、用紙の反射率を検出するセンサ等)が用いられ、あるいはこれらの適当な組み合わせでもよい。また、これら自動検出の手段に代えてあるいはこれらと併用して、所定のユーザインターフェースからの入力によって紙種やサイズ等の情報を指定する構成としてもよい。
【0089】
メディア検出部94によって取得された情報は、システムコントローラ72やプリント制御部80に通知され、処理液やインクの吐出制御あるいは溶媒除去量制御等に利用される。
【0090】
印刷すべき画像データは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、画像メモリ74に蓄えられる。この段階では、例えばRGBの画像データが画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80において既知の画像処理方法、例えばディザ法や誤差拡散法などの手法によってインク色毎のドットデータに変換される。
【0091】
こうして、プリント制御部80で生成されたドットデータに基づいて印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yが駆動制御され、印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yからインクが吐出される。記録紙16の搬送速度に同期した印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yからのインク吐出を制御することにより、記録紙16上に画像が形成される。また、このときインク吐出に先立ちインク吐出位置に対して処理液用ヘッド12Sから処理液が吐出され、インクと処理液とを反応させてインク色材と溶媒を分離し、以下説明する溶媒除去方法によって記録紙16上のインク液滴から溶媒が除去される。
【0092】
次に、記録紙16上のインク液滴から溶媒を除去する方法について説明する。
【0093】
図1に示したように、各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yの紙搬送方向(図の右から左方向)の上流側には処理液用ヘッド12Sが配置されるとともに、各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yの紙搬送方向下流側には、多孔質ローラ26が配置されている。処理液用ヘッド12Sは、印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yの構成と同様であり、処理液用ヘッド12Sの各ノズルから記録紙16に対して処理液を吐出する。
【0094】
図7は、印字部12及び多孔質ローラ26周辺部の拡大図である。図7においては、特に印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yは一つの印字ヘッド50で代表して示されている。
【0095】
図7に示すように、処理液用ヘッド12Sは、印字ヘッド50がインクを吐出する前に、予め印字ヘッド50による記録紙16上の打滴位置に対して、処理液Sを打滴する。
【0096】
処理液用ヘッド12Sから記録紙16上に打滴された処理液S1は、記録紙16上に着弾し、図に矢印で示す記録紙16の紙搬送方向への搬送に伴って、印字ヘッド50の真下に移動させられる。記録紙16の搬送に伴い、印字位置が印字ヘッド50の真下に来たところで印字ヘッド50から、インク滴Dが記録紙16上の処理液S1の真上から重なって着弾するように打滴される。
【0097】
これにより、処理液S1とインク滴Dとの2液が混合した混合液E1が記録紙16上に形成される。
【0098】
本実施形態で用いている処理液は、インクと混合した場合に色材の凝集物を生成する性質を有している。そのため、混合液E2に示すように、処理液とインクとの2液の間で反応して色材成分が凝集する。
【0099】
色材の凝集物を生成させる手段としては、アニオン性の色材とカチオン性の化合物を反応させたり、顔料系インクをpH変化により分散破壊を起こしたり、顔料系インクを多価金属塩と反応により分散破壊を起こしたりする等の方法がある。
【0100】
生成した色材凝集物は、混合液E3に示すように、下方に沈降し、色材凝集物からなる色材層E31と溶媒からなる溶媒層E32との分離された混合液E3に変化する。
【0101】
多孔質ローラ26は、金属ローラ26aの表面に多孔質部材26bが配置された構造を有している。多孔質ローラ26の最下部と記録紙16との間には微小な隙間が形成されるように、多孔質ローラ26は配置されている。また、多孔質ローラ26は、記録紙16の搬送方向と同方向に回転する。このとき、記録紙16との相対速度が略0となるように回転することで、インクの擦れによる画像の乱れを防止している。
【0102】
多孔質ローラ26内部の金属ローラ26aは、内部が空洞の円管状をしており、図示は省略するがその側面には多数の孔が開いており、また図示を省略したポンプによって吸引することで内部が負圧にされている。また、多孔質部材26bの孔径は、色材凝集物の径に比べて十分小さく形成されている。
【0103】
そして、記録紙16の搬送に伴い、色材層E31と溶媒層E32に分離した混合液E3が多孔質ローラ26の真下に移動すると、混合液E4に示すように、溶媒層E32の溶媒は、多孔質部材26bの毛細管現象及び金属ローラ26a内部の負圧によって、多孔質ローラ26内部に吸収されていく。このように、分離した溶媒の大部分を多孔質ローラ26の多孔質部材26bによって吸収するのであるが、後段で画像を放射線照射で硬化させて定着させるために必要な分量の溶媒は記録紙16側に残す必要があるため、すべての溶媒は吸収しないようにする。
【0104】
さらに、溶媒吸収時には、記録紙16上に形成される画像に強い圧力が加わらない構造とすることが望ましい。例えば、多孔質ローラ26の表面を柔軟な材料としたり、多孔質ローラ26に対向する補助ローラ40を柔軟な材料とすることが考えられる。あるいは、多孔質ローラ26の真下のすぐ上流及び下流に補助ローラを配置して、真下には補助ローラ40を配置しないようにして、多孔質ローラ26が記録紙16を押し圧したときに、搬送ベルト38の撓みによってその圧力を逃がすような構造としてもよい。
【0105】
多孔質ローラ26によって溶媒を吸収した結果、混合液E4は、色材凝集物と少量の溶媒成分(例えばUVモノマー等)が残った略色材のみの混合液E5となる。
【0106】
次に、この色材凝集物と少量の溶媒成分が残った混合液E5に対して、放射線源28から放射線を照射して硬化させる。例えば、今、用いているインクがUV硬化型インクであって溶媒成分がUVモノマーである場合には、放射線源28としては、UV光源を用いて、UV光(紫外線)を照射することで硬化させることができる。この結果、硬化し平坦化された混合液E6が得られる。このようにしてインクの厚みを平坦化して、レリーフ感を解消することができる。
【0107】
なお、多孔質ローラ26で吸収した溶媒成分は、負圧によって多孔質ローラ26内部に吸収され、内部に設けられた回収経路を介して回収され、外部の貯蔵部に貯蔵される。回収した液体の溶媒成分は、フィルタ等で不純物を除去した後、遠心分離、化学分離等でモノマー成分を分離した後、色材等のインク成分を加えて新たなインクとして再利用するようにすることが好ましい。
【0108】
また、多孔質ローラ26で溶媒を吸収して除去する際、多孔質ローラ26と記録紙16との距離を可変にして、記録紙16の種類、打滴された溶媒量、搬送速度等に応じて、多孔質ローラ26と記録紙16(溶媒)との距離を制御することによって、除去する溶媒量を制御するようにしてもよい。
【0109】
除去する溶媒量を制御する方法としては、多孔質ローラ26と記録紙16との距離を可変にして制御する方法の他に、多孔質ローラ26の記録紙16への押圧力を可変にして制御する方法や、溶媒吸収部材と記録紙16上の溶媒との接触長さ(接触面積)あるいは接触時間を制御する方法などが考えられる。
【0110】
図8に、多孔質ローラ26の記録紙16に対する押圧力を制御することによって溶媒除去量を制御する方法を示す。
【0111】
多孔質ローラ26は、図示を省略した移動機構によって、上下に移動可能であり、多孔質ローラ26を上下に移動することで、記録紙16に対する押圧力が制御される。このとき、図8に示すように、搬送ベルト38の下側の多孔質ローラ26の真下にあたる位置には補助ローラを配置せず、多孔質ローラ26の真下に対し、その上流側と下流側にそれぞれ補助ローラ40a、40bが配置されている。これにより、多孔質ローラ26が下へ移動した場合に、搬送ベルト38及び記録紙16が多孔質ローラ26の押圧力に応じて下側に撓むようになっている。その結果、多孔質ローラ26と記録紙16との接触長さ(接触面積)が増大し、さらに接触時間も増加するようになっている。
【0112】
図8(a)は、多孔質ローラ26と記録紙16との間の圧力が小さい場合を示す。このように圧力が小さい場合には、搬送ベルト38及び記録紙16は、ほぼ真横に移動し、多孔質ローラ26と記録紙16(溶媒)との接触長さ(接触面積)は小である。
【0113】
これに対し、図8(b)は、多孔質ローラ26と記録紙16との間の圧力が大きい場合を示す。このように圧力が大きい場合には、その圧力に応じて搬送ベルト38及び記録紙16は下側に撓み、多孔質ローラ26と記録紙16(溶媒)との接触長さ(接触面積)は大きくなる。また接触している長さが増大したため、その分接触している時間も増加し、溶媒を吸収する量も増加する。
【0114】
また、図9に、多孔質ローラではなく多孔質ベルトを用いて接触長さを制御する例を示す。
【0115】
図9に示すように、この例では、多孔質ローラ26の代わりに、3つのローラ41a、41b、41cの周りに巻き掛けられた多孔質ベルト27が用いられる。この多孔質ベルト27は、その表面が多孔質の溶媒吸収部材で構成されており、搬送ベルト38とは逆回りに回転し、搬送ベルト38上の記録紙16と接触する部分が記録紙16と同方向に移動するようになっている。
【0116】
また、ローラ41aとローラ41bは、それぞれ左右方向に移動可能で、ローラ41cは、上下方向に移動可能であり、各ローラ間の距離を可変とすることができるように構成されている。
【0117】
図9(a)においては、ローラ41cは下に位置し、ローラ41a及びローラ41b間の距離が最大の状態であり、多孔質ベルト27と記録紙16との接触長さ(接触面積)は最大となっている。
【0118】
また図9(b)においては、ローラ41cが上に移動し、ローラ41a及びローラ41bはその間の距離を縮めるように移動し、多孔質ベルト27と記録紙16の接触長さ(接触面積)は小さくなっている。
【0119】
このようにして、多孔質ベルト27と記録紙16との接触長さ(接触面積)を制御することにより、接触時間も制御され、溶媒除去量が制御される。また、接触時間の制御は搬送速度を制御することによって行ってもよい。以上説明した距離、圧力、接触長さ等を制御する手段が図6の溶媒除去量制御手段88に相当する。
【0120】
また、以上説明した実施形態においては、印字ヘッド12BK、12M、12C、12Yの前段に1つ処理液用ヘッド12Sを配置するとともに、後段に1つ多孔質ローラ26を配置していたが、処理液用ヘッド12S及び多孔質ローラ26の配置はこのような構成に限定されるものではない。
【0121】
例えば、図10に示すように、各印字ヘッド12BK、12M、12C、12Y毎にそれぞれの各上流及び下流に、処理液用ヘッド12S−1、12S−2、12S−3、12S−4及び多孔質ローラ26−1、26−2、26−3、26−4を配置するようにしてもよい。このように構成した場合には、各色インク毎に、まず処理液を吐出して、色インクを吐出したらすぐにその色インクについての溶媒を除去し、最後にまとめて放射線源28から放射線を照射して各色材凝集物と残った溶媒成分を硬化させることになる。
【0122】
以上説明したように、本実施形態によれば、放射線硬化型インク中の色材と溶媒(例えばUVモノマー)を分離させ、溶媒を多孔質部材に吸収することで溶媒を除去するようにしたため、溶媒量が減少することにより、ドット径、線幅の広がりによる印字濃度の低下、解像度の低下を引き起こすことなく、インク厚みを低減し、平坦な印字物を得ることができ、レリーフ感を解消することができる。
【0123】
また、色材と溶媒の分離手段として、酸や金属イオンを用いた顔料の分散状態破壊、アニオン、カチオン反応を用いた染料、または顔料の凝集物の作成等の2液反応を利用するようにしたため、高速で色材と溶媒の分離を行うことができ、溶媒のみを除去することが可能となった。
【0124】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0125】
前述した第1実施形態は、インクと処理液の2液反応による凝集を利用して色材成分と溶媒を分離したものであったが、本第2実施形態は、電界を印加することによる電気泳動効果を利用して色材成分と溶媒を分離するものである。
【0126】
図11は、第2実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の概略構成図である。なお、図11では、画像を印字する部分、溶媒を除去する部分及び硬化させる部分のみを表示し、給紙部、排紙部、インク貯蔵/装填部等は省略している。
【0127】
図11に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置110は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド112BK、112M、112C、112Y及び記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送するベルト搬送部122を有している。
【0128】
ここで用いられるインクは前述した第1実施形態と同様に紫外線(UV)あるいは電子線(EB)等の放射線の照射によって硬化する放射線硬化型インクである。またベルト搬送部122は、各印字ヘッド112BK、112M、112C、112Yのノズル面に対向して配置されている。
【0129】
各印字ヘッド112BK、112M、112C、112Yの下流側には、記録紙116上に打滴されたインク滴を帯電させるためのコロナ帯電器196及びインク滴の溶媒成分を吸収除去するための多孔質ローラ126がそれぞれ配置されている。さらに、これら全ての後段には、インク滴を硬化させるために放射線を照射する放射線源128が1つ配置されている。
【0130】
ベルト搬送部122は、ローラ136、137間に無端状の静電吸着ベルト(搬送ベルト)138が巻き掛けられた構造を有している。静電吸着ベルト138は、導電性部材から構成されており、直流電源111が電気的に接続されている。直流電源111の他端は、多孔質ローラ126に電気的に接続されている。直流電源111により直流電圧が印加されると、静電吸着ベルト138と多孔質ローラ126との間に電界が印加され、静電吸着効果によって、記録紙116は静電吸着ベルト138上に吸着保持される。
【0131】
静電吸着ベルト138が巻かれているローラ136、137の少なくとも一方に図示を省略したモータの動力が伝達されることにより、静電吸着ベルト138は、図11中反時計回り方向に駆動され、静電吸着ベルト138上に保持された記録紙116は、図の右から左へと搬送される。
【0132】
各印字ヘッド112BK、112M、112C、112Yの構成は、前述した第1実施形態と同様である。静電吸着ベルト138によって記録紙116を搬送しつつ各印字ヘッド112BK、112M、112C、112Yからそれぞれの色のインクを吐出することにより記録紙116上にカラー画像が形成される。
【0133】
各印字ヘッド112BK、112M、112C、112Yから記録紙116上に吐出されたインク滴の色材成分は、コロナ帯電器196によって、帯電させられ、多孔質ローラ126によって電気泳動効果を利用して色材成分と溶媒成分に分離され、溶媒成分のみが吸収除去される。その後、後段の放射線源128から放射線を照射して色材成分と残った溶媒成分が硬化される。
【0134】
以下、電気泳動効果を利用した溶媒分離及び溶媒除去について説明する。
【0135】
図12は、コロナ帯電器196び多孔質ローラ126周辺部の拡大図である。
【0136】
各印字ヘッド112BK、112M、112C、112Yの構成は同様であるので、図12においては、特に印字ヘッド112Yについて説明する。
【0137】
前述したように、直流電源111(図11参照)によって、静電吸着ベルト138と多孔質ローラ126との間に電界が印加されている。例えば、図12に示すように、静電吸着ベルト138はプラスに帯電し、多孔質ローラ126はマイナスに帯電しているとする。
【0138】
印字ヘッド112Yから記録紙116上にインク滴D2が打滴され、記録紙116の搬送の伴い図の右から左方向に移動する。コロナ帯電器196の下に来ると、コロナ帯電器196による帯電処理によってインク滴D3のマイナスに帯電している色材成分が確実に記録紙側に移動する。
【0139】
図12のインク滴D4に示すように、インク滴D4中の色材成分はマイナスに帯電しており、また静電吸着ベルト138はプラスに帯電しているため、色材成分は静電吸着ベルト138に引き寄せられるように静電引力が作用するため、色材成分は下方に沈降し溶媒と分離される。
【0140】
また、さらに搬送されインク滴D5のように多孔質ローラ126に近づくと、多孔質ローラ126もマイナスに帯電しているため、マイナスに帯電している色材成分は、静電斥力によりさらに沈降が促進され、色材成分と溶媒成分との分離が確実に行われる。
【0141】
そして、インク滴D6に示すように、多孔質ローラ126の表面に形成された多孔質部材126bによって溶媒成分が吸収される。このとき、静電吸着ベルト138は、色材成分と逆の極性に帯電しているとともに、多孔質ローラ126は色材成分と同極性に帯電しているため、多孔質ローラ126が溶媒成分を吸収する際、色材成分が多孔質ローラ126側に移動するのが抑制され、多孔質ローラ126の表面に色材成分が付着するのをより一層防止することが可能となる。
【0142】
その後放射線源128から放射線の照射を受けてインク滴D7として硬化定着させられる。なお、多孔質ローラ126の内部126aに回収された溶媒成分は、前述した第1実施形態と同様にして再利用する。
【0143】
このように、本実施形態によれば、コロナ帯電器196により、色材成分を帯電させて、電気泳動効果を利用することで、処理液を使用することなく、色材成分と溶媒成分を確実に分離することができる。
【0144】
本実施形態においては、このように電気泳動効果を利用して色材と溶媒の分離を行うようにしたため、処理液なしで分離ができ、また色材凝集物を記録紙側に集めることで溶媒吸収部材への付着を防ぐことができる。
【0145】
また、上述したいずれの実施形態においても、吸収した溶媒は回収し、別装置で再処理、再インク化して再利用するかあるいは装置内で色材を付与してインクとして再利用するようにしているため、比較的高価なUVモノマー等の溶媒のコストを削減することができるとともに、不用な廃液が発生することもない。
【0146】
なお、以上の実施形態の他に、例えば、水系UVインクのUVモノマー、オリゴマー成分と水とを分離し、UV照射によりモノマー、オリゴマーを硬化させ、残った水を除去するようにしてもよい。または、分離させた状態で水を除去してからUV硬化させるようにしてもよい。
【0147】
以上、本発明の画像形成装置および画像形成方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の第1実施形態の概略を示す全体構成図である。
【図2】(a)は、印字ヘッドの構造例を示す平面透視図であり、図2(b)は、その一部の拡大図である。
【図3】他の印字ヘッドの構造例を示す平面透視図である。
【図4】図2(a)、(b)中の4−4線に沿った断面図である。
【図5】本実施形態のインクジェット記録装置のインク供給系を示す概略図である。
【図6】本実施形態のインクジェット記録装置の制御系を示す概略ブロック図である。
【図7】印字部12及び多孔質ローラ26周辺部の拡大図である。
【図8】(a)、(b)は、多孔質ローラと記録紙との圧力を制御する様子を示す説明図である。
【図9】(a)、(b)は、多孔質ベルトと記録紙との接触長さを制御する様子を示す説明図である。
【図10】第1実施形態のインクジェット記録装置の他の例を示す概略構成図である。
【図11】本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の第1実施形態の概略を示す全体構成図である。
【図12】第2実施形態におけるコロナ帯電器び多孔質ローラ周辺部の拡大図である。
【符号の説明】
【0149】
10…インクジェット記録装置、12…印字部、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、18…給紙部、20…デカール処理部、22…ベルト搬送部、24…カッター、26…多孔質ローラ、27…多孔質ベルト、28…放射線源、38…搬送ベルト、88…溶媒除去量制御手段、90…硬化手段ドライバ、196…コロナ帯電器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化型インクを記録媒体に対してインク液滴として吐出するインク吐出手段と、 前記記録媒体上に吐出されたインク液滴中の色材成分と溶媒成分を分離する溶媒分離手段と、
前記分離された溶媒成分を除去する溶媒除去手段と、
前記溶媒を除去した後のインク液滴に対し放射線を照射して硬化させる硬化手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記溶媒除去手段は、多孔質部材により前記溶媒成分を吸収することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置であって、さらに、前記溶媒成分の除去量を制御する溶媒除去量制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記溶媒除去量制御手段は、前記溶媒除去手段と前記記録媒体との距離、または前記溶媒除去手段と前記記録媒体との間の押圧力、または前記溶媒除去手段と前記記録媒体との接触長さあるいは接触時間のいずれか一つを制御することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記溶媒分離手段は、2液反応により前記インク液滴中に色材凝集物を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記溶媒分離手段は、電気泳動効果を利用して溶媒成分の分離を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
放射線硬化型インクを記録媒体に対してインク液滴として吐出し、
前記記録媒体上に吐出されたインク液滴中の色材成分と溶媒成分を分離し、
前記分離された溶媒成分を除去し、
前記溶媒を除去した後のインク液滴に対し放射線を照射して硬化させることを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
前記除去した溶媒成分を回収して、色材成分を加えて新たなインクとして再利用することを特徴とする請求項7に記載の画像形成方法。
【請求項1】
放射線硬化型インクを記録媒体に対してインク液滴として吐出するインク吐出手段と、 前記記録媒体上に吐出されたインク液滴中の色材成分と溶媒成分を分離する溶媒分離手段と、
前記分離された溶媒成分を除去する溶媒除去手段と、
前記溶媒を除去した後のインク液滴に対し放射線を照射して硬化させる硬化手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記溶媒除去手段は、多孔質部材により前記溶媒成分を吸収することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置であって、さらに、前記溶媒成分の除去量を制御する溶媒除去量制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記溶媒除去量制御手段は、前記溶媒除去手段と前記記録媒体との距離、または前記溶媒除去手段と前記記録媒体との間の押圧力、または前記溶媒除去手段と前記記録媒体との接触長さあるいは接触時間のいずれか一つを制御することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記溶媒分離手段は、2液反応により前記インク液滴中に色材凝集物を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記溶媒分離手段は、電気泳動効果を利用して溶媒成分の分離を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
放射線硬化型インクを記録媒体に対してインク液滴として吐出し、
前記記録媒体上に吐出されたインク液滴中の色材成分と溶媒成分を分離し、
前記分離された溶媒成分を除去し、
前記溶媒を除去した後のインク液滴に対し放射線を照射して硬化させることを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
前記除去した溶媒成分を回収して、色材成分を加えて新たなインクとして再利用することを特徴とする請求項7に記載の画像形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−198991(P2006−198991A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15798(P2005−15798)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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