説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】対象物上にトナー画像を容易に形成する。
【解決手段】画像形成装置では、トナー容器21内の液体トナー中にて、マスク部3の電極パターン31とガラス基板9の対向面とを対向させつつマスク部3とガラス基板9とが互いに平行に配置される。そして、マスク部3の基材30、電極パターン31およびガラス基板9のそれぞれに電位が付与されることにより、マスク部3の電極パターン31とガラス基板9の対向面との間にトナーが対向面へと向かう電界が形成され、マスク部3の非電極領域と対向面との間にはトナーが非電極領域へと向かう電界が形成される。これにより、画像形成装置では、ガラス基板9上にマスク部3の電極パターン31に対応するトナー画像を容易に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物上にトナー画像を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
TV装置やコンピュータの表示部に用いられる液晶表示装置等には、従来よりカラーフィルタが利用されている。ガラス基板上にカラーフィルタのフィルタ層を形成する手法として、例えば、基板上にフォトリソグラフィ技術を用いて感光性樹脂から形成されたパターンを染色する染色法や、顔料等の色素を分散した感光性樹脂を利用する顔料分散法、基板上に透明導電層(例えば、ITO(Indium-Tin-Oxide:酸化インジウムスズ))のパターンを形成して電着により着色パターンを形成する電着法が知られている。しかしながら、これらの手法では、煩雑なフォトリソグラフィプロセスを伴うことによりフィルタ層の形成に長時間を要してしまうとともに、高価な感光性樹脂を多量に使用する。また、凹版法、凸版法、シルクスクリーン法等によりインクを基板上に直接印刷する印刷法も知られているが、印刷法では極めて特殊な技術が必要となる。
【0003】
一方、ガラス基板に設けられた透明光導電層を帯電させた後に光を照射して静電潜像を形成し、静電潜像にトナーを付与してカラーフィルタのフィルタ層を形成する電子写真法も知られている(例えば、特許文献1ないし4参照)。電子写真法では、感光性材料の塗布等の煩雑な工程を経ることがないためフォトリソグラフィ技術を伴う手法よりも短時間で、また、廃材がほとんど生じないため低コストで所望のセル形状や配列のフィルタ層を形成することが可能となる。
【0004】
また、ガラス基板上にスパッタによりクロムの膜を形成し、フォトリソグラフィ技術を用いてクロム膜上に所定のパターンを形成した後に、ウエットエッチングを施すことによりガラス基板上にブラックマトリクスを形成することも行われている。さらに、上記顔料分散法にてガラス基板上にブラックマトリクスを形成することも行われている。
【特許文献1】特開昭48−16529号公報
【特許文献2】特開昭56−69604号公報
【特許文献3】特開昭56−117210号公報
【特許文献4】特開昭63−234203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記電子写真法においてフィルタ層を形成する際にも、全てのガラス基板における透明光導電層の形成や、透明光導電層上における静電潜像の形成等の工程が最低限必要となってしまう。したがって、カラーフィルタのフィルタ層のトナー画像をガラス基板上により容易に形成するには、上記電子写真法とは異なる新規な手法が必要となる。
【0006】
また、ブラックマトリクスを形成する上記手法においても、フィルタ層の場合と同様に、煩雑なフォトリソグラフィプロセスを伴ってしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、対象物上にトナー画像を容易に形成することが可能な新規な手法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、板状またはフィルム状の対象物上にトナー画像を形成する画像形成装置であって、溶媒中にトナーが分散された液体トナーが貯溜されるトナー容器と、前記液体トナー中に配置されるとともに、板状の絶縁性の基材の一の主面上に導電性または半導電性の材料にて所定の電極パターンが形成されたマスク部と、前記液体トナー中にて対象物の一の主面である対向面を前記マスク部の前記電極パターンに対向させつつ前記対象物を前記マスク部に対して平行に保持する保持部と、前記マスク部の前記基材に第1電位を付与する基材電位付与部と、前記マスク部の前記電極パターンに第2電位を付与するパターン電位付与部と、前記対象物に第3電位を付与する対象物電位付与部とを備え、前記第1電位、前記第2電位および前記第3電位により、前記マスク部上の非電極領域と前記対象物の前記対向面との間において前記トナーが前記対向面へと向かう電界が形成され、前記マスク部の前記電極パターンと前記対向面との間において前記トナーが前記電極パターンへと向かう電界が形成される、もしくは、電界の大きさが0とされる、または、前記第1電位、前記第2電位および前記第3電位により、前記マスク部の前記電極パターンと前記対象物の前記対向面との間において前記トナーが前記対向面へと向かう電界が形成され、前記マスク部上の前記非電極領域と前記対向面との間において前記トナーが前記非電極領域へと向かう電界が形成される、もしくは、電界の大きさが0とされる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置であって、前記第3電位の極性に対して前記トナーの極性が逆極性である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像形成装置であって、前記対象物が絶縁性を有する透明部材である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の画像形成装置であって、前記対象物上に形成されるトナー画像がカラーフィルタのブラックマトリクスである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の画像形成装置であって、前記対象物上に形成されるトナー画像がカラーフィルタのフィルタ層である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像形成装置であって、前記対象物の前記対向面上に形成されている導電性または半導電性のブラックマトリクスに第4電位を付与することにより、前記ブラックマトリクスと前記マスク部との間において前記トナーが前記マスク部へと向かう電界を形成する、または、電界の大きさを0とするブラックマトリクス電位付与部をさらに備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像形成装置であって、前記対象物が、絶縁性を有する透明部材の前記マスク部に対向する面上に導電性または半導電性かつ透明な補助膜を形成したものであり、前記対象物電位付与部が、前記補助膜に前記第3電位を付与する。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成装置であって、前記マスク部の前記非電極領域および前記電極パターンのうちトナー画像の形成時に前記トナーが近づく電界が形成される領域が、前記トナーとの離型性が当該領域よりも高い絶縁材料にて覆われている。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成装置であって、前記マスク部の前記電極パターンの全体が連続しており、前記パターン電位付与部が、端子を前記電極パターンの一部に接触させて前記電極パターンに前記第2電位を付与する。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の画像形成装置であって、対象物上に形成されるトナー画像を前記対象物に定着させる定着器をさらに備える。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の画像形成装置であって、溶媒を貯溜する洗浄容器をさらに備え、前記トナー容器内にて前記対象物上にトナー画像が形成された直後に、前記トナー容器内における前記対象物および前記マスク部の相対的な位置関係、並びに、前記第1電位、前記第2電位および前記第3電位の大小関係を維持しつつ、前記対象物および前記マスク部が前記洗浄容器内の前記溶媒中に浸漬される。
【0019】
請求項12に記載の発明は、板状またはフィルム状の対象物上にトナー画像を形成する画像形成方法であって、a)溶媒中にトナーが分散された液体トナーが貯溜されるトナー容器内の前記液体トナー中に、板状の絶縁性の基材の一の主面上に導電性または半導電性の材料にて所定の電極パターンが形成されたマスク部を配置する工程と、b)前記液体トナー中にて対象物の一の主面である対向面を前記マスク部の前記電極パターンに対向させつつ前記対象物を前記マスク部に対して平行に配置する工程と、c)前記マスク部の前記基材に第1電位を付与する工程と、d)前記c)工程に並行して、前記マスク部の前記電極パターンに第2電位を付与する工程と、e)前記d)工程に並行して、前記対象物に第3電位を付与する工程とを備え、前記第1電位、前記第2電位および前記第3電位により、前記マスク部上の非電極領域と前記対象物の前記対向面との間において前記トナーが前記対向面へと向かう電界が形成され、前記マスク部の前記電極パターンと前記対向面との間において前記トナーが前記電極パターンへと向かう電界が形成される、もしくは、電界の大きさが0とされる、または、前記第1電位、前記第2電位および前記第3電位により、前記マスク部の前記電極パターンと前記対象物の前記対向面との間において前記トナーが前記対向面へと向かう電界が形成され、前記マスク部上の前記非電極領域と前記対向面との間において前記トナーが前記非電極領域へと向かう電界が形成される、もしくは、電界の大きさが0とされる。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の画像形成方法であって、前記第3電位の極性に対して前記トナーの極性が逆極性である。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項12または13に記載の画像形成方法であって、前記対象物が絶縁性を有する透明部材である。
【0022】
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の画像形成方法であって、前記対象物上に形成されるトナー画像がカラーフィルタのブラックマトリクスである。
【0023】
請求項16に記載の発明は、請求項14に記載の画像形成方法であって、前記対象物上に形成されるトナー画像がカラーフィルタのフィルタ層である。
【0024】
請求項17に記載の発明は、請求項16に記載の画像形成方法であって、前記e)工程に並行して、前記対象物の前記対向面上に形成されている導電性または半導電性のブラックマトリクスに第4電位を付与することにより、前記ブラックマトリクスと前記マスク部との間において前記トナーが前記マスク部へと向かう電界を形成する、または、電界の大きさを0とする工程をさらに備える。
【0025】
請求項18に記載の発明は、請求項12または13に記載の画像形成方法であって、前記対象物が、絶縁性を有する透明部材の前記マスク部に対向する面上に導電性または半導電性かつ透明な補助膜を形成したものであり、前記e)工程において、前記補助膜に前記第3電位が付与される。
【0026】
請求項19に記載の発明は、請求項12ないし18のいずれかに記載の画像形成方法であって、前記マスク部の前記非電極領域および前記電極パターンのうちトナー画像の形成時に前記トナーが近づく電界が形成される領域が、前記トナーとの離型性が当該領域よりも高い絶縁材料にて覆われている。
【0027】
請求項20に記載の発明は、請求項12ないし19のいずれかに記載の画像形成方法であって、前記マスク部の前記電極パターンの全体が連続しており、前記d)工程において、パターン電位付与部の端子を前記電極パターンの一部に接触させて前記電極パターンに前記第2電位が付与される。
【0028】
請求項21に記載の発明は、請求項12ないし20のいずれかに記載の画像形成方法であって、前記e)工程の後に、前記対象物上に形成されるトナー画像を前記対象物に定着させる工程をさらに備える。
【0029】
請求項22に記載の発明は、請求項12ないし20のいずれかに記載の画像形成方法であって、前記e)工程の後に、前記トナー容器内における前記対象物および前記マスク部の相対的な位置関係、並びに、前記第1電位、前記第2電位および前記第3電位の大小関係を維持しつつ、前記対象物および前記マスク部を溶媒を貯溜する洗浄容器内の前記溶媒中に浸漬して前記対象物を洗浄する工程をさらに備える。
【0030】
請求項23に記載の発明は、請求項22に記載の画像形成方法であって、洗浄後の前記対象物上のトナー画像を前記対象物に定着させる工程をさらに備える。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、対象物上にマスク部の電極パターンに対応するトナー画像を容易に形成することができる。
【0032】
また、請求項2および13の発明では、トナー画像を対象物上に安定して保持させることができ、請求項4および15の発明では、対象物上にカラーフィルタのブラックマトリクスを容易に形成することができる。
【0033】
また、請求項5および16の発明では、対象物上にカラーフィルタのフィルタ層を容易に形成することができ、請求項6および17の発明では、ブラックマトリクスを有する高精度なカラーフィルタを製造することができる。
【0034】
また、請求項7および18の発明では、第3電位をトナー画像の形成に効率よく利用することができ、請求項8および19の発明では、マスク部に付着したトナーの除去を容易に行うことができる。
【0035】
また、請求項9および20の発明では、電極パターンへの第2電位の付与を容易に行うことができ、請求項10、21および23の発明では、対象物上に付着したトナーを定着させることができ、請求項11および22の発明では、トナー画像が形成された後の対象物上の不要なトナーを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1は本発明の一の実施の形態に係る画像形成装置1の構成を示す図である。画像形成装置1は、絶縁性を有する透明なガラス基板9上にトナーの画像を形成し、トナー画像をガラス基板9上に定着することにより、液晶表示装置等の平面表示装置用のカラーフィルタを製造するためのものである。実際には、K(黒)、R(赤)、G(緑)、B(青)の4色のトナーにそれぞれ対応する4つの画像形成装置1が一列に並べられ、K用の画像形成装置1にてガラス基板9上にブラックマトリクスが形成され、R、G、B用の3つの画像形成装置1にてガラス基板9上にカラーフィルタのフィルタ層が形成される。
【0037】
図1の画像形成装置1は、溶媒中に一の色のトナーが分散された液体トナーが貯溜されるとともに内部にてガラス基板9上にトナー画像が形成されるトナー容器21、液体トナーの溶媒のみが貯留されるとともに内部にてトナー画像形成直後のガラス基板9上における不要なトナーが除去される洗浄容器22、複数のランプ231からガラス基板9に光を照射して加熱することによりトナー画像をガラス基板9上に定着させる定着器23、トナー容器21および洗浄容器22のそれぞれの内部に後述する処理ユニット11としてガラス基板9を配置する基板搬送部24、並びに、基板搬送部24からガラス基板9を受け取って定着器23が有する搬送ローラ上に移載する基板移載機構25を備える。
【0038】
定着器23は、それぞれが所定の方向に伸びる複数のランプ231をこの方向に垂直かつ水平な方向に配列して有し、複数のランプ231の上方には反射板232が設けられる。複数のランプ231の下方には、それぞれが所定の方向に伸びる複数の搬送ローラ233がこの方向に垂直かつ水平な方向に配列されており、一部の搬送ローラ233が回転することにより、基板移載機構25により搬送ローラ233上に載置されるガラス基板9が基板移載機構25とは反対側に水平に移動する。
【0039】
基板搬送部24は、ガラス基板9および後述するマスク部が組み合わされた処理ユニット11をガラス基板9の主面が鉛直方向に沿うように直立させた状態にて把持するユニット把持機構241、ユニット把持機構241を図1中に符号A1を付す矢印にて示す方向に移動(昇降)させてトナー容器21または洗浄容器22に対して処理ユニット11を搬出入するユニット昇降機構242、並びに、ユニット昇降機構242を図1中に符号A2を付す矢印にて示す方向に移動してトナー容器21、洗浄容器22または基板移載機構25の上方へと配置するユニット移動機構243を備える。基板移載機構25は、基板搬送部24により搬送される処理ユニット11を受け取って処理ユニット11からガラス基板9のみを取り出し、主面が水平方向に沿うようにガラス基板9を回動させた後、搬送ローラ233上に載置する機構を有する。
【0040】
図2は、K用の画像形成装置1におけるガラス基板9上へのトナー画像の形成時のトナー容器21の内部を他の構成と共に示す図である。なお、R、G、Bの各色用の画像形成装置1では図2とは構成が僅かに相違しており、この相違点については後述する。
【0041】
図2に示すように、トナー容器21の下部には供給管211が設けられ、供給管211はポンプ212を介して液体トナータンク213に接続される。液体トナータンク213には、溶媒(例えば、アイソパー(登録商標))中にKの色のトナー(トナー粒子)が分散された液体トナーが貯溜されており、ポンプ212を駆動することにより液体トナータンク213からトナー容器21内に液体トナーが供給され、トナー容器21にて一定量の液体トナーが貯溜される。トナー容器21の下部にはポンプ215に接続する排出管214も設けられており、必要に応じてポンプ215によりトナー容器21内の液体トナーが図示省略のフィルタを介して液体トナータンク213に戻される。
【0042】
トナー画像の形成時においてトナー容器21内の液体トナー中には、それぞれが複数の微小な吸引穴を一の主面(以下、「吸着面」という。)に有する2つの電極板41,42が、所定の間隔にて互いに吸着面を対向させつつ平行に、かつ、直立した状態で配置される。各電極板41,42は導電性または半導電性を有し、複数の吸引穴には外部のポンプ411,421が接続されるとともに、吸着面は例えば50マイクロメートル(μm)以内の平面精度とされる。一方の電極板41の吸着面にはK用のマスク部3の板状の基材30の一の主面が当接し、マスク部3が電極板41に吸引吸着により保持される。基材30はガラスにて形成されて絶縁性を有し、基材30の電極板41とは反対側の主面上には、導電性または半導電性の材料にて所定の電極パターン31(後述するように、基材30上の電極パターン31は全体が連続したものとなっている。)が形成されている。電極板41には電圧源511を有する基材電位付与部51が接続され、電極板41を介してマスク部3の基材30の電極板41側の主面に所定の電位(以下、「基材電位」という。)が均一に付与される。マスク部3の電極パターン31には電圧源521を有するパターン電位付与部52が、導電性ゴム等にて形成される端子部522を介して接続され、電極パターン31の全体に所定の電位(以下、「パターン電位」という。)が均一に付与される。なお、マスク部3(並びに、後述のマスク部3a〜3d)は、既述の従来のブラックマトリクスやITOパターンの形成手法等を利用して製作される。
【0043】
また、他方の電極板42の吸着面にはガラス基板9の一の主面が当接し、ガラス基板9が電極板42に吸引吸着により保持される。電極板42には電圧源531を有する基板電位付与部53が接続され、電極板42を介してガラス基板9の電極板42側の主面に所定の電位(以下、「基板電位」という。)が均一に付与される。マスク部3およびガラス基板9が2つの電極板41,42にそれぞれ保持された状態において、ガラス基板9の電極板42とは反対側の主面がマスク部3の電極パターン31に対向しつつ(以下、ガラス基板9のこの主面を「対向面」という。)、液体トナー中にてガラス基板9とマスク部3とが互いに平行に配置されることとなる。
【0044】
実際には、図2の2つの電極板41,42間において上部および下部のそれぞれには、絶縁性を有するスペーサ43が設けられ、2つの電極板41,42にそれぞれ保持されるマスク部3およびガラス基板9の間の間隔が、例えば300μmにて一定に保たれている(図2では、マスク部3およびガラス基板9の間の間隔を大きく図示している。)。また、ガラス基板9、マスク部3、2つの電極板41,42および2つのスペーサ43は処理ユニット11として一体的に組み合わされており、処理ユニット11はユニット把持機構241により把持されてトナー容器21の上方から支持される。なお、処理ユニット11の設計によっては、マスク部3とガラス基板9とが対向しつつ僅かにずらして配置され、パターン電位付与部52の端子部522がマスク部3上のガラス基板9に重ならない領域にて電極パターン31に接続されてもよい(後述の図6、図8および図15の処理ユニットにおいて同様)。
【0045】
処理ユニット11が内部に配置された状態における図1の洗浄容器22も、液体トナーの溶媒のみが貯溜される点を除き、図2と同様の構成とされ(後述の図6参照)、後述するガラス基板9の洗浄時およびマスク部3の洗浄時のそれぞれでは、処理ユニットが基材電位付与部51、パターン電位付与部52および基板電位付与部53に接続された状態において、基板搬送部24により洗浄容器22内の溶媒中に浸漬される。
【0046】
図3はK用のマスク部3の電極パターン31を示す図である。図3に示すように、電極パターン31はマスク部3の基材30の一の主面上にて格子状に形成されており、電極パターン31の全体が連続したパターンとされる。電極パターン31は矩形状の領域となっている当接部311を有し、ガラス基板9上へのトナー画像の形成時において、当接部311がパターン電位付与部52の端子部522と当接して電極パターン31の全体にパターン電位が容易に付与される。電極パターン31は、さらに基材30の主面上の四隅のそれぞれにおいて形成される所定のアライメントパターン312も有する。また、マスク部3の電極パターン31側の全体は(ただし、当接部311を除く。以下同様。)、コーティング処理が施されることによりトナー容器21中のトナーとの離型性が高い絶縁材料であるフッ素コートにて覆われている。すなわち、基材30の電極パターン31側の主面において電極パターン31が形成されていない領域(実際には、電極パターン31にて囲まれる複数の矩形領域313および電極パターン31の外側の領域であり、以下、これらの領域の集合を「非電極領域」という。)および電極パターン31の表面にトナーとの離型性が非電極領域および電極パターン31よりもよい薄い絶縁膜がコーティングされている。
【0047】
次に、画像形成装置1がカラーフィルタを製造する処理について説明を行う。ここでは、まず、K用の画像形成装置1がガラス基板9上にカラーフィルタのブラックマトリクスのトナー画像を形成する処理について図4を参照しつつ説明を行い、その後、R、G、B用の3つの画像形成装置1がガラス基板9上にフィルタ層のトナー画像を形成する処理について説明する。なお、図4中においてステップS15aの処理は後述のフィルタ層のトナー画像を形成する際に行われる。
【0048】
図1の画像形成装置1では、まず、基板移載機構25に処理対象のガラス基板9が搬入されて単体の電極板42(すなわち、図2に示す処理ユニット11として組み合わされる前の電極板42)に吸引吸着により保持されるとともに、予め準備されるマスク部3が、基材30の電極パターン31とは反対側の主面を単体の電極板41に当接させて同様に保持される。そして、2つの電極板41,42が、ガラス基板9とマスク部3とが対向するように2つのスペーサ43を介して組み合わされて処理ユニット11が構成される。
【0049】
続いて、図1のユニット把持機構241により処理ユニット11が直立した状態で把持されるとともにユニット昇降機構242により処理ユニット11が上昇し、ユニット移動機構243により処理ユニット11がトナー容器21の上方へと移動する。そして、処理ユニット11が下降してトナー容器21内の液体トナー中に浸漬される。これにより、トナー容器21内の液体トナー中において、マスク部3がその法線を水平方向に向けて配置されるとともに、ガラス基板9が一の主面である対向面を電極パターン31に対向させつつマスク部3に平行に配置され、図2に示す状態となる(ステップS11,S12)。
【0050】
マスク部3およびガラス基板9がトナー容器21内に配置されると、基材電位付与部51によりマスク部3の基材30に基材電位が付与されるとともに(ステップS13)、パターン電位付与部52によりマスク部3の電極パターン31にパターン電位が付与される(ステップS14)。また、基材電位およびパターン電位の付与に並行して、基板電位付与部53によりガラス基板9に基板電位が付与される(ステップS15)。具体的には、液体トナー中においてトナーは正に帯電しており、基材電位は接地電位(0V)とされ、パターン電位は(+900)Vとされ、基板電位は(+300)Vとされる。これにより、マスク部3とガラス基板9との間の幅300μmの間隙(液体トナーが満たされる間隙)には電界が形成される。
【0051】
図5は、マスク部3とガラス基板9との間に形成される電界の向きを説明するための図である。なお、図5では非電極領域301および電極パターン31を覆うフッ素コート39も図示し、内部に「+」を付す丸にてトナーの粒子を示している(後述する図10および図14において同様)。
【0052】
基材電位付与部51、パターン電位付与部52および基板電位付与部53により電位が付与されると、マスク部3からガラス基板9へと向かう方向(図5中にて符号A3を付す矢印にて示す方向)を正として、マスク部3の電極パターン31とガラス基板9の対向面91との間の電界強度Eaは(+2.0)V/μmとなり((Ea=(900−300)/300)にて(近似的に)求められる。)、マスク部3の非電極領域301とガラス基板9の対向面91との間の電界強度Ebは(−1.0)V/μmとなる((Eb=(0−300)/300)にて求められる。)。このように、電極パターン31とガラス基板9の対向面91との間には、図5中に符号71を付す矢印にて示すようにトナーが電極パターン31側から対向面91へと向かう(電気泳動する)電界が形成され、非電極領域301とガラス基板9の対向面91との間には、図5中に符号72を付す矢印にて示すようにトナーが対向面91側から非電極領域301へと向かう電界が形成される。したがって、ガラス基板9の対向面91上の電極パターン31に正確に対向する領域には、Kのトナーが付着する。なお、マスク部3の非電極領域301にもトナーが付着する。
【0053】
このとき、トナーの粒子の電荷量をq、ガラス基板9の単位面積当たりのキャパシタンス(静電容量)をC、ガラス基板9の対向面91と反対側の主面との電位差をΔVとすると、ガラス基板9の対向面91上において単位面積当たりに蓄積されるトナーの粒子の総電荷量Σqが、(C・ΔV)となるまでトナーの付着が進行し、総電荷量Σqが(C・ΔV)と等しくなるとトナーの付着が停止する。したがって、ガラス基板9の対向面91の全体ではほぼ均一の厚さのトナー層が形成され、ガラス基板9上に現像されたトナー画像の濃度は均一となる。
【0054】
トナーの付着が停止すると、基材電位付与部51、パターン電位付与部52および基板電位付与部53による基材電位、パターン電位および基板電位の付与を継続した状態で処理ユニット11が上昇し、トナー容器21から取り出される。続いて、処理ユニット11が洗浄容器22の上方へと移動して、その後下降し、図6に示すように洗浄容器22内の溶媒中に浸漬される(ステップS16)。
【0055】
このとき、洗浄容器22内の溶媒中においても、トナー容器21内における基材電位、パターン電位および基板電位が維持されるとともに、マスク部3とガラス基板9との相対的な位置関係も維持される。したがって、仮に、処理ユニット11をトナー容器21から引き上げる際等に、図5のガラス基板9の対向面91上において、マスク部3の非電極領域301に正確に対向する領域に不要なトナーが付着したとしても、洗浄容器22内の溶媒中において当該領域ではトナーが対向面91から非電極領域301に向かう電界が形成されることにより、不要なトナーが対向面91上から除去されることとなる。すなわち、洗浄容器22内にてトナー画像が形成されたガラス基板9が洗浄される。一方、電極パターン31に正確に対向する対向面91上の領域では、トナーが電極パターン31から対向面91へと向かう電界が形成されるため、トナーは付着したままとなる。なお、必要に応じて処理ユニット11が洗浄容器22内にて揺動されてもよい。
【0056】
ガラス基板9上の不要なトナーの除去が終了すると、基材電位、パターン電位および基板電位の付与を継続した状態で処理ユニット11が、図1のユニット昇降機構242により上昇し、洗浄容器22から取り出される。続いて、処理ユニット11が基板移載機構25の上方へと移動した後、下降して基板移載機構25に受け渡され、マスク部3とガラス基板9との間に液体(溶媒および液体トナー)が存在しない状態で、基材電位、パターン電位および基板電位の付与が停止され、処理ユニット11が分解される。そして、電極板42からガラス基板9が取り外された後、ガラス基板9のみが定着器23の搬送ローラ233上に載置されて定着器23の内部へと搬送され、例えば、230〜250℃にて30〜60秒間加熱されてガラス基板9上のトナーが溶融し、ガラス基板9上に定着される(ステップS17)。これにより、図7に示すように、ガラス基板9の対向面91上にブラックマトリクス81が形成される。通常の液体トナーに含まれるトナーは絶縁性であるが、本実施の形態にて用いられる液体トナーのトナーには導電性材料が含まれているため、ガラス基板9上のブラックマトリクス81は半導電性を有する。なお、ガラス基板9上には電極パターン31の当接部311に対応する部分(図7中の符号811を付す部分であり、以下、同様に「当接部811」と呼ぶ。)やアライメントパターン312に対応する部分(図7中の符号812を付す部分であり、以下、同様に「アライメントパターン812」と呼ぶ。)も形成される。その後、ガラス基板9は次のR、GまたはB用の画像形成装置1へと搬送される。
【0057】
一方で、ステップS17におけるガラス基板9上のトナーの定着処理に並行して、基板移載機構25ではガラス基板9が取り外された後の単体の電極板42に金属板が保持され、マスク部3を保持する電極板41および金属板を保持する電極板42が組み合わされてマスク部3の洗浄用の補助処理ユニットが構成される。続いて、ユニット把持機構241により補助処理ユニットが洗浄容器22内の溶媒中に浸漬され、例えば、基材電位付与部51によりマスク部3の基材30に接地電位が付与され、パターン電位付与部52により電極パターン31に接地電位が付与され、基板電位付与部53により金属板に(−1000)Vの電位が付与される(図6参照)。これにより、マスク部3と金属板との間には、マスク部3の電極パターン31側の主面の全体においてトナーがマスク部3から金属板へと向かう電界が形成され、マスク部3上のトナーが除去されてマスク部3が洗浄される(ステップS18)。このとき、マスク部3の非電極領域301および電極パターン31がトナーとの離型性が高いフッ素コート39にて覆われていることにより、マスク部3に付着したトナーが容易に除去される。そして、補助処理ユニットは基板移載機構25へと戻されて分解され、洗浄後のマスク部3は次回のブラックマトリクスの作製の際に利用される。
【0058】
以上に説明したように、K用の画像形成装置1では、液体トナー中にて、ブラックマトリクスに対応する電極パターン31に対向面91を対向させつつマスク部3に対して平行にガラス基板9が配置される。そして、マスク部3の基材30、電極パターン31およびガラス基板9のそれぞれに電位が付与されることにより、マスク部3の電極パターン31と対向面91との間にトナーが対向面91へと向かう電界が形成され、マスク部3の非電極領域301と対向面91との間にはトナーが非電極領域301へと向かう電界が形成される。これにより、画像形成装置1では、ガラス基板9上にマスク部3の電極パターン31に対応するトナー画像、すなわち、カラーフィルタのブラックマトリクスを容易に形成することができる。また、画像形成装置1では、トナーが不必要に消費されることがないため、トナーの消費量を抑制することが可能となる。
【0059】
次に、R、G、B用の各画像形成装置1がガラス基板9上にカラーフィルタのフィルタ層(の各色の部位)のトナー画像を形成する処理について説明するが、ここでは、まず、R、G、Bの各色用の画像形成装置1のK用の画像形成装置1との相違点について説明する。
【0060】
図8は、R(または、GもしくはB)用の画像形成装置1におけるガラス基板9上へのトナー画像形成時のトナー容器21aの内部を他の構成と共に示す図である。カラーのトナー画像の形成時における図8のトナー容器21aの近傍の構成は、図2のトナー容器21に比べて、ガラス基板9上のブラックマトリクス81に所定の電位(以下、「BM電位」という。)を付与するブラックマトリクス電位付与部54(以下、「BM電位付与部54」という。)が追加されるとともに、トナー容器21aにはR(または、GもしくはB)の液体トナーが貯溜され、さらに、図3のマスク部3とは異なる電極パターン32を有するマスク部3aが配置される点で相違する。BM電位付与部54は電圧源541を有し、導電性ゴム等にて形成される端子部542を介してブラックマトリクス81の当接部811(図7参照)に接続され、ブラックマトリクス81の全体にBM電位が均一に付与される。他の構成は図2の場合と同様であり、同符号を付している。
【0061】
図9はトナー容器21a内に配置されるマスク部3aの電極パターン32を示す図である。図9に示すように、電極パターン32は、基材30の一の主面上の外縁部を除く中央部の領域において、図9中の縦方向および横方向に所定のピッチにて配列された複数の矩形領域323の部位のみが除去されたパターンとなっており、全体が連続している。詳細には、導電性(または、半導電性)の材料が除去された各矩形領域323は、図3のマスク部3において周囲が電極パターン31により囲まれる矩形領域313とほぼ同じ大きさとされ、図9中の複数の矩形領域323の縦方向のピッチは図3中の複数の矩形領域313の同方向のピッチと同じとされ、複数の矩形領域323の横方向のピッチは、図3の複数の矩形領域313の同方向のピッチの3倍とされる。また、電極パターン32は、ガラス基板9上へのトナー画像の形成時においてパターン電位付与部52の端子部522が当接する当接部321、および、基材30上における四隅のそれぞれに形成されるアライメントパターン322も有する。さらに、基材30の主面上の電極パターン32が形成されていない非電極領域および電極パターン32は、トナー容器21a中のトナーとの離型性が非電極領域および電極パターン32よりも高い絶縁材料であるフッ素コートにて覆われている。
【0062】
次に、R、G、B用の各画像形成装置1がガラス基板9上にフィルタ層のトナー画像を形成する処理について図4に沿って説明する。以下の処理では図4中のステップS15aの工程も行われる。なお、K用の画像形成装置1以外の他の装置にて導電性または半導電性のブラックマトリクスが形成されたガラス基板9に対して以下の処理が行われてもよい。
【0063】
R用の画像形成装置1では、上記のブラックマトリクス作製時のトナー画像形成処理と同様に、基板移載機構25にブラックマトリクス81が形成されたガラス基板9が搬送されて、ガラス基板9が単体の電極板42にて吸引吸着により保持されるとともに、マスク部3aが電極パターン32とは反対側の面を単体の電極板41に当接させて同様に保持される。このとき、図7のガラス基板9上のアライメントパターン812を用いて電極板42上におけるガラス基板9の位置が調整され、図9のマスク部3aのアライメントパターン322を用いて電極板41上におけるマスク部3aの位置が調整される。続いて、ガラス基板9の対向面とマスク部3aの電極パターン32とが対向するように、2つの電極板41,42が2つのスペーサ43を介して組み合わされて処理ユニット11aが構成される(図8参照)。処理ユニット11aでは、ガラス基板9上の各アライメントパターン812とマスク部3aの対応するアライメントパターン322とが正確に対向する。そして、ユニット把持機構241により処理ユニット11aがトナー容器21a内の液体トナー中に浸漬される。これにより、トナー容器21a内の液体トナー中において、マスク部3aがその法線を水平方向に向けて配置されるとともに、ガラス基板9が対向面を電極パターン32に対向させつつマスク部3aに平行に配置され、図8に示す状態となる(ステップS11,S12)。
【0064】
マスク部3aおよびガラス基板9がトナー容器21内に配置されると、基材電位付与部51によりマスク部3aの基材30に基材電位が付与されるとともに(ステップS13)、パターン電位付与部52によりマスク部3aの電極パターン32にパターン電位が付与される(ステップS14)。また、基材電位およびパターン電位の付与に並行して、基板電位付与部53によりガラス基板9に基板電位が付与されるとともに(ステップS15)、BM電位付与部54によりガラス基板9上のブラックマトリクス81にBM電位が付与される(ステップS15a)。具体的には、R用の液体トナー中のトナーは正に帯電しており、基材電位は(+500)Vとされ、パターン電位は(−150)Vとされ、基板電位は接地電位(0V)とされ、BM電位は(+550)Vとされる。これにより、マスク部3aとガラス基板9との間の幅300μmの間隙(液体トナーが満たされる間隙)には電界が形成される。
【0065】
図10は、マスク部3aとガラス基板9との間に形成される電界の向きを説明するための図である。基材電位付与部51、パターン電位付与部52、基板電位付与部53およびBM電位付与部54により電位が付与されると、マスク部3aからガラス基板9へと向かう方向(図10中にて符号A4を付す矢印にて示す方向)を正として、マスク部3aの電極パターン32とガラス基板9の対向面91(ただし、ブラックマトリクス81の領域を除く。)との間の電界強度Ecは(−0.5)V/μmとなり((Ec=(−150−0)/300)にて求められる。)、マスク部3aの電極パターン32とガラス基板9のブラックマトリクス81との間の電界強度Edは(−2.3)V/μmとなり((Ed=(−150−550)/300)にて求められる。)、マスク部3aの非電極領域301とガラス基板9の対向面91との間の電界強度Eeは(+1.7)V/μmとなる((Ee=(500−0)/300)にて求められる。)。
【0066】
このように、電極パターン32とガラス基板9の対向面91(ただし、ブラックマトリクス81の領域を除く。)との間には、図10中に符号73を付す矢印にて示すようにトナーが対向面91側から電極パターン32へと向かう電界が形成され、電極パターン32とブラックマトリクス81との間には、図10中に符号74を付す矢印にて示すようにトナーがブラックマトリクス81側から電極パターン32へと向かう電界が形成され、非電極領域301とガラス基板9の対向面91との間には、図10中に符号75を付す矢印にて示すようにトナーが非電極領域301側から対向面91へと向かう電界が形成される。したがって、ガラス基板9の対向面91上の非電極領域301に正確に対向する領域には、Rのトナーが付着する。なお、マスク部3aの電極パターン32上にもトナーが付着する。
【0067】
そして、ガラス基板9の対向面91上において単位面積当たりに蓄積されるトナーの粒子の総電荷量が、ガラス基板9の単位面積当たりのキャパシタンス(静電容量)と、ガラス基板9の対向面91と反対側の主面との電位差とを乗じた値に等しくなると、トナーの付着が停止することにより、ガラス基板9の対向面91の全体ではほぼ均一の厚さのRの色のトナー層が形成され、現像されたトナー画像の濃度が均一となる。
【0068】
トナーの付着が停止すると、ブラックマトリクスを示すトナー画像の形成時と同様に、基材電位付与部51、パターン電位付与部52、基板電位付与部53およびBM電位付与部54による基材電位、パターン電位、基板電位およびBM電位の付与を継続した状態で処理ユニット11aがトナー容器21から取り出される。続いて、処理ユニット11aが洗浄容器22の上方へと移動して、その後下降し、洗浄容器22内の溶媒中に浸漬され、ガラス基板9上の不要なトナーが除去される(ステップS16)。
【0069】
ガラス基板9上の不要なトナーの除去が終了すると、基材電位、パターン電位、基板電位およびBM電位の付与を継続した状態で処理ユニット11aが上昇して洗浄容器22から取り出される。続いて、処理ユニット11aが基板移載機構25に受け渡されて、マスク部3aとガラス基板9との間に液体が存在しない状態で、基材電位、パターン電位、基板電位およびBM電位の付与が停止され、処理ユニット11aが分解される。そして、ガラス基板9のみが定着器23へと搬送されて、ガラス基板9上のトナーが定着される(ステップS17)。これにより、図7に示すガラス基板9の対向面91上においてブラックマトリクス81にて囲まれる複数の矩形領域の一部にRの色の複数の画素要素が形成されることとなる。また、ガラス基板9上のトナーの定着処理に並行して、洗浄容器22にてマスク部3a上のトナーが除去される(ステップS18)。
【0070】
続いて、Rの色の複数の画素要素が形成されたガラス基板9に対して、G用の画像形成装置1において図11.Aに示すマスク部3bを用いて上記ステップS11〜S18が繰り返され、その後、B用の画像形成装置1において図11.Bに示すマスク部3cを用いて上記ステップS11〜S18が繰り返される。これにより、図12に示すように、ガラス基板9の対向面91上においてRの色の複数の画素要素82R、Gの色の複数の画素要素82G、Bの色の複数の画素要素82Bが形成され、これらの画素要素82R,82G,82Bの集合がフィルタ層82とされてカラーフィルタ8が完成する。カラーフィルタ8では、図12中の横方向に並ぶ1つの画素要素82R、1つの画素要素82Gおよび1つの画素要素82Bの集合が1つの画素とされ、複数の画素が二次元に配列される。また、カラーフィルタ8が液晶表示装置に用いられる際には、他の装置によりフィルタ層82およびブラックマトリクス81を全体的に覆う透明の絶縁膜(いわゆる、オーバーコート)が形成され、絶縁膜上に透明導電層(例えば、ITO)のパターンが別途形成される。
【0071】
以上に説明したように、R、G、B用の画像形成装置1では、カラーの液体トナー中にて、フィルタ層の各色の部位に対応する電極パターン32と対向面91とを対向させつつマスク部3a〜3cとガラス基板9とが互いに平行に配置される。そして、マスク部3a〜3cの基材30、電極パターン32およびガラス基板9のそれぞれに電位が付与されることにより、マスク部3a〜3cの電極パターン32と対向面91との間にトナーが電極パターン32へと向かう電界が形成され、マスク部3a〜3cの非電極領域301と対向面91との間にはトナーが対向面91へと向かう電界が形成される。これにより、画像形成装置1では、ガラス基板9上にマスク部3a〜3cの電極パターン32に対応するトナー画像、すなわち、カラーフィルタのフィルタ層(の各色の部位)を容易に形成することができる。
【0072】
R、G、B用の画像形成装置1では、トナー画像の形成時にガラス基板9の対向面91上に形成されているブラックマトリクス81にBM電位が付与されることにより、ブラックマトリクス81とマスク部3a〜3cとの間において液体トナー中のトナーがマスク部3a〜3cへと向かう電界が形成される。これにより、ブラックマトリクス81上にトナーが付着することが防止され、ブラックマトリクスを有する高精度なカラーフィルタを製造することが実現される。
【0073】
さらに、マスク部3,3aでは、非電極領域301および電極パターン31,32が、トナーとの離型性が非電極領域301および電極パターン31,32よりも高いフッ素コート39にて覆われていることにより、図4のステップS18におけるマスク部3,3aの洗浄時においてマスク部3,3aに付着したトナーの除去を容易に行うことができる。
【0074】
また、R、G、B用の画像形成装置1では、図13に示すマスク部3dを用いて、フィルタ層の複数の画素要素に対応するトナー画像が形成されてもよい。図13のマスク部3dの電極パターン33では、導電性または半導電性の材料にて形成される複数の矩形電極333が、図13中の縦方向および横方向に図9の複数の矩形領域323と同様のピッチにて基材30上に配列され、各矩形電極333は図3のマスク部3における矩形領域313とほぼ同じ大きさとされる。また、電極パターン33では、縦方向に関して互いに隣接する2つの矩形電極333は微小電極334を介して接続し、図13中の上段にて横方向に並ぶ複数の矩形電極(図13中にて符号333aを付す矩形電極)は連結部335を介して互いに接続し、連結部335には矩形状の領域の当接部331が設けられる。このように、マスク部3d上の電極パターン33は全体が連続したパターンとされ、マスク部3dにおいても電極パターン33側の表面がフッ素コートにて覆われている。なお、マスク部3dでは、アライメントパターン332は、処理ユニットを構成する際のマスク部3dとガラス基板9との相対的な位置合わせに利用されるのみであり、ガラス基板9上には印刷されない。
【0075】
図13のマスク部3dを用いてトナー画像を形成する際に、カラーの液体トナー中のトナーが正に帯電している場合には、例えば、基材電位付与部51による基材電位は(−150)Vとされ、パターン電位付与部52によるパターン電位は(+500)Vとされ、基板電位付与部53による基板電位は接地電位(0V)とされ、BM電位付与部54によるBM電位は(+550)Vとされる。
【0076】
図14は、マスク部3dとガラス基板9との間に形成される電界の向きを説明するための図である。上記のように電位が付与されると、マスク部3dからガラス基板9へと向かう方向(図14中にて符号A5を付す矢印にて示す方向)を正として、マスク部3dの電極パターン33とガラス基板9の対向面91との間の電界強度Efは(+1.7)V/μmとなり((Ef=(500−0)/300)にて求められる。)、マスク部3dの非電極領域301とガラス基板9のブラックマトリクス81との間の電界強度Egは(−2.3)V/μmとなり((Eg=(−150−550)/300)にて求められる。)、マスク部3dの非電極領域301とガラス基板9の対向面91(ただし、ブラックマトリクス81の領域を除く。)との間の電界強度Ehは(−0.5)V/μmとなる((Eh=(−150−0)/300)にて求められる。)。
【0077】
このように、電極パターン33とガラス基板9の対向面91との間には、図14中に符号76を付す矢印にて示すようにトナーが電極パターン33側から対向面91へと向かう電界が形成され、非電極領域301とブラックマトリクス81との間には、図14中に符号77を付す矢印にて示すようにトナーがブラックマトリクス81側から非電極領域301へと向かう電界が形成され、非電極領域301とガラス基板9の対向面91(ただし、ブラックマトリクス81の領域を除く。)との間には、図14中に符号78を付す矢印にて示すようにトナーが対向面91側から非電極領域301へと向かう電界が形成される。実際には、図13の電極パターン33の微小電極334の部位はガラス基板9上のブラックマトリクス81と対向し、微小電極334とブラックマトリクス81との間の電界強度Eiは(−0.2)V/μmとなる((Ei=(500−550)/300)にて求められる。)ため、トナーがブラックマトリクス81側から微小電極334へと向かう電界が形成される。したがって、電極パターン33に正確に対向するガラス基板9上の領域であって、ブラックマトリクス81が存在しない領域のみに、カラーのトナーが付着することとなる。これにより、ブラックマトリクス81上にトナーが付着することが防止しつつ、ブラックマトリクスを有する高精度なカラーフィルタを製造することが実現される。
【0078】
ところで、図5、図10および図14の例では、ガラス基板9の対向面91上のトナーが付着する領域以外の領域において、トナーがガラス基板9側からマスク部3,3a,3dへと向かう電界が形成され、ガラス基板9上の当該領域にトナーが付着することが防止されるが、当該領域とマスク部3,3a,3dとの間において、電位差を0とすることにより電界の大きさが0とされてトナーが付着することが防止されてもよい。この場合、マスク部3,3a,3dへのトナーの付着も防止され、液体トナーの使用量をより低減することが可能となる。
【0079】
以上のように、画像形成装置1では、i)液体トナーのトナーの極性が正であり、かつ、マスク部の電極パターンに対向するガラス基板の対向面上の領域にトナーを付着させる場合に(基材電位≦基板電位<パターン電位)の関係が満たされ、ii)液体トナーのトナーの極性が正であり、かつ、マスク部の非電極領域に対向するガラス基板の対向面上の領域にトナーを付着させる場合に(パターン電位≦基板電位<基材電位)の関係が満たされ、iii)液体トナーのトナーの極性が負であり、かつ、マスク部の電極パターンに対向するガラス基板の対向面上の領域にトナーを付着させる場合に(パターン電位<基板電位≦基材電位)の関係が満たされ、iv)液体トナーのトナーの極性が負であり、かつ、マスク部の非電極領域に対向するガラス基板の対向面上の領域にトナーを付着させる場合に(基材電位<基板電位≦パターン電位)の関係が満たされることが重要となる。これにより、i)およびiii)の場合に、マスク部の電極パターンとガラス基板の対向面との間においてトナーが対向面へと向かう電界が形成され、マスク部上の非電極領域と対向面との間においてトナーが非電極領域へと向かう電界が形成され、もしくは、電界の大きさが0とされ、ii)およびiv)の場合に、マスク部上の非電極領域とガラス基板の対向面との間においてトナーが対向面へと向かう電界が形成され、マスク部の電極パターンと対向面との間においてトナーが電極パターンへと向かう電界が形成され、もしくは、電界の大きさが0とされることとなる。その結果、ガラス基板上にマスク部の電極パターンに対応するトナー画像を容易に形成することができる。
【0080】
また、ガラス基板の対向面上に導電性または半導電性のブラックマトリクスが形成されており、ブラックマトリクスにカラートナーが付着することを防止しつつ、ガラス基板上にトナー画像を形成する際には、上記i)の場合に(基材電位≦基板電位<パターン電位≦BM電位)が満たされ、ii)の場合に(パターン電位≦基板電位<基材電位≦BM電位)が満たされ、iii)の場合に(BM電位≦パターン電位<基板電位≦基材電位)が満たされ、iv)の場合に(BM電位≦基材電位<基板電位≦パターン電位)が満たされる。これにより、ブラックマトリクスとマスク部との間においてトナーがマスク部へと向かう電界が形成され、または、電界の大きさが0とされ、その結果、ブラックマトリクスを有する高精度なカラーフィルタを製造することが可能となる。
【0081】
次に、画像形成装置の他の例について説明を行う。図15は他の例に係る画像形成装置におけるガラス基板9a上へのトナー画像の形成時のトナー容器21の内部を他の構成と共に示す図である。図15のトナー容器21内に配置されるガラス基板9aは、マスク部3に対向する面上に導電性または半導電性の透明な補助膜92(例えば、ITO膜)を形成したものとされ、基板電位付与部53により補助膜92に基板電位が付与される。他の構成は、図2の場合と同様であり、同符号を付している。
【0082】
図15に示すトナー容器21内にてガラス基板9a上にトナー画像が形成される際において、既述の処理例と同様に、マスク部3の電極パターン31に対向するガラス基板9aの対向面(すなわち、補助膜92のマスク部3に対向する表面)上の領域にトナーを付着させる場合には、マスク部3の電極パターン31とガラス基板9aの対向面との間においてトナーが対向面へと向かう電界が形成され、マスク部3上の非電極領域と対向面との間においてトナーが非電極領域へと向かう電界が形成され、もしくは、電界の大きさが0とされ、マスク部3の非電極領域に対向するガラス基板9aの対向面上の領域にトナーを付着させる場合には、マスク部3上の非電極領域とガラス基板9aの対向面との間においてトナーが対向面へと向かう電界が形成され、マスク部3の電極パターン31と対向面との間においてトナーが電極パターン31へと向かう電界が形成され、もしくは、電界の大きさが0とされる。このとき、図15の画像形成装置では、液体トナーのトナーの極性に対して基板電位の極性が逆極性とされる。
【0083】
ここで、図2および図8の画像形成装置1のように、ガラス基板9のマスク部3とは反対側の主面を電極板42に当接させてガラス基板9に基板電位を付与する場合には、正確には、ガラス基板9の対向面上の電位とパターン電位(または、基材電位)との差は、基板電位とパターン電位との差よりも僅かに小さくなってしまう。これに対し、図15の画像形成装置では、ガラス基板9aの対向面となる補助膜92に基板電位が直接付与されることにより、基板電位をトナー画像の形成に効率よく利用して、ガラス基板9a上にマスク部3の電極パターン31に対応するトナー画像を容易に形成することができる。また、図15の画像形成装置では、トナー画像形成時における基板電位がトナーの極性の逆極性とされるため、トナー容器21から洗浄容器22に処理ユニット11bを移動する際等、形成後のトナー画像をガラス基板9a上に安定して保持させることが可能となる。なお、図2および図8の画像形成装置1においても同様に、トナー容器21,21a中のトナーの極性に対して基板電位が逆極性とされてもよい。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0085】
基材電位付与部51、パターン電位付与部52、基板電位付与部53およびBM電位付与部54のそれぞれにおいて、付与する電位が接地電位とされる場合には、電圧源511,521,531,541は省略されてもよい。
【0086】
上記実施の形態では、電極板42により液体トナー中にてガラス基板がマスク部に対して平行に保持されるが、ガラス基板を保持する保持部は電極板42における吸引吸着以外に、例えば、機械的なチャック機構によりガラス基板を保持するものであってもよい。
【0087】
マスク部3,3a〜3dでは、電極パターンおよび非電極領域の全体を覆うフッ素コート39が設けられるが、マスク部3,3a〜3dに付着したトナーの除去を容易に行うという観点では、マスク部3,3a〜3dの電極パターンおよび非電極領域のうちトナー画像の形成時にトナーが近づく電界が形成される領域が、トナーとの離型性が当該領域よりも高い絶縁材料にて覆われておればよい。
【0088】
上記実施の形態では、トナー容器21,21a内にて処理が行われた処理ユニット11,11a,11bがそのままの状態で洗浄容器22に搬送される、すなわち、処理ユニット11,11a,11bを分解することなく、基材電位、パターン電位および基板電位(並びにBM電位)のそれぞれの値を変更することなく、さらに、トナー画像をガラス基板上に定着することなく処理ユニット11,11a,11bが洗浄容器22に搬送されることにより、トナー画像の形成後のガラス基板の洗浄が行われるが、マスク部の電極パターンおよび非電極領域のそれぞれとガラス基板の対向面との間において電界の向き(または、電界の大きさが0とされること)が維持されるのであれば、洗浄容器22内における基材電位、パターン電位および基板電位のそれぞれの値は変更されてもよい。すなわち、洗浄容器22内にてトナー画像が形成された後のガラス基板上の不要なトナーを除去するという観点では、トナー容器21,21a内にてガラス基板上にトナー画像が形成された直後に(すなわち、ガラス基板上のトナー画像が定着される前に)、トナー容器21,21a内におけるガラス基板およびマスク部の相対的な位置関係、並びに、基材電位、パターン電位、基板電位の大小関係を維持しつつ、ガラス基板およびマスク部が洗浄容器22内の溶媒中に浸漬されることが重要となる。
【0089】
また、定着器23におけるガラス基板9,9a上のトナー画像の定着は、複数のランプ231による加熱以外の他の手法にて行われてもよい。
【0090】
画像形成装置では、トナー画像をガラス基板9上に容易に形成してカラーフィルタを製造することが実現されるが、フィルム状の絶縁性を有する透明部材上にトナー画像が形成されてカラーフィルタが製造されてもよい。また、画像形成装置はカラーフィルタの製造以外の用途に用いられてもよく、画像形成装置においてトナー画像が形成される対象物は、透明部材以外に半導体基板やプリント配線基板等の他の板状の部材や、フィルム状の部材であってもよく、さらに、絶縁性を有するもの以外に、導電性または半導電性を有するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】ブラックマトリクスのトナー画像の形成時のトナー容器の内部を示す図である。
【図3】ブラックマトリクス形成用のマスク部の電極パターンを示す図である。
【図4】ガラス基板上にトナー画像を形成する処理の流れを示す図である。
【図5】マスク部とガラス基板との間に形成される電界の向きを説明するための図である。
【図6】ガラス基板の洗浄時の洗浄容器の内部を示す図である。
【図7】ガラス基板上に形成されたブラックマトリクスを示す図である。
【図8】フィルタ層のトナー画像の形成時のトナー容器の内部を示す図である。
【図9】フィルタ層形成用のマスク部の電極パターンを示す図である。
【図10】マスク部とガラス基板との間に形成される電界の向きを説明するための図である。
【図11.A】フィルタ層形成用の他のマスク部の電極パターンを示す図である。
【図11.B】フィルタ層形成用のさらに他のマスク部の電極パターンを示す図である。
【図12】カラーフィルタを示す図である。
【図13】マスク部の電極パターンの他の例を示す図である。
【図14】マスク部とガラス基板との間に形成される電界の向きを説明するための図である。
【図15】画像形成装置の他の例におけるトナー画像の形成時のトナー容器の内部を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 画像形成装置
3,3a〜3d マスク部
8 カラーフィルタ
9,9a ガラス基板
21,21a トナー容器
22 洗浄容器
23 定着器
30 基材
31〜33 電極パターン
39 フッ素コート
42 電極板
51 基材電位付与部
52 パターン電位付与部
53 基板電位付与部
54 ブラックマトリクス電位付与部
81 ブラックマトリクス
82 フィルタ層
91 対向面
92 補助膜
301 非電極領域
522 端子部
S11〜S17,S15a ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状またはフィルム状の対象物上にトナー画像を形成する画像形成装置であって、
溶媒中にトナーが分散された液体トナーが貯溜されるトナー容器と、
前記液体トナー中に配置されるとともに、板状の絶縁性の基材の一の主面上に導電性または半導電性の材料にて所定の電極パターンが形成されたマスク部と、
前記液体トナー中にて対象物の一の主面である対向面を前記マスク部の前記電極パターンに対向させつつ前記対象物を前記マスク部に対して平行に保持する保持部と、
前記マスク部の前記基材に第1電位を付与する基材電位付与部と、
前記マスク部の前記電極パターンに第2電位を付与するパターン電位付与部と、
前記対象物に第3電位を付与する対象物電位付与部と、
を備え、
前記第1電位、前記第2電位および前記第3電位により、前記マスク部上の非電極領域と前記対象物の前記対向面との間において前記トナーが前記対向面へと向かう電界が形成され、前記マスク部の前記電極パターンと前記対向面との間において前記トナーが前記電極パターンへと向かう電界が形成される、もしくは、電界の大きさが0とされる、または、前記第1電位、前記第2電位および前記第3電位により、前記マスク部の前記電極パターンと前記対象物の前記対向面との間において前記トナーが前記対向面へと向かう電界が形成され、前記マスク部上の前記非電極領域と前記対向面との間において前記トナーが前記非電極領域へと向かう電界が形成される、もしくは、電界の大きさが0とされることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記第3電位の極性に対して前記トナーの極性が逆極性であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置であって、
前記対象物が絶縁性を有する透明部材であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置であって、
前記対象物上に形成されるトナー画像がカラーフィルタのブラックマトリクスであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像形成装置であって、
前記対象物上に形成されるトナー画像がカラーフィルタのフィルタ層であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置であって、
前記対象物の前記対向面上に形成されている導電性または半導電性のブラックマトリクスに第4電位を付与することにより、前記ブラックマトリクスと前記マスク部との間において前記トナーが前記マスク部へと向かう電界を形成する、または、電界の大きさを0とするブラックマトリクス電位付与部をさらに備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の画像形成装置であって、
前記対象物が、絶縁性を有する透明部材の前記マスク部に対向する面上に導電性または半導電性かつ透明な補助膜を形成したものであり、
前記対象物電位付与部が、前記補助膜に前記第3電位を付与することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成装置であって、
前記マスク部の前記非電極領域および前記電極パターンのうちトナー画像の形成時に前記トナーが近づく電界が形成される領域が、前記トナーとの離型性が当該領域よりも高い絶縁材料にて覆われていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成装置であって、
前記マスク部の前記電極パターンの全体が連続しており、
前記パターン電位付与部が、端子を前記電極パターンの一部に接触させて前記電極パターンに前記第2電位を付与することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の画像形成装置であって、
対象物上に形成されるトナー画像を前記対象物に定着させる定着器をさらに備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の画像形成装置であって、
溶媒を貯溜する洗浄容器をさらに備え、
前記トナー容器内にて前記対象物上にトナー画像が形成された直後に、前記トナー容器内における前記対象物および前記マスク部の相対的な位置関係、並びに、前記第1電位、前記第2電位および前記第3電位の大小関係を維持しつつ、前記対象物および前記マスク部が前記洗浄容器内の前記溶媒中に浸漬されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
板状またはフィルム状の対象物上にトナー画像を形成する画像形成方法であって、
a)溶媒中にトナーが分散された液体トナーが貯溜されるトナー容器内の前記液体トナー中に、板状の絶縁性の基材の一の主面上に導電性または半導電性の材料にて所定の電極パターンが形成されたマスク部を配置する工程と、
b)前記液体トナー中にて対象物の一の主面である対向面を前記マスク部の前記電極パターンに対向させつつ前記対象物を前記マスク部に対して平行に配置する工程と、
c)前記マスク部の前記基材に第1電位を付与する工程と、
d)前記c)工程に並行して、前記マスク部の前記電極パターンに第2電位を付与する工程と、
e)前記d)工程に並行して、前記対象物に第3電位を付与する工程と、
を備え、
前記第1電位、前記第2電位および前記第3電位により、前記マスク部上の非電極領域と前記対象物の前記対向面との間において前記トナーが前記対向面へと向かう電界が形成され、前記マスク部の前記電極パターンと前記対向面との間において前記トナーが前記電極パターンへと向かう電界が形成される、もしくは、電界の大きさが0とされる、または、前記第1電位、前記第2電位および前記第3電位により、前記マスク部の前記電極パターンと前記対象物の前記対向面との間において前記トナーが前記対向面へと向かう電界が形成され、前記マスク部上の前記非電極領域と前記対向面との間において前記トナーが前記非電極領域へと向かう電界が形成される、もしくは、電界の大きさが0とされることを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
請求項12に記載の画像形成方法であって、
前記第3電位の極性に対して前記トナーの極性が逆極性であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の画像形成方法であって、
前記対象物が絶縁性を有する透明部材であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項15】
請求項14に記載の画像形成方法であって、
前記対象物上に形成されるトナー画像がカラーフィルタのブラックマトリクスであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項16】
請求項14に記載の画像形成方法であって、
前記対象物上に形成されるトナー画像がカラーフィルタのフィルタ層であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項17】
請求項16に記載の画像形成方法であって、
前記e)工程に並行して、前記対象物の前記対向面上に形成されている導電性または半導電性のブラックマトリクスに第4電位を付与することにより、前記ブラックマトリクスと前記マスク部との間において前記トナーが前記マスク部へと向かう電界を形成する、または、電界の大きさを0とする工程をさらに備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項18】
請求項12または13に記載の画像形成方法であって、
前記対象物が、絶縁性を有する透明部材の前記マスク部に対向する面上に導電性または半導電性かつ透明な補助膜を形成したものであり、
前記e)工程において、前記補助膜に前記第3電位が付与されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項19】
請求項12ないし18のいずれかに記載の画像形成方法であって、
前記マスク部の前記非電極領域および前記電極パターンのうちトナー画像の形成時に前記トナーが近づく電界が形成される領域が、前記トナーとの離型性が当該領域よりも高い絶縁材料にて覆われていることを特徴とする画像形成方法。
【請求項20】
請求項12ないし19のいずれかに記載の画像形成方法であって、
前記マスク部の前記電極パターンの全体が連続しており、
前記d)工程において、パターン電位付与部の端子を前記電極パターンの一部に接触させて前記電極パターンに前記第2電位が付与されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項21】
請求項12ないし20のいずれかに記載の画像形成方法であって、
前記e)工程の後に、前記対象物上に形成されるトナー画像を前記対象物に定着させる工程をさらに備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項22】
請求項12ないし20のいずれかに記載の画像形成方法であって、
前記e)工程の後に、前記トナー容器内における前記対象物および前記マスク部の相対的な位置関係、並びに、前記第1電位、前記第2電位および前記第3電位の大小関係を維持しつつ、前記対象物および前記マスク部を溶媒を貯溜する洗浄容器内の前記溶媒中に浸漬して前記対象物を洗浄する工程をさらに備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項23】
請求項22に記載の画像形成方法であって、
洗浄後の前記対象物上のトナー画像を前記対象物に定着させる工程をさらに備えることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11.A】
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【図11.B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−102053(P2007−102053A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294401(P2005−294401)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】