説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】中間転写体の損傷を防ぎ、フィルミングの発生を抑制する画像形成装置および画像形成方法を実現する。
【解決手段】静電潜像担持体15上に形成されたトナー像が転写される中間転写体18を備えた画像形成装置1であって、前記トナー像を形成するトナーの極性とは逆極性の微粒子を中間転写体18に供給する供給機構19を有することを特徴とする画像形成装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンターに代表される電子写真法による画像形成装置を用いた画像形成方法の一つとして、静電潜像担持体(感光体ドラム)上に形成されたトナー像を中間転写体に一旦転写した後(1次転写)、紙上などにトナー像を転写する(2次転写)方法が知られている。この方法は、複数の現像装置を備えたロータリー現像装置や、タンデム現像装置など、特にフルカラー印刷を行う場合に用いられる場合が多い。
【0003】
中間転写体の形状としては、ベルト状やロール状などがあるが、そのほとんどが樹脂や弾性体など、柔らかい材質からなるベルト状のものである。ベルト状の中間転写体が柔らかい材質でできているため、静電潜像担持体や紙などへの密着性に優れ、高い転写性が得られる。
【0004】
しかし、柔らかい材質でできた中間転写体は、トナーによって損傷しやすかった。特にフルカラー印刷を行う場合は、必然的に中間転写体上に残留するトナーの量が多くなるため、中間転写体がより損傷しやすかった。また、中間転写体上に残留したトナーが溶融して、中間転写体の表面にトナーがフィルム状に付着するフィルミングが発生することもあった。
さらに、硬度が高く比重が大きい磁性粉が含まれている磁性トナーを用いる場合は、中間転写体の損傷が顕著であった。
このように、中間転写体が損傷したり、フィルミングが発生したりすると、中間転写体のクリーニング不良や転写不良が起こりやすくなる。
【0005】
そこで、中間転写体を損傷しにくくし、耐久性を向上させ、フィルミングの発生を抑制した画像形成装置として、JIS−A硬度を20°〜70°に規定し、表面硬度を40°〜80°に規定した中間転写体を備えた画像形成装置(例えば、特許文献1参照。)、中間転写体の表面層が、高潤滑性物質を20〜80質量%含有したものを備えた画像形成装置(例えば、特許文献2参照。)、水の接触角を60°以上に規定し、かつすべり抵抗を200g以下に規定した中間転写体を備えた画像形成装置(例えば、特許文献3参照。)などが知られている。
【0006】
また、中間転写体上に残留するトナーを掻き取る(中間転写体をクリーニングする)クリーニング装置を具備する画像形成装置として、クリーニング装置がクリーニングブレードを備えたもの(例えば、特許文献4参照。)や、ブラシローラを備えたもの(例えば、特許文献5参照。)が知られている。
さらに、中間転写体の表面エネルギーを低減させ、フィルミングの発生を抑制する目的で、中間転写体の表面にステアリン酸亜鉛を主成分とする潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置を備えた画像形成装置が知られている(例えば、特許文献6参照。)。
【特許文献1】特開平11−84890号公報
【特許文献2】特開平10−274887号公報
【特許文献3】特許第3870136号公報
【特許文献4】特開平9−62110号公報
【特許文献5】特開2005−91548号公報
【特許文献6】特開平9−146433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に記載のように中間転写体を損傷しにくくしたり、特許文献4、5に記載のように中間転写体上のトナーを掻き取るクリーニング装置を設けたり、特許文献6に記載のように中間転写体の表面に潤滑剤を塗布したりしても、中間転写体の損傷を低減したり、フィルミングの発生を抑制したりすることは、必ずしも十分ではなかった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、中間転写体の損傷を防ぎ、フィルミングの発生を抑制する画像形成装置および画像形成方法の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討した結果、中間転写体をクリーニングする際に、トナーの極性とは逆極性の微粒子を中間転写体に供給させることを見出した。中間転写体に供給される微粒子は、トナーとは逆極性であるため中間転写体上により残留しやすい。その結果、中間転写体の表面が微粒子で保護されるので、トナーが中間転写体上に直接接触しにくくなり、結果、中間転写体の損傷を防ぎ、フィルミングの発生を抑制することとなる。
【0010】
すなわち、本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体上に形成されたトナー像が転写される中間転写体を備えた画像形成装置であって、前記トナー像を形成するトナーの極性とは逆極性の微粒子を中間転写体に供給する供給機構を有することを特徴とする。
ここで、前記中間転写体をクリーニングブラシでクリーニングするクリーニング手段を備え、前記クリーニングブラシは、前記供給機構を兼ね備えていることが好ましい。
【0011】
さらに、前記トナーを収容する現像装置を備え、前記現像装置に収容されたトナーには、該トナーの極性と同極性の外添剤および逆極性の微粒子が添加され、該微粒子の添加量がトナー100質量部に対して0.1〜0.8質量部であれば、中間転写体の損傷やフィルミングの発生を抑制する点で好適である。
また、本発明の画像形成装置は、前記トナーが磁性トナーであっても、中間転写体の損傷を防ぎ、フィルミングの発生を抑制できる。
さらに、前記トナーは、円形度が0.94以上であり、かつ、粒子径が2μm以下の微粉粒子の含有割合が10個数%以下であれば、中間転写体の損傷やフィルミングの発生を抑制する点で好適である。
【0012】
また、本発明の画像形成方法は、現像装置に収容されたトナーを、静電潜像担持体上に付着させてトナー像を形成させ、該トナー像を中間転写体に転写する画像形成方法であって、トナーの極性とは逆極性の微粒子を中間転写体に供給することを特徴とする。
さらに、前記トナーには、トナーの極性と同極性の外添剤および逆極性の微粒子が添加され、該微粒子の添加量がトナー100質量部に対して0.1〜0.8質量部であれば、中間転写体の損傷やフィルミングの発生を抑制する点で好適である。
また、非画像形成時に、前記現像装置からトナーを強制排出し、前記中間転写体に転写させ、トナーを回収して中間転写体をクリーニングすれば、より効果的に中間転写体の損傷を防ぎ、フィルミングの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、中間転写体の損傷を防ぎ、フィルミングの発生を抑制する画像形成装置および画像形成方法を実現できる。
また、本発明によれば、トナーが磁性トナーであっても、中間転写体の損傷を防ぎ、フィルミングの発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
[画像形成装置]
図1は、本発明の一実施形態例である画像形成装置の概略図である。この例の画像形成装置1は、現像容器11と、現像ローラ12と、該現像ローラ12にトナーを供給するトナー供給ローラ13とを有する現像装置10を複数備えたロータリー現像方式である。また、画像形成装置1は、トナーを現像容器11に補給する補給ノズル14、ドラム状の静電潜像担持体15、帯電部材16などを具備しており、静電潜像担持体15は現像ローラ12と対向するように配置されている。
各現像装置10には、支持体(図示略)がクラッチを介して接続されており、支持体が回転して、現像ローラ12を順次静電潜像担持体15に対向した現像位置とさせて、静電潜像担持体15上の静電潜像を現像して、静電潜像担持体15上にトナー像を形成させる。
【0015】
静電潜像担持体15の周囲には、静電潜像担持体15用のクリーニング装置17が、また静電潜像担持体15に当接してベルト状の中間転写体18が配置されており、中間転写体18は回転駆動される。さらに、中間転写体18の周囲には、トナーの極性とは逆極性の微粒子(以下、「微粒子」という。)を中間転写体18に供給する供給機構19が配置されている。
【0016】
また、画像形成装置1は、中間転写体18をクリーニングするクリーニング手段20を備えている。クリーニング手段20としては、中間転写体18をクリーニングできるものであれば特に制限されないが、クリーニングブラシが好ましい。また、該クリーニングブラシは、供給機構19を兼ね備えていることが好ましい。クリーニングブラシに供給機構19が兼ね備わっていれば、中間転写体18に残留するトナーをクリーニングブラシで掻き取りながら(中間転写体18をクリーニングしながら)、クリーニングブラシに担持させた微粒子を中間転写体18に供給できる。
このようなクリーニングブラシとしては、トナーなどの粉体を掻き取れるものであれば、特に制限されない。また、クリーニングブラシに供給機構19を兼ね備える方法としては、トレイなどの容器に微粒子を収容し、そこにクリーニングブラシを浸せばよく、該方法によれば容易にクリーニングブラシに供給機構19を兼ね備えることができる。
掻き取られたトナーは、クリーニング手段20に備わる回収トレイ(図示略)に回収される。
【0017】
本発明においては、供給機構19とクリーニング手段20は独立して設けてもよい。このような場合、供給機構19としては、微粒子を供給できるものであれば特に制限されない。また、クリーニング手段20としては、中間転写体18をクリーニングできるものであれば特に制限されず、ブラシ状や、ブレード状の部材を用いることができるが、ブラシ状の部材であれば中間転写体18はより損傷されにくい。
ただし、コスト面や設置の簡便性を考慮すると、上述したようにクリーニングブラシを用いて中間転写体18をクリーニングしつつ微粒子を供給するのが好ましい。
【0018】
なお、本発明はロータリー現像装置に制限されず、画像形成装置としてタンデム現像装置やモノクロ用の現像装置など、多様な現像装置に適用できる。
また、中間転写体としてはベルト状に制限されず、ロール状のものなど、様々な形状のものに本発明は適用できる。
【0019】
[画像形成方法]
上述した画像形成装置1を用いて、本発明の画像形成方法を以下に説明する。
まず、帯電部材16によって接触帯電方式で静電潜像担持体15の表面を帯電させる(帯電工程)。ついで、静電潜像担持体15の表面を露光して静電潜像を形成する(潜像形成工程)。ついで、現像装置10によって静電潜像にトナーを付着させて静電潜像をトナー像として現像する(現像工程)。ついで、トナー像を中間転写体18上に転写する(1次転写工程)。給紙カセット21から給紙経路22を介して記録用紙(以下単に用紙と呼ぶ)を2次転写位置Aに搬送し、2次転写位置Aにて中間転写体18上のトナー像を用紙に転写する(2次転写工程)。その後、用紙を定着装置23に搬送して、ここで用紙上のトナー像を定着し、排紙経路24を通って排紙トレイ(図示略)に用紙を排紙する。
【0020】
静電潜像担持体15上に残留するトナーは、クリーニング装置17にて除去・回収される。
一方、中間転写体18上に残留するトナーは、クリーニング手段20にて掻き取られ、回収トレイに回収される。また、供給機構19により、微粒子が中間転写体18に供給される。微粒子としては、後述するトナーの極性と逆極性のものであれば特に制限されないが、シリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機酸化物、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸などが挙げられる。中でもコストが低く、粒径が小さく種類が豊富であり、また、比重が軽く形状が球形なので、中間転写体を傷つけないといった観点からシリカが好ましい。なお、このような微粒子の極性は、シランカップリング剤などの有機物やシリコーンオイル等で微粒子の表面をコーティングすることで、トナーの極性とは逆のものにできる。中間転写体18に供給される微粒子がトナーの極性とは逆極性であれば、2次転写位置Aにてトナー像のようには転写されにくく、トナーに比べて中間転写体18上に残留しやすい。
【0021】
微粒子が中間転写体18に供給されることで、中間転写体18の表面が微粒子で保護されるので、トナーが中間転写体18上に直接接触しにくくなり、結果、中間転写体18の損傷を防ぎ、フィルミングの発生を抑制できる。
なお、クリーニング手段20がクリーニングブラシであり、かつ該クリーニングブラシが供給機構19を兼ね備えている場合は、中間転写体18をクリーニングしながら微粒子を供給できる。
【0022】
(トナー)
ここで、本発明に用いられるトナーについて説明する。
本発明に用いられるトナーは、少なくともバインダー樹脂および着色剤からなり、また、帯電制御剤、離型剤などを含んでもよい。
バインダー樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0023】
着色剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック等の黒色顔料;黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料;マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等の緑色顔料;亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等の白色顔料;バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等の体質顔料等が挙げられる。
着色剤の配合量は、結着樹脂100質量部に対し、通常2〜15質量部であり、4〜10質量部が好ましい。
【0024】
なお、黒色トナーの場合は、着色剤として上述した黒色顔料の他にも、磁性粉を用いることができる。磁性粉としては、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト等の金属粉末;マグネタイト、銅−亜鉛フェライト、バリウム−亜鉛フェライト、マンガン−亜鉛フェライト、リチウム−亜鉛フェライト、マグネシウム−マンガンフェライト、マグネシウム−銅−亜鉛フェライト、バリウム−ニッケル−亜鉛フェライト等の各種フェライトなどが挙げられる。着色剤として磁性粉を用いたトナーは、磁性トナーとなる。
磁性粉の配合量は、結着樹脂100質量部に対し、通常30〜150質量部であり、60〜100質量部が好ましい。
【0025】
電荷制御剤としては、トナーの特性を低下させることなく十分に電荷を制御できるものであれば特に制限されないが、正極性電荷制御剤および負極性電荷制御剤を用いることで、トナーの極性を調整できる。
これら電荷制御剤の配合量は、結着樹脂100質量部に対し、通常0.1〜15質量部であり、1〜10質量部が好ましい。
【0026】
正極性電荷制御剤としては、例えばニグロシンおよび脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の第四級アンモニウム塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレートが挙げられる。これら正極性電荷制御剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。この中でも特にニグロシン系化合物、第四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。
【0027】
負極性電荷制御剤としては、例えば有機金属錯体またはキレート化合物が挙げられ、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジターシヤリーブチルサリチル酸クロム等が挙げられる。これら負極性電荷制御剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。この中でも特に鉄(II)アセチルアセトナートが好ましく用いられる。
【0028】
離型剤としては、ワックス類、低分子量オレフィン系樹脂が挙げられる。ワックス類としては、例えば、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸の高級アルコールエステル、アルキレンビス脂肪酸アミド化合物、天然ワックス等が挙げられる。低分子量オレフィン系樹脂としては、数平均分子量が1000〜10000、好ましくは2000〜6000の範囲にあるポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン−エチレン共重合体等が挙げられ、低分子量ポリプロピレンが好ましい。
離型剤を添加する場合、その添加量は、結着樹脂100質量部に対し、1〜10質量部が好ましく、3〜8質量部がより好ましい。
【0029】
本発明に用いられるトナーは、一般の溶融混練・粉砕法または重合法等で製造することができる。例えば、溶融混練・粉砕法であれば次のような手順で製造する。結着樹脂、着色剤などの必要な原料を、スーパーミキサー等のミキサーで混合し、二軸押し出し機等で溶融混練後、ジェットミル等の粉砕機で粉砕する。その後、風力分級機等の分級機で分級してトナー原粉とする。
【0030】
得られたトナー原粉はそのままトナーとして使用してもよいが、本発明においてはトナーの極性と同極性の外添剤(以下、「外添剤」という。)と、逆極性の微粒子をトナーに添加させて用いるのが好ましい。この場合、外添剤および微粒子を、タービン型攪拌機、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の一般的な攪拌機を用いた機械的手法により、トナー粒子の表面に付着または固着させて得ることができる。
【0031】
外添剤としては、トナーと同極性のものであれば特に制限されないが、例えばシリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機酸化物、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸などが挙げられる。このような外添剤の極性は、トナーと同じ極性の有機物等で外添剤の表面をコーティングすることで、トナーの極性と同じものにできる。外添剤の添加量は、トナー(トナー原粉)100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましい。外添剤の添加量が0.05質量部未満であると、トナーの流動性が悪くなったり、耐熱保存性が悪化したりする。一方、外添剤の添加量が10質量部を超えると、定着性が悪化したり、外添剤がトラムや転写ベルト、定着ローラに付着したりしやすくなる。
【0032】
逆極性の微粒子は、先に例示した微粒子の中から、1種以上を選択して使用してもよい。なお、トナーに添加する微粒子と、供給機構から供給される微粒子は同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一のものが好ましい。微粒子の添加量はトナー(トナー原粉)原粉100質量部に対して、0.1〜0.8質量部が好ましく、0.2〜0.5質量部がより好ましい。微粒子の添加量が0.1質量部未満であると、中間転写体の表面を十分に保護できない場合がある。一方、微粒子の添加量が0.8質量部を超えると、カブリなどの画像不良が起こりやすくなったりする場合がある。
【0033】
このようにして得られるトナーの円形度は0.94以上であることが好ましい。また、粒子径が2μm以下の微粉粒子の含有割合(以下、「微粉量」という。)が10個数%以下であることが好ましい。
円形度が0.94以上であり、かつ、微粉量が10個数%以下のトナーを用いれば、必要以上にトナーが中間転写体に付着するのを抑制でき、中間転写体の損傷を低減し、クリーニング不良や転写不良が起こりにくくなるので、好ましい。また、このようなトナーを用いることでトナーの流動性が高くなり、転写効率がより向上し、より画質に優れた画像を得ることもできる。
【0034】
トナーの円形度や微粉量は、トナーの製造条件によって調整できる。
また、これらは、フロー式粒子像分析装置により求められる。フロー式粒子像分析装置は、例えば、シスメックス社製の型式「FPIA−2100」などを用いることができる。具体的には以下の方法で測定を行う。
まず、測定容器中にトナー20mgを入れ、これに分散媒としてシース液を10mL加えて撹拌し、超音波分散機で60W、3分間分散処理を行って分散液を得る。
測定には、前記分散液を、トナーの濃度が3000〜10000個/μLとなるように調整したものを用い、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製、「FPIA−2100」)により、円形度と微粉量を測定する。
【0035】
また、トナーの平均体積粒子径は、5〜10μmであることが望ましい。平均体積粒子径が上述した範囲内であれば、画像形成時における転写効率や画質がより良好なものとなる。
【0036】
本発明によれば、上述したように微粒子が添加されたトナーを用いれば、微粒子が継続的に中間転写体18上に供給されることとなるので、より効果的に中間転写体18の損傷を防ぎ、フィルミングの発生を抑制できる。
また、円形度が0.94以上であり、かつ微粉量が10個数%以下のトナーを用いることで、さらに効果的に中間転写体18の損傷を防ぎ、フィルミングの発生を抑制できる。
なお、磁性トナーを用いた場合であっても、微粒子によって中間転写体18は保護されているので、損傷しにくい。
【0037】
さらに、本発明においては、非画像形成時に、微粒子が添加されたトナーを現像装置10から強制排出し、中間転写体18に転写させ、クリーニング手段20にてトナーを回収して中間転写体18をクリーニングするのが好ましい(ベタの現像工程)。
画像形成の際には、印字濃度が低かったり印字位置に偏りがあったりして、現像装置から飛翔するトナーの量が少ない場合もある。このような場合が連続して続くと、微粒子が添加されたトナーを用いたとしても、中間転写体18に供給される微粒子の量が不足することも考えられる。
しかしながら、このようにベタの現像工程を定期的に実施すれば、常に十分な量の微粒子を中間転写体18に供給できるので、印字率の低い画像を連続して形成するような場合であっても、効果的に中間転写体の損傷を防ぎ、フィルミングの発生を抑制できる。
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、トナーの極性とは逆極性の微粒子を中間転写体に供給するので、中間転写体の表面が微粒子によって保護され、トナーが中間転写体に直接接触しにくくなり、結果、中間転写体の損傷を防ぎ、フィルミングの発生を抑制できる。
また、中間転写体をクリーニングするクリーニング手段として、クリーニングブラシを用い、かつ該クリーニングブラシに供給機構を兼ね備えておけば、中間転写体に残留するトナーを掻き取りながら、微粒子を供給できる。
【0039】
さらに、画像形成に用いるトナーに、該トナーとは逆極性の微粒子を添加させておけば、より多くの微粒子を中間転写体に供給できるので、より効果的に中間転写体の損傷を防ぎ、フィルミングの発生を抑制できる。
また、トナーの円形度と微粉量を規定すれば、さらに効果的に中間転写体の損傷を防ぎ、フィルミングの発生を抑制できる。
【0040】
なお、本発明によれば、硬度が高く比重が大きい磁性粉が含まれている磁性トナーを用いたとしても、中間転写体は微粒子によって保護されているので損傷しにくくなる。
また、印字率の低い画像を連続的に形成する場合は、微粒子を添加したトナーを用いて定期的にベタの現像工程を実施すれば、十分な量の微粒子を中間転写体に供給できる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。なお、「部」は「質量部」を表す。
[実施例1]
<トナーの製造>
バインダー樹脂としてスチレン−アクリル共重合体(積水化学工業社製、「SE−0040」)100部、磁性粉としてマグネタイト(戸田工業社製、「MTS−106」)45部、電荷制御剤としてニグロシン化合物(オリエント化学社製、「N−07」)3部、離型剤として天然ワックス(東亜化成社製、「カルナバワックス」)5部を、ヘンシェルミキサーにて撹拌混合した後、2軸押出し機で溶融混練し、ジェットミルで粉砕し、分級機で風力分級を行い、平均体積粒子径が6.8μm、円形度が0.91、粒子径が2μm以下の微粉粒子(ただし、粒子径の下限は0.6μm)の含有割合(微粉量)が10個数%である、正極性のトナー原粉を得た。なお、平均体積粒子径はマルチサイザーIII(コールターカウンター社製)を使用し、カット点を2μmとして測定し、円形度および微粉量はフロー式粒子像分析装置(FPIA−2100、シスメックス社製)にて測定した。
【0042】
得られたトナー原粉100部と、正極性のシリカ微粒子(アエロジル社製、「RA200」)1.2部をヘンシェルミキサーにて混合し(まぶし処理)、最終トナーとした。
【0043】
<評価>
以下に示す評価機(画像形成装置)に、得られたトナーと、負極性のシリカ(アエロジル社製、「R972」)を担持させたクリーニングブラシとをセットし、ベルトフィルミングおよび地肌カブリの評価を実施した。結果を表1に示す。
【0044】
(1)評価機
機種:図1に示すロータリー現像方式の画像形成装置
線速:150mm/sec
静電潜像担持体:アモルファスシリコン
帯電:正帯電
現像:磁性1成分現像システム
中間転写体:転写ベルト
クリーニングブラシ:ロール状のブラシ(材質:ナイロン、外形Φ:15mm、毛の太さ:5デニール、毛の密度:40000本/6.45cm
【0045】
(2)ベルトフィルミング
Duty5%原稿(A4サイズ)を連続で印字し、1000枚出力毎に転写ベルトの表面上にフィルミングが発生していないかを確認した。フィルミングが発生した時の出力枚数を表1に示す。
【0046】
(3)転写ベルトの傷の確認
マイクロスコープ(キーエンス社製、「VH−6300」)で、耐久した転写ベルトを観察し、ベルトに1mm以上の傷があるか確認し、以下のように評価した。
◎:傷が無い。
○:わずかに傷があるが、実使用上問題無いレベルである。
×:傷が多く発生している。
【0047】
(4)地肌カブリ
Duty5%原稿(A4サイズ)を10枚出力した後、白紙を出力した。
出力前後でのカブリ濃度を、反射濃度計(東京電力社製、「TC−6DS」)を用いて測定し、その差(白紙印字部の紙の反射濃度−出力前の紙の反射濃度)を地肌カブリの値とし、以下のように評価した。
発生なし:地肌カブリの値が0.01未満。
発生あり:地肌カブリの値が0.01以上。
【0048】
[実施例2]
トナー原粉100部と、正極性のシリカ微粒子(アエロジル社製、「RA200」)1.2部と、負極性のシリカ(アエロジル社製、「R972」)0.1部をヘンシェルミキサーにて混合して最終トナーとした以外は、実施例1と同様に行い、各評価を実施した。
結果を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
トナー原粉100部と、正極性のシリカ微粒子(アエロジル社製、「RA200」)1.2部と、負極性のシリカ(アエロジル社製、「R972」)0.8部をヘンシェルミキサーにて混合して最終トナーとした以外は、実施例1と同様に行い、各評価を実施した。
結果を表1に示す。
【0050】
[実施例4]
実施例2で得られたトナーを用い、印字中、転写ベルト1周分に相当する25%網点画像パターンを100枚毎に転写ベルト上に形成させた(ベタの現像工程の実施)以外は、実施例1と同様に行い、各評価を実施した。
結果を表1に示す。
【0051】
[実施例5]
トナー原粉を、多機能型粒子設計装置(ホソカワミクロン社製、「ファカルティ」)でさらに処理し、円形度を0.94、微粉量を5個数%とした。このトナー原粉100質量部と、正極性のシリカ微粒子(アエロジル社製、「RA200」)1.2部と、負極性のシリカ(アエロジル社製、「R972」)0.1部をヘンシェルミキサーにて混合して最終トナーとした以外は、実施例1と同様に行い、各評価を実施した。
結果を表1に示す。
【0052】
[実施例6]
実施例5で得られたトナーを用い、印字中、転写ベルト1周分に相当する25%網点画像パターンを100枚毎に転写ベルト上に形成させた(ベタの現像工程の実施)以外は、実施例1と同様に行い、各評価を実施した。
結果を表1に示す。
【0053】
[実施例7]
トナー原粉100部と、正極性のシリカ微粒子(アエロジル社製、「RA200」)1.2部と、負極性のシリカ(アエロジル社製、「R972」)0.9部をヘンシェルミキサーにて混合して最終トナーとした以外は、実施例1と同様に行い、各評価を実施した。
結果を表1に示す。
【0054】
[比較例1]
正極性のシリカ(アエロジル社製、「RA200」)を担持させたクリーニングブラシをセットした以外は、実施例1と同様に行い、各評価を実施した。
結果を表1に示す。
【0055】
[比較例2]
微粒子を担持せずにクリーニングブラシをセットした以外は、実施例1と同様に行い、各評価を実施した。
結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1から明らかなように、トナーの極性とは逆極性の微粒子をクリーニングブラシに担持させた各実施例によれば、転写ベルトの損傷を防ぐことができた。また、ベルトフィルミングおよび地肌カブリの評価が良好な結果となった。特に、逆極性の微粒子を0.1〜0.8質量部添加したトナーを用いた実施例2〜4は、フィルミングが発生するまでに要する印字枚数が比較例に比べて多く、フィルミングが発生しにくいことがわかった。また、円形度が0.94のトナーを用いた実施例5、6は、円形度が他の実施例よりも高いため、転写ベルトに対するトナーの付着力が小さくなり、フィルミングがより発生しにくいことがわかった。
なお、逆極性の微粒子を9.0質量部添加したトナーを用いた実施例7は、地肌カブリは発生したものの、比較例に比べてフィルミングは発生しにくかった。
【0058】
一方、トナーの極性と同極性の微粒子をクリーニングブラシに担持させた比較例1や、微粒子をクリーニングブラシに担持しなかった比較例2は、フィルミングが発生するまでに要する印字枚数が実施例に比べて少なく、フィルミングが発生しやすいことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0060】
1:画像形成装置、15:静電潜像担持体、18:中間転写体、19:供給機構、20:クリーニング手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体上に形成されたトナー像が転写される中間転写体を備えた画像形成装置であって、
前記トナー像を形成するトナーの極性とは逆極性の微粒子を中間転写体に供給する供給機構を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記中間転写体をクリーニングブラシでクリーニングするクリーニング手段を備え、
前記クリーニングブラシは、前記供給機構を兼ね備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナーを収容する現像装置を備え、
前記現像装置に収容されたトナーには、該トナーの極性と同極性の外添剤および逆極性の微粒子が添加され、該微粒子の添加量がトナー100質量部に対して0.1〜0.8質量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナーが磁性トナーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記トナーは、円形度が0.94以上であり、かつ、粒子径が2μm以下の微粉粒子の含有割合が10個数%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
現像装置に収容されたトナーを、静電潜像担持体上に付着させてトナー像を形成させ、該トナー像を中間転写体に転写する画像形成方法であって、
トナーの極性とは逆極性の微粒子を中間転写体に供給することを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
前記トナーには、トナーの極性と同極性の外添剤および逆極性の微粒子が添加され、該微粒子の添加量がトナー100質量部に対して0.1〜0.8質量部であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成方法。
【請求項8】
非画像形成時に、前記現像装置からトナーを強制排出し、前記中間転写体に転写させ、トナーを回収して中間転写体をクリーニングすることを特徴とする請求項7に記載の画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−292819(P2008−292819A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139156(P2007−139156)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】