説明

画像形成装置の端部シール部材による端部シール方法

【課題】 シンプルで部品数が少なく、組立て容易でコスト安い端部シール部材による画像形成装置の端部シール方法を提供する。
【解決手段】 画像形成装置1の規制ブレード4a又はクリーニングブレード4bのブレード裏面4d及びブレードエッジ部4fのブレード端部4cから現像剤7の漏れ又はクリーニングブレード4bの付着現像剤の除去物の漏れを防止するため、現像剤担持体2a又は被クリーニング部材2bに対して地糸9a及びパイル糸10aからなる編物8のループパイル10を有する端部シール部材6を当接し、規制ブレード4a又はクリーニングブレード4bの厚みよりも高さの高いループパイル10もしくは所定荷重における圧縮時のループパイル10の高さとブレード4の厚みを加えた高さよりも高さの高い非圧縮部のループパイル10をブレード端部4cのブレード厚み面4eに当接してブレード端部4cから現像剤7又はその除去物7aの漏れ防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転体により粉体を取り扱う装置における回転体の軸方向の回転体端部から回転体内部の粉体が外部に漏れしないようにシールする端部シール部材、特に電子写真装置における画像形成装置の現像用のトナーの供給ローラーや撹拌ローラーや像担侍体又はトナー担持体などの回転体の内部からトナーが漏出しないように、回転体の端部をシールするために用いるループを有する編物から形成の画像形成装置の端部シール部材を用いる画像形成装置の端部シール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置に用いるループを有するシール部材として、フェルト面より繊維をループ状に起毛した素材(例えば、特許文献1参照。)や、不織布からループ状に立毛した素材(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。しかし、これらのループ状とした素材はフェルトなどの織物あるいは不織布より構成するなど、絡まった繊維を起毛しているためにループ状の素材が安定しない。このためループ状に起毛や立毛した繊維は方向性を有していない問題がある。そこで、ループ状に起毛や立毛した繊維の方向を一定方向とするために起毛や立毛した繊維を斜毛工程により斜毛して一定方向の方向性を得るようにしている。
【0003】
しかしながら、これらのループ状に起毛や立毛により繊維の方向を一定方向としたものは、起毛の工程と斜毛工程が増えるために部品のコストが上がることになる。さらに不織布であるフェルトからの起毛によるループ状の製作であるため、ループそのものが安定しなく機能的な問題を起こす原因ともなっている。
【0004】
また、編物から構成されたループパイルをカットしたシール部材が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、このシール部材として、ループパイルをそのまま使用することは、パイル編物が高デニールであることから適していないと記載されている。さらに、縦編の編物から構成されたパイルをカットしてカットパイルとしたシール部材が開示されている(例えば、特許文献4参照)。また、織物から構成されたシール部材が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
しかし、これらはいずれもパイルをカットして形成したカットパイルであり、カットパイルを開繊してシール部材として使用するものである。しかも、厚みを有するクリーニングブレードなどの端部シールとしてこれらのシール部材を用いる場合には、裁断精度が要求され、かつ、パイルを有する編物のパイルを開繊、すなわち毛割りすることで、パイルを構成する繊維がブレードと被クリーニング部材の間に挟まれることとなり、そのために空隙が生じやすくなる。このように空隙が生じると、空隙の隙間からトナーが進入してトナーの漏れを促進するようになる問題がある。
【0006】
上記の問題に加えて、これらのカットパイルの製造上の工程として複数のシャーリング工程を持つため、コスト的に不利となっている。また、クリーニングブレードの裏面までカットパイルのカット繊維を延ばした場合は、クリーニングブレードが厚みを有するためカットパイルを抑えた時に、クリーニングブレードと被クリーニング部材とカットパイルからなるシール部材の間に空隙が生じてトナーの漏れが生じやすくなる。
【0007】
一方、大型機における被クリーニング部材が軸方向に動く時のシール部材として、クリーニング部材の両側に、トナーの漏れを防止するサイドシールを設け、このサイドシールにスリットを設け、軸方向に対するたわみを持たせるシール部材が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。しかし、このたわみを持たせるシール部材の材質はテフロン(登録商標)パイル材であり、高価な材質を使用しなければならない問題があった。
【0008】
さらに、ブレード支持部材とブレード段差の隙間に端部シール部材を配備してシールすることが開示されている(例えば、特許文献6参照。)。しかし、このものはハウジング側にシールすることでブレードの裏面のシールを行うものである。したがって、ブレードの端部をシールするためには、ブレード側面用のシール部材とブレード裏面用のシール部材が少なくとも二つ以上必要とする問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−75650号公報
【特許文献2】特開2001−290405号公報
【特許文献3】実願平11−5703号公報
【特許文献4】特開2003−117496号公報
【特許文献5】特開2001−109344号公報
【特許文献6】特開2008−299064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記に記載したように、画像形成装置のブレードエッジ部のシールについては、ブレードの裏面から及びブレード端部からの現像剤漏れを防止する必要があり、このための端部シール部材は部品点数も多く、かつ、複雑な構造及び多数の組立工数からなるためコストアップとなっている。そこで、本出願人は本願に係る発明の先願の発明として、パイル糸と地糸からなる横編の編物のループをカットしたカットループを生成して粉体シール材を低荷重でもシールできる粉体シール材を提供している。そこで、本発明が解決しようとする課題は、この先願の発明の構成よりもシンプルな構成で、かつ部品点数が少なく、組立て性が容易で、そしてコストを軽減した画像形成装置の端部シール部材を用いてレードエッジ部の端部をシールする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、画像形成装置1の回転する現像剤担持体2aの現像剤層3の厚さを規制する規制ブレード4aに端部シール部材6を当接させ、規制ブレード4aの両端側から現像剤7の漏れを防止する方法もしくは被クリーニング部材2bにクリーニングブレード4bを当接して被クリーニング部材2b上に付着の現像剤7を除去し、クリーニングブレード4bのブレード端部4c及び被クリーニング部材2bに端部シール部材6を当接させ、その両端側から除去した現像剤7の除去物の漏れを防止する方法における発明である。すなわち、規制ブレード4a又はクリーニングブレード4bのブレード裏面4d及びブレード4のブレードエッジ部4fの長手方向のブレード端部4cから現像剤7の漏れ又はブレード4に付着している現像剤7の除去物の漏れを防止するために、回転する現像剤担持体2a又は被クリーニング部材2bに対して地糸9a及びパイル糸10aからなる横編みの編物8のループパイル10を有する端部シール部材6を当接し、規制ブレード4a又はクリーニングブレード4bのブレード厚みよりも高さの高いループパイル10を、もしくは、所定荷重における圧縮時のループパイル10の高さとブレード4の厚みを加えた高さよりも高さの高い非圧縮部のループパイル10を、ブレード端部4cのブレード厚み面4eに当接してブレード端部4cから現像剤7又は付着している現像剤7の除去物の漏れを防止することを特徴とする画像形成装置1の端部シール方法である。
【0012】
請求項2の発明では、回転する現像剤担持体2a又は被クリーニング部材2bに対して地糸9a及びパイル糸10aから横編みの編物8からなるループパイル10を当接する方法は、漏れ防止する規制ブレード4a又はクリーニングブレード4bのブレード厚み面4e及び現像剤担持体2aもしくは被クリーニング部材2bである回転体2の回転方向2cに対して、ループパイル10のループ9bの開き角度θの半分以上の角度でもって、回転体2の軸方向内側2dへループパイル10を傾け、ループパイル10を現像剤担持体2a又は被クリーニング部材2bに当接することを特徴とする請求項1の手段の画像形成装置1の端部シール方法である。
【0013】
請求項3の発明では、回転体2の軸方向内側2dへループパイル10を傾ける方向は、規制ブレード4a又はクリーニングブレード4bのブレード厚み面4eに対して食い込む方向15あるいは倒れる方向16の傾斜面17にループパイル10を向けることを特徴とする請求項2の手段の画像形成装置1の端部シール方法である。
【0014】
請求項4の発明では、規制ブレード4a又はクリーニングブレード4bのブレード厚み面4eに対して食い込む方向15あるいは倒れる方向16の傾斜面17のループパイル10の向きは、規制ブレード4a又はクリーニングブレード4bのブレード端部4cに沿うように略L字型の端部シール部材6もしくはブレード端部4cを覆うようにブレード裏面4dからブレード端部4cよりも外側に大きくはみ出した略方形型の端部シール部材6をブレード端部4c及びブレード裏面4dに設けることを特徴とする請求項3の手段の画像形成装置1の端部シール方法である。
【発明の効果】
【0015】
上記の請求項1の手段としたことで、画像形成装置の端部シール方法は、端部シール部材を回転する現像剤担持体又は被クリーニング部材に対して当接する際に、端部シール部材のループパイルを規制ブレード又はクリーニングブレードのブレード厚みよりも高さを高くし、もしくは、所定荷重における圧縮時のループパイルの高さとブレードの厚みを加えた高さよりも非圧縮部のループパイルの高さを高くして、ブレード端部のブレード厚み面に当接して、ブレード端部から現像剤の漏れ又は付着している現像剤の除去物の漏れを防止することができる。
【0016】
請求項2の手段の方法としたことで、さらに上記の方法の効果に加えて、画像形成装置の端部シール方法は、ブレード厚み面及び回転体の回転方向に対して、ループの開き角度の半分以上の角度で回転体の軸方向内側へループを傾けてブレード端部に当接し、ブレード端部から現像剤の漏れ又は付着している現像剤の除去物の漏れをより一層に防止することができる。
【0017】
請求項3の手段の方法としたことで、さらに上記の方法の効果に加えて、画像形成装置の端部シール方法は、回転体の軸方向内側へループパイルを傾ける際に、規制ブレード又はクリーニングブレードのブレード厚み面に対して食い込む方向あるいは倒れる方向の傾斜面にループパイルのパイルを向けてブレード端部に当接し、ブレード端部から現像剤のもれ又は付着している現像剤の除去物の漏れをよりさらに一層に防止することができる。
【0018】
請求項4の手段の方法としたことで、さらに上記の方法の効果に加えて、画像形成装置の端部シール方法は、略L字型の端部シール部材もしくはブレード裏面から外側にブレード端部よりも大きくはみ出した略方形型の端部シール部材をブレード裏面に設けてブレード端部に当接し、ブレード端部から現像剤のもれ又は付着している現像剤の除去物の漏れをさらに防止することができる。
【0019】
以上のように、本発明の方法に用いる横編の編物からなり裏面に樹脂コーティング層などの伸縮性規制体並びに弾性体又は発泡体を有するループパイルからなる端部シール部材は、本出願人の先願の発明に比して構造が簡単でありながら、これを使用する方法では、先願の発明のものの使用方法に比して、高荷重の範囲においても画像形成装置の現像担持体又は被クリーニング部材における現像剤の外部への漏れの防止効果の点で十分に優れており、さらに、従来の織物からなる端部シール部材に比しても効果が優れている。したがって、本発明の横編の編物からなるループパイルからなる端部シール部材を用いたシール方法は画像形成装置の端部シール方法として優れている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は本発明の方法に用いる背面に弾性体14a又は発泡体14bを有する地糸9aとループ9bを有する編物8からなる端部シール部材6で、(b)はブレード4と当接するL字状の端部シール部材6、(c)はブレード4と当接する方形状の端部シール部材6をそれぞれループ9b側から見た斜視図である。
【図2】(a)は現像剤担持体2a又は被クリーニング部材2bに設けたブレード4に当接の端部シール部材6を示す側面図、(b)は平面図である。
【図3】地糸9aとループ9bを有する編物8で、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図4】1実施の形態を示す模式図で、(a)はループパイル10の向きを回転体2の内側に取付け角度18で倒した端部シール部材6を示す平面図、(b)は回転体2に当接した端部シール部材6を示す正面図、(c)は回転体2に当接した端部シール部材6を軸端部側から見た側面図である。
【図5】ブレード4と樹脂コーティング層12を裏面に有する端部シール部材6と現像剤担持体2aの当接状態の関係を示す側面図である。
【図6】ブレード4と樹脂コーティング層12のさらに背面に弾性体14a又は発泡体14bを有する端部シール部材6と現像剤担持体2aの当接状態の関係を示す側面図である。
【図7】端部シール部材6の引張り荷重と伸び率の関係のグラフである。
【図8】端部シール部材6の現像剤7の漏れ試験における圧縮時の高さと反発荷重の関係を示すグラフである。
【図9】端部シール部材6に掛かる荷重の反発荷重と振動の加速度の関係を示すグラフである。
【図10】端部シール部材6の振動による現像剤7であるトナーの漏れの振動試験装置を模式的に一部断面で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の方法を実施するための形態について、図面及び表を参照して以下に説明する。発明に使用する画像形成装置1の端部シール部材6は、図1に示すように、ループ9bを形成して編まれたループパイル10を有する横編の編物8からなり、この端部シール部材6のループパイル10が、図2に示す、現像剤担持体2aもしくは被クリーニング部材2bに当接し、かつ、このループパイル10がブレード端部4cであるブレード厚み面4eに当接するように配設され、ブレード端部4cから現像剤7であるトナーの漏れを防止する。
【0022】
このループパイル10を有する編物8は横編からなるもので、図1の地糸9aとループ9bを形成するパイル糸10aからなり、ループパイル10が同一方向に倒れる方向16の傾斜面17を形成する構成となっている。このパイル糸10aからなる編物8は天然繊維もしくは合成繊維より成り、パイル糸10aの太さを200デニール以下とし、この編物8に使用される繊維は10デニール(約35μm)以下の繊維を用いて紡績もしくは紡糸されたパイル糸10aからなる編物8である。
【0023】
このパイル糸10aとしては、好ましくは3デニール以下の繊維を用いた方がより好ましい。また、横編機は20ゲージ/インチ以上の装置を用い、ステッチ方向に対しては30ステッチ以上としている。横編機で編まれた編物8からなる端部シール部材6のループパイル10は所定のループ9bを形成し、所定の角度で編物特有の傾きを有している。また、編物8からなる端部シール部材6のループパイル10は、図3に示すように、ループ9bを形成しているため、ループパイル10のループ9bは開き角度θを有して広がっている。この構造で現像剤7であるトナーの流れを規制している。さらに、この現像剤7のトナーがブレード端部4cから外側に漏れないようにするために、この開き角度θのループ9bの少なくとも外側の領域において、ループ9bの開き角度θの1/2以上の角度だけループ9bを内側へ傾いて、すなわち、図4に例示するように、端部シール部材6のループパイル10のループ9bは規制ブレード4a又はクリーニングブレード4bの側部において回転体2の軸方向内側2dへ、20°〜90°の取付け角度18で傾いて、取り付けられている。
【0024】
さらに、図4の(c)に例示するように、背後を支持部材20で支持された端部シール部材6のループパイル10は現像剤担持体2aもしくは被クリーニング部材2bと接する構造である。このために圧縮力により摩擦力が生じて現像剤担持体2aもしくは被クリーニング部材2bの回転方向2cにループパイル10が引っ張られるようになる。そこで、横編の特性である伸縮性を規制する必要があり、端部シール部材6を所定以下の伸縮性になるようにするために、ループ9bを構成している面と異なる編物8の地糸9aの裏面に、図1に示すように、伸縮規制部材よりなる伸縮性規制層11すなわち樹脂コーティング層12を形成して伸縮を規制する構成としている。
【0025】
また、この横編からなる編物8のループパイル10は規制ブレード4a又はクリーニングブレード4bのブレード厚み面4eに押し付けられるようにして使用されるので、編物8の地糸9aの裏面の伸縮性規制層11すなわち樹脂コーティング層12のさらに裏面に、図1の(a)に示すように、所定の硬度をもつ弾性体14aもしくは発泡体14bを配設している。ブレード4すなわち規制ブレード4a又はクリーニングブレード4b及び現像剤担持体2aもしくは被クリーニング部材2bの組み付け時に、図2の(a)に示すように、所定の角度でもって規制ブレード4a又はクリーニングブレード4bのブレードエッジ部4fの厚み方向に上記の弾性体14aもしくは発泡体14bを食い込みもしくは押し付けている。
【0026】
さらに、端部シール部材6を図1の(b)に示すL字形状はもとより図1の(c)に示す略方形の形状とした場合は、図2に示すように、規制ブレード4a又はクリーニングブレード4bのブレード端部4c及びブレード裏面4dもシールが可能な端部シール部材6となっている。つまりブレード支持部材5とブレード4の段差に対してもこの端部シール部材6でシールできるようにして使用する。
【0027】
なお、ループパイル10を有する編物8を用いることで、圧縮によるループパイル10の形状が変形し、被クリーニング部材2bやブレード4に沿う形状になりやすく、かつ、ループパイル10であることにより、ブレード4と現像剤担持体2もしくは被クリーニング部材2bの間に挟まれ難いリング状のループ9bの形状で、ループ9bは圧縮力によりブレード端部4cであるブレード厚み面4eの方向に沿って地糸9aの方に押し込まれるか、もしくは、内側に倒れて傾き、ブレード4や現像剤担持体2aもしくは被クリーニング部材2bに沿うようになって使用される。
【0028】
また、ループ9bを構成していることより本出願人の先願の特願2008−306432の発明におけるループ9bをカットしたカットループ19を用いた直線的な繊維からなる端部シール部材6よりも、この発明の方法で使用する端部シール部材6は、現像剤7であるトナーをループ9bによって捕集する効果も得られる構造となっている。
【0029】
ここで、ブレード4に当接する端部シール部材6のループパイル10と画像形成装置1の現像剤担持体2a又は被クリーニング部材2bとの当接関係について、図5により現像剤担持体2aの例で説明する。図5の(a)はブレード4に当接する端部シール部材6の背面に樹脂コーティング層12を有し、かつ、一定方向に傾斜した、ループパイル10の高さTを示し、図5の(b)はブレード4の厚みtとブレード4によるループパイル10の圧縮高さT1の関係及び非圧縮部のループパイル10を示し、これらの関係は、T≧T1+t、となっている。さらに図5の(c)は現像剤担持体2aにブレード端部4cを当接して現像剤7であるトナーを除去しているブレード4と、さらにこのブレード4の背面とブレード端部4cと現像剤担持体2aとに当接して配設されている端部シール部材6の当接状態を示し、ループパイル10の各ループ9bは現像剤担持体2aの回転方向2cに一斉に同一方向に傾斜している。
【0030】
図6の(a)はループパイル10の背面の樹脂コーティング層12のさらに背面に弾性体14a又は発泡体14bを有するループパイル10のループ9bの高さとループ9bの長さ及びブレード4を示し、図6の(b)はブレード4で一部圧縮したループパイル10とその背面側に形成されている弾性体14a又は発泡体14bとブレード4の当接状態を示しており、図6の(c)は現像剤担持体2aにブレード端部4cを当接して現像剤7であるトナーを除去しているブレード4と、さらにこのブレード4の背面とブレード端部4cと現像剤担持体2aに当接している端部シール部材6の当接状態を示している。この場合、端部シール部材6は背面に弾性体14a又は発泡体14bを有し、ループパイル10の各ループ9bは現像剤担持体2aの回転方向2cに一斉に同一方向に傾斜している。
【実施例】
【0031】
実施例1として20ゲージの編機により、また、実施例2として28ゲージの編機により、地糸9aと片面にループ9bを有するパイル糸10aからなる横編みの編物8を形成した。これらの編物8では、表1に示すように、ループパイル10の太さは0.17mm、パイル当たりの繊維の本数は38本、編物8の厚みは2.7mmであった。編物8の背面の弾性体14a又は発泡体14bの厚みは2mmで、ブレードの厚みは1.5mmであった。このループパイル10を有する編物8を振動による漏れの試験の端部シール部材6とした。この場合、端部シール部材6のループパイル10の傾斜角度は70°、ループパイル10の取り付け角度すなわち内側への傾きは45°として取り付けた。この振動による試験に使用の振動試験装置21は、図10に示す装置からなっている。現像剤7であるトナーを入れるトナー容器24をアングル23で加振機22に取り付け、このトナー容器24の中に現像剤7のトナーを入れ、カバー25で閉じ、加振機22により振動させる構造となっている。例えば、振動実験では、トナー容器24とカバー25の間に、本発明の端部シール部材6を単体で取り付け、端部シール部材6の取り付け高さ位置における端部シール部材6に対する取り付け荷重を計測するものである。その測定時の端部シール部材6の取り付け高さにおいて、トナー7が漏れたときの振動方向27の加速度をセンサー26で測定することにより取り付け荷重を計測する。
【0032】
【表1】

【0033】
次いで、条件としてゲージ数が28である編機で編んだ横編の編物8からなるループパイル10の端部シール部材6の引張り荷重による伸び率をゲージ数28の条件において評価し、表2に示した。この表2の(a)では、樹脂コーティング層12を裏面に有するループパイル10で、ゲージ方向とステッチ方向で引張り荷重を変更して、伸び率(%)を評価し、表2の(b)では、樹指コーティング層12を裏面に有しないループパイル10において、引張り荷重を0g〜200gに変更して、伸び率(%)を評価した。表2の(a)に見られるように、スプレーによる樹脂コーティング層12を裏面に有する本発明方法に用いるループパイル10では、ゲージ数28当たりの引張り荷重1000gの伸び率は、ゲージ方向で15.5%、ステッチ方向で3.3%であった。これに対し、表2の(b)に見られるように、樹脂コートである樹脂コーティング層12を裏面に有しないループパイル10では、ゲージ数28の引張り荷重が200g/cmで、伸び率は80%であった。表2の結果を図7の引張り荷重と伸び率の関係のグラフとして示す。図7において、スプレーコート有りは樹脂コーティング層12をループパイル10の裏面に有する場合を示し、樹脂コート無しは樹脂コーティング層12をループパイル10の裏面に有しない場合を示す。図7のグラフに示すように、ゲージ数28、ステッチ数50の編物8の伸びを引張り荷重の関係で評価した結果、樹脂コーティング層12などの伸縮性規制層11をループパイル10の裏面に有しない場合は、僅かな引張り力によって著しく伸びてしまった。これに対し、本発明の手段のスプレーによる薄層である樹脂コーティング層12を施すことで端部シール部材6の伸び率を著しく規制することが可能で、略800g/cmの引張り荷重までは伸び率は10%以下であった。これらの結果、樹脂コーティング層12を有するループパイル10の端部シール部材6は大きく伸びることない。したがって、現像剤7のトナーが端部シール部材6の編物8の地糸9aの間から漏れることがないので、本発明に使用する端部シール部材6は極めて優れている。以上のとおり、表1におけるシール性(実機)の欄に示すように、実機として例えば電子写真装置の感光体ドラムのクリーニングブレードに本発明の端部シール部材を取り付けた場合、トナーを転写して転写像を形成した用紙の枚数は実施例1、実施例2ともに1万枚を超えることができ、これらを表1において○で示した。
【0034】
【表2】

【0035】
ここで、本発明に使用する編物8からなるループパイル10の端部シール部材6の現像剤7の漏れ試験における圧縮時の高さと反発荷重の関係を図8のグラフに示す。この場合、◆で示すグラフは20ゲージのループ9bであり、■で示すグラフは28ゲージのループ9bである。横軸にループパイル10の圧縮時の高さ(mm)を示し、縦軸に反発荷重(g/cm2)を示す。20ゲージのループ9bは圧縮時の高さ1.0mmで、反発荷重は約760g/cm2で、28ゲージのループ9bは圧縮時の高さ0.9mmで、反発荷重は略880g/cm2である。しかし、両者共に圧縮時の高さ1.3mmまでは、反発荷重はいずれも略200g/cm2へ略直線的に急低下し、その後、反発荷重は緩やかに低下し、反発荷重が0g/cm2となるのは、共に圧縮時の高さ2.8mmであった。
【0036】
さらに、本発明に使用する編物8からなるループパイル10の端部シール部材6並びに従来の織物からなる密度45万本/in2の繊維からなるパイル及び密度65万本/in2の繊維からなるパイルにおける現像剤7であるトナーの漏れ試験を、端部シール部材6に掛かる荷重の反発荷重を横軸にとり、振動の加速度を縦軸にとって、グラフとして図9に示した。このグラフにおいて、本発明に使用する編物8からなるループパイル10の端部シール部材6に掛かる荷重の反発荷重を4.4g/cm2、35g/cm2、70g/cm2、100g/cm2、213g/cm2と変化させ、一方、振動の加速度を10m/s2、20m/s2、30m/s2、40m/s2、50m/s2、60m/s2と変化させて、現像剤7すなわちトナーの漏れ試験を行った結果を、表3に示した。表3に示す○は振動に耐えられシール性を有するもの、×は振動に耐えられずシール性の無いものである。
【0037】
【表3】

【0038】
上記した振動試験装置21による図9に示す振動試験におけるトナーの漏れ試験について、本発明に使用する編物8からなるループパイル10の端部シール部材6と、45万本/in2の繊維密度の織物からなる端部シール部材6aと、65万本/in2の繊維密度の織物からなる端部シール部材6bを対比し、横軸に反発荷重(8/cm2)、縦軸に耐振動力(加速度:m/s2)とした図9のグラフとして、本発明のループパイル10の端部シール部材6は◆で、45万本/in2の繊維密度の織物からなる端部シール部材6aは■で、65万本/in2の繊維密度の織物からなる端部シール部材6bは△で示した。図9において、反発荷重100g/cm2時の本発明に使用のループパイル10の耐振動力は50m/s2であった。これに対し、従来の織物からなるパイルの反発荷重100g/cm2時の対振動力は、パイルの繊維密度45万本/in2のからなるものは略33m/s2で、パイルの繊維密度65万本/in2のからなるものは略38m/s2であった。以上の結果、本発明におけるループパイル10の現像剤7であるトナーのシール性は従来の織物からなるパイルのシール性に比して優れていた。また、このループパイル10の端部シール部材6はループ9bをカットしてカットパイルとすることなく、ループ9bのままで使用が可能であるので、カットパイルのものに比してコストの低減が図れた。
【0039】
以上の本発明の方法に使用するループ9bを有する端部シール部材6は伸縮性を有する横編みからなる編物8である。一方、縦編みメリヤスであるトリコットは、横編の編物8のような伸縮性は殆どないものの、ループを有する編物とすることができ、比較的緻密な組織からなるので、この縦編みからなるループを形成した編物は、上記の横編からなるループ9bを有する端部シール部材6と同様に、画像形成装置1の現像剤担持体2aの規制ブレード4aや被クリーニング部材2bのクリーニングブレード4bのブレード端部4cの端部シール部材6として使用することができる。この縦編みメリヤスであるトリコットの編物は綿糸やレーヨンからなる一重トリコットからなるものの外に、二組の経糸を使って厚みをもつダブルトリコットからなるものもある。いずれも織物のループと異なって編物特有の生地の面から立ち上がった向きのループを有し、このループを有する端部シール部材を、横編の編物からなるシール部材と同様に、本発明の方法に使用して画像形成装置1の現像剤担持体2aの規制ブレード4aや被クリーニング部材2bのクリーニングブレード4bのブレード端部4cから現像剤であるトナーの漏れを防止することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 画像形成装置
2 回転体
2a 現像剤担持体
2b 被クリーニング部材
2c 回転方向
2d 軸方向内側
3 現像剤層
4 ブレード
4a 規制ブレード
4b クリーニングブレード
4c ブレード端部
4d ブレード裏面
4e ブレード厚み面
4f ブレードエッジ部
5 ブレード支持部材
6 端部シール部材
6a 45万本/in2の繊維密度の織物からなる端部シール部材
6b 65万本/in2の繊維密度の織物からなる端部シール部材
6c ブラケット
6d ねじ孔
6e 取付けねじ
7 現像剤
7a 付着物
8 編物
9a 地糸
9b ループ
10 ループパイル
10a パイル糸
11 伸縮性規制層
12 樹脂コーティング層
13 部材面
13a 樹脂シート
13b 粘着剤層
13c 不織布
14a 弾性体
14b 発泡体
15 食い込む方向
16 倒れる方向
17 傾斜面
18 取付け角度
19 カットループ
20 シールの支持部材
21 振動試験装置
22 加振機
23 アングル
24 現像剤(トナー)容器
25 カバー
26 センサー
27 振動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置の回転する現像剤担持体の現像剤層の厚さを規制する規制ブレードに端部シール部材を当接させ、規制ブレードの両端側から現像剤の漏れを防止するもしくは被クリーニング部材にクリーニングブレードを当接して被クリーニング部材上に付着の現像剤を除去し、クリーニングブレードのブレード端部及び被クリーニング部材に端部シール部材を当接させ、その両端側から除去した現像剤の除去物の漏れを防止する方法において、規制ブレード又はクリーニングブレードのブレード裏面及びブレードエッジ部の長手方向のブレード端部からから現像剤の漏れ又はブレードに付着している現像剤の除去物の漏れを防止するため、回転する現像剤担持体又は被クリーニング部材に対して地糸及びパイル糸からなる編物のループパイルを有する端部シール部材を当接し、規制ブレード又はクリーニングブレードのブレードの厚みよりも高さの高いループパイルを、もしくは、所定荷重における圧縮時のループパイルの高さとブレードの厚みを加えた高さよりも高さの高い非圧縮部のループパイルを、ブレード端部のブレード厚み面に当接してブレード端部から現像剤又は付着している現像剤の除去物の漏れを防止することを特徴とする画像形成装置の端部シール方法。
【請求項2】
回転する現像剤担持体又は被クリーニング部材に対して地糸及びパイル糸から編物からなるループパイルを当接する方法は、漏れ防止する規制ブレード又はクリーニングブレードのブレード厚み面及び現像剤担持体もしくは被クリーニング部材である回転体の回転方向に対して、ループパイルのループの開き角度の半分以上の角度でもって、回転体の軸方向内側へループパイルのループを傾け、ループパイルを現像剤担持体又は被クリーニング部材に当接することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置の端部シール方法。
【請求項3】
回転体の軸方向内側へループパイルを傾ける方向は、規制ブレード又はクリーニングブレードのブレード厚み面に対して食い込む方向あるいは倒れる方向の傾斜面にループパイルを向けることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置の端部シール方法。
【請求項4】
規制ブレード又はクリーニングブレードのブレード厚み面に対して食い込む方向あるいは倒れる方向の傾斜面のループパイルの向きは、規制ブレード又はクリーニングブレードのブレード端部に沿うように略L字型の端部シール部材もしくはブレード端部を覆うようにブレード裏面からブレード端部よりも外側に大きくはみ出した略方形型の端部シール部材をブレード端部及びブレード裏面に設けることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置の端部シール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−243728(P2010−243728A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91367(P2009−91367)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(596116363)三和テクノ株式会社 (16)
【出願人】(505094157)
【出願人】(000197241)青野パイル株式会社 (5)
【Fターム(参考)】