説明

画像形成装置及びプログラム

【課題】エンコーダスケールのスリットに汚れが発生した場合にはキャリッジの検出位置と実際の位置とのずれが発生し、動作不良を生じる。
【解決手段】空吐出受け21に対して記録ヘッド4から空吐出する左空吐出動作を行うときには、キャリッジ3を装置本体の左側板100Lに突き当たるまで移動させ、キャリッジ3の突き当りを検出した位置をキャリッジ3の第2ホーム位置として決定し、キャリッジ位置カウンタのキャリッジ位置のカウント値を左突き当て位置のデフォルト値に設定して、キャリッジ3を右側板方向に移動させ、キャリッジ23が左空吐出位置に到達したときに記録ヘッド4から空吐出受け21に対して空吐出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及びプログラムに関し、画像形成手段を搭載したキャリッジを備える画像形成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体、樹脂などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。また、本発明は画像形成手段として液体吐出ヘッドを備えるものに限られないが、以下では液体吐出ヘッドを記録ヘッドとする装置で説明する。
【0004】
シリアル型画像形成装置において、画像の形成やヘッドの維持回復動作を行うためには、キャリッジの位置を正確に検出する必要がある。そこで、キャリッジを左又は右の側板に直接或いは衝止部材に突き当てて、キャリッジが物理的に停止した位置から所定位置移動させた位置をキャリッジのホーム位置とし、ホーム位置からのキャリッジ位置をリニアエンコーダで検出することが知られている(例えば衝止部材を用いる特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−200570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、リニアエンコーダとしては、光学式のリニアエンコーダが一般的に用いられるが、装置内に飛散するインクミスト、紙粉がエンコーダスケールやエンコーダセンサに付着して読み取りエラー(読み飛ばし)を生じ、キャリッジの移動量のエンコーダカウント値(検出位置)とキャリッジの実際の位置がずれるという問題がある。
【0007】
このように、キャリッジの検出位置と実際のキャリッジ位置がずれると、そのままキャリッジ制御を行った場合、キャリッジが突き当てを行わない方の側板に衝突するおそれが生じるなどの動作不良が発生する。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、キャリッジの検出位置と実際の位置のずれによる動作不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
画像を形成する画像形成手段が搭載されて主走査方向に移動されるキャリッジと、
前記キャリッジを一方の側板側に突き当てて前記キャリッジの第1ホーム位置を決定する第1ホーム位置決定手段と、
前記キャリッジを他方の側板側に突き当てて前記キャリッジの第2ホーム位置を決定する第2ホーム位置決定手段と、を備えている
構成とした。
【0010】
ここで、前記第2ホーム位置検出手段は、連続印刷枚数が所定枚数を超えたときに前記第2ホーム位置を決定する動作を行う構成とできる。
【0011】
また、前記キャリッジを一方の側板側に突き当てたときの位置と前記キャリッジを他方の側板側に突き当てたときの位置との距離を検出する突き当て位置間距離検出手段を備え、
前記第2ホーム位置検出手段は、前記突き当て位置間距離検出手段で検出された突き当て位置間距離と基準値との偏差が所定値を超えるときに前記第2ホーム位置を決定する動作を行う構成とできる。
【0012】
この場合、初期動作を行うとき、前記突き当て位置間距離検出手段で前記突き当て位置間距離を検出し、前記検出された突き当て位置間距離を前記基準値とする構成とできる。
【0013】
また、環境温度を検出する手段と、前記検出された環境温度に応じて前記突き当て位置間距離の基準値を補正する手段と、を備えている構成とできる。
【0014】
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成装置。
【0015】
本発明に係るプログラムは、
画像を形成する画像形成手段が搭載されて主走査方向に移動されるキャリッジを画像形成装置本体の一方の側板側に突き当てて前記キャリッジの第1ホーム位置を決定する第1ホーム位置決定処理と、
前記キャリッジを他方の側板側に突き当てて前記キャリッジの第2ホーム位置を決定する第2ホーム位置決定処理と、をコンピュータに行わせる
構成とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る画像形成装置及びプログラムによれば、キャリッジを画像形成装置本体の一方の側板側に突き当ててキャリッジの第1ホーム位置を決定する第1ホーム位置決定手段(処理)と、キャリッジを他方の側板側に突き当ててキャリッジの第2ホーム位置を決定する第2ホーム位置決定手段(処理)とを備える構成としたので、キャリッジの検出位置と実際の位置のずれが生じたときの動作不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用する画像形成装置としてのインクジェット記録装置の概略構成を示す平面説明図である。
【図2】同じく側面説明図である。
【図3】同じく要部平面説明図である。
【図4】同装置の制御部の概要を示すブロック説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるメンテナンス動作の説明に供するフロー図である。
【図6】同じく左空吐出動作の説明に供するフロー図である。
【図7】本発明の第2実施形態における連続印刷枚数計数動作の説明に供するフロー図である。
【図8】同じく左空吐出動作の説明に供するフロー図である。
【図9】本発明の第3実施形態における読み飛ばし検知動作の説明に供するフロー図である。
【図10】同じく左空吐出動作の説明に供するフロー図である。
【図11】本発明の第4実施形態における読み飛ばし検知動作の説明に供するフロー図である。
【図12】同じく環境温度と基準値調整係数の説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明を適用する画像形成装置としてのインクジェット記録装置の概要について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同インクジェット記録装置の概略構成を示す平面説明図、図2は同じく側面説明図、図3は同じく要部平面説明図である。
このインクジェット記録装置は、左右の側板100L,100R間に横架した主ガイドロッド1及び図示しない従ガイド部材でキャリッジ3を摺動自在に保持し、主走査モータ5によって、駆動プーリ6と従動プーリ7間に渡したタイミングベルト8を介して主走査方向に移動走査する。
【0019】
このキャリッジ3には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド4y、4m、4c、4k(区別しないときは「記録ヘッド4」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0020】
記録ヘッド4を構成する液体吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0021】
一方、用紙10を搬送するために、用紙10を静電吸着して記録ヘッド4に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト12を備えている。この搬送ベルト12は、無端状ベルトであり、搬送ローラ13とテンションローラ14との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成し、周回移動しながら帯電ローラ15によって帯電(電荷付与)される。
【0022】
また、搬送ベルト12は、副走査モータ16によってタイミングベルト17及びタイミングプーリ18を介して搬送ローラ13が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0023】
さらに、キャリッジ3の主走査方向の一方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4の維持回復を行う維持回復機構21が配置され、他方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4から空吐出を行う空吐出受け21がそれぞれ配置されている。
【0024】
なお、維持回復機構20は、例えば記録ヘッド4のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングする4個のキャップ部材31、ノズル面を払拭するワイパ部材32、画像形成に寄与しない液滴(空吐出滴)を受ける空吐出受け33などで構成されている。
【0025】
また、キャリッジ3の主走査方向に沿って両側板間に、所定のパターンを形成したエンコーダスケール23を張装し、キャリッジ23にはエンコーダスケール23のパターンを読取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ24を設け、これらのエンコーダスケール23とエンコーダセンサ24によってキャリッジ23の移動を検知するリニアエンコーダ(主走査エンコーダ)25を構成している。なお、図3に示すように、エンコーダスケース23は所定の間隔で透過領域23aと不透過領域23bが交互に形成され、エンコーダセンサ24は発光手段24aと受光手段24bとで構成される。
【0026】
また、搬送ローラ13の軸には高分解能のコードホイール26を取り付け、このコードホイール26に形成したパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ27を設けて、これらのコードホイール26とエンコーダセンサ27によって搬送ベルト12の移動量及び移動位置を検出するロータリエンコーダ(副走査エンコーダ)28を構成している。
【0027】
このように構成したこの画像形成装置においては、図示しない給紙トレイから用紙10が帯電された搬送ベルト12上に給紙されて吸着され、搬送ベルト12の周回移動によって用紙10が副走査方向に搬送される。そこで、キャリッジ3を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド4を駆動することにより、停止している用紙10にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙10を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙10の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙10を図示しない排紙トレイに排紙する。
【0028】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図4を参照して説明する。なお、同図は同制御部のブロック説明図である。
この制御部200は、この装置全体の制御を司り、本発明におけるキャリッジのホーム位置決定、キャリッジの移動制御を行う手段を兼ねるCPU201と、CPU201が実行する本発明に係るプログラムを含む各種プログラム、その他の固定データを格納するROM202と、画像データ等を一時格納するRAM203と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ204と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC205とを備えている。
【0029】
また、この制御部200は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F206と、記録ヘッド4を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動波形を生成する駆動波形生成手段を含む印刷制御部207と、キャリッジ3側に設けた記録ヘッド4を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)208と、主走査モータ5及び副走査モータ16を駆動するためのモータ駆動部210と、帯電ローラ15にACバイアスを供給するACバイアス供給部212と、エンコーダセンサ24、27からの各検出信号、環境温度を検出する温度センサ215などの各種センサからの検出信号を入力するためのI/O213などを備えている。また、この制御部200には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル214が接続されている。
【0030】
ここで、制御部200は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データ等をケーブル或いはネットを介してI/F206で受信する。
【0031】
そして、制御部200のCPU201は、I/F206に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC205にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部207からヘッドドライバ208に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト側のプリンタドライバで行っている。
【0032】
印刷制御部207は、上述した画像データをシリアルデータでヘッドドライバ208に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッドドライバ208に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ208に対して出力する。
【0033】
ヘッドドライバ208は、シリアルに入力される記録ヘッド4の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部207から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド4の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド4を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0034】
また、CPU201は、リニアエンコーダ25を構成するエンコーダセンサ24からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ5に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して主走査モータ5を駆動する。同様に、ロータリエンコーダ28を構成するエンコーダセンサ27からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ16に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して副走査モータ16を駆動する。
【0035】
なお、制御部200には、各種センサ215からの検知信号が入力され、また、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル214が接続されている。
【0036】
次に、上記の画像形成装置における制御部が実行する本発明の第1実施形態について図5及び図6を参照して説明する。なお、図5は同実施形態におけるメンテナンス動作の説明に供するフロー図、図6は同じく左空吐出動作の説明に供するフロー図である。
まず、図5に示すように、記録ヘッド4のメンテナンス動作(維持回復動作)を行うときには、キャリッジ3を装置本体の右側板100Rに突き当たるまで移動させ、キャリッジ3の突き当りを検出した位置(或いは当該突き当たりを検出した位置からキャリッジ3を所定量左側板100L側へ移動した位置)を検知して、当該位置をキャリッジ3の第1ホーム位置(第1ホームポジション:右ホーム位置)を決定する。なお、キャリッジ3の突き当たりは主走査モータ5の駆動電流を検知することなど検出できる。
【0037】
その後、キャリッジ3を移動させてリニアエンコーダ25からの検出パルスをカウントしてキャリッジ位置を検出しながら、記録ヘッド4を維持回復機構20まで移動させ、メンテナンス動作を行う。
【0038】
一方、図6に示すように、空吐出受け21に対して記録ヘッド4から空吐出する左空吐出動作を行うときには、キャリッジ3を装置本体の左側板100Lに突き当たるまで移動させ、キャリッジ3の突き当りを検出した位置をキャリッジ3の第2ホーム位置(第2ホームポジション:左ホーム位置)として決定する。
【0039】
そして、リニアエンコーダ25の検出パルスをカウントするキャリッジ位置カウンタのキャリッジ位置のカウント値(これがキャリッジ3の検出位置となる)を、左突き当て位置のデフォルト値に設定する。
【0040】
その後、リニアエンコーダ26の検出パルスをカウントしながらキャリッジ3を右側板方向に移動させ、キャリッジ23が左空吐出位置に到達したときには、記録ヘッド4から空吐出受け21に対して空吐出を行う左空吐出動作を行う。
【0041】
そして、左空吐出動作終了後、リニアエンコーダ25の検出パルスをカウントするカウンタのカウント値を第1ホーム位置を基準とするカウント値に切り替える。突き当て後のキャリッジの移動方向は左側板100Lと逆側であるため、キャリッジ3の想定外の側板100Lへの衝突が避けられるうえ、突き当て後の移動量が少ないため左空吐出位置とキャリッジの誤差も少なくなる。
【0042】
なお、印字中に行うホームポジション検知動作は左右いずれの突き当てで行うことも可能であるが、印字領域との距離が短いため、左端(左側板)100Lに対する突き当てで行うことが好ましい。
【0043】
このように、キャリッジを一方の側板側に突き当ててキャリッジの第1ホーム位置を決定するホーム位置決定手段と、キャリッジを他方の側板側に突き当ててキャリッジの第2ホーム位置を決定するホーム位置決定手段とを備えていることで、一方の側板(あるいは他方の側板)に対してのみキャリッジを突き当ててホーム位置を決定する場合に生じる他方の側板(あるいは一方の側板)に対する衝突のおそれを防止できる。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態について図7及び図8を参照して説明する。なお、図7は同実施形態における連続印刷時頁印刷終了時の処理を説明するフロー図、図8は同じく左空吐出動作の説明に供するフロー図である。
連続印刷を行っているときには、装置はキャリッジ3のホーム位置検知を行わないでキャリッジ3の移動制御を行う。そのため、エンコーダシート23に汚れが発生しているときに大量に連続印刷すると、キャリッジの検出位置と実際の位置のずれが蓄積して大きなずれとなってしまうおそれがある。このずれが発生しているときに、左空吐出動作を行おうとすると、キャリッジ3が左側板100Lに衝突するエラーが生じる可能性が高くなる、そこで、本実施形態では、連続印刷枚数が一定数(閾値)を超えている場合には、左空吐出動作の前に左突き当て動作による第2ホーム位置の決定を行うようにしている。
【0045】
つまり、図7に示すように、連続印刷中、ページごとの印刷終了のタイミングで連続印刷枚数をカウントするカウンタのカウント値をインクリメント(+1)する。この連続印刷枚数は、制御部200内に書き換え可能な不揮発性メモリ204に格納している。
【0046】
一方、図8に示すように、連続印刷中、左空吐出動作を行うときには、連続印刷枚数と左突き当てによる第2ホーム位置の決定を開始する予め定めた左突き当て開始閾値(所定枚数)を比較する。このとき、連続印刷枚数が左突き当て開始閾値以上になっていれば、左空吐出動作開始前にキャリッジ3の左突き当て(左側板100Lへの突き当て)を行い、キャリッジ3の第2ホーム位置の決定を行う。
【0047】
そして、リニアエンコーダ25の検出パルスをカウントするキャリッジ位置カウンタのキャリッジ位置のカウント値を左突き当て位置のデフォルト値に設定する。
【0048】
その後、リニアエンコーダ26の検出パルスをカウントしながらキャリッジ3を右側板方向に移動させ、キャリッジ23が左空吐出位置に到達したときには、記録ヘッド4から空吐出受け21に対して空吐出を行う左空吐出動作に行う。
【0049】
そして、左空吐出動作終了後、リニアエンコーダ25の検出パルスをカウントするカウンタのカウント値を第1ホーム位置を基準とするカウント値に切り替える。
【0050】
これに対し、連続印刷枚数が左突き当て開始閾値以上でなければ、そのまま第1ホーム位置を基準とするキャリッジ3の検出位置でキャリッジ3を左側板方向に移動制御し、キャリッジ3が左空吐出位置に到達したときには、記録ヘッド4から空吐出受け21に対して空吐出を行う左空吐出動作に行う。
【0051】
つまり、連続印刷枚数が左突き当て開始閾値未満の間は、右突き当て位置(第1ホーム位置)基準で動作し、連続印刷枚数が左突き当て開始閾値以上になると左空吐出動作前に左突き当て動作を追加し、左突き当て位置(第2ホーム位置)を決定し、この第2ホーム位置を基準としてキャリッジ位置を検出して左空吐出動作を行うようにしている。
【0052】
そして、左空吐出動作を行うとき、その前後でキャリッジ位置カウンタのカウント値を左ホームポジション(第2ホーム位置)基準の値と右ホームポジション(第1ホーム位置)基準の値とで切り替えている。これは左ホームポジション基準の値に切り替えたままで印字を行うと、右ホームポジション基準でのカウント値をもとに印刷していたときの画像とずれが生じる可能性があるため、印字を再開する前にカウンタのカウント値を右ホームポジション基準の値に戻すためである。
【0053】
なお、左突き当て開始閾値の決定方法は、実験より算出した値を代入する方法のほか、左側板衝突エラーが起こった際に連続印刷枚数で更新する方法などが考えられる。
【0054】
次に、本発明の第3実施形態について図9及び図10を参照して説明する。なお、図9は同実施形態におけるエンコーダ読み飛ばし検知動作の説明に供するフロー図、図10は同じく左空吐出動作の説明に供するフロー図である。
本実施形態では、エンコーダ読み飛ばし発生後に左突き当て位置(第2ホーム位置)基準の動作を行うようにしている。すなわち、エンコーダシート23に汚れが発生しているときに左空吐出動作を行おうとすると、キャリッジ3が左側板100Lに衝突するエラーが生じる可能性がある。そこで、このエラーを回避するためには、予めエンコーダ読み飛ばしが発生しているか否かを検出し、エンコーダ読み飛ばしが発生しているときには、左空吐出動作を行う前に、左側板突き当て位置(第2ホーム位置)を決定して、決定した第2ホーム位置基準の左空吐出動作を行う。
【0055】
まず、図9を参照して、エンコーダ読み飛ばし検知動作では、キャリッジ3を右側板100Rに突き当てる右突き当てを行い、突き当て位置をキャリッジ3の第1ホーム位置とする。そして、リニアエンコーダ25の検出パルスをキャリッジ位置カウンタでカウントしながらキャリッジ3を左側板100L方向に移動し、左側板100Lにキャリッジ3を突き当てる左突き当てを行う。
【0056】
そして、このときキャリッジ位置カウンタの検出パルスのカウント値を、エンコーダシート23に汚れが生じていない正常カウント値(これを、突き当て位置間距離基準値という。)と比較し、カウント値と突き当て位置間距離基準値との偏差が予め定めた値(閾値)以内であるときには正常(汚れなし)と判別し、閾値を超えるときには異常(汚れあり)と判別して、汚れありのときにはエンコーダ読み飛ばしフラグF(例えばNVRAM204を用いる)をセット(ON)する。
【0057】
次に、図10を参照して、連続印刷中、左空吐出動作を開始するときには、エンコーダ読み飛ばしフラグFをチェックする。このとき、エンコーダ読み飛ばしフラグFがONになっていれば、左空吐出動作前にキャリッジ3の左突き当て動作を行って、第2ホーム位置の決定を行う。
【0058】
その後、リニアエンコーダ25の検出パルスをカウントするキャリッジ位置カウンタのカウント値を左突き当て位置のデフォルト値に設定する。
【0059】
そして、リニアエンコーダ26の検出パルスをキャリッジ位置カウンタでカウントしながらキャリッジ3を右側板方向に移動させ、キャリッジ23が左空吐出位置に到達したときには、記録ヘッド4から空吐出受け21に対して空吐出を行う左空吐出動作に行う。
【0060】
そして、左空吐出動作終了後、リニアエンコーダ25の検出パルスをカウントするキャリッジ位置カウンタのカウント値を第1ホーム位置を基準とするカウント値に切り替える。
【0061】
一方、エンコーダ読み飛ばしフラグFがONでなければ、そのまま第1ホーム位置を基準としてキャリッジ3の位置を検出しながらキャリッジ3を空吐出受け21側に移動させて左空吐出動作を行う。
【0062】
次に、本発明の第4実施形態について図11及び図12を参照して説明する。なお、図11は同実施形態におけるエンコーダ読み飛ばし検知動作の説明に供するフロー図、図12は同じく環境温度と突き当て位置間距離基準値の補正係数の関係の一例を示す説明図である。
装置の置かれている環境の温度により、左右の突き当て位置間の距離は変動する。上記第3実施形態では、エンコーダ読み飛ばし検知動作のなかで突き当て位置間距離基準値と検出パルスのカウント値(エンコーダ読み取り回数)を比較している。しかしながら、環境温度によっては左右の突き当て位置間の距離が変動してエンコーダ読み飛ばしの誤検知を行うおそれがある。そこで、誤検知を防ぐため、エンコーダ読み飛ばし検知動作中、突き当て位置間距離基準値とエンコーダ読み取り回数の比較の直前に環境温度の取得と、環境温度に従った突き当て位置間距離基準値の補正を行うようにしている。
【0063】
環境温度に従った突き当て位置間距離基準値の補正は、例えば、
突き当て位置間距離基準値(補正後)=突き当て位置間距離基準値(補正前)×k
の演算を行って算出する。ここで、補正係数kは、図12に示すように、検出温度に対する突き当て位置間距離基準値の補正係数である。環境温度が低くなった場合、ある温度以下のkの値の値を一定値とする、もしくは、ある温度以下の場合エラーと判断して制御自体を行わない、という対応が考えられる。補正係数kは、例えば、図12に示すようなテーブルでNVRAM204などに格納保持している。
【0064】
そこで、図11に示すように、エンコーダ読み飛ばし検知動作では、キャリッジ3を右側板100Rに突き当てる右突き当てを行い、突き当て位置をキャリッジ3の第1ホーム位置とする。そして、リニアエンコーダ25の検出パルスをカウントしながらキャリッジ3を左側板100L方向に移動し、左側板100Lにキャリッジ3を突き当てる左突き当てを行う。
【0065】
そして、環境温度を取得し、突き当て位置間距離基準値を調整する。その後、検出パルスのカウント値を、エンコーダシート23に汚れが生じていない補正後の突き当て位置間距離基準値と比較し、カウント値と突き当て位置間距離基準値との偏差が予め定めた値(閾値)以内であるときには正常(汚れなし)と、閾値を超えるときには異常(汚れあり)と判別し、汚れありのときにはエンコーダ読み飛ばしフラグF(例えばNVRAM204を用いる)をセット(ON)する。
【0066】
なお、上述した各種処理は、ROMなどに格納されたプログラムによってコンピュータに行なわせることができ、このプログラムは、記憶媒体に記憶して提供することができ、或はインターネットネットなどのネットワークを通じてダウンロードすることで提供される。また、上記実施形態で説明した画像形成装置とホスト側(情報処理装置)とを組みあせて画像形成システムを構成することもできる。
【符号の説明】
【0067】
3 キャリッジ
4 記録ヘッド
23 エンコーダスケール
24 エンコーダセンサ
25 リニアエンコーダ
200 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成する画像形成手段が搭載されて主走査方向に移動されるキャリッジと、
前記キャリッジを一方の側板側に突き当てて前記キャリッジの第1ホーム位置を決定する第1ホーム位置決定手段と、
前記キャリッジを他方の側板側に突き当てて前記キャリッジの第2ホーム位置を決定する第2ホーム位置決定手段と、を備えている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2ホーム位置検出手段は、連続印刷枚数が所定枚数を超えたときに前記第2ホーム位置を決定する動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記キャリッジを一方の側板側に突き当てたときの位置と前記キャリッジを他方の側板側に突き当てたときの位置との距離を検出する突き当て位置間距離検出手段を備え、
前記第2ホーム位置検出手段は、前記突き当て位置間距離検出手段で検出された突き当て位置間距離と基準値との偏差が所定値を超えるときに前記第2ホーム位置を決定する動作を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
初期動作を行うとき、前記突き当て位置間距離検出手段で前記突き当て位置間距離を検出し、前記検出された突き当て位置間距離を前記基準値とすることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
環境温度を検出する手段と、前記検出された環境温度に応じて前記突き当て位置間距離の基準値を補正する手段とを備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像を形成する画像形成手段が搭載されて主走査方向に移動されるキャリッジを画像形成装置本体の一方の側板側に突き当てて前記キャリッジの第1ホーム位置を決定する第1ホーム位置決定処理と、
前記キャリッジを他方の側板側に突き当てて前記キャリッジの第2ホーム位置を決定する第2ホーム位置決定処理と、をコンピュータに行わせる
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−35416(P2012−35416A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174682(P2010−174682)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】