説明

画像形成装置用のベルト、ベルト張架装置及び画像形成装置

【課題】多数枚数プリントしても、ベルトのひび割れや破断の発生しにくい画像形成装置用のベルトを提供すること、また、ベルトの蛇行による画像欠陥がない画像を形成することができるベルト張架装置又は画像形成装置を提供すること。
【解決手段】ベルト本体と、該ベルト本体の少なくとも片側の側縁に沿って該ベルト本体に接着されたガイド部材と、該ガイド部材の表面に、該ベルト本体の周方向に沿って設けられた切り欠きとを有することを特徴とする画像形成装置用のベルト、前記ベルトと該ベルトを内側から張架して支持する複数のロールとを備えるベルト張架装置、及び、前記ベルト又は前記ベルト張架装置を備えた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置用のベルト、ベルト張架装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置としては、例えば、中間転写ベルトを使用した中間転写方式のカラー画像形成装置がある。これは、電子写真プロセス等によりトナー像が形成される像担持体(例えば感光体ドラム)の転写部で接触して回転するような中間転写ベルトを複数のベルト支持ロール間に張架して配設したものであり、その像担持体上に形成される複数のトナー像を一旦中間転写ベルトの同じ位置に重ねあわせるように一次転写した後、その中間転写ベルト上に転写されたトナー像を用紙に一括して二次転写するものである。そして、用紙上に二次転写された多色のトナー像は、その後定着装置により定着されてカラー画像となる。
【0003】
この他、ベルトを備えた画像形成装置としては、用紙を担持して複数の画像形成ユニットの転写部を通過させるように搬送する用紙搬送ベルトを使用した、いわゆるタンデムタイプのカラー画像形成装置もある。これは、各色成分のトナー像を個々に形成するため画像形成ユニットを複数並べて配置し、その各画像形成ユニットの転写部で接触して回転するように用紙搬送ベルトを複数のベルト支持ロール間に張架して配設したものであり、その用紙搬送ベルトに吸着して担持した用紙を各画像形成ユニットの転写部を通過させるように搬送することにより、各画像形成ユニットで形成される各トナー像を同じ用紙に順次重ねあわせるように転写し、最後に定着させてカラー画像とするものである。
【0004】
ところで、このような中間転写ベルトや用紙搬送ベルト等の画像形成装置用のベルトを使用したカラー画像形成装置では、そのベルトを張架支持する複数のベルトロールにおいて、回転軸の平行度やロール外径がばらつくことや、そのベルト自体の周長変化により張力が不均一となること等が原因となって、ベルトが直進走行せず、ロールの軸方向に変位した状態で走行する、いわゆる片寄り走行や蛇行が発生することがある。このため、そのベルトに直接またはベルトに担持された用紙に順次転写される各トナー像の位置がずれてしまうことがあり、この場合には、最終的には用紙上に形成されるカラー画像に色ずれや色相変化等が発生するという不具合がある。
【0005】
このような寄り走行を防止するためロールの外周に溝を設け、さらにその溝に嵌合するガイドを、画像形成装置用のベルトのベルト本体の内周面に設けることが提案されている(特許文献1〜3)。
しかしガイドを接着した時のガイドの真直度によりベルトは蛇行走行してしまう。前記特許文献3に記載されているようにガイド断面形状と溝形状が同じ場合、ガイドの真直度が蛇行量(レジのズレ量)となる。またロール外周の溝の側面が垂直な場合も、ガイドの真直度が蛇行量となるうえに、真直度の変化点で溝にガイドが入らず、ガイドがロールに乗り上げ、ベルトのひび割れや破断の原因となる。
【0006】
【特許文献1】特開平11−338175号公報
【特許文献2】特開2000−304102号公報
【特許文献3】特開2002−145429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする1つの課題は、多数枚プリントしても、ベルトのひび割れや破断の発生しにくい画像形成装置用のベルトを提供することであり、他の1つの課題は、ベルトの蛇行による画像欠陥がない画像を形成することができるベルト張架装置又は画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の手段(1)、(5)及び(7)により解決された。好ましい実施態様である(2)〜(4)及び(6)と共に列記する。
(1) ベルト本体と、該ベルト本体の少なくとも片側の側縁に沿って該ベルト本体に接着されたガイド部材と、該ガイド部材の表面に、該ベルト本体の周方向に沿って設けられた切り欠きとを有することを特徴とする画像形成装置用のベルト、
(2)ガイド部材の全体断面が多角形であり、前記切り欠き部の断面形状が、矩形、三角形及び台形よりなる群から選ばれた1種の形状又はこれらの組合せである、(1)に記載の画像形成装置用のベルト、
(3)前記切り欠きの断面形状における切り欠きの最大の深さが、ガイド部材の最大の厚さの3分の2以下である、(1)又は(2)に記載の画像形成装置用のベルト、
(4)前記切り欠きの断面形状における切り欠きの最大の幅が、ガイド部材の幅の2分の1以下である(1)〜(3)のいずれか1つに記載の画像形成装置用のベルト、
(5)(1)〜(4)のいずれか1つに記載の画像形成装置用のベルトと、該画像形成装置用のベルトを内側から張架して支持する複数のロールとを備えることを特徴とするベルト張架装置、
(6)画像形成装置用のベルトの内面側に設けられた前記ガイド部材を前記ロールの外周に設けた案内溝により案内し、案内溝の両側の側面に設けられた傾斜が20°以上50°以下である、(5)に記載のベルト張架装置、
(7)(1)〜(4)のいずれか1つに記載の画像形成装置用のベルト、又は(5)又は(6)に記載のベルト張架装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明のベルトによれば、多数枚数プリントしても、ベルトのひび割れや破断の発生しにくい画像形成装置用のベルトを得ることができた。また、本発明のベルト張架装置又は画像形成装置によれば、画像形成装置用のベルトの蛇行による画像欠陥がない画像を形成することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の画像形成装置用のベルトは、ベルト本体と、該ベルト本体の少なくとも片側の側縁に沿って該ベルト本体に接着されたガイド部材と、該ガイド部材の表面に、該画像形成装置用のベルトの周方向に沿って設けられた切り欠きとを有することを特徴とする。
以下、本発明の画像形成装置用のベルト及びその実施態様を、適宜図面を参照しながら説明する。
【0011】
<画像形成装置用のベルト>
本発明の画像形成装置用のベルト(以下、単に「ベルト」という場合がある。)は、例えば、表面にトナー像が転写される用紙を担持する用紙担持面またはトナー像が形成されるトナー像担持面として機能するベルト本体を有し、前記ベルト本体の少なくとも片方の側縁に沿って、帯状のガイド部材が前記ベルト本体に固定された構成を有する。このガイド部材は、ベルト本体の蛇行防止のために作用する。
【0012】
ここで、図面を参照して本発明のベルトを説明する。図1は、ガイド部材を設けた本発明のベルトを示す斜視図(一部、断面で表わしている)であり、図2は、図1において矢印Aの方向から見た、無端状のベルト本体及びガイド部材の断面図である。
図1に示すように、本発明のベルト1は、ベルト本体2の表面にその側縁に沿うようにしてガイド部材3を設けたものである。ここで「側縁」は端部をも含む意味である。該ガイド部材3は、図2に示すように、接着部4を介してベルト本体に設けられていることが好ましい。ただし、ガイド部材が直接ベルト本体の表面に接着されている態様を排除するものではない。なお、図1においては、ベルト本体2の内側面にガイド部材3が設けられていることが好ましいが、ベルト1の適用される用途に応じて、ベルト本体2の外側面に設けてもよい。
【0013】
また、図2に示すように、本発明のベルト1は、ガイド部材3が、接着部4としてシート形状の感熱型接着剤(感熱性接着剤シート)を介して、ベルト本体2に接着固定されていることが好ましい。また、ガイド部材3が弾性接着剤からなる層を介して、ベルト本体2に接着固定されていることも好ましい。
【0014】
本発明のベルト1は、後述する画像形成装置に、複数のロールにより回転可能に支持されて備えることができ、ベルト本体2の外周面が、トナー像が転写される用紙を担持する用紙担持面、トナー像を転写する中間転写面、潜像を形成する感光面、被接触部材を帯電させる帯電面、現像剤を保持する現像剤保持面等として機能することができる、樹脂製のベルトであって、電子写真式複写機、レーザープリンター等における感光装置、中間転写装置、転写分離装置、搬送装置、帯電装置、現像装置等に好適に使用される。ここで、本発明のベルトを構成するベルト本体は、ベルトの用途、機能等に応じて、材質、形状、大きさ等を適宜設定することができる。
【0015】
図3は、ガイド部材の切り欠きの断面形状を説明するための図である。
本発明において使用するガイド部材の全体断面は多角形であることが好ましい。ここで「全体断面」とは、切り欠きを設ける前のガイド部材全体の断面形状をいい、多角形としては、矩形及び台形が好ましく、矩形がより好ましい。
ガイド部材の表面に設けられた切り欠き部の断面形状は、適宜選択でき、半円形、楕円形、矩形、三角形(くさび形状)及び台形よりなる群から選ばれた1種の形状であることが好ましい。ガイド部材の切り欠き断面形状は、図3(a)に示す矩形、図3(b)に示す三角形(くさび形状)及びくさび形状の連なった図3(d)又は図3(c)に示す台形であることがより好ましい。例示した諸形状は、ガイド部材を蛇行防止のために規制する場合のガイド部材が応力により変形しにくく、ガイド部材に切り欠きを成形又は加工することが容易である。
【0016】
前記切り欠き部の断面形状において、切り欠きの最大の深さは、ガイド部材の厚さの3分の2以下であることが好ましく、3分の1以上3分の2以下であることがより好ましい。また、前記切り欠き部の断面形状において、切り欠きの最大の幅は、ガイド部材の幅の2分の1以下であることが好ましく、4分の1以上2分の1以下であることがより好ましい。
切り欠き部の断面形状が上記の範囲内の最大深さ及び最大幅を有する場合には、ガイド部材の真直度の変化をガイド部材が良好に吸収することができる。この結果、ベルトの上下方向の変位量が低減し、ベルト本体のひび割れや破断をほぼ完全に解消することができる。
【0017】
−ベルト本体−
ベルト本体の材質としては、ヤング率2,000MPa以上の樹脂材料が好ましく用いられる。ヤング率2,000MPa以上の樹脂材料を用いることで、ベルト走行時に、ガイド部材に加わる応力による変形を抑制することができる。なお、ベルト本体のヤング率は大きければ大きい程良いが、実用上は8,000MPa以下であり、6,000MPa以下であることが好ましい。ベルト本体のヤング率は、使用する樹脂材料の化学構造を選択することで上記範囲に制御することができ、芳香環構造を含むものほどヤング率を高くすることができる。
なお、ヤング率は、JIS K7127に準じて引張試験を行い、得られた応力・歪曲線の初期ひずみ領域の曲線に接線を引き、その傾きにより求める。
ベルト本体2の材質としては、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。なお、ベルト本体は環状であれば、つなぎ目があってもなくてもよい。ベルト本体の厚さは、通常、0.02〜0.2mm程度が好ましい。
本発明のベルトが、特に中間転写ベルト又は用紙搬送ベルトとして用いられる場合、ベルト本体としては、導電剤を含有するポリイミド系樹脂や導電剤を含有するポリアミドイミド系樹脂を用いた半導電性ベルトが好ましく使用される。ここで、「半導電性」とは、後述する表面抵抗率及び体積抵抗率の範囲を満たすことを意味する。
【0018】
導電剤を含有する、ポリイミド系樹脂又はポリアミドイミド系樹脂を用いたベルト本体の作製は、例えば、円筒体の外面に導電剤を含有するポリアミドイミド溶液を塗布して乾燥・加熱し、ポリアミドイミド樹脂皮膜を円筒体から剥離する等、公知の方法によって行うことができる。
【0019】
本発明のベルトを中間転写ベルトや用紙搬送ベルトとして用いる場合、1×109Ω/□〜1×1014Ω/□の範囲に表面抵抗率を、1×108〜1×1013Ωcmの範囲に体積抵抗率を制御することが好ましく、そのために必要に応じて導電剤(導電性フィラー)を添加することができる。このような導電剤として、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅合金などの金属または合金、酸化スズ、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化スズ−酸化インジウムまたは酸化スズ−酸化アンチモン複合酸化物などの金属酸化物、またはポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなどの導電性ポリマーなどが好適に使用できる。これら導電性フィラーは単独で使用してもよく、又は2種以上を併用してもよい。中でも、導電性フィラーとしては、コストの点でカーボンブラックが好適である。また、必要に応じて分散剤、滑剤などの加工助剤を添加することができる。
ここで、表面抵抗率は、(株)ダイヤインスツルメント製ハイレスタUPMCP−450型URプローブを用いて、22℃、55%RHの環境下で測定し、JIS K 6911に従い測定する。ベルトの24点(幅方向3箇所×周方向8箇所)を測定して、その平均値をベルトの表面抵抗率とする。
【0020】
ベルト本体は、既述のように、柔軟性のある材料で構成されている必要があり、弾性を有する熱可塑性樹脂や合成ゴムが好ましく使用される。またベルト本体の耐久性という観点から劣化や変質しにくいポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂を主成分とすることが好ましい。
ベルト本体の製造例を以下に例示する。溶剤可溶型のポリアミドイミド樹脂(東洋紡(株)製:バイロマックスHR16NNなど)又はポリイミド樹脂(宇部興産製ユーワニスSなど)に、導電剤としてカーボンブラックを樹脂成分100重量部あたり、15〜35重量部添加し、混合物を分散して得られる塗液を、アルミ製パイプの外面に塗布した後、焼成を行なってポリアミドイミド樹脂又はポリイミド樹脂のベルト本体を製造する。次にこのベルト本体を、円筒型パイプに挿入して巻き付けた状態で、又は、一旦成形パイプから取り外して別の2軸ロールに張架した状態で、所定の幅に設定した一対の刃を差し込み、ベルトを1回転させることで、所望の幅を有するベルト本体を製造することができる。
【0021】
(ベルト本体幅の段差の解消)
所定の幅に設定した1対の刃をベルト本体に差し込み上記のように1回転させると、カットの始点と終点には通常段差が生じる。この段差箇所は円弧形状により取り除くことが好ましい。例えばベルト幅365mmのカット始点と終点位置に幅0.8mmの段差が発生した場合、深さが2mmで弦の長さが20mmの円弧形状により、この段差をポンチを用いて除去することができる。幅に段差のある箇所は、そのままではベルト本体の破断の開始点になるので、この段差を円弧形状により除去することによりベルト本体の破断強度を向上させることができる。段差を円弧形状により除去したベルト本体は、亀裂や破断を発生することがなく長期にわたって高速回転が可能となる。
なお、このような段差の解消は、ベルト本体にガイド部材を接着する前に実施してもよく、又は、ベルト本体にガイド部材を接着した後に実施してもよい。
【0022】
−ガイド部材−
ベルト本体がロールに張架されて、ロール軸方向へ移動しようとする寄り力が発生すると、その寄り力に抗して発生する同じ強度の反力(応力)がガイド部材に直接かかることとなる。この応力をガイド部材自身である程度分散吸収することができるという観点から、ガイド部材は、デュロメータ硬さがA60〜A90の範囲内の弾性部材であることが好ましく、デュロメータ硬さがA70〜A90の範囲内の弾性部材であることが特に好ましい。デュロメータ硬さが上記の範囲内であると、ガイド部材が支持ロールに乗り上げたり、ベルト本体がベルト支持ロールに追従しなくなってしまうことがない。デュロメータ硬さは、JIS K6253(1997)に準拠して、ガイド部材を6mmの厚みとして、切り欠きのない部分で、タイプAデュロメーターを用いて測定する。
【0023】
上記のようなデュロメータ硬さを有する弾性部材の材質としては、ポリウレタン樹脂、ネオプレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコンゴム、ポリエステルエラストマー、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等の適度な硬度を有する弾性体等が使用できる。これらの中でも、電気絶縁性、耐湿、耐溶剤、耐オゾン及び耐熱性、耐磨耗性を考慮すると、特にポリウレタンゴムやシリコンゴムが好適に用いられる。
【0024】
前記ガイド部材の断面形状は、ベルトの使用条件等により適宜定めることができるが、蛇行防止効果を十分に得るためには、切り欠きを設ける前の断面形状を略矩形とすることが好ましい。前記ガイド部材の幅は蛇行防止効果、耐久性等の点から、通常1〜10mmが好ましく、特に4〜7mmが好ましい。厚みは、特に制限されないが、蛇行防止効果や耐久性等の観点から、通常0.5〜5mmが好ましく、特に1〜2mmが好ましい。
【0025】
接着面と対向する表面に開放された切り欠きを有するガイド部材は、ウレタンゴムやシリコンゴムを切り欠きに対応する凸部を有する型に注入して成形することができる。また、まず切り欠きを有しないガイド部材を成形した後に、切り欠きに相当する部分を機械的にまたは炭酸ガスレーザーにより除去することにより製造することもできる。
【0026】
−画像形成装置用のベルトの作製−
ベルトの作製は、シート状のベルト本体とガイド部材とを接着し、その後ベルト本体の端部間を接着して環状のベルトを作製してもよいし、ベルト本体を環状に形成した後にガイド部材を接着してベルトを作製してもよい。ガイド部材は、ベルト本体の片方の側縁に沿って設けるのみでもよいが、さらなる蛇行防止効果、耐久性及び補強効果等の点から、特に広幅のベルト本体の場合には、その両方の側縁に沿って設けることがより好ましい。ガイド部材のベルト本体への接着位置(側縁からの距離)は、ベルトの用途、機能、ベルトを用いる装置等に応じて適宜設定される。ガイド部材は、ベルト本体の端部に沿って接着してもよく、端部からベルト本体の中央側に適宜入った位置に固定してもよい。
【0027】
図1では、ベルトは、ベルト本体2の内側面にガイド部材3が接着されているが、ガイド部材3の接着面は、ベルト1の適用される用途に応じて、ベルト本体2の外側面に接着されていてもよい。また、ガイド部材3はベルト1の補強効果の点から全周に設けることが好ましいが、ガイド部材のつなぎ目に1〜10mm程度の隙間を有していてもよい。
【0028】
(接着部)
ガイド部材は、ベルト本体の、少なくとも片側の側縁に沿って、ベルト本体に周方向に固定されている。ガイド部材の周方向に垂直な断面の外周は、切り欠きを設ける前の状態では、矩形又は台形であり、矩形であることが好ましい。ガイド部材の断面形状が矩形又は台形の場合、対向する2辺の内の一方はベルト本体に固定されており、残る他の一辺には開放された切り欠きが設けられている。すなわち、ガイド部材は、ガイド部材の表面に、ベルト本体の周方向に沿って、すなわち回転方向と同方向に、開放された切り欠きを有する。
【0029】
前記ベルト本体及び前記ガイド部材は、ベルト本体の、少なくとも片側の側縁に沿って、ベルト本体に周方向に固定される。この固定のためには、前記ベルト本体と前記ガイド部材とを接着部で固定することが好ましく、弾性接着剤を含有する感熱性接着シートにより接着することがより好ましい。
【0030】
(弾性接着剤)
本発明に用いられる弾性を有する接着剤(弾性接着剤)は、硬化反応後のデュロメータ硬さがA30〜A50の範囲である接着剤をいい、作業性等の観点から一液性の弾性接着剤が好ましく用いられる。また更に、弾性及び接着強度が良好である観点から、シリコンポリマーを含有してなる弾性接着剤が好ましい。
そのような弾性接着剤の具体例としては、セメダイン(株)製のアクリル変性シリコンポリマーを主成分とするスーパーXNo8008、コニシ(株)製の特殊変性シリコンポリマーを主成分とするボンドMOS7などを挙げることができ、ベルト本体との接着強度よりセメダイン(株)製のアクリル変性シリコンポリマーを主成分とするスーパーXNo8008が好ましく用いられる。
【0031】
セメダイン(株)製のアクリル変性シリコンポリマーを主成分とするスーパーXNo8008等のシリコンポリマー含有弾性接着剤のみを単独で接着部として用いた場合、一般には、常温で2時間以上の硬化時間が必要であり、作業性が悪い。ガイド部材に接着剤を塗布した後で、60℃〜140℃で加熱すると硬化時間を短縮することができる。
本発明において、一液性の弾性接着剤の代わりに、感熱型接着シートを用いることもできる。この感熱型接着シートは、不織布に弾性接着剤を配合したシートであることが特に好ましく、接着操作中に接着剤が不織布中に保持されるため、ガイド部材よりはみ出すことを防止することができる。また、この不織布に弾性接着剤を配合した感熱型接着シートは、ベルトの長時間駆動によってもガイド部材が位置ずれしたり、剥離する故障を防止するために有用である。
【0032】
なお、貼り合わせは、気泡を入れずに貼り合わせることが重要であり、通常ハンドロール、ゴムロール、プレス等での貼り合わせ、減圧下での貼り合わせ、加圧下での貼り合わせ等の方法を用いることが好ましい。また、ガイド部材の表面またはベルト本体の表面に、コロナ処理、ブラスト処理、プライマー処理またはエージング等を行って接着力を向上させていてもよい。
【0033】
<張架装置、ガイド部材の案内方法>
本発明の他の一つの側面は、ベルト張架装置に係り、上記のベルトと、該ベルトを内側から張架して支持する複数のロールとを備える。
すなわち、本発明のベルトは、このベルトを内側から張架して支持する複数のロールを備えるベルト張架装置において使用することができる。ロールの数は2以上であり、2〜4であることが好ましい。
図4は、ロールに設けたガイド部材用の案内溝を説明するための斜視図又は部分断面図である。
【0034】
後述する画像形成装置において、本発明のベルトは、図4に示すようなガイド部材3を案内する(規制する)ための、案内溝20が設けてあるロール21により張架されることが好ましい。この場合、案内溝20はロール21に直接設けられていてもよく、又は、ロールに隣接して設けられたロールと同軸同径で自由回転可能なリング(プーリー)22に設けられていてもよい。いずれの場合にも、本発明のベルト1におけるガイド部材3を、案内溝20の少なくともいずれかの側面の傾斜面に沿わせて規制することにより、ベルト1の片寄り走行や蛇行を防止することができる。なお、図4の(A)は、案内溝20が設けてあるロール21を示すための斜視図であり、図4の(B)は、図4の(A)の案内溝20が設けてあるロール21を、ロール21の面で切断したときの要部拡大断面図である。この図4に示す実施態様では、案内溝20は、ロール21の中央部と同軸同径で隣接する自由回転リング(プーリー)22に設けられている。
【0035】
ガイド部材の乗り上げ防止のために案内溝20の側面に傾斜が設けられており、その傾斜角を図4(B)にαで示す。
本発明者等は、切り欠きのないガイド部材を用いて案内溝の傾斜角の影響を検討した。その結果、傾斜角αが小さい場合(20°未満)乗り上げ防止効果は小さく、蛇行の抑制効果も少ない。また傾斜角が大きい場合(20°以上50°以下)、溝内にガイド部材は完全に納まらず、側面にガイド部材が多少乗り上げた状態でベルトは回転する。この場合真直度の変化に応じて乗り上げ量が変化するため蛇行はなくなるが、常にガイド部材が側面に乗り上げた状態であり、ベルトの変形が常に発生しているため、真直度の変化点でベルトの変形が増加し、ベルトのひび割れや破断となる。さらに傾斜角が大きい場合(50°を超える)は寄り走行を防止する効果は少なくなる。
ベルト本体に切り欠きを有するガイド部材を接着したベルトを使用する場合には、ベルト張架装置のロールに設けた案内溝の両壁面の傾斜角αは20°以上50°以下であることが好ましい。ガイド部材が側面に乗り上げた状態になっても、ベルトの切り欠きがガイド部材の変形を容易にするために、ベルトの片寄り走行や蛇行を防止することができる。
また、ベルト1は、図4(C)に示すように、そのガイド部材3が案内溝20の片側の側面の傾斜部に当接するように張架されることが好ましい。このようにガイド部材3がベルト案内溝20の側面により規制されることにより、ベルト1の片寄り走行や蛇行を防止することができ、ベルトのひび割れや破断も防止できる。
【0036】
このベルト張架装置は、既に図4により説明したように、ベルトの内周面に設けられた前記ガイド部材をロール又はプーリーの外周に設けた案内溝により案内することにより、ベルトの蛇行やロールへの乗り上げを防止することができる。より詳しくは、ベルト本体の内周面に接着したガイド部材を、ロールの側縁に設けた案内溝に嵌合させることにより、ベルト本体の蛇行等を防止することができる。この場合、案内溝は、ロールの側縁部にロールに直接設けられていてもよく、また、ロールと共通の回転軸と外径を有し、ロールに隣接して自由回転するプーリーの外表面に設けられてもよい。
いずれの場合にも、ガイド部材を案内溝より規制することにより、ガイド部材の真直度に影響されることなくベルト本体が搬送され、ガイド部材がロール又はプーリーに乗り上げることを防止できるので、ひび割れや破断のない信頼性の高いベルトを得ることができる。
【0037】
図5は、ベルト張架装置の別の実施態様を示す要部断面図であり、支持ロールの両端の傾斜部によりベルト本体の両側の側縁に設けられたガイド部材を規制する態様を示す部分断面図である。
図5に示すような、ベルト本体の両側縁に設けられたガイド部材は、広幅のベルト本体の場合に、特に好ましく適用できる。ベルト1は、図5に示すように、ロール21の両側に設けられた傾斜面に当接するように張架されることが好ましい。この場合、ガイド部材3がロール端部の両側に設けられた傾斜面のどちらか1つの傾斜面に当接して規制されることにより、ベルト1の片寄り走行や蛇行を防止することができる。この場合、ロールの両側に設けられた傾斜の角度は20°〜50°であることが好ましい。
なお、さらに別の実施態様として、図4に示したような案内溝をロールの両端部に設けて、ベルト本体の両側縁に接着したガイド部材を案内することもできる。
【0038】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、本発明のベルトを用いた画像形成装置であれば特に限定されるものではなく、該ベルトは、例えば用紙搬送ベルトや中間転写ベルトとして用いられる。該画像形成装置の態様としては、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置や、感光体ドラム等の像担持体上に担持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像装置を備えた複数の像担持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。
【0039】
以下に、本発明の画像形成装置の一例として、一次転写を繰り返すカラー画像形成装置を示す。図6は、本発明のベルトを中間転写ベルトとして備えた画像形成装置を示す概略図である。
図6に示す画像形成装置は、像担持体としての感光体ドラム101、中間転写体としての中間転写ベルト102、転写電極であるバイアスロール103、被転写体である用紙を供給するトレー104、BK(ブラック)トナーによる現像装置105、Y(イエロー)トナーによる現像装置106、M(マゼンタ)トナーによる現像装置107、C(シアン)トナーによる現像装置108、ベルトクリーナー109、剥離爪113、ベルト支持ロール121、123及び124、バックアップロール122、導電性ロール125、電極ロール126、クリーニングブレード131、用紙141、ピックアップロール142、並びにフィードロール143を備えてなり、中間転写ベルト102として本発明のベルトが用いられる。
中間転写ベルト102の内側面に備えられたガイド部材は、ベルト支持ロール121、123及び124の側縁部に当接するように位置するため、ベルト走行時、中間転写ベルト102はベルト部材に案内され、中間転写ベルト102はベルト走行時の蛇行を起こさない。
【0040】
図6に示す画像形成装置において、感光体ドラム101は矢印F方向に回転し、図示しない帯電装置でその表面が一様に帯電される。帯電された感光体ドラム101にレーザー書込み装置などの画像書き込み手段により第一色(例えば、BK)の静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置105によってトナー現像されて可視化されたトナー像Tが形成される。トナー像Tは感光体ドラム101の回転で導電性ロール125が配置された一次転写部に到り、導電性ロール125からトナー像Tに逆極性の電界を作用させることにより上記トナー像Tを静電的に中間転写ベルト102に吸着させつつ中間転写ベルト102の矢印G方向の回転で一次転写される。導電性ロール125は、図6に示したように感光体ドラム101の直下に配置していても、感光体ドラム101の直下からずれた位置に配置させてもよい。
【0041】
以下、同様にして第2色のトナー像、第3色のトナー像、第4色のトナー像が順次形成され中間転写ベルト102において重ね合わせられて、多重トナー像が形成される。なお、このときのトナーは一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよい。
【0042】
中間転写ベルト102に転写された多重トナー像は、中間転写ベルト102の回転でバイアスロール103が設置された二次転写部に到る。二次転写部は、中間転写ベルト102のトナー像が担持された表面側に設置されたバイアスロール103と該中間転写ベルト102の裏側からバイアスロール103に対向するごとく配置されたバックアップロール122及びこのバックアップロール122に圧接して回転する電極ロール126から構成される。
【0043】
用紙141は、用紙トレー104に収容された用紙束からピックアップロール142で一枚ずつ取り出され、フィードロール143で二次転写部の中間転写ベルト102とバイアスロール103との間に所定のタイミングで給送される。給送された用紙141には、バイアスロール103及びバックアップロール122による圧接搬送と中間転写ベルト102の回転により、該中間転写ベルト102に担持されたトナー像が転写される。
【0044】
トナー像が転写された用紙は、最終トナー像の一次転写終了まで退避位置にある剥離爪113を作動せることにより中間転写ベルト102から剥離され、図示しない定着装置に搬送され、加圧/加熱処理でトナー像を固定して永久画像とされる。なお、多重トナー像の用紙への転写の終了した中間転写ベルト102は、二次転写部の下流に設けたベルトクリーナー109で残留トナーの除去が行われて次の転写に備える。また、バイアスロール103は、ポリウレタン等からなるクリーニングブレード131が常時当接するごとく取り付けられており、転写で付着したトナー粒子や紙紛等の異物が除去される。
【0045】
単色画像の転写の場合、一次転写されたトナー像Tを直ちに二次転写して用紙141を定着装置に搬送するが、複数色の重ね合わせによる多色画像の転写の場合、各色のトナー像が一次転写部で正確に一致するように中間転写ベルト102と感光体ドラム101との回転を同期させて各色のトナー像がずれないようにする。上記二次転写部では、バイアスロール103と中間転写ベルト102を介して対向配置したバックアップロール122に圧接した電極ロール126にトナー像の極性と同極性の出圧(転写電圧)を印加することで該トナー像を用紙に静電反発で転写する。
以上のようにして、画像を形成することができる。
【0046】
次に、本発明の画像形成装置の他の一例を示す。図7は、本発明のベルトを用紙搬送ベルトとして備えた画像形成装置を示す概略図である。
図7に示す画像形成装置は、ユニットY、M、C、BKと、用紙搬送ベルト206と、転写ロール207Y、207M、207C、207BKと、用紙搬送ロール208と、定着器209とを備えており、用紙搬送ベルト206として、本発明のベルトが用いられる。
用紙搬送ベルト206の内周側に備えられたガイド部材(不図示)は、ベルト支持ロール210、211、212及び213の側縁部に当接するように位置するため、ベルト走行時、用紙搬送ベルト206はベルト部材により案内される。用紙搬送ベルト206は、ガイド部材が、支持ロール210等に形成された案内溝に嵌合して走行することにより、ベルト走行時に蛇行する問題を起こさない。
【0047】
ユニットY、M、C、BKは、矢印の時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転可能にそれぞれ感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKが備えられる。感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの周囲には、帯電ロール202Y、202M、202C、202BKと、露光器203Y、203M、203C、203BKと、各色現像装置(イエロー現像装置204Y、マゼンタ現像装置204M、シアン現像装置204C、ブラック現像装置204BK)と、感光体ドラムクリーナー205Y、205M、205C、205BKとがそれぞれ配置されている。
【0048】
ユニットY、M、C、BKは、用紙搬送ベルト206に対して4つ並列に、ユニットBK、C、M、Yの順に配置されているが、ユニットBK、Y、C、Mの順等、画像形成方法に合わせて適当な順序を設定することができる。
【0049】
用紙搬送ベルト206は、ベルト支持ロール210、211、212、213によって、矢印の反時計方向に感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと同じ周速度をもって回転可能になっており、ベルト支持ロール212、213の中間に位置するその一部が感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとそれぞれ接するように配置されている。用紙搬送ベルト206には、ベルト用クリーニング装置214が備えられている。
【0050】
転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、用紙搬送ベルト206の内側であって、用紙搬送ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと、用紙搬送ベルト206を介してトナー画像を用紙(被転写体)216に転写する転写領域(ニップ部)を形成している。転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、図7のように感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの直下に配置していても、直下からずれた位置に配置してもよい。
【0051】
定着器209は、用紙搬送ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとのそれぞれの転写領域(ニップ部)を通過した後に搬送できるように配置されている。
【0052】
用紙搬送ロール208により、用紙216は用紙搬送ベルト206に搬送される。
【0053】
図7に示す画像形成装置において、ユニットBKにおいては、感光体ドラム201BKを回転駆動させる。これと連動して帯電ロール202BKが駆動し、感光体ドラム201BKの表面を所定の極性と電位に一様に帯電させる。表面が一様に帯電された感光体ドラム201BKは、次に、露光器203BKによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
【0054】
続いて該静電潜像は、ブラック現像装置204BKによって現像される。すると、感光体ドラム201BKの表面にトナー画像が形成される。なお、このときのトナーは一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよい。
【0055】
このトナー画像は、感光体ドラム201BKと用紙搬送ベルト206との転写領域(ニップ部)を通過すると同時に、用紙216が静電的に用紙搬送ベルト206に吸着して転写領域(ニップ部)まで搬送され、転写ロール207BKから印加される転写バイアスによって形成される電界により、用紙216の表面に 順次転写される。
【0056】
この後、感光体ドラム201BK上に残存するトナーは、感光体ドラムクリーナー205BKによって清掃・除去される。そして、感光体ドラム201BKは、次の転写サイクルに供される。
【0057】
以上の転写サイクルは、ユニットC、M及びYでも同様に行われる。
【0058】
転写ロール207BK、207C、207M及び207Yによってトナー画像を転写された用紙216は、さらに定着器209に搬送され、定着が行われる。
以上により用紙上に所望の画像が形成される。
【0059】
更に、本発明の画像形成装置の他の一例を示す。図8は、本発明のベルトを中間転写ベルトとして備えたタンデム式の画像形成装置の要部を説明する模試図である。
具体的には、感光体79表面を均一に帯電する帯電ロール83(帯電装置)、感光体79表面を露光し静電潜像を形成するレーザー発生装置78(露光装置)、感光体79表面に形成された潜像を、現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像器85(現像装置)、現像したトナー像を中間転写ベルト86に転写する一次転写ロール80、感光体79に付着したトナーやゴミ等を除去する感光体クリ−ナー84(クリーニング装置)、被転写材上のトナー像を定着する定着ロール72等必要に応じて公知の方法で任意に備えることができる。感光体79と一次転写ロール80は、図8のように感光体直上に配置していても、感光体直上からずれた位置に配置していてもよい。そして、この中間転写ベルト86として本発明のベルトを備えることで、上述の構成のようなタンデム式の画像形成装置においても、高品質の転写画質を安定して得ることができる。
【0060】
さらに、図8に示す画像形成装置の構成について詳細に説明する。図8に示す画像形成装置は、4つのトナーカートリッジ71、1対の定着ロール72、バックアップロール73、テンションロール74、二次転写ロール75、用紙経路76、用紙トレイ77、レーザー発生装置78、4つの感光体79、4つの一次転写ロール80、駆動ロール81、転写クリーナー82、4つの帯電ロール83、感光体クリーナー84、現像器85、中間転写ベルト86等を主用な構成部材として含んでなる。
【0061】
まず、感光体79の周囲には、反時計回りに帯電ロール83、現像器85、中間転写ベルト86を介して配置された一次転写ロール80、感光体クリーナー84が配置され、これら1組の部材が、1つの色に対応した現像ユニットを形成している。また、この現像ユニット毎に、現像器85に現像剤を補充するトナーカートリッジ71がそれぞれ設けられており、各現像ユニットの感光体79に対して、帯電ロール83と現像器85との間の感光体79表面に画像情報に応じたレー ザー光を照射することができるレーザー発生装置78が設けられている。
【0062】
4つの色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に対応した4つの現像ユニットは、画像形成装置内においてほぼ水平方向に直列に配置されており、4つの現像ユニットの感光体79と一次転写ロール80とのニップ部を挿通するように中間転写ベルト86が設けられている。中間転写ベルト86は、その内周側に以下の順序で反時計回りに設けられた、バックアップロール73、テンションロール74、及び駆動ロール81により張架されている。なお、4つの一次転写ロールはバックアップロール73とテンションロール74との間に位置する。また、中間転写ベルト86を介して駆動ロール81の反対側には中間転写ベルト86の外周面をクリーニングする転写クリーナー82が駆動ロール81に対して圧接するように設けられている。
【0063】
また、中間転写ベルト86を介してバックアップロール73の反対側には用紙トレイ77から用紙経路76を経由して搬送される記録用紙の表面に、中間転写ベルト86の外周面に形成されたトナー像を転写するための二次転写ロール75が、バックアップロール73に対して圧接するように設けられている。
【0064】
また、画像形成装置の底部には記録用紙をストックする用紙トレイ77が設けられ、用紙トレイ77から用紙経路76を経由して二次転写部を構成するバックアップロール73と二次転写ロール75との圧接部を通過するように用紙を供給することができる。この圧接部を通過した記録用紙は更に1対の定着ロール72の圧接部を挿通するように不図示の搬送手段により搬送可能であり、最終的に画像形成装置外へと排出することができる。
【0065】
次に図8の画像形成装置を用いた画像形成方法について説明する。トナー像の形成は各現像ユニット毎に行なわれ、帯電ロール83により反時計方向に回転する感光体79表面を一様に帯電した後に、レーザー発生装置78(露光装置)により帯電された感光体79表面に潜像を形成し、次に、この潜像を現像器85から供給される現像剤により現像してトナー像を形成し、一次転写ロール80と感光体79との圧接部に運ばれたトナー像を矢印C方向に回転する中間転写ベルト86の外周面に転写する。なお、トナー像を転写した後の感光体79は、その表面に付着したトナーやゴミ等が感光体クリーナー84によりクリーニングされ、次のトナー像の形成に備える。
【0066】
各色の現像ユニット毎に現像されたトナー像は、画像情報に対応するように中間転写ベルト86の外周面上に順次重ね合わされた状態で、二次転写部に運ばれ二次転写ロール75により、用紙トレイ77から用紙経路76を経由して搬送されてきた記録用紙表面に転写される。トナー像が転写された記録用紙は、更に定着部を構成する1対の定着ロール72の圧接部を通過する際に加圧加熱されることにより定着され、記録媒体表面に画像が形成された後、画像形成装置外へと排出される。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
<ベルトの作製>
(ベルト本体の作製)
ポリアミドイミド樹脂として、溶剤可溶型のポリアミドイミド樹脂(東洋紡(株)製:バイロマックスHR16NN(固形分18重量%、溶剤:N−メチル−2−ピロリドン))、導電剤として、カーボンブラック(デグザ(株)製スペシャルブラック4:pH3.0 揮発分14重量%)を樹脂成分100重量部あたり、25重量部添加して、高圧衝突分散機(ジーナス(株)製PY)を用い、圧力150Mpaにて、φ0.1mmのオリフイスを通過させるとともに、2分割したスラリーを5回衝突させて分散を行い、基材用のカーボンブラック入りポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
この液を外径168mmのアルミ製パイプの外面にディスペンサーにより塗布し、150℃で30分間回転乾燥後、250℃で1時間加熱して、内径168mmで、幅368mm、厚みが0.08mmのポリアミドイミド樹脂ベルト(ベルト本体2)を得た。このベルト本体の表面抵抗率は1.1×1012Ω/□であった。
【0068】
(ガイド部材)
ガイド部材を、JIS硬度70度の熱硬化性ポリウレタンシート(タイガースポリマー(株)タイプレンTR−100−70)を短冊状に切断した後、機械的に切り欠きを設けることにより、図3(a)に示すような断面形状が凹型の切り欠きを有するガイド部材を製造した。切り欠きを設ける前の断面形状は、厚さ2.0mm、幅3.0mmであり、切り欠きの最大深さはガイド部材の最大の厚さの1/2であり、切り欠きの最大幅はガイド部材の最大幅の1/3であるガイド部材を製造した。
【0069】
(ガイド部材のベルト本体への接着)
前記、ガイド部材に弾性接着剤としてセメダイン(株)製のアクリル変性シリコンポリマーを主成分とするスーパ−XNo8008を20μmの厚さで塗布して、ついで、前記ポリアミドイミド樹脂ベルトの片側のベルト内面に配置して、0.03Mpaの圧力で加圧して、上記の図3(a)に示すような矩形の切り欠き付きを有するガイド部材を備えたベルトを製作した。
【0070】
<ベルトライフの試験>
図4(a)及び同(b)に示すような、ロールの片方の端部に自由回転するプーリーに設けた案内溝でガイド部材を案内して、画像形成装置をランニングさせた。案内溝の両側面の斜面角が45°のプーリーを使用して、10万枚の試験プリントを行った。ベルト本体の破断はなく、またカラー画像の色ズレも認められなかった。
【0071】
(実施例2)
ガイド部材として、実施例1とは切り欠きの断面形状が、図3(a)に示すような矩形である替わりに、図3(b)に示すように二等辺三角形である形状に変更した以外は、全く同様にして、三角形の切り欠き付きガイドを備えたベルトを製作した。
案内溝の両側に設けた斜面の傾斜角が45°のプーリーを使用して、10万枚の試験プリントを行った。ベルト本体の破断はなく、またカラー画像の色ズレも認められなかった。
【0072】
(実施例3)
ガイド部材として、実施例1とは切り欠きの断面形状が、図3(a)に示すような矩形である替わりに、図3(c)に示すように台形である形状に変更した以外は、全く同様にして、三角形の切り欠き付きガイドを備えたベルトを製作した。
傾斜角が45°の傾斜を有するプーリーを使用して、10万枚の試験プリントを行った。ベルト本体の破断はなく、またカラー画像の色ズレも認められなかった。
【0073】
(実施例4)
ガイド部材として、実施例1とは切り欠きの断面形状が、図3(a)に示すような矩形である替わりに、図3(d)に示すような2つの連続三角形である形状に変更した以外は、全く同様にして、三角形の切り欠き付きガイドを備えたベルトを製作した。
傾斜角が45°の傾斜を有するプーリーを使用して、10万枚の試験プリントを行った。ベルト本体の破断はなく、またカラー画像の色ズレも認められなかった。
【0074】
(実施例5)
案内溝の両側に設けた斜面の傾斜角が20°のプーリーを使用した以外は、実施例1と全く同様にして、10万枚の試験プリントを行った。ベルト本体の破断はなく、またカラー画像の色ズレも認められなかった。
【0075】
(実施例6)
案内溝の両側に設けた斜面の傾斜角が50°のプーリーを使用した以外は、実施例1と全く同様にして、10万枚の試験プリントを行った。ベルト本体の破断はなく、またカラー画像の色ズレも認められなかった。
【0076】
(実施例7)
案内溝の両側に設けた斜面の傾斜角が0°のプーリーを使用した以外は、実施例1と全く同様にして、10万枚の試験プリントを行った。ベルト本体の破断はなかったが、カラー画像の色ズレが認められたが、実用上問題ない範囲であった。
【0077】
(実施例8)
案内溝の両側に設けた斜面の傾斜角が15°のプーリーを使用した以外は、実施例1と全く同様にして、10万枚の試験プリントを行った。ベルト本体の破断はなかったが、カラー画像の色ズレが認められたが、実用上問題ない範囲であった。
【0078】
(実施例9)
案内溝の両側に設けた斜面の傾斜角が55°のプーリーを使用した以外は、実施例1と全く同様にして、10万枚の試験プリントを行った。ベルト本体の破断はなかったが、カラー画像の色ズレが認められたが、実用上問題ない範囲であった。
【0079】
(比較例1)
ガイド部材に切り欠きを設けない以外は、実施例1と全く同様にして、切り欠きを有しないガイドを備えたベルトを製作した。
図4(a)及び(b)において案内溝の両側面の傾斜角が0°(垂直)であるプーリーを使用して、試験プリントを行った。1,000枚のプリントでベルト本体が破断した。また、カラー画像の色ズレが認められた。
【0080】
(比較例2)
上記の比較例1で製作した切り欠きを有しないガイド部材を備えたベルトを、案内溝の両側面の傾斜角が15°のプーリーを使用する以外は比較例1と全く同様にして、試験プリントを行った。3,000枚のプリントでベルト本体が破断した。また、カラー画像の色ズレが認められた。
【0081】
(比較例3)
上記の比較例1で製作した切り欠きを有しないガイド部材を備えたベルトを、案内溝の両側面の傾斜角が45°のプーリーを使用する以外は比較例1と全く同様にして、試験プリントを行った。20,000枚のプリントでベルト本体が破断した。また、カラー画像の色ズレが認められた。
【0082】
(比較例4)
上記の比較例1で製作した切り欠きを有しないガイド部材を備えたベルトを、案内溝の両側面の傾斜角が75°のプーリーを使用する以外は比較例1と全く同様にして、試験プリントを行った。50枚のプリントで寄り走行により評価機が停止した。
【0083】
以上の結果より、本発明のベルトは、片寄り走行や蛇行を防止して、ベルトの寿命低下を招くことなく長期にわたって、カラー画像の色ズレのないプリントを作製する画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の画像形成装置用のベルトの概略構成の一例を示す斜視図である。
【図2】ベルト本体とガイド部材との接着部の一例を示す断面図である。
【図3】ガイド部材の切り欠きの断面形状の数例を示す断面図である
【図4】ロールに設けたガイド部材の案内溝を説明するための部分斜視図又は部分断面図である。
【図5】ロールの両端の傾斜部によりガイド部材を規制する態様を示す部分断面図である。
【図6】本発明の画像形成装置用のベルトを中間転写ベルトとして備えた画像形成装置の一例の概略構成図である。
【図7】本発明の画像形成装置用のベルトを用紙搬送ベルトとして備えた画像形成装置の一例の概略構成図である。
【図8】本発明の画像形成装置用のベルトを中間転写ベルトとして備えたタンデム式の画像形成装置の一例の概略構成図である。
【符号の説明】
【0085】
1 画像形成装置用のベルト
2 ベルト本体
3 ガイド部材
4 接着部
20 案内溝
21 ロール
22 プーリー
86,102 中間転写ベルト
206 用紙搬送ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体と、
該ベルト本体の少なくとも片側の側縁に沿って該ベルト本体に接着されたガイド部材と、
該ガイド部材の表面に、該ベルト本体の周方向に沿って設けられた切り欠きとを有することを特徴とする
画像形成装置用のベルト。
【請求項2】
前記ガイド部材の全体断面が多角形であり、前記切り欠きの断面形状が、矩形、三角形及び台形よりなる群から選ばれた1種の形状又はこれらの組合せである、請求項1に記載の画像形成装置用のベルト。
【請求項3】
前記切り欠きの断面形状における切り欠きの最大の深さが、ガイド部材の最大の厚さの3分の2以下である、請求項1又は2に記載の画像形成装置用のベルト。
【請求項4】
前記切り欠きの断面形状における切り欠きの最大の幅が、ガイド部材の最大の幅の2分の1以下である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置用のベルト。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像形成装置用のベルトと、該画像形成装置用のベルトを内側から張架して支持する複数のロールとを備えることを特徴とするベルト張架装置。
【請求項6】
画像形成装置用のベルトの内面側に設けられた前記ガイド部材を前記ロールの外周に設けた案内溝により案内し、案内溝の両側の側面に設けられた傾斜が20°以上50°以下である、請求項5に記載のベルト張架装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像形成装置用のベルト、又は、請求項5又は6に記載のベルト張架装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−109693(P2009−109693A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281258(P2007−281258)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】