画像形成装置用の清掃部材、帯電装置、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
【課題】低温低湿環境下において被清掃部材に対する初期の帯電ムラを抑制した画像形成装置用の清掃部材を提供すること。
【解決手段】清掃部材100を、例えば、シャフト100Aと、弾性層100Bと、を備えたロール状の部材で構成する。弾性層100Bは、シャフト100Aの表面に螺旋状に配置させる。螺旋状に配置された弾性層100B(その側面)とシャフト100A(その外周面)とで囲まれた空間100Cを有しており、この空間100Cの一部に、当該空間100Cを充填する充填部材100Dを設ける。
【解決手段】清掃部材100を、例えば、シャフト100Aと、弾性層100Bと、を備えたロール状の部材で構成する。弾性層100Bは、シャフト100Aの表面に螺旋状に配置させる。螺旋状に配置された弾性層100B(その側面)とシャフト100A(その外周面)とで囲まれた空間100Cを有しており、この空間100Cの一部に、当該空間100Cを充填する充填部材100Dを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置用の清掃部材、帯電装置、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、螺旋状クリーニング部材の外径が、端部コロの外径よりも大きくなるように設定され、コロの周速と螺旋状クリーニング部材の周速度差によりクリーニングするクリーニング部材が開示されている。
また、特許文献2には、帯電ローラに接触して表面を清掃する清掃部と清掃部よりも径が小さい非清掃部を備え、これらが帯電ロールとの対向部で交互に現れるクリーニング部材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−070532号公報
【特許文献2】特開2008−304729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、充填部材を備えない場合に比べ、低温低湿環(例えば10℃15%RH)境下において被清掃部材に対する初期の帯電ムラを抑制した画像形成装置用の清掃部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
心棒と、
前記心棒の外周面に、螺旋状に巻かれた帯状の弾性体と、
前記心棒と前記螺旋状に巻かれた帯状の弾性体とで囲まれる空間の一部を充填する充填部材と、
を備える画像形成装置用の清掃部材。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記充填部材が、当該充填部材及び前記弾性体によって前記心棒の軸方向全域にわたって被清掃部材に対して接触する領域が前記心棒の周方向の一部に存在するように設けられた請求項1に記載の画像形成装置用の清掃部材。
【0007】
請求項3に係る発明は、
被帯電体を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材の表面に接触して配置され、当該帯電部材の表面を清掃する清掃部材であって、請求項1又は2に記載の画像形成装置用の清掃部材と、
を備える帯電装置。
【0008】
請求項4に係る発明は、
前記帯電部材が、直流電流のみを印加する帯電方式の帯電部材である請求項5に記載の帯電装置。
【0009】
請求項5に係る発明は、
請求項3又は4に記載の帯電装置を少なくとも備え、
画像形成装置に脱着されるプロセスカートリッジ。
【0010】
請求項6に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段であって、請求項3又は4に記載の帯電装置を有する帯電手段と、
帯電された前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体に形成された前記潜像をトナーによってトナー像に現像する現像手段と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、充填部材を備えない場合に比べ、低温低湿環境下において被清掃部材に対する初期の帯電ムラが抑制される。
請求項2に係る発明によれば、充填部材及び弾性体によって心棒の軸方向全域にわたって被清掃部材に対して接触する領域が心棒の周方向の一部に存在するように、充填部材を設けない場合に比べ、低温低湿環境下において被清掃部材に対する初期の帯電ムラが抑制される。
請求項3に係る発明によれば、充填部材を備えない清掃部材を提供した場合に比べ、低温低湿環境下において被帯電部材に対する初期の帯電ムラが抑制される。
請求項4に係る発明によれば、充填部材を備えない清掃部材を提供した場合に比べ、直流電流のみを印加する帯電方式の帯電部材を採用したときでも、低温低湿環境下において被帯電部材に対する初期の帯電ムラが抑制される。
請求項5、6に係る発明によれば、充填部材を備えない清掃部材を提供した場合に比べ、低温低湿環境下において像保持体に対する初期の帯電ムラに起因する画像濃度ムラが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材を示す概略斜視図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材の概略平面図である。
【図3】本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材における弾性層を示す拡大断面図である。
【図4】本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材の他の例を示す概略斜視図である。
【図5】本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材の作用を説明するための模式図である。
【図6】本実施形態に係る電子写真画像形成装置を示す概略構成図である。
【図7】本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【図8】図6及び図7における帯電部材(帯電装置)周辺部分を拡大した概略構成図である。
【図9】本実施形態に係る帯電装置を示す概略構成図である。
【図10】参考例を説明するための模式図である。
【図11】参考例における、クリーニングロール(その弾性層)及び帯電ロールの接触/非接触と、帯電ロールの表面電位と、の関係を示すグラフである。
【図12】参考例における、クリーニングロール(その弾性層)及び帯電ロールの接触/非接触と、感光体の表面電位と、の関係を示すグラフである。
【図13】試験例1の結果を示すグラフである。
【図14】試験例2の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。なお、同じ機能・作用を有する部材には、全図面を通して同じ符号を付与し、その説明を省略する場合がある。
【0014】
(清掃部材)
図1は、本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材を示す概略斜視図である。図2は、本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材の概略平面図である。
【0015】
本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材100(以下、単に清掃部材と称する)は、図1及び図2に示すように、心棒としてシャフト100Aと、帯状の弾性体として弾性層100Bと、を備えたロール状の部材である。弾性層100Bは、シャフト100Aの表面に螺旋状に巻かれた状態で配置されている。具体的には、弾性層100Bは、例えば、シャフト100Aの一端から他端にかけて、シャフト100Aの軸を螺旋軸とし、間隔を持って螺旋状に巻き回された状態で配置されている。
【0016】
また、本実施形態に係る清掃部材100は、螺旋状に配置された弾性層100B(その側面)とシャフト100A(その外周面)とで囲まれた空間100Cを有しており、この空間100Cもシャフト100Aの軸を螺旋軸とし、間隔を持って螺旋状に配置されている。
そして、この空間100Cの一部に、当該空間100Cを充填する充填部材100Dが設けられている。つまり、充填部材100Dは、目的とする空間100Cの一部に、弾性層100Bの側面及びシャフト100Aの外周面に密着(必要に応じて接着層を介して密着)し、埋まり込むように設けられている。
【0017】
以下、各部材について詳細に説明する。
まず、シャフトにについて説明する。
シャフト100Aに用いる材質としては、金属(例えば、快削鋼又はステンレス鋼等)、又は樹脂(例えば、ポリアセタール樹脂(POM)等)が挙げられる。なお、材質及び表面処理方法等は必要に応じて選択するのが望ましい。
特に、シャフト100Aが金属で構成される場合メッキ処理を施すのが望ましい。また、樹脂等で導電性を有さない材質の場合、メッキ処理等の一般的な処理により加工して導電化処理を行ってもよいし、そのまま使用してもよい。
【0018】
次に、弾性層について説明する。
弾性層100Bは、螺旋状に配置されているが、具体的には、例えば、螺旋角度θが10°以上65°以下、螺旋幅R1が3mm以上25mm以下であることがよい。また、螺旋ピッチR2は、例えば、3mm以上40mm以下であることがよい。
【0019】
ここで、図3に示すように、螺旋角度θとは、弾性層100Bの長手方向P(螺旋方向)と清掃部材の軸方向Q(シャフト軸方向)とが交差する角度(鋭角)を意味する。
螺旋幅R1とは、弾性層100Bの長手方向P(螺旋方向)に対して直交する方向に沿った長さを意味する。
螺旋ピッチR2とは、弾性層100Bの長手方向P(螺旋方向)に対して直交する方向に沿った、隣合う弾性層100B間の長さを意味する。
また、弾性層100Bとは100Paの外力印加により変形しても、もとの形状に復元する材料から構成される層をいう。
【0020】
弾性層100Bの材料としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、又はポリプロピレン等の発泡性の樹脂、或いは、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、塩素化ポリイソプレンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素添加ポリブタジエンゴム、ブチルゴム等のゴム材料を1種類、又は2種類以上をブレンドしてなる材料が挙げられる。なお、これらには必要に応じて、発泡助剤、整泡剤、触媒、硬化剤、可塑剤、又は加硫促進剤等の助剤を加えてもよい。
【0021】
これらの中も、気泡を有する材料(いわゆる発泡体)がよく、特に、擦れによる被清掃部材の表面に傷を付けない、長期に渡り千切れや破損が生じないようにする観点から、引っ張りに強い発泡ポリウレタンであることが望ましい。
ポリウレタンとしては、例えば、ポリオール(例えばポリエステルポリオール、ポリーエテルポリエステルやアクリルポリール等)と、イソシアネート(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等)と、の反応物が挙げられ、鎖延長剤(1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン)が含まれたものであってもよい。そして、ポリウレタンの発泡は、例えば、水やアゾ化合物(例えばアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等)等の発泡剤を用いて行われるのが一般的である。また、発泡ポリウレタンには、必要に応じて発泡助剤、整泡剤、触媒などの助剤を加えてもよい。
【0022】
弾性層100Bの構成としては、1層構成でも積層構成でも構わない。具体的には、弾性層100Bの構成としては、例えば、発泡体1層からなる構成でも、ソリッド層と発泡層との2層の構成でも構わない。
【0023】
次に、充填部材について説明する。
充填部材100Dは、例えば、シャフト100Aの軸方向に沿って空間100Cを充填するように一直線状に設けられている。つまり、例えば、充填部材100Dは、シャフト100Aの軸方向に沿って弾性層100Bと充填部材100Dとが交互に配列するように、螺旋状に配置された空間100Cの一部を充填して設けられている。
これにより、清掃部材100は、充填部材100Dを設けない場合には常に被清掃部材に対して非接触な領域が存在するのに対して、弾性層100B及び充填部材100Dによってシャフト100Aの軸方向全域にわたって被清掃部材に対して接触する領域がシャフト100Aの周方向の一部に存在することとなる。
【0024】
シャフト100Aの軸方向に沿って空間100Cを充填するように一直線状に設けられた複数の充填部材100Dを一組としたとき、当該組を一つ設けた形態であってもよいし、シャフト100Aの周方向に間隔を持って複数設けた形態であってもよい(本実施形態では一つ設けた形態を示している。)。
但し、この場合、充填部材100Dにおけるシャフト100Aの周方向に沿った長さ(上記組が複数有する場合には、その合計の長さ:以下、周方向長さと称することがある)は、例えば、清掃部材100におけるシャフト100Aの周方向に沿った長さ(以下、周方向長さと称することがある)の1/2以下であることがよい。
これは、充填部材100Dにおけるシャフト100Aの周方向に沿った長さが大き過ぎると、清掃部材100が筒形状に近づくことから、螺旋状の弾性層100Bに由来する清掃能力が低下する傾向にあるためである。
なお、上記周方向長さの下限は、充填部材100Dの剥れを抑制する点から、3mm以上であることがよい。
【0025】
ここで、充填部材100Dは、シャフト100Aの軸方向に沿って空間100Cを充填するように一直線状に設けられる形態に限られず、螺旋状の空間100Cの一部を充填するように設ければよく、例えば、図4に示すように、複数の充填部材100Dが、例えば、格子状となる等、螺旋状の空間100Cを、当該螺旋方向に間隔を持って充填するように配置した形態であってもよい。
【0026】
但し、充填部材100Dにより充填する領域は、螺旋状の空間100Cを全て充填部材100Dにより埋め込んだと過程した場合における清掃部材100の外周面面積(弾性層100B及び充填部材100Dの表面積)に対して1/2以下となるようにすることがよい。
これは、充填部材100Dにより充填する領域が大きくなり過ぎると、清掃部材100が筒形状に近づくことから、螺旋状の弾性層100Bに由来する清掃能力が低下する傾向にあるためである。
【0027】
充填部材100Dは、螺旋状の空間100Cの一部を充填するように設ける、つまり当該空間100Cの一部に埋め込まれる部材であることから、その厚みが弾性層100Bの厚みと同等(±0.5mm)がよい。
【0028】
充填部材100Dの材料としては、弾性層100Bの材料と同様なものが挙げられる。充填部材100Dは、弾性層100Bと同じ材料で構成されていてもよいし、異なった材料で構成されていてもよいが、低温低湿環境下において被清掃部材に対する初期の帯電ムラを抑制する観点から、同じ材料で構成されることがよい。
【0029】
次に、本実施形態に係る清掃部材100の製造方法について説明する。
本実施形態に係る清掃部材100の製造方法は、例えば、次の方法が挙げられる。
1)角柱状に成型された弾性層用部材(発泡ポリウレタン等)を準備し、弾性層用部材にドリル等によってシャフト100Aを挿入する穴を形成し、次いで、外周表面に接着剤を塗布したシャフト100Aを弾性層用部材の穴に挿入した後、弾性層用部材に対して切削加工を施して弾性層100Bを形成して、その後、充填部材100Dとなる部品を螺旋状の空間100Cの一部に埋め込んで清掃部材100を得る方法。
2)金型により成形された円柱状の弾性層用部材(発泡ポリウレタン等)を準備し、弾性層用部材にドリル等によってシャフト100Aを挿入する穴を形成し、次いで、外周表面に接着剤を塗布したシャフト100Aを弾性層用部材の穴に挿入して、その後、その後、充填部材100Dとなる部品を螺旋状の空間100Cの一部に埋め込んで清掃部材100を得る方法。
2)シート状の弾性層用部材(発泡ポリウレタンシート等)を準備し、これに両面テープを貼り付けた後、打ち抜いて短冊を得て、これをシャフト100Aに巻き付けて弾性層100Bを形成して、その後、充填部材100Dとなる部品を螺旋状の空間100Cの一部に埋め込んで清掃部材100を得る方法。
【0030】
これらの中でも、短冊をシャフトに巻き付けて弾性層100Bを形成し、清掃部材を得る方法が簡便でよい。
【0031】
なお、充填部材100Dは、弾性層100Bとは別体で設けた形態を説明したが、これに限られず、例えば、弾性層100Bを切削加工により螺旋状に形成する際に、充填部材100Dに該当する領域を残存させて切削加工を施す等を行ったり、弾性層100Bを金型成形する際に、充填部材100Dに該当する領域も同時に金型成形を行ったりすることで、弾性層100Bと一体化させた部材であってもよい。
【0032】
以上、説明した本実施形態に係る清掃部材100は、回転に伴い、螺旋状に配置された弾性層100Bが被清掃部材の表面(被清掃面)に対して接触・離間を繰り返して清掃を行い、被清掃部材の表面(被清掃面)を基準にして見ると、弾性層100Bの螺旋幅方向両端部の角部(エッジ部)がシャフト100Aの軸方向(螺旋軸方向)に力が付加されて清掃を行う。
【0033】
ここで、清掃部材100は、弾性層100Bが螺旋状に配置されていることから、被清掃部材の表面(被清掃面)に対して接触する領域(接触領域)と非接触な領域(非接触領域)とが存在することとなる(図5(A)参照)。この被清掃部材の表面(被清掃面)においては、弾性層100Bとの接触領域では摩擦帯電が生じるのに対して、弾性層100Bとの非接触では摩擦帯電は生じない。すると、清掃開始初期では、被清掃部材の表面(被清掃面)は清掃部材100軸方向にわたって電位差を有する領域が存在することとなる。つまり、清掃部材100が回転し、その弾性層100Bが被清掃部材の表面(被清掃面)における清掃部材100軸方向全域にわたって接触して、被清掃面の電位が均一になるまでの間に、当該被清掃部材の表面(被清掃面)に電位差を有する領域が存在する、即ち帯電ムラが生じることとなる。特に、この帯電ムラは、低温低湿環境下において顕著に生じる。
【0034】
そこで、本実施形態に係る清掃部材100では、充填部材100Dにより、シャフト100Aと螺旋状に配置された弾性層100Bとで囲まれる空間100Cの一部を充填する。つまり、被清掃部材の表面(被清掃面)に対して接触することがない螺旋状の空間100Cにおいても(図5(A)参照)、充填部材100Dにより被清掃部材の表面(被清掃面)の機会が設けられることとなる(図5(B)参照)。このため、清掃部材100が回転し、被清掃部材の表面(被清掃面)における清掃部材100軸方向全域にわたって接触する時間が短縮される、即ち被清掃面の電位が均一になり、電位差を有する領域が消滅する時間が短縮される。
【0035】
特に、本実施形態に係る清掃部材100では、シャフト100Aの軸方向に沿って空間100Cを充填するように、一直線状に充填部材100Dを設けていることから(つまり、充填部材100D及び弾性層100Bによってシャフト100Aの軸方向全域にわたって被清掃部材に対して接触する領域がシャフト100Aの周方向の一部に存在するように、充填部材100Dを設けていることから)、弾性層100B及び充填部材100Dによってシャフト100Aの軸方向全域にわたって被清掃部材に対して接触する領域がシャフト100Aの周方向の一部に存在している。つまり、清掃部材100が一回転する間に少なくとも、弾性層100B及び充填部材100Dによって、シャフト100Aの軸方向全域にわたって被清掃部材に対して同時に接触する機会、即ち清掃部材100が被清掃部材が軸方向にわたって非接触領域がない状態で全接触する機会が設けられることになる。
【0036】
(画像形成装置等)
以下、本実施形態に係る画像形成装置について図面に基づいて説明する。
図6は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0037】
本実施形態に係る画像形成装置10は、例えば、図6に示すように、タンデム方式のカラーの画像形成装置である。本実施形態に係る画像形成装置10の内部には、感光体(像保持体)12や帯電部材14や現像装置等が、イエロー(18Y)、マゼンタ(18M)、シアン(18C)、及び黒(18K)が各色毎にプロセスカートリッジ(図7参照)として備えられている。このプロセスカートリッジは、画像形成装置10に脱着される構成となっている。
【0038】
感光体12としては、例えば、表面に有機感材等よりなる感光体層が被覆された直径が25mmの導電性円筒体が用いられ、図示しないモータにより、150mm/secのプロセススピードで回転駆動される。
【0039】
感光体12の表面は、感光体12表面に配置された帯電部材14によって帯電された後、帯電部材14より感光体12の回転方向下流側に、露光装置16から出射されるレーザービームLBによって画像露光が施され、画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0040】
感光体12上に形成された静電潜像は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の現像装置19Y、19M、19C、19Kによって現像され、各色のトナー像となる。
【0041】
例えば、カラーの画像を形成する場合、各色の感光体12の表面には、帯電・露光・現像の各工程が、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色に対応して行なわれ、各色の感光体12の表面には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色に対応したトナー像が形成される。
【0042】
感光体12上に順次形成されるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色のトナー像は、感光体12と用紙搬送ベルト20を介して転写装置22が接する箇所にて、感光体12の外周に用紙搬送ベルト20上を搬送される記録用紙24へ転写される。さらに、感光体12上からトナー像が転写された記録用紙24は、定着装置64へと搬送され、この定着装置64によって加熱・加圧されてトナー像が記録用紙24上に定着される。その後、片面プリントの場合には、トナー像が定着された記録用紙24は、排出ロール66によって画像形成装置10の上部に設けられた排出部68上にそのまま排出される。
【0043】
−方、両面プリントの場合には、定着装置64により第一面(表面)にトナー像が定着された記録用紙24を、排出ロール66によって排出部68上にそのまま排出せずに、排出ロール66によって記録用紙24の後端部を狭持した状態で、排出ロール66を逆転させるとともに、記録用紙24の搬送径路を両面用の用紙搬送路70に切り替え、この両面用の用紙搬送路70に配設された搬送ロール72によって、記録用紙24の表裏を反転した状態で、再度、用紙搬送ベルト20上へ搬送して、記録用紙24の第二面(裏面)に感光体12上からトナー像を転写する。そして、記録用紙24の第二面(裏面)のトナー像を定着装置64によって定着させ、記録媒体24(被転写体)を排出部68上に排出する。
【0044】
なお、トナー像の転写工程が終了した後の感光体12の表面は、感光体12が1回転する毎に、感光体12の表面であって、転写装置22が接する箇所よりも感光体12の回転方向下流側に配置された清掃ブレード80によって、残留トナーや紙粉などが除去され、次の画像形成工程に備えるようになっている。
【0045】
ここで、図8及び図9に示すごとく、帯電部材14は、例えば、導電性シャフト14Aの周囲に弾性層14Bが形成されたロールであり、シャフト14Aは回転自在に支持されている。帯電部材14の感光体12と反対側には、帯電部材14の清掃部材100が接触して、帯電装置(ユニット)を構成している。この清掃部材100として、本実施形態に係る清掃部材100が用いられる。
【0046】
帯電部材14はシャフト14Aの両端へ荷重Fをかけて感光体12へ押付け、弾性層14Bの周面に沿って弾性変形してニップ部を形成している。更に、清掃部材100はシャフト100Aの両端へ荷重F’をかけて帯電部材14へ押付け、弾性層100Bが帯電部材14の周面に沿って弾性変形してニップ部を形成することで、帯電部材14の撓みを抑えて、帯電部材14と感光体12の軸方向のニップ部を形成している。
【0047】
感光体12は、図示しないモータによって矢印X方向に回転駆動され、感光体12の回転により帯電部材14が矢印Y方向に従動回転する。また、帯電部材14の回転により清掃部材100が矢印Z方向に従動回転する。
【0048】
−帯電部材の構成−
以下、帯電部材の説明をするが、本実施形態では以下の構成に限定されるものではない。符号は省略して説明する。
【0049】
帯電部材の構成としては、特に限定されるものではないが、例えば、シャフト、弾性層、若しくは弾性層の代わりに樹脂層を有する構成が挙げられる。弾性層は単層構成からなるものであってよく、幾つもの機能を持った複数の異なる層からなる積層構成であってもよい。更には、弾性層の上に表面処理を行ってもよい。
【0050】
シャフトの材質としては快削鋼、ステンレス鋼等を使用し、摺動性等の用途に応じて材質及び表面処理方法は適時選択するのが望ましい。また、メッキ処理するのが望ましい。導電性を有さない材質の場合、メッキ処理等一般的な処理により加工して導電化処理を行ってもよいし、そのまま使用してもよい。
【0051】
弾性層は導電性弾性層とするが、導電性弾性層は、例えば、弾性を有するゴム等の弾性材、導電性弾性層の抵抗を調整するカーボンブラックやイオン導電材等の導電材、必要に応じて軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカ又は炭酸カルシウム等の充填剤等、通常ゴムに添加され得る材料を加えてもよい。通常ゴムに添加される材料を添加した混合物を、導電性のシャフトの周面に被覆することにより形成される。抵抗値の調整を目的とした導電剤として、マトリックス材に配合されるカーボンブラックやイオン導電剤等の電子及びイオンの少なくとも一方を電荷キャリアとして電気伝導する材料を分散したもの等が用いられる。また、弾性材は発泡体であってもかまわない。
【0052】
導電性弾性層を構成する弾性材としては、例えばゴム材中に導電剤を分散させることによって形成される。ゴム材としては、例えば、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム及びこれらのブレンドゴムが好適に挙げられる。これらのゴム材は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0053】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属又は合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末が挙げられる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;が挙げられる。
【0054】
これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限はないが、電子導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して、1質量部以上60質量部以下の範囲であることが望ましく、一方、イオン導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であることが望ましい。
【0055】
帯電部材の表面は、表面層を形成させてもよい。表面層の材料としては、樹脂、ゴム等の何れを用いてもよく特に限定するものではない。例えば、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、共重合ナイロンが好適に挙げられる。
共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種又は複数種を重合単位として含むものであって、この共重合体に含まれる他の重合単位としては、6ナイロン、66ナイロン等が挙げられる。ここで、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロンよりなる重合単位が共重合体中に含まれる割合は、重量比で合わせて10%以上であるのが望ましい。
【0056】
高分子材料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、当該高分子材料の数平均分子量は、1,000以上100,000以下の範囲であることが望ましく、10,000以上50,000以下の範囲であることがより望ましい。
【0057】
また表面層には導電性材料を含有させ、抵抗値を調整してもよい。該導電性材料としては、粒径が3μm以下であるものが望ましい。
【0058】
また、抵抗値の調整を目的とした導電剤として、マトリックス材に配合されるカーボンブラックや導電性金属酸化物粒子、あるいはイオン導電剤等の電子及びイオンの少なくとも一方を電荷キャリアとして電気伝導する材料を分散したもの等を用いてもよい。
【0059】
導電剤のカーボンブラックとして、具体的には、デグサ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
カーボンブラックはpH4.0以下が望ましい。
【0060】
抵抗値を調整するための導電性粒子である導電性金属酸化物粒子は、酸化錫、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化亜鉛、アナターゼ型酸化チタン、酸化スズインジウム(ITO)等の導電性を有した粒子で、電子を電荷キャリアとする導電剤あれば何れも用いることができ、特に限定されるものではない。これらは、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。また、何れの粒径であってもよいが、望ましくは酸化錫、アンチモンドープがされた酸化錫、アナターゼ型酸化チタンであり、更に、酸化錫、アンチモンドープがされた酸化錫が望ましい。
【0061】
さらに、表面層には、フッ素系あるいはシリコーン系の樹脂が好適に用いられる。特に、フッ素変性アクリレートポリマーで構成されることが望ましい。また、表面層の中に粒子を添加してもよい。また、アルミナやシリカ等の絶縁性粒子を添加して、帯電部材の表面に凹部を付与し、感光体との摺擦時の負担を小さくして帯電部材と感光体相互の耐磨耗性を向上させてもよい。
【0062】
帯電部材の外径としては8mm以上16mm以下が望ましい。また、外径の測定方法としては市販のノギスやレーザー方式外径測定装置を用いて測定される。
【0063】
帯電部材のマイクロ硬度は45°以上60°以下が望ましい。低硬度化にする為には可塑剤添加量を増量する方法、シリコーンゴム等の低硬度の材料を使用することが考えられる。
【0064】
また、帯電部材のマイクロ硬度は高分子計器株式会社製MD−1型硬度計にて測定した値を用いている。
【0065】
なお、本実施形態に係る画像形成装置では、感光体(像保持体)、帯電装置(帯電部材と清掃部材とのユニット)、現像装置、清掃ブレード(クリーニング装置)を備えたプロセスカートリッジを説明したが、これに限られず、帯電装置(帯電部材と清掃部材とのユニット)を備え、その他必要に応じて、感光体(像保持体)、露光装置、転写装置、及び現像装置、清掃ブレード(クリーニング装置)から選択されるものを備えたプロセスカートリッジとしてもよい。なお、これら装置や部材をカートリッジ化せず、画像形成装置に直接配置した形態であってもよい。
【0066】
また、本実施形態に係る画像形成装置では、帯電装置として、帯電部材と清掃部材とのユニットで構成した形態を説明したが、つまり、被清掃部材として帯電部材を採用した形態を説明したが、これに限られず、被清掃部材としては、感光体(像保持体)、転写装置(転写部材;転写ロール)、中間転写体(中間転写ベルト)が挙げられる。そして、これら被清掃部材とこれに接触して配置される清掃部材とのユニットを、画像形成装置に直接配置してもよいし、上記同様にプロセスカートリッジのようにカートリッジ化して画像形成装置に配置してもよい。
【0067】
また、本実施形態に係る画像形成装置は、上記構成に限られず、中間転写方式の画像形成装置等、周知の画像形成装置を採用してもよい。
【0068】
(試験例)
以下、上記本実施形態に係る歯車の作用効果を確認するための試験例について説明する。
なお、以下、清掃部材を「クリーニングロール」と称し、特に、螺旋状に配置した弾性層を持つものを「スパイラルクリーングロール」、筒状の弾性層を持つものを「筒状クリーニングロール」と称して説明する。また、下記試験例では、帯電部材の一例である帯電ロールを適用している。
【0069】
−参考例−
図10に示すように、クリーニングロールと帯電ロールとの接触/非接触で生じる帯電ロールの表面電位差(帯電ムラ)と、これによる感光体表面の帯電電位差について、検証した。なお、図10中、200は筒状クリーニングロールを示し、201は帯電ロールを示し、202は電位計を示す。
まず、筒状クリーニングロール(筒状の弾性層を持つロール)の弾性層を軸方向で半分だけ取り付けたものを、帯電ロールと接触させて回転駆動し、帯電ロール表面の電位を表面電位計で測定した。このとき、帯電ロールのシャフトは接地してある。帯電ロールはφ6シャフトに1.5mmのゴム層を設け、さらに表面をイソシアネート含浸処理したφ9の二層の帯電ロールを用いた。
クリーニングロールはφ4シャフト上に弾性層として肉厚2mmの発泡ウレタン層を設けたφ8のものを用いた。環境は、温度10℃、湿度15%の低温低湿下で行なった。また、帯電ロールの回転速度は320mm/sとし、8s間駆動させた。
その結果を、図11に示す。帯電ロール表面において、クリーニングロールの弾性層と非接触の箇所(クリーングロール弾性層非接触領域)は電位が0Vであるのに対し、弾性層と接触した箇所(クリーングロール弾性層接触領域)は電位が−80Vとなった。これより、クリーングロールの弾性層との接触摩擦により、帯電ロール表面が帯電することがわかった。
【0070】
次に、帯電ロールに電圧を印加し、感光体を帯電させ、帯電ロールにおけるクリーニングロールの弾性層が接触した個所(クリーングロール弾性層接触領域)と非接触の個所(クリーングロール弾性層非接触領域)に対応した感光体表面電位を測定した。環境は上記同様であり、帯電時のプロセススピードは165mm/sとした。感光体は、φ24のAlシャフト上に、感光層を34μm塗布したものであり、−1360VのDC電圧を印加した。
その結果を、図12に示す。帯電ロールにおけるクリーニングロールの弾性層との接触した箇所に対応する感光体表面は−600Vに帯電するのに対し、帯電ロールにおけるクリーニングロールの弾性層が非接触の箇所に対応する感光体表面は−520Vまでしか帯電しなかった。帯電ロールにおけるクリーニングロールの弾性層との接触した箇所に対応する感光体表面電位が、上記帯電ロールの帯電分−80V高い値を示していることがわかる(図12参照)。また、同じ条件で、ハーフトーン画像(画像濃度30%)の画出しを行なったところ、帯電ロールにおけるクリーニングロールの弾性層との接触した箇所に対応する部分の画像が、非接触の箇所に対応する部分の画像に比べ低濃度となり、濃度段差が現れることを確認した。
【0071】
以上から、低温低湿環境下においてクリーニングロールの弾性層の接触領域と非接触領域との間で、帯電ロール(被清掃部材)に対する初期の帯電ムラが生じ、これに起因して、帯電ロール(被清掃部材)により帯電する感光体(被帯電部材)に帯電ムラが生じ、その結果、画像濃度ムラが生じることがわかる。
【0072】
−試験例1−
φ4シャフト上にシート厚2.4mm、シート幅6mmのウレタンスポンジシートを、巻き角26°で螺旋状に巻いて、螺旋状の弾性層を持つスパイラルクリーングロールA(比較例相当)を準備した。
一方、スパイラルクリーニングロールAのシャフト周面の一箇所に、シート厚2.4mm、軸方向長さ13mm、周方向長さ5mmの同材質のウレタンスポンジ片(充填部材)を、シャフトの軸方向に沿って螺旋状の空間を充填するように一直線状に設けたスパイラルクリーニングロールB1を準備した(実施例相当:図1及び図2参照)。
また、スパイラルクリーニングロールAのシャフト周面の一箇所に、シート厚2.4mm、軸方向長さ13mm、周方向長さ5mmの同材質のウレタンスポンジ片(充填部材)を、螺旋状の空間を格子状に充填するように設けたスパイラルクリーニングロールB2を準備した(実施例相当:図4参照)。
そして、これらスパイラルクリーニングロールA、B1、B2を画像形成装置に装着(その帯電部材と接触するように装着)し、低温低湿環境下でハーフトーン画像(画像濃度30%)の画出しを行なった。
なお、本試験例における、帯電ロール、感光体の諸条件は参考例と同様であり、帯電ロールにはDC電圧(−1360V)を印加した。
【0073】
その結果を図13に示す。スパイラルクリーニングロールAを用いて出力したハーフトーン画像には、スパイラルマーク状に濃淡差が現れ、5枚出力後に消滅した(図13参照)。一方、スパイラルクリーニングロールB1を用いて出力したハーフトーン画像は、1枚目から均一な画像が得られた(図13参照)。これより、スパイラルロールの隙間の充填部材であるスポンジ片が画像濃度ムラを抑制する効果があることが確認できた。そして、参考例から充填部材であるスポンジ片が、クリーングロールの帯電による電位差を緩和することで、画像濃度ムラを抑制しているものと推測される。
また、スパイラルクリーニングロールB2を用いて出力したハーフトーン画像には、スパイラルマーク状に濃淡差が現れ、4枚出力後に消滅した。これにより、同じ充填部材を設けたスパイラルクリーニングロールB1、B2であっても、シャフトの軸方向に沿って螺旋状の空間を充填するように一直線状に充填部材を設けたスパイラルクリーニングロールB1の方が、スパイラルロールの隙間の充填部材であるスポンジ片が画像濃度ムラを抑制する効果があることが確認できた。
【0074】
一方、スパイラルクリーニングロールAを用いても、直流電圧(DC)に交流電圧(AC)を重畳した電圧(DC+AC=−600Vdc+2.0kVpp)を帯電ロールに印加してハーフトーン画像を出力した場合には、出力した一枚目のハーフトーン画像にスパイラルマーク状に濃淡差が現れ、2枚出力後に消滅した(図13参照)。これより、クリーニングロールの弾性層の接触領域と非接触領域との間で、帯電ロール(被清掃部材)に対する初期の帯電ムラが生じ易いのは、DC帯電方式を採用したときに顕著であり、スパイラルクリーニングロールB1(実施例相当)を用いることで、これが抑制されることがわかる。
【0075】
次に、充填部材としてのポリウレタンスポンジ片を、カーボンを含有させたウレタンスポンジ片に変えた以外はスパイラルクリーニングロールB1と同様に作成したスパイラルクリーニングロールCを準備した。
このスパイラルクリーニングロールCを、画像形成装置に装着(その帯電部材と接触するように装着)し、低温低湿環境下でハーフトーン画像(画像濃度30%)の画出しを行なった。なお、本試験例における、帯電ロール、感光体の諸条件は参考例と同様であり、帯電ロールにはDC電圧(−1360V)を印加した。
【0076】
その結果を図13に示す。スパイラルクリーニングロールB1に比べて劣るものの、1枚目にスパイラルマーク状に濃淡差が現れ、3枚目で消滅した(図13参照)。これより、スパイラルクリーニングロールにおいて、弾性層と充填部材との材質が異なると、当該弾性層及び被清掃面の接触領域と当該充填部材及び被清掃面の接触領域との帯電レベルが変わり、帯電ムラの抑制効果(画像濃度ムラ抑制効果)が薄れてしまうため、弾性層と充填部材との材質は同じものがよいことがわかる。
【0077】
なお、図13中、濃淡差Gとは、画像濃度ムラとなっている画像濃度差の程度を示すグレードを意味し、「1」が極軽微に発生(指摘されないと分からないレベル)、「2」が軽微に発生、「3」が顕著に発生を示す。
【0078】
−試験例2−
φ4シャフト上に肉厚2mmでウレタンスポンジ層(弾性層)を形成した円筒状のクリーニングロールD(比較例相当)を準備した。
一方、スパイラルクリーニングロールAのシャフト周面の一箇所に、シート厚2.4mm、軸方向長さ13mm、周方向長さ15mmの同材質のウレタンスポンジ片(充填部材)を、シャフトの軸方向に沿って螺旋状の空間を充填するように一直線状に設けたスパイラルクリーニングロールEを準備した(実施例相当:図1及び図2参照)。
また、スパイラルクリーニングロールAのシャフト周面の一箇所に、シート厚2.4mm、軸方向長さ13mm、周方向長さ12.5mmを同材質のウレタンスポンジ片(充填部材)を、シャフトの軸方向に沿って螺旋状の空間を充填するように一直線状に設けたスパイラルクリーニングロールFを準備した(実施例相当:図1及び図2参照)。
【0079】
そして、クリーニングロールA〜B、D〜Fを用いて、画像形成装置に装着(その帯電部材と接触するように装着)し、実機によるランニング試験を実施し、感光体のサイクル数(回転数)と帯電ロールの汚染に起因する画像の汚染スジとの関係を評価した。
なお、本試験例における、帯電ロール、感光体の諸条件は参考例と同様であり、帯電ロールにはDC電圧(−1360V)を印加した。
【0080】
その結果を図14に示す。スパイラルクリーニングロールAとB1は感光体300,000サイクル(300,000回転)の間に画像の汚染スジが未発生であり、クリーニング性が良好なことがわかる。
一方、スパイラルクリーニングロールFは、円筒状クリーニングロールDよりも良いが、スパイラルクリーニングロールAとB1よりは劣る結果となった。スパイラルクリーニングロールEは、円筒状クリーニングロールDよりも良いが、スパイラルクリーニングロールFよりも劣る結果となった。このため、クリーング性の低下を抑制するためには、スパイラルクリーニングロールの充填部材の周方向長さ(シャフトの軸方向に沿って螺旋状の空間を充填するように一直線状に設けた充填部材の周方向長さ)は、大きすぎないこと(例えばクリーングロールの周方向長さの1/2以下とすること)がよいことがわかる。
【0081】
なお、図14中、画像の汚染スジGとは、画像の汚染スジの程度を示すグレードを意味し、「1」が極軽微な筋(指摘されないと気付かないレベル)が画像内に1本発生、「2」が 極軽微な筋が画像内に数本(5本以内)発生、「3」が軽微な筋が画像内に数本(5本以内)発生、「4」がコントラストの強い筋が画像内に数本又は軽微な筋が画像内全面に発生、「5」がコントラストの強い筋が画像内全面に発生、を示す。
【符号の説明】
【0082】
10 画像形成装置、12 感光体、14 帯電ロール、14A シャフト、14B 弾性層、16 露光装置、19Y、19M、19C、19K 現像装置、20 用紙搬送ベルト、22 転写装置、24 記録媒体、53 帯電ロール、64 定着装置、66 排出ロール、68 排出部、70 用紙搬送路、72 搬送ロール、80 清掃ブレード、100 清掃部材、100A シャフト、100B 弾性層
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置用の清掃部材、帯電装置、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、螺旋状クリーニング部材の外径が、端部コロの外径よりも大きくなるように設定され、コロの周速と螺旋状クリーニング部材の周速度差によりクリーニングするクリーニング部材が開示されている。
また、特許文献2には、帯電ローラに接触して表面を清掃する清掃部と清掃部よりも径が小さい非清掃部を備え、これらが帯電ロールとの対向部で交互に現れるクリーニング部材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−070532号公報
【特許文献2】特開2008−304729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、充填部材を備えない場合に比べ、低温低湿環(例えば10℃15%RH)境下において被清掃部材に対する初期の帯電ムラを抑制した画像形成装置用の清掃部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
心棒と、
前記心棒の外周面に、螺旋状に巻かれた帯状の弾性体と、
前記心棒と前記螺旋状に巻かれた帯状の弾性体とで囲まれる空間の一部を充填する充填部材と、
を備える画像形成装置用の清掃部材。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記充填部材が、当該充填部材及び前記弾性体によって前記心棒の軸方向全域にわたって被清掃部材に対して接触する領域が前記心棒の周方向の一部に存在するように設けられた請求項1に記載の画像形成装置用の清掃部材。
【0007】
請求項3に係る発明は、
被帯電体を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材の表面に接触して配置され、当該帯電部材の表面を清掃する清掃部材であって、請求項1又は2に記載の画像形成装置用の清掃部材と、
を備える帯電装置。
【0008】
請求項4に係る発明は、
前記帯電部材が、直流電流のみを印加する帯電方式の帯電部材である請求項5に記載の帯電装置。
【0009】
請求項5に係る発明は、
請求項3又は4に記載の帯電装置を少なくとも備え、
画像形成装置に脱着されるプロセスカートリッジ。
【0010】
請求項6に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段であって、請求項3又は4に記載の帯電装置を有する帯電手段と、
帯電された前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体に形成された前記潜像をトナーによってトナー像に現像する現像手段と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、充填部材を備えない場合に比べ、低温低湿環境下において被清掃部材に対する初期の帯電ムラが抑制される。
請求項2に係る発明によれば、充填部材及び弾性体によって心棒の軸方向全域にわたって被清掃部材に対して接触する領域が心棒の周方向の一部に存在するように、充填部材を設けない場合に比べ、低温低湿環境下において被清掃部材に対する初期の帯電ムラが抑制される。
請求項3に係る発明によれば、充填部材を備えない清掃部材を提供した場合に比べ、低温低湿環境下において被帯電部材に対する初期の帯電ムラが抑制される。
請求項4に係る発明によれば、充填部材を備えない清掃部材を提供した場合に比べ、直流電流のみを印加する帯電方式の帯電部材を採用したときでも、低温低湿環境下において被帯電部材に対する初期の帯電ムラが抑制される。
請求項5、6に係る発明によれば、充填部材を備えない清掃部材を提供した場合に比べ、低温低湿環境下において像保持体に対する初期の帯電ムラに起因する画像濃度ムラが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材を示す概略斜視図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材の概略平面図である。
【図3】本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材における弾性層を示す拡大断面図である。
【図4】本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材の他の例を示す概略斜視図である。
【図5】本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材の作用を説明するための模式図である。
【図6】本実施形態に係る電子写真画像形成装置を示す概略構成図である。
【図7】本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【図8】図6及び図7における帯電部材(帯電装置)周辺部分を拡大した概略構成図である。
【図9】本実施形態に係る帯電装置を示す概略構成図である。
【図10】参考例を説明するための模式図である。
【図11】参考例における、クリーニングロール(その弾性層)及び帯電ロールの接触/非接触と、帯電ロールの表面電位と、の関係を示すグラフである。
【図12】参考例における、クリーニングロール(その弾性層)及び帯電ロールの接触/非接触と、感光体の表面電位と、の関係を示すグラフである。
【図13】試験例1の結果を示すグラフである。
【図14】試験例2の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。なお、同じ機能・作用を有する部材には、全図面を通して同じ符号を付与し、その説明を省略する場合がある。
【0014】
(清掃部材)
図1は、本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材を示す概略斜視図である。図2は、本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材の概略平面図である。
【0015】
本実施形態に係る画像形成装置用の清掃部材100(以下、単に清掃部材と称する)は、図1及び図2に示すように、心棒としてシャフト100Aと、帯状の弾性体として弾性層100Bと、を備えたロール状の部材である。弾性層100Bは、シャフト100Aの表面に螺旋状に巻かれた状態で配置されている。具体的には、弾性層100Bは、例えば、シャフト100Aの一端から他端にかけて、シャフト100Aの軸を螺旋軸とし、間隔を持って螺旋状に巻き回された状態で配置されている。
【0016】
また、本実施形態に係る清掃部材100は、螺旋状に配置された弾性層100B(その側面)とシャフト100A(その外周面)とで囲まれた空間100Cを有しており、この空間100Cもシャフト100Aの軸を螺旋軸とし、間隔を持って螺旋状に配置されている。
そして、この空間100Cの一部に、当該空間100Cを充填する充填部材100Dが設けられている。つまり、充填部材100Dは、目的とする空間100Cの一部に、弾性層100Bの側面及びシャフト100Aの外周面に密着(必要に応じて接着層を介して密着)し、埋まり込むように設けられている。
【0017】
以下、各部材について詳細に説明する。
まず、シャフトにについて説明する。
シャフト100Aに用いる材質としては、金属(例えば、快削鋼又はステンレス鋼等)、又は樹脂(例えば、ポリアセタール樹脂(POM)等)が挙げられる。なお、材質及び表面処理方法等は必要に応じて選択するのが望ましい。
特に、シャフト100Aが金属で構成される場合メッキ処理を施すのが望ましい。また、樹脂等で導電性を有さない材質の場合、メッキ処理等の一般的な処理により加工して導電化処理を行ってもよいし、そのまま使用してもよい。
【0018】
次に、弾性層について説明する。
弾性層100Bは、螺旋状に配置されているが、具体的には、例えば、螺旋角度θが10°以上65°以下、螺旋幅R1が3mm以上25mm以下であることがよい。また、螺旋ピッチR2は、例えば、3mm以上40mm以下であることがよい。
【0019】
ここで、図3に示すように、螺旋角度θとは、弾性層100Bの長手方向P(螺旋方向)と清掃部材の軸方向Q(シャフト軸方向)とが交差する角度(鋭角)を意味する。
螺旋幅R1とは、弾性層100Bの長手方向P(螺旋方向)に対して直交する方向に沿った長さを意味する。
螺旋ピッチR2とは、弾性層100Bの長手方向P(螺旋方向)に対して直交する方向に沿った、隣合う弾性層100B間の長さを意味する。
また、弾性層100Bとは100Paの外力印加により変形しても、もとの形状に復元する材料から構成される層をいう。
【0020】
弾性層100Bの材料としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、又はポリプロピレン等の発泡性の樹脂、或いは、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、塩素化ポリイソプレンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素添加ポリブタジエンゴム、ブチルゴム等のゴム材料を1種類、又は2種類以上をブレンドしてなる材料が挙げられる。なお、これらには必要に応じて、発泡助剤、整泡剤、触媒、硬化剤、可塑剤、又は加硫促進剤等の助剤を加えてもよい。
【0021】
これらの中も、気泡を有する材料(いわゆる発泡体)がよく、特に、擦れによる被清掃部材の表面に傷を付けない、長期に渡り千切れや破損が生じないようにする観点から、引っ張りに強い発泡ポリウレタンであることが望ましい。
ポリウレタンとしては、例えば、ポリオール(例えばポリエステルポリオール、ポリーエテルポリエステルやアクリルポリール等)と、イソシアネート(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等)と、の反応物が挙げられ、鎖延長剤(1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン)が含まれたものであってもよい。そして、ポリウレタンの発泡は、例えば、水やアゾ化合物(例えばアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等)等の発泡剤を用いて行われるのが一般的である。また、発泡ポリウレタンには、必要に応じて発泡助剤、整泡剤、触媒などの助剤を加えてもよい。
【0022】
弾性層100Bの構成としては、1層構成でも積層構成でも構わない。具体的には、弾性層100Bの構成としては、例えば、発泡体1層からなる構成でも、ソリッド層と発泡層との2層の構成でも構わない。
【0023】
次に、充填部材について説明する。
充填部材100Dは、例えば、シャフト100Aの軸方向に沿って空間100Cを充填するように一直線状に設けられている。つまり、例えば、充填部材100Dは、シャフト100Aの軸方向に沿って弾性層100Bと充填部材100Dとが交互に配列するように、螺旋状に配置された空間100Cの一部を充填して設けられている。
これにより、清掃部材100は、充填部材100Dを設けない場合には常に被清掃部材に対して非接触な領域が存在するのに対して、弾性層100B及び充填部材100Dによってシャフト100Aの軸方向全域にわたって被清掃部材に対して接触する領域がシャフト100Aの周方向の一部に存在することとなる。
【0024】
シャフト100Aの軸方向に沿って空間100Cを充填するように一直線状に設けられた複数の充填部材100Dを一組としたとき、当該組を一つ設けた形態であってもよいし、シャフト100Aの周方向に間隔を持って複数設けた形態であってもよい(本実施形態では一つ設けた形態を示している。)。
但し、この場合、充填部材100Dにおけるシャフト100Aの周方向に沿った長さ(上記組が複数有する場合には、その合計の長さ:以下、周方向長さと称することがある)は、例えば、清掃部材100におけるシャフト100Aの周方向に沿った長さ(以下、周方向長さと称することがある)の1/2以下であることがよい。
これは、充填部材100Dにおけるシャフト100Aの周方向に沿った長さが大き過ぎると、清掃部材100が筒形状に近づくことから、螺旋状の弾性層100Bに由来する清掃能力が低下する傾向にあるためである。
なお、上記周方向長さの下限は、充填部材100Dの剥れを抑制する点から、3mm以上であることがよい。
【0025】
ここで、充填部材100Dは、シャフト100Aの軸方向に沿って空間100Cを充填するように一直線状に設けられる形態に限られず、螺旋状の空間100Cの一部を充填するように設ければよく、例えば、図4に示すように、複数の充填部材100Dが、例えば、格子状となる等、螺旋状の空間100Cを、当該螺旋方向に間隔を持って充填するように配置した形態であってもよい。
【0026】
但し、充填部材100Dにより充填する領域は、螺旋状の空間100Cを全て充填部材100Dにより埋め込んだと過程した場合における清掃部材100の外周面面積(弾性層100B及び充填部材100Dの表面積)に対して1/2以下となるようにすることがよい。
これは、充填部材100Dにより充填する領域が大きくなり過ぎると、清掃部材100が筒形状に近づくことから、螺旋状の弾性層100Bに由来する清掃能力が低下する傾向にあるためである。
【0027】
充填部材100Dは、螺旋状の空間100Cの一部を充填するように設ける、つまり当該空間100Cの一部に埋め込まれる部材であることから、その厚みが弾性層100Bの厚みと同等(±0.5mm)がよい。
【0028】
充填部材100Dの材料としては、弾性層100Bの材料と同様なものが挙げられる。充填部材100Dは、弾性層100Bと同じ材料で構成されていてもよいし、異なった材料で構成されていてもよいが、低温低湿環境下において被清掃部材に対する初期の帯電ムラを抑制する観点から、同じ材料で構成されることがよい。
【0029】
次に、本実施形態に係る清掃部材100の製造方法について説明する。
本実施形態に係る清掃部材100の製造方法は、例えば、次の方法が挙げられる。
1)角柱状に成型された弾性層用部材(発泡ポリウレタン等)を準備し、弾性層用部材にドリル等によってシャフト100Aを挿入する穴を形成し、次いで、外周表面に接着剤を塗布したシャフト100Aを弾性層用部材の穴に挿入した後、弾性層用部材に対して切削加工を施して弾性層100Bを形成して、その後、充填部材100Dとなる部品を螺旋状の空間100Cの一部に埋め込んで清掃部材100を得る方法。
2)金型により成形された円柱状の弾性層用部材(発泡ポリウレタン等)を準備し、弾性層用部材にドリル等によってシャフト100Aを挿入する穴を形成し、次いで、外周表面に接着剤を塗布したシャフト100Aを弾性層用部材の穴に挿入して、その後、その後、充填部材100Dとなる部品を螺旋状の空間100Cの一部に埋め込んで清掃部材100を得る方法。
2)シート状の弾性層用部材(発泡ポリウレタンシート等)を準備し、これに両面テープを貼り付けた後、打ち抜いて短冊を得て、これをシャフト100Aに巻き付けて弾性層100Bを形成して、その後、充填部材100Dとなる部品を螺旋状の空間100Cの一部に埋め込んで清掃部材100を得る方法。
【0030】
これらの中でも、短冊をシャフトに巻き付けて弾性層100Bを形成し、清掃部材を得る方法が簡便でよい。
【0031】
なお、充填部材100Dは、弾性層100Bとは別体で設けた形態を説明したが、これに限られず、例えば、弾性層100Bを切削加工により螺旋状に形成する際に、充填部材100Dに該当する領域を残存させて切削加工を施す等を行ったり、弾性層100Bを金型成形する際に、充填部材100Dに該当する領域も同時に金型成形を行ったりすることで、弾性層100Bと一体化させた部材であってもよい。
【0032】
以上、説明した本実施形態に係る清掃部材100は、回転に伴い、螺旋状に配置された弾性層100Bが被清掃部材の表面(被清掃面)に対して接触・離間を繰り返して清掃を行い、被清掃部材の表面(被清掃面)を基準にして見ると、弾性層100Bの螺旋幅方向両端部の角部(エッジ部)がシャフト100Aの軸方向(螺旋軸方向)に力が付加されて清掃を行う。
【0033】
ここで、清掃部材100は、弾性層100Bが螺旋状に配置されていることから、被清掃部材の表面(被清掃面)に対して接触する領域(接触領域)と非接触な領域(非接触領域)とが存在することとなる(図5(A)参照)。この被清掃部材の表面(被清掃面)においては、弾性層100Bとの接触領域では摩擦帯電が生じるのに対して、弾性層100Bとの非接触では摩擦帯電は生じない。すると、清掃開始初期では、被清掃部材の表面(被清掃面)は清掃部材100軸方向にわたって電位差を有する領域が存在することとなる。つまり、清掃部材100が回転し、その弾性層100Bが被清掃部材の表面(被清掃面)における清掃部材100軸方向全域にわたって接触して、被清掃面の電位が均一になるまでの間に、当該被清掃部材の表面(被清掃面)に電位差を有する領域が存在する、即ち帯電ムラが生じることとなる。特に、この帯電ムラは、低温低湿環境下において顕著に生じる。
【0034】
そこで、本実施形態に係る清掃部材100では、充填部材100Dにより、シャフト100Aと螺旋状に配置された弾性層100Bとで囲まれる空間100Cの一部を充填する。つまり、被清掃部材の表面(被清掃面)に対して接触することがない螺旋状の空間100Cにおいても(図5(A)参照)、充填部材100Dにより被清掃部材の表面(被清掃面)の機会が設けられることとなる(図5(B)参照)。このため、清掃部材100が回転し、被清掃部材の表面(被清掃面)における清掃部材100軸方向全域にわたって接触する時間が短縮される、即ち被清掃面の電位が均一になり、電位差を有する領域が消滅する時間が短縮される。
【0035】
特に、本実施形態に係る清掃部材100では、シャフト100Aの軸方向に沿って空間100Cを充填するように、一直線状に充填部材100Dを設けていることから(つまり、充填部材100D及び弾性層100Bによってシャフト100Aの軸方向全域にわたって被清掃部材に対して接触する領域がシャフト100Aの周方向の一部に存在するように、充填部材100Dを設けていることから)、弾性層100B及び充填部材100Dによってシャフト100Aの軸方向全域にわたって被清掃部材に対して接触する領域がシャフト100Aの周方向の一部に存在している。つまり、清掃部材100が一回転する間に少なくとも、弾性層100B及び充填部材100Dによって、シャフト100Aの軸方向全域にわたって被清掃部材に対して同時に接触する機会、即ち清掃部材100が被清掃部材が軸方向にわたって非接触領域がない状態で全接触する機会が設けられることになる。
【0036】
(画像形成装置等)
以下、本実施形態に係る画像形成装置について図面に基づいて説明する。
図6は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0037】
本実施形態に係る画像形成装置10は、例えば、図6に示すように、タンデム方式のカラーの画像形成装置である。本実施形態に係る画像形成装置10の内部には、感光体(像保持体)12や帯電部材14や現像装置等が、イエロー(18Y)、マゼンタ(18M)、シアン(18C)、及び黒(18K)が各色毎にプロセスカートリッジ(図7参照)として備えられている。このプロセスカートリッジは、画像形成装置10に脱着される構成となっている。
【0038】
感光体12としては、例えば、表面に有機感材等よりなる感光体層が被覆された直径が25mmの導電性円筒体が用いられ、図示しないモータにより、150mm/secのプロセススピードで回転駆動される。
【0039】
感光体12の表面は、感光体12表面に配置された帯電部材14によって帯電された後、帯電部材14より感光体12の回転方向下流側に、露光装置16から出射されるレーザービームLBによって画像露光が施され、画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0040】
感光体12上に形成された静電潜像は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の現像装置19Y、19M、19C、19Kによって現像され、各色のトナー像となる。
【0041】
例えば、カラーの画像を形成する場合、各色の感光体12の表面には、帯電・露光・現像の各工程が、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色に対応して行なわれ、各色の感光体12の表面には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色に対応したトナー像が形成される。
【0042】
感光体12上に順次形成されるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色のトナー像は、感光体12と用紙搬送ベルト20を介して転写装置22が接する箇所にて、感光体12の外周に用紙搬送ベルト20上を搬送される記録用紙24へ転写される。さらに、感光体12上からトナー像が転写された記録用紙24は、定着装置64へと搬送され、この定着装置64によって加熱・加圧されてトナー像が記録用紙24上に定着される。その後、片面プリントの場合には、トナー像が定着された記録用紙24は、排出ロール66によって画像形成装置10の上部に設けられた排出部68上にそのまま排出される。
【0043】
−方、両面プリントの場合には、定着装置64により第一面(表面)にトナー像が定着された記録用紙24を、排出ロール66によって排出部68上にそのまま排出せずに、排出ロール66によって記録用紙24の後端部を狭持した状態で、排出ロール66を逆転させるとともに、記録用紙24の搬送径路を両面用の用紙搬送路70に切り替え、この両面用の用紙搬送路70に配設された搬送ロール72によって、記録用紙24の表裏を反転した状態で、再度、用紙搬送ベルト20上へ搬送して、記録用紙24の第二面(裏面)に感光体12上からトナー像を転写する。そして、記録用紙24の第二面(裏面)のトナー像を定着装置64によって定着させ、記録媒体24(被転写体)を排出部68上に排出する。
【0044】
なお、トナー像の転写工程が終了した後の感光体12の表面は、感光体12が1回転する毎に、感光体12の表面であって、転写装置22が接する箇所よりも感光体12の回転方向下流側に配置された清掃ブレード80によって、残留トナーや紙粉などが除去され、次の画像形成工程に備えるようになっている。
【0045】
ここで、図8及び図9に示すごとく、帯電部材14は、例えば、導電性シャフト14Aの周囲に弾性層14Bが形成されたロールであり、シャフト14Aは回転自在に支持されている。帯電部材14の感光体12と反対側には、帯電部材14の清掃部材100が接触して、帯電装置(ユニット)を構成している。この清掃部材100として、本実施形態に係る清掃部材100が用いられる。
【0046】
帯電部材14はシャフト14Aの両端へ荷重Fをかけて感光体12へ押付け、弾性層14Bの周面に沿って弾性変形してニップ部を形成している。更に、清掃部材100はシャフト100Aの両端へ荷重F’をかけて帯電部材14へ押付け、弾性層100Bが帯電部材14の周面に沿って弾性変形してニップ部を形成することで、帯電部材14の撓みを抑えて、帯電部材14と感光体12の軸方向のニップ部を形成している。
【0047】
感光体12は、図示しないモータによって矢印X方向に回転駆動され、感光体12の回転により帯電部材14が矢印Y方向に従動回転する。また、帯電部材14の回転により清掃部材100が矢印Z方向に従動回転する。
【0048】
−帯電部材の構成−
以下、帯電部材の説明をするが、本実施形態では以下の構成に限定されるものではない。符号は省略して説明する。
【0049】
帯電部材の構成としては、特に限定されるものではないが、例えば、シャフト、弾性層、若しくは弾性層の代わりに樹脂層を有する構成が挙げられる。弾性層は単層構成からなるものであってよく、幾つもの機能を持った複数の異なる層からなる積層構成であってもよい。更には、弾性層の上に表面処理を行ってもよい。
【0050】
シャフトの材質としては快削鋼、ステンレス鋼等を使用し、摺動性等の用途に応じて材質及び表面処理方法は適時選択するのが望ましい。また、メッキ処理するのが望ましい。導電性を有さない材質の場合、メッキ処理等一般的な処理により加工して導電化処理を行ってもよいし、そのまま使用してもよい。
【0051】
弾性層は導電性弾性層とするが、導電性弾性層は、例えば、弾性を有するゴム等の弾性材、導電性弾性層の抵抗を調整するカーボンブラックやイオン導電材等の導電材、必要に応じて軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカ又は炭酸カルシウム等の充填剤等、通常ゴムに添加され得る材料を加えてもよい。通常ゴムに添加される材料を添加した混合物を、導電性のシャフトの周面に被覆することにより形成される。抵抗値の調整を目的とした導電剤として、マトリックス材に配合されるカーボンブラックやイオン導電剤等の電子及びイオンの少なくとも一方を電荷キャリアとして電気伝導する材料を分散したもの等が用いられる。また、弾性材は発泡体であってもかまわない。
【0052】
導電性弾性層を構成する弾性材としては、例えばゴム材中に導電剤を分散させることによって形成される。ゴム材としては、例えば、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム及びこれらのブレンドゴムが好適に挙げられる。これらのゴム材は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0053】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属又は合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末が挙げられる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;が挙げられる。
【0054】
これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限はないが、電子導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して、1質量部以上60質量部以下の範囲であることが望ましく、一方、イオン導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であることが望ましい。
【0055】
帯電部材の表面は、表面層を形成させてもよい。表面層の材料としては、樹脂、ゴム等の何れを用いてもよく特に限定するものではない。例えば、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、共重合ナイロンが好適に挙げられる。
共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種又は複数種を重合単位として含むものであって、この共重合体に含まれる他の重合単位としては、6ナイロン、66ナイロン等が挙げられる。ここで、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロンよりなる重合単位が共重合体中に含まれる割合は、重量比で合わせて10%以上であるのが望ましい。
【0056】
高分子材料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、当該高分子材料の数平均分子量は、1,000以上100,000以下の範囲であることが望ましく、10,000以上50,000以下の範囲であることがより望ましい。
【0057】
また表面層には導電性材料を含有させ、抵抗値を調整してもよい。該導電性材料としては、粒径が3μm以下であるものが望ましい。
【0058】
また、抵抗値の調整を目的とした導電剤として、マトリックス材に配合されるカーボンブラックや導電性金属酸化物粒子、あるいはイオン導電剤等の電子及びイオンの少なくとも一方を電荷キャリアとして電気伝導する材料を分散したもの等を用いてもよい。
【0059】
導電剤のカーボンブラックとして、具体的には、デグサ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
カーボンブラックはpH4.0以下が望ましい。
【0060】
抵抗値を調整するための導電性粒子である導電性金属酸化物粒子は、酸化錫、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化亜鉛、アナターゼ型酸化チタン、酸化スズインジウム(ITO)等の導電性を有した粒子で、電子を電荷キャリアとする導電剤あれば何れも用いることができ、特に限定されるものではない。これらは、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。また、何れの粒径であってもよいが、望ましくは酸化錫、アンチモンドープがされた酸化錫、アナターゼ型酸化チタンであり、更に、酸化錫、アンチモンドープがされた酸化錫が望ましい。
【0061】
さらに、表面層には、フッ素系あるいはシリコーン系の樹脂が好適に用いられる。特に、フッ素変性アクリレートポリマーで構成されることが望ましい。また、表面層の中に粒子を添加してもよい。また、アルミナやシリカ等の絶縁性粒子を添加して、帯電部材の表面に凹部を付与し、感光体との摺擦時の負担を小さくして帯電部材と感光体相互の耐磨耗性を向上させてもよい。
【0062】
帯電部材の外径としては8mm以上16mm以下が望ましい。また、外径の測定方法としては市販のノギスやレーザー方式外径測定装置を用いて測定される。
【0063】
帯電部材のマイクロ硬度は45°以上60°以下が望ましい。低硬度化にする為には可塑剤添加量を増量する方法、シリコーンゴム等の低硬度の材料を使用することが考えられる。
【0064】
また、帯電部材のマイクロ硬度は高分子計器株式会社製MD−1型硬度計にて測定した値を用いている。
【0065】
なお、本実施形態に係る画像形成装置では、感光体(像保持体)、帯電装置(帯電部材と清掃部材とのユニット)、現像装置、清掃ブレード(クリーニング装置)を備えたプロセスカートリッジを説明したが、これに限られず、帯電装置(帯電部材と清掃部材とのユニット)を備え、その他必要に応じて、感光体(像保持体)、露光装置、転写装置、及び現像装置、清掃ブレード(クリーニング装置)から選択されるものを備えたプロセスカートリッジとしてもよい。なお、これら装置や部材をカートリッジ化せず、画像形成装置に直接配置した形態であってもよい。
【0066】
また、本実施形態に係る画像形成装置では、帯電装置として、帯電部材と清掃部材とのユニットで構成した形態を説明したが、つまり、被清掃部材として帯電部材を採用した形態を説明したが、これに限られず、被清掃部材としては、感光体(像保持体)、転写装置(転写部材;転写ロール)、中間転写体(中間転写ベルト)が挙げられる。そして、これら被清掃部材とこれに接触して配置される清掃部材とのユニットを、画像形成装置に直接配置してもよいし、上記同様にプロセスカートリッジのようにカートリッジ化して画像形成装置に配置してもよい。
【0067】
また、本実施形態に係る画像形成装置は、上記構成に限られず、中間転写方式の画像形成装置等、周知の画像形成装置を採用してもよい。
【0068】
(試験例)
以下、上記本実施形態に係る歯車の作用効果を確認するための試験例について説明する。
なお、以下、清掃部材を「クリーニングロール」と称し、特に、螺旋状に配置した弾性層を持つものを「スパイラルクリーングロール」、筒状の弾性層を持つものを「筒状クリーニングロール」と称して説明する。また、下記試験例では、帯電部材の一例である帯電ロールを適用している。
【0069】
−参考例−
図10に示すように、クリーニングロールと帯電ロールとの接触/非接触で生じる帯電ロールの表面電位差(帯電ムラ)と、これによる感光体表面の帯電電位差について、検証した。なお、図10中、200は筒状クリーニングロールを示し、201は帯電ロールを示し、202は電位計を示す。
まず、筒状クリーニングロール(筒状の弾性層を持つロール)の弾性層を軸方向で半分だけ取り付けたものを、帯電ロールと接触させて回転駆動し、帯電ロール表面の電位を表面電位計で測定した。このとき、帯電ロールのシャフトは接地してある。帯電ロールはφ6シャフトに1.5mmのゴム層を設け、さらに表面をイソシアネート含浸処理したφ9の二層の帯電ロールを用いた。
クリーニングロールはφ4シャフト上に弾性層として肉厚2mmの発泡ウレタン層を設けたφ8のものを用いた。環境は、温度10℃、湿度15%の低温低湿下で行なった。また、帯電ロールの回転速度は320mm/sとし、8s間駆動させた。
その結果を、図11に示す。帯電ロール表面において、クリーニングロールの弾性層と非接触の箇所(クリーングロール弾性層非接触領域)は電位が0Vであるのに対し、弾性層と接触した箇所(クリーングロール弾性層接触領域)は電位が−80Vとなった。これより、クリーングロールの弾性層との接触摩擦により、帯電ロール表面が帯電することがわかった。
【0070】
次に、帯電ロールに電圧を印加し、感光体を帯電させ、帯電ロールにおけるクリーニングロールの弾性層が接触した個所(クリーングロール弾性層接触領域)と非接触の個所(クリーングロール弾性層非接触領域)に対応した感光体表面電位を測定した。環境は上記同様であり、帯電時のプロセススピードは165mm/sとした。感光体は、φ24のAlシャフト上に、感光層を34μm塗布したものであり、−1360VのDC電圧を印加した。
その結果を、図12に示す。帯電ロールにおけるクリーニングロールの弾性層との接触した箇所に対応する感光体表面は−600Vに帯電するのに対し、帯電ロールにおけるクリーニングロールの弾性層が非接触の箇所に対応する感光体表面は−520Vまでしか帯電しなかった。帯電ロールにおけるクリーニングロールの弾性層との接触した箇所に対応する感光体表面電位が、上記帯電ロールの帯電分−80V高い値を示していることがわかる(図12参照)。また、同じ条件で、ハーフトーン画像(画像濃度30%)の画出しを行なったところ、帯電ロールにおけるクリーニングロールの弾性層との接触した箇所に対応する部分の画像が、非接触の箇所に対応する部分の画像に比べ低濃度となり、濃度段差が現れることを確認した。
【0071】
以上から、低温低湿環境下においてクリーニングロールの弾性層の接触領域と非接触領域との間で、帯電ロール(被清掃部材)に対する初期の帯電ムラが生じ、これに起因して、帯電ロール(被清掃部材)により帯電する感光体(被帯電部材)に帯電ムラが生じ、その結果、画像濃度ムラが生じることがわかる。
【0072】
−試験例1−
φ4シャフト上にシート厚2.4mm、シート幅6mmのウレタンスポンジシートを、巻き角26°で螺旋状に巻いて、螺旋状の弾性層を持つスパイラルクリーングロールA(比較例相当)を準備した。
一方、スパイラルクリーニングロールAのシャフト周面の一箇所に、シート厚2.4mm、軸方向長さ13mm、周方向長さ5mmの同材質のウレタンスポンジ片(充填部材)を、シャフトの軸方向に沿って螺旋状の空間を充填するように一直線状に設けたスパイラルクリーニングロールB1を準備した(実施例相当:図1及び図2参照)。
また、スパイラルクリーニングロールAのシャフト周面の一箇所に、シート厚2.4mm、軸方向長さ13mm、周方向長さ5mmの同材質のウレタンスポンジ片(充填部材)を、螺旋状の空間を格子状に充填するように設けたスパイラルクリーニングロールB2を準備した(実施例相当:図4参照)。
そして、これらスパイラルクリーニングロールA、B1、B2を画像形成装置に装着(その帯電部材と接触するように装着)し、低温低湿環境下でハーフトーン画像(画像濃度30%)の画出しを行なった。
なお、本試験例における、帯電ロール、感光体の諸条件は参考例と同様であり、帯電ロールにはDC電圧(−1360V)を印加した。
【0073】
その結果を図13に示す。スパイラルクリーニングロールAを用いて出力したハーフトーン画像には、スパイラルマーク状に濃淡差が現れ、5枚出力後に消滅した(図13参照)。一方、スパイラルクリーニングロールB1を用いて出力したハーフトーン画像は、1枚目から均一な画像が得られた(図13参照)。これより、スパイラルロールの隙間の充填部材であるスポンジ片が画像濃度ムラを抑制する効果があることが確認できた。そして、参考例から充填部材であるスポンジ片が、クリーングロールの帯電による電位差を緩和することで、画像濃度ムラを抑制しているものと推測される。
また、スパイラルクリーニングロールB2を用いて出力したハーフトーン画像には、スパイラルマーク状に濃淡差が現れ、4枚出力後に消滅した。これにより、同じ充填部材を設けたスパイラルクリーニングロールB1、B2であっても、シャフトの軸方向に沿って螺旋状の空間を充填するように一直線状に充填部材を設けたスパイラルクリーニングロールB1の方が、スパイラルロールの隙間の充填部材であるスポンジ片が画像濃度ムラを抑制する効果があることが確認できた。
【0074】
一方、スパイラルクリーニングロールAを用いても、直流電圧(DC)に交流電圧(AC)を重畳した電圧(DC+AC=−600Vdc+2.0kVpp)を帯電ロールに印加してハーフトーン画像を出力した場合には、出力した一枚目のハーフトーン画像にスパイラルマーク状に濃淡差が現れ、2枚出力後に消滅した(図13参照)。これより、クリーニングロールの弾性層の接触領域と非接触領域との間で、帯電ロール(被清掃部材)に対する初期の帯電ムラが生じ易いのは、DC帯電方式を採用したときに顕著であり、スパイラルクリーニングロールB1(実施例相当)を用いることで、これが抑制されることがわかる。
【0075】
次に、充填部材としてのポリウレタンスポンジ片を、カーボンを含有させたウレタンスポンジ片に変えた以外はスパイラルクリーニングロールB1と同様に作成したスパイラルクリーニングロールCを準備した。
このスパイラルクリーニングロールCを、画像形成装置に装着(その帯電部材と接触するように装着)し、低温低湿環境下でハーフトーン画像(画像濃度30%)の画出しを行なった。なお、本試験例における、帯電ロール、感光体の諸条件は参考例と同様であり、帯電ロールにはDC電圧(−1360V)を印加した。
【0076】
その結果を図13に示す。スパイラルクリーニングロールB1に比べて劣るものの、1枚目にスパイラルマーク状に濃淡差が現れ、3枚目で消滅した(図13参照)。これより、スパイラルクリーニングロールにおいて、弾性層と充填部材との材質が異なると、当該弾性層及び被清掃面の接触領域と当該充填部材及び被清掃面の接触領域との帯電レベルが変わり、帯電ムラの抑制効果(画像濃度ムラ抑制効果)が薄れてしまうため、弾性層と充填部材との材質は同じものがよいことがわかる。
【0077】
なお、図13中、濃淡差Gとは、画像濃度ムラとなっている画像濃度差の程度を示すグレードを意味し、「1」が極軽微に発生(指摘されないと分からないレベル)、「2」が軽微に発生、「3」が顕著に発生を示す。
【0078】
−試験例2−
φ4シャフト上に肉厚2mmでウレタンスポンジ層(弾性層)を形成した円筒状のクリーニングロールD(比較例相当)を準備した。
一方、スパイラルクリーニングロールAのシャフト周面の一箇所に、シート厚2.4mm、軸方向長さ13mm、周方向長さ15mmの同材質のウレタンスポンジ片(充填部材)を、シャフトの軸方向に沿って螺旋状の空間を充填するように一直線状に設けたスパイラルクリーニングロールEを準備した(実施例相当:図1及び図2参照)。
また、スパイラルクリーニングロールAのシャフト周面の一箇所に、シート厚2.4mm、軸方向長さ13mm、周方向長さ12.5mmを同材質のウレタンスポンジ片(充填部材)を、シャフトの軸方向に沿って螺旋状の空間を充填するように一直線状に設けたスパイラルクリーニングロールFを準備した(実施例相当:図1及び図2参照)。
【0079】
そして、クリーニングロールA〜B、D〜Fを用いて、画像形成装置に装着(その帯電部材と接触するように装着)し、実機によるランニング試験を実施し、感光体のサイクル数(回転数)と帯電ロールの汚染に起因する画像の汚染スジとの関係を評価した。
なお、本試験例における、帯電ロール、感光体の諸条件は参考例と同様であり、帯電ロールにはDC電圧(−1360V)を印加した。
【0080】
その結果を図14に示す。スパイラルクリーニングロールAとB1は感光体300,000サイクル(300,000回転)の間に画像の汚染スジが未発生であり、クリーニング性が良好なことがわかる。
一方、スパイラルクリーニングロールFは、円筒状クリーニングロールDよりも良いが、スパイラルクリーニングロールAとB1よりは劣る結果となった。スパイラルクリーニングロールEは、円筒状クリーニングロールDよりも良いが、スパイラルクリーニングロールFよりも劣る結果となった。このため、クリーング性の低下を抑制するためには、スパイラルクリーニングロールの充填部材の周方向長さ(シャフトの軸方向に沿って螺旋状の空間を充填するように一直線状に設けた充填部材の周方向長さ)は、大きすぎないこと(例えばクリーングロールの周方向長さの1/2以下とすること)がよいことがわかる。
【0081】
なお、図14中、画像の汚染スジGとは、画像の汚染スジの程度を示すグレードを意味し、「1」が極軽微な筋(指摘されないと気付かないレベル)が画像内に1本発生、「2」が 極軽微な筋が画像内に数本(5本以内)発生、「3」が軽微な筋が画像内に数本(5本以内)発生、「4」がコントラストの強い筋が画像内に数本又は軽微な筋が画像内全面に発生、「5」がコントラストの強い筋が画像内全面に発生、を示す。
【符号の説明】
【0082】
10 画像形成装置、12 感光体、14 帯電ロール、14A シャフト、14B 弾性層、16 露光装置、19Y、19M、19C、19K 現像装置、20 用紙搬送ベルト、22 転写装置、24 記録媒体、53 帯電ロール、64 定着装置、66 排出ロール、68 排出部、70 用紙搬送路、72 搬送ロール、80 清掃ブレード、100 清掃部材、100A シャフト、100B 弾性層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心棒と、
前記心棒の外周面に、螺旋状に巻かれた帯状の弾性体と、
前記心棒と前記螺旋状に巻かれた帯状の弾性体とで囲まれる空間の一部を充填する充填部材と、
を備える画像形成装置用の清掃部材。
【請求項2】
前記充填部材が、当該充填部材及び前記弾性体によって前記心棒の軸方向全域にわたって被清掃部材に対して接触する領域が前記心棒の周方向の一部に存在するように設けられた請求項1に記載の画像形成装置用の清掃部材。
【請求項3】
被帯電体を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材の表面に接触して配置され、当該帯電部材の表面を清掃する清掃部材であって、請求項1又は2に記載の画像形成装置用の清掃部材と、
を備える帯電装置。
【請求項4】
前記帯電部材が、直流電流のみを印加する帯電方式の帯電部材である請求項3に記載の帯電装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の帯電装置を少なくとも備え、
画像形成装置に脱着されるプロセスカートリッジ。
【請求項6】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段であって、請求項3又は4に記載の帯電装置を有する帯電手段と、
帯電された前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体に形成された前記潜像をトナーによってトナー像に現像する現像手段と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項1】
心棒と、
前記心棒の外周面に、螺旋状に巻かれた帯状の弾性体と、
前記心棒と前記螺旋状に巻かれた帯状の弾性体とで囲まれる空間の一部を充填する充填部材と、
を備える画像形成装置用の清掃部材。
【請求項2】
前記充填部材が、当該充填部材及び前記弾性体によって前記心棒の軸方向全域にわたって被清掃部材に対して接触する領域が前記心棒の周方向の一部に存在するように設けられた請求項1に記載の画像形成装置用の清掃部材。
【請求項3】
被帯電体を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材の表面に接触して配置され、当該帯電部材の表面を清掃する清掃部材であって、請求項1又は2に記載の画像形成装置用の清掃部材と、
を備える帯電装置。
【請求項4】
前記帯電部材が、直流電流のみを印加する帯電方式の帯電部材である請求項3に記載の帯電装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の帯電装置を少なくとも備え、
画像形成装置に脱着されるプロセスカートリッジ。
【請求項6】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段であって、請求項3又は4に記載の帯電装置を有する帯電手段と、
帯電された前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体に形成された前記潜像をトナーによってトナー像に現像する現像手段と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−145416(P2011−145416A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5277(P2010−5277)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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