説明

画像形成装置用ラック

【課題】 車椅子使用者が画像形成装置の操作を容易に行い、排出された用紙を容易に取り出すことができると共に、複写機に対してラックを近接、離間させることも随時容易に行うことができる画像形成装置用ラックを提供する。
【解決手段】 ラック10の脚部12c、12dの対向面に複写機側に向かって下方に傾斜する細長い直線上の溝部20、24を各々設ける。排紙トレイ30には突起部32a、32bを設け、突起部32aを溝部20、突起部32bを溝部24に嵌め込み、排紙トレイ30を固定する。このような構成のラックを画像形成装置1の排出口122側に近接して設置することで、画像形成装置1から排紙された用紙は排紙トレイ30に収納されることになる。また、上板14の上は読取部110、操作部130の設置が可能になっており、上板14の下には車椅子使用者の下肢が入るように空間が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の操作を容易にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、身体障害者の雇用を進める企業が増え、例えば車椅子を使用している人がオフィスにおいて複写機を使用する機会が増えている。しかし、オフィス等で多く使われている複写機は、床に設置されているものが多く、このような複写機を車椅子に乗ったユーザが使用する場合、ユーザが複写機を操作しようとして近づこうとしても、車椅子に座った状態では、複写機に近接することができない。このため、操作部のスイッチやボタンに手が届かず、また、スキャナ部への原稿を載置するというような操作も行うことができないという問題があった。
【0003】
そこで、このような問題を解決する技術として、例えば特許文献1に開示された画像形成装置用ラックがある。特許文献1に開示された画像形成装置用ラックは、画像形成装置に近接させるために、画像形成装置の排紙トレイとは反対側に設置される。そして、ラック上板の下部には車椅子使用者が下肢を入り込ませることができる空間を設け、ラック上板には画像形成装置のパネル等を置く。このような構成により、車椅子使用者は、ラックに入り込みパネルを手元で操作し、画像印刷を行うことができる。
【特許文献1】特開2004−53999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術においては、排紙トレイの反対側にラックを近接させて用いるので、排紙トレイがユーザとは反対側に位置してしまう。従って、ユーザは、原稿の載置や操作部の操作を行った後に、排紙トレイ側に移動して印刷後の用紙を取り出さなければならず面倒であった。また、特許文献1に記載のラックにおいては、ラック上板と床面の空間に排紙トレイが入るようにしてラックを配置することもできる。この場合には、ユーザは操作部の操作等を行った位置で印刷後の用紙を取り出すことができる。しかしながら、複写機のメンテナンス(詰まった紙の排除や各種調整など)を行う際には、複写機本体に設けられているメンテナンス用の開閉部を開いたり、装置内部を見たりするため、ラックを複写機から離さなければならないが、このときには排紙トレイが邪魔になりラックの移動が容易ではないという問題が発生する。特に、複写機周辺には一般にスペースがないことが多いため、ラックを手前側に引き出す必要が生じるが、排紙トレイが障害になるため、手前に引き出すのは難しい。
【0005】
本発明はこのような発明に鑑みてなされたものであり、車椅子使用者が画像形成装置の操作を容易に行い、排出された用紙を容易に取り出すことができると共に、複写機に対してラックを近接、離間させることも随時容易に行うことができる画像形成装置用ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明は、上板、及び前記上板を支える脚部を有する本体部と、床面に対して所定距離をとって前記本体部に設けられた用紙収納部とを具備した画像形成装置用ラックであって、前記用紙収納部は前記画像形成装置用ラックが画像形成装置の用紙排出口の出側の近傍に配置されたときに、前記画像形成装置の用紙排出口から排出される用紙を収納する位置に設置されていることを特徴とする画像形成装置用ラックを提供する。
【0007】
本発明に係る画像形成装置用ラックによれば、画像形成装置の用紙排出口の出側の近傍に画像形成装置用ラックを設置したときに、画像形成装置の排出口から排出された用紙を収納できる位置に用紙収納部が設置されている。また、用紙収納部は床面との間に空間を有した状態になるように設置されている。
【0008】
また、本発明の好ましい態様においては、画像形成装置の一部をなし、前記画像形成装置本体部と別体に設けられている画像読取部、又は操作部の少なくとも一方が載置可能となるように、前記上板の形状が設定されていることを特徴とする。
また、本発明の好ましい態様においては、前記用紙収納部は前記用紙の排出方向に沿って延びる平板状のトレイであって、画像形成装置の用紙排出口より下側に配置されることを特徴とする。
また、本発明の好ましい態様においては、前記用紙収納部は、高さ位置が調整可能に前記脚部に設けられることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るラック10の外観を示した図である。このラック10は画像形成装置1の用紙排出側に隣接して設置されている。画像形成装置1は、複写機、ファクシミリ、スキャナ、プリンタの機能を兼ね備えている。また画像形成装置1は読取部110、本体部120、を備えており、読取部110はラック10の上面に載置される。
【0010】
読取部110は図示せぬプラテンガラスを備えている。そして読取部110はこのプラテンガラス上にある原稿に光を照射する光源、原稿で反射した光を電気信号に変換する光電変換素子などを備えた、いわゆるイメージスキャナ機構を具備している。読取部110は、プラテンガラス上にある原稿を光学的に読み取り、読み取った画像をもとに画像データを生成し、生成した画像データを本体部120へと供給する。また、読取部110は、ADF(Auto Document Feeder)と呼ばれる自動原稿送り機構を備えている。読取部110は、複数枚の用紙を積み重ねた用紙束が載置された場合、ADF機能により用紙束のうち一番上にある用紙を用紙束から分離させ、分離した用紙の画像を読み取る。
【0011】
また、読取部110は、操作部130を具備している。操作部130は、ユーザが画像形成装置1を操作する際に使用する各種キーや、画像形成装置1を操作するためのメニュー画面等を表示する液晶ディスプレイを有している。
【0012】
本体部120は、CPUやROM、RAM、不揮発性メモリ等を備えた制御部(図示略)を有しており、この制御部によって画像形成装置1の各部が制御される。また本体部120は、電子写真方式の画像形成ユニット(図示略)を備えている。読取部110にて読取った原稿の複写を行う際には、本体部120は、読取部110で生成された画像データに基づいて、この画像データが表す画像のトナー像を形成する。そして、このトナー像を給紙トレイ124から搬送される用紙に転写し、排出口122から排出する。
【0013】
図2はラック10の斜視図である。平板状の上板14は読取り部110を設置できる大きさに形成されており、上板14の下面側の四隅から床方向に脚部12a〜12dが設けられている。脚部12a〜12dの下端部には車輪部18a〜18dが設けられている。車輪部18a〜18dは床面を走行可能であり、これによりラック10を容易に移動することができる。脚部12aと12bの間には梁部16aが床面と平行に設けられている。同じように、脚部12cと脚部12dの間にも、梁部16bが床面と平行に設けられている。
【0014】
脚部12cと12dの対向面には各々溝部20、24が設けられている。この溝部20、24は複写機側に向かって下方に傾斜する細長い直線上の形状を有している。これら溝部20、24の高さ方向の位置は同じに設定されている。また、溝部20、24の下側にも、これらの溝部と同様の溝部22、26が形成されている。
【0015】
図3(a)、(b)は、排紙トレイ30の形状を示す図であり、この排紙トレイ30は図示のように平板状に形成されている。排紙トレイ30は図2に示すように脚部12c、12dの間に斜めに嵌め込まれ、これにより、画像形成装置1の排紙トレイとして機能するようになっている。排紙トレイ30の端部には、図3(a)に示すように両側に突起する板状の突起部32a、32bが設けられている。図3(b)は排紙トレイ30の側面部であり、同図(a)の突起部32b付近を拡大して図示したものである。突起部32b(32a)の厚さは、溝部20、24の幅にほぼ近い厚みに設定され、これらの溝部20、24に挿入可能になっている。トレイ30が脚部12c、12dに嵌め込まれるときは、突起部32a、32bが各々溝部20、24に挿入されることによって固定される。すなわち、図4(a)に示すように突起部32a(32b)を溝部20(24)に沿って挿入し、図4(b)に示すように溝部20(24)の先端に突き当たって固定される。この状態においては、排紙トレイ30は図1に示すように画像形成装置1の排出口122に望んで位置することになり、画像形成装置1の排紙トレイとして機能する。
【0016】
本体部120によって画像が形成された用紙P1が排出口122から排紙トレイ30に排紙される様子を図5に示す。図5(a)に示すように本体部120の排出口122から排出される用紙P1は排出口122を出ると、重力によって下方に向かう。次に用紙P1は図5(b)に示すように排紙トレイ30に受け取られ、そのまま搬送されることにより排紙トレイ30上を移動する。そして、用紙P1の後端部が排出口122から出終わると、図5(c)に示すように排紙トレイ30に収納される。また、次の用紙P2が排出される場合も上記と同様にして行われ、このようにして排出口122から排出される用紙が順次排紙トレイ30に収納されていく。
【0017】
ここで、車椅子を使用した場合の使用状態を図6に示す。図示のように、ラック上板14の下部には空間があるので、車椅子使用者は膝部分までラック内に進入することができる。これにより、車椅子使用者は操作部130や読取部110に接近することができるため、各種操作や原稿の載置などを容易に行うことができる。また、印刷が行われて排紙トレイ30に収納された用紙についても、操作時のそのままの位置で容易に取り出すことができる。
【0018】
また、本体部120のメンテナンスや紙詰まり等でラック10を移動したい場合、排出トレイがラック10に設けられているためラック10を容易に移動することができる。従って、例えば図7のように、本体部120とラック10が壁で囲まれている場合、ラック10を手前に移動するのみで、本体部10のメンテナンス作業を行うことができる。図7はラック10を移動する様子を上から見た図である。
【0019】
なお、本実施形態においては、突起部32a、32bをそれぞれ溝部20、24に嵌め込むことで、排紙トレイ30をラック10に固定したが、突起部32a、32bのそれぞれを溝部22、26に嵌め込んでもよい。このように設置することで、排出される用紙をさらに収納でき、また排出口が低い位置に設けてある画像形成装置にも対応することができる。
【0020】
また、本実施形態においては、排紙トレイ30を設置する高さが2段階である場合を示したが、段階をさらに増やしてもよい。また、排紙トレイ30を所定位置に固定してもよい。一般に画像形成装置に設けてある排出口の高さは、だいたい同じ場合が多いので、その寸法に合わせて排紙トレイ30の位置を固定しても、問題なく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るラック10の外観を示した図である。
【図2】画像形成装置用ラックの斜視図である。
【図3】排紙トレイ30を示した図である。
【図4】突起部32aが係合部20に係合された様子を示した図である。
【図5】車椅子使用者がラック10に対した図である。
【図6】用紙P1が排出口122から排紙トレイ30に排紙される様子を示した図である。
【図7】本体部120と壁の間に収納されていたラック10を手前に移動する様子を上から見た図である。
【符号の説明】
【0022】
10・・・ラック、12a〜12d・・・脚部、14・・・上板、20,22,24,26・・・溝部、30・・・排紙トレイ、110・・・読取部、130・・・操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上板、及び前記上板を支える脚部を有する本体部と、
床面に対して所定距離をとって前記本体部に設けられた用紙収納部と
を具備した画像形成装置用ラックであって、前記用紙収納部は前記画像形成装置用ラックが画像形成装置の用紙排出口の排出側の近傍に配置されたときに、前記画像形成装置の用紙排出口から排出される用紙を収納する位置に設置されていることを特徴とする画像形成装置用ラック。
【請求項2】
画像形成装置の一部をなし、前記画像形成装置本体部と別体に設けられている画像読取部、又は操作部の少なくとも一方が載置可能となるように、前記上板の形状が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置用ラック。
【請求項3】
前記用紙収納部は前記用紙の排出方向に沿って延びる平板状のトレイであって、画像形成装置の用紙排出口より下側に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置用ラック。
【請求項4】
前記用紙収納部は、高さ位置が調整可能に前記脚部に設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置用ラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−159767(P2006−159767A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356851(P2004−356851)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】