説明

画像形成装置用帯電ブラシ

【課題】画像形成装置の帯電ブラシとして、像担持体への負担が小さく、かつ長期間に渡って像担持体を均一に帯電することのできるブラシを提供する。
【解決手段】ブラシ毛14の体積抵抗率が1×10Ω・cm〜1×10Ω・cmを満たし、ブラシ毛14の径D(m)が、D≦11×10−6を満たし、ブラシ毛14の占有率P[但し、P=(πD/4)・nで表され、nはブラシ毛の密度(Mf/m)を表す]がP≦0.15を満たし、ブラシ毛14の長手方向における単位長さ当たりの表面積L(m/m)[但し、L=πD・nで表される]がL≧8000を満たすブラシは、像担持体の帯電装置に好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式の画像形成装置の像担持体を帯電させる帯電ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、感光体ドラム等の像担持体を帯電させるために、導電性ブラシを備えた帯電装置が広く用いられている。
【0003】
このような帯電装置を備える画像形成装置について、図8を参照して説明する。図8は、画像形成装置の画像形成部の要部構成を示す正面図である。
【0004】
図8に示すように、画像形成部は、矢印方向に回転する感光体ドラム40を備えている。さらに、画像形成部においては、感光体ドラム40を一様に負極性に帯電させる帯電装置41、外部機器やスキャナから入力したデータに基づいて、帯電した感光体ドラム40に光像を走査することで静電潜像を形成する露光装置42、静電潜像を負極性に帯電したトナーによって顕像化する、つまりトナー画像を形成する現像装置43、用紙47を感光体ドラム40に運ぶ転写ベルト46、正極性のバイアス電圧によってトナー画像を用紙47に転写する転写装置44、およびクリーニング装置45が、感光体ドラム40の回転方向に沿って順に設置されている。
【0005】
像担持体を帯電させるための導電性ブラシとして、例えば、特許文献2には、ブラシ毛の径が15.3μmのものが記載されている。ただし、このようにブラシ毛の径が大きい場合、像担持体への当接力が強く、像担持体の寿命が短くなるおそれがある。そこで、近年、像担持体の磨耗を少なくして像担持体の寿命を延ばすための試みとして、像担持体と接触する接触子であるブラシ毛の径を小さくすることが行なわれている。例えば、特許文献1には、ブラシ接触子の平均径Fが、0.05μm≦F≦30μmである帯電部材が記載されている。
【特許文献1】特許第3287760号公報(2002年3月15日登録)
【特許文献2】特開2003−295549号公報(2003年10月15日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、単にブラシ毛の径を小さくするだけでは、確かに像担持体の寿命を延ばすことはできても、帯電ブラシそのものが長時間の使用に耐えられず、その結果帯電が不均一となることがあった。近年、環境問題への関心が高まるにつれて、消耗品の長寿命化がより強く要求されているため、帯電ブラシそのものの長寿命化が求められている。
【0007】
本発明は、上記従来の課題に鑑みたものであり、長時間の使用に耐えうる帯電ブラシを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる帯電ブラシは、像担持体を帯電させる画像形成装置用の帯電ブラシであって、ブラシ毛の体積抵抗率が1×10Ω・cm〜1×10Ω・cmを満たし、ブラシ毛の径D(m)が、D≦11×10−6を満たし、ブラシ毛の占有率P[但し、P=(πD/4)・nで表され、nはブラシ毛の密度(Mf/m)を表す]がP≦0.15を満たし、ブラシ毛の長手方向における単位長さ当たりの表面積L(m/m)[但し、L=πD・nで表される]がL≧8000を満たすことを特徴とする。
【0009】
上記構成によると、体積抵抗率を上記範囲とすることによって、本発明の帯電ブラシは、像担持体に対して効率よく電圧を印加することができる。そして、その結果、像担持体を均一に帯電することができる。
【0010】
帯電の均一性を高めるためには、ブラシ毛の表面積Lを大きくすればよい。しかし、単純に表面積Lを大きくすると、占有率Pも大きくなる傾向にある。占有率Pが大きくなるにつれ、ブラシ毛間にトナーおよび紙粉等の異物が堆積し、目詰まりを起こしやすくなる。目詰まりは、帯電に寄与するブラシ毛の表面積を実質的に低下させることになり、その結果、帯電の均一性が低下してしまう。
【0011】
そこで、本発明では、ブラシ毛の占有率Pおよび表面積Lを上記範囲としている。これによって、目詰まりが起きにくく長時間の使用に耐えうると共に、帯電に寄与する表面積を十分に確保することができ、均一性に優れた帯電ブラシを提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の帯電ブラシは、ブラシ毛の体積抵抗率が1×10Ω・cm〜1×10Ω・cmを満たし、ブラシ毛の径D(m)が、D≦11×10−6を満たし、ブラシ毛の占有率P[但し、P=(πD/4)・nで表され、nはブラシ毛の密度(Mf/m)を表す]がP≦0.15を満たし、ブラシ毛の長手方向における単位長さ当たりの表面積L(m/m)[但し、L=πD・nで表される]がL≧8000を満たすことを特徴とする。
【0013】
ブラシ毛の占有率Pおよび表面積Lを上記範囲とすることによって、目詰まりが起きにくく長時間の使用に耐えうると共に、帯電に寄与する表面積を十分に確保することができ、均一性に優れた帯電ブラシを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の帯電ブラシは、像担持体を帯電させる画像形成装置用の帯電ブラシであって、ブラシ毛の体積抵抗率が1×10Ω・cm〜1×10Ω・cmを満たし、ブラシ毛の径D(m)が、D≦11×10−6を満たし、ブラシ毛の占有率P[但し、P=(πD/4)・nで表され、nはブラシ毛の密度(Mf/m)を表す]がP≦0.15を満たし、ブラシ毛の長手方向における単位長さ当たりの表面積L(m/m)[但し、L=πD・nで表される]がL≧8000を満たせばよい。すなわち、これ以外の構成は、特に限定されるものではなく、従来のブラシ帯電システムにおいて、画像形成装置に利用されてきた技術を、適宜利用することができる。
【0015】
ブラシ毛は、一本のブラシ毛中において、部位によってその横断面積が異なっていてもよい。すなわち、ブラシ毛は、例えば割繊によって枝分かれした結果、先端が根元よりも細くなっていてもよい。このような場合、「ブラシ毛の径D」とは、特にブラシ毛の先端の径を指す。なお、ブラシ毛は完全な円形とは限らない。そのため、径Dとは、ブラシ毛の断面積と同一の面積を有する円の径を意味する。
【0016】
また、ブラシ毛の密度nは、ブラシ毛の先端部分における本数と、ブラシ毛の根元における密度(基部の表面の単位面積当たりに設けられたブラシ毛の本数)とに依存する。すなわち、例えば各々がブラシ毛となるn本の繊維を一束として、基部の表面の単位面積当たりにこの束をn束備えるブラシの場合、密度nは式n=n・nで表される。そして、さらにこの繊維1本が割繊によってn本の細繊維に分割されている場合は、密度Nはn=n・n・nで表される。なお、この繊維は全体が割繊によって細繊維に分割されていてもよいし、先端のみが枝分かれするように細繊維に分割されていてもよい。
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明のブラシについてより具体的に説明する。なお、以下の実施の形態では、ブラシ毛は、ブラシの支持台(シャフトまたは平板)上に、パイル織物に織り込まれた状態で設けられているものとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、ブラシ毛を設ける方法としては、静電植毛等、種々の技術を用いることができる。
【0018】
〔ロール型ブラシ〕
本発明の実施の一形態であるブラシは、図2に示すようにロール型のブラシとなっている。図2は、本実施の形態のロール型ブラシの要部構成を示す平面図である。
【0019】
図2に示すように、本実施の形態のロール型ブラシ21は、基部である円柱状のシャフト20と、シャフト20に接着等によって固定されたパイル織物10とを備える。なお、パイル織物10は、長尺状に切断された後、ブラシ毛14側を外側に向けてシャフト20にらせん状に巻きつけられている。ロール型ブラシ21は、パイル織物10に織り込まれたブラシ毛14によって、後述するように像担持体を帯電させる。
【0020】
シャフト20は、その径および材料等、特に限定されるものではなく、画像形成装置のブラシに従来用いられてきた技術を、好適に利用することができる。ただし、小型化するために、シャフト20の径は2mm〜6mm程度とすればよい。
【0021】
図1に、図2のロール型ブラシのパイル織物10を拡大した断面図を示す。パイル織物10は、横糸および縦糸(図示せず)からなる基布11に、パイル糸15がパイル織りによってW字型に織り込まれたものである。パイル糸15は基布11の単位面積当たりn本織り込まれており、1本のパイル糸15はn本の繊維が一束となったものである。
【0022】
パイル糸15が基布11上で解れることによってブラシ毛14を形成する場合、すなわち上記繊維が各々1本のブラシ毛14となる場合は、上述したように密度nはn=n・nで表される。一方、1本の上記繊維の先端が割繊によってn本の細繊維に分割され、この細繊維が各々1本のブラシ毛14となる場合は、密度nはn=n・n・nとなる。
【0023】
また、ブラシ毛14の長さhは、図1に示すように、基布11の裏面(支持台の表面)からブラシ毛14の先端までの距離であり、径Dはブラシ毛14の先端の径である。
【0024】
〔平板型ブラシ〕
本実施の形態のブラシは、上記構成の一例として、平板型のブラシとなっている。図3は、本実施の形態の平板型ブラシの平面図である。
【0025】
図3に示すように、平板型ブラシ25は、基部である平板24および上記平板24に固定されたパイル織物10を備えている。なお、平板型ブラシ25は、基部としてシャフト20の代わりに平板24を用いている以外、ロール型ブラシ21と同一の構成である。よって、図1・2を参照して既に説明した部材と同様の機能を有する部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0026】
〔ブラシの利用〕
本発明のブラシは、画像形成装置内に設けられ、帯電装置として利用される。
【0027】
画像形成装置は、スキャナにて読み込まれた画像や、画像形成装置に外部から接続された機器(例えばパーソナルコンピュータなどの画像処理装置)からのデータを画像として記録出力するものである。画像形成装置としては、具体的に、プリンタ、複写機、ファクシミリ機等が挙げられる。
【0028】
本発明のブラシを利用するにあたっては、帯電装置およびその他の画像形成装置の構成において、帯電ブラシ以外の構成は、特に限定されるものではなく、従来の画像形成装置における技術を好適に利用することができる。
【0029】
図8において、なお、本実施の形態では、像担持体として感光体ドラムを例に挙げて本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、像担持体には、カラープリンタにおける中間転写ベルト等、感光体以外の像を担持する中間転写体も含まれる。また、本実施の形態では、ロール型ブラシ21を例にとって説明するが、勿論、これに限らず、平板型ブラシ25を同様に適用することができる。
【0030】
なお、図8に示す部材については既に説明しているので、適宜その説明を省略する。
【0031】
ロール型ブラシ21は、図8に示す帯電装置41内に、ブラシ毛14が感光体ドラム40に摺接するように設けられる。
【0032】
〔実施例および比較例〕
図1・2に示すロール型ブラシ21を、図8に示す帯電装置41に適用し、実施例1〜9および比較例1〜5のブラシについて、その性能(長期の帯電均一性および像担持体寿命)を比較した。
【0033】
(ブラシの評価方法)
(A)異物詰まり
3万枚耐久試験を行い、部分的な帯電不良による画像欠陥が発生したものを×、画像欠陥が発生しなかったものを○とした。
【0034】
(B)長期の帯電均一性および像担持体寿命
特許3287760に記載の方法に則り、像担持体寿命を測定した。具体的には3万枚耐久試験を行い、画像かぶり[画像かぶり=(プリント前白色度−プリント後白色度)/プリント前白色度×100(%)]によって長期間使用した後の帯電均一性、および像担持体寿命を評価した。すなわち、3万枚耐久試験後に、画像かぶりが5%未満であるときは帯電均一性および像担持体寿命の両方を○とした。そして、かぶりが5%以上であるときは、像担持体(感光体)または帯電ブラシを新品に交換し、それぞれについて画像試験をおこない、かぶり発生の原因が像担持体または帯電ブラシのどちらにあるのかを判定した。かぶり発生の原因が像担持体にあるときは、像担持体寿命を×、帯電ブラシにあるときは帯電均一性を×として評価した。
【0035】
(結果)
これらのブラシの占有率P、表面積L等のパラメータを表1に示す。また、ブラシの性能を評価した結果も併せて表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
比較例1〜3は特許文献1の実施例を参考に作製した。いずれもブラシ毛単位長さあたりの表面積が8000より小さく、帯電の均一性を長期に渡って維持することができない。表面積が小さいと、初期は均一な帯電を行なうことができるが、長期にわたり使用されると、帯電ブラシにトナー等の異物が付着し、帯電に寄与するブラシ毛の面積が小さくなる。その結果、帯電の均一性が低下する。
【0038】
比較例4は特許文献2に記載されている実施例である。表面積は大きいので、ブラシの寿命は満足するものの、ブラシ毛が太く像担持体への当接力が強い。そのため、像担持体が磨耗してしまい、像担持体の寿命が短くなる。
【0039】
表面積は8000以上、剛性比は比較例4の3%以下であれば、ブラシおよび像担持体の両方の長寿命の要求を満足することが分かった(実施例1、9)。なお、表1から、剛性比を比較例4の3%以下にするためには、ブラシ毛径Dを11μm以下にすることが好ましい。また、占有率が0.15以下ならばブラシの寿命を満足することができ(実施例2)、それを超えるとブラシの寿命は短くなってしまった(比較例5)。実施例3から8はさらにパイル径を細くした実施例である。
【0040】
以上の実施例および比較例の結果から、好ましいブラシの構成をグラフ化したものが図4ある。図4から、良質の帯電ブラシの構成、すなわち占有率P≦0.15および表面積L≧8000を満たすような、ブラシ毛径Dおよび密度nを選択することができる。
【0041】
また、ブラシ毛径が細くなれば、表面積8000以上、占有率0.15以下の領域が大きくなることがわかる。
【0042】
(体積抵抗率)
ブラシ毛の体積抵抗率は、従来の帯電装置に用いられてきたブラシの条件を適用することができる。すなわち、ブラシ毛の体積抵抗率を1×10Ω・cm〜1×10Ω・cmの範囲にすることによって、本実施形態のブラシは、像担持体に効率よく電圧を印加することができ、その結果像担持体を一様に帯電することができる。
【0043】
体積抵抗率の測定方法としては、特に限定されるものではない。具体的には、複数本のブラシ毛を一束として電気抵抗値を測定し、その値からブラシ毛の体積抵抗率を算出する方法を用いることができる。具体的には、下記方法によって測定を行った結果に基づいて算出することができる。
【0044】
図1に示すパイル織物10において、ブラシ毛14となる繊維を複数本(N本)まとめて一束とする。この一束を測定単位として、2つ一対の電極に接触させつつ速度Uで繊維の長手方向に走行させる。走行させながら、一対の電極間に、電流を一定の電流値で流す。この状態で、一対の電極間の電圧値を、時間t間連続して測定する。この時間t間の電圧の積分値V(t)および時間t間の電流の積分値Iを、式 R(t)=V(t)/I に当てはめることで、繊維が時間tに走行した長さ当たりの抵抗値R(t)を得ることができる。
【0045】
時間tは、速度Uから導電性糸18の長さに換算できる。従って、R(t)および電極間の距離から、測定単位における長さ当たりの抵抗値Rを求めることができる。そして、当該抵抗値Rと、測定単位であるブラシ毛の本数および断面積とから、ブラシ毛の体積抵抗率を算出すればよい。
【0046】
なお、上記の方法において、電流を一定にして電圧を測定する代わりに、電圧を一定にして電流を測定して、その結果から抵抗値を算出することもできる。
【0047】
測定時に用いるブラシ毛はとくに限定されないが、50〜100本程度であれば、充分に正確な値を得ることができる。
【0048】
また、ブラシ毛の導電性を調整するためには、ブラシ毛中にカーボンまたは金属からなる導電性粒子を分散させればよい。導電性粒子の添加量は、目的の導電性に合わせて適宜設定可能であり、特に限定されるものではない。このような導電性粒子の添加量は公知であり、例えば特開2002−146629(公開日:平成14年5月22日)に記載されている。
【0049】
〔ブラシ毛の形状〕
本発明のブラシは、ブラシ毛の断面がエッジを持たないことが好ましい。ブラシ毛の断面がエッジを持たないと、ブラシが像担持体を傷つけにくい。また、ブラシ毛の断面にエッジがあると、そこから集中して放電が起こりやすい。このような放電の集中は、像担持体の帯電ムラを引き起こすことがある。それに対してブラシ毛の断面がエッジを持たないので、放電が集中することがなく、像担持体を均一に帯電することができる。
【0050】
なお、ブラシ毛の断面形状がエッジを持たないとは、ブラシ毛のうち、少なくとも像担持体と接触する部分、つまり先端付近の断面形状が、角を持たず、丸くなっていることを意味する。このような形状としては、円形または楕円形であってもよいし、多角形の角が丸くなった形状であってもよい。さらには、ブラシ毛の断面形状コーナーの丸み(アール)が、1/10D以上であることが好ましい。
【0051】
以上のように、本発明において、ブラシ毛の断面形状がエッジを持たないとは、完全に角がないことを意味するのではなく、上述のような形状を広く含むものである。つまり、微視的に見て角や突起を有する形状であっても、巨視的に見て角や突起がないと判断されるような多角形等の形状も、本発明の範疇に含まれる。このような形状の一例を図7(a)〜図7(c)に示す。
【0052】
図7(a)〜図7(c)は、ブラシ毛を形成するのに好適な海島繊維の一例を示す断面図である。海島繊維とは、溶解部である海部および非溶解部である島部からなる繊維である。図7(a)〜図7(c)に示す海島繊維70a〜70cから、海部71a〜71cを溶解および除去することによって、島部72a〜72cからなる細繊維をブラシ毛として得ることができる。島部72a〜72cは、上述したようにエッジのない形状となっている。
【0053】
このような海部および島部としては、従来の海島型繊維で用いられている材料を好適に利用することができる。海部を除去するための溶剤としては、海部を溶解させ、かつ島部を溶解させない物質であればよい。例えば、海部としてポリエチレン系の加水分解性樹脂を用い、島部として、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ポリアクリル系などの非加水分解性樹脂を用いて、海部を酸またはアルカリなど加水分解することにより非加水分解性樹脂からなる細繊維を得てもよい。より具体的には、海部を加水分解性樹脂のPET(アルカリ易溶性PET)、島部を非加水分解性樹脂のポリアミド(例えばナイロン−6)とし、アルカリ性の水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム水溶液によって海部を加水分解してもよい。この他の溶解部、非溶解部、および溶剤の組み合わせを表2に示す。なお、表2中P.P.とは、ポリプロピレンを意味する。
【0054】
【表2】

【0055】
例えば、薄刃状の切込み溝を有する治具を押し当てる等、単に機械的な力によって割繊する場合、得られる細繊維の断面形状を制御することは不可能である。
【0056】
それに対して、化学的な割繊によれば、細繊維の断面形状を所望の形状とすることができる。これは、海島繊維を製造するときに、細繊維となる部分すなわち島部の形状を適宜設定することができるからである。例えばノズルからの押し出しによって海島繊維を形成する場合は、細繊維となる部分の断面形状を、ノズルの形状によって制御することができる。
【0057】
また、溶剤によって海部が除去され、島部からなる細繊維を得る場合、細繊維間に余分な成分が残留しない。その結果、ブラシが像担持体と接触する部分(具体的にはブラシ毛の先端)の成分がより均一となる。接触部分の成分が均一であると、帯電をより均一に行なうことができる。
【0058】
なお、化学割繊の具体的な方法としては、何ら限定されるものではなく、シャフトや平板等の支持部にパイル織物を固定した後に、溶剤を作用させてもよいし、先にパイル織物を溶剤で処理した後に支持部に固定してもよい。また、パイル糸に溶剤が付着する長さを調節することによって、細繊維の長さを調節することもでき、ブラシ毛中の細繊維の長さも、特に限定されるものではない。
【0059】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の画像形成装置用帯電ブラシは、プリンタまたはコピー機等の画像形成装置において、感光体等の像担持体を帯電させるブラシとして好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態の一つである帯電ブラシの要部構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の一つである帯電ブラシの要部構成を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態の一つである帯電ブラシの要部構成を示す平面図である。
【図4】帯電ブラシの好ましい構成(占有率、表面積)をグラフ化したものであり、縦軸にブラシ毛の密度n、横軸にブラシ毛の径Dを示す。
【図5】本発明の帯電ブラシにおけるパイル糸の配置の一例を示す平面図である。
【図6】本発明の帯電ブラシにおけるパイル糸の配置の他の例を示す平面図である。
【図7】本発明の帯電ブラシにおけるブラシ毛の一例である海島繊維の構成を示す断面図である。
【図8】画像形成装置の要部構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 パイル織物
11 基布
14 ブラシ毛
15 パイル糸
20 シャフト
21 ロール型ブラシ
24 平板
25 平板型ブラシ
40 感光体ドラム(像担持体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を帯電させる画像形成装置用帯電ブラシであって、
ブラシ毛の体積抵抗率が1×10Ω・cm〜1×10Ω・cmを満たし、
ブラシ毛の径D(m)が、D≦11×10−6を満たし、
ブラシ毛の占有率P[但し、P=(πD/4)・nで表され、nはブラシ毛の密度(Mf/m)を表す]がP≦0.15を満たし、
ブラシ毛の長手方向における単位長さ当たりの表面積L(m/m)[但し、L=πD・nで表される]がL≧8000を満たすことを特徴とするブラシ。
【請求項2】
上記ブラシ毛は割繊によって形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の帯電ブラシ。
【請求項3】
上記ブラシ毛は化学割繊によって形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の帯電ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−279372(P2007−279372A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105322(P2006−105322)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(390026147)東英産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】