説明

画像形成装置

【課題】ユーザーが意図しない予定外のキャリブレーション時間の発生を回避できて不快な待ち時間を無くすことができるとともに、キャリブレーションの中断による画像品質の低下を抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像情報転送時間を算出し、キャリブレーション時間がこれよりも短いかどうかを判断する。短い場合にはキャリブレーションを実行する。長い場合には印刷残り時間を算出し、算出された印刷残り時間が所定の閾値より長いかどうかを判断する。長い場合にはキャリブレーションを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ等の画像形成装置に関し、詳しくは、キャリブレーション実行によって画像形成に関するパラメータを変更するモードを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の出力画像の画質は、温度変化、湿度変化等の環境変化や画像形成装置エンジンを構成するパーツの経時変化等の状態変化に伴って変化する。
従って、状態変化に応じて画像装置エンジンの出力特性を補正するキャリブレーションによって出力画像の品質を維持する必要がある。
従来の技術では、キャリブレーションを実行するタイミングとして
(1)一定の枚数を通紙したときや一定の時間が経過したときなど、所定の条件に達したときに自動的にキャリブレーションを実行する。
(2)例えば特開平9−314903号公報に開示されているように、画像出力の直前にキャリブレーションを起動する。但し、キャリブレーションの途中に画像情報転送が終了した場合は、その時点の独立した工程でキャリブレーションを中断して残りの工程を記憶し、次回の画像出力の直前には、残りの工程からキャリブレーションを再開する。
などの方法が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−314903号公報
【特許文献2】特開2002−19246号公報
【特許文献3】特開2003−319112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、(1)の場合、例え印刷ジョブ中でも所定の条件に達すればキャリブレーションを起動するので、ユーザーが意図しない予定外のキャリブレーション時間が発生してしまい、ユーザーに不快な待ち時間を意識させるという問題があった。
(2)の場合、ユーザーが意図しない予定外のキャリブレーション時間が発生しない利点がある。しかし連続して実行すべきキャリブレーション工程であっても中断したり途中から再開したりするので、画像出力の直前に行うキャリブレーションが不十分となり、その時点でキャリブレーションによって得られるべき画質の補正効果が得られないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、ユーザーが意図しない予定外のキャリブレーション時間の発生を回避できて不快な待ち時間を無くすことができるとともに、キャリブレーションの中断による画像品質の低下を抑制できる画像形成装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、画像形成プロセスを行う画像形成ユニットを備え、装置のキャリブレーション実行によって画像形成に関するパラメータを変更するモードを有し、画像情報転送時間を算出する機能を有する画像形成装置において、上記画像情報転送時間を算出し、該画像情報転送時間と並列に上記キャリブレーションを実行するか否かを決定する制御手段を有していることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の画像形成装置において、上記制御手段は、算出した上記画像情報転送時間が上記キャリブレーション実行時間より長いときに上記キャリブレーションを実行することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の画像形成装置において、上記制御手段は、画像情報の転送がなされる前に転送される画像情報サイズを入手するとともに、その転送速度を決定し、これらのデータに基づいて上記画像情報転送時間を算出することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明では、請求項3記載の画像形成装置において、上記制御手段は、記憶されている過去の転送速度履歴から上記転送速度を推測することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明では、請求項3記載の画像形成装置において、上記制御手段は、記憶されている過去の転送速度履歴から複数のデータを抽出し、その平均値を上記転送速度とすることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明では、請求項1記載の画像形成装置において、算出した上記画像情報転送時間が上記キャリブレーション実行時間より短い場合、印刷残り時間を算出し、該印刷残り時間が所定値を超えているときは上記画像情報転送時間と並列に上記キャリブレーションを実行することを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明では、請求項6記載の画像形成装置において、上記所定値は、上記キャリブレーション実行時間から上記画像情報転送時間を差し引いた値が与える時間的長さの影響度から決定されることを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明では、請求項1乃至7のうちの何れかに記載の画像形成装置において、上記画像情報転送時間と並列に上記キャリブレーションが実行されない場合、一定の枚数を通紙したときや一定の時間が経過したときなどの所定の条件に達した時点で上記キャリブレーションを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、画像形成プロセスを行う画像形成ユニットを備え、装置のキャリブレーション実行によって画像形成に関するパラメータを変更するモードを有し、画像情報転送時間を算出する機能を有する画像形成装置において、上記画像情報転送時間を算出し、該画像情報転送時間と並列に上記キャリブレーションを実行するか否かを決定する制御手段を有していることとしたので、
ユーザーが意図しない予定外のキャリブレーション時間が発生するのを回避できるとともに、キャリブレーションが途中で中断されることによる出力画像の品質低下を防止できる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1の画像形成装置において、上記制御手段は、算出した上記画像情報転送時間が上記キャリブレーション実行時間より長いときに上記キャリブレーションを実行することとしたので、キャリブレーション時間が発生することによる不快感を確実に回避することができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の画像形成装置において、上記制御手段は、画像情報の転送がなされる前に転送される画像情報サイズを入手するとともに、その転送速度を決定し、これらのデータに基づいて上記画像情報転送時間を算出することとしたので、キャリブレーションを実行するか否かの判断を迅速に行うことができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の画像形成装置において、上記制御手段は、記憶されている過去の転送速度履歴から上記転送速度を推測することとしたので、画像情報転送時間を迅速に算出することができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項3記載の画像形成装置において、上記制御手段は、記憶されている過去の転送速度履歴から複数のデータを抽出し、その平均値を上記転送速度とすることとしたので、画像情報転送時間を迅速に且つ高精度に算出することができる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、請求項1記載の画像形成装置において、算出した上記画像情報転送時間が上記キャリブレーション実行時間より短い場合、印刷残り時間を算出し、該印刷残り時間が所定値を超えているときは上記画像情報転送時間と並列に上記キャリブレーションを実行することとしたので、キャリブレーション時間をユーザーに感じさせないようにすることができて装置使用性を向上させることができるとともに、キャリブレーションが完全に実行されることにより出力画像の品質を維持することができる。
【0020】
請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の画像形成装置において、上記所定値は、上記キャリブレーション実行時間から上記画像情報転送時間を差し引いた値が与える時間的長さの影響度から決定されることとしたので、キャリブレーション時間をユーザーが感じる不快感を確実に回避することができる。
【0021】
請求項8記載の発明によれば、請求項1乃至7のうちの何れかに記載の画像形成装置において、上記画像情報転送時間と並列に上記キャリブレーションが実行されない場合、一定の枚数を通紙したときや一定の時間が経過したときなどの所定の条件に達した時点で上記キャリブレーションを実行することとしたので、出力画像の品質を一定に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図1乃至図11に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて、本実施形態における画像形成装置としての電子写真方式のレーザープリンタ(以下、単に「プリンタ」ともいう)の全体構成の概要を説明する。
プリンタ100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、M、C、Kと記す)のトナー像を生成するための4つの画像形成ユニット又は画像形成手段としてのプロセスカートリッジ6Y、6M、6C、6Kを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY、M、C、Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。
Yトナー像を生成するためのプロセスカートリッジ6Yを代表してその構成を説明すると、図2に示すように、像担持体としてのドラム状の感光体1Y、ドラムクリーニング装置2Y、除電装置(不図示)、帯電装置4Y、現像装置5Y等を備えている。このプロセスカートリッジ6Yは、プリンタ100本体に対して着脱可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。
【0023】
帯電装置4Yは、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転せしめられる感光体1Yの表面を一様に帯電せしめる。一様に帯電せしめられた感光体1Yの表面は、レーザー光Lによって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。
このYの静電潜像は、Yトナーを用いる現像装置5YによってYトナー像に現像される。そして、中間転写体としての中間転写ベルト8上に中間転写される。
ドラムクリーニング装置2Yは、中間転写工程を経た後の感光体1Y表面に残留したトナーを除去する。また、上記除電装置は、クリーニング後の感光体1Yの残留電荷を除電する。この除電により、感光体1Yの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他のプロセスカートリッジ6M、6C、6Kにおいても、同様の構成を有しており、同様にして感光体1M、1C、1K上にM、C、Kトナー像が形成され、中間転写ベルト8上に転写される。
【0024】
図1に示すように、プロセスカートリッジ6Y、6M、6C、6Kの図中下方には、露光装置7が配設されている。潜像形成手段としての露光装置7は、画像情報に基づいて発したレーザー光Lを、プロセスカートリッジ6Y、6M、6C、6Kにおけるそれぞれの感光体に照射して露光する。この露光により、感光体1Y、1M、1C、1K上にY、M、C、K用の静電潜像が形成される。なお、露光装置7は、光源から発したレーザー光Lを、モータによって回転駆動したポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射する周知の構成を有している。
【0025】
露光装置7の図中下側には、給紙カセット26、該給紙カセット26に組み込まれた給紙ローラ27、レジストローラ対28など有する給紙手段が配設されている。
給紙カセット26は、記録媒体としての転写紙Sが複数枚重ねて収納されており、それぞれの一番上の転写紙Sには給紙ローラ27が当接している。給紙ローラ27が図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転せしめられると、一番上の転写紙Sがレジストローラ対28のローラ間(ニップ)に向けて給紙される。レジストローラ対28は、転写紙Sを挟み込むべく両ローラを回転駆動するが、挟み込んですぐに回転を一旦停止させる。そして、転写紙Sを適切なタイミングで後述する2次転写ニップに向けて送り出す。かかる構成の給紙手段においては、給紙ローラ27と、タイミングローラ対としてのレジストローラ対28との組合せによって記録媒体搬送手段が構成されている。この記録媒体搬送手段は、転写紙Sを収容手段としての給紙カセット26から後述の2次転写ニップまで搬送するものである。
【0026】
プロセスカートリッジ6Y、6M、6C、6Kの図中上方には、中間転写ベルト8を張架しながら無端移動せしめる転写ユニット15が配設されている。
中間転写ユニット15は、中間転写ベルト8の他、4つの1次転写バイアスローラ9Y、9M、9C、9K、クリーニング装置10などを備えている。また、2次転写バックアップローラ12、クリーニングバックアップローラ13、テンションローラ14なども備えている。中間転写ベルト8は、これら3つのローラに張架されながら、少なくとも何れか1つのローラの回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。
1次転写バイアスローラ9Y、9M、9C、9Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト8を感光体1Y、1M、1C、1Kとの間に挟み込んでそれぞれ1次転写ニップを形成している。これらは中間転写ベルト8の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する方式のものである。
【0027】
1次転写バイアスローラ9Y、9M、9C、9Kを除くローラは、全て電気的に接地されている。中間転写ベルト8は、その無端移動に伴ってY、M、C、K用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、感光体1Y、1M、1C、1K上のY、M、C、Kトナー像が重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト8上に4色重ね合わせトナー像(以下、「4色トナー像」という)が形成される。
2次転写バックアップローラ12は、転写部材としての2次転写ローラ19との間に中間転写ベルト8を挟み込んで2次転写ニップを形成している。中間転写ベルト8上に形成された4色トナー像は、この2次転写ニップで転写紙Sに転写される。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト8には、転写紙Sに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、クリーニング装置10によってクリーニングされる。
【0028】
2次転写ニップにおいては、転写紙Sが互いに順方向に表面移動する中間転写ベルト8と2次転写ローラ19との間に挟まれて、レジストローラ対28側とは反対方向に搬送される。2次転写ニップから送り出された転写紙Sは、定着装置20のローラ間を通過する際に熱と圧力とにより、表面に転写された4色トナー像が定着される。その後、転写紙Sは、排紙ローラ対29のローラ間を経て機外へと排出される。プリンタ本体の上面には、スタック部30が形成されており、排紙ローラ対29によって機外に排出された転写紙Sは、このスタック部30に順次スタックされる。
スタック部30の下部には、トナーカートリッジ2Y、32M、32C、32Kが配置されている。
【0029】
図1において、2次転写バックアップローラ12の上方には画像濃度検知手段としての反射型フォトセンサ40が配設されており、中間転写ベルト8上の光反射率に応じた信号を出力するように構成されている。
この反射型フォトセンサ40には、拡散光検出型か正反射光検出型のうち、中間転写ベルト8の表面の反射光量と、後述の基準パターン像の反射光量との差を十分な値にし得る方が用いられる。なお、反射型フォトセンサ40の役割については後述する。
【0030】
[キャリブレーションを実行する構成]
図3は本レーザープリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。図において制御部150はそれぞれ電気的に接続されたトナー像形成部(プロセスカートリッジ)6Y、6M、6C、6K、光書込みユニット7、給紙カセット26、レジストローラ対28、転写ユニット15、反射型フォトセンサ40などを制御する。また、この制御部150は、演算部などを制御するCPU150aと、データを記憶するRAM150bとを備えている。
制御部150は、図示しない主電源の投入時や、所定時間経過した後の待機時、所定枚数以上のプリントを出力した後の待機時など、所定のタイミングで、各トナー像形成部6Y、6M、6C、6Kの像形成性能などの作像性能を試験するように構成されている。
【0031】
具体的には、この所定のタイミングが到来すると、まず、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kを回転しながら一様に帯電せしめる。この帯電については、通常のプリント時における一様な帯電(例えば−700V)とは異なり、その電位を徐々に大きくしていくようにする。そして、上記レーザー光Lの走査によって基準パターン像用の静電潜像を形成しながら、現像装置5Y、5M、5C、5Kで現像する。
この現像により、各色のバイアス現像パターン像(基準パターン像)が感光体ドラム1Y、1M、1C、1K上に形成される。なお、現像の際、制御部150は、それぞれの現像装置5の現像ローラ51に印加される現像バイアスの値も徐々に高くしていくように制御する。
これら各色のバイアス現像パターン像は、中間転写ベルト8上に重なり合わずに並ぶように転写される。この転写により、中間転写ベルト8上には各色の基準パターン像によって構成されるパターンブロックが形成される。
【0032】
このパターンブロックの中の各基準パターン像の基準像は、中間転写ベルト8の無端移動に伴って反射型フォトセンサ40との対向位置を通過する際、その光反射量が検知され、電気信号として制御部150に出力される。制御部150は、反射型フォトセンサ40から順次送られてくるこの出力信号に基づいて、各基準像の光反射率を演算し、濃度パターンデータとしてRAM150aに格納していく。
反射型フォトセンサ40との対向位置を通過した上記パターンブロックは、クリーニング装置10によってクリーニングされる。
【0033】
図4は、上記基準パターン像P(Py、Pm、Pc、Pk)を示す模式図である。図において、基準パターン像Pは、互いに間隔15mmを置いて並ぶ3つの基準像で構成されている。本レーザープリンタにおいて、各基準像101は縦15mm×横15mmの大きさで、15mmの間隙を介して形成される。よって、中間転写ベルト8上の基準パターン像Py、Pm、Pc、Pkの長さはそれぞれL2=75mmとなる。基準パターン像Py、Pm、Pc、Pkは、プリントプロセス時に形成される各色のトナー像とは異なり、中間転写ベルト8上に重なり合わずに並ぶように転写される。このような転写により、中間転写ベルト8上には各色の基準パターン像Py、Pm、Pc、Pkによって構成される1つのパターンブロックPBが形成される。
【0034】
図5は、感光体ドラム1の設置ピッチを示す模式図である。図示のように、感光体ドラム1Y、1M、1C、1KはそれぞれL1=90mmに設定されている。上述のように、基準パターン像Py、Pm、Pc、Pkの長さL2はそれぞれ75mmであり、感光体ドラム1の設置ピッチL1よりも短い。このため、基準パターン像Py、Pm、Pc、Pkは、それぞれの端部を重ね合わせないように独立して転写されることが可能になる。
図6は、中間転写ベルト8上に形成される上記パターンブロックを示す模式図である。中間転写ベルト8上には、4つの基準パターンPk、Pc、Pm、PyからなるパターンブロックPBが2つ形成される。具体的には、基準パターン像Pk1、Pc1、Pm1、Py1から構成されるパターンブロックPB1と、基準パターン像Pk2、Pc2、Pm2、Py2から構成されるパターンブロックPB2とが形成される。
【0035】
パターンブロックPB1、PB2は次のようにして形成される。すなわち、1つ目のパターンブロックPB1内の基準パターン像Pk1、Pc1、Pm1、Py1が中間転写ベルト8に転写され終わった時点から、最も上流側の基準パターンPy1が最も下流側の感光体ドラム1Kの転写ニップを通過し終わるまでの間において、中間転写ベルト8上を基準パターン像が移動する。
制御部150は、所定のタイミングを見計らって2つ目のパターンブロックPB2の各基準パターン像Pk2、Pc2、Pm2、Py2を感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに形成せしめる。
この所定のタイミングとは、具体的には1つ目のパターンブロックPB1の後端(基準パターン像Py1)が最も下流側の感光体ドラム1Kの転写ニップを通過してから更に所定量だけ移動した時点から、パターンブロックPB2の基準パターン像Pk2、Pc2、Pm2、Py2が中間転写ベルト8上に転写され始めるタイミングである。
【0036】
図6において、中間転写ベルト8を備える転写ユニット15の図中右上側には、画像濃度検知手段としての反射型フォトセンサ40が配設されている。中間転写ベルト8上の各基準パターン像は無端移動に伴って移動して反射型フォトセンサ40に検知された後、転写ユニット15のクリーニング装置10にて除去される。
反射型フォトセンサ40は、1つ目のパターンブロックPB1の先端から後端にかけて、基準パターン像Pk1、Pc1、Pm1、Py1を構成する各基準像101からの反射光量を次のような順序で検知する。
すなわち、基準パターン像Pk1の3個の基準像101、基準像Pc1の3個の基準像101、基準像Pm1の3個の基準像101、基準像Py1の3個の基準像101、という順序で検知する。この際、各基準像101の光反射量に応じた電圧信号を後述する方法で検知し、制御部150に順次出力する。
制御部150は、反射型フォトセンサ40から順次送られてくるこの電圧信号に基づいて、各基準像101の画像濃度を順次演算してRAM150bに格納していく。なお、反射型フォトセンサ40には拡散光検出型がカラートナーの高濃度部を検知できる点で望ましい。
【0037】
[コントローラ]
図7は、本実施形態の画像形成装置(レーザープリンタ)を主体とした画像形成システムの概略構成を示す図である。この画像形成システムは、ホストPC200と、ホストPC200から供給される画像情報に基づいて記録媒体上に画像を出力する画像形成装置100とを、双方向通信が可能なインターフェイスにより接続している。
ホストPC200で作成されたデータファイルが印刷命令を受けると、コントローラ(制御部)150のデバイスドライバによって画像形成装置100用の言語に展開され、画像情報としてインターフェイスを介して画像形成装置100に転送される。
コントローラ150は、ホストPC200から転送された画像情報に基づいて、ページ毎にクラスタデータを生成し、エンジン151に供給する。
エンジン151は、コントローラ150から供給される画像情報に基づいて感光体ドラム上に潜像を形成し、その潜像を記録媒体に転写、定着(電子写真方式)することにより画像を形成する。
また、コントローラ150はエンジン151の状態変化(気温、湿度などの環境変化やトナー残量などの内部状態変化)に関する情報を把握し、エンジン151へキャリブレーション実行命令を下してキャリブレーションを実行させる。
【0038】
[本実施形態におけるキャリブレーション実行方法]
コントローラ150がホストPC200から印刷要求を受け、画像情報転送時間と並列にキャリブレーションを実行するか否かを判断する処理手順を、図8のフローチャートに基づいて説明する。
まず、ユーザーが印刷ジョブ命令を下すと、画像形成装置100内のコントローラ150がホストPC200から印刷要求を受ける(S1)。
コントローラ150が印刷要求を受けてから印刷を開始するまでの画像情報転送時間T1を算出するためには、「転送画像情報サイズ」と「転送速度」の二つの情報をデータ転送前に把握する必要がある。
【0039】
この機能は、ホストPC200にインストールされるデバイスドライバに予め備えられているものとする。具体的には、
1つ目の「転送画像情報サイズ」をデータ転送前に把握するには、ホストPC200内で印刷ファイルをデバイスドライバにより画像形成装置用の言語に展開して画像情報にした時点で、まずは転送画像情報サイズをコントローラ150へ通知する。
例えば、画像情報のサイズが40Mbの場合に画像形成装置100へ印刷要求をするとしたら、まず始めに「転送画像情報サイズ=40Mb」という情報だけをコントローラ100へ通知し、実際に印刷する画像情報は後から転送する。
2つ目の「転送速度」をデータ転送前に把握するには、コントローラ150が過去の転送速度履歴を記憶することでデータを推測する。
「転送速度」の測定に必要なのは「転送画像情報サイズ」と「転送時間」である。「転送画像情報サイズ」は、上記の転送画像情報サイズを記憶することで得る。「転送時間」は、画像形成装置100内に設置されているタイマー152により、印刷要求からデータ転送完了までにかかった時間を測定することで得る。
【0040】
例えば、「転送画像情報サイズ=40Mb」、「転送時間=40s」となった場合、「転送速度40Mb/40s=1Mb/s」という履歴からデータを得る。
過去のどの転送速度履歴を推測データとして採用するかは、近過去数回の平均値を用いても良いし、画像形成装置100を設置した時の初回データを用いても良い。
以上の方法により「転送画像情報サイズ」と「転送速度」の二つの情報を得て、コントローラ150が画像情報転送時間T1を算出する(S2)。
【0041】
算出した画像情報転送時間を以下のように場合分けして、処理を行う。
(1)画像情報転送時間がキャリブレーション動作時間(以下、キャリブレーション時間ともいう)よりも長い場合(S3におけるYesの場合)
〔例1〕
通紙速度=2.5s/枚、キャリブレーション時間C=30sの画像形成装置で、画像情報転送時間T1=40sのファイルを2枚印刷実行(印刷残り時間T2=5s)する例を用いて説明する。sはsecond(秒)の略である。
キャリブレーション時間30s ≦ 画像情報転送時間40s
とコントローラ150が判断したときには、図9に示すように、30sかかるキャリブレーションを画像情報転送時間の40s中に並列させて実行する(S7)。(S7)のキャリブレーション実行後には所定のキャリブレーション起動条件をリセットする(S8)。この場合のユーザーお待たせ時間は45sである。
以上の処理により、キャリブレーション時間は完全に画像情報転送時間内に隠れることになるので、ユーザーが意図しない予定外(想定外)のキャリブレーション時間が発生するのを回避できるとともに、キャリブレーションが途中で中断されることによる出力画像の品質低下を防止できる(S9)。
【0042】
(2)画像情報転送時間がキャリブレーション動作時間よりも短い場合(S3におけるNoの場合)
すぐに画像情報転送時間と並列にキャリブレーションを実行せずに、まず印刷残り時間T2を算出する(S4)。印刷残り時間T2は、画像情報転送が終了した後のエンジン動作にかかる時間で、ほぼ印刷の総ページ数で決まる。
よって「印刷ファイルのページ数」と「印刷ファイルの部数」の二つの情報から、コントローラ150が印刷残り時間T2を算出する。
この印刷残り時間T2が長いか短いかで、ユーザーのお待たせ時間(待ち時間)の感じ方は変化する。
【0043】
(2−1)印刷残り時間が短い場合(S5におけるNoの場合)
〔例2〕
通紙速度=2.5s/枚、キャリブレーション動作時間C=30sの画像形成装置で、画像情報転送時間T1=20sのファイルを2枚印刷実行(印刷残り時間T2=5s)する例を用いて説明する。
もし画像情報転送時間と並列にキャリブレーションを実行すると、図10に示すように、キャリブレーション時間が10s余ってしまい(余計にかかってしまい)、たった二枚の印刷において、ユーザーが意図しない予定外のキャリブレーションお待たせ時間を強いることになる。従って印刷残り時間が5sと短いときには、キャリブレーションを印刷ジョブ中に割り込ませるべきではない。
印刷残り時間5sが長いか短いかは、所定値としての印刷残り時間閾値A=100sを設定しておき、
印刷残り時間5s ≦ 印刷残り時間閾値100s
の判断をコントローラ150が行う。
【0044】
また、所定のキャリブレーション途中経過を記憶して(S6)、次の印刷要求に備える。これは、〔例2〕のような、画像情報転送時間と並列にキャリブレーションを実行しない印刷ジョブが連続した場合、一定の枚数を通紙したときや一定の時間が経過したときなどの所定の条件に達した時点でキャリブレーションを実行し、出力画像品質を維持するためである。
以上の処理により、印刷残り時間が短い場合にはキャリブレーションを実行せず、ユーザーが意図しない予定外のキャリブレーション時間の発生を回避する。
但し、所定の条件に達した場合はキャリブレーションを実行し、出力画像品質を維持する。
【0045】
(2−2)印刷残り時間が長い場合(S5におけるYesの場合)
〔例3〕
通紙速度=2.5s/枚、キャリブレーション動作時間C=30sの画像形成装置で、画像情報転送時間T1=20sのファイルを100枚印刷実行(印刷残り時間T2=250s)する例を用いて説明する。
2枚印刷の〔例2〕に比べて印刷残り時間がかなり長くなるが、ユーザーは100枚の印刷命令を下した時点でお待たせ時間が長いことを予め予測(納得)できるので、長時間のお待たせ時間にもそれほど不快感を感じないことが多い。
このユーザー意識を利用すれば、短い画像情報転送時間と並列にキャリブ-レーションを実行してキャリブレーション時間を余らせても(余計にかけても)、ユーザーにお待たせ時間を意識させずにキャリブレーションを実行することができる。
すなわち、ユーザーが意識上抱いた時間的長さの中にキャリブレーション時間を紛れ込ませてキャリブレーション時間が存在することの不快感を隠すものである。言わば、キャリブレーション時間の時間感覚的マスキングである。
【0046】
図11のタイミングチャートに示すように、まず30sのキャリブレーションを画像情報転送時間20sと並列に実行し、余ったキャリブ-レーション時間10sを印刷残り時間250sに付随させる。
印刷残り時間250sが十分長いかどうかは、印刷残り時間閾値A=100sを設定しておき、
印刷残り時間閾値100s ≦ 印刷残り時間250s
の判断をコントローラ150が行い、画像情報転送時間と並列にキャリブレーションを実行する(S7)。(S7)のキャリブレーション実行時には、所定のキャリブレーション起動条件をリセットする(S8)。
以上の処理により、印刷残り時間が長い場合は、画像情報転送時間から余ったキャリブレーション時間を印刷残り時間T2に付随させることで、キャリブレーション時間をユーザーに感じさせないようにすることができるとともに、キャリブレーションが完全に実行されることにより出力画像の品質を維持することができる(S9)。
上記印刷残り時間閾値A=100sは、あくまでも一例であり、どの程度の印刷残り時間を長く感じるか否かは個人差があるので、複数人の意識調査を行い、その平均値を刷残り時間閾値としてもよい。
また、所定値としての印刷残り時間閾値Aは、キャリブレーション実行時間から画像情報転送時間を差し引いた値が与える時間的長さの影響度から決定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態における画像形成装置としてのレーザープリンタの概要正面図である。
【図2】イエロー画像に対応するプロセスカートリッジの拡大概要正面図である。
【図3】制御ブロック図である。
【図4】基準パターン像の配置関係を示す模式図である。
【図5】感光体の配設ピッチを示す模式図である。
【図6】中間転写ベルト上に形成されるパターンブロックの模式図である。
【図7】画像形成システムの概要正面図である。
【図8】キャリブレーションを実行するか否かの制御動作を示すフローチャートである。
【図9】画像情報転送時間と並列してキャリブレーションを実行する例のタイミングチャートである。
【図10】キャリブレーションを実行しない例のタイミングチャートである。
【図11】画像情報転送時間が短い場合でもキャリブレーションを実行する例のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0048】
6 画像形成ユニットとしてのプロセスカートリッジ
150 制御手段としての制御部
T1 画像情報転送時間
T2 印刷残り時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成プロセスを行う画像形成ユニットを備え、装置のキャリブレーション実行によって画像形成に関するパラメータを変更するモードを有し、画像情報転送時間を算出する機能を有する画像形成装置において、
上記画像情報転送時間を算出し、該画像情報転送時間と並列に上記キャリブレーションを実行するか否かを決定する制御手段を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記制御手段は、算出した上記画像情報転送時間が上記キャリブレーション実行時間より長いときに上記キャリブレーションを実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
上記制御手段は、画像情報の転送がなされる前に転送される画像情報サイズを入手するとともに、その転送速度を決定し、これらのデータに基づいて上記画像情報転送時間を算出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像形成装置において、
上記制御手段は、記憶されている過去の転送速度履歴から上記転送速度を推測することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3記載の画像形成装置において、
上記制御手段は、記憶されている過去の転送速度履歴から複数のデータを抽出し、その平均値を上記転送速度とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1記載の画像形成装置において、
算出した上記画像情報転送時間が上記キャリブレーション実行時間より短い場合、印刷残り時間を算出し、該印刷残り時間が所定値を超えているときは上記画像情報転送時間と並列に上記キャリブレーションを実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6記載の画像形成装置において、
上記所定値は、上記キャリブレーション実行時間から上記画像情報転送時間を差し引いた値が与える時間的長さの影響度から決定されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちの何れかに記載の画像形成装置において、
上記画像情報転送時間と並列に上記キャリブレーションが実行されない場合、一定の枚数を通紙したときや一定の時間が経過したときなどの所定の条件に達した時点で上記キャリブレーションを実行することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−189725(P2006−189725A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2949(P2005−2949)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】