説明

画像形成装置

【課題】 定着液を接触塗布しても画像の乱れが起こらず、定着液の使用量を低減化することができ、良好な画像を長期にわたって形成できる湿式定着方式の画像形成装置を提供する。
【解決手段】 トナー像形成手段2と、トナー像担持体である中間転写ベルト21を有する中間転写手段3と、定着液付与手段5と、転写定着手段6と、記録媒体供給手段7と、排出手段8とを含む湿式定着方式の画像形成装置1において、中間転写ベルト21の少なくともトナー担持面21aを定着液に対して撥液性を示す材料で構成し、定着液付与手段5よりも中間転写ベルト21の回転方向上流側に、トナー像前処理手段として、定着液非接触付与手段4を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどに多く採用される、電子写真方式の画像形成装置においては、表面に光導電性物質を含む感光層を形成した感光体を用い、感光体表面に電荷を付与して均一に帯電させた後、種々の作像プロセスにて画像情報に対応する静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを含む現像剤を現像手段から供給して現像することによりトナー像とし、このトナー像を直接または中間転写媒体を介して紙などの記録媒体に転写し、記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に定着させることによって、記録媒体上に画像が形成される。
【0003】
トナー像の記録媒体への定着には、トナー像を加熱する熱定着方式、トナーを軟化および/または膨潤させる定着液をトナー像に付与する湿式定着方式などが知られる。このうち、湿式定着方式では、定着液の付与により軟化および/または膨潤状態にしたトナー像を記録媒体に付着させ、加圧することによって、トナー像を記録媒体に定着させる。湿式定着方式は、熱定着方式に比べて消費電力が非常に少ないという利点を有し、多くの提案がなされている。
【0004】
たとえば、水を吸収して軟化するトナーからなるトナー像を、疎水性材料からなる中間転写媒体に担持させ、このトナー像を担持した中間転写媒体に、中間転写媒体に圧接して設けられるスキージーローラで水を付与してトナー像に選択的に水を付与して軟化させ、軟化したトナー像を記録媒体に圧力転写する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この方法では、スキージーローラにより中間転写媒体に水を付与すると、中間転写媒体は疎水性材料からなるので、中間転写媒体上に水が存在せず、トナー像のみが水に濡れた状態になる。しかしながら、中間転写媒体上のトナー像にスキージーローラにより水を付与すると、トナー像を構成するトナー同士には結合力がないので、トナー像のドットが流れて画像に乱れを生じ、所望の画像が形成されないという欠点が生じる。また、トナー像のドットが部分的につぶれ、画像劣化を生じることもある。さらに、スキージーローラにトナーが付着し、画像劣化および画像汚染の原因になることもある。
【0005】
また、トナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段により形成されるトナー像を担持する中間転写媒体と、トナーを溶解または膨潤させる定着液を、中間転写媒体のトナー像担持領域に定着液塗布ローラにより接触塗布する定着液塗布手段と、定着液塗布手段により溶解または膨潤されるトナー像を記録媒体上に転写する転写手段とを含む画像形成装置が提案される(たとえば、特許文献2参照)。この画像形成装置においては、定着液とトナーとの親和性を利用して、接触塗布される定着液は、中間転写媒体のトナー像担持領域におけるトナー付着部分である画像部のみに付着し、トナーが付着しない非画像部には付着しないように構成される。これによって、定着液の消費量が削減される。
【0006】
しかしながら、特許文献2の画像形成装置によれば、定着液は定着液塗布ローラにより接触状態でトナー像に塗布されるので、定着塗布ローラにトナーが付着し、画像に乱れが生じることがある。また、画像部のみに定着液を付与すると、記録媒体におけるトナー付着部分の周囲の非画像部にカブリなどにより付着するトナーは、定着されずに記録媒体上に残留し、手、衣服などを汚すことがある。
【0007】
【特許文献1】特開昭58−40570号公報
【特許文献2】特開2004−109747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、定着液を接触塗布しても画像の乱れが起こらず、定着液の使用量を低減化することができ、良好な画像を長期にわたって形成できる湿式定着方式の画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、結着樹脂および着色剤を含むトナーからなるトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段により形成されるトナー像を担持して回転するトナー像担持体と、トナー像担持体上のトナー像に、トナーを軟化および/または膨潤させる定着液を接触状態で付与する定着液付与手段と、定着液が付与されたトナー像を記録媒体に転写と同時に定着させる転写定着手段とを含む画像形成装置であって、
トナー像担持体の少なくともトナー像担持面は、定着液に対して撥液性を有し、かつ
定着液付与手段よりもトナー像担持体の回転方向の上流側に設けられ、トナー像担持体に担持されるトナー像にトナー同士の結合力を高める処理を施すトナー像前処理手段を含むことを特徴とする画像形成装置である。
【0010】
また本発明の画像形成装置は、前述のトナー像前処理手段が、トナー像担持体に担持されるトナー像に非接触下に定着液を付与する定着液非接触付与手段であることを特徴とする。
【0011】
さらに本発明の画像形成装置は、前述の定着液非接触付与手段によりトナー像に付与される定着液量が、画像形成領域におけるトナー像の全トナー量の10重量%以上、90重量%以下であることを特徴とする。
【0012】
さらに本発明の画像形成装置は、前述のトナー像前処理手段が、トナー像担持体に担持されるトナー像を加熱する加熱手段であることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明の画像形成装置は、前述の加熱手段がトナー像を60℃以上、160℃以下に加熱することを特徴とする。
【0014】
さらに本発明の画像形成装置は、前述の加熱手段がトナー像を60℃以上、120℃以下に加熱することを特徴とする。
【0015】
さらに本発明の画像形成装置は、前述の加熱手段によりトナー像とともに加熱されるトナー像担持体を冷却する担持体冷却手段を含むことを特徴とする。
【0016】
さらに本発明の画像形成装置は、トナー像担持体の定着液滴に対する接触角が50°以上であることを特徴とする。
【0017】
さらに本発明の画像形成装置は、前述の転写定着手段が、定着液が付与されたトナー像の記録媒体への転写および定着を加熱下に行うための転写時加熱手段を含むことを特徴とする。
【0018】
さらに本発明の画像形成装置は、前述の転写時加熱手段が、定着液の付与されたトナー像を60℃以上に加熱することを特徴とする。
【0019】
さらに本発明の画像形成装置は、トナー像担持体に接するように設けられる、トナー像担持体からトナー像を転写されるトナー像転写担持体を含み、トナー像転写担持体に担持されるトナー像に定着液付与手段により定着液を付与することを特徴とする。
【0020】
さらに本発明の画像形成装置は、前述の結着樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする。
【0021】
さらに本発明の画像形成装置は、トナーの体積平均粒径が2μm以上、7μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、トナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像を担持して回転するトナー像担持体と、トナー像担持体上のトナー像にトナーの軟化および/または膨潤作用を有する定着液を接触状態で付与する定着液付与手段と、定着液が付与されるトナー像を記録媒体に転写と同時に定着させる転写定着手段とを含み、さらにトナー像担持体の少なくともトナー像担持面が定着液に対して撥液性を有し、かつトナー像担持体上のトナー像におけるトナー同士の結合力を高めるトナー像前処理手段が定着液付与手段よりもトナー像担持体の回転方向上流側に設けられる画像形成装置が提供される。
【0023】
本発明の画像形成装置は、トナー像担持体上のトナー像に定着液を接触付与する前に、トナー像前処理手段によりトナー同士の結合力を高める処理をトナー像に施すので、定着液の付与によるドット流れひいては画像乱れを防止し、さらに定着液付与手段へのトナーの付着などを防止し、良好な画質品位の画像を長期にわたって形成できる。
【0024】
本発明によれば、トナー像前処理手段としては、トナー像担持体上のトナー像に非接触で定着液を付与する定着液非接触付与手段が好ましい。定着液の付与によって、トナー像を構成するトナーが軟化および/または膨潤し、トナー同士の結合力が高まるとともに、トナー像に非接触で定着液が付与されるので、トナーが定着液非接触付与手段に付着し、画像の乱れが生じることがない。さらに、トナー像担持体におけるトナー像担持領域の非画像部(トナーが付着しない部分)に付着する定着液は、定着液付与手段による定着液の接触塗布の際に定着液付与手段に戻されるので、定着液の使用量を低減化できる。
【0025】
本発明によれば、定着液非接触付与手段によりトナー像に付与される定着液量を、画像形成領域におけるトナー像の全トナー量の10〜90重量%とすることによって、定着液付与手段による接触状態での定着液付与でも、トナーが定着液付与手段に付着しない程度にトナー同士の結合力が高められる。
【0026】
本発明によれば、トナー像前処理手段としては、トナー像担持体上のトナー像を加熱手段が好ましい。トナー像を加熱すると、トナーを構成する結着樹脂、ワックスなどの成分が溶融または軟化して、トナー同士の結合力が高くなる。その結果、定着液を接触付与しても、トナーが定着液付与手段に付着することがない。
【0027】
本発明によれば、加熱手段によりトナー像を60〜160℃の温度範囲で加熱することによって、トナーの溶融または軟化が円滑に進行し、トナー同士の結合力を効率的に高めることができる。60℃未満では、トナー中の結着樹脂、ワックスなどの溶融または軟化が充分に進まず、トナー同士の結合力も不充分になる。160℃を超えると、トナーが凝集して流動化し、ドットひいては画像の乱れなどを生じる。
【0028】
本発明によれば、加熱手段によりトナー像を60〜120℃の温度範囲で加熱するのが一層好ましい。加熱温度の上限を120℃にすると、トナー像とともに加熱されるトナー像担持体を介して感光体に伝わる熱量を低減化でき、感光体の余分な温度上昇を防止し、感光体の耐用寿命を向上させ得る。また、消費電力も少なくできる。
【0029】
本発明によれば、トナー像とともに加熱されるトナー像担持体を冷却する冷却手段を設けることによって、感光体の温度上昇が一層抑制される。
【0030】
本発明によれば、トナー像担持体の定着液滴に対する接触角を50°以上にすることによって、非接触下および接触下での定着液の付与により軟化および/または膨潤したトナーの、トナー像担持体からの剥離性が良好になり、記録媒体へのトナー像の転写を円滑に実施できる。トナー像担持体を、接触角が50°未満の材料、たとえば30〜40°のポリイミド、ポリカーボネートなどで形成し、トナー像に定着液を付与すると、常温ではトナー像担持体からのトナー像の剥離が困難になる。
【0031】
本発明によれば、転写定着手段が、トナー像の記録媒体への転写および定着を加熱下、好ましくは60℃以上の加熱下に行うための転写時加熱手段を含むように構成することによって、定着液付与により軟化および/または膨潤したトナー像の、トナー像担持体からの剥離性が一層向上し、さらに転写定着に必要な定着液量を少なくすることができる。
【0032】
本発明によれば、トナー像担持体に接し、トナー像担持体からトナー像の転写を受けるトナー像転写担持体を設け、トナー像転写担持体上のトナー像に定着液付与手段により定着液を付与することによって、たとえば、トナー像に定着液付与と加熱とを施す場合に、トナー像担持体が直接加熱されないので、トナー像担持体を介する感光体温度の上昇を低減化できる。
【0033】
本発明によれば、本発明の画像形成装置において用いられるトナーの結着樹脂をポリエステルにするのが好ましい。ポリエステルは、安価で一般的な有機溶剤により軟化および/または膨潤し易いので、前記のような有機溶剤を定着液成分として使用でき、定着液のコストを下げることができる。また、ポリエステルは軟化または膨潤した状態で透明になるので、数種の色のトナー像を重ね合わせてカラートナー像を形成すると、減法混色による鮮やかな発色が得られる。
【0034】
本発明によれば、本発明の画像形成装置において用いられるトナーとして、体積平均粒径が2〜7μmのものを用いるのが好ましい。粒径が2μm未満では、トナーとしての流動性が低下し、現像装置内での攪拌および帯電ならびに静電潜像へのトナーの供給を円滑に実施できない。その結果、逆極トナーの増加、トナー量の不足などが起こり、静電潜像の現像時に高画質のトナー像が得られない。粒径が7μmを超えると、トナー粒子の中心まで膨潤し難くなり、定着画像の発色が悪化するとともに、OHPの透過画像が暗くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1は、本発明の実施の第1形態である画像形成装置1の構成を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述のトナー像形成手段2)の構成を拡大して示す断面図である。図3は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述の定着液非接触付与手段4、定着液付与手段5および転写定着手段6)の構成を拡大して示す断面図である。
【0036】
画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、中間転写手段3と、定着液非接触付与手段4と、定着液付与手段5と、転写定着手段6と、記録媒体供給手段7と、排出手段8とを含んで構成される。画像形成装置1において、定着液非接触付与手段4がトナー像前処理手段である。
【0037】
トナー像形成手段2は、作像ユニット10y,10m,10c,10bを含み、これらは、各色相の画像情報に対応する静電潜像を形成し、該静電潜像を現像して各色のトナー像を形成するものである。すなわち、作像ユニット10yはイエロー色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10mはマゼンタ色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10cはシアン色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10bはブラック色の画像情報に対応するトナー像を形成する。
【0038】
作像ユニット10yは、感光体ドラム11yと、帯電ローラ12yと、光走査ユニット13と、現像装置14yと、ドラムクリーナ15yとを含んで構成される。
【0039】
感光体ドラム11yは、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない円筒状、円柱状または薄膜シート状(好ましくは円筒状)の導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含んで構成される。感光体ドラム11yには、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、導電性基体であるアルミニウム素管と、アルミニウム素管の表面に形成される有機感光層とを含む、GND電位に接続される直径30mmの感光体ドラムが挙げられる。有機感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層して形成される。有機感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質とを1つの層に含むものであってもよい。有機感光層の層厚は、たとえば、20μmである。また有機感光層と導電性基体との間に下地層を設けてもよい。さらに、有機感光層の表面に保護層を設けてもよい。有機感光層に代えて、酸化亜鉛、セレン、アモルファスシリコンなどからなる感光層を使用できる。感光体ドラム11yは、時計周りの方向に、たとえば、周速度100mm/sで回転駆動する。
【0040】
帯電ローラ12yは、感光体ドラム11yの表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電ローラ12yに代えて、ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、スコロトロンといったコロナ帯電器などが使用できる。本実施の形態では、感光体ドラム11yは−600Vに帯電される。
【0041】
光走査ユニット13は、帯電状態になる感光体ドラム11yの表面にイエロー色の画像情報に対応するレーザ光13yを照射し、感光体ドラム11yの表面に、イエロー色の画像情報に対応する静電潜像を形成する。レーザ光13yの光源には、半導体レーザなどが用いられる。本実施の形態では、露光電位−70Vの静電潜像が形成される。
【0042】
現像装置14yは、感光体ドラム11y表面に圧接し、図示しない固定磁極を内包しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられ、イエロー色トナー16yを感光体ドラム11y表面の静電潜像に供給する現像ローラ17yと、現像ローラ17yの表面に当接するように設けられ、現像ローラ17y表面のイエロー色トナー層を均一化(層規制)する現像ブレード18yと、イエロー色トナー16yを貯留するトナー貯留容器19yと、トナー貯留容器19yの内部に、互いに圧接しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられる攪拌ローラ20a,20bであって、攪拌ローラ20aが現像ローラ17yの表面に圧接しかつ現像ローラ17y表面にイエロー色トナー16yを供給する攪拌ローラ20a,20bとを含んで構成される。現像ローラ17yは、感光体ドラム11yに圧接(接触)する現像ニップ部において、感光体ドラム11yの回転駆動方向と同じ方向に回転駆動する。したがって、軸線回りの回転駆動方向としては、逆方向になる。本実施の形態では、現像ローラ17yの周速度は、たとえば、感光体ドラム11yに対して1.5倍の150mm/sである。また本実施の形態では、現像ローラ11yには、現像電位として−240Vの直流電圧が印加される。トナー貯留容器19y中のイエロー色トナー16yは、攪拌ローラ20a,20bによって現像ローラ17y表面に供給され、現像ブレード18yにより層厚を均一化された後、電位差などを利用して感光体ドラム11y表面の静電潜像にほぼ選択的に供給され、イエロー色の画像情報に対応するトナー像が形成される。なお、本実施の形態では、イエロー色トナー16yと磁性キャリアとを混合した2成分現像剤として用いられる。
【0043】
ドラムクリーナ15yは、後述するように、感光体ドラム11y表面のイエロー色トナー像が中間転写ベルト21に転写された後に、該表面に残存するイエロー色トナーを除去、回収する。
【0044】
作像ユニット10yによれば、感光体ドラム11yをその軸線回りに回転駆動させながら、まず帯電ローラ12yにより感光体ドラム11yの表面をたとえば−600Vに帯電する。次に、帯電状態にある感光体ドラム11yの表面に、光走査ユニット13からイエロー色の画像情報に対応する信号光を照射し、イエロー色の画像情報に対応する露光電位−70Vの静電潜像を形成する。次いで、感光体ドラム11yの表面に、現像ローラ16y表面に担持されるイエロー色トナー層が接触する。現像ローラ16yには現像電位として−240Vの直流電圧が印加されており、電位差により、静電潜像にイエロー色トナー16yが付着して現像され、感光体ドラム11yの表面にイエロー色のトナー像が形成される。このイエロー色トナー像は、後述するように、感光体ドラム11yの表面に接する中間転写ベルト21に中間転写される。感光体ドラム11yの表面に残留するイエロー色トナー16yはドラムクリーナ15yにより除去され、回収される。以後、同様のイエロー色トナー像形成動作が繰り返し実行される。
【0045】
作像ユニット10m,10c,10bは、それぞれマゼンタ色トナー16m、シアン色トナー16cまたはブラック色トナー16bを使用する以外は、作像ユニット10yに類似の構造を有するので、同一の参照符号を付し、さらに各参照符号の末尾に、マゼンタ色を示す「m」、シアン色を示す「c」またはブラック色を示す「b」を付し、説明を省略する。なお、作像ユニット10y,10m,10c,10bは、中間転写ベルト21の移動方向(副操作方向)、すなわち矢符27の方向の上流側からこの順番で一列に配列される。
【0046】
なお、各色トナー16y,16m,16c,16bは、結着樹脂、着色剤および必要に応じて離型剤を含有する。
【0047】
結着樹脂としては、後述する定着液33により軟化および/または膨潤する樹脂であれば特に制限されず、たとえば、ポリスチレン、スチレンの置換体の単独重合体、スチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。結着樹脂は単独または2種以上の組合せで使用できる。これらの中でも、トナー自体の保存性、耐久性、定着液33の付与によるトナーの軟化および/または膨潤制御などの点から、軟化点が100〜150℃かつガラス転移点が50〜80℃である樹脂が好ましく、ポリエステルが特に好ましい。ポリエステルは、入手容易で安価な有機溶剤によって容易に膨潤および/または軟化し、透明になる。これによって、異なる単色のトナー像を重ね合わせたカラートナー像を記録媒体に定着させると、減法混色により充分な発色が得られる。また、前記の軟化点範囲の樹脂よりも軟化点(または分子量)の高い樹脂を用いると、現像時の負荷によるトナーの劣化が防止され、長期間にわたって安定した現像トナー像ひいては高水準で安定した画像が得られる。
【0048】
着色剤としては、従来から電子写真方式の画像形成技術において用いられるトナー用顔料および染料を使用できるけれども、定着液33による滲みを防止するために、定着液33に溶解しない顔料が好ましく、ニグロシン染料などの染料は好ましくない。顔料の具体例としては、たとえば、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料などの有機系顔料、カーボンブラック、酸化チタン、モリブデンレッド、クロムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ベルリンブルーなどの無機系顔料、アルミニウム粉などの金属粉などが挙げられる。
【0049】
離型剤としては、後述する定着液33により軟化および/または膨潤するものであれば特に制限されず、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックスなどのワックス類が挙げられる。これらのワックスの中から、使用する結着樹脂に応じて、該結着樹脂よりもガラス転移点の低いワックスを用いるのが好ましい。ガラス転移点が結着樹脂よりも低いワックスは加熱により容易に軟化するので、トナー自体のガラス転移点よりも低温でも、トナー同士の結合力およびトナーのトナー像担持体、記録媒体などへの付着力が増加するので、定着液付与時にトナーの流れ、凝集などが発生するのを減少させることができる。さらに、ワックスの軟化により、トナー粒子におけるワックスの存在部分からトナー粒子内部に定着液33が浸透するので、定着液33の付与後、短時間でトナー全体が軟化および/または膨潤する。その結果、記録媒体への転写定着時に、充分な定着強度が得られるとともに、トナー像の重ね合わせにより充分な発色を得ることができる。
【0050】
トナーは、必要に応じて、帯電制御剤、流動性向上剤、定着促進剤、導電剤などの一般的なトナー用添加剤の1種または2種以上を含むことができる。
【0051】
トナーの体積平均粒径は、特に制限されないけれども、好ましくは2〜7μmである。このような小粒径トナーを用いると、単位重量当りのトナーの表面積が大きくなり、定着液33との接触面積が増加して定着し易くなる。これによって、定着液33の使用量の低減化を図り得るとともに、トナー像の記録媒体への定着および定着後の乾燥を短時間で実施できる。また、トナーの体積平均粒径が適度に小さい場合には、記録媒体9に対する被覆率が高くなるので、低付着量での高画質化およびトナー消費量の低減化を達成でき、ひいては定着液33の消費量のさらなる低減化を達成できる。
【0052】
トナーの体積平均粒径が2μm未満では、トナーの流動性が低下し、現像動作の際に、トナーの供給、攪拌および帯電が不充分になり、トナー量の不足、逆極トナーの増加などが起こり、高画質の画像が得られないおそれがある。一方、体積平均粒径が7μmを超えると、トナー粒子の中心まで軟化および/または膨潤し難い大粒径のトナー粒子が多くなるので、画像の記録媒体への定着性が低下するとともに、画像の発色が悪くなり、特にOPフィルムへの定着の場合には、画像が暗くなる。
【0053】
トナー自体の軟化点およびガラス転移点は特に制限されないけれども、軟化点が100〜130℃、ガラス転移点が50〜80℃であることが好ましい。このような軟化点の高いトナーは、現像時の負荷に対する耐久性は高いけれども、熱定着方式では充分に定着および発色しない。ところが、本発明では、定着液33を用いて化学的にトナーを軟化および/または膨潤させるので、定着および発色が充分で、高品位な画像が得られる。
【0054】
トナーは、公知の方法に従って製造できる。たとえば、結着樹脂に着色剤、離型剤などを分散して粉砕する方法、結着樹脂のモノマー溶液中に着色剤、離型剤などを分散させ、その後結着樹脂のモノマーを重合させる方法などが挙げられる。いずれの方法においても、トナーの表面積を大きくするために、トナーの形状が球形よりも不定形になるように調整するのが好ましい。これによって、定着液33と接触し易くなるので、定着液33の使用量を減らし、トナー像の定着および乾燥を短時間で実施できる。
【0055】
本実施の形態で用いられる各色トナー16y,16m,16c,16bは、顔料以外は次に示す同じ構成を有する。このトナーは結着樹脂、着色剤および離型剤を含み、体積平均粒径6μm、ガラス転移点60℃、軟化点120℃、顔料含有量がトナー全量の12重量%、離型剤としてのワックス含有量がトナー全量の7重量%および残部が結着樹脂である、負帯電性の絶縁性非磁性トナーである。結着樹脂は、ガラス転移点60℃および軟化点120℃のポリエステルである。ワックスは、ガラス転移点50℃および軟化点70℃の低分子ポリエチレンワックスである。このトナーを用いて、所定の画像濃度(X−Rite社製310による反射濃度測定値が1.4)を得るのに必要な単位面積当りのトナー量は0.5mg/cmである。
【0056】
中間転写手段3は、中間転写ベルト21と、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bと、支持ローラ23,24,25と、ベルトクリーナ26とを含んで構成される。
【0057】
中間転写ベルト21はトナー像担持体であり、支持ローラ23,24,25との間に張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルトであり、感光体ドラム11y,11m,11c,11bとほぼ同じ速度で矢符27の方向に回転する。中間転写ベルト21としてはこの分野で常用されるものの中から、定着液33に対して撥液性を有するものを選択して使用する。さらにその中でも、少なくともそのトナー像担持面21aの定着液滴に対する接触角が50°以上であるものが好ましく、50°〜120°であるものか特に好ましい。接触角が50°未満では、定着液33を付与されたトナー像の中間転写ベルト21からの剥離性が不充分になり、トナー像の記録媒体への転写定着が円滑に進行せず、良好な画像が形成されないおそれがある。接触角が50°未満の材料には、たとえば、ポリイミド、ポリカーボネートなどが挙げられ、これらの樹脂は湿式定着方式の画像形成装置における中間転写ベルト21の表面材料には適しない。ただし、中間転写ベルト21の基材としては好適に使用できる。
【0058】
定着液滴に対する接触角が50°以上である材料としては、たとえば、フッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂としては公知のものを使用でき、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)などが挙げられる。本実施の形態では、厚さ100μmのポリイミド製基材の表面に、厚さ500μmのシリコン層、および、PTFEとPFAとを8:2(重量比)で混合したフッ素樹脂組成物からなる厚さ20μmの表面コート層をこの順番で積層したものを用いる。この表面コート層の定着液滴に対する接触角は74°である。なお、ポリイミド製基材および表面コート層には、中間転写ベルトとしての電気抵抗値を調整するために、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、グラファイトカーボンなどの導電材を配合できる。
【0059】
中間転写ベルト21のトナー像担持面21aは、感光体ドラム11y,11m,11c,11bにこの順番で圧接する。中間転写ベルト21の感光体ドラム11y,11m,11c,11bに圧接する位置が、各色相のトナー像の中間転写位置である。トナー像担持体である中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11y,11m,11c,11bに対向する位置に、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bが配置される。
【0060】
中間転写ローラ22y,22m,22c,22bは、それぞれ、中間転写ベルト21におけるトナー像担持面21aの反対面に圧接し、かつ図示しない駆動手段によりその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、たとえば、金属製軸体と、該金属製軸体の表面に被覆される導電性層とを含んで構成される。軸体は、たとえば、ステンレス鋼などの金属により形成される。軸体の直径は特に制限されないけれども、好ましくは8〜10mmである。導電性層は、導電性弾性体などにより形成される。導電性弾性体としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、カーボンブラックなどの導電材を含むEPDM、発泡EPDM、発泡ウレタンなどが挙げられる。導電性層によって、中間転写ベルト21に高電圧が均一に印下される。
【0061】
中間転写ローラ22y,22m,22c,22bには、感光体ドラム11y,11m,11c,11bの表面に形成されるトナー像を中間転写ベルト21上に転写するために、トナーの帯電極性とは逆極性の中間転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム11y,11m,11c,11bに形成されるイエロー色、マゼンタ色、シアン色およびブラック色の各色相のトナー像が中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに順次重ね合わさって転写され、多色トナー像が形成される。
【0062】
支持ローラ23,24,25には、たとえば、直径30mmで、肉厚が1mmのアルミニウム製円筒体が用いられる。なお、中間転写ベルト21を介して、後述する転写定着ローラ28に圧接する支持ローラ24は、中間転写ベルト21を張架するだけでなく、転写定着手段としての機能をも有することから、電気的に接地される。
【0063】
ベルトクリーナ26は、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上のトナー像を後述の転写定着手段6において記録媒体9に転写した後に、トナー像担持面21a上に残存するトナーを除去する部材であり、中間転写ベルト21を介して支持ローラ25に対向するように設けられ、図示しない加圧手段により、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに圧接し、トナー像担持面21a上の残存トナーなどを掻き取るクリーニングブレード26aと、クリーニングブレード26aに掻き取られるトナーなどを貯留するトナー貯留容器26bとを含んで構成される。クリーニングブレード26aには、たとえば、弾性を有するゴム材料(たとえば、ウレタンゴム)などからなるブレードを使用できる。
【0064】
中間転写手段3によれば、感光体ドラム11y,11m,11c,11b上に形成される各色のトナー像が、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aの所定位置に重ね合わせて転写され、多色トナー像が形成される。
【0065】
定着液非接触付与手段4は、中間転写ベルト21上に担持されるトナー像に、該トナー像を構成するトナー同士の結合力を高めるために、トナーを軟化および/または膨潤させる定着液を非接触状態で付与するものである。
【0066】
定着液非接触付与手段4は、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに対向するように設けられ、トナー像担持面21aに担持されるトナー像に非接触状態で定着液33を付与する非接触付与装置32と、定着液33を貯留する定着液貯留槽34と、定着液貯留槽34から非接付与布装置32に定着液33を供給する供給管35とを含んで構成される。
【0067】
図4は、非接触付与装置32の要部(インクジェットヘッド51)の外観を示す斜視図である。図5は、図4に示す非接触付与装置32の構成を模式的に示す断面図である。非接触付与装置32は、電気的な制御信号に応じて定着液33の微小液滴をトナー像担持面21aに担持されるトナー像に向けて飛翔させる装置であり、支持ローラ23の回転軸線方向に延び、トナー像担持面21aに対向する面に定着液33の液滴を吐出するノズルアレイ52がライン状に配置され、かつ内部にノズルアレイ52と後述の定着液カートリッジ54とを連通するチャンバー53を有するインクジェットヘッド51と、インクジェットヘッド51の側面51aに接するように設けられ、チャンバー53に定着液33を供給する定着液カートリッジ54と、インクジェットヘッド51の側面51bに接するように設けられ、その伸縮駆動によりチャンバー53内の定着液33を押出すピエゾ素子55と、ピエゾ素子55に伸縮駆動電圧を印加する電源56とを含んで構成される。
【0068】
インクジェットヘッド51におけるノズルアレイ52の配列ピッチは、微小ノズルから吐出される定着液33の微小液滴が、トナー像担持面21aのトナー像付着領域(画像部)全体を隙間なく被覆するように設定される。また、インクジェットヘッド51のピエゾ素子55に接する部分は、セラミックスで形成される。このようなインクジェットヘッド51は、プリンタ用インクジェットヘッドのように、ノズル毎に液滴の吐出量を制御する必要はなく、また、ノズル径を微細に形成する必要もないので、長尺であるにも関わらず安価に作成できる。
【0069】
非接触付与装置32によれば、定着液カートリッジ54中の定着液33が、インクジェットヘッド51内部のチャンバー53に供給され、ピエゾ素子55の伸縮駆動によりチャンバー53中の定着液33がノズルアレイ52から液滴として吐出される。
【0070】
なお、非接触付与装置32によりトナー像担持面21上のトナー像に非接触状態で付与される定着液量は、トナーに含まれる成分、定着液33の組成などに応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、画像形成領域に付着するトナー像における全トナー量の10〜90重量%である。定着液量が10重量%未満では、トナーの軟化および/または膨潤が不充分になり、次行程である定着液の接触付与の際に、トナーが定着液付与手段5に付着し、画像が乱れる恐れがある。また90重量%を超えると、トナーの軟化および/または膨潤が進み過ぎ、やはりトナーが定着液付与手段5に付着するという不都合を生じる可能性がある。
【0071】
たとえば、トナー量1.5mg/cmの3層(CMY)黒ベタトナー像を転写定着に適する程度まで軟化および/または膨潤させるには、非接触で約1.4mg/cmの定着液33を付与することが必要である。しかしながら、非接触で付与すると、トナーが付着する画像部だけでなく、トナーが付着しない非画像部にも定着液33が付与されるので、定着液33を余分に付与することが必要になる。一方、たとえばローラなどで接触下に定着液33を付与すると、トナーのみに選択的に定着液33を付与できるけれども、トナーの一部がローラに付着し、画像が乱れるという欠点がある。ところが、転写定着には不充分な量、たとえば約0.2mg/cmの定着液33を非接触下にトナーに付与し、トナー同士の結合力を高めた上で、接触下に転写定着に必要な量の定着液33を付与すれば、ローラにトナーが付着することがなく、必要最低限量の定着液33をトナーに付与でき、トナーは転写定着が円滑に実施できる程度に充分に軟化および/または膨潤する。
【0072】
このように、非接触で定着液33を、トナーの軟化および/または膨潤が完全に進行しない程度に付与することによって、トナー像への接触下での定着液付与を円滑に実施できる。
【0073】
図1に戻り、定着液貯留槽34に貯留される定着液33は、図示しない補給制御手段によって、供給管35を介して非接触付与装置32に供給される。
【0074】
ここで使用される定着液33は、トナーを軟化および/または膨潤させる液状物であり、たとえば、トナーを軟化および/または膨潤させる作用を有する有機化合物と水とを含む組成物である。前記有機化合物としては、トナーを軟化および/または膨潤させる作用を有し、かつ水に分散または溶解可能なものであれば特に制限されず、たとえば、高級グリコールエーテル、エチレングリコールモノエーテル、ジエチレングリコールモノエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−メトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルセロソルブエチルカルビトール、脂肪族二塩基酸エステルおよび不飽和二塩基酸エステル(たとえば、DBE、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル)、多塩基酸エステル(たとえば、トリメリット酸エステル)、エステル系高沸点混合溶媒などが挙げられる。これらは1種または2種以上を使用できる。このような有機化合物の含有量は、有機化合物自体の種類、トナー成分などに応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは定着液33全量の10〜30重量%である。
【0075】
定着液33には、界面活性剤を添加できる。界面活性剤の具体例としては、たとえば、脂肪酸誘導体硫酸エステル、スルホン酸型陰イオン界面活性剤、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、四級アンモニウム塩、複素環アミン、アミン化合物などの陽イオン界面活性剤、アミノ酸エステル、アミノ酸、スルホベタインなどの両性イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。界面活性剤の含有量は、併用する有機化合物の種類および含有量、トナー成分、界面活性剤そのものの種類などに応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは定着液33全量の1〜10重量%である。
【0076】
本実施の形態では、高級グリコールエーテル(有機化合物)を20重量%およびスルホン酸型界面活性剤(界面活性剤)を5重量%含有しかつ残部が水である定着液33を使用する。
【0077】
定着液付与手段5は、定着液非接触付与手段4により定着液33を非接触付与された、トナー像担持面21a上のトナー像に、さらに接触状態で定着液33を付与するものである。これによって、該トナー像を構成するトナーを、記録媒体9への転写および定着を円滑に実施できる程度に軟化および/または膨潤させる。
【0078】
定着液付与手段5は、定着液接触付与装置36を含んで構成される。
【0079】
定着液接触付与装置36は、定着液33を貯留する定着液溜37と、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに圧接し、その一部が定着液溜37に貯留される定着液33中に浸漬しかつ図示しない駆動手段により矢符39の方向に回転駆動可能に設けられる定着液塗布ローラ38と、定着液塗布ローラ38の表面に圧接しかつ図示しない駆動手段により矢符41の方向に回転駆動可能に設けられ、定着液塗布ローラ38の表面に付着する定着液33を適量に規制する規制ローラ40と、一端を定着液溜37に固定され他端が規制ローラ40の表面に圧接するように設けられ、規制ローラ40表面に定着液33を除去する除去ブレード42とを含んで構成される。なお、定着液塗布ローラ38と規制ローラ40とは、たとえば、単一のギア列により駆動され、一定の周速比で回転する。
【0080】
定着液溜37には、定着液貯留槽34から供給管35を介し、図示しない補給制御手段により定着液33の消費状況に応じて、定着液33の液面高さが一定になるように、定着液33が補充供給される。
【0081】
定着液塗布ローラ38には、たとえば、金属製芯金の表面に、弾性層および親水性処理を施した多孔質層を順次積層してなるローラ、金属製芯金の表面に、弾性および親液性を有する材料からなる被覆層を設けたローラなどが使用される。弾性および親液性を有する材料としては、たとえば、アルミニウムなどの金属材料、親水性樹脂、EPDMなどのゴム材料などが挙げられる。本実施の形態では、外径20mmで、シリコーンゴムからなり、厚さ3mmかつ硬度20度(JIS−A)の被覆層を有するローラを用いる。また本実施の形態では、定着液塗布ローラ38は、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに1N/cmの押圧力で圧接し、中間転写ベルト21の回転速度とほぼ等速度で回転駆動する。
【0082】
規制ローラ40には、たとえば、金属製ローラが用いられる。本実施の形態では、外径12mmのステンレス鋼製ローラである。
【0083】
除去ブレード42には、たとえば、金属製の板状物が用いられる。本実施の形態では、厚さ50mmのステンレス鋼製の板が用いられる。除去ブレード42は、一方の先端が既成ローラ40の表面に圧接し、規制ローラ42表面に付着する定着液33を除去する。
【0084】
定着液接触付与装置36によれば、まず、定着液塗布ローラ38が定着液溜37の定着液33中を回転することにより、定着液塗布ローラ38の表面に定着液33が付着する。定着液塗布ローラ38表面の定着液33は、規制ローラ42によりほぼ一定の厚さを有する薄層に形成され、定着液塗布ローラ38と中間転写ベルト21との圧接部において、中間転写ベルト21上のトナー像に接触付与される。トナー像に定着液33を付与した後に定着液塗布ローラ38表面に残留する定着液33は、除去ブレード42により除去される。
【0085】
本実施の形態では、定着液非接触付与手段4によって、中間転写ベルト21上のトナー像は、転写定着に適する程度までは軟化および/または膨潤していないけれども、トナー同士の結合力が高まった状態にある。これに、定着液塗布ローラ38によって定着液33を接触塗布すると、トナーには、トナーが良好に転写定着される程度まで軟化および/または膨潤するのに必要な量の定着液33が付与される。また、定着液塗布ローラ38にはトナーは付着しない。さらに、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上の、トナーが付着しない非画像部に存在する定着液33は、トナー像担持面21aが撥液性材料で構成されることも相俟って、定着液塗布ローラ38に付着して回収される。すなわち、定着液付与手段5による処理を施されたトナー像担持面21a上には、軟化および/または膨潤したトナーからなるトナー像のみが存在し、トナーが付着しない非画像部でも定着液33はほとんど存在しなくなる。したがって、次の転写定着行程でトナー像の転写定着が円滑に進行し、記録媒体9に定着液33の付与を原因とするしわなどの発生がなく、定着液33の使用量を低減化できる。
【0086】
転写定着手段6は、支持ローラ24と、中間転写ベルト21を介して支持ローラ24に圧接し、かつ軸線方向に回転駆動可能に設けられる転写定着ローラ28を含んで構成される。転写定着ローラ28には、たとえば、直径10mmの芯金の外周に、厚さ4mmのウレタンゴム層を設けたローラが用いられる。ウレタンゴム層には、導電性を付与するために、カーボンなどの導電剤が配合される。また、転写定着ローラ28は、たとえば、5N/cmの線圧で中間転写ベルト21および支持ローラ24を押圧するように配置され、電圧は印加されない。
【0087】
定着液非接触付与手段4および定着液付与手段5により定着液33を付与され、軟化および/または膨潤状態にある中間転写ベルト21上のトナー像は、中間転写ベルト21の回転によって、支持ローラ24と転写定着ローラ28との圧接部に搬送される。これに同期して、後述する記録媒体供給手段7から記録媒体9が送給され、中間転写ベルト21上のトナー像が記録媒体9の表面に押圧により転写され、定着される。
【0088】
このとき、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aがトナーとの付着力の低いフッ素樹脂材料で構成される場合には、トナーの全量が確実に記録媒体9に転写される。
【0089】
また、中間転写ベルト21が基材とフッ素樹脂材料からなる表面層との間にゴムなどからなる弾性層が介在する構成である場合には、表面層が記録媒体9表面の凹凸に倣って変形する。その結果、記録媒体9の凹部にもトナー像を接触させることが可能になり、均一な転写定着像が得られる。
【0090】
また、記録媒体9が紙類である場合には、トナー像が記録媒体9に押圧されると、トナー粒子が紙繊維に強く入り込むのと同時に、トナー粒子同士が融合し、記録媒体9に転写された画像の表面が均一になる。これによって、減法混色による発色性と表面の光沢性に優れた高品位のカラー画像が得られる。
【0091】
転写定着手段6によれば、定着液非接触付与手段4および定着液付与手段5により軟化および/または膨潤状態にあるトナー像が記録媒体9に押圧により転写定着される。
【0092】
記録媒体供給手段7は、記録媒体9を貯留する記録媒体カセット43と、記録媒体9を搬送路Pに1枚ずつ送給するピックアップローラ44と、中間転写ベルト21上の多色トナー像が転写定着ローラ28と支持ローラ24との圧接部に搬送されるのに同期して、該圧接部に記録媒体9を送給する1対のレジストローラ45a,45bとを含んで構成される。
【0093】
記録媒体供給手段7によれば、記録媒体カセット43内に貯留される記録媒体9が、ピックアップローラ44により1枚ずつ搬送路Pに送給され、さらに、レジストローラ45a,45bにより、転写定着ローラ28と支持ローラ24との圧接部に送給される。
【0094】
排出手段8は、搬送ベルト46と、駆動ローラ47と、テンションローラ48と、排紙ローラ49とを含んで構成される。
【0095】
搬送ベルト46は、駆動ローラ47とテンションローラ48との間に張架されてループ状の搬送経路を形成する無端ベルトであり、転写定着手段6により画像が形成された記録媒体9を排紙ローラ49に搬送する。搬送ベルト46には、たとえば、導電剤を添加して導電性を付与した厚さ100μmのポリイミドフィルムの少なくとも記録媒体搬送面46aに、PTFEからなる厚さ10μmの被覆層を設けたものを使用できる。
【0096】
駆動ローラ47は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に設けられる。駆動ローラ47には、たとえば、アルミニウムなどの金属からなる中空ローラを使用できる。
【0097】
テンションローラ48は、搬送ベルト46が弛まないように、搬送ベルト46に所定の張力を付与する。テンションローラ48には、たとえば、金属製軸体と、金属製軸体の表面に形成される被覆層とを含んで構成される。また、金属製軸体のみからなるものでもよい。金属製軸体の材料には、たとえば、ステンレス鋼が使用され、被覆層の材料にはたとえばフッ素ゴムが使用される。
【0098】
排紙ローラ49は、搬送ベルト46により搬送される記録媒体9を画像形成装置1の外部側面に設けられる排紙トレイ50に排出する部材であり、互いに圧接するように設けられる1対のローラを含んで構成され、各ローラはそれぞれの軸線方向に回転駆動可能に支持される。
【0099】
画像形成装置1によれば、トナー像形成手段2により、トナー像担持体である中間転写ベルト21上に形成されるトナー像に、定着液非接触付与手段4および定着液付与手段5から非接触および接触下に定着液33が付与され、トナー像を軟化および/または膨潤させ、これを転写定着手段6により記録媒体9に転写定着し、画像が形成される。
【0100】
本実施の形態では、定着液非接触付与手段4として、図4および図5に示す非接触付与装置32を用いるけれども、それに限定されず、図6および図7に示す非接触付与装置60を用いることができる。図6は、非接触付与装置60の要部(第1および第2の供給ローラ62,63ならびに金属メッシュ板65)の外観を示す斜視図である。図7は、図6に示す非接触付与装置60の構成を模式的に示す断面図である。
【0101】
非接触付与装置60は、電気的な制御信号に応じて定着液33の微小液滴をトナー像担持面21aに担持されるトナー像に吐出する装置であり、非接触付与装置32と同様に、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに対して間隔を保ちながら、支持ローラ23に対向するように設けられる。
【0102】
非接触付与装置60は、定着液収容槽61と、第1供給ローラ62と、第2供給ローラ63と、液量規制ブレード64と、金属メッシュ板65と、超音波振動子66と、電源67とを含んで構成される。
【0103】
定着液収容槽61は、定着液33を収容する。定着液収容槽61では、その定着液面高さが常に一定になるように、定着液33の消費状況に応じて、図示しない定着液補充手段により定着液33が補充供給される。
【0104】
第1供給ローラ62は、その一部が定着液収容槽61の定着液33中に浸漬し、図示しない駆動手段により矢符68の方向に回転駆動可能に設けられる。第1供給ローラ62の回転によって、第1供給ローラ62の表面に定着液33が付着し、この定着液33が第2供給ローラ63に供給される。
【0105】
第2供給ローラ63は、第1供給ローラ62および金属メッシュ板65に圧接し、かつ図示しない駆動手段により矢符69の方向に回転駆動可能に設けられる。また、液量規制ブレード64は第2供給ローラ63の軸線方向に延びる板状部材であり、その短手方向の一端が第2供給ローラ63の表面に当接し、かつ短手方向のもう一端が定着液収容槽61に固定されるように設けられる。ここで、第2供給ローラ63および液量規制ブレード64は、金属メッシュ板65に供給される定着液33の液量を一定化するために設けられる。第2供給ローラ63は、その表面に、第1供給ローラ62との圧接部で定着液33の供給を受け、次いで液量規制ブレード64によってその表面における定着液33の液量を調整された後、金属メッシュ板65に圧接して定着液33を金属メッシュ板65に供給する。
【0106】
金属メッシュ板61は、支持ローラ23の回転軸線方向に延びるように設けられ、第2供給ローラ63が圧接する面と反対の面に、超音波振動子66が接するように設けられる。超音波振動子66は、電源67から電圧を印加されて超音波を発生し、振動および伸縮する。超音波振動子66の振動を受けて金属メッシュ板61が振動し、第2供給ローラ63の表面に付着する定着液33を液滴化し、この液滴70を中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに向けて吐出する。
【0107】
非接触付与装置60によれば、定着液収容槽61に収容される定着液33を、第1供給ローラ62および第2供給ローラ63を介して金属メッシュ板65に供給し、金属メッシュ板65を超音波振動子66によって振動させ、定着液33を液滴化して中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに向けて吐出する。このような非接触付与装置60によっても、非接触付与装置32と同様の効果を奏することができる。
【0108】
さらに、非接触付与装置60の他に、スプレーノズルを用いて定着液33を非接触付与することもできる。
【0109】
図8は、本発明の実施の第2形態である画像形成装置71の要部の構成を模式的に示す断面図である。
【0110】
画像形成装置71は、画像形成装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。また、同一部分については図示および説明を省略する。
【0111】
画像形成装置71は、トナー像前処理手段として、画像形成装置1における定着液非接触付与手段4に代えて、加熱手段100および中間転写ベルト21の表面温度を検知する温度センサ74を備えることを特徴とする。
【0112】
すなわち、画像形成装置71は、トナー像形成手段2と、中間転写手段72と、定着液付与手段5と、転写定着手段6と、記録媒体供給手段7と、排出手段8とを含んで構成される。
【0113】
中間転写手段72は、中間転写ベルト21と、中間転写ローラ21y,21m,21c,21bと、支持ローラ23,24,25と、ベルトクリーナ26と、温度センサ74と、加熱手段100とを含んで構成される。画像形成装置1における中間転写手段3との相違点は、中間転写ベルト21およびそのトナー像担持面21aに担持されるトナー像が、定着液付与手段5による定着液33の付与に先立って、加熱手段100によって加熱される点である。
【0114】
加熱手段100は、加熱ヒータ101と、加熱ヒータ101を内蔵して中間転写ベルト21に対向する部分に開口部を有する円筒体102とを含んで構成される。加熱ヒータ101には、たとえば、ハロゲンランプ、赤外線ヒータなどを使用できる。円筒体102は、ステンレス鋼などの金属から形成される。加熱ヒータ101から発せられる熱は、円筒体102の開口部から中間転写ベルト21に対して放散され、中間転写ベルト21上のトナー像を加熱する。
【0115】
加熱手段100によるトナー像担持面21a上のトナー像の加熱温度は、好ましくは60〜160℃、さらに好ましくは60〜120℃である。加熱温度が60℃未満では、トナー同士の結合力が充分高められないので、定着液付与手段5による定着液33の接触付与の際に、トナーが定着液付与手段5に付着し、画像の乱れを生じるおそれがある。また、加熱温度が160℃を超えると、トナーの溶融が進み過ぎて流動化してやはり画像の乱れを生じるおそれがある。さらに、加熱温度の上限を120℃にすると、感光体ドラム11y,11m,11c,11bの温度上昇が少なくなり、消費電力を減らすことができる。また加熱手段100によれば、主に、トナー像担持面21a上のトナー像を加熱することができ、中間転写ベルト21ひいては中間転写ベルト21に接触する感光体ドラムの温度上昇を抑制できる。
【0116】
加熱手段100によるトナー像の加熱によって、トナーの定着液付与手段5への付着を防止できるとともに、定着液33の使用量を低減化できる。たとえば、トナー像を、トナー像担持面21aの表面温度が70℃になるように加熱すると、転写定着を円滑に実施できる程度にトナーを軟化および/または膨潤させるのに必要な定着液33の量を、非加熱時に比べて半分以下にすることができる。
【0117】
また、中間転写ベルト21もトナー像とともに加熱されることによって、中間転写ベルト21の定着液付与手段5による定着液33付与後の表面温度は、加熱温度よりも低くなるけれども、非加熱時に比べれば高いので、非画像部に付着する定着液の乾燥性、トナー像の中間転写ベルト21からの剥離性などの向上を図ることができる。
【0118】
加熱手段100によるトナー像および中間転写ベルト21の加熱を行う際には、トナー像の中間転写ベルト21からの剥離性、言い換えれば、トナー像の記録媒体9への転写定着性は、中間転写ベルト21の材質にも大きく影響される。表1に、画像形成装置71において、加熱手段100による中間転写ベルト21の加熱温度を70℃とし、中間転写ベルト21の材質を変更してトナー像の転写定着性を調べた結果を表1に示す。
【0119】
表1に示す、フッ素材Aの中間転写ベルト21は、厚さ100μmのポリイミド製基材の表面に、厚さ500μmのシリコン層、および、PTFEとPFAとを8:2(重量比)で混合したフッ素樹脂組成物からなる厚さ20μmの表面コート層をこの順番で積層したものである。
【0120】
フッ素材Bは、厚さ100μmのポリイミド製基材の表面に、厚さ500μmのシリコン層、および、厚さ20μmのPTFEからなる表面コート層をこの順番で積層したものである。
【0121】
フッ素材AおよびBのいずれにおいても、表面コート層がトナー像担持面21aになる。
【0122】
また、転写定着性については、次の基準で評価した。
○:トナー像が記録紙に転写定着される。
×:トナー像が記録紙に転写されず、中間転写ベルト側に残る。
【0123】
【表1】

【0124】
表1から、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aが、定着液33に対して50°以上の接触角を示す材料、好ましくはフッ素樹脂材料であれば、軟化および/または膨潤したトナー像の記録媒体9への転写定着性が良好であることが判る。
【0125】
なお、画像形成装置1のように、トナー像に非接触で定着液33を付与してトナー同士の結合力を高める場合にも、表1に示すのと同様の結果が得られる。
【0126】
温度センサ74は、中間転写ベルト21の温度を検知するために、中間転写ベルト21の回転方向、すなわち矢符27の方向において、加熱支持ローラ23aの下流側の位置に、中間転写ベルト21に接するかまたは近接するように設けられる。温度センサ74による検知結果は、画像形成装置71の全動作を制御する図示しないCPUに格納され、CPUは格納される検知結果に基づいて、加熱ヒータ101に電圧を印加する図示しない電源に制御信号を送り、加熱ヒータ101による発熱を調整し、中間転写ベルト21の表面温度を制御する。
【0127】
中間転写手段72によれば、感光体ドラム11y,11m,11c,11bから中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに重ね合わせて転写されるトナー像が、中間転写ベルト21の回転にともなって加熱手段100の開口部近傍を通過して加熱され、トナー同士の結合力が高められる。このトナー像は、引き続き定着液付与手段5による定着液33の接触付与を受け、転写定着に適する程度まで軟化および/または膨潤した後、転写定着手段6により記録媒体9に転写定着される。
【0128】
画像形成装置71によれば、中間転写ベルト21に転写されるトナー像が加熱および定着液33の接触下での付与を受けて軟化および/または膨潤し、記録媒体9に転写定着される。
【0129】
図9は、本発明の実施の第3形態である画像形成装置75の要部の構成を模式的に示す断面図である。
【0130】
画像形成装置75は、画像形成装置71に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。また、同一部分については図示および説明を省略する。
【0131】
画像形成装置71は、画像形成装置71における支持ローラ24に代えて、転写時加熱手段である加熱支持ローラ24aを有すること、および加熱支持ローラ24aの表面温度を検知する温度センサ78を備えることを特徴とする。
【0132】
すなわち、画像形成装置75は、トナー像形成手段2と、中間転写手段76と、定着液付与手段5と、転写定着手段6と、記録媒体供給手段7と、排出手段8とを含んで構成される。
【0133】
中間転写手段76は、中間転写ベルト21と、中間転写ローラ21y,21m,21c,21bと、支持ローラ23,25と、加熱支持ローラ24aと、ベルトクリーナ26と、温度センサ74,78と、加熱手段100とを含んで構成される。画像形成装置71における中間転写手段72との相違点は、支持ローラ24が加熱支持ローラ24aに置き換えられ、加熱支持ローラ24aの表面温度を検知する温度センサ78が設けられる点である。
【0134】
加熱支持ローラ24aは、図示しない駆動手段により軸線方向に回転駆動可能に設けられ、支持ローラ23,25とともに中間転写ベルト21を張架し、かつ中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに担持され、定着液33の付与により軟化および/または膨潤したトナー像を加熱する。加熱支持ローラ24aは、ステンレス鋼などの金属からなる円筒体と、該円筒体の内部に設けられるハロゲンランプ、赤外線ヒータなどの加熱ヒータ77とを含んで構成される。なお、加熱支持ローラ24aは、転写定着手段としての機能をも有する。
【0135】
加熱支持ローラ24aを用い、軟化および/または膨潤状態のトナー像の記録媒体9への転写定着を加熱下に実施することによって、トナー像の転写定着性をさらに向上させ、トナー像の記録媒体9への定着強度も一層高くなる。また、記録媒体9に転写されるトナー像の乾燥を促進できるので、画像形成速度をさらに高速化することができる。さらに、定着液33の消費量の低減化にも寄与する。
【0136】
加熱支持ローラ24aによる加熱温度は、好ましくは60℃以上、さらに好ましくは60〜140℃である。60℃未満では、転写定着性およびトナー像の乾燥性の向上、定着液33の消費量の低減化などが不充分になる。一方、140℃を超えても転写定着性のより一層の向上はないので、消費電力を減らす観点から、140℃以下にするのが好ましい。
【0137】
温度センサ78は、加熱支持ローラ24aの表面に接するかまたは近接するように設けられ、加熱支持ローラ24aの表面温度を検知する。温度センサ78による検知結果は、画像形成装置75の全動作を制御する図示しないCPUに格納され、CPUは格納される検知結果に基づいて、加熱ヒータ77に電圧を印加する図示しない電源に制御信号を送り、加熱ヒータ77による発熱を調整し、加熱支持ローラ24aの表面温度を制御する。
【0138】
中間転写手段76によれば、感光体ドラム11y,11m,11c,11bから中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに重ね合わせて転写されるトナー像が、中間転写ベルト21の回転にともなって加熱手段100上を通過して加熱され、トナー同士の結合力が高められる。このトナー像は、引き続き定着液付与手段5による定着液33の接触付与を受け、転写定着に適する程度まで軟化および/または膨潤した後、加熱支持ローラ24aによる加熱下に転写定着手段6により記録媒体9に転写定着される。
【0139】
画像形成装置75によれば、中間転写ベルト21に転写されるトナー像が加熱および定着液33の接触下での付与を受けて軟化および/または膨潤し、加熱下に記録媒体9に転写定着される。
【0140】
図10は、本発明の実施の第4形態である画像形成装置80の要部の構成を模式的に示す断面図である。
【0141】
画像形成装置80は、画像形成装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。また、同一部分については、図示および説明を省略する。
【0142】
画像形成装置80は、画像形成装置1における中間転写手段3と転写定着手段6とに接するように設けられるトナー像中間担持手段(トナー像転写担持体)81を備え、トナー像中間担持手段81上において、トナー像に定着液33が接触付与されることを特徴とする。
【0143】
また、画像形成装置1において、中間転写手段3における中間転写ベルト21は矢符27の方向に回転駆動するけれども、画像形成装置80においては、中間転写ベルト21は矢符27とは逆方向である矢符27aの方向に回転駆動する。それに応じて、トナー像形成手段2における作像ユニット10y,10m,10c,10bは矢符27aの方向の上流側からこの順番で配置される。作像ユニットの配置は、画像形成装置1におけるのとは逆になる。画像形成装置80は、これらの点をも特徴とする。
【0144】
また、画像形成装置80は、トナー像前処理手段として、画像形成装置1における定着液非接触付与手段4の代わりに、加熱支持ローラ84を有する点をも特徴とする。
【0145】
すなわち画像形成装置80は、図示しないトナー像形成手段2aと、支持ローラ24および中間転写ベルト21の一部を除いて図示しない中間転写手段3aと、トナー像中間担持手段81と、定着液付与手段5と、転写定着手段6と、記録媒体供給手段7と、排出手段8とを含んで構成される。
【0146】
トナー像形成手段2aは、画像形成装置1におけるトナー像形成手段2に類似の構造を有する。ただし、中間転写ベルト21の送り方向を矢符27aの方向、すなわち画像形成装置1における送り方向とは反転させることに伴い、矢符27aの上流側から作像ユニット10y,10m,10c,10bがこの順番で配置される。それに伴い、各作像ユニット内の各部材の回転駆動方向も逆回転になる。
【0147】
中間転写手段3aも、画像形成装置1における中間転写手段3と類似の構造を有する。ただし、前述のように、中間転写ベルト21の送り方向を矢符27aの方向に変更するので、それに対応する変更が施される。すなわち、ベルトクリーナ26が支持ローラ25ではなく、中間転写ベルト21を介して支持ローラ23に対向し、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに当接するように設けられる。
【0148】
トナー像中間担持手段81は、転写担持ベルト82と、支持ローラ83,86と、加熱手段100と、冷却手段88とを含んで構成される。
【0149】
転写担持ベルト82はトナー像転写担持体であり、支持ローラ83,86間に張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルトであり、矢符87の方向に回転する。転写担持ベルト82は、支持ローラ24と支持ローラ83とが対向する部分で中間転写ベルト21に圧接する。これによって、中間転写ベルト21上のトナー像が転写担持ベルト82上に静電転写される。転写担持ベルト82には、中間転写ベルト21と同じ材質のものを使用できる。
【0150】
支持ローラ83は、図示しない駆動手段により軸線方向に回転駆動可能に支持され、中間転写ベルト21および転写担持ベルト82を介して支持ローラ24に圧接するように設けられる。支持ローラ24との圧接部において、中間転写ベルト21上のトナー像が転写担持ベルト82上に静電転写される。支持ローラ83には、支持ローラ23,24,25と同様の構成のものを使用できる。
【0151】
支持ローラ86は、図示しない駆動手段により軸線方向に回転駆動可能に支持され、転写担持ベルト82を介して転写定着ローラ28に圧接するように設けられる。転写定着ローラ28との圧接部において、転写担持ベルト82上のトナー像が記録媒体9に転写定着される。支持ローラ86には、支持ローラ23,24,25と同様の構成のものを使用できる。
【0152】
加熱手段100は、トナー像前処理手段であり、転写担持ベルト82上のトナー像を加熱する機能を有する。加熱手段100によるトナー像加熱温度は、好ましくは60〜160℃、さらに好ましくは60〜120℃である。加熱手段100によれば、転写担持ベルト82上のトナー像におけるトナー同士の結合力を、画像を乱すことなくかつ定着液付与手段5による接触下での定着液33の付与を受けても、定着液付与手段5にトナーが付着しない程度に高めることができる。
【0153】
冷却手段88は、転写担持ベルト82の温度を下げ、転写担持ベルト82から中間転写ベルト21に伝わる熱量を低減化し、その結果として感光体ドラム11y,11m,11c,11bに伝わる熱量を低減化し、感光体ドラム11y,11m,11c,11bの温度上昇を抑制する。また中間転写ベルト21上のトナーが必要以上溶融または軟化することを抑制する。これはトナーが必要以上に溶融または軟化すると、中間転写ベルト21上のトナーを転写担持ベルト82上に静電転写させても、転写効率が低下してしまう問題を解決している。冷却手段88は、支持ローラ83,86により張架される部分の転写担持ベルト82の表面に接するかまたは近接するように設けられる。冷却手段88には、たとえば、空冷ファン、ペルチェ素子、冷却液などが使用できる。
【0154】
さらにトナー像中間担持手段81において、支持ローラ83と86とによって張架される部分の転写担持ベルト82のトナー像担持面82aに圧接するように定着液付与手段5が設けられる。
【0155】
トナー像中間担持手段81によれば、中間転写ベルト21から転写担持ベルト81に静電転写されたトナー像が、転写担持ベルト81の矢符87の方向への回転に伴って、まず加熱手段100上を通過して加熱され、さらに定着液付与手段5による定着液33の接触付与を受け、転写定着に適する程度に軟化および/または膨潤される。このトナー像は、さらに支持ローラ86と転写定着ローラ28との圧接部に搬送され、記録媒体9に転写定着される。
【0156】
画像形成装置80によれば、中間転写ベルト21上のトナー像が転写担持ベルト81に転写され、転写担持ベルト81上で加熱および定着液33の接触下での付与を受けて軟化および/または膨潤し、記録媒体9に転写定着される。
【0157】
画像形成装置80では、トナー像加熱手段である加熱手段100を含むトナー像中間担持手段81を設けることによって、加熱手段100から発する熱が感光体ドラム11y,11m,11c,11bに伝わり難くなるので、感光体ドラム11y,11m,11c,11bの温度上昇が抑制されて耐用期間の延長が可能になり、画像形成装置としての信頼性が増す。
【0158】
ここで図10の構成において、加熱手段100を非接触付与装置32に代えても、トナーの結合力を高める作用を同様に得ることができる。また、支持ローラ86を加熱支持ローラ24aに代えることで、実施の第3形態と同様の効果を得ることができる。
【0159】
前記の各実施形態の画像形成装置によれば、定着液33の消費量が低減化され、高品位な定着画像を安定的にかつ長期的に得ることができる。
【0160】
本発明の画像形成装置は、たとえば、複写機、プリンタ、ファクシミリなどとして使用できる。また、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能のうちの少なくとも2つの機能を有する複合機としても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】本発明の実施の第1形態である画像形成装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示す画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図4】非接触付与装置の要部の外観を示す斜視図である。
【図5】図4に示す非接触付与装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図6】非接触付与装置の要部の外観を示す斜視図である。
【図7】図6に示す非接触付与装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の第2形態である画像形成装置の要部の構成を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施の第3形態である画像形成装置の要部の構成を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明の実施の第4形態である画像形成装置の要部の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0162】
1,71,75,80 画像形成装置
2 トナー像形成手段
3,72,76 中間転写手段
4 定着液非接触付与手段
5 定着液付与手段
6 転写定着手段
7 記録媒体供給手段
8 排出手段
9 記録媒体
10y,10m,10c,10b 作像ユニット
11y,11m,11c,11b 感光体ドラム
12y,12m,12c,12b 帯電ローラ
13 光走査ユニット
13y,13m,13c,13b レーザ光
14y,14m,14c,14b 現像装置
15y,15m,15c,15b ドラムクリーナ
16y,16m,16c,16b トナー
17y,17m,17c,17b 現像ローラ
18y,18m,18c,18b 現像ブレード
19y,19m,19c,19b トナー貯留容器
20a,20b 攪拌ローラ
21 中間転写ベルト
21a,82a トナー像担持面
22y,22m,22c,22b 中間転写ローラ
23,24,25,83,86 支持ローラ
24a 加熱支持ローラ
26 ベルトクリーナ
26a クリーニングブレード
26b トナー貯留容器
28 転写定着ローラ
32,60 非接触付与装置
33 定着液
34 定着液貯留槽
35 供給管
36 定着液接触付与装置
37 定着液溜
38 定着液塗布ローラ
40 規制ローラ
42 除去ブレード
43 記録媒体カセット
44 ピックアップローラ
45a,45b レジストローラ
46 搬送ベルト
47 駆動ローラ
48 テンションローラ
49 排紙ローラ
50 排紙トレイ
51 インクジェットヘッド
52 ノズルアレイ
53 チャンバー
54 定着液カートリッジ
55 ピエゾ素子
56 電源
61 定着液収容槽
62 第1供給ローラ
63 第2供給ローラ
64 液量規制ブレード
65 金属メッシュ板
66 超音波振動子
67 電源
77,85 加熱ヒータ
74,78 温度センサ
81 トナー像中間担持手段
82 転写担持ベルト
88 冷却手段
100 加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および着色剤を含むトナーからなるトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段により形成されるトナー像を担持して回転するトナー像担持体と、トナー像担持体上のトナー像に、トナーを軟化および/または膨潤させる定着液を接触状態で付与する定着液付与手段と、定着液が付与されたトナー像を記録媒体に転写と同時に定着させる転写定着手段とを含む画像形成装置であって、
トナー像担持体の少なくともトナー像担持面は、定着液に対して撥液性を有し、かつ
定着液付与手段よりもトナー像担持体の回転方向の上流側に設けられ、トナー像担持体に担持されるトナー像にトナー同士の結合力を高める処理を施すトナー像前処理手段を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
トナー像前処理手段は、
トナー像担持体に担持されるトナー像に非接触下に定着液を付与する定着液非接触付与手段であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
定着液非接触付与手段によりトナー像に付与される定着液量は、画像形成領域におけるトナー像の全トナー量の10重量%以上、90重量%以下であることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項4】
トナー像前処理手段は、
トナー像担持体に担持されるトナー像を加熱する加熱手段であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
加熱手段は、トナー像を60℃以上、160℃以下に加熱することを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
加熱手段は、トナー像を60℃以上、120℃以下に加熱することを特徴とする請求項4または5記載の画像形成装置。
【請求項7】
加熱手段によりトナー像とともに加熱されるトナー像担持体を冷却する担持体冷却手段を含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項8】
トナー像担持体の定着液滴に対する接触角が50°以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項9】
転写定着手段は、
定着液が付与されたトナー像の記録媒体への転写および定着を加熱下に行うための転写時加熱手段を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項10】
転写時加熱手段は、定着液が付与されたトナー像を60℃以上に加熱することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
トナー像担持体に接するように設けられる、トナー像担持体からトナー像を転写されるトナー像転写担持体を含み、
トナー像転写担持体に担持されるトナー像に定着液付与手段により定着液を付与することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項12】
結着樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項13】
トナーの体積平均粒径が2μm以上、7μm以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−251708(P2006−251708A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71664(P2005−71664)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】