説明

画像形成装置

【課題】吸引した液体をタンクに循環させる経路を短く、簡素化、省スペース化を図る。
【解決手段】吐出ヘッドのノズルに供給する液体を貯蔵し、その内圧を調整可能なタンクと、前記タンクの内圧を所望の値に調整する内圧調整手段と、前記タンクと前記吐出ヘッドとを連通する液体供給経路と、前記吐出ヘッドのノズルが形成されたノズル面に対向するキャップと、前記キャップと前記タンクを連通可能な液体回収経路と、前記液体回収経路中に設けられ、前記吐出ヘッド内の液体を前記キャップを介して回収し、前記液体回収経路を介して前記タンクまで循環させる液体循環手段とを有し、前記液体循環手段が前記内圧調整手段を兼用したことを特徴とする画像形成装置を提供することにより前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に係り、特にインク等の液体を吐出ヘッドから被記録媒体に向けて吐出して画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置として、多数のノズルを配列させたインク吐出ヘッド(印字ヘッド)を有し、このインク吐出ヘッドと被記録媒体を相対的に移動させながら、インク吐出ヘッドのノズルから被記録媒体に向けてインクを液滴として吐出することにより、被記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)が知られている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置におけるインク吐出方法として、従来から様々な方法が知られている。例えば、圧電素子(圧電セラミック)の変形によって圧力室(インク室)の一部を構成する振動板を変形させて、圧力室の容積を変化させ、圧力室の容積増大時にインク供給路から圧力室内にインクを導入し、圧力室の容積減少時に圧力室内のインクをノズルから液滴として吐出する圧電方式や、インクを加熱して気泡を発生させ、この気泡が成長する際の膨張エネルギーでインクを吐出させるサーマルインクジェット方式などが知られている。
【0004】
インクジェット記録装置のようなインク吐出ヘッドを有する画像形成装置においては、インクを貯蔵するインクタンクからインク供給路を介してインク吐出ヘッドにインクを供給し、上記様々な吐出方法でインクを吐出しているが、ここで用いられるインクは、記録媒体上に吐出されると直ぐに乾燥し定着することが望ましい。
【0005】
一方、印字の指示があった場合に直ちに印字が実行されるようにインク吐出ヘッドのノズルには常にインクが満たされており、このノズル内のインクが乾燥するとノズルからのインク吐出が不安定になるため、非印字時においては、インク吐出ヘッドをキャップにより密閉して、ノズルのインクが乾燥しないようにしている。
【0006】
しかし、印字中においては、ノズルのインクは空気中にさらされるため、長時間吐出が行われないノズルのインクが乾燥し、インクの粘度が高く(増粘)なったり、ノズルが目詰まりしたり、ノズルのインクがなくなったりして吐出できなくなる虞がある。
【0007】
また、インク供給路内等に混入した気泡がインク吐出ヘッド内あるいはインク供給路に設置された異物除去用のフィルタ前に溜まり、この貯留した気泡によってインクの供給が遮断されることにより、ノズルからのインク吐出ができなくなる虞がある。
【0008】
そこで、従来から、これらの不吐出の原因となる増粘したインクや異物や気泡を含んだインクを除去してインク吐出ヘッドを回復するために、一定時間毎に、インク吐出ヘッドにキャップをあてて、ノズルからキャップに向けてインクを強制的に吐出するパージ(唾吐き)を行ったり、あるいはインク吐出ヘッドにキャップを当てて定期的にポンプでノズルからインクを吸引したりすることが行われている。
【0009】
また、このときパージあるいは吸引したインクをそのまま廃棄してしまっては、インクが無駄に消費されてしまうため、なるべく無駄となるインクを削減するするために、吸引したインクを再度インクタンク(サブタンク)に戻して再びインク吐出ヘッドに供給して再利用すようにインクを循環させることが行われている。
【0010】
例えば、ヘッドにキャップを密着させてポンプを回転してヘッド内のインクをキャップに吸出し、キャップに吸い出したインクを管路を通してサブタンク側に導き、フィルタを介してサブタンクに戻すようにして廃インクを循環し再利用するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開2003−266745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1等に記載された従来のインク循環経路を有するインクジェットプリンタにおいては、キャップに吸引したインクをサブタンクまで戻すためのインク循環経路がヘッドの外側を取り回されていたため、インク循環経路が長くその取り回しが大変でありそのための設置スペースを必要とし、さらにチューブ等で形成される循環経路を介して気泡がインク内に溶け込む虞が大きいという問題がある。
【0012】
また、従来は、インクを循環させるためのポンプとサブタンクの内圧を調整するためのポンプは兼用されておらず、別々に設置されており、装置構成も複雑で小型化するために問題となっていた。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、吸引した液体をサブタンクに循環させる循環系を簡素化して省スペース化を図った画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、液体を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドに対して被記録媒体を相対的に搬送して、前記吐出ヘッドから前記被記録媒体上に前記液体を吐出して画像を形成する画像形成装置であって、前記ノズルに供給する前記液体を貯蔵し、その内圧を調整可能なタンクと、前記タンクの内圧を所望の値に調整する内圧調整手段と、前記タンクと前記吐出ヘッドとを連通する液体供給経路と、前記吐出ヘッドのノズルが形成されたノズル面に対向するキャップと、前記キャップと前記タンクを連通可能な液体回収経路と、前記液体回収経路中に設けられ、前記吐出ヘッド内の液体を前記キャップを介して回収し、前記液体回収経路を介して前記タンクまで循環させる液体循環手段とを有し、前記液体循環手段が前記内圧調整手段を兼用したことを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0015】
これにより、液体循環手段と内圧調整手段を兼用化したため、液体の循環系を簡略化することができ、省スペース化及びコストダウンを図ることが可能となる。
【0016】
また、請求項2に示すように、前記液体回収経路は、前記キャップが前記吐出ヘッドのインク回収穴が設けられた面に密着することで前記キャップと前記タンクが連通するように、その一部が前記吐出ヘッドを貫通するように設けられたことを特徴とする。
【0017】
これにより、液体回収経路の少なくとも一部を吐出ヘッド内に配置するようにしたため、液体を循環させる経路が短くなるとともに、気体を透過しやすいチューブ長さを最小限にできるため気泡混入の虞を低減することができる。
【0018】
また、請求項3に示すように、前記ノズルと前記インク回収穴が略同一平面上にあることを特徴とする。
【0019】
このようにノズル面と同じ面に液体の回収用の開口があると、ノズル吸引のためのキャップのシールとインク回収用のシールを容易に構成できる。また、吸引によるノズルクリーニングも可能となるので信頼性が向上する。
【0020】
また、請求項4に示すように、前記キャップは、前記キャップが前記吐出ヘッドのノズル面に密着する際、前記ノズル面に設けられた前記液体回収経路の開口部に対応する前記キャップの部分に、前記キャップ内の液体を前記開口部近傍まで移動させる液体保持構造を有することを特徴とする。
【0021】
また、請求項5に示すように、前記液体保持構造は、多孔質部材あるいはリブ形状の部材によって形成されていることを特徴とする。
【0022】
これにより、わずかな力でキャップ内の液体を吸引できる様になるため、ポンプの小型化が可能になる。
【0023】
また、請求項6に示すように、前記液体保持構造は、フィルタの機能をも有するとともに、前記キャップ内に回収される液体の流れる方向の前記液体保持構造より上流側の前記キャップの底面に前記液体を排出するドレインを有することを特徴とする。
【0024】
また、請求項7に示すように、前記キャップは、前記キャップに回収される液体の受け入れ側と前記液体保持構造との間にフィルタを有し、さらに前記キャップ内に回収される液体の流れる方向の前記液体保持構造より上流側の前記キャップの底面に前記液体を排出するドレインを有することを特徴とする。
【0025】
このように、液体保持構造にフィルタの機能を持たせ、あるいはこれとは別途フィルタを設置するとともに、液体を排出するドレインを備えたことにより、循環させる液体中に異物が混入するのを防止するとともに、粘度が上昇した再利用不可の液体はドレインから排出することができる。
【0026】
また、請求項8に示すように、前記フィルタは前記ドレインが形成されている前記キャップの底面よりも高い位置に設置されていることを特徴とする。
【0027】
これにより、液体中に堆積した異物を排出し易くなる。
【0028】
また、請求項9に示すように、前記キャップに回収される液体の前記キャップの受け入れ側の底面は、前記ドレインが形成されている部分が最も低くなるように傾斜していることを特徴とする。
【0029】
これにより、キャップ内に吸引した液体の循環を円滑にすることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明に係る画像形成装置によれば、液体をキャップからタンクへ循環させる液体循環手段をタンクの内圧調整手段と兼用としたため、液体循環系の簡素化、省スペース化を達成し、その結果コストダウンを図ることが可能となる。また、液体を循環させて再利用するようにしたため、タンクレイアウトの自由度を向上させることが可能となる。
【0031】
また、液体回収経路を、吐出ヘッドのノズル面を貫通して吐出ヘッド内に設けるようにした場合には、液体回収経路を従来のように大きく引き回す必要がなく、液体回収経路を短縮できるとともに、インクの粘度や表面張力等のインクの性能への影響を極力少なくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る画像形成装置について詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一実施形態の概略を示す全体構成図である。
【0034】
図1に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド(インクジェット記録ヘッド)12K、12C、12M、12Yを有する印字部と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26とを備えている。
【0035】
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0036】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
【0037】
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0038】
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0039】
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0040】
ベルト33は、記録紙16幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示省略)が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
【0041】
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
【0042】
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0043】
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0044】
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0045】
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yは、図2に示すように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
【0046】
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
【0047】
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0048】
なお、ここで主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、用紙の幅方向(記録紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字をするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
【0049】
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
【0050】
また本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
【0051】
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0052】
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
【0053】
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
【0054】
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
【0055】
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
【0056】
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
【0057】
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0058】
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
【0059】
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
【0060】
次に、印字ヘッド(液滴吐出ヘッド)について説明する。インク色毎に設けられている各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを表すものとし、図3に印字ヘッド50の平面透視図を示す。
【0061】
図3に示すように、本実施形態の印字ヘッド50は、インクを液滴として吐出するノズル51、インクを吐出する際インクに圧力を付与する圧力室52、図示しない共通流路から圧力室52にインクを供給するインク供給口53を含んで構成される圧力室ユニット54が千鳥状の2次元マトリクス状に配列され、ノズル51の高密度化が図られている。
【0062】
図3に示すように、各圧力室52は、上方から見ると略正方形状をしており、その対角線の一方の端にノズル51が形成され、他方の端にインク供給口53が設けられている。
【0063】
また、図3中の4−4線に沿った断面図を図4に示す。
【0064】
図4に示すように、圧力室ユニット54は、インクを吐出するノズル51と連通する圧力室52によって形成され、圧力室52には、供給口53を介してインクを供給する共通流路55が連通するとともに、圧力室52の一面(図では天面)は振動板56で構成され、その上部には、振動板56に圧力を付与して振動板56を変形させる圧電素子58が接合され、圧電素子58の上面には個別電極57が形成されている。また、振動板56は共通電極を兼ねている。
【0065】
圧電素子58は、共通電極(振動板56)と個別電極57によって挟まれており、これら2つの電極56、57に駆動電圧を印加することによって変形する。圧電素子58の変形によって振動板56が押され、圧力室52の容積が縮小されてノズル51からインクが吐出されるようになっている。2つの電極56、57間への電圧印加が解除されると圧電素子58がもとに戻り、圧力室52の容積が元の大きさに回復し、共通流路55から供給口53を通って新しいインクが圧力室52に供給されるようになっている。
【0066】
また、図5は他の印字ヘッドの構造例を示す平面透視図である。図5に示すように、複数の短尺ヘッド50’を2次元の千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、これらの複数の短尺ヘッド50’全体で印字媒体の全幅に対応する長さとなるようにして1つの長尺のフルラインヘッドを構成するようにしてもよい。
【0067】
図6はインクジェット記録装置10におけるインク供給系(及びインク循環系)の構成を示した概要図である。インクタンク60は、印字ヘッド50にインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示省略)からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を替える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。なお、図6のインクタンク60は、前述した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
【0068】
図6に示すように、インクタンク60と印字ヘッド50を繋ぐ管路(インク供給経路)90の中間には、印字ヘッド50に供給するインクを一旦溜めておくサブタンク61が設けられている。サブタンク61と印字ヘッド50は、管路(インク供給経路)90によって連通している。サブタンク61は、印字ヘッド50の内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有している。
【0069】
なお、サブタンク61は図6に示すような態様に限定されず、サブタンク61を印字ヘッド50と一体化して設けるようにしてもよい。
【0070】
サブタンク61に貯留されたインクはインク供給経路である管路90より印字ヘッド50に供給され、共通流路55、供給口53等を介して圧力室52(図4参照)へ送られ、印字ヘッド50に形成されたノズル51から吐出される。なお、図6においては、表示を簡単にするために、共通流路55、供給口53、圧力室52については単に一つの四角で表現している。
【0071】
インクジェット記録装置10には、ノズルの乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64が設けられている。また、図示は省略するが印字ヘッド50のノズル面の清掃手段としてクリーニングブレードが設けられている。
【0072】
また、印字ヘッド50のインク吐出側面50Aは、段差を有するように2つの面で構成され、一方の面はノズル51が形成されるノズル面50A1であり、他方の面はインク回収穴95が形成されるインク回収穴面50A2(非ノズル領域)となっている。インク回収穴面50A2側には、キャップ64に吐き出されたインクを回収しサブタンク61に戻すためのインク回収経路94が印字ヘッド50を貫通して設けられており、その一端がインク回収穴面50A2にインク回収穴95として開口している。
【0073】
印字ヘッド50(インク回収穴面50A2)に貫通して設けられたインク回収経路94の他端には印字ヘッド50とサブタンク61とを連通し、印字ヘッド50からサブタンク61にインクを戻すインク回収経路としての管路96が接続しており、この管路96の中間にはポンプ62が設けられている。
【0074】
このポンプ62は、後述するように、キャップ64を印字ヘッド50に密着させて印字ヘッド50からキャップ64にインクを吸引し、さらに吸引したインクをインク回収経路を通じてサブタンク61に戻すようにインクを循環させる液体循環手段としての役割と、サブタンク61の内圧を調整する内圧調整手段の役割を兼ねている。
【0075】
キャップ64及びクリーニングブレード(図示省略)を含むメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動されるようになっている。キャップ64は、図示しない昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。昇降機構は、電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50A1をキャップ64で覆うようになっている。
【0076】
クリーニングブレード(図示省略)は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したブレード移動機構により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル面50A1)に摺動可能である。ノズル面50A1にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレードをノズル面50A1に摺動させることでノズル面50A1を拭き取り、ノズル面50A1を清浄するようになっている。
【0077】
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、そのノズル51近傍のインク粘度が上昇した場合には、粘度が上昇して劣化したインクを排出すべく、圧電素子58を駆動して、キャップ64に向かってインクを強制的に吐出するパージ(なお、パージは、「予備吐出」、「空吐出」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。)が行われる。
【0078】
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内のインク)に気泡が混入した場合、印字ヘッド50にキャップ64を当て、ポンプ62を駆動して印字ヘッド50内のインク(気泡が混入したインク)をキャップ64側に吸引して除去する。このポンプ62による吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時(ファーストローディング時)、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われ、粘度が上昇して固化した劣化インクがキャップ64側に吸い出される。
【0079】
印字ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ(圧電素子58)が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(圧電素子58の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、上述したように圧電素子58を動作させ粘度が上昇したノズル近傍のインクをキャップ64に向かって吐出させるパージが行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード等のワイパーによってノズル面50A1の汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにもパージを行うようにしてもよい。
【0080】
ノズル51や圧力室52(図4参照)内に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりして、パージではインクを吐出できないような場合には、キャップ64を印字ヘッド50に密着させてポンプ62を駆動して吸引動作が行われる。
【0081】
パージや吸引によってキャップ64に回収されたインクは、キャップ64を印字ヘッド50に密着させた状態で、ポンプ62によりインク回収穴95からインク回収経路94に吸い上げられ管路96を介してサブタンク61に戻される。このようにポンプ62によってインクが循環されるようになっている。
【0082】
また、キャップ64には、印字ヘッド50のノズル面50A1とインク回収穴面50A2とで構成されるインク吐出側面50Aの段差に対応した段差が形成され、それぞれノズル面50A1に対応する、印字ヘッド50(ノズル51)から吸い出されたインクを受ける部分(開口部64a)と、インク回収穴面50A2に対応する部分とになっている。そしてこれら2つの部分の間には、異物や気泡等を除去するためのフィルタ92が設けられている。このフィルタ92は特に限定されるものではないが、メッシュフィルタでメッシュサイズは印字ヘッド50のノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0083】
キャップ64に吸い出されたインクは、気泡や異物を含むインクであることが多いため、フィルタ92を通すことにより、再度使用可能なインクのみをサブタンク61に循環させることができる。
【0084】
また、キャップ64には、このフィルタ92を通過したインクをインク回収穴95近傍まで導いてインクを回収し易くするために、キャップ64を印字ヘッド50に密着させたときに、フィルタ92とインク回収穴95の間に位置するようにインク保持構造93が設けられている。
【0085】
インク保持構造93は、特に限定されるものではなく、例えば、毛細管構造により自然にインクがインク回収穴95の近くまで吸い上げられるようになっていればよい。インク保持構造93としては、例えば、多孔質部材や、フィルタ92の後側のキャップ64底面から上方にインク回収穴95の近くまで伸びるようなリブ状に形成した部材で毛細管構造を形成してもよい。
【0086】
インク保持構造93を介してインク回収穴95の近くまで吸い上げられたインクは、ポンプ62によってインク回収経路94から管路96を介してサブタンク61に戻され、サブタンク61から再度印字ヘッド50に供給される。このようにインクを循環させることによって、無駄インクを削減することができる。
【0087】
また、キャップ64のインク回収穴面50A2に接触する部分には気密性を確保するため、ゴムパッキン等のシール部材102が配設されている。
【0088】
サブタンク61には、大気開放口98と大気開放弁B1が設けられている。さらに、印字ヘッド50とポンプ62との間の管路96にも大気開放口99と大気開放弁B2が設けられている。また、ポンプ62はサブタンク61の内圧を調整する働きをも有している。内圧を測定する圧力計97をサブタンク61内に設けるとより確度の高い圧力コントロールができる。圧力計以外の方法として、サブタンクの一部を可撓性部材で構成し、その変位をセンシングする方法でも良い。
【0089】
なお、キャップ64に回収されたインクのうち増粘が進んだインクや異物等は循環させるわけにはいかないので、これらを排出するためのドレイン口100がキャップ64の底部に設けられている。キャップ64の底部は、フィルタ92側及びノズル51から吸い出されたインクを受け入れる開口部64a側からそれぞれ傾斜の付いた面110、108で形成され、各傾斜面110及び108はフィルタ92に近い側で交わり、その最も低い部分にドレイン口100が形成されている。そのため、インクは自重で自然にドレイン口100に向かって流れるようになっている。また、ドレイン口100にはインク排出経路101が接続されており、インク排出経路101にはドレイン弁B3が設けられている。
【0090】
インク排出経路101の先には廃インクタンク68が配置されており、ドレイン弁B3を開くことにより、ドレイン口100から廃棄されるインクがインク排出経路101を通って廃インクタンク68に排出されるようになっている。
【0091】
図7は、キャップ64を拡大して示す斜視図である。
【0092】
図7に示すように、キャップ64の上部は、印字ヘッド50のノズル面50Aに合わせた長方形をしており、その周囲には気密性を確保するためのゴムパッキン102が付設されている。キャップ64の上部において、ノズル面50Aのノズル51が形成されているノズル領域50A1に対応する部分はノズル51から吐き出されたインクを取り込むための開口部(液体受け入れ側)64aとなっており、ノズル面50Aの非ノズル領域50A2に対応する部分には板材104が配置され、この板材104の下には前述したインク回収用のインク保持構造93が配置されている。さらに、板材104の真中にはノズル面50Aに設けられたインク回収穴95に対応した穴106が設けられている。
【0093】
キャップ64を印字ヘッド50に密着させたときに、この穴106と印字ヘッド50のノズル面50Aのインク回収穴95は一致して、インク保持構造93によって、上部まで引き上げられたインクは、この穴106とインク回収穴95を介してインク回収経路96に流れるようになっている。
【0094】
インクを取り込むための開口部64aの下部底面はインク保持構造93が配置されている側に向かって次第に下がって行く傾斜面108となっている。一方フィルタ92が配置されている直前の部分も傾斜面110となっており、両傾斜面108及び110が交わる最も低い部分にドレイン口100が設けられている。ドレイン口100にはインク排出経路101が繋がっている。
【0095】
また、インクを取り込むための開口部64aとインク保持構造93との間には仕切り板112が設けられており、この仕切り板112の下方にフィルタ92が設けられている。フィルタ92の形状は特に限定はされないが、図7に示したものは略長方形状をしており、その下辺は前述したドレイン口100の設置位置よりも距離dだけ上に位置するように設置されている。
【0096】
このようにフィルタ92下辺とドレイン口100設置位置との間に少し距離dをあけたのは、堆積した異物を循環させないためである。従って、堆積した異物を機外に出しやすくするために、ドレイン口100の付近の形状は、ドレイン口100設置位置が最も低くなるようにその周囲の面は傾斜を有するように、例えばロート状に形成されていることが好ましい。
【0097】
このようなキャップ64を印字ヘッド50に密着させてインクを循環させる場合には、図7に矢印で示すように、ノズル51から吐き出されたインクは、開口部64aから取り込まれ、傾斜面108に沿って下方へ流れていき、フィルタ92を通り、インク保持構造93の中を毛細管現象により上方へと上がって行き、穴106から印字ヘッド50のインク回収穴95へと回収される。
【0098】
図8はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0099】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなどの磁気媒体を用いてもよい。
【0100】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒーター89を制御する制御信号を生成する。
【0101】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒーター89を駆動するドライバである。
【0102】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0103】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図8において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0104】
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド50の圧電素子58を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0105】
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサー(図示省略)を含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供するものである。
【0106】
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行うようになっている。
【0107】
以下、本実施形態の作用について説明する。
【0108】
まず最初に、インクを循環させてノズルのクリーニングやヘッド内の気泡を除去するインク循環モードについて図9のフローチャートに沿って説明する。
【0109】
まず、図9のステップS100において、印字ヘッド50のインク吐出側面50Aのインク回収穴面50A2にキャップ64の対応する部分を密着させる。このとき、ノズル面50A1にはキャップ64の対応する部分は密着していない。
【0110】
次に、ステップS110において、大気開放弁B1を閉じ、大気開放弁B2を開く。次に、ステップS120において、図6に矢印F1で示す方向にポンプ62を右回転する。このときポンプ62を回転する時間はタイマーで設定しておく。このポンプ62の駆動によりサブタンク61内が加圧され、これによって印字ヘッド50の圧力室52内のインクが押されて、ノズル51からキャップ64の開口部64a(図7をも参照)へインクが吐出されキャップ64に溜まる。
【0111】
次に、ステップS130において、大気開放弁B1を開き、大気開放弁B2を閉じる。そしてステップS140において、ポンプ62を図6に矢印F1で示す方向に、タイマーで設定された時間分だけ回転する。このとき上でキャップ64の開口部64aに押し出されたインクは傾斜面108を下ってフィルタ92を通りインク保持構造93による毛細管現象によりインク回収穴95近傍まで引き上げられている。そして、このポンプ62の回転によりインクは印字ヘッド50のインク回収穴面50A2に設けられたインク回収穴95から吸引され、インク回収経路94を介して、管路96を通じてサブタンク61へと戻される。
【0112】
最後にステップS150において、大気開放弁B1及びB2を共に閉じて、内圧調整モードへと移って行く。なお、インク循環モードにおけるインクの流れを図6中に実線の矢印(1)及び(2)で示す。このようにしてインクの循環が行われる。
【0113】
また、再利用不能な増粘インクあるいは堆積した異物や気泡等を含んだインクがキャップ64の最底部110(図7参照)に、ある程度たまったら適宜インク排出経路101に設けられたドレイン弁B3を開いて、このインクをドレイン口100から廃インクタンク68に排出するようにする。
【0114】
次に、サブタンク61の内圧調整時(内圧調整モード)の作用について図10のフローチャートに沿って説明する。
【0115】
まず図10のステップS200において、印字ヘッド50のインク回収穴面50A2に対応するキャップ64の部分を密着させる。このとき、ノズル面50A1にはキャップ64の対応する部分は密着していない。
【0116】
次に、ステップS210において、大気開放弁B1を短時間開いてサブタンク61内を大気圧に戻した後閉じる。これは、サブタンク61の内圧が下がりすぎていた場合に、これを元に戻すためである。
【0117】
次にステップS220において大気開放弁B2を開き、ステップS230においてポンプ62を図6に矢印F2で示す方向に回転(左回転)する。このポンプ62を回転駆動する時間は、上と同様に予めタイマーで設定しておく。これにより、サブタンク61内部の空気が、大気開放弁B2を通って外部に排出される。これにより、サブタンク61の内圧が下がる。わずかながら、管内の残留インクが大気開放口99から外部に出る可能性があるため大気開放口99出口にインク吸収部材を置く。なお、内圧調整モードにおける空気の流れを図6中に破線の矢印(3)で示す。これにより、サブタンク61の内圧が所定値に調整される。
【0118】
次に、ファーストローディング時の作用について図11のフローチャートに沿って説明する。
【0119】
このときは、まだサブタンク61内にはインクが存在しない。まず図11のステップS300において、印字ヘッド50のインク回収穴面50A2に対応するキャップ64の部分を密着させる。このとき、ノズル面50A1にはキャップ64の対応する部分は密着していない。
【0120】
次に、ステップS310において、大気開放弁B1は閉じ、大気開放弁B2を開く。そしてステップS320において、ポンプ62を図6に矢印F2で示す方向に回転する(左回転)。これにより、サブタンク61内の空気が大気開放口99から外へ排出され、サブタンク61内の圧力が下がり、インクタンク60内のインクに作用する大気圧の方が相対的に大きくなり、インクタンク60内のインクがインク供給経路90を通じてサブタンク61内に導かれる。
【0121】
ポンプ62を回転駆動する時間は、予めタイマに設定され、所定時間が経過したところでポンプ62の回転が停止する。その後、例えば前述したインク循環モードへと移って行く。ここで、ポンプの回転時間にタイマを用いているが、サブタンクにインクの有無を検出するセンサを設け、センサの出力によりポンプを制御する方法でも良い。
【0122】
最後に、フィルタ洗浄モードについて、図6あるいは図13を参照しながら、図12のフローチャートに沿って説明する。
【0123】
フィルタ洗浄モードは、長期間使用していると、キャップ64内のフィルタ92が目詰まりを起こす場合があるからであり、定期的にフィルタ92を洗浄してフィルタ92の目詰まりを解消するためのものである。
【0124】
図13に、フィルタ洗浄モード時のインク供給系の動作及びインクの流れを示す。
【0125】
このとき、まず図12のステップS400において、大気開放弁B1及びB2を閉じ、次にステップS410において、印字ヘッド50のインク回収穴面50A2に対応するキャップ64の部分を密着させる。このとき、ノズル面50A1にはキャップ64の対応する部分は密着していない。
【0126】
次に、ステップS420において、ドレイン弁B3を開いて、ステップS430において、図13に矢印F2で示すようにポンプ62を回転(左回転)する。このポンプ62を回転駆動する時間は上と同様にタイマーで予め設定しておく。
【0127】
図13において、ポンプ62を左回転することにより、インクタンク60のインクはインク供給経路90を介してサブタンク61へ供給される。そのままポンプ62の回転を続けると、サブタンク61を溢れたインクが、インク回収経路である管路96からポンプ62を通り、印字ヘッド50内のインク回収経路94及びキャップ64内のインク保持構造93を経てフィルタ92に到達する。
【0128】
インク循環時には、キャップ64の開口部64a側からインク保持構造93側へ(図13で右から左へ)インクがフィルタ92を通過していたが、今の場合には、それとは反対に、図13において左から右へインクがフィルタ92を通過する。
【0129】
このように、通常のフィルタ使用時とは逆に、フィルタ92の裏側からインクを流すことで、フィルタ92のドレイン側(キャップ64の開口部64a側、図13の右側)に付着したゴミ等がフィルタ92から分離し、フィルタ92の目詰まりが解消される。分離されたゴミ等は、ドレイン弁B3を開けることで、ドレイン口100からインク排出経路101を介して廃インクタンク68に排出される。フィルタ洗浄モードにおけるインクの流れを図6中の破線の矢印(4)で、あるいは図13中の破線の矢印で示す。
【0130】
ポンプ62の回転時間は、予めタイマに設定しておくことによって管理される。これにより所定時間経過後に、ポンプ62の回転が停止する。その後、ステップS440において、ドレイン弁B3を閉じて、キャップ64を印字ヘッド50から離して、例えば、インク循環モードや内圧調整モード等へ移行する。
【0131】
以上説明したように、本実施形態によれば、インクをキャップからサブタンクへ循環させるインク回収経路を、印字ヘッド(のインク回収穴面)を貫通して設けるようにしたため、インク回収経路を従来のように大きく引き回す必要がなく、インク回収経路を短縮でき、さらにインク回収用のポンプをサブタンクの内圧調整用のポンプと兼用としたため、インク循環系の簡素化、省スペース化を達成し、その結果コストダウンを図ることができる。
【0132】
また、インク回収経路(インク循環経路)を短かくするとともに、インク回収経路が印字ヘッド(インク回収穴面)を貫通するように埋め込んで形成したため、インクを空気にさらすことなくサブタンクに戻すことができ、またインクの粘度や表面張力等のインクの性能への影響を極力少なくすることができる。
【0133】
また、上記実施形態においては、フィルタとインク保持構造を別々に設置しているが、インク保持構造にフィルタとしての機能を持たせるように構成してもよい。
【0134】
また、印字ヘッド50のノズル面50Aに形成されたインク回収穴95は、ヘッド組み立て時の位置決め用の穴として用いるようにしてもよい。
【0135】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0136】
図14は、本変形例のインク供給−循環系の構成を示す概要図である。
【0137】
図14に示す構成は、基本的に前述した図6に示す構成と同様であり、異なる点は、印字ヘッド50のインク吐出側面50Aが段差を有しない一つの平面として構成され、ノズル51とインク回収穴95が略同一平面上に形成されていることである。また、このときキャップ64全体が印字ヘッド50のインク吐出側面50Aに密着するため、キャップ64を印字ヘッド50から離間させる際、キャップ64内を大気開放して離間させ易くするための大気開放弁B4が設置されている。
【0138】
この変形例においては、図14に示すように、ノズル51とインク回収穴95を同一面(段差の無いインク吐出側面50A)に設置すると、ノズル面50A1とインク回収面50A2をキャップ64で密着できる様になる。これにより、インク吸引する際のシールが、インク回収用の物と兼用することができる。また、インクの吸引によるクリーニングが可能となる。これにより信頼性が向上する。また、インク回収穴95の近傍をワイピングすることも可能となる。
【0139】
以下、図15のフローチャートに沿って、図14に示す構成におけるインク循環モードの作用を説明する。
【0140】
まず図15のステップS500において、印字ヘッド50にキャップ64を密着させる。本実施例においては、ノズル51とインク回収穴95を同一面(段差の無いインク吐出側面50A)に設置しているため、キャップ64もインク吐出面50Aと接する部分がこれに合わせて段差の無い形状となっているため、このときインク回収面50A2のみならずノズル面50A1にも密着する。
【0141】
次にステップS510において、大気開放弁B1及びB2を共に閉じ、次のステップS520において、ポンプ62を図の矢印F1方向に回転して、サブタンク61のインクをキャップ64側へ移動させる。次にステップS530において、所定時間経過後、ポンプ62を停止する。
【0142】
次にステップS540において、大気開放弁B4を開き、ステップS550においてポンプ62を同じく矢印F1方向に回転し、キャップ64に溜まったインクをインク回収経路を通じてサブタンク61側に戻す。
【0143】
次にステップS560において、所定時間経過後、ポンプ62を閉じ、ステップS570において大気開放弁B1を閉じて処理を終了する。以後は、例えば内圧調整モード等へ移行する。
【0144】
以上、本発明の画像形成装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一実施形態の概略を示す全体構成図である。
【図2】図1に示したインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図である。
【図3】印字ヘッドの構造例を示す平面透視図である。
【図4】圧力室の構造例を示す、図3中の4−4線に沿った断面図である。
【図5】印字ヘッドの他の例を示す平面図である。
【図6】インクジェット記録装置のインク供給系(及びインク循環系)の構成を示した概略図である。
【図7】本実施形態のキャップを拡大して示す斜視図である。
【図8】インクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図である。
【図9】インクジェット記録装置のインク供給系のフィルタ洗浄モードにおける作用を示すフローチャートである。
【図10】同じく内圧調整モードにおける作用を示すフローチャートである。
【図11】同じくファーストローディング時における作用を示すフローチャートである。
【図12】同じくフィルタ洗浄モードにおける作用を示すフローチャートである。
【図13】フィルタ洗浄モード時のインク供給系の動作及びインクの流れを示す概略図である。
【図14】本実施形態の変形例のインク供給系(及びインク循環系)の構成を示した概略図である。
【図15】図14に示すインク供給系におけるインク循環モード時の作用を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0146】
10…インクジェット記録装置、12…印字部、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、18…給紙部、20…デカール処理部、22…吸着ベルト搬送部、24…印字検出部、26…排紙部、28…カッター、30…加熱ドラム、31、32…ローラー、33…ベルト、34…吸着チャンバー、35…ファン、36…ベルト清掃部、40…加熱ファン、42…後乾燥部、44…加熱・加圧部、45…加圧ローラー、48…カッター、50…印字ヘッド、50A…ノズル面、51…ノズル、52…圧力室、53…インク供給口、54…圧力室ユニット、55…共通流路、56…振動板(共通電極)、57…個別電極、58…圧電素子、60…インクタンク、62…ポンプ、64…キャップ、66…ブレード、67…吸引ポンプ、68…廃インクタンク、70…通信インターフェース、72…システムコントローラ、74…画像メモリ、76…モータドライバ、78…ヒータドライバ、80…プリント制御部、82…画像バッファメモリ、84…ヘッドドライバ、86…ホストコンピュータ、88…モータ、89…ヒータ、90…インク供給経路、92…フィルタ、93…インク保持構造、94、194、102…インク回収経路、95…インク回収穴、96…管路(インク回収経路)、97…圧力計、98、99…大気開放口、100…ドレイン口、101…インク排出経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドに対して被記録媒体を相対的に搬送して、前記吐出ヘッドから前記被記録媒体上に前記液体を吐出して画像を形成する画像形成装置であって、
前記ノズルに供給する前記液体を貯蔵し、その内圧を調整可能なタンクと、
前記タンクの内圧を所望の値に調整する内圧調整手段と、
前記タンクと前記吐出ヘッドとを連通する液体供給経路と、
前記吐出ヘッドのノズルが形成されたノズル面に対向するキャップと、
前記キャップと前記タンクを連通可能な液体回収経路と、
前記液体回収経路中に設けられ、前記吐出ヘッド内の液体を前記キャップを介して回収し、前記液体回収経路を介して前記タンクまで循環させる液体循環手段とを有し、
前記液体循環手段が前記内圧調整手段を兼用したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記液体回収経路は、前記キャップが前記吐出ヘッドのインク回収穴が設けられた面に密着することで前記キャップと前記タンクが連通するように、その一部が前記吐出ヘッドを貫通するように設けられたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ノズルと前記インク回収穴が略同一平面上にあることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記キャップは、前記キャップが前記吐出ヘッドのノズル面に密着する際、前記ノズル面に設けられた前記液体回収経路の開口部に対応する前記キャップの部分に、前記キャップ内の液体を前記開口部近傍まで移動させる液体保持構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記液体保持構造は、多孔質部材あるいはリブ形状の部材によって形成されていることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記液体保持構造は、フィルタの機能をも有するとともに、前記キャップ内に回収される液体の流れる方向の前記液体保持構造より上流側の前記キャップの底面に前記液体を排出するドレインを有することを特徴とする請求項4または5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記キャップは、前記キャップに回収される液体の受け入れ側と前記液体保持構造との間にフィルタを有し、さらに前記キャップ内に回収される液体の流れる方向の前記液体保持構造より上流側の前記キャップの底面に前記液体を排出するドレインを有することを特徴とする請求項4または5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記フィルタは前記ドレインが形成されている前記キャップの底面よりも高い位置に設置されていることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記キャップに回収される液体の前記キャップの受け入れ側の底面は、前記ドレインが形成されている部分が最も低くなるように傾斜していることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−95766(P2006−95766A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282645(P2004−282645)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
2.USB
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】