説明

画像形成装置

【課題】 粉体塗布機構により、発泡樹脂材からなる1次転写ローラ表面へ粉体を塗布する場合、塗布粉体を消費し終わった時に粉体の再充填や塗布機構の交換の必要がない画像形成装置を提供する。
【解決手段】 複数の像担持体101〜104上でそれぞれの色のトナー像を形成し、表面が発泡樹脂材からなる1次転写ローラ601〜604に電圧を印加して中間転写体501に電位を発生させ、中間転写体と中間転写体に当接している像担持体の間に電位差を作ることで、複数の像担持体上のトナー像を中間転写体上へ順次転写させトナー像を重ねた後、転写材にトナー像を一括して2次転写する画像形成装置において、機内に有するトナーを、1次転写ローラへ塗布するトナー塗布機構701〜704を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の像担持体を有し、複数の像担持体上のトナー像を中間転写体上へ順次転写させた重ねトナー像を転写材に一括して2次転写する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中間転写ベルトなどの中間転写体を有するカラー画像形成装置では、像担持体(感光体)と対向している中間転写体の裏面に配置された、発泡樹脂材からなる1次転写ローラにトナーと逆極性の電圧を印加することにより、像担持体上のトナー像を中間転写体上へ転写した後、同様にして各色のトナー像を重ねて2次転写部で転写材である紙などに一括転写するよう構成されている。
発泡樹脂材を表面にもつ1次転写ローラは、低コストで製造できることから広く用いられているが、その表面に微細な凹凸が形成されているため、発泡樹脂材表面のムラによって転写ムラが発生してしまうという問題がある。
また、1次転写ローラ表面の凹部には、異物、たとえば現像剤や紙粉等の微細粉体を始めとしたホコリやゴミ類等が入り込み、付着したままになってしまう。ここで異物が1次転写ローラ表面の発泡樹脂材凹部に付着してしまうと、像担持体上のトナー像を中間転写ベルト上へ転写するために1次転写ローラに電圧が印加される時、印加電圧により1次転写部に流れる電流が上述の異物に集中してしまい、異物付着部で放電が発生してしまうことにより、トナー像に乱れが生じ、チリ・抜けといった画像不良が発生してしまうという問題がある。
そこで、例えば特許文献1記載の技術では、転写ローラに当接するように粉体塗布ローラを設け、粉体塗布ローラを用いて転写ローラ部材と同じ特性の材料を粉末化したものを転写ローラ表面に塗布し、転写ローラ表面のムラを無くし転写ムラを防止している。
また、例えば特許文献2記載の技術では、1次転写ローラ表面の発泡樹脂凹部に潤滑性粉体を充填し、現像剤や紙粉を始めとする異物が1次転写ローラ表面の発泡樹脂凹部に入り込むのを防止している。
【特許文献1】特開平07−191525号公報
【特許文献2】特開2004−101755公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特開平07−191525号公報記載の技術の場合、塗布する粉体を消費してしまった時、粉体の再充填または粉体塗布機構を交換する必要が生じコストアップとなってしまうだけでなく、環境の面でも好ましくない。
また、特開2004−101755公報記載の技術の場合、画像形成装置が稼働を続けることで、振動・負荷などにより凹部に充填している粉体が徐々に落ちてしまい、凹部に異物が付着・入り込むようになってしまう。画像形成装置の稼働初期は1次転写ローラに異物が付着することを押さえることができるが、経時で異物の付着を押さえることができなくなってしまうため、1次転写ローラを交換する必要が生じコストアップとなってしまう。
本発明は、粉体塗布機構により、発泡樹脂材からなる1次転写ローラ表面へ粉体を塗布する場合、塗布粉体を消費し終わった時に粉体の再充填や塗布機構の交換の必要がない画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、複数の像担持体上でそれぞれの色のトナー像を形成し、表面が発泡樹脂材からなる1次転写ローラに電圧を印加して中間転写体に電位を発生させ、中間転写体と中間転写体に当接している像担持体との間に電位差を作ることで、複数の像担持体上のトナー像を中間転写体上へ順次転写させることにより形成した重ねトナー像を転写材に一括して2次転写する画像形成装置において、トナーを1次転写ローラへ塗布するトナー塗布機構を有することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1において、前記トナー塗布機構は、塗布ブラシを備えていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記トナー塗布機構から1次転写ローラへ塗布されるトナーの粒径は、1次転写ローラ表面の凹部よりも小さいことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1、2又は3において、前記トナー塗布機構により前記1次転写ローラ表面に塗布されたトナーを回収するクリーニング機構を備えていることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか一項において、前記像担持体上から前記中間転写体上へトナー像を転写する時間のみ、前記1次転写ローラ表面にトナーを塗布するようトナー塗布機構を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか一項において、前記トナー塗布機構により前記1次転写ローラ表面に塗布されるトナーの付着力が上がるよう、前記トナー塗布機構を振動させる振動装置を備えていることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れか一項において、前記トナー塗布機構は、画像形成時に回収されたトナーを前記1次転写ローラへ塗布する回収トナー塗布機構であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、それぞれの1次転写ローラにトナー塗布機構を配置して、1次転写ローラの発泡樹脂材表面に機内に存在するトナーを塗布するので塗布粉体にかかるコストを低減することができ、また塗布粉体を充填する必要が無いのでメンテナンスを省略することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成図である。複数の像担持体上でそれぞれの色のトナー像を形成し、表面が発泡樹脂材からなる1次転写ローラに電圧を印加して中間転写体に電位を発生させ、中間転写体と中間転写体に当接している像担持体の間に電位差を作ることで、複数の像担持体上のトナー像を中間転写体上へ順次転写させトナー像を重ねた後、転写材にこの重ねトナー像を一括して2次転写する作像部1が示されている。
図2は図1に示す作像部の詳細構成図である。本発明に関係ある部分のみその構成と動作を併せて説明する。図2において、まず1色目の像担持体101上に形成されたトナー像を、1次転写ローラ601で中間転写ベルト501の裏面にトナーと逆極性の1次転写バイアスを印加して中間転写ベルト501上に転写し、2色目以降の像担持体102〜104上のトナー像についても同様に中間転写ベルト501上に重ねて転写する。
中間転写ベルト501を2次転写ローラ600と対向ローラ502で挟んだ2次転写部で、2次転写ローラ600から転写材である紙に2次転写電圧を印加して、紙上に重ね合わせトナー像(カラートナー像)が転写される。それぞれの1次転写ローラ601〜604には回収トナー塗布機構701〜704が配置されている。また像担持体101〜104、中間転写ベルト501、中間転写ベルト501裏面に接している1次転写ローラ601〜604の部分で1次転写部を形成している。
上記各構成要素は、図示しない制御手段(CPU)によって制御される。
【0007】
図3乃至図6は本発明の第1乃至第4の実施例に係る画像形成装置の要部構成図である。1次転写ローラ601〜604は、図3乃至図6に示すように金属軸6001の周りにウレタンなどのやわらかい発泡樹脂材6002をローラ状に接着して加工しており、1次転写部では中間転写ベルト501と発泡樹脂材6002が接触するように構成されており、1次転写ニップを十分に確保できるようになっている。
像担持体101〜104上に夫々形成されたトナー像は、1次転写部で1次転写ローラ601〜604に印加される電圧により、像担持体101〜104から中間転写ベルト501上へと移動される。図3乃至図6の構成については後述する。
図7は1次転写ローラの表面の一部を表した模式図である。転写ローラの表面は微細な凹部6006をもっている。発泡樹脂材6002は表面が凹凸を持っているため微小な異物が付着しやすく、また一度付着すると凹部6006に入り込むため異物は取れにくい。
図8乃至図10は図3のA部を拡大して表した模式図である。画像形成装置が画像形成動作を繰り返すうちに、画像形成装置内外から1次転写ローラ601〜604表面(特に凹部6006内)へ異物6003が付着してしまう。1次転写ローラ601〜604の発泡樹脂材6002の抵抗よりも低抵抗である異物6003が1次転写ローラ601〜604表面に付着したとすると、画像形成時に像担持体101〜104から中間転写ベルト501上へトナー像が移される際、異物6003が中間転写ベルト501との当接部前後にきた時、1次転写ローラ601〜604に印加される電圧により異物6003付着部には過電流が流れてしまい、それにより放電現象が発生してしまう(図9参照)。放電現象が発生することにより、中間転写ベルト501上に移ったトナー像は乱れてしまい、トナー像にはチリ・抜けなどの異常画像部が発生してしまう。
そこで本発明では図3乃至図6に示すように、1次転写ローラ601〜604に、画像形成時に回収されたトナー7002を塗布する回収トナー塗布機構701〜704を設ける。回収トナー塗布機構701〜704は内部にトナー7002を蓄えることができる。
【0008】
図3に示す第1の実施例では、回収トナー塗布機構701〜704にローラ状の塗布ブラシ7001を備えている。回収されたトナー7002は、画像形成時に像担持体上101〜104に残ったトナーを回収するトナー回収機構(クリーニング装置)301〜304(図1)に蓄えられたトナーと、中間転写ベルト501上に残ったトナーを回収するトナー回収機構520に蓄えられたトナーからなり、これらのトナーはポンプ等を用いて回収トナー塗布機構701〜704のトナー貯蔵部(回収トナー塗布機構701〜704を構成するケース)へ搬送されている。
塗布ブラシ7001は、1次転写ローラ601〜604軸方向にトナー7002を均一に塗布できるよう、毛の長さ・太さ・密度・材質・形状・回転速度・回転方向・当接条件等各条件が決定されている。トナーを塗布ブラシ7001でこすりつけるので、トナーの1次転写ローラへの付着力を向上させることができる。
トナー7002は1次転写ローラ601〜604を構成すする発泡樹脂材6002の抵抗値10の7〜9乗よりも高抵抗である。回収トナー塗布機構701〜704によるトナー塗布で、凹部(セル径)が100〜300μm前後である発泡樹脂材6002は、粒径1〜10μmのトナーによって埋められる。
また本実施例では1次転写ローラ601〜604の塗布に回収トナーを用いるとしているが、新品のトナーを用いてもよい。その時は新品のトナーを貯蔵している新品トナー貯蔵部からポンプ等で回収トナー塗布機構701〜704のトナー貯蔵部へ新品トナーを搬送する。
回収トナー塗布機構701〜704で1次転写ローラ601〜604の各表面に、セル径よりも小粒径であるトナーを塗布することでセル径が埋められ1次転写ローラ表面6004(図8乃至図10)はトナーで膜状に覆われ、1次転写ローラ601〜604表面上が平滑化される。
【0009】
また、図10のように1次転写ローラ601〜604の表面にホコリ・ゴミなどの異物6003が付着していても、同様に回収トナー塗布機構701〜704により塗布されたトナーにより異物6003が覆われやはり1次転写ローラ601〜604表面上は平滑化される。1次転写ローラ601〜604表面がトナーに覆われることで抵抗値が均一になり、1次転写部で電圧が印加されるときに電流が均一に流れるようになる。
実際に1次転写ローラ601〜604上に付着した異物が原因で異常画像(抜け:トナー像内でトナー付着量が少なく斑点のように見える画像)が発生している画像形成装置を用いて、1次転写ローラ601〜604表面上にトナーを塗布してから画像を出して検証を行った。トナーを塗布する前に発生していた異常画像が、1次転写ローラ601〜604表面にトナーを塗布することにより発生しなくなることが確認された。
ここで、1次転写ローラ601〜604に電圧を印加して像担持体101〜104から中間転写ベルト501上へトナー像を移動させる時のみ、1次転写ローラ601〜604へ回収トナー塗布機構701〜704を当接できるようソレノイド等により接離動作を行う接離機構を有し、トナー塗布タイミングに合わせて接離動作を行うよう制御するとトナーの塗布消費量を押さえることができる。
【0010】
図4に示す第2の実施例では、1次転写ローラ601〜604に回収トナー塗布機構701〜704を設ける他、クリーニング機構801〜804を設けている。クリーニング機構801〜804は1次転写ローラ表面6004に塗布した余分なトナーを掻き取るブレード8001が1次転写ローラ601〜604に当接するように設けられており、掻きとられた余分なトナー6002はクリーニング機構801〜804内に収められる。またクリーニング機構801〜804内に回収されたトナーを回収トナー塗布機構701〜704へ搬送するポンプ等の手段を設けることで、トナーを再利用することができる。
1次転写ローラ601〜604にクリーニング機構801〜804を配置することにより、回収トナー塗布機構701〜704から1次転写ローラ601〜604に塗布されるトナーの塗布量が過剰になることなく、常に安定させることができる。
図5に示す第3の実施例では、回収トナー塗布機構701〜704は振動装置7003を備えている。振動装置7003はモータやソレノイドを用いて1次転写ローラ軸方向の振動を回収トナー塗布機構701〜704に発生させることができる。
回収トナー塗布機構701〜704を振動装置7003により振動させるので、トナーを1次転写ローラ表面6004に擦りつけることができ、トナーの1次転写ローラ601〜604への付着力を向上させることができる。
図6に示す第4の実施例では、回収トナー塗布機構701〜704は1次転写ローラ601〜604上部に設置され、1次転写ローラ601〜604と対面する底部には複数の補給穴7010が形成されている。回収したトナーは重力及び本体の動作による振動等で補給穴7010から1次転写ローラ601〜604表面に落下することにより、1次転写ローラ601〜604表面上にトナーを塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成図。
【図2】図1に示す作像部の詳細構成図。
【図3】本発明の第1の実施例に係る画像形成装置の要部構成図。
【図4】本発明の第2の実施例に係る画像形成装置の要部構成図。
【図5】本発明の第3の実施例に係る画像形成装置の要部構成図。
【図6】本発明の第4の実施例に係る画像形成装置の要部構成図。
【図7】1次転写ローラの表面の一部を表した模式図。
【図8】図3のA部を拡大して表した模式図(その1)。
【図9】図3のA部を拡大して表した模式図(その2)。
【図10】図3のA部を拡大して表した模式図(その3)。
【符号の説明】
【0012】
101〜104 像担持体、501 中間転写ベルト(中間転写体)、601〜604 1次転写ローラ、6002 発泡樹脂材、6006 凹部、701〜704 回収トナー塗布機構(トナー塗布機構)、7001 塗布ブラシ、7003 振動装置、801〜804 クリーニング機構、8001 ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の像担持体上でそれぞれの色のトナー像を形成し、表面が発泡樹脂材からなる1次転写ローラに電圧を印加して中間転写体に電位を発生させ、中間転写体と中間転写体に当接している像担持体との間に電位差を作ることで、複数の像担持体上のトナー像を中間転写体上へ順次転写させることにより形成した重ねトナー像を転写材に一括して2次転写する画像形成装置において、トナーを1次転写ローラへ塗布するトナー塗布機構を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トナー塗布機構は、塗布ブラシを備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナー塗布機構から1次転写ローラへ塗布されるトナーの粒径は、1次転写ローラ表面の凹部よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナー塗布機構により前記1次転写ローラ表面に塗布されたトナーを回収するクリーニング機構を備えていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記像担持体上から前記中間転写体上へトナー像を転写する時間のみ、前記1次転写ローラ表面にトナーを塗布するようトナー塗布機構を制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記トナー塗布機構により前記1次転写ローラ表面に塗布されるトナーの付着力が上がるよう、前記トナー塗布機構を振動させる振動装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記トナー塗布機構は、画像形成時に回収されたトナーを前記1次転写ローラへ塗布する回収トナー塗布機構であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の画像形成装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−47333(P2007−47333A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230141(P2005−230141)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】