説明

画像形成装置

【課題】省電力動作モード時にエンジン制御部へのクロック信号の入力が停止され,通常動作モードへの切替時にエンジン制御部がリセットされる構成において,該通常動作モードへの切替時に実行される復帰処理を当該画像形成装置の電源投入時よりも簡略化すること。
【解決手段】メイン制御部は,当該画像形成装置の電源が投入された後,エンジン制御部から所定の準備完了信号が入力された場合に第一の復帰処理信号を入力し(S15),エンジン制御部がリセットされた後,前記エンジン制御部から所定の準備完了信号が入力された場合に前記第一の復帰処理信号と異なる第二の復帰処理信号を入力する(S13)。そして,前記エンジン制御部は,前記第一の復帰処理信号が入力された場合に第一の復帰処理を実行し(S25),前記前記第二の復帰処理信号が入力された場合に前記第一の復帰処理よりも簡略化された第二の復帰処理(S26)を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像形成部による画像形成動作が可能な通常動作モードと該通常動作モードよりも消費電力の低い省電力動作モードとを有する画像形成装置に関し,特に,前記省電力動作モード時に,前記画像形成部を制御するエンジン制御部へのクロック信号の入力が停止される画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機,ファクシミリ装置,プリンタ装置,複合機等の画像形成装置の動作モードとしては,通常の画像形成動作を行う通常動作モードや,定着ヒータや各種のセンサなどへの電力の供給を遮断することにより消費電力を省減する省電力動作モード等がある。
これらの動作モードは,画像形成装置を統括制御するメイン制御部により,予め設定されたモード切替条件に基づいて切替制御される。例えば,通常動作モードにおいて原稿画像データ或いは印字データの入力がない状態が一定時間以上継続した場合には省電力動作モードに切り替えられ,省電力動作モードにおいて利用者によりコピー操作(原稿カバーの開閉操作やコピースタートの押圧操作等)等がなされた場合には通常動作モードに切り替えられる。
【0003】
一方,前記画像形成装置には,画像形成を行う画像形成部を制御するエンジン制御部が,前記メイン制御部とは別に設けられている。ここで,前記メイン制御部は,省電力動作モードにおいても動作可能であるが,前記エンジン制御部は,省電力動作モード時の電力消費をできるだけ低減する目的で動作が完全に停止される場合がある(例えば特許文献1の段落[0125]〜[0136]参照)。
例えば,特許文献1に記載されているように,前記エンジン制御部へのクロック信号の入力が停止されることにより,該エンジン制御部の動作は停止される。この場合には,前記エンジン制御部が動作していないため,前記エンジン制御部に制御信号を入力しても該エンジン制御部では該制御信号に基づく処理を実行することができない。
そのため,省電力動作モードから通常動作モードへの切替時には,前記メイン制御部によって前記エンジン制御部のリセット(電源の瞬時的な切入作業)が行われる。これにより,前記エンジン制御部では,前記画像形成装置の電源投入時の状態が擬似的に再現される。そして,前記リセットにより再起動された前記エンジン制御部では,前記画像形成装置の電源投入時と同様に,メモリの初期化やキャリブレーション処理,エージング処理などの各種の復帰(ウェイクアップ)処理が実行される。
このように,通常モードへの切替時に前記エンジン制御部のリセットを行う構成では,前記画像形成装置の電源投入時と通常動作モードへの切替時との両方において同一の復帰処理が実行される。これは,前記エンジン制御部で,該エンジン制御部の再起動の原因が,画像形成装置の電源投入であるか,通常動作モードへの切替時のリセットであるかを判断することができないためである。
【特許文献1】特開2004−42639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで,前記画像形成装置の電源投入時に前記エンジン制御部において実行される復帰処理には,省電力動作モードから通常動作モードへの切替時に実行する必要のない処理手順が含まれていることがある。例えば,前記画像形成装置の電源投入時に実行されるキャリブレーション処理やエージング処理などは,前記通常動作モードへの切替時には省略しても差し障りがない。
しかしながら,従来では,前記画像形成装置の電源投入時と通常動作モードへの切替時とにおいて同一の復帰処理しか実行することができず,前記通常動作モードへの切替時に必要以上の処理が実行されることになるため,その復帰処理に要する時間が無駄に長くなるという問題があった。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,省電力動作モード時にエンジン制御部へのクロック信号の入力が停止され,通常動作モードへの切替時にエンジン制御部がリセットされる構成において,該通常動作モードへの切替時に実行される復帰処理を当該画像形成装置の電源投入時よりも簡略化することのできる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は,入力される画像データに基づいて画像形成動作を行う画像形成部と,入力されるクロック信号に従って前記画像形成部を制御する画像形成制御手段と,予め設定されたモード切替条件に従って当該画像形成装置の動作モードを,前記画像形成部による画像形成動作が可能な通常動作モードと該通常動作モードよりも消費電力の低い省電力動作モードとの間で切り替えるモード切替手段と,前記通常動作モード時に前記画像形成制御手段へ前記クロック信号を入力し,前記省電力動作モード時及び当該画像形成装置の電源切時に前記画像形成制御手段への前記クロック信号の入力を停止するクロック信号制御手段と,前記省電力動作モードから前記通常動作モードへの切替時に前記画像形成制御手段をリセットするリセット手段と,を備えてなる画像形成装置に適用されるものであって,当該画像形成装置の電源が投入された後,前記画像形成制御手段から所定の準備完了信号が入力された場合に,第一の復帰処理信号を該画像形成制御手段に入力し,前記リセット手段により前記画像形成制御手段がリセットされた後,前記画像形成制御手段から所定の準備完了信号が入力された場合に,前記第一の復帰処理信号と異なる第二の復帰処理信号を該画像形成制御手段に入力するように構成される。
そして,前記画像形成制御手段は,前記第一の復帰処理信号が入力された場合に第一の復帰処理を実行し,前記第二の復帰処理信号が入力された場合に前記第一の復帰処理よりも簡略化された第二の復帰処理を実行するように構成される。
具体的に,前記第二の復帰処理は,前記第一の復帰処理に含まれるキャリブレーション処理やエージング処理を省略することにより該第一の復帰処理よりも簡略化される。
このように構成された前記画像形成装置では,当該画像形成装置の電源投入時と前記通常動作モードへの切替時とで異なる復帰処理信号(第一の復帰処理信号,第二の復帰処理信号)が前記画像形成制御部(前記エンジン制御部に相当)に入力される。これにより,前記画像形成制御部は,当該画像形成装置の電源投入時と前記通常動作モードへの切替時との違いを判断することができるため,前記通常動作モードへの切替時に,前記第一の復帰処理よりも簡略化された前記第二の復帰処理を実行することができ,該復帰処理に要する時間を短縮することができる。
【0006】
また,前記画像形成制御手段と別に,前記クロック信号の停止時間を計時すると共に,該停止時間を前記画像形成制御手段に通知する計時通知手段を設けておけば,前記画像形成制御手段では,前記計時通知手段により通知された前記停止時間に基づいて前記第一の復帰処理や前記第二の復帰処理の内容を変更することが可能となる。これにより,例えばエージング処理の実行時間を,前記クロック信号の停止時間に応じて適切に変更することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば,当該画像形成装置の電源投入時と前記通常動作モードへの切替時とで異なる復帰処理信号(第一の復帰処理信号,第二の復帰処理信号)が前記画像形成制御部(前記エンジン制御部に相当)に入力されることにより,前記画像形成制御部は,当該画像形成装置の電源投入時と前記通常動作モードへの切替時との違いを判断することができるため,前記通常動作モードへの切替時に,前記第一の復帰処理よりも簡略化された前記第二の復帰処理を実行することができ,該復帰処理に要する時間を短縮することができる。
また,前記画像形成制御手段と別に,前記クロック信号の停止時間を計時すると共に,該停止時間を前記画像形成制御手段に通知する計時通知手段を設けておけば,前記画像形成制御手段では,前記計時通知手段により通知された前記停止時間に基づいて前記第一の復帰処理や前記第二の復帰処理の内容を変更することが可能となり,例えばエージング処理の実行時間を,前記クロック信号の停止時間に応じて適切に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置Xの概略構成を示すブロック図,図2は前記画像形成装置Xにおいて実行されるモード切替処理の手順の一例を説明するためのフローチャート,図3は前記画像形成装置Xにおいて実行される復帰切替処理の手順の一例を説明するためのフローチャートである。
まず,図1を用いて,本発明の実施の形態に係る画像形成装置Xの概略構成について説明する。前記画像形成装置Xは,例えば複写機,ファクシミリ装置,プリンタ装置,複合機等である。
【0009】
図1に示すように,本発明の実施の形態に係る画像形成装置Xは,CPU及びROM,RAM等の周辺装置からなり前記ROMに格納された所定のプログラムに従った処理を実行することにより当該画像形成装置Xを統括的に制御するメイン制御部1と,各種の表示や操作が行われる液晶ディスプレイ,タッチパネルなどを有する表示・操作部2と,図外の画像読取装置(スキャナ装置など)や外部から入力された画像データに所定の画像処理を施す画像処理部3と,前記画像処理部3から入力された画像データに基づいて画像形成動作を行う画像形成部4と,前記メイン制御部1からの指示により任意の周波数のクロック信号を生成して出力するクロック信号制御部5(クロック信号制御手段の一例)と,前記クロック信号制御部5から入力されるクロック信号に従って(同期して)前記画像形成部4を制御するエンジン制御部41(画像形成制御手段の一例)と,を備えて概略構成されている。
【0010】
前記画像形成部4は,レーザースキャニングユニットなどの露光装置,前記露光装置によって露光される感光体ドラム,前記感光体ドラムの表面上に形成された静電潜像をトナーカートリッジから供給されるトナーによって現像する現像器,及び前記現像器によって前記感光体ドラムの表面上に形成されたトナー像を用紙に転写する転写装置,該トナーを用紙に定着させる定着装置などを備えて構成されている。
前記エンジン制御部41は,CPU及びROM,RAM等の周辺装置からなり前記ROMに格納された所定のプログラムに従った処理を実行することにより,前記画像形成部4の各構成要素を制御して画像形成動作を実行させる。
【0011】
前記画像形成装置Xは,従来装置と同様に,前記画像形成部4による画像形成動作が可能な通常動作モードと,通常動作モードよりも消費電力の低いスリープモード(省電力動作モードの一例,なお待機モードやスタンバイモード等とも称される)とを有しており,これらの動作モードは,前記メイン制御部1によって,予め設定されたモード切替条件に基づいて切り替えられる。なお,スリープモードは,例えば前記画像形成部4や不図示の各種のセンサなどへの電力供給を遮断することにより消費電力を省減する動作モードである。ここに,前記画像形成装置Xの動作モードを,通常動作モードとスリープモードとの間で切り替えるための後述のモード切替処理(図2のフローチャート参照)を実行するときの前記メイン制御部1がモード切替手段に相当する。
例えば,通常動作モードにおいて原稿画像データ或いは印字データの入力がない状態が一定時間以上継続した場合にはスリープモードに切り替えられ,スリープモードにおいて利用者によりコピー操作(原稿カバーの開閉操作やコピースタートの押圧操作等)等がなされた場合には通常動作モードに切り替えられる。
また,前記画像形成装置Xでは,前記動作モードの切替時に,前記クロック信号制御部5による前記エンジン制御部41へのクロック信号の入力の有無が切り替えられる。例えば,通常動作モードからスリープモードへの切替時には,前記クロック信号制御部5による前記エンジン制御部41へのクロック信号の入力が完全に停止される。これにより,スリープモードにおける消費電力をより省減することができる。
【0012】
前記クロック信号制御部5は,RC時定数を任意に変更することによって,任意の周波数でクロック信号を生成することが可能なRC発振器を有している。なお,前記クロック信号制御部5は,水晶振動子などを有するものであることも他の実施例として考えられる。
前記クロック信号制御部5で生成されたクロック信号は,前記エンジン制御部41に入力される。但し,前記画像形成装置Xの主電源スイッチが切られている時には,前記メイン制御部1以外への駆動電力の供給経路が遮断されるため,前記クロック信号制御部5による前記エンジン制御部41へのクロック信号の入力は完全に停止される。
また,前述したように,前記クロック信号制御部5では,後述するモード切替処理(図2のフローチャート参照)において,前記メイン制御部1からの指示により,前記エンジン制御部41へのクロック信号の入力の有無が切り替えられる。具体的には,通常動作モード時は前記エンジン制御部41へ前記クロック信号を入力し,スリープモード時には前記エンジン制御部41への前記クロック信号の入力を停止するように前記メイン制御部1によって制御される。
【0013】
ところで,前記画像形成装置Xでは,該画像形成装置X本体の電源投入時に,前記画像形成部4を画像形成動作可能な状態に移行させるための各種の復帰(ウェイクアップ)処理が,前記エンジン制御部41によって実行される。例えば,前記復帰処理には,前記エンジン制御部41内のメモリの初期化や,キャリブレーション処理,エージング処理などが含まれる。
また,前記画像形成装置Xでは,スリープモードから通常動作モードへの移行時にも,前記画像形成部4を画像形成動作可能な状態に移行させるための各種の復帰処理が,前記エンジン制御部41によって実行される。但し,前述したように,前記スリープモード時,前記エンジン制御部41は完全に停止している状態であるため,外部からの受信信号に基づいて処理を実行することができない。そのため,通常動作モードへの切替時の復帰処理は,スリープモードから通常動作モードへの切替時に,前記メイン制御部1によって前記エンジン制御部41のリセットが行われることにより開始される。なお,前記エンジン制御部41のリセット処理を実行するときの前記メイン制御部1がリセット手段に相当する。
【0014】
このように,スリープモード時に前記エンジン制御部41へのクロック信号の入力を停止し,通常動作モードへの移行時に前記エンジン制御部41のリセットを行う構成では,前記エンジン制御部41で,前記画像形成装置X本体の電源投入と,スリープモードから通常動作モードへの切替時におけるリセットとを判別することはできない。そのため,従来,前記エンジン制御部41では,前記画像形成装置X本体の電源投入時と,スリープモードから通常動作モードへの移行時とにおいて,同一の復帰処理が実行されていた。
しかし,本発明の実施の形態に係る前記画像形成装置Xでは,前記メイン制御部1により後述のモード切替処理(図2のフローチャート参照)が実行され,前記メイン制御部1及び前記エンジン制御部41の間で後述の復帰切替処理(図3のフローチャート参照)が実行されることにより,前記画像形成装置X本体の電源投入時と,スリープモードから通常動作モードへの移行時とで異なる復帰処理が実行される。
【0015】
まず,図2のフローチャートを参照しつつ,前記メイン制御部1によって実行されるモード切替処理の手順の一例について説明する。ここで,当該モード切替処理は,前記画像形成装置Xが通常動作モードの状態で開始されるものとする。なお,図中のS1,S2,…は処理手順(ステップ)の番号を表している。
[ステップS1,S2]
ステップS1では,前記メイン制御部1によって,予め設定されたモード切替条件に従ってスリープモードへの移行の要否が判断される。例えば,前述したように,原稿画像データ或いは印字データの入力がない状態が一定時間以上継続した場合に,スリープモードへの移行が必要であると判断される。
ここで,スリープモードへの移行が必要ないと判断されている間は,当該ステップS1の判断が繰り返し実行され(S1のNo側),通常動作モードが継続されるが,スリープモードへの移行が必要であると判断された場合には(S1のYes側),処理はステップS2に移行する。
ステップS2では,前記メイン制御部1によって前記クロック信号制御部5が制御されることにより,該クロック信号制御部5から前記エンジン制御部41へのクロック信号の入力が停止される。これにより,前記エンジン制御部41では,クロック信号が受信されないため,該エンジン制御部41の動作は停止する。なお,このとき前記メイン制御部1では,前記画像形成装置X全体をスリープモードに移行させるための処理が他にも実行されるが,ここではその説明を省略する。
【0016】
[ステップS3〜S5]
その後,ステップS3では,前記メイン制御部1によって,予め設定されたモード切替条件に従って通常動作モードへの移行の要否が判断される。例えば,スリープモードにおいて利用者によりコピー操作(原稿カバーの開閉操作やコピースタートの押圧操作等)等がなされた場合に,通常動作モードへの移行が必要であると判断される。
ここで,通常動作モードへの移行が必要ないと判断されている間は,当該ステップS3の判断が繰り返し実行され(S3のNo側),スリープモードが継続されるが,通常動作モードへの移行が必要であると判断された場合には(S3のYes側),処理はステップS4に移行する。
ステップS4では,前記メイン制御部1によって前記エンジン制御部41のリセットが行われる。例えば,前記エンジン制御部41に続く電源供給経路の途中に設けられた不図示のスイッチをOFF/ONして,前記エンジン制御部41への電源供給を瞬断することにより,該エンジン制御部41がリセットされる。これにより,前記エンジン制御部41では,後述する復帰処理(図3のフローチャート参照)が開始される。
そして,前記ステップS4と略並行して実行されるステップS5では,前記メイン制御部1によって前記クロック信号制御部5が制御されることにより,該クロック信号制御部5から前記エンジン制御部41へのクロック信号の入力が開始される。これにより,前記エンジン制御部41では,クロック信号が受信されるため,該エンジン制御部41の動作が開始される。なお,このとき前記メイン制御部1では,前記画像形成装置X全体をスリープモードから通常動作モードに移行させるための処理が他にも実行されるが,ここではその説明を省略する。
【0017】
[ステップS6]
その後,ステップS6では,前記メイン制御部1によって,前記エンジン制御部41がリセットされた旨を示すリセットフラグが“0”から“1”に更新され,処理はステップS1に戻る。ここに,前記リセットフラグは,例えば前記メイン制御部1のRAMに記憶されたものであって,“1”で前記エンジン制御部41がリセットされたこと,“0”で前記エンジン制御部41がリセットされていないことを示す。なお,前記リセットフラグの初期値は“0”である。即ち,前記画像形成装置Xでは,該画像形成装置Xの電源投入時には前記リセットフラグが“0”であるが,スリープモードから通常動作モードへ切り替えられた場合には,前記ステップS6において前記リセットフラグが“1”となる。そして,前記リセットフラグは,後述する復帰切替処理において,前記画像形成装置Xの電源投入(リセットフラグ=0)であるか,スリープモードから通常動作モードへの切替(リセットフラグ=1)であるかの判断指標に用いられる。
【0018】
次に,図3のフローチャートを参照しつつ,前記メイン制御部1及び前記エンジン制御部41の間で実行される復帰切替処理の手順の一例について説明する。なお,図3(a)中のS11,S12,…は前記メイン制御部1側の処理手順(ステップ)番号,図3(b)中のS21,S22,…は前記エンジン制御部41側の処理手順(ステップ)番号を表している。
ここで,前記メイン制御部1側の復帰切替処理は,該メイン制御部1の動作時に適宜実行される。一方,前記エンジン制御部41側の復帰切替処理は,前記画像形成装置Xの電源が投入された場合又は前記メイン制御部1により該エンジン制御部41のリセットが行われた場合(前記ステップS4)に開始される。
【0019】
まず,前記メイン制御部1側の処理について説明する。
[ステップS11,S12]
ステップS11では,前記メイン制御部1によって,前記エンジン制御部41から準備完了信号が受信されたか否かが判断される。ここで,前記準備完了信号が受信されていないと判断されている間(S11のNo側)は,当該ステップS11が繰り返し実行される。一方,前記準備完了信号が受信されたと判断されると(S11のYes側),処理はステップS12に移行する。
ステップS12では,前記リセットフラグが“1”であるか否かが前記メイン制御部1によって判断される。ここでは,前記リセットフラグが“0”であるか“1”であるかに基づいて,前記準備完了信号が,前記画像形成装置Xの電源投入された後,前記エンジン制御部41から入力されたものであるか,スリープモードから通常動作モードへ切り替えられた後,前記エンジン制御部41から入力されたものであるかが判断される。
ここで,前記リセットフラグが“1”であると判断された場合(S12のYes側)には,処理はステップS13に移行し,前記リセットフラグが“0”であると判断された場合(S12のNo側)には,処理はステップS15に移行する。
【0020】
[ステップS13,S14]
前記ステップS12において,前記リセットフラグが“1”であると判断された場合,即ち,前記エンジン制御部41から入力された前記準備完了信号が,スリープモードから通常動作モードへの切替時の前記エンジン制御部41のリセットに起因して発生したものである場合には,その旨を示すスリープ復帰処理信号(第二の復帰処理信号の一例)が,前記メイン制御部1によって前記エンジン制御部41に出力される(S13)。これにより,前記エンジン制御部41は,前記スリープ復帰処理信号を受信する。
そして,ステップS14では,前記メイン制御部1によって,前記リセットフラグが“1”から“0”に更新され(リセット),処理は前記ステップS11に戻る。
【0021】
[ステップS15]
一方,前記ステップS12において,前記リセットフラグが“0”であると判断された場合,即ち,前記エンジン制御部41から入力された前記準備完了信号が,前記画像形成装置Xの電源投入に起因して発生したものである場合には,その旨を示す電源投入復帰処理信号(第一の復帰処理信号の一例)が,前記メイン制御部1によって前記エンジン制御部41に出力される(S15)。これにより,前記エンジン制御部41は,前記電源投入復帰処理信号を受信する。その後,処理は前記ステップS11に戻る。
このように,前記画像形成装置Xでは,前記メイン制御部1によって,前記画像形成装置Xの電源が投入された後,前記エンジン制御部41から準備完了信号が入力された場合には,前記電源投入復帰処理信号(第一の復帰処理信号の一例)が該エンジン制御部41に入力され,前記メイン制御部1により前記エンジン制御部41がリセットされた後,前記エンジン制御部41から準備完了信号が入力された場合には,前記電源投入復帰処理信号と異なる前記スリープ復帰処理信号(第二の復帰処理信号の一例)が該エンジン制御部41に入力される。ここに,かかる処理を実行するときの前記メイン制御部1が復帰処理制御手段に相当する。
【0022】
次に,前記エンジン制御部41側の処理について説明する。
前記エンジン制御部41では,前記画像形成装置Xの電源が投入された場合,又は,前記画像形成装置Xの動作モードがスリープモードから通常動作モードに切り替えられることにより,前記メイン制御部1によって該エンジン制御部41のリセットが行われた場合(図2のフローチャート参照,S4)に,当該復帰処理が開始される。
【0023】
[ステップS21,S22]
まず,ステップS21では,前記エンジン制御部41によって,該エンジン制御部41のメモリの初期化やパラメータ設定,前記メイン制御部1との通信設定など,各種のイニシャライズ処理が実行される。
そして,前記イニシャライズ処理が完了すると,続くステップS22では,前記エンジン制御部41によって,前記メイン制御部1に対して準備完了信号が出力される。これにより,前記メイン制御部1では,前記準備完了信号が受信される(S11)。
【0024】
[ステップS23,S24]
その後,前記エンジン制御部41では,前記メイン制御部1から前記スリープ復帰処理信号又は前記電源投入復帰処理信号の受信が待ち受けられる(S23〜S24)。
ここで,前記メイン制御部1から前記スリープ復帰処理信号が入力されたと判断されると(S23のYes側),処理はステップS26に移行し,前記メイン制御部1から前記電源投入復帰処理信号が入力されたと判断されると(S24のYes側),処理はステップS25に移行する。
【0025】
[ステップS25,S26]
ステップS25では,前記エンジン制御部41によって,前記画像形成部4の色調整などを行うキャリブレーション処理や予備運転を行うエージング処理などを含む復帰処理(第一の復帰処理の一例)が,前記画像形成装置Xの電源投入時の復帰処理として実行される。
一方,ステップ26では,前記エンジン制御部41によって,前記ステップS25の復帰処理に含まれた前記キャリブレーション処理を省略することにより簡略化された復帰処理(第二の復帰処理の一例)が,スリープモード復帰時の復帰処理として実行される。即ち,前記画像形成装置Xでは,スリープモードからの復帰時には,前記画像形成装置Xの電源投入時の復帰処理(S25)よりも簡略化された復帰処理が実行されため,該復帰処理に要する時間が短縮される。
【0026】
以上説明したように,前記画像形成装置Xでは,該画像形成装置Xの電源投入時とスリープモードから通常動作モードへの切替時とで異なる信号(電源投入復帰処理信号,スリープ復帰処理信号)が,前記メイン制御部1から前記エンジン制御部41に入力されるため(S13,S15),該エンジン制御部41では,前記画像形成装置Xの電源投入時とスリープモードから通常動作モードへの切替時とを判別することが可能となる。したがって,スリープモードから通常動作モードへの切替時の復帰処理(S26)では,前記画像形成装置Xの電源投入時の復帰処理(S25)よりも処理を簡略化することにより,該通常動作モードへの切替時の復帰処理に要する時間を短縮することができる。
なお,前記ステップS26では,前記キャリブレーション処理が省略された復帰処理が実行される場合を例に挙げたがこれに限られるものではない。例えば,前記エージング処理やその他の処理を省略することや,前記キャリブレーション処理及び前記エージング処理などの複数の処理を省略することも考えられる。また,前記エージング処理を実行する時間を短縮することも処理の簡略化に相当する。
【実施例】
【0027】
ところで,前記画像形成装置Xでは,該画像形成装置Xの非動作時間によって,前記画像形成部4の復帰処理を適切に変更することが望ましい。例えば,前記画像形成装置Xが長時間動作していなかった場合には,画像形成開始前にエージング処理を十分に長い時間実行し,非動作時間が短時間である場合には,そのエージング処理の実行時間を短縮することが考えられる。以下,このような構成を実現する実施例について説明する。
【0028】
前記メイン制御部1は,前記クロック信号制御部5による前記エンジン制御部41へのクロック信号の入力の停止時間,即ち前記画像形成装置Xの電源が切断されてから次に電源が投入されるまでの時間や,スリープモードに移行してから次に通常動作モードに移行するまでの時間を計時するための処理を実行する。
そして,前記メイン制御部1は,前記ステップS13(図3のフローチャート参照)において前記スリープ復帰処理信号を出力する際や,前記ステップS15(図3のフローチャート参照)において前記電源投入復帰処理信号を出力する際に,前記計時された停止時間を同時に通知するための処理を実行する。ここに,かかる処理を実行するときの前記メイン制御部1が計時通知手段に相当する。
【0029】
これにより,前記エンジン制御部41では,前記ステップS25,S26(図3のフローチャート参照)において復帰処理を実行するときに,前記メイン制御部1から通知された前記停止時間に応じて,その復帰処理の内容が変更される。例えば,前記停止時間が1時間未満であれば前記エージング処理の実行時間を5秒とし,前記停止時間が1時間以上であれば前記エージング処理の実行時間を10秒とするように設定しておくことが考えられる。
なお,ここでは,前記エージング処理の実行時間を変更する場合を例に挙げて説明したが,これに限られず,前記キャリブレーション処理やその他の処理の内容を変更するものであってもよい。
また,前記エンジン制御部41が,前記計時された停止時間に応じて前記電源投入復帰処理を実行するか,前記スリープ復帰処理を実行するかを切り替えることも他の実施例として考えられる。例えば,前記ステップS23において前記スリープ復帰処理信号が受信されたと判断された場合であっても,そのときに通知された前記停止時間が予め設定された所定時間以上である場合には,前記画像形成装置Xの電源投入時と同様の復帰処理を実行する必要があると判断し,処理をステップS25に移行させることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像形成装置において実行されるモード切替処理の手順の一例を説明するためのフローチャート。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像形成装置において実行される復帰切替処理の手順の一例を説明するためのフローチャート。
【0031】
1…メイン制御部
2…表示・操作部
3…画像処理部
4…画像形成部
41…エンジン制御部
5…クロック信号制御部
S1,S2,…,…処理手順(ステップ)番号
S11,S12,…,…処理手順(ステップ)番号
S21,S22,…,…処理手順(ステップ)番号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される画像データに基づいて画像形成動作を行う画像形成部と,
入力されるクロック信号に従って前記画像形成部を制御する画像形成制御手段と,
予め設定されたモード切替条件に従って当該画像形成装置の動作モードを,前記画像形成部による画像形成動作が可能な通常動作モードと該通常動作モードよりも消費電力の低い省電力動作モードとの間で切り替えるモード切替手段と,
前記通常動作モード時に前記画像形成制御手段へ前記クロック信号を入力し,前記省電力動作モード時及び当該画像形成装置の電源切時に前記画像形成制御手段への前記クロック信号の入力を停止するクロック信号制御手段と,
前記省電力動作モードから前記通常動作モードへの切替時に前記画像形成制御手段をリセットするリセット手段と,
を備えてなる画像形成装置であって,
当該画像形成装置の電源が投入された後,前記画像形成制御手段から所定の準備完了信号が入力された場合に,第一の復帰処理信号を該画像形成制御手段に入力し,前記リセット手段により前記画像形成制御手段がリセットされた後,前記画像形成制御手段から所定の準備完了信号が入力された場合に,前記第一の復帰処理信号と異なる第二の復帰処理信号を該画像形成制御手段に入力する復帰処理制御手段を備えてなり,
前記画像形成制御手段が,前記復帰処理制御手段により前記第一の復帰処理信号が入力された場合に第一の復帰処理を実行し,前記復帰処理制御手段により前記第二の復帰処理信号が入力された場合に前記第一の復帰処理よりも簡略化された第二の復帰処理を実行するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第二の復帰処理が,前記第一の復帰処理に含まれるキャリブレーション処理及び/又はエージング処理が省略されることにより該第一の復帰処理よりも簡略化されたものである請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成制御手段と別に設けられ,前記クロック信号の停止時間を計時すると共に,該停止時間を前記画像形成制御手段に通知する計時通知手段を更に備えてなり,
前記画像形成制御手段が,前記計時通知手段により通知された前記停止時間に基づいて前記第一の復帰処理及び/又は前記第二の復帰処理の内容を変更するものである請求項1又は2のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−62490(P2008−62490A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242293(P2006−242293)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】