説明

画像形成装置

【課題】回路基板上の電装部品からの発熱量が増加しても、外装カバーや冷却ファンを大型化せず製品サイズの小型化と高速化を達成する。
【解決手段】2枚の回路基板15,16がL字形状に角度をなして固定されている。一方の回路基板15に発熱量の多い電装部品はヒートシンク15cに固定している。他方の回路基板16に実装された大型サイズの電装部品は向かい合わせて配置する。各電装部品の先端部同士が部分的に重なり合うように配置すれば、一枚物の回路基板にベタに実装した場合と比較し、電源基板ユニットDとしての面積を半減でき、小型化が可能となる。L字形状に固定した2枚の回路基板15,16とそれら基板上の電装部品とで囲われた空間で冷却風路Daを形成する。この冷却風路Daの断面積S1をファンダクトの冷却風吐出口側に設けた開口の面積と同じ大きさに形成することで、冷却風の損失を最小限に抑え、有効に電装部品を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば電子写真方式や静電記録方式などを用いた作像プロセスによって記録用紙などのシートに画像情報を形成する電子写真画像形成装置(以下、単に「画像形成装置」という)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の具体例として、複写機、ファクシミリ装置、レーザビームプリンタやLEDプリンタなどの電子写真プリンタ、ビデオプリンタ、ワードプロセッサ、そしてそれらの機能を有する多機能複合機などがある。
【0003】
近年、小規模事業所や自宅兼用事務所などにおけるオフィスオートメーション市場が活性化してきており、複写機やプリンタなどの画像形成装置でもより小型化と機能の高速化が求められている。ところが、装置の高速化を実現するためには電源定格を上げなければならず、電源装置が大型化し、電源要素からの発熱量も多くなるために冷却装置が大型化するなどして小型化に逆行する。
【0004】
図5は、先に本出願人が提案した画像形成装置の一例(特許文献1参照)を説明するために示す図である。この場合、いずれも図示しないが画像形成部を駆動させる駆動手段や、その駆動手段をコントロールする制御手段などが備わっている。制御手段は、ICなどを実装した制御基板ユニット601を有し、この制御基板ユニット601に配置された電子電気部品などの電装部品に対して電力供給する給電部としての電源基板ユニット602が電気的に接続されている。
【0005】
電源基板ユニット602の基板602aは1枚の平板で構成され、その基板602a上にトランス603やフィルタ604などの電装部品が実装される。また、電源基板ユニット602は画像形成装置本体の枠体605に固定して、画像形成部とは関連を断った位置で外装カバー606に覆われた空間に配置されている。その空間そのものも外装カバー606で覆っている。かかる電源基板ユニット602や画像形成部の発熱を抑えて温度を一定範囲に保つために冷却ファン607も備わっている。また、実装されたトランジスタやトライアックといった発熱量の多い電装部品608にはヒートシンク609が備わっており、そのヒートシンク609と電装部品608とは面接触して止ビス610で結合されている。発熱量の多い電装部品608は良好に動作できるよう効果的に冷却される必要がある。そのため、十分な蓄熱容量を有する大型のヒートシンク609を必要とし、さらには蓄えられた熱量Qを放出するに十分な冷却風を冷却ファン607によってヒートシンク609の周囲に流すような工夫や機構が必要となる。
【0006】
【特許文献1】特開2005−70433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図5の画像形成装置にあっては、冷却ファン607からの冷却風607aはヒートシンク609に達するまでに基板602a上に実装された各種電装部品に当たって抵抗を受ける。そのため、ヒートシンク609に接して結合されているトランジスタなど発熱量の多い電装部品608に必要とする十分な冷却風607aが供給されず、電装部品608を効果的に冷却できない。冷却効果を高めるためにヒートシンク609を大型化すると、つぎの問題点が発生する。
【0008】
ヒートシンク609を搭載している電源基板ユニット602は画像形成装置本体の側面に外装カバー606で覆われている。したがって、ヒートシンク609が大型化すればそれに合わせて外装カバー606も大形サイズとなるので、製品全体が大型化してしまう。すなわち、図5中の符号(d)で示す基板602aの表面からの高さ方向にヒートシンク609を大きくすると、外装カバー606が装置本体側面から出っ張る寸法が大きくなって大型化する。また、ヒートシンク609を図5中の矢印X,Yで示す平面方向に大きくすると、それだけ基板602aのサイズも平面方向に大きく、それに応じて外装カバー606も大きくなる。そのように電源基板ユニット602が大型化するだけ、特に発熱量の多い電装部品608に対して有効かつ十分な冷却風が行き渡らなくなる。その場合に十分な冷却風を供給しようとすれば、冷却ファン607として大型性能のものが要求される。このように、発熱量の多い電装部品608など多種類の電装部品を実装した一枚物の基板602aにおいて、有効な冷却を実現し、また装置の高速化と小型化を同時達成することが難しい。
【0009】
本発明の目的は、装置性能の高速化で電装部品の発熱量が増加しても、大型性能の冷却ファンを必要とせず、電装部品を有効に冷却しつつ、装置の大型化を抑え、かつ装置の高速化を同時達成できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係る代表的な画像形成装置は、電装部品を備えた第1電源基板と、電装部品を備えた第2電源基板と、開口から風を排出するダクトを備えた送風手段と、を有する画像形成装置において、前記第1電源基板及びその電装部品と、前記第2電源基板及びその電装部品とで囲まれた空間を形成し、この空間に前記送風手段からの風が通るものであり、前記空間の断面積は前記ダクトの開口の面積と略等しいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像形成装置によれば、第1,第2電源基板上に実装されて発熱する電装部品を有効に冷却するために、第1,第2電源基板とそれらの電装部品で囲んだ空間に冷却手段から排出した風を通す。冷却手段からの風をその空間に通した際、第1,第2電源基板とそれらの電装部品が風の通路を形成しているから、その風を冷却風として電装部品を効果的に冷却することができる。その場合、空間の断面積をダクトの開口の面積に略等しくすることによって、損失の少ない冷却効率で電装部品を冷却することができる。
【0012】
また、本発明の画像形成装置によれば、冷却効果を高めるために大型性能の冷却手段を必要としないので、画像形成装置という製品の小型化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る画像形成装置の好適な実施形態について図を参照して詳記する。
【0014】
≪画像形成装置の構成≫
図1は、電装ユニットを搭載した本実施形態による画像形成装置の構成を示す。この装置本体Sには、駆動ローラ1とテンションローラ2とのローラ間に中間転写ベルト3が張架されている。この中間転写ベルト3の周面に沿ってたとえばY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)のプロセスステーション4Y,4M,4C,4Kが横一列に並ぶように配置されている。以下、代表符号「4」を付してプロセスステーションを説明する。各プロセスステーション4内の感光体ドラム5は画像形成部6において表面に潜像が形成され、各感光体ドラム5上の各色のトナー像は、感光体ドラム5と対向した転写部で中間転写ベルト3に一次転写される。一次転写後、二次転写部において転写ローラ7によって転写材であるシートPに転写してトナー像が形成される。
【0015】
すなわち、シートPは給送カセット8から給送されて、シート搬送ローラ9によって中間転写ベルト3へと導かれる。トナー像が転写されたシートPは、定着回転体10と加圧ローラ11とによる定着ニップ部Nで挟持して搬送する間、加熱および加圧してトナー像を定着して定着装置Fの外部へ導かれ、排紙トレイ12へと排紙して積載される。
【0016】
≪電装ユニット上の電装部品構成≫
図2は、電装ユニットを構成する各種電装部品の配置を示す。
【0017】
図1の画像形成装置本体Sには、画像形成部6を駆動する駆動手段13と、この駆動手段13を電子制御する制御手段が設けられている。制御手段は、ICなどの電装部品が実装された制御基板ユニット14からなり、また電装部品に電力供給する給電部としての電源基板ユニットDが備わっている。以下、本実施形態では、電装ユニットの代表として電源基板ユニットDについて説明する。図3および図4に示すように、電源基板ユニットDは複数の回路基板、すなわちここでは第1電源基板15と第2電源基板16を有している。本実施形態ではそれら第1,第2電源基板15,16は直角もしくはそれに近い角度を有するL字形状に固定されている。第1,第2電源基板15,16にはトランス15aやフィルタ16aなどの電装部品が実装されている。そうした電源基板ユニットDや駆動手段13は図2に示す画像形成装置本体Sの枠体17に固定して外装カバー18で被覆保護されている。
【0018】
また、図2に示すように、冷却手段である冷却ファン19から冷却風を送って電源基板ユニットDや画像形成部6が発熱して設定温度以上になるのを抑え、一定の温度範囲を維持するようになっている。冷却ファン19を支持するファン用のダクト20には、電源基板ユニットDと画像形成部6にそれぞれ冷却風を流して送風するための開口20a,20bが設けられている。
【0019】
≪電源基板ユニットD≫
図3は、画像形成装置本体Sの側面に設けた電源基板ユニットDの単体図であり、図2の装着状態を内側から見て示す図である。また、図4は、図3の右側から矢印A方向に見て示す電源基板ユニットD単体の側面断面図である。電源基板ユニットDでは、電子電気回路が上記2枚の第1,第2電源基板15,16に跨って分かれて形成されている。第1,第2電源基板15,16は鋼板製の基板支持部材21の上にL字形状をなして固定されている。支持部材21にはフック21aが設けられ、電源基板ユニットDに設けたスリット(図示略)にそのフック21aを係合させて2枚の第1,第2電源基板15,16を固定している。なお、後述するように、第1,第2電源基板15,16に代えて、上記基板支持部材21をL字形状に形成して用いることもできる。
【0020】
図3および図4に示すように、L字形状の縦方向に固定された一方側の第1電源基板15にはトランジスタ15aやトライアック15bなど発熱量の多い電装部品が実装されており、そうしたトランジスタ15aなどが良好に動作できるよう冷却する必要がある。そのため、十分な蓄熱容量を有するヒートシンク15cに面接触させてビス15dによって固定している。また、L字形状の横方向に固定された他方側の第2電源基板16にはコンデンサ16aやフィルタ16bなど比較的大型サイズの電装部品が実装されている。それら比較的大型サイズの電装部品は上記のトランジスタ15aやトライアック15bに直交する方向から向き合い、あるいは一部先端同士が重なり合うようにして配置されている。また、本実施形態の場合、L字形状に固定された縦方向の第1電源基板15はたとえば長辺を形成し、横方向の第2電源基板16は短辺を形成している。すなわち、第1電源基板15と第2電源基板16を平行方向に見て、第1電源基板15の電装部品の先端と第2電源基板16の電装部品の先端が重なるように設けられている。
【0021】
図4において、本実施形態の要旨として、上記の第1,第2電源基板15,16上に実装された電装部品は、それらの先端部同士が図中符号Bで示す破線領域で示すように交錯し、あるいは一部重なり合って配置されている。したがって、従来構造のように、平板状の一枚の基板上に電子部品をベタに配置した場合と比較して、電源基板ユニットDの断面積S2が小さくてボリュームの肥大化が抑えられるので、その分だけ製品として装置本体の小型化が可能となる。
【0022】
そこで、L字形状に固定された2枚の第1,第2電源基板15,16と、それら基板表面に実装された電装部品とで囲われた符号Daで示す空間部によってたとえば断面矩形状で筒状の冷却風路を形成している。つまり、複数の電装部品自身が冷却風路を形成する「ダクト代わり」になっている。また、図2および図3に示すように、冷却ファン19は冷却風をファンダクト20から冷却風路Daおよび画像形成部6に吹き込んで供給する。図3で明らかなように、ファンダクト20の吐出口側は開口20aと開口20bに分岐して形成され、一方の開口20aに冷却風路Daを仮想線で示す分岐ダクトDbを介して連通させている。また、他方の開口20bから吐出された冷却風は画像形成部6などに供給される。その場合、図3および図4に示す冷却風路Daの断面積S1を、ダクト吐出口から分岐した一方の開口20aの高さ(h)と幅(b)による面積bhに略等しい大きさになるように形成する。そうすることによって、冷却風の損失を最小限に抑えて有効な冷却が可能となる。従来、形状や大きさが異なる各種電装部品を平板状の一枚の回路基板上にベタ配置したことで、冷却風がそれら電装部品の凹凸に当たって抵抗を受けた。本実施形態では、各種電装部品を「ダクト代わり」に配置して筒状の冷却風路Daを形成し、風路奥方に配置された比較的発熱量の大きな電装部品に対しても冷却風を有効に送風して冷却することができる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態の画像形成装置によれば、生産性を高めるべく装置の高速化のために電源ユニットの発熱量が増加したとしても、電装部品を覆う外装カバーや冷却ファンを大型化する必要がなくなる。結果、電源要素の冷却効率を維持しつつ製品としての画像形成装置本体の大型化を抑えて、小型化と高速化を同時に達成することができる。
【0024】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内でその他の実施形態、応用例、変形例、そしてそれらの組み合わせも可能である。たとえば、上記実施形態にあっては2枚の第1,第2電源基板15,16を各種電装部品と一緒に冷却風路Daを形成する「ダクト代わり」に用いた。そうした第1,第2電源基板15,16の使用に限定されず、回路基板15,16を支持している上記基板支持部材21をL字形状に形成して「ダクト代わり」に用い、冷却風路Daを形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】電装ユニットを搭載した本発明による好適な実施形態の画像形成装置を示す概略図。
【図2】本実施形態の画像形成装置に搭載された電装ユニットを表側から見て示す斜視図。
【図3】同電装ユニットを背後から見て示す斜視図。
【図4】同電装ユニットを側面から見た図。
【図5】画像形成装置に搭載された電装ユニットの従来構造を示す図。
【符号の説明】
【0026】
1 駆動ローラ
3 中間転写ベルト
4Y,4M,4C,4K プロセスステーション
5 感光体ドラム
6 画像形成部
13 駆動部
14 制御基板
15,16 第1,第2電源基板
17 画像形成装置本体の枠体
18 外装カバー
Da 冷却風路
Db 分岐ダクト
−以下電装部品−
15a トランジスタ
15b トライアック
15c ヒートシンク
15d 止ビス
16a コンデンサ
16b フィルタ
19 冷却ファン(冷却手段)
20 ファンダクト
20a 開口
20b 開口
21 基板支持部材
21a フック
P シート(転写材)
S 画像形成装置本体
D 電源ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電装部品を備えた第1電源基板と、電装部品を備えた第2電源基板と、開口から風を排出するダクトを備えた送風手段と、を有する画像形成装置において、
前記第1電源基板及びその電装部品と、前記第2電源基板及びその電装部品とで囲まれた空間を形成し、この空間に前記送風手段からの風が通るものであり、前記空間の断面積は前記ダクトの開口の面積と略等しいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1電源基板と前記第2電源基板はL字形状をなすように設けられ、前記第1電源基板及び前記第2電源基板と平行方向に見て、前記第1電源基板の電装部品の先端と前記第2電源基板の電装部品の先端が重なるように設けられていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−122452(P2009−122452A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296949(P2007−296949)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】