説明

画像形成装置

【課題】電源がOFFされるなどして時間を認識できない状態になった後に、電源がONされた場合に、液体を大量に消費するのを抑える画像形成装置を提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタ1は、インクタンク5a〜5dとインクジェットヘッド4とをキャリッジ2に搭載している。インクジェットプリンタ1は、電源がOFFされて時間測定部68が時間を測定できない測定不能状態となった後で、電源がONされたときには、制御装置60に設けられた回復動作選択部66によりインクタンク5a〜5dの上部に溜まったエアを排出する排気動作が選択される。インクジェットヘッド4のノズルからインクを吸引するパージ動作は行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を噴射して被画像形成媒体に画像形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、画像形成装置、例えばインクジェットプリンタは、被記録媒体に対して相対移動可能に支持されるキャリッジに、被記録媒体に対してノズルからインクを噴射するインクジェットヘッドとこのインクジェットヘッドにインクを供給するインクタンクとを搭載している。このインクタンクには、ヘッドホルダ外に配置されたインクカートリッジからチューブを介してインクが供給される。このインクジェットプリンタは、インクカートリッジからチューブを介して供給されるインクをインクタンクに貯留し、インク中に含まれるエアを分離した後、このインクタンクに貯留しているインクをインクジェットヘッドに供給する。
【0003】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタにおいては、インクジェットヘッドのノズルに密着させる吸引キャップと、それに併設した排気キャップとを備え、吸引キャップによりノズルから増粘したインクを吸引し、またインクタンク内に溜められたエアを、インクタンクの上部に連通する排気通路から排気キャップにより吸引するようにしている。
【0004】
このようなインクジェットプリンタは、一般に時間計測機能を備え、上記のインクの吸引、及びエアの吸引を所定周期で行っている。しかし、電源がOFFされ、または時間計測機能をバックアップするバッテリが切れたりして、時間を認識できない状態になった後に、電源がONされた場合には、長期間不使用状態にあったことを想定して、つまり、ノズル内のインクの乾燥が進行し、またインクタンク内においてインク中のエアが大量に気泡として成長していることを想定して、インク及びエアを大量に吸引して排出するパージ動作を行っていた。
【0005】
【特許文献1】特開2004−255861号公報(図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェットプリンタにおいては、時間を認識できない状態になった後に、電源がONされた場合には、上記のようにノズルから大量のインクを排出するだけでなく、インクタンクの上部からエアを吸引することにともないインクもついでに吸引して排出してしまう。またエアの蓄積量以上にエアを吸引すると排気通路からインクも排出してしまう。このため、電源がONされた場合消費されるインクの量が増大してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、電源がOFFされるなどして時間を認識できない状態になった後に、電源がONされた場合に、液体を大量に消費するのを抑える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、画像形成用の液体を貯留する液体タンクと、前記液体タンクと接続され、この液体タンクから供給された液体をノズルから被画像形成媒体に噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体タンクと前記液体噴射ヘッドが搭載されたキャリッジと、前記液体噴射ヘッドの噴射機能を回復させる回復手段と、時間を測定する時間測定手段と、前記時間測定手段からの情報に基づいて前記回復手段を制御する制御手段と、を備え、前記回復手段は、噴射機能回復動作として、前記液体タンクからエアを排出する第1回復モードと、前記液体タンクからエアを排出するとともに前記ノズルからも液体を排出する第2回復モードの、2つの回復モードを選択的に実行可能であり、前記時間測定手段が時間を測定できない測定不能状態となった後で、電源がONされたときには、前記制御手段は、前記回復手段に、前記第1回復モードを行わせることを特徴とする。
【0009】
本発明の画像形成装置によると、電源OFF等により時間測定手段により時間を測定できなくなった後で、電源がONされたときには、制御手段は、回復手段に第1回復モードを実行させる。つまり、電源OFF等により時間測定手段が時間を測定できなくなっているが、これは一般に非噴射時であり、液体噴射ヘッドはキャップで覆われているため、液体の乾燥などが進みにくくなっており、電源ON後直ちに噴射を行っても、噴射不良をきたすことが少ないので、噴射機能回復動作としてノズルから液体を排出する動作は行わない。
一方、時間の経過とともに液体タンク内において液体中のエアが成長し、画像形成するためにノズルから液体を噴射する際に、エアを引き込んで噴射不良をきたすまでの期間が短くなっていることが予想されるので、噴射機能回復動作として、液体タンクからエアを排出する動作のみを行う。また、所定周期等でノズルから液体を排出する回復動作を行う際に、液体タンク内のエア量が多いと、ノズルにエアを引き込み、その後に液体を噴射する際に噴射不良をきたすおそれがあるが、上記のように液体タンク内のエア量を減らしておくことで、次にノズルからインクを排出する回復動作を行う際に、それを回避することができる。これらにより、電源ON後に行われる噴射機能回復動作で消費される液体の量を少なくして画像記録動作を開始することすることができる。
【0010】
また、前記制御手段は、前記時間測定手段により測定された時間に基づいて、直近に行われた噴射機能回復動作から所定時間が経過しているか否かを判断し、前記所定時間が経過していると判断した場合には、前記回復手段に前記第2回復モードを実行させることが好ましい。時間測定手段が時間を測定できている状態では、前回の回復動作から所定時間経過したときに、回復手段に第2回復モードを実行させる。これにより、確実にインク噴射機能を回復させることができる。
【0011】
さらに、前記制御手段は、前記時間測定手段が測定不能状態となった後に電源ONして前記回復手段に前記第1回復モードを実行させるときの、前記液体タンクからのエア排出量を、前記測定手段が測定状態にあるときに前記回復手段に前記第2回復モードを実行させるときの、前記液体タンクからのエア排出量以下に設定することが好ましい。電源OFFによって時間測定手段が時間を測定できなくなって、液体タンク内にエアが大量に溜まっていることが予想される場合でも、電源ON後上記のように第1回復モードで排気動作を行い、第2回復モードでのエア排出量以下のエアを排出することで、噴射動作を支障なく開始することができる。
【0012】
加えて、前記制御手段は、前記被画像形成媒体への画像形成開始前に、前記液体噴射ヘッドに、前記被画像形成媒体に対向する領域よりも外側の領域において前記ノズルから液体を噴射するフラッシング動作を実行させるものであり、さらに、前記制御手段は、前記時間測定手段が測定不能状態となった後に電源ONして前記回復手段に前記第1回復モードを実行させた場合には、その他の場合よりも、画像形成開始前に前記液体噴射ヘッドに実行させるフラッシング動作における噴射の回数を多くすることが好ましい。このように、時間測定手段が測定不能状態となった後に電源ONして第1回復モードを実行した後において、画像形成開始前にフラッシング動作を行うときには、その他の場合にフラッシング動作を行うときよりも、フラッシング動作における噴射の回数を多くすることで、ノズルから液体を排出する動作を行わないことによるノズル内のインクの乾燥進行に対応可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の画像形成装置をインクジェットプリンタに具体化した実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、液体噴射ヘッドすなわちインクジェットヘッド4を被画像形成媒体たる用紙と平行に往復走査する主走査装置と、その往復走査方向に対して直交する方向に用紙を搬送する搬送装置と、インクジェットヘッド4に画像形成用の液体、すなわちインクを供給するインク供給装置と、インクジェットヘッド4の噴射機能を回復させる回復装置とを主に備え、さらに、それらの動作を制御する制御装置60と、それらに動作用の電力を供給するための電源装置80とを備えている。
【0015】
主走査装置は、インクジェットヘッド4を搭載したキャリッジ2を備え、そのキャリッジをガイド軸3に沿って走査方向(図1左右方向)に往復移動させる。インクジェットヘッド4は、キャリッジ2の下面にノズル25(図2参照)を露出させており、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動しつつ、ノズル25から用紙Pに向けてインクを噴射する。
【0016】
インク供給装置は、キャリッジ2外のインクジェットプリンタ1における静止部位13に装着された4つのインクカートリッジ14a〜14dと、キャリッジ2の上に搭載された4つのインクタンク5a〜5dと、インクカートリッジ14a〜14dとインクタンク5a〜5dとを接続する4本のチューブ6a〜6dとからなる。インクカートリッジ14a〜14dには、それぞれブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが充填されている。これら4色のインクは、インクカートリッジ14a〜14dから4本のチューブ6a〜6dを介して、4つのインクタンク5a〜5dに供給され、さらにインクタンク5a〜5dからインクジェットヘッド4に供給される。
【0017】
搬送装置は、用紙Pを、インクジェットヘッド4のノズルの下方位置において、キャリッジ2の走査方向と直交する方向(図1中紙面手前方向)に搬送する搬送ローラ9を備える。
【0018】
回復装置は、公知のようにパージ動作、排気動作、フラッシング動作を行う。排気動作のために、各インクタンク5a〜5dには、図3に示すように、その上面から右方に延び、その右端部において下方に略直角に折れ曲がった排気流路7a〜7dが設けられている。4つの排気流路7a〜7dは、下端7eをインクジェットヘッド4の側方において外部に開口させており、それぞれ内部に弁17を備えている。弁17は、バネ18の作用によって常には排気流路7a〜7dを外部に対して閉じている。
【0019】
排気キャップ8及びパージキャップ10は、インクジェットプリンタ1において用紙Pが搬送される領域よりも側方に設けられている。排気キャップ8及びパージキャップ10は、昇降機構19により上下方向に移動可能となっており、用紙Pの搬送領域外に移動したキャリッジ2に向け上方に移動することにより、排気流路7a〜7dの下端開口7eに排気キャップ8が、インクジェットヘッド4の下面にパージキャップ10がそれぞれ密着する。排気キャップ8は、内部に押し上げ突部8aを備えており、排気キャップ8が排気流路7a〜7dの下端開口7eに接続されたとき、その突部8aにより弁17を押し上げて開き、サブタンク5内の上部空間と排気キャップ8内と接続する。
【0020】
パージキャップ10と排気キャップ8は、それぞれ別々の昇降機構によって、上下動するようにしてもよい。また、排気キャップ8とその中の突部8aとは、別々の昇降機構によって上下動するようにしてもよい。さらに、排気通路7a〜7d内の各弁17を別々に開閉するようにしてもよい。
【0021】
排気キャップ8及びパージキャップ10は、それぞれ切替装置11を介して吸引ポンプ12に接続されている。切替装置11は、排気キャップ8及びパージキャップ10と吸引ポンプ12との接続及びその遮断を切り替える。
【0022】
排気キャップ8が排気流路7a〜7dに接続され、切替装置11により排気キャップ8と吸引ポンプ12とが接続された状態で、吸引ポンプ12を動作させると、排気流路7a〜7dからインクタンク5a〜5d内の上部のエアが外部に排出される。
【0023】
また、パージキャップ10によりインクジェットヘッド4の下面、つまりノズル25が覆われ、切替装置11によりパージキャップ10と吸引ポンプ12とが接続された状態で、吸引ポンプ12を動作させると、ノズル25からインクジェットヘッド4内のインクを吸引するパージ動作が行われる(吸引パージ動作)。
【0024】
フラッシング動作は、公知のようにインクジェットヘッド4の噴射性能を回復させるために、キャリッジ2が記録用紙Pの搬送領域よりも側方の位置に移動した状態で、インクジェットヘッド4を駆動して全ノズル25からインクを、画像データとは無関係にパージキャップ10または図示しない公知の容器に向けて噴射して行われる。
【0025】
図2は、インクジェットヘッド4の一例を示すものである。インクジェットヘッド4は、公知のものと同様に、記録用紙と対向する下面に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクごとに列をなす多数のノズル25を備え、各インク毎に設けられたマニホールド流路21に各列のノズル25を圧力室20を介して連通させている。マニホールド流路21は、一端の供給口27を対応するサブタンク5に連通させ、サブタンク5から供給されたインクを圧力室20に分配する。圧力室20内のインクは、公知のように吐出エネルギーを付与されることによって、ノズル25から液滴となって記録用紙へ向け吐出される。吐出エネルギーの付与手段としては、圧電素子の変形させるもの、ヒータによりインクを発泡させるものなどが適用可能である。
【0026】
次に、インクジェットプリンタ1の動作を制御する制御装置60(制御手段)について、図4を参照しつつ説明する。制御装置60は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などによって構成されており、これらが画像形成制御部61、噴射機能回復部63及び時間測定部68(時間測定手段)として動作する。
【0027】
画像形成制御部61は、入力装置90から入力された画像データに基づいて画像形成を行う際、インクジェットヘッド4、主走査装置及び搬送装置の動作を制御する。
【0028】
噴射機能回復部63は、回復装置によるパージ動作、排気動作、フラッシング動作を制御するものであり、フラッシング制御部62、パージ制御部64、排気制御部65及びそれらの各制御部を選択的に制御する回復動作選択部66を備える。なお、画像形成制御部61に画像データに基づく画像形成指令信号が入力されていないとき、噴射機能回復部63は、インクジェットヘッド4をパージキャップ10と対向する位置に移動させ、ノズル2をパージキャップ10で覆った状態にする。このとき切替装置11は、パージキャップ10及び排気キャップ8を吸引ポンプ12を接続しない、すなわち両キャップともインクジェットヘッド4及び排気流路7a〜7dに密着して外部と連通しない状態としている。パージキャップ10及び排気キャップ8に代え、専用のキャップを用いることもできる。
【0029】
フラッシング制御部62は、フラッシング動作を行う際のインクジェットヘッド4及びキャリッジ2の動作を制御する。
【0030】
パージ制御部64は、パージキャップ10で吸引パージ動作を行う際のキャリッジ2、昇降機構19、切替装置11及び吸引ポンプ12の動作を制御する。
【0031】
排気制御部65は、排気キャップ8でインクタンク5内のエアの排気動作を行う際のキャリッジ2、昇降機構19、切替装置11及び吸引ポンプ12の動作を制御する。
【0032】
回復動作選択部66は、インクタンク5a〜5d内に溜まったエアに外部に排出するために、排気動作のみ行うモード(第1回復モード)、吸引パージ動作を行うモード(第2回復モード)、フラシング動作を、後述する時間測定部68から入力された時間データ、電源のON−OFFまたは画像形成前のタイミングなどに基づいて選択する。
【0033】
時間測定部68は、噴射機能回復部63により前回回復動作が行われてから現在までの経過時間を測定し、回復動作選択部66に出力する。この時間測定部68は、電源装置80がバッテリを搭載している場合には、商用電源から切断すなわちOFFした後も一定期間バッテリにより経過時間の測定機能を保持しているが、その後バッテリも切れると、測定した時間データが消去されかつ経過時間を測定できない状態となる。したがって、この場合、商用電源から切断した後上記一定期間内に再び商用電源を接続すれば、時間測定部68は測定動作を継続する。また、電源装置80がバッテリを搭載していない場合には、電源をOFFにすると、測定した時間データが直ちに消去されかつ経過時間を測定できない状態となる。
【0034】
図5に示すように、インクジェットプリンタの電源がOFF状態からONされる(S1)と、まず、時間測定部68の動作状況を判断する(S2)。ここでは測定された経過時間を読み取ることにより、あるいはバッテリが切れているか否かでそれを判断してもよい。プリンタにバッテリが搭載されていて電源がOFF状態でも時間測定部68の動作が継続されていた場合には、時間測定部68により経過時間を測定できている(S2:Yes)。しかし、そのバッテリも切れていた場合及びバッテリを搭載していない装置の場合、時間測定部68の動作が停止され、電源がOFFされて前回の回復動作からの経過時間が不明となっている(S2:No)。このとき、回復動作選択部66は、排気制御部65を動作させて排気キャップ8と排気流路7a〜7dとを接続し、かつ切替装置11により排気キャップ8と吸引ポンプ12とを接続し、インクタンク5a〜5dの上部に溜まったエアの排出動作(第1回復モード)を行う(S3)とともに制御装置60はフラグFを1とし(S4)、時間測定部68に経過時間の測定を開始させる(S5)。
【0035】
電源がOFFされている間、インクジェットヘッド4はパージキャップ10または他の専用キャップで覆われているため、ノズルでのインクの乾燥などが進みにくくなっているおり、電源ON後直ちに噴射を行っても、噴射不良をきたすことが少ない。このため、ここでは噴射機能回復動作としてノズルから液体を排出する動作は行わない。
【0036】
一方、時間の経過とともにインクタンク5a〜5b内においてインク中でエアが成長しており、画像形成するためにノズルからインクを噴射する際に、インクタンク5a〜5dの上部にエアが大量に溜まっていると、そのエアをノズルに引き込んで噴射不良をきたすまでの期間が短くなる。そこで、噴射機能回復動作として、上記S3のようにインクタンクからエアを排出する動作を行うことで、インクカートリッジ14a〜14dからインクをインクタンク5a〜5d内へ導入し、噴射動作を支障なく開始することができるようにしておく。また、後述するように、所定周期等でノズルからインクを排出する第2回復モードのパージ動作を行う際に、インクタンク内に溜まっているエア量が多いと、吸引動作によってノズルにエアを引き込み、その後に画像形成するためにインクを噴射する際に噴射不良をきたすおそれがある。しかし、上記のように第1回復モードでインクタンク内のエア量を減らしておくことで、次に第2回復モードでノズルからインクを排出するパージ動作を行う際に、それを回避することができる。したがって、電源OFFによって時間測定部68が時間を測定できなくなっていたとしても、電源ON後、少ないインクの消費で、噴射不良の少ない画像形成動作を開始することができる。また、第1回復モードでのエア排出量は、第2回復モードで行うエア排出量と同等でもよいが、それ以下に設定しておくことが好ましい。エア排出量は、吸引ポンプ12の動作時間、回転速度またはそれらの組み合わせによって制御することができる。
【0037】
また、次に第2回復モードのパージ動作を行うまでの間に、インクタンク5a〜5d内のエア量が過大にならなければよいので、第1回復モードでのエア排出量は、第2回復モードでのエア排出量以下であることが好ましい。これにより、第1回復モードにおいてエアと一緒に排出されるインクの量を少なくすることができる。なお、両者のエア排出量は同等であっても差し支えない。
【0038】
そして、入力装置90から入力された画像形成すべき画像データが、制御装置60内の公知のイメージメモリに存在するか否かが判断される(S6)。画像データが存在し(S6:Yes)、フラグF=1、すなわち電源OFFによって経過時間が不明であった場合(S7:Yes)、画像形成を開始する前のタイミングにおいて、回復動作選択部66はフラッシング制御部62を動作させ、インクジェットヘッド4のノズルから、画像データとは無関係にインクを噴射させるフラッシング動作を行い(S8)、フラグFを0に戻す(S9)。このとき、フラッシング動作によってノズルからインクを噴射させる回数は、後述する第2回復モード後に行うフラッシング動作における噴射回数よりも多くしておく。これは、第1回復モードでは吸引パージ動作によるノズル25からインクを排出する動作を行わないため、ノズル25内のインクの乾燥が進行している虞がある。そこで、フラッシング動作における噴射の回数を増やすことで、確実にノズル25内の乾燥が進んだインクを排出する。
【0039】
その後、画像形成制御部61は、キャリッジ2を走査移動させ、画像データにもとづきインクジェットヘッド4により用紙上に画像形成を行わせる(S10)。この画像形成は、公知のように、キャリッジ2の一または複数走査、すなわち用紙上の一または複数行単位で行われる。
【0040】
一方、上記S2で、時間測定部68により経過時間を測定できている場合(S2:Yes)、及び上記単位の画像形成(S10)が終了した場合、時間測定部68により測定時間が所定時間を経過しているか否かが判断される(S11)。その測定時間が所定時間を経過している、つまり第1回復モードの排気動作(S3)または前回の第2の回復モードによる回復動作から所定時間を経過している場合(S11:Yes)、回復動作選択部66により第2回復モードが選択される。第2回復モードでは、まず排気制御部65が動作され、第1回復モードと同様に、排気キャップ8と排気流路7a〜7dとを接続し、かつ切替装置11により排気キャップ8と吸引ポンプ12とを接続して、インクタンク5a〜5dの上部に溜まったエアの排出動作を行う(S12)。次にパージ制御部64が動作され、パージキャップ10でノズル25を覆った状態で、切替装置11によりパージキャップ10と吸引ポンプ12とを接続し、ノズル25からインクを吸引して排出する吸引パージ動作を行う(S13)。その第2回復モードが実行されると、時間計測部68はリセットされ、次回の第2回復モードのための時間計測を再開する(S14)。
【0041】
上記のようにパージ動作(S13)の前にエアの排出動作(S12)を行うのは、インクタンク5a〜5dの上部に溜まったエアを先に排出しておくことで、ノズルからパージ動作を行う際にそのエアをノズルへ引き込まないようにするためである。このため、ノズル内のインクの乾燥が噴射動作に影響したり、インクタンク5a〜5dに溜まったエアが噴射動作時にインクジェットヘッド4へ引き込まれない限り、第2回復モードの周期をできるだけ長くすることができる。これによりインクタンク5a〜5dにエアが大量に溜まっても、エアの排出動作(S12)で除けば、インクカートリッジ14a〜14dから新しいインクがインクタンク5a〜5dに導入され、パージ動作(S13)を、ノズルへエアを引き込ませなく行うことができる。
【0042】
その後、画像形成すべき画像データがある場合(S6:Yes)、このときフラグF=0であるから(S7:No)、S15でフラッシング動作の周期にきているか否かが判断される。フラッシング制御部62は、フラッシング動作を、複数単位の画像形成を行うごとに、画像形成を開始する前に挿入するように設定されている。また、フラッシング動作の周期は、時間測定部68による時間測定によって制御してもよい。この場合、フラッシング動作の周期と第2回復モードの周期とは異なる周期に設定される。
【0043】
S15でフラッシング動作の周期にきているならばフラッシング動作を行い(S16)、その周期にきてない場合には直接、画像形成動作を行う(S10)。このときのフラッシング動作(S16)は、画像形成を行っている間に挿入されるため、ノズル25でのインクの乾燥の進行が少ないから、前述のS8でのフラッシング動作よりも、噴射回数が少なくてもよい。
【0044】
時間測定部68により測定している時間がまだ所定時間を経過していない場合(S11:No)、画像形成すべき画像データがあれば(S6:Yes)、上記のように画像形成を行う。画像データがない場合(S6:No)、所定時間を経過する(S11:Yes)ごとに、上記のように第2回復モードの回復操作(S12.S13,S14)を行う。
【0045】
以上説明したインクジェットプリンタ1によると、電源OFFにより時間測定部68により経過時間を測定できなくなった場合には、電源ON後に、制御装置60は、回復動作選択部66により第1回復モードによる排気動作を実行させる。つまり、噴射機能回復動作として、インクタンク5a〜5dからエアを排出する動作のみを行い、ノズル25からインクを排出する吸引パージ動作は行わない。そのため、頻繁に電源のON、OFFを繰り返す環境において、電源ON後に行われる噴射機能回復動作で消費されるインクの量を少なくすることができる。
【0046】
なお、第1回復モードによる回復動作の後、噴射不良が発生した場合には、公知のようにユーザが制御部60を任意に制御するキーを設けて、そのキー操作により第2回復モードを実行させるようにしてもよい。また、ユーザがインクカートリッジ14a〜14dを装着した後も、電源のONに無関係に、上記第1回復モードでなく、第2回復モードを実行させることが好ましい。
【0047】
時間測定部68が経過時間を測定できている状態では、前回の噴射機能回復動作から所定時間経過したときに、回復動作選択部66により第2回復モードによる排気動作及び吸引パージ動作を実行させる。これにより、確実にインク噴射機能を回復させることができる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述した実施形態においては、吸引ポンプによって排気動作、パージ動作を行うようにしたが、インクカートリッジ14a〜14d側からインクに正圧を加え、弁17を開いた状態で、インクタンク5a〜5dからエアを押し出す排気動作、弁17を閉じた状態で、ノズル25からインクを押し出すパージ動作を行うように構成することもできる。
【0049】
また、本実施形態においては、キャリッジ2が用紙に沿って走査する構成を採ったが、キャリッジ2はインクジェットヘッド4を用紙と対向する位置に静止して支持するのみで、用紙のみが走行する構成とすることもできる。
【0050】
さらに、本実施形態においては、画像形成装置をインクジェットプリンタに具体化した例を示したが、インク以外の液体例えば、着色剤を所定のパターン状に塗布して液晶表示装置のカラーフィルタを製造する装置、導電性の液体を線状に塗布して電気回路の配線パターンを形成する装置などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】インクジェットヘッドの平面図である。
【図3】(a)図1のインクジェットヘッド、サブタンク部分の縦断面図、(b)前記(a)のb−b断面図とそれに対応するキャップ部分の断面図である。
【図4】制御装置の概略を示すブロック図である。
【図5】噴射機能回復動作を行うまでの流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 インクジェットプリンタ
2 キャリッジ
4 インクジェットヘッド
5a〜5d インクタンク
25 ノズル
63 噴射機能回復部
60 制御装置
64 パージ制御部
65 排気制御部
66 回復動作選択部
68 時間測定部
80 電源装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成用の液体を貯留する液体タンクと、
前記液体タンクと接続され、この液体タンクから供給された液体をノズルから被画像形成媒体に噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体タンクと前記液体噴射ヘッドが搭載されたキャリッジと、
前記液体噴射ヘッドの噴射機能を回復させる回復手段と、
時間を測定する時間測定手段と、
前記時間測定手段からの情報に基づいて前記回復手段を制御する制御手段と、を備え、
前記回復手段は、噴射機能回復動作として、前記液体タンクからエアを排出する第1回復モードと、前記液体タンクからエアを排出するとともに前記ノズルからも液体を排出する第2回復モードの、2つの回復モードを選択的に実行可能であり、
前記時間測定手段が時間を測定できない測定不能状態となった後で、電源がONされたときには、前記制御手段は、前記回復手段に、前記第1回復モードを行わせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記時間測定手段により測定された時間に基づいて、直近に行われた噴射機能回復動作から所定時間が経過しているか否かを判断し、前記所定時間が経過していると判断した場合には、前記回復手段に前記第2回復モードを実行させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記時間測定手段が測定不能状態となった後に電源ONして前記回復手段に前記第1回復モードを実行させるときの、前記液体タンクからのエア排出量を、前記測定手段が測定状態にあるときに前記回復手段に前記第2回復モードを実行させるときの、前記液体タンクからのエア排出量以下に設定することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記被画像形成媒体への画像形成開始前に、前記液体噴射ヘッドに、前記被画像形成媒体に対向する領域よりも外側の領域において前記ノズルから液体を噴射するフラッシング動作を実行させるものであり、
さらに、前記制御手段は、前記時間測定手段が測定不能状態となった後に電源ONして前記回復手段に前記第1回復モードを実行させた場合には、その他の場合よりも、画像形成開始前に前記液体噴射ヘッドに実行させるフラッシング動作における噴射の回数を多くすることを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−83400(P2009−83400A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258452(P2007−258452)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】