説明

画像形成装置

【課題】定着部の加熱時における加熱ローラ及び加圧ローラの表面温度変化の抑制と均一性確保とその動作時間短縮。
【解決手段】加熱手段と、加熱手段により加熱される加熱回転部材(加熱ローラ)と、加熱回転部材と圧接する加圧回転部材(加圧ローラ)と、加圧回転部材の表面温度を検知する検出手段と、加熱回転部材及び加圧回転部材の回転速度を制御する駆動制御手段とを備え、駆動制御手段は、検出手段により検出された表面温度が所定の温度に達するまでに、検出手段によって検出される表面温度の変化量あるいは変化率に応じて、回転速度(定着速度)を変動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱回転部材と加圧回転部材とが圧接された定着部を有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタや複写機などの電子写真方式を用いた画像形成装置は、トナー画像を用紙に定着させるため加熱ローラを有する定着部を装備した画像形成装置が広く使用されている。通常、定着部では、ヒータを内包する加熱ローラと、この加熱ローラに圧接される加圧ローラとの間にトナー画像が付着した用紙を挿通させることにより、熱と圧力とによりトナーを融着させている。
【0003】
このような定着部では、ヒータを内包する加熱ローラの表面温度と、ヒータを内包していない加圧ローラの表面温度との温度差が生じやすい。この温度差の発生を防止するために、予め定着動作を行う前に、用紙が挟まっていない状態で両ローラを接触させ回転させること等の方法により、温度差を低減させ、加圧ローラの表面温度をパッドを用いて均一化させていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−033618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示されている方法では、媒体である用紙挿通前後の熱容量変化等によるローラの表面温度のオーバシュートの発生・増加が考慮されていなかった。このために、表面温度が目標温度に定常化するための時間が大きく変動してしまうという問題があった。
また、加圧ローラの熱容量のため、表面温度を測定する温度センサの位置により、オーバシュートの発生量に変化が生じていた。
【0005】
本発明は、前記問題を解決するためになされたものであり、加圧ローラの表面温度のオーバシュートを低減することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、加熱手段と、前記加熱手段により加熱される加熱回転部材(例えば、加熱ローラ)と、前記加熱回転部材と圧接する加圧回転部材(例えば、加圧ローラ)と、前記加圧回転部材の表面温度を検知する検出手段と、前記加熱回転部材及び前記加圧回転部材の回転速度を制御する駆動制御手段(例えば、定着回転速度制御部)とを備え、前記駆動制御手段は、前記検出手段により検出された表面温度が所定の温度に達するまでに、前記検出手段によって検出される表面温度の変化量あるいは変化率に応じて、前記回転速度を変動させることを特徴とする。
【0007】
これによれば、媒体(例えば、用紙)の挿通等による熱容量変化によって、加圧ローラの表面温度が変化し、振動的なオーバシュートが発生しても、表面温度の変化量あるいは変化率が所定値よりも大きいときに、回転速度を変動させて、臨界的、あるいは指数的な温度変化にすることができる。このため、加圧ローラの表面温度が一定になるまでの時間を短縮することができる。このとき、パッドを用いることにより、接触面の表面温度分布が均一になるまでの時間(整定時間)も短縮することができる。
また、検出手段が表面温度を検知する位置と、加熱ローラと加圧ローラとの接触位置とが離間しており、加圧ローラの熱容量によるオーバシュートの増加を低減することができる。
【0008】
また、前記検出手段によって検出される表面温度の変化量は、加熱開始から所定時間後に計測された温度上昇値より算出することを好適とする。
また、前記検出手段によって検出された表面温度の変化量あるいは変化率が所定値より小さい場合は、前記回転速度を基準回転速度より速い回転速度に変化させ、前記検出手段によって検出された表面温度の変化量あるいは変化率が所定値である場合は、前記回転速度を基準回転速度に設定し、前記検出手段によって検出された表面温度の変化量あるいは変化率が所定値より大きい場合は、前記回転速度を基準回転速度より遅い回転速度に変化させることが好ましい。
【0009】
さらに、前記検出手段によって検出される表面温度の変化率は、加熱開始から所定時間ごとに計測された温度上昇値より算出することを好適とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加圧ローラの表面温度のオーバシュートを低減することができる。これにより、加熱時の加熱ローラ及び加圧ローラの表面温度分布の不均一化を防止することができ、表面温度が一定になるまでの時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の画像形成装置の実施形態につき説明する。なお、これらの図面は本発明が理解できる程度に概略的に示してあり、以下に説明する数値的及びその他の条件は、単なる好適例であり、本発明はこれらの実施形態にのみ何ら限定されるものではない。また、断面図では図面の複雑化を防ぐため、断面を表すハッチング等を省略して示してある。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の画像形成装置の第1の実施形態について、図1乃至図7を参照して説明する。
【0013】
図1は、第1の実施形態の画像形成装置100の断面図であり、タンデム方式のプリンタ装置を例に示す。また、図2は画像形成装置100の概観斜視図である。
【0014】
図1に示すように、画像形成装置100は、給紙部16、画像形成部7、定着部4、両面印刷ユニット8、排出ユニット9、及び、排出トレイ(カバー)19を備えており、記録シートSへの画像形成が可能な構成になっている。
【0015】
(構成)
印刷動作の流れに沿って画像形成装置100の構成について説明する。先ず、記録シートSの搬送は給紙部16より行われる。給紙部16は給紙カセット21、給紙ローラ22、及び、レジストローラ23等で構成される。給紙ローラ22の回動によって給紙カセット21から搬出された記録シートSは、レジストローラ23まで送られ、更に転写搬送ベルト15に沿って送られ、各色の画像形成部7に達する。
【0016】
画像形成部7は画像形成ユニット3が4色分の4個が実装され構成されている。そして、画像形成ユニット3の4個は順番に並設され、図1の右側から左側に向かってブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、及び、シアン(C)の順に配設されている。また、各画像形成ユニット3には各色に対応したトナーカートリッジ2−K、2−Y、2−M、及び、2−Cが装着されている。
【0017】
そして、画像形成ユニット3とトナーカートリッジ2−K、2−Y、2−M、及び、2−Cは分離可能な構造となっており、4種のトナーカートリッジ2−K、2−Y、2−M、及び、2−Cは収納された現像剤(の色)を除き同様の構造である。また、前記各画像形成ユニット3と印字ヘッド17とがカバー19を閉じることにより当接する構造になっている。
【0018】
画像形成ユニット3には感光体ドラム10、帯電器11、現像ローラ12、及び、クリーナ13が収納されている。感光体ドラム10は、その周面が光導電性材料で構成され、感光体ドラム10の周面近傍には、帯電器11、現像ローラ12、及び、クリーナ13が順次配設されている。また、転写器14は転写搬送ベルト15を介して感光体ドラム10に当接される。
【0019】
感光体ドラム10は、用紙搬送方向に回転し、先ず帯電器11からの電荷付与により、その周面が一様に帯電させられる。そして、印字ヘッド17は、印字情報に基づく光書き込みにより、感光体ドラム10の周面に静電潜像を形成する。そして、現像ローラ12は、現像処理により記録シートSの上面にトナー像を形成する。このとき、感光体ドラム10の周面に形成されるトナー像は、トナーカートリッジ2に収納した各色のトナーである。このようにして感光体ドラム10の周面に形成されるトナー像は、感光体ドラム10の回動に伴って転写器14の位置に達し、感光体ドラム10の直下を矢印方向に移動する記録シートSの上面に転写され、印刷が行われる。
【0020】
次いで、各画像形成ユニットにおいてトナー像が転写されてトナー像が転写された記録シートSは転写搬送ベルト15の移動に従って、転写搬送ベルト15上を矢印方向に移動し、定着部4において熱定着処理が施される。
【0021】
記録シートSが定着部4の加熱ローラ6と加圧ユニット5の間を挟持搬送される間に、記録シートSの上面に転写された複数色のトナー像は溶融して記録シートSに熱定着する。定着部4によってトナー像が定着された記録シートSは排出ユニット9に搬送された後に排出トレイ19へ排出されるか、あるいは、両面印刷の場合は、切換板20を介して両面印刷ユニット8に搬送され、再度、画像形成部7で記録シートS裏面への画像形成が行われる。
【0022】
図3は定着部4の構成を示す断面模式図である。定着部4は加熱回転部材としての加熱ローラ6と加圧回転部材としての加圧ローラ34を含む加圧ユニット5で構成される。
【0023】
加熱ローラ6は、円筒形状で内部に加熱手段として加熱ヒータ33が2本配設されている。加熱ローラ6の上部には温度センサ35が備えられている。そして、この温度センサ35は、加熱ローラ6の上部表面温度を検知する。
【0024】
また、加圧ユニット5は加圧ベルト32、加圧ローラ34、パッド36、及び、加圧ローラ34の表面温度を検知する検出手段としての温度センサ37を備えて構成されている。加圧ベルト32は、加圧ローラ34とパッド36とに掛けわたされており、加圧ローラ34が回転するのに伴って回転する。温度センサ37は、加圧回転部材の表面温度として加圧ローラ34の下部表面温度を検知する。
【0025】
したがって、この第1の実施形態の定着部4においては、加熱ローラ6と、加圧ローラ34とパッド36によって裏面側から加圧された加圧ベルト32の外周側とが、記録シートSを表裏から圧接し、挟み込む部分でニップ部を形成する。
【0026】
パッド36は、加圧ローラ34と共に加圧ベルト32をその裏面側から押圧して加圧ベルト32のニップ部分のニップ幅を増やす目的で配設される。したがって、このパッド36の材質の要件は、耐熱性、断熱性、及び、適度の剛性を有し、熱変形のないことである。使用されるパッド36の材質の例としては、剛性のある金属(例えば、鉄など)で、ニップ部には断熱性・耐熱性のあるガラス繊維、アラミド繊維を布状に編みこんだクロスの表面にフッ素樹脂をコーティング処理したもの等が挙げられる。
【0027】
次に、図4を参照して第1の実施形態の画像形成装置100の制御構成を説明する。
図4は、画像形成装置100の制御構成を示すブロック図である。
画像形成装置100において、制御部40は、主な構成要素として、定着回転速度制御部44等を備えたCPU41、RAM42及びROM43を備えて構成されている。また、制御部40には前記画像形成部7、給紙部16、及び、定着部4が電気的に接続されると共に定着部4を駆動する定着駆動部30が接続される。さらに、定着部4の構成要素である加熱ローラ6の温度センサ35及び加圧ローラ34の温度センサ37からの温度情報はCPU41のAD(Analog Digital変換)入力端子に入力される。特に、加圧ローラ34の温度センサ37はCPU41の定着回転速度制御部44のAD(Analog Digital変換)入力端子に接続されている。
【0028】
ここで、ROM43には、画像形成部7における作像動作に関する各種プログラムが格納されている。CPU41は、ROM43から必要なプログラムを読み出して、画像形成部7、給紙部16及び定着部4の動作を統括的に制御して作像動作を実行させる。RAM42は、CPU41が制御プログラムを実行する際のワークエリアとして使用される。
【0029】
また、制御部40は作像動作を実行させると共に、温度センサ35からの検知信号を受信し、加熱ローラ6の温度を監視して、加熱ローラ6の温度が所定の定着温度に維持されるように加熱ヒータ33への電力供給量を制御する。
【0030】
なお、詳細については後記するが、制御部40は温度センサ35からの検知信号を受信し、受信した情報に基づいて、さらに、定着回転速度制御部44に格納されているデータにしたがって、加熱ローラ6及び加圧ローラ34の回転速度を決定する。
【0031】
(動作)
定着部4の動作について説明する。画像形成装置100に電源が投入されると、いわゆるウォームアップ動作が実行される。ウォームアップ動作では、加熱ローラ6及び加圧ユニット5の加圧ローラ34が定着駆動部30によって回転駆動される。加熱ヒータ33による加熱により加熱ローラ6は定着温度である190℃にまで昇温される。加圧ローラ34は回転に伴って、加熱ローラ6からの熱量の遷移によって120℃まで昇温される。
【0032】
この状態で画像形成装置100がプリントジョブを受け付けると、作像動作が実行される。作像動作では、画像形成部7でトナー像を形成してそのトナー像を記録シートSに転写し、加熱ローラ6と加圧ユニット5との圧接部、すなわち前記ニップ部にトナー像(未定着画像)が転写された記録シートSを挟持搬送させてトナー像を加熱、加圧により定着させ、排出ユニット部9を介して排出トレイ19上に記録シートSを排出する。
【0033】
作像動作が完了した後は、画像形成装置100は次のジョブを受け取るまで待機状態に入る。待機状態では、定着部4の加熱ローラ6と加圧ローラ34の回転は停止されている。加熱ローラ6は、加熱ヒータ33による加熱によって定着温度(本例では190℃)を維持するように制御される。一方、加圧ローラ34は前記したように回転することにより、加熱ローラ6からの熱を、加圧ベルト32を介して受け取り所定温度(本例では120℃)に保たれる構成となっているため、回転が停止されている待機状態では、加熱ローラ6からの加圧ローラ34への熱量の遷移が減少し、その結果、温度センサ37が示す加圧ローラ34の表面温度は次第に低下していく。
【0034】
次に、画像形成装置100が待機状態にあるときに、画像形成装置100が新たなジョブを受け付けて、作像動作が開始されるときの動作について図5A及び図5Bを参照して説明する。
【0035】
図5A及び図5Bは、待機状態にある画像形成装置100が作像動作を開始したときの定着部4の制御を示すフローチャートである。
【0036】
まず、図5Aに示すように、画像形成装置100が待機状態から作像動作に移行すると、ステップS1としてウォームアップ処理を開始し、加熱ヒータ33の加熱処理を行い、ステップS2で定着部4の回転処理を開始する。このときの定着部4は、印刷時と同一の定着回転速度に相当する定着速度150mm/sで加熱ローラ6及び加圧ローラ34を回転させている。この印刷時の定着回転速度に相当する定着速度150mm/sを基準速度とする。
【0037】
次のステップS3はウォームアップ開始より一定時間のt1経過後を監視する処理で、ウォームアップ開始より一定時間t1が経過したか否かの判断を行い、一定時間t1が経過した場合には(Yes)、次のステップS4へ進む。一定時間t1が経過していない場合は(No)、経過するまで待つ。
【0038】
ステップS4では、ウォームアップ開始より一定時間t1が経過後の加圧ローラ34の表面温度を温度センサ37によって検知し、温度上昇値ΔTを検出する。
【0039】
次に図5Bに示すように、ステップS5からステップS8では検出された温度上昇値ΔTに応じて、ステップS10からステップS13までの処理に分岐し加熱ローラ6及び加圧ローラ34の定着速度を決定する。
【0040】
すなわち、ステップS5では温度上昇値ΔTが50℃未満であるか否かを判定し、50℃未満の場合(Yes)はステップS10に進み定着速度を基準速度でありまた印刷速度である150mm/sよりも速い160mm/sに設定する。ステップS5にて温度上昇値ΔTが50℃以上の場合(No)はステップS6へ進む。
【0041】
ステップS6では温度上昇値ΔTが50℃以上55℃未満であるか否かを判定し、条件に合致する場合(Yes)はステップS11に進み定着速度を印刷速度よりも速いが、ステップS10で設定する定着速度よりも遅い155mm/sに設定する。ステップ6にて条件に合致しない場合(No)はステップS7へ進む。
【0042】
ステップ7では温度上昇値ΔTが55℃以上60℃未満であるか否かを判定し、条件に合致する場合(Yes)はステップS14に進み定着速度を基準速度である150mm/sに設定する。ステップS7にて条件に合致しない場合(No)はステップS8へ進む。
【0043】
ステップS8では温度上昇値ΔTが60℃以上65℃未満であるか否かを判定し、条件に合致する場合(Yes)はステップS12に進み定着速度を145mm/sに設定する。ステップS8にて条件に合致しない場合(No)はステップS13へ進み、定着速度を140mm/sに設定する。
【0044】
以上、ステップS5からステップS8の分岐とステップS10からステップS13における定着速度の変更は具体的には、図6に示す表の条件で定着速度を決定する処理である。定着部4においてこれらのステップを実行することが第1の実施形態の特徴である。
【0045】
すなわち、ウォームアップ開始より一定時間t1経過後の加圧ローラ34の温度上昇値ΔTが、基準値の温度上昇である55℃以上60℃未満の場合には定着速度は、印刷速度と同一である150mm/sより変化させない。しかし基準値より温度上昇値ΔTが小さい50℃以上55℃未満の場合には定着速度を印刷速度より速めの155mm/sに変化させる。さらに温度上昇値ΔTが50℃未満の場合には定着速度をさらに速い160mm/sに変化させる。逆に、基準値の温度上昇よりも温度上昇値ΔTが大きい場合、検出温度が60℃以上で65℃未満の場合は定着速度を印刷速度よりも遅い145mm/sに設定する。さらに温度上昇値ΔTが大きな場合の65℃以上の場合には定着速度をさらに遅い140mm/sに遅く変更する。
【0046】
次に、ステップS5からステップS8の分岐とステップS10からステップS13における定着速度の変更処理終了後はステップS14に進む。ステップS14では加熱ローラ6及び加圧ローラ34の両方ともに所定の温度になるまで検出を行い所定温度となった場合(Yes)は、ステップS15に進み定着速度を印刷速度の基準値150mm/sに戻す処理を行う。この時点で定着の準備完了となり印刷及び定着動作をステップS16にて行うことになる。
【0047】
図7(a)及び図7(b)は前記の処理における加圧ローラ34の温度変化と定着速度の制御処理とを示すタイムチャートである。横軸にはウォームアップ開始からの経過時間を示し、図7(a)の縦軸には加圧ローラ34の温度上昇値ΔTの変化を示している。また、図7(b)縦軸には加圧ローラ34の温度上昇値ΔTに対して制御した定着速度の変化を示している。
【0048】
図7(a)及び図7(b)に示すように、ウォームアップ開始より時間t1後の温度上昇判定の時点で、加圧ローラ34の温度上昇値ΔTが基準値の温度上昇値と等しいΔTbの場合は、定着速度を変化させずに定着速度を速度bでウォームアップ処理を継続する。加圧ローラ34の温度上昇値ΔTが小さいΔTaの場合には、加熱ローラ6より加圧ローラ34への熱量伝達を増加させるために基準値より速い定着速度を速度aに変化させる。また加圧ローラ34の温度上昇値ΔTが大きいΔTcの場合には、加熱ローラ6より加圧ローラ34への熱量伝達を抑えるために定着速度を印刷速度より遅い定着速度を速度cに変化させる。
【0049】
このような制御を行わない場合は、図7(a)の実線(a)、(b)、(c)で示すように、定着速度を変化させない場合の加圧ローラ34の温度が基準値であれば中間の実線(b)の温度上昇となり、時間t3で加圧ローラ34の温度は所定温度である目標温度120℃となる。また、この場合は定着速度を変化させないために加熱ローラ6より加圧ローラ34への熱量伝達の制御が行われず、温度上昇の大きいΔTcでは実線(c)に示すように加圧ローラ34がウォームアップ完了までの時間t3までに目標温度以上に上昇するオーバシュート現象を発生させることになる。また温度上昇が基準値のΔTbより小さいΔTaの場合は、実線(a)に示すように基準のウォームアップ終了の時間t3のタイミングではまだ目標温度に上昇しきらないということになり、実際のウォームアップ完了は時間t4まで待つ必要がある。
【0050】
これに対して、本実施形態の制御を行った場合は、時間t1の時点で加圧ローラ34の温度上昇に応じて定着速度を図7(b)のように変化させた場合には、加熱ローラ6から加圧ローラ34への熱量伝達を理想的に維持することが可能となるため、図7(a)中に示す破線a及び破線bの温度上昇変化のように制御されることになる。従って、ウォームアップ完了までの時間t3では前記実線(c)のオーバシュートの現象を発生させること無く、また時間t3の時点で前記実線(a)温度が上昇しきらない現象も発生しない。
【0051】
以上説明したように、第1の実施形態においては、待機状態から作像動作に移行時のウォームアップ処理におけるウォームアップ途中のタイミングで加圧ローラ6の温度に基づき定着速度を変化させることによって、加熱ローラ6と加圧ローラ34との温度差の大小、あるいは内部の加熱状態の大小により目標となる温度まで上昇させた上で表面温度を均一化させるための時間が大きく変動することを解消することが可能である。また、適正な加圧ローラ34の加熱が可能となるため、ウォームアップ時間の短縮の効果も期待できる。
【0052】
(第2の実施形態)
本発明の画像形成装置の第2の実施形態について、図8乃至図10を参照して説明する。
なお、本実施形態における画像形成装置200を説明するに当たり、前記第1の実施形態の画像形成装置100で説明した構成要素と同じ構成要素については同様の記号を付して説明する。
【0053】
(構成)
図8を参照して第2の実施形態の画像形成装置200の制御構成を説明する。図8は、画像形成装置200の制御構成を示すブロック図である。
【0054】
構成要素としては、前記第1の実施形態の画像形成装置100に温度差算出部45が新たに制御部40のCPU41の構成要素として追加されている。この温度差算出部45は加圧ローラ34の温度センサ37から検出温度が入力され、この温度差算出部45は加圧ローラ34の基準の温度上昇と実際の温度上昇差を所定の時間ごとに温度比較を行い定着回転速度制御部44に継時の温度比較情報を入力するものである。
【0055】
(動作)
図9は待機状態にある画像形成装置200が作像動作を開始したときの定着部4の制御を示すフローチャートである。
【0056】
ステップS1からステップS2までの処理は第1の実施形態と同様であり、まず、画像形成装置200が待機状態から作像動作に移行すると、ステップS1としてウォームアップ処理を開始し、加熱ヒータ33の加熱処理を行い、ステップS2で定着器4の回転処理を開始する。このときの定着部4の定着速度は印刷時の定着速度と同一の速度である150mm/sである。
【0057】
次のステップS20では、一定時間間隔で加圧ローラ34の温度上昇を監視するために時間カウンタをリセットする。
【0058】
ステップS20において時間カウンタをリセットした後、ステップS21において定着部4が定着可能な温度(所定温度)に到達したか否かの判定を行う。ここで定着可能な温度に達していない場合(No)には、ステップS22へと進み時間カウンタの経過時間の判定を行う。
【0059】
ステップS22では時間カウンタでカウントの時間が一定時間のΔtを経過したか否かの判定を行い、一定時間経過の場合(Yes)にはステップS23へと進むが、未経過の場合(No)にはステップS21へと処理を戻す。
【0060】
ステップS23では加圧ローラ34の温度上昇値と基準温度上昇値(基準温度プロフィール)との温度差分ΔTを検出しステップS24へと進み、この温度差分ΔTより次式(式1)に従い定着部4の定着速度を変化させる。
定着部4の定着速度S=ΔT×α + 現状速度 ・・・(式1)
ここで、αは定数である。
【0061】
このステップS24の処理により、一定時間ごとに加圧ローラ34の温度上昇が基準温度上昇と差分に比例して、基準温度上昇より温度上昇が低い場合には定着器4の定着速度を速くし、基準温度上昇より温度上昇が高い場合には定着部4の定着速度を遅くする処理を行いステップS20に戻り時間カウンタをリセットするステップを繰り返すことになる。
【0062】
前記の処理を繰り返すなかで、ステップS21で定着可能温度に達したと判定された場合にはステップS15へと進み、定着部4の定着速度を印刷速度の150mm/sに戻す処理を行い、この時点で定着の準備完了となり印刷及び定着処理をステップ16にて行う。
【0063】
図10(a)及び図10(b)は前記の処理の繰り返しステップの時間経過を横軸に、縦軸には加圧ローラ34の温度変化、及び定着部4の定着速度の変化の一例を表したタイムチャートである。
【0064】
図10(a)及び図10(b)に示すように、本実施形態の場合、ウォームアップ開始よりの1回目目の一定時間経過のt1のタイミングでは前述の温度差は−ΔTaが存在し、前記(式1)に当てはめ、定着速度を印刷速度である速度bより速い速度aに変化させる。これにより加熱ローラ6から加圧ローラ34への熱量伝達の比率は上昇するため、加圧ローラ34の温度上昇は定着速度の変更前よりも速くなる。
【0065】
この時点よりさらに一定時間経過後のt2のタイミングでの温度差は逆に基準温度より高めで検出され、ΔTb高いことが検出される場合を示している。これも(式1)に当てはめる。この場合は定着器4の定着速度を減速することになる。ただし、|ΔTa|>|ΔTb|であるため、定着速度の減速の量はt1時点より小さく、速度aと速度bの中間の速度cに設定されることになる。これにより、加圧ローラ34の温度上昇の変化は図10(a)の破線で示すように緩やかとなり、実線で示される基準の温度上昇の変化に近接していくことになる。
【0066】
さらに一定時間経過後のt3では基準の温度上昇と加圧ローラ34の検出温度差がΔTcで差が無い場合を示しており、この場合は定着部4の定着速度は速度cのまま変化させない。
【0067】
この処理を一定時間ごとに繰り返し、定着可能温度に到達した時間tnのタイミングで前記の温度差による定着部の定着速度の変更処理は終了させ、印刷時の速度である速度bに復帰させる処理を行う。
【0068】
以上説明したように、第2に実施形態においては、待機状態から作像動作への移行時のウォームアップ処理において、ウォームアップ途中で一定時間ごとに加圧ローラ34の温度と基準温度上昇との差分を求め定着速度の変更を行うため、第1の実施形態よりも精度よく加圧ローラ34の到達温度のバラツキを無くした制御を行うことが可能となる。
【0069】
以上2つの実施形態では、待機状態から作像動作に移行した場合の加圧ローラ34の温度上昇を例に説明しているが、これに限らず、加圧ローラ34と加熱ローラ6の温度上昇のバランスを保ちながら効率良く温度上昇の制御が可能なことから、電源投入時の定着部4の温度上昇制御にも本発明は適用可能である。
【0070】
また、以上の2つの実施形態では、加圧ユニット5の構成としてパッド36及び加圧ベルト32を含んだ実施形態を説明したが、この加圧ユニット5の構成としてこれらを含まない、すなわち、加圧ローラ34及び温度センサ37による構成においても、本発明は適用可能であることはいうまでもない。
【0071】
また、以上2つの実施形態では、定着部4の定着速度を変化させる制御で説明を行ったが、定着部4の回転の停止と再開で制御することも可能である。
【0072】
以上の実施形態においては、プリンタ装置、特にタンデム方式のプリンタ装置の定着部について説明を行ったが、複写装置等の他の画像形成装置においても同様に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための画像形成装置の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための画像形成装置の概観斜視図である。
【図3】本発明の画像装置の定着部の構成を説明するための断面模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
【図5A】第1の実施形態の画像形成装置が待機状態から作像動作を開始したときの定着部の制御フローの前半のフローを示すフローチャートである。
【図5B】第1の実施形態の画像形成装置が作像動作を開始したときの定着部の制御フローの後半のフローを示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態における定着部の加圧ローラの上昇温度と定着速度の条件表である。
【図7】第1の実施形態における定着部の加圧ローラの温度変化と定着速度の制御とを示すタイムチャートである。図7(a)は加圧ローラの温度変化を示すタイムチャートであり、図7(b)は定着速度の制御を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態の画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
【図9】第2の実施形態の画像形成装置が待機状態から作像動作を開始したときの定着部の制御フローを示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態における定着部の加圧ローラの温度変化と定着速度の制御とを示すタイムチャートである。図10(a)は加圧ローラの温度変化を示すタイムチャートであり、図10(b)は定着速度の制御を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0074】
2、2−K、2−Y、2−M、2−C トナーカートリッジ
3 画像形成ユニット
4 定着部
5 加圧ユニット
6 加熱ローラ(加熱回転部材)
7 画像形成部
8 両面印刷ユニット
9 排出ユニット
10 感光体ドラム
11 帯電器
12 現像ローラ
13 クリーナ
14 転写器
15 転写搬送ベルト
16 給紙部
17 印字ヘッド
19 排出トレイ(カバー)
20 切換板
21 給紙カセット
22 給紙ローラ
23 レジストローラ
30 定着駆動部
32 加圧ベルト
33 加熱ヒータ
34 加圧ローラ(加圧回転部材)
35 温度センサ
36 パッド
37 温度センサ
40 制御部
41 CPU
42 RAM
43 ROM
44 定着回転速度制御部(駆動制御手段)
45 温度差算出部
100、200 画像形成装置






【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段と、
前記加熱手段により加熱される加熱回転部材と、
前記加熱回転部材と圧接する加圧回転部材と、
前記加圧回転部材の表面温度を検知する検出手段と、
前記加熱回転部材及び前記加圧回転部材の回転速度を制御する駆動制御手段と
を備え、
前記駆動制御手段は、前記検出手段により検出された表面温度が所定の温度に達するまでに、前記検出手段によって検出される表面温度の変化量あるいは変化率に応じて、前記回転速度を変動させる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記検出手段によって検出される表面温度の変化量は、加熱開始から所定時間後に計測された温度上昇値より算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検出手段によって検出された表面温度の変化量あるいは変化率が所定値より小さい場合は、前記回転速度を基準回転速度より速い回転速度に変化させ、
前記検出手段によって検出された表面温度の変化量あるいは変化率が所定値である場合は、前記回転速度を基準回転速度に設定し、
前記検出手段によって検出された表面温度の変化量あるいは変化率が所定値より大きい場合は、前記回転速度を基準回転速度より遅い回転速度に変化させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記検出手段によって検出される表面温度の変化率は、加熱開始から所定時間ごとに計測された温度上昇値より算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−102126(P2010−102126A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273553(P2008−273553)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】