説明

画像形成装置

【課題】種類の異なる用紙を使用するなどすることによりVOCの発生量が変化した場合であっても、印刷物の生産性を低下させることなく、用紙から発生するVOCの高効率な捕集を遂行することが可能なクリーンな画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置であるプリンタ1は、用紙上の未定着トナー像を加熱定着する定着装置13と、プリンタ1内部の空気を外部に排出する排気ファン18と、前記空気に含まれる揮発性有機化合物(VOC)を捕集するフィルタ19と、排気ファン18の動作を制御する制御部21とを備え、この制御部21が、用紙から発生する揮発性有機化合物の量に基づき、排気ファン18の回転数を制御する。これにより、定着温度や定着速度を低下させることなく、VOCの捕集効率を高めることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタに代表される電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタなどの電子写真方式の画像形成装置には、用紙上に転写された未定着トナー像を定着させる定着装置が備えられている。定着装置は、互いが圧接して定着ニップ部を形成する定着部材及び加圧部材と、これらのうち少なくとも一方の部材を加熱する加熱手段とを備えている。そして、加熱手段で加熱された定着ニップ部に未定着トナー像を担持した用紙を挿通することにより、未定着トナーを加熱、加圧して用紙表面に定着する熱定着方式が広く採用されている。
【0003】
このような熱定着方式が採用された定着装置では、加熱した定着部材及び/または加圧部材の表面が160〜200°Cになるように温度調整されているので、定着装置及びその周辺も同様に高温となる。定着装置が高温になると、ハウジングなどを構成する合成樹脂や、トナーの付着を防止し、用紙の剥離性を高めるために定着部材表面に塗布されたシリコーンオイルや、トナーに含有する樹脂成分も高温にさらされることとなる。その結果、それらの樹脂やオイルから揮発性有機化合物(以下、「VOC」と記すことがある)が揮発する。このVOCは、トナーから揮発する割合が特に高い。そして、揮発したVOCは異臭を発し、不快感を生じさせる原因となり得るので、画像形成装置外部に拡散するのを防止する必要がある。
【0004】
一方、画像形成装置において印刷に使用される用紙としては、所謂コピー用紙と呼ばれる普通紙のほかに、封筒、ラベル紙といった特殊紙が使用されることがある。封筒やラベル紙は、接着剤を使用しているので、それらの用紙から発生するVOCが普通紙より多くなる。したがって、より多くのVOCが発生したときには、それに対応して、VOCの捕集効率を高める必要がある。そこで、VOCの発生量が変化した場合であっても、VOCを効果的に捕集することができ、画像形成装置外部への拡散を防止することが可能な手法が提案され、その一例を特許文献1に見ることができる。特許文献1に記載された画像形成装置は、VOCの発生量が変化し得る用紙種類に基づき、定着温度と定着速度とを変更している。
【特許文献1】特開2007−199284号公報(第7−8頁、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された画像形成装置では、普通紙より多くのVOCを発生し得る封筒やラベル紙といった特殊紙が印刷に使用されたとき、定着温度を低下させてVOCの発生量を抑制し、且つその低下させた定着温度の下、好適な定着性を維持するために定着速度を低下させている。しかしながら、この方法では、定着速度の低下により、印刷物の生産性が低下する。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、用紙上の未定着トナー像を加熱定着する定着装置を備えた画像形成装置において、種類の異なる用紙を使用するなどすることによりVOCの発生量が変化した場合であっても、印刷物の生産性を低下させることなく、用紙から発生するVOCの高効率な捕集を遂行することが可能な、異臭の発生を防止したクリーンな画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、用紙上の未定着トナー像を加熱定着する定着装置と、画像形成装置内部の空気を外部に排出する排気ファンと、前記空気に含まれる揮発性有機化合物を捕集するフィルタとを備えた画像形成装置において、前記排気ファンの動作を制御する制御部を備え、この制御部が、用紙から発生する揮発性有機化合物の量に基づき、排気ファンの回転数を制御することとした。
【0008】
また、上記構成の画像形成装置において、用紙種類が選択可能な操作パネルを備えるとともに、この操作パネルで選択された用紙種類から、前記制御部が、用紙種類によって異なる揮発性有機化合物の発生量に係る情報を得ることとした。
【0009】
また、上記構成の画像形成装置において、前記操作パネルで、揮発性有機化合物発生量が所定量より多い用紙が選択されたとき、前記制御部は、前記排気ファンの回転数を低下させることとした。
【0010】
また、上記構成の画像形成装置において、用紙から発生する揮発性有機化合物を検知可能なセンサーを備えるとともに、このセンサーにより、前記制御部が、揮発性有機化合物の発生量に係る情報を得ることとした。
【0011】
また、上記構成の画像形成装置において、前記センサーが、所定量より多い揮発性有機化合物を検知したとき、前記制御部は、前記排気ファンの回転数を低下させることとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成によれば、用紙上の未定着トナー像を加熱定着する定着装置と、画像形成装置内部の空気を外部に排出する排気ファンと、前記空気に含まれる揮発性有機化合物(VOC)を捕集するフィルタとを備えた画像形成装置において、前記排気ファンの動作を制御する制御部を備え、この制御部が、用紙から発生する揮発性有機化合物の量に基づき、排気ファンの回転数を制御することとしたので、定着温度や定着速度を低下させることなく、VOCの捕集効率を高めることが可能である。したがって、種類の異なる用紙を使用するなどすることによりVOCの発生量が変化した場合であっても、印刷物の生産性を低下させることなく、用紙から発生するVOCの高効率な捕集を遂行することが可能な、異臭の発生を防止したクリーンな画像形成装置を提供することができる。
【0013】
また、用紙種類が選択可能な操作パネルを備えるとともに、この操作パネルで選択された用紙種類から、前記制御部が、用紙種類によって異なる揮発性有機化合物の発生量に係る情報を得ることとしたので、印刷に使用する用紙種類を正確に識別することが可能である。そして、その用紙種類に基づいてVOCの発生量を把握することができ、排気ファンの回転数を正確に設定することができる。
【0014】
また、前記操作パネルで、揮発性有機化合物発生量が所定量より多い用紙が選択されたとき、前記制御部は、前記排気ファンの回転数を低下させることとしたので、VOCを捕集するフィルタの捕集効率を高めることが可能になる。そして、VOC発生量が比較的少ない用紙が選択された場合には、排気ファンの回転数を低下させないようにすることができる。したがって、種類の異なる用紙を使用することによりVOCの発生量が変化した場合であっても、印刷物の生産性を低下させることなく、用紙から発生するVOCの高効率な捕集を遂行でき、且つ高温の空気が画像形成装置内に充満するのを防止することが可能である。
【0015】
また、用紙から発生する揮発性有機化合物を検知可能なセンサーを備えるとともに、このセンサーにより、前記制御部が、VOCの発生量に係る情報を得ることとしたので、VOCの発生量を自動的に正確に把握することが可能である。これにより、用紙種類を識別する必要がなく、用紙種類に関わらず、VOCを捕集するのに好適な排気ファンの回転数を正確に設定することができる。
【0016】
また、前記センサーが、所定量より多い揮発性有機化合物を検知したとき、前記制御部は、前記排気ファンの回転数を低下させることとしたので、VOCを捕集するフィルタの捕集効率を高めることが可能になる。そして、センサーが検知したVOC発生量が比較的少ない場合には、排気ファンの回転数を低下させないようにすることができる。したがって、種類の異なる用紙を使用するなどすることによりVOCの発生量が変化した場合であっても、印刷物の生産性を低下させることなく、用紙から発生するVOCの高効率な捕集を遂行でき、且つ高温の空気が画像形成装置内に充満するのを防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図1〜図9に基づき説明する。
【0018】
最初に、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置について、図1を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力動作を説明する。図1は、画像形成装置の一例であるプリンタの概略構造を示す模型的垂直断面左側面図である。図1において右方がプリンタの正面側、左方が背面側である。
【0019】
図1に示すように、プリンタ1の本体2の内部下方には、給紙カセット3が備えられている。給紙カセット3の内部には、用紙Pが積まれて収容されている。給紙カセット3の用紙搬送方向下流部上方には、給紙カセット3用の給紙装置4が配置されている。この給紙装置4により、用紙Pは図1において給紙カセット3の右上方に向けて送り出される。なお、給紙カセット3は、本体2の正面側、すなわち図1において右方に、水平にスライド移動させて引き出し/収納が自在である。
【0020】
プリンタ1の本体2の正面中央部には、手差し給紙トレイ5が備えられている。手差し給紙トレイ5は、下端に設けられた、横方向に略水平に延びる支軸を中心として、用紙搬送方向に沿う垂直面内で回転可能になっている。手差し給紙トレイ5は、その支軸を中心として上端をプリンタ1の手前側、すなわち図1において右方に開閉自在であり、開放し、展開することにより、その上面に用紙Pなどを載置することが可能な形態になる。
【0021】
手差し給紙トレイ5は、給紙カセット3に入っていないサイズの用紙や、厚紙、OHPシートのように1枚ずつ手で載置して、装置内に送り込みたいものを取り扱うことができる。手差し給紙トレイ5に載置された用紙は、図1において手差し給紙トレイ5の左方に配置された手差し給紙トレイ5用の給紙装置6により、本体2内に向けて送り出される。手差し給紙トレイ5は、使用しないとき、図1に示すように閉鎖状態にされる。
【0022】
給紙カセット3及び手差し給紙トレイ5の用紙搬送方向下流には、給紙用用紙搬送路7、レジストローラ8、画像形成部9、及び転写ローラ10が配置されている。給紙カセット3または手差し給紙トレイ5から送り出された用紙Pは、給紙用用紙搬送路7を通りレジストローラ8の箇所に到達する。レジストローラ8は、用紙Pの斜め送りを矯正しつつ、画像形成部9で形成されるトナー像とのタイミングを計り、用紙Pを転写ローラ10の箇所へと送り出す。
【0023】
外部コンピュータ(図示せず)からの文字や図形、模様などの画像データ信号がプリンタ1に送信され、この画像データに基づき、画像形成部9上方に備えられた光走査装置11にて制御されるレーザ光L(図中一点鎖線)が照射される。これにより、画像形成部9においては、像担持体である感光体ドラム12上に原稿画像の静電潜像が形成され、この静電潜像からトナー像が現像される。トナー像は、前記レジストローラ8によって同期をとって送られてきた用紙Pに、感光体ドラム12と転写ローラ10とが圧接して形成される転写ニップ部にて転写される。
【0024】
画像形成部9及び転写ローラ10の用紙搬送方向下流には、定着装置13が備えられている。転写ローラ10にて未定着トナー像を担持した用紙Pは、定着装置13へと送られ、熱ローラと加圧ローラとによりトナー像が加熱、加圧されて定着される。
【0025】
定着装置13の下流には、排出用用紙搬送路14、用紙排出口15、及び用紙排出部16が配置されている。定着装置13から排出され、用紙搬送装置20の箇所を通過した用紙Pは、排出用用紙搬送路14を通って上方へ送られ、用紙排出口15から、本体2上面に設けられた用紙排出部16に排出される。
【0026】
続いて、定着装置13のすぐ下流の箇所の詳細な構造と、それに関連する操作パネル及び制御部について、図1に加えて、図2を用いて説明する。図2は、定着装置のすぐ下流周辺を示す垂直断面正面図及び制御回路の概略図である。なお、図2における白抜き矢印は、空気の流通経路及び流通方向を示している。
【0027】
図1及び図2に示すように、定着装置13のすぐ下流の箇所であって、排出用用紙搬送路14の上方には、ダクト17、排気ファン18、及びフィルタ19が備えられている。
【0028】
ダクト17は、排出用用紙搬送路14のすぐ上方に設けられている。そして、ダクト17は、その一端において内部が排出用用紙搬送路14の内部と連通しており、空気の流通が可能になっている。ダクト17の他端は、排出用用紙搬送路14のすぐ上方からさらに上方に向かって、プリンタ1の側面近傍まで延びている。
【0029】
排気ファン18は、上方に向かって延びたダクト17に連結され、プリンタ1内部の空気を外部に排出すべく、定着装置13より上方の箇所であってプリンタ1の側面近傍に設けられている。排気ファン18とダクト17とは、それら内部が、空気が流通するように連通している。
【0030】
フィルタ19は、排気ファン18の近傍であって、その空気流通方向上流側の、ダクト17の内部に配置されている。フィルタ19には、空気に含まれるVOCが捕集可能な、例えば酸化チタンなどの光触媒や活性炭といったものが使用されている。
【0031】
図1及び図2に示す排気ファン18を駆動すると、図2に示すように、定着後の用紙P上のトナーから発生するVOCが、定着装置13のすぐ下流の排出用用紙搬送路14から上方に、空気とともに吸引される。そして、VOCを含んだ空気は、ダクト17の内部を通過して、フィルタ19の箇所に到達する。ここで、フィルタ19は、空気に含まれるVOCを捕集する。その後、VOCが除去されたクリーンな空気が、排気ファン18の箇所からプリンタ1の外部へと排出される。
【0032】
一方、プリンタ1の正面上方には操作パネル20が備えられている。ユーザーは、この操作パネル20から、印刷用紙サイズや印刷枚数、用紙種類、両面印刷の有無などの各種印刷条件を選択、入力して設定することが可能である。特に用紙種類に関しては、図2に示すように、一般的にコピー用紙として使用される普通紙のほかに特殊紙が選択可能であり、特殊紙としてはさらに封筒、ラベル紙といった細かい選択が可能である。
【0033】
また、プリンタ1には、制御部21が備えられている。制御部21は、操作パネル20で選択、入力された情報などに基づいて、予めプログラムされた手順に従い、給紙装置4及び6や画像形成部9、定着装置13、排気ファン18などの各構成要素を制御して印刷動作を実行させる。
【0034】
続いて、上記のプリンタ1において印刷を行う場合の、異なる用紙種類に対応した排気ファン18の制御方法について、図1及び図2に加えて、図3〜図5を用いて説明する。図3は用紙種類別のVOC発生量を示すグラフ、図4はフィルタを通過する空気の風速とVOC捕集効率の関係を示すグラフ、図5は用紙種類別の排気ファン回転数を示す表である。
【0035】
図3に示すように、定着後の用紙P上のトナーから発生するVOC量は、用紙種類によって異なっている。封筒やラベル紙といった特殊紙は接着剤などが使用されているので、封筒で普通紙の約2倍、ラベル紙で普通紙の約3倍のVOC発生量となっている。
【0036】
一方、フィルタ19におけるVOC捕集効率は、図4に示すように、フィルタ19を通過する空気の風速によって異なっている。フィルタ19は、通過する空気の風速が遅いほど、VOC捕集効率が高くなるという性能を示している。
【0037】
このような用紙種類によって異なるVOC発生量や、フィルタ19の風速差によるVOC捕集効率の違いに基づき、制御部21は、排気ファン18の回転数を制御する。つまり、印刷に使用する用紙Pの種類について、制御部21は、操作パネル20で選択された用紙種類からVOC発生量に係る情報を得て、図5に示す表のように、普通紙のとき高速に、封筒のとき中速に、ラベル紙のとき低速に、排気ファン18の回転数を設定する。
【0038】
続いて、上記VOC捕集機構および排気ファン18の制御方法を用いて、定着後の用紙P上のトナーからVOCを捕集したときの効果について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の上記第1の実施形態に係る排気ファン制御の有無が、プリンタ外部へのVOC排出量に及ぼす影響を示す表である。なお、この効果の検証にはラベル紙を用いた。
【0039】
本発明に係るダクト17、排気ファン18、フィルタ19、操作パネル20、及び制御部21を装備し、用紙種類別の排気ファン18の制御を適用したプリンタ1を、SUS製チャンバー(容積1m3、内面電解研磨仕上げ)内に設置した。そして、外気環境を23±2°C、50±5%Rhに設定するとともに、チャンバー内を67L/分で換気を行うように設定した。約1時間換気後、10分間プリント動作を行い、チャンバー内の空気をTENAX(登録商標)捕集管にて100mL/分で連続サンプリングした。プリント停止後も約2時間は、連続してサンプリングした。そして、サンプリングしたTENAX(登録商標)捕集管を加熱脱着装置で脱着し、捕集されたVOCをGC−MS装置にて測定することにより、プリンタ1の外部に排出されるVOCの量を見積もった。
【0040】
また、比較例として、本発明に係る上記排気ファン18の制御を実行しないようにして、同様の方法でプリンタの外部に排出されるVOCの量を測定した。
【0041】
図6によると、本発明に係る上記排気ファン18の制御を実行した場合は、制御しない場合と比較して、プリンタ外部へのVOC排出量を約1/2に低減させることができているのが分かる。
【0042】
このようにして、用紙上の未定着トナー像を加熱定着する定着装置13と、画像形成装置であるプリンタ1の内部の空気を外部に排出する排気ファン18と、前記空気に含まれる揮発性有機化合物(VOC)を捕集するフィルタ19とを備えたプリンタ1において、排気ファン18の動作を制御する制御部21を備え、この制御部21が、用紙から発生する揮発性有機化合物の量に基づき、排気ファン18の回転数を制御するので、定着温度や定着速度を低下させることなく、VOCの捕集効率を高めることが可能である。したがって、種類の異なる用紙を使用するなどすることによりVOCの発生量が変化した場合であっても、印刷物の生産性を低下させることなく、用紙から発生するVOCの高効率な捕集を遂行することが可能な、異臭の発生を防止したクリーンなプリンタ1を提供することができる。
【0043】
また、用紙種類が選択可能な操作パネル20を備えるとともに、この操作パネル20で選択された用紙種類から、制御部21が、用紙種類によって異なる揮発性有機化合物の発生量に係る情報を得るので、印刷に使用する用紙種類を正確に識別することが可能である。そして、その用紙種類に基づいてVOCの発生量を把握することができ、排気ファン18の回転数を正確に設定することができる。
【0044】
さらに、操作パネル20で、揮発性有機化合物発生量が所定量、すなわち普通紙より多い用紙が選択されたとき、制御部21は、排気ファン18の回転数を低下させるので、VOCを捕集するフィルタ19の捕集効率を高めることが可能になる。そして、VOC発生量が比較的少ない用紙が選択された場合には、排気ファン18の回転数を低下させないようにすることができる。したがって、種類の異なる用紙を使用することによりVOCの発生量が変化した場合であっても、印刷物の生産性を低下させることなく、用紙から発生するVOCの高効率な捕集を遂行でき、且つ高温の空気がプリンタ1内に充満するのを防止することが可能である。
【0045】
次に、本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の詳細な構成について、図7〜図9を用いて説明する。図7は画像形成装置であるプリンタの模型的垂直断面左側面図、図8はプリンタの定着装置のすぐ下流周辺を示す垂直断面正面図及び制御回路の概略図、図9はVOCセンサー出力別の排気ファン回転数を示す表である。図8における白抜き矢印は、空気の流通経路及び流通方向を示している。なお、この実施形態の基本的な構成は、図1〜図6を用いて説明した前記第1の実施形態と同じであるので、第1の実施形態と共通する構成要素には前と同じ符号を付し、説明は省略するものとする。
【0046】
第2の実施形態に係るプリンタ1では、定着装置13のすぐ下流の箇所であって、排出用用紙搬送路14の上方に、ダクト17、排気ファン18、及びフィルタ19が備えられるとともに、ダクト17内にVCOセンサー22が備えられている。
【0047】
VOCセンサー22は、ダクト17内であって、排出用用紙搬送路14のすぐ上方の箇所に配置されている。VOCセンサー22は、干渉増幅反射方式を採用したセンサーであって、定着後、排出用用紙搬送路14を通過する用紙Pから発生するVOCが検知可能である。なお、このVOCセンサー22は、検知したVOCの量が多いほど、高い電圧値を出力するようになっている。
【0048】
このVOCセンサー22が得たVOC発生量に関する情報は、図8に示す制御部21に送信される。制御部21は、VOCセンサー22から受け取った情報などに基づいて、予めプログラムされた手順に従い、給紙装置4及び6や画像形成部9、定着装置13、排気ファン18などの各構成要素を制御して印刷動作を実行させる。
【0049】
前述のように、VOC発生量が用紙種類によって異なり、またその他の理由によっても異なることがあるので、制御部21は、VOCセンサー22から受け取ったVOC発生量に係る情報に基づき、排気ファン18の回転数を制御する。つまり、VOCセンサー22が、検知したVOC発生量が多いほど高い電圧値を出力するので、制御部21は、VOCセンサー22の出力値が2V以下、すなわち普通紙に相当するとき高速に、出力値が2〜3V、すなわち封筒に相当するとき中速に、出力値が3V以上、すなわちラベル紙に相当するとき低速に、排気ファン18の回転数を設定する。
【0050】
このようにして、用紙から発生する揮発性有機化合物(VOC)を検知可能なVOCセンサー22を備えるとともに、このVOCセンサー22により、制御部21が、VOCの発生量に係る情報を得るので、VOCの発生量を自動的に正確に把握することが可能である。これにより、用紙種類を識別する必要がなく、用紙種類に関わらず、VOCを捕集するのに好適な排気ファン18の回転数を正確に設定することができる。
【0051】
また、VOCセンサー22が、所定量より多い揮発性有機化合物を検知したとき、制御部21は、排気ファン18の回転数を低下させるので、VOCを捕集するフィルタ19の捕集効率を高めることが可能になる。そして、VOCセンサー22が検知したVOC発生量が比較的少ない場合には、排気ファン18の回転数を低下させないようにすることができる。したがって、種類の異なる用紙Pを使用するなどすることによりVOCの発生量が変化した場合であっても、印刷物の生産性を低下させることなく、用紙Pから発生するVOCの高効率な捕集を遂行でき、且つ高温の空気がプリンタ1内に充満するのを防止することが可能である。
【0052】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0053】
例えば、プリンタ1は、上記実施形態ではブラックトナーのみを使用したモノクロ印刷用の画像形成装置であるが、このような機種に限定されるわけではなく、中間転写ベルトを備え、複数色を重ね合わせて画像形成すること可能なタンデム方式、或いはロータリーラック方式のカラー印刷用画像形成装置であっても構わない。
【0054】
また、排気ファン18は、ダクト17に結合されて内部が連通するように構成されているが、ダクト17と連結されず、プリンタ1内部全体の空気を外部に排出する構成のものであっても構わない。同様に、ダクト17は、定着装置13の下流側で、排出用用紙搬送路14に直接連結していない構成であっても構わない。
【0055】
また、フィルタ19は、排気ファン18の空気流通方向下流側に配置しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、画像形成装置全般において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプリンタの模型的垂直断面左側面図である。
【図2】図1のプリンタの定着装置のすぐ下流周辺を示す垂直断面正面図及び制御回路の概略図である。
【図3】用紙種類別のVOC発生量を示すグラフである。
【図4】フィルタを通過する空気の風速とVOC捕集効率の関係を示すグラフである。
【図5】図2に示す排気ファンによる用紙種類別の回転数を示す表である。
【図6】図2に示す排気ファンの制御の有無が、プリンタ外部へのVOC排出量に及ぼす影響を示す表である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るプリンタの模型的垂直断面左側面図である。
【図8】図7のプリンタの定着装置のすぐ下流周辺を示す垂直断面正面図及び制御回路の概略図である。
【図9】図8に示す排気ファンによるVOCセンサー出力別の回転数を示す表である。
【符号の説明】
【0058】
1 プリンタ(画像形成装置)
2 本体
13 定着装置
17 ダクト
18 排気ファン
19 フィルタ
20 操作パネル
21 制御部
22 VOCセンサー(センサー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙上の未定着トナー像を加熱定着する定着装置と、画像形成装置内部の空気を外部に排出する排気ファンと、前記空気に含まれる揮発性有機化合物を捕集するフィルタとを備えた画像形成装置において、
前記排気ファンの動作を制御する制御部を備え、この制御部が、用紙から発生する揮発性有機化合物の量に基づき、排気ファンの回転数を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
用紙種類が選択可能な操作パネルを備えるとともに、この操作パネルで選択された用紙種類から、前記制御部が、用紙種類によって異なる揮発性有機化合物の発生量に係る情報を得ることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記操作パネルで、揮発性有機化合物発生量が所定量より多い用紙が選択されたとき、前記制御部は、前記排気ファンの回転数を低下させることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
用紙から発生する揮発性有機化合物を検知可能なセンサーを備えるとともに、このセンサーにより、前記制御部が、揮発性有機化合物の発生量に係る情報を得ることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記センサーが、所定量より多い揮発性有機化合物を検知したとき、前記制御部は、前記排気ファンの回転数を低下させることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−117421(P2010−117421A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288725(P2008−288725)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】