説明

画像形成装置

【課題】1つのばねがドア開き始め時の開き動作アシストと、ドア開き終わり時のダンパー機能とを兼ね備えることで、簡易な構成で、ドア開き終わり時の騒音や衝撃の発生を抑えつつ、ドア開き始め時の操作性の良い装置を提供する。
【解決手段】ドア重心の位置がドアユニットDの回転軸の鉛直上方となる第1位置より閉位置側にある場合に開方向の回転モーメントが作用し、ドア重心の位置が第1位置より開位置側にある場合に閉方向の回転モーメントが作用するようにドア開閉リンク部材86を付勢する1つのバネ部材(ドアユニット加圧バネ85)を有し、ドアユニットDが閉位置に位置する際にドア自重により作用する閉方向の回転モーメントよりもバネ部材により作用する開方向の回転モーメントの方が大きく、ドアユニットDが開位置に位置する際にドア自重により作用する開方向の回転モーメントよりもバネ部材により作用する閉方向の回転モーメントの方が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート等の記録材上に画像を形成する機能を備えた、例えば、複写機、プリンタなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真画像形成プロセスを用いて記録材に画像形成する電子写真画像形成装置においては、次のようなカートリッジ方式が採用されている。それは、電子写真感光体及び前記電子写真感光体に作用するプロセス手段を一体的にカートリッジ化して、このカートリッジを電子写真画像形成装置本体に着脱可能とするものである。
【0003】
このカートリッジ方式によれば、装置のメンテナンスをサービスマンによらずにユーザ自身で行うことができるので、格段に操作性を向上させることができる。このため、このカートリッジ方式は、電子写真画像形成装置において広く用いられている。
【0004】
こうしたカートリッジ方式を用いた電子写真画像形成装置においては、ユーザ操作性を向上する為にプロセスカートリッジ着脱用ドアを自動的に開閉させる機構をもつものがある。一例として、プロセスカートリッジ着脱用ドアが閉じている状態でロックするロック機構を有し、さらにロックされた閉状態の開閉体を常時開方向に付勢するばねを備える装置がある。このような装置では、ロック手段を解除した際に、ばね部材のばね力によって開閉体を自動的に開放する。
【0005】
このような手段を用いることで、プリンタ等の操作に不慣れなユーザであっても容易に画像形成装置の開閉部を操作することを可能とするとともに、ドアなどの開閉操作部に高級感を持たせることができる。
【0006】
特許文献1には、上記のようにプロセスカートリッジ着脱用ドアを自動的に開閉させる機構を備えた電子写真画像形成装置において、次のような技術が開示されている。それは、開閉体を常時開方向に付勢するばねによって起こる樹脂製支持部材のたわみやクリープ現象を防止し、樹脂製支持部材の変形やクリープ現象に起因する開閉体の動作不良を防止するものである。また、特許文献2には、開閉カバーの開閉動作中に、開閉カバーに対して、ダンパー手段のバックアップバネが開閉カバーの閉方向に作用する構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−26736号公報
【特許文献2】特開平11−84982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら特許文献1に記載の構成では、開閉体を常時開方向に付勢しているので、開閉動作が完了するポジションにおいてドア等の開閉体が開ききった際に、装置本体側の部品と衝突し、ユーザにとって不快な騒音や衝撃を発生させてしまうことが懸念される。
【0009】
また、特許文献2に記載の構成において、開閉カバーの開き終わりでは、バックアップバネが開閉カバーの閉方向に作用してダンパー効果を発揮するが、開き始めでは、ばね力がユーザの開き動作の抵抗となるため、ユーザの操作性を損なうことが懸念される。
【0010】
本発明の目的は、1つのばねがドア開き始め時の開き動作アシストと、ドア開き終わり時のダンパー機能とを兼ね備えることにより、簡易な構成で、ドア開き終わり時の騒音や衝撃の発生を抑えつつ、ドア開き始め時の操作性の良い装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
回転可能に設けられ、装置本体に対して開閉される開閉部材と、
前記開閉部材を閉位置で装置本体に係止する係止機構と、
を有し、
前記開閉部材が前記閉位置から開方向に回転した場合に、前記開閉部材の重心の位置が前記開閉部材の回転軸の鉛直上方となる第1位置を越えて回転した位置に前記開閉部材の開位置があり、前記第1位置を境として前記開閉部材の自重による回転方向が切り替わる画像形成装置において、
前記開閉部材の開閉動作に連動するように設けられた移動部材であって、前記開閉部材が前記閉位置をとる場合に位置する第2位置と、前記開閉部材が前記開位置をとる場合に位置する第3位置との間を移動可能に設けられた移動部材と、
一端が装置本体に取り付けられ、他端が前記移動部材に取り付けられた1つのバネ部材であって、
前記開閉部材の重心の位置が、前記第1位置より前記閉位置側にある場合には、前記開閉部材に開方向の回転モーメントが作用するように前記移動部材を前記第3位置の方向に付勢し、
前記開閉部材の重心の位置が、前記第1位置より前記開位置側にある場合には、前記開閉部材に閉方向の回転モーメントが作用するように前記移動部材を前記第2位置の方向に付勢するバネ部材と、
を有し、
前記開閉部材が前記閉位置に位置する場合に前記開閉部材の自重により前記開閉部材に作用する閉方向の回転モーメントよりも、前記バネ部材が前記移動部材を前記第3位置の方向に付勢することで前記開閉部材に作用する開方向の回転モーメントの方が大きく、
前記開閉部材が前記開位置に位置する場合に前記開閉部材の自重により前記開閉部材に作用する開方向の回転モーメントよりも、前記バネ部材が前記移動部材を前記第2位置の方向に付勢することで前記開閉部材に作用する閉方向の回転モーメントの方が大きくなるように、前記バネ部材の付勢力の大きさが設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1つのばねがドア開き始め時の開き動作アシストと、ドア開き終わり時のダンパー機能とを兼ね備えることにより、簡易な構成で、ドア開き終わり時の騒音や衝撃の発生を抑えつつ、ドア開き始め時の操作性の良い装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用可能な画像形成装置の概略構成を示す断面図。
【図2】実施例においてドアユニットが開いた状態の装置本体を示す概略断面図。
【図3】実施例においてドアユニットが開いた状態の装置本体を示す概略斜視図。
【図4】実施例においてドアユニットを開けた状態の装置本体の要部を示す概略斜視図。
【図5】実施例において装置本体のプロセスカートリッジ装着部を示す概略斜視図。
【図6】実施例においてプロセスカートリッジを示す概略斜視図。
【図7】実施例においてプロセスカートリッジを示す概略斜視図。
【図8】実施例においてドアユニットのフレーム構成を示す概略斜視図。
【図9】実施例においてドアロックおよびロック解除部の構成を示した概略図。
【図10】実施例においてドアユニット加圧バネの動作を説明するために画像形成装置の要部を模式的に示した図。
【図11】実施例においてドアユニットの自重によるモーメントおよびドアユニット加圧バネによるモーメントを説明するための図。
【図12】実施例においてドアユニットの自重によるモーメントおよびドアユニット加圧部によるモーメントと回転角との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0015】
ここで、本発明を適用可能な画像形成装置としての電子写真画像形成装置は、電子写真画像形成プロセスを用いて記録材に画像を形成するものであり、次のような装置が含まれる。それは、例えば電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えば、LEDプリンタ、レーザビームプリンタ等)、電子写真ファクシミリ装置、電子写真ワードプロセッサ等である。又、本発明を適用可能な開閉部材としては、例えば、画像形成装置本体に対して着脱可能なトナーカートリッジや、記録材補充の際にユーザが開閉する記録材積載部へのアクセスドア、サービスユニット交換時のアクセスドアが挙げられる。また、アクセサリ取り付け又は取り外し時のアクセスドア、ユーザが電子写真画像形成装置本体内部を清掃する際のアクセスドア、JAM処理時の開閉部等が挙げられる。
【0016】
(画像形成装置の全体構成)
図1は、本発明を適用可能な、電子写真プロセスによって画像を形成する画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0017】
実施例1に係る画像形成装置は、光学手段としての露光装置2と、現像手段を有するプロセスカートリッジPと、装置の駆動を制御する電装部30を備える。光学手段としての露光装置2には、光源としてのレーザダイオード(不図示)、ポリゴンミラー21、及び反射ミラー22が備えられている。
【0018】
さらに実施例1に係る画像形成装置は、記録材Sの積載手段として、手差しトレイ4、給送カセット5,6が備えられ、これらの積載手段には複数の記録材が積載される。さらに積載された記録材を1枚ずつに分離して搬送する、給送ローラ7,8,9が備えられ、分離された記録材を搬送するレジストローラ対10が備えられている。そして、画像が形成された記録材Sを排出するための、内排出ローラ対16、外排出ローラ対17が搬送方向下流側に備えられている。
【0019】
このように構成される画像形成装置本体(以下、装置本体)1において、記録材Sに画像を形成する際のプロセスについて以下説明する。
【0020】
不図示の信号入力部において、画像形成開始の信号が入力されると、手差しトレイ4及び給送カセット5,6内の記録材Sが、各々に備えられる給送ローラ7,8,9によって給送される。この際、給送ローラ7,8,9は記録材を1枚ずつに分離する摩擦分離方式を採用しているので、これらのローラによって記録材は1枚ずつに分離され給送される。給送ローラ7,8,9によって給送された記録材Sは、回転停止しているレジストローラ対10のニップ部に突き当てられる。そして所定のタイミングでレジストローラ対10が駆動し、レジストローラ対10において記録材Sの斜行状態の矯正が行われる。
【0021】
一方で、光学手段としての露光装置2においては、光源としてのレーザダイオードから射出されたレーザ光が、ポリゴンミラー21によって走査されて、感光ドラム31の表面上に照射される。これにより、感光ドラム31の表面上に静電潜像が形成される。そして、感光ドラム31の表面上に形成された静電潜像に対し、プロセスカートリッジP内に収容された現像手段から現像剤としてのトナーが供給されることで、感光ドラム31の表面上にトナー像が形成される。
【0022】
記録材Sは、レジストローラ対10によって斜行矯正された後、タイミングをとって感光ドラム31と転写ローラ11で形成された搬送ニップ部に搬送される。そして、記録材Sは、不図示の転写帯電器によって帯電された後に、搬送ニップ部でトナー像が転写される。
【0023】
トナー像が転写された記録材Sは搬送ガイド12に沿って定着装置13へ搬送され、画像が記録材S上に永久定着される。なお、実施例1における定着装置13は、加圧ローラ14と定着ローラ15とから構成され、さらに定着ローラ15の内部には、不図示の発熱ヒータが設けられている。画像の定着を行う際は、加圧ローラ14と定着ローラ15で形成されるニップ部で記録材Sを挟持搬送しながら、記録材Sの画像形成面に対して発熱ヒータが熱を付与する。ニップ部において、記録材S上に形成された画像に対して熱を付与し、さらに加圧ローラ14によって加圧することで、画像を記録材S上に定着させることができる。定着装置13において画像が定着された記録材Sは、内排出ローラ対16、外排出ローラ対17によって排出トレイ18へ排出される。
【0024】
なお、本実施例の画像形成装置は、記録材Sへ両面印字を行う両面プリントモードと片面プリントモードが備えられている。片面プリントモードでは、定着装置13によって画像が定着された記録材Sは、排出ローラに搬送されてそのまま排出トレイ18へ排出される設定である。一方で、両面プリントモードでは、外排出ローラ対17の反転駆動によって記録材Sが再給送パス20へ搬送され、記録材Sを中間トレイ24上に一時的に積載する。そして、中間トレイ24上に積載された記録材Sは再給送装置25によって再度、レジストローラ対10に搬送され、以後、片面プリントの場合と同様にして画像が形成される。
【0025】
(プロセスカートリッジの着脱構成及び装着部)
プロセスカートリッジPの着脱ガイド、装着部構成について図2〜図7を参照して説明する。図2は、回転可能に設けられ、プロセスカートリッジ着脱の際に装置本体1に対して開閉される開閉部材としてのカートリッジアクセスドア(以下、ドアユニット)Dが開いた状態の装置本体1を示す概略断面図である。図3はドアユニットDが開いた状態の装置本体1を示す概略斜視図である。図4は同じくドアユニットDを開けた状態の装置本体1の要部を示す概略斜視図である。図5は装置本体1のプロセスカートリッジ装着部を示す概略斜視図、図6及び図7はプロセスカートリッジを示す概略斜視図である。ここで、本実施例では、装置本体1が設置された状態における鉛直方向を上下方向とする。また、図2において右側が装置本体1の正面側(前面側)となり、左側が後面側となる。
【0026】
プロセスカートリッジPは、ユーザによって、装置本体1のドアユニットDを開いた状態で、装置本体1に設けられたカートリッジ装着部に対して取り外し可能に装着される。先ず、プロセスカートリッジP側に設けられたガイド部材等を説明する。
【0027】
プロセスカートリッジPの両外側面の略円筒部70,71外径によりプロセスカートリッジ側のガイド部材が構成される。又、装置本体1に装着した際の上方向位置で且つ両端部にそれぞれ回転規制当接部である72,73が設けられている。
【0028】
次に、装置本体1に設けられたガイド部材74〜77について説明する。
【0029】
ガイド部材74〜77は、プロセスカートリッジP装着方向に対して斜設して構成されており、プロセスカートリッジPの略円筒部70,71および回転規制当接部72,73がそれぞれ挿入されてくる。装置本体1内部に取り付けられているカートリッジ抑えバネ78は、プロセスカートリッジPの片外側面の略円筒部71の外周部を略鉛直下方に押圧することで、プリント動作中のプロセスカートリッジPを装置本体1の装着位置に保持する。
【0030】
(ドアユニットの構成1−フレーム構成)
次に、プロセスカートリッジ着脱の際にユーザによって開閉されるドアユニットDの構成について図8〜図9を参照して説明する。図8はドアユニットDのフレーム構成を示す概略斜視図である。
【0031】
ドアユニットDは、ドアベースフレーム82、ドアロック係合部(以下、係合部)83(図9参照)、外装カバー84、手差しトレイ4により構成されている。ドアベースフレーム82が、本体フレーム80a,80bにそれぞれ設けられた回転支軸(回転軸、回転中心)81を中心として回転可能に取り付けられることで、ドアユニットDが装置本体1に対して開閉可能となっている。手差しトレイ4は、ドアベースフレーム82に対して開閉可能であり、外装カバーを兼ねている(図1参照)。
【0032】
85は本体フレーム側に固定されたバネ部材としてのドアユニット加圧バネである。ドアユニット加圧バネ85は、本体フレーム80aに係合した移動部材としてのドア開閉リンク部材86、およびドアベースフレーム82と一体的に形成された係合部87を介してドアユニットDに回転支軸81まわりに付勢力を与える。本実施例においては後述するように、ドアユニット加圧バネ85とドアの自重による回転モーメントの和が図8中のCW方向に掛かる構成となっている。従って、ドアロック係合部(以下、係合部)83が解除されると、ドアユニットDはCWの方向に自動的に回転し、ユーザがプロセスカートリッジを着脱するアクセス部としてのスペースを形成する。
【0033】
(ドアユニットの構成2−ドアロックおよびロック解除部の構成)
図9はドアロック部およびロック解除部の構成を示した概略図である。図9(a)および図9(b)はドアユニットDが開いている状態におけるカートリッジアクセス部周辺の概略斜視図である。図9(c)はドアロック部のロック状態を説明するための上視図、図9(d)はドアロック部のロック状態を説明するための正面図である。図9(e)はドアロック部のロック解除状態を説明するための上視図、図9(f)はドアロック部ユニットのロック解除状態を説明するための正面図である。
【0034】
ドアベースフレーム82に設けられた係合部83は、ロック係合部材88とドアユニットDが閉じた状態(閉位置)において係合している。ドアロック部は、ロック係合部材88、ドアボタン89、バネ90、およびフレーム91から構成されている。このドアロック部及び係合部83は、係止機構に相当する。また、ドアボタン89にはテーパ部92が形成され、ロック係合部材88にはテーパ部93が形成されており、テーパ部92とテーパ部93が当接するように設けられている。
【0035】
閉状態のドアユニットDおよびドアロック部に対し、ユーザがドアボタン89を押し下げることで、ドアユニットDを開く動作が行われる。ドアボタン89が押し下げられると、ドアボタン89と一体的に形成されたテーパ部92がロック係合部材88側のテーパ部93を押圧することによって、ロック係合部材88が図9(c)〜(f)において右方向に移動する。これにより、ロック係合部材88がドアベースフレーム82の係合部83と
離間する。
【0036】
これによりドアユニットDは回転可能となり、ドアユニット加圧バネ85によるモーメントによって自動回転する。つまり、このように構成することで、ドアボタン89を押した時にドアユニットDが自動的に開くので、ドアの開け方がわからないユーザにとって操作方法が理解され易いという効果が得られる。
【0037】
また、ドアユニットDを閉じたい場合は、開いた状態のドアユニットDをユーザの操作により回転支軸81を中心にCCW方向へ回転させる。ここで、ドアベースフレーム82の閉方向の先端側(下流側)にはテーパ部94が設けられ、ロック係合部材88には、ドアユニットDの閉動作時にテーパ部94が当接するテーパ部95が設けられている。ドアユニットDの閉動作時に、ドアベースフレーム82のテーパ部94がロック係合部材88のテーパ部95と接触することで、ドア回転力の分力によりロック部が図9(c)〜(f)において右方向へ移動する。さらにドアユニットDをCCW方向へ回転させ、ドアユニットDが閉じきるポジションまで回転させるとバネ90の力によりドアベースフレーム82の係合部83にロック係合部材88が挿入され、ドアベースフレーム82とロック係合部材88とが係合する。これにより、ドアユニットDが閉位置で装置本体1に係止される。尚、本実施例においては上述のドアロックおよびロック解除の方法を用いたが、ドアユニットDを本体フレームに対して閉じた位置に保持および開放できるものであれば他の方法を採用してもよい。
【0038】
(ドアユニットの構成3−ドアユニット加圧バネの構成)
本実施例のドアユニットは、ドアユニット加圧バネ機構によってロック解除時にはドアを自動的に開くための付勢手段として用いられ、ドアが開ききる前にはドアを静かに開ききるためのブレーキ手段として用いられる。
【0039】
本実施例のドアユニットDは、閉位置から開方向に回転した場合に、ドアユニットDの重心の位置が回転支軸81の鉛直上方となるドア開閉位置(第1位置)を越えて回転した位置にドアユニットDの開位置が存在する。したがって、その可動範囲の一部においてドアユニットDの自重による回転モーメントがCW方向およびCCW方向に作用する範囲が存在する。すなわち、ドアユニットDの重心が回転支軸81の鉛直上方(鉛直上)となるドア開閉位置を境に自重が作用する回転方向が切り替わる構成となっている。
【0040】
このため、ドアユニットDが閉状態にある場合、及び、ドアロックが解除され、ドアが開き始めてからドアユニットDの重心が回転支軸81上に至るまでの範囲(ドア閉位置側)においては、次のような回転モーメントをドアユニット加圧バネ85により与える。すなわち、ドアを自動回転させるために、ドアユニットDの自重の作用によるCCW方向の回転モーメントを上回る回転モーメントをドアユニット加圧バネ85によりCW方向に与える。
【0041】
また、ドアユニットDの重心が回転支軸81の鉛直上よりドア開き側(ドア開位置側)にある際は、ドアユニットDの自重によるモーメントはCW方向に作用することとなり、この際のモーメントは回転角度が大きくなるほど増大する。これに対して本実施例においては、ドアユニット加圧バネ85により回転支軸81まわりにCCW方向のモーメントを与えている。そして、ドアユニットDの開位置、又はドアユニットDが開ききる付近の可動範囲においては、ドアユニットDの自重によるCW方向の回転モーメントより大きな回転モーメントをドアユニット加圧バネ85によりCCW方向に与えている。このようにドアユニット加圧バネ85のバネ力(付勢力、弾性力)の大きさが設定されることで、ドアユニットDの自重による過度に大きなモーメントに抗し、ドアユニットDの開放時にはドアが開ききる衝撃を緩和することができる。
【0042】
図10はドアユニット加圧バネの動作を説明するために画像形成装置の要部を模式的に示した図である。図10(a)はドアユニットDが閉じている状態(ドア開閉リンク部材86が第2位置に位置する状態)を示す図である。図10(b)はドアユニットD重心が回転支軸81の鉛直上にある状態(ドア開閉リンク部材86が第4位置に位置する状態)を示す図である。図10(c)はドアユニットDが開ききっている状態(ドア開閉リンク部材86が第3位置に位置する状態)を示している。図10(a)〜(c)に示すように、ドアユニット加圧バネ85は一端が本体フレーム80aのバネかけ部101に係止され、他端部がドア開閉リンク部材86の取付部86aに取り付けられている1つの引っ張りコイルばねである。ここで、ドア開閉リンク部材86が位置する前記第2〜前記第4位置においては、回転支軸81(回転中心105)からの距離が前記第3位置、前記第4位置、前記第2位置の順に大きくなるように設けられている。
【0043】
ドア開閉リンク部材86には、ガイド用の長穴形状(第1長穴形状部)102が設けられている。そして、長穴形状102の内周部が、本体フレーム80aに係合部として設けられている2ヶ所のガイドピン103と係合するように設けられている。ここで、長穴形状102は、ドア開閉リンク部材86が装置本体1に取り付けられた場合(本体フレーム80aに係合している場合)に、水平方向(一方向)を長手方向とする長穴形状に設けられている。このことで、ドア開閉リンク部材86が装置本体1に対して、図10(a)〜(c)中の左右方向(水平方向、一方向)に往復運動することが可能となっている。また、ドア開閉リンク部材86には、長穴形状102の長手方向に対して交差する方向((本実施例では、直交する方向(鉛直方向))を長手方向とする長穴形状(第2長穴形状部)104が設けられている。長穴形状104には、ドアベースフレーム82と一体的に形成された係合部87が移動可能に係合している。このような構成により、ドアユニットDの回転動作が、ドア開閉リンク部材86の水平方向の往復運動に変換され、ドアユニットDの開閉動作に連動してドア開閉リンク部材86が水平方向に移動(往復動)することとなる。
【0044】
ドアユニットDの閉位置から、ドアユニットDの重心が回転支軸81上に至るまでの範囲においては、図10(a)に示すように、ドアユニット加圧バネ85の引っ張りバネ荷重の水平方向成分が右向きに作用する。これにより、ドアユニットDにはドアユニット加圧バネ85によるCW方向のモーメントが発生(作用)している。また、ドアユニットDの重心が回転支軸81の鉛直上よりドア開き側にある場合には、図10(c)に示すように、ドアユニット加圧バネ85の引っ張りバネ荷重の水平方向成分が左向きに作用する。これにより、ドアユニットDにはドアユニット加圧バネ85によるCCW方向のモーメントが発生(作用)している。また、図10(c)に示すように、ドアユニットDの自重による回転モーメントが0となる場合、すなわち、ドアユニットDの重心が回転支軸81の鉛直上にある場合に、ドアユニット加圧バネ85のバネ圧(付勢力、弾性力)が最小となる。これは、ドアユニットDの重心が回転支軸81の鉛直上にある場合に、ドアユニット加圧バネ85が取り付けられるバネかけ部101と、ドア開閉リンク部材86の取付部86aとの間の距離が最小となるように構成されることによるものである。
【0045】
(ドアユニットの回転モーメント)
次に、ドアユニットDの回転モーメントについて説明する。図11は、ドアユニットDの自重によるモーメントおよびドアユニット加圧バネ85によるモーメントを説明するための図である。図11に示すように、ドアユニットDおよびドアユニット加圧バネ85まわりのパラメータを以下のように置く。
・ドアユニットの自重によるモーメント:MD(CW方向を正とする)
・ドアユニット加圧部(ドアユニット加圧バネ85)によるモーメント:MS(CW方向を正とする)
・ドアユニット回転角度:θ(閉じた位置を0°、CW方向を正とする)
・ドアユニット質量:mD
・重力加速度:g
・回転中心105(回転支軸81)とドアユニットの重心G間の距離:RD
・ドアユニットが閉じているときのドアユニット重心Gと回転中心105(回転支軸81)を結ぶ直線が鉛直方向と成す角度:θD
・ドアユニットがθ回転したときのドア開閉リンク部材86の水平方向移動量:Xθ
・ドアベースフレーム82と一体的に形成された係合部87中心と回転中心105(回転支軸81)との距離:r
・ドアユニットが閉じているときの係合部87中心と回転中心105(回転支軸81)を結ぶ直線とが鉛直方向と成す角度:α
・係合部87中心と回転中心105(回転支軸81)間の鉛直方向の距離:Q
・ドアユニット加圧バネ85のバネ定数:k
・ドアユニットがθ回転したときのドアユニット加圧バネ85の長さ:Lθ
・ドアユニット加圧バネ85の自然長:L0
・ドアユニット加圧バネ85の水平方向成分:P(右向きを正)
・ドア開閉リンク部材86側バネかけ部の水平方向の位置が本体フレーム80aのバネかけ部101の鉛直真下にあるときの本体フレーム80aのバネかけ部101とドア開閉リンク部材86側バネかけ部間の長さ:LV
・ドアユニットが閉じているときのドア開閉リンク部材86側バネかけ部とドア開閉リンク部材86側バネかけ部の水平方向の位置が本体フレーム80aのバネかけ部101の鉛直真下にあるときのバネかけ部との距離:X0
すると、MDおよびMSは次のような関係となる。
MD= −mD・g × sin(θD−θ)
MS= P × Q
また、ドアユニット加圧バネ85の水平方向成分P、係合部87中心と回転中心105(回転支軸81)間の鉛直方向の距離Qはそれぞれ次のような関係となる。
P=k(Lθ−L0)×(X0−Xθ)/Lθ
Q=r・cos(α−θ)
また、
Xθ=r(sinα−sin(α−θ))
Lθ=|{(X0−Xθ)+LV1/2
である。
【0046】
mD、r・・・等の設計値を本実施例に適した数値を選択した場合のドアユニットDの回転におけるMDおよびMSと、回転角θとの関係を図12に示す。図12において、ドアユニットDまわりに働くモーメントの和(MD+MS)が、Aで示す範囲(MD+MS>0)ではCW方向に作用し、Bで示す範囲(MD+MS<0)ではCCW方向に作用する。
【0047】
上述したように本実施例では、ドアユニット加圧バネ85は、第1の付勢手段として、第1のドア可動域、すなわちドアの閉状態から、ドアユニットDの重心が回転軸の鉛直真上に位置する区間において、次のような回転モーメントを与えている。すなわち、ドアユニットDの自重による回転モーメントに対し逆方向かつ、ドアユニットDの自重による回転モーメントより大きな回転モーメントを与えている。また、第2の付勢手段として、第2のドア可動域、すなわちドアユニットDの重心が回転軸の鉛直真上の位置から開ききった状態で位置するまでの区間において、次のような回転モーメントを与えている。すなわち、ドアユニットDの自重による回転モーメントに対し逆方向かつ、ドアユニットDの開位置においてはドアユニットDの自重による回転モーメントより大きな回転モーメントを与えている。
【0048】
このような構成により、1つのばねがドアユニットDの開き始め時の開き動作アシストと、開き終わり時のダンパ機能とを兼ね備えることが可能となる。これにより、簡易な構成で、ドア開き終わり時の騒音や衝撃の発生を抑えつつ、ドア開き始め時の操作性の良い画像形成装置を提供することができる。
【0049】
ここで、上記第1のドア可動域としては、ドアの閉状態から、ドアユニットDの重心が回転軸の鉛直真上の位置よりわずかに大きな角度を回転する区間であると、より好ましい。この場合の第2のドア可動域は、ドアユニットDの重心が回転軸の鉛直真上の位置よりわずかに大きな角度を回転した時点以後であってドアユニットDが開ききった状態で位置するまでの区間となる。そして、第2のドア可動域においてはさらに、2つの区間に分けて、付勢手段により付与される回転モーメントの大きさを変えるとより好ましい。すなわち、第2のドア可動域の前半(ドアユニットDの重心が回転軸の鉛直真上の位置よりわずかに大きな角度を回転した時点以後の回動区間の前半)領域においては、ドアユニットDの自重による回転モーメントよりわずかに小さなモーメントを与えるとよい。また、第2のドア可動域の後半、すなわちドアユニットDが開ききる付近の可動範囲において、ドアユニットDの自重による回転モーメントより大きな回転モーメントを与えるとよい。これは、ドアユニットDの自重による回転モーメントが0となる回転位置、すなわち、ドアユニットDの重心が回転軸の鉛直真上にある位置と、ドアユニット加圧バネ85のバネ圧が最小となるポイントを調整(近傍とする)することで可能となる。
【0050】
このように、付勢手段としてトグルバネを用いることで、ドア可動域の全域においてドアユニットDに回転モーメントを付与する付勢手段を、1つのバネ部材(本実施例ではドアユニット加圧バネ85)で実現することができる。
【0051】
本実施例においては、記録材に画像を形成する画像形成装置として電子写真画像形成装置について説明したが、これに限るものではない。すなわち、静電記録プロセス、磁気記録プロセス等の作像プロセスを用いた画像形成装置においても本発明を好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 装置本体
83 係合部
85 ドアユニット加圧バネ
86 ドア開閉リンク部材
88 ロック係合部材
89 ドアボタン
90 バネ
91 フレーム
D ドアユニット
G 重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられ、装置本体に対して開閉される開閉部材と、
前記開閉部材を閉位置で装置本体に係止する係止機構と、
を有し、
前記開閉部材が前記閉位置から開方向に回転した場合に、前記開閉部材の重心の位置が前記開閉部材の回転軸の鉛直上方となる第1位置を越えて回転した位置に前記開閉部材の開位置があり、前記第1位置を境として前記開閉部材の自重による回転方向が切り替わる画像形成装置において、
前記開閉部材の開閉動作に連動するように設けられた移動部材であって、前記開閉部材が前記閉位置をとる場合に位置する第2位置と、前記開閉部材が前記開位置をとる場合に位置する第3位置との間を移動可能に設けられた移動部材と、
一端が装置本体に取り付けられ、他端が前記移動部材に取り付けられた1つのバネ部材であって、
前記開閉部材の重心の位置が、前記第1位置より前記閉位置側にある場合には、前記開閉部材に開方向の回転モーメントが作用するように前記移動部材を前記第3位置の方向に付勢し、
前記開閉部材の重心の位置が、前記第1位置より前記開位置側にある場合には、前記開閉部材に閉方向の回転モーメントが作用するように前記移動部材を前記第2位置の方向に付勢するバネ部材と、
を有し、
前記開閉部材が前記閉位置に位置する場合に前記開閉部材の自重により前記開閉部材に作用する閉方向の回転モーメントよりも、前記バネ部材が前記移動部材を前記第3位置の方向に付勢することで前記開閉部材に作用する開方向の回転モーメントの方が大きく、
前記開閉部材が前記開位置に位置する場合に前記開閉部材の自重により前記開閉部材に作用する開方向の回転モーメントよりも、前記バネ部材が前記移動部材を前記第2位置の方向に付勢することで前記開閉部材に作用する閉方向の回転モーメントの方が大きくなるように、前記バネ部材の付勢力の大きさが設定されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記バネ部材は、前記開閉部材の重心の位置が前記第1位置に位置する場合に、前記バネ部材の付勢力が最小となるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記移動部材は、
前記開閉部材の重心の位置が前記第1位置に位置する場合に、前記バネ部材の一端が取り付けられた装置本体の取付部と、前記バネ部材の他端が取り付けられた前記移動部材の取付部との間の距離が最小となる第4位置に位置し、
前記回転軸からの距離が前記第3位置、前記第4位置、前記第2位置の順に大きくなるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記移動部材は、装置本体に対して一方向に移動可能に設けられるものであって、
前記一方向を長手方向とし、装置本体に設けられた係合部に前記一方向に移動可能に係合する第1長穴形状部と、
前記一方向に交差する方向を長手方向とし、前記開閉部材に設けられた係合部が移動可能に係合する第2長穴形状部と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−197502(P2010−197502A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39804(P2009−39804)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】