説明

画像形成装置

【課題】像担持体周辺の画像形成プロセスが単純なカラー画像形成装置を提供することが可能であり、装置構成及び画像形成プロセスが複雑でなく、安価で小型な画像形成装置を提供する。
【解決手段】転写材Pの特性に応じて露光手段51による画像形成速度、定着手段61による転写材の搬送速度、並びに、中間転写体52又は転写材搬送手段の移動速度を変更する場合においても、像担持体50の回転速度は一定である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に静電潜像を形成し、形成された潜像を現像してトナー像とし、このトナー像を転写材に転写し、その後、定着して画像を得る電子写真方式の画像形成装置に関するものである。特に、本発明の画像形成装置は、複写機、プリンタ等の機能を有する画像記録装置やそれ等の機能を兼ね備える複合機、ワークステーション等の出力機器として用いられるカラー画像形成装置として用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー画像を形成する画像形成装置が実用化されている。斯かる画像形成装置は、像担持体としての電子写真感光体を備えており、像担持体の周囲に帯電装置、現像装置を配置した複数の電子写真プロセスユニットが装置内に並置されている。各プロセスユニット内の像担持体には、その表面にレーザ、LED光等を用いた露光装置により光学像を結像させることで感光体表面に潜像を形成し、その潜像を現像装置によりトナーを用いて可視化し、トナー像とする。このトナー像は、中間転写体としての中間転写ベルトに順次転写した後、転写材に一括して定着し、カラー画像を形成する。
【0003】
ここで、図8に、従来におけるカラープリンターの構成を示す。図8を参照して、カラープリンターの具体的な動作機能を説明する。
【0004】
本例にて、プリンターは、4ドラムフルカラー中間転写ベルト方式のプリンターであり、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色の現像剤(トナー)を備えた各画像形成ステーションS(SY、SM、SC、SK)を備えている。各画像形成ステーションSは、感光ドラム50(50Y、50M、50C、50K)、帯電装置52(52Y、52M、52C、52K)、現像装置53(53Y、53M、53C、53K)、クリーニング装置54(54Y、54M、54C、54K)を備えている。
【0005】
帯電装置52にて帯電された各感光ドラム50は、それぞれに対応したレーザスキャナ装置(露光装置)51(51Y、51M、51C、51K)から、画像データに基づいて発せられたレーザ光により露光され潜像が形成される。この潜像は、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色の現像剤を収容した現像装置53によって現像されトナー像が形成される。
【0006】
ベルト状の中間転写体、所謂、中間転写ベルト52は、駆動ローラ81、テンションローラ80及び2次転写対向ローラ82によって図中示される矢印方向に張架回転駆動される。中間転写ベルト52の内面側で、駆動ローラ81およびテンションローラ80の間には感光ドラム50に対向してトナー画像転写を実行するための1次転写ローラ83(83Y、83M、83C、83K)が併置されている。1次転写ローラ83が配置された1次転写位置にて、各感光ドラム50で形成された各色毎のトナー像が中間転写ベルト52上へ画像形成プロセスに基づき順次1次転写される。
【0007】
ここで、給紙カセット53には転写材であるシートPが積載されており、給紙ローラ54により給紙され、フィード・リタードローラ対55、搬送ローラ対56、57、により搬送され、駆動停止しているレジストローラ対59に搬送される。
【0008】
上記シートPは、レジストローラ対59により斜行が補正された後、所定のタイミングで2次転写部60へ搬送されて中間転写ベルト52上のトナー像が転写される。次いで、2次転写部60の2次転写ローラ60aと中間転写ベルト52により、定着器61に搬送されてトナー像の定着が行なわれる。
【0009】
その後、画像形成面を下にして排紙するFD排紙が指定された場合、前記定着器61を通過したシートPは、フラッパ67の上側を通過し、排紙ローラ対62、68、63によって搬送され排紙トレー64上に画像形成面を下にして排出積載される。
【0010】
また、画像形成面を上にして排紙するFU排紙が指定された場合、前記定着器61を通過したシートPは、フラッパ67の下側を通過し、排紙ローラ対65によって搬送され排紙トレー66上に画像形成面を上にして排出積載される。
【0011】
また、続いてシートPの裏面に画像を形成する場合、フラッパ69、フラッパ72を動作させ両面搬送経路73に導き、所定のタイミングで2次転写部60へ搬送されて中間転写ベルト52上のトナー像がシートPの裏面に転写される。次いで、定着器61に搬送されてシートPの裏面へのトナー像の定着が行なわれ、排紙トレー64若しくは66に搬送、排紙される。
【0012】
画像形成方法について更に詳説する。
【0013】
複数の像担持体にトナー画像を形成し、中間転写ベルトにそれぞれトナー画像を転写した後に、転写材上に一括転写することにより得られるカラー画像は、特定の画像形成プロセス速度に合わせて、露光、現像、転写、定着が実施されることにより実現する。これらの形態を簡易的に図9及び図10を用いて説明する。
【0014】
一般には、一定の速度で回転する像担持体上へ、高速で回転するポリゴンミラーによりレーザ露光が主走査方向へ所定の走査速度で実施されることにより主走査方向へ1次元画像が形成される。形成された1次元画像に対して更に像担持体がV0で回転しながら、像担持体回転方向上に断続的に逐次1次元画像が走査されることにより、副走査方向にも幅を持つ2次元の潜像画像が像担持体上に形成される。この時の露光副走査方向の画像形成速度をV0とする。
【0015】
この時、露光潜像が形成する2次元画像露光(EXP)は、主走査方向Ls、副走査方向Lpとして図10(a)で示されるものとなる。
【0016】
次に、露光行程によって形成された潜像に対してトナーが現像され2次元トナー顕像(DEV)がV0で回転する像担持体上に形成される。これを図10(b)に示す。
【0017】
次に、1次転写行程によってV0で移動する中間転写ベルト上へとトナー顕像が転写される。この時の画像転写(TRN1)が図10(c)である。
【0018】
これら一連のYMCK各色トナー顕像が中間転写ベルト上に順次形成され、フルカラートナー画像を形成した後、別途速度V0で搬送される転写材上へと2次転写部によって一括転写される。この時の画像転写(TRN2)が図10(d)である。
【0019】
その後、定着器により熱と圧力が加えられトナー顕像が転写材上に定着される。
【0020】
次に、所謂、坪量が150〜200gr/m2程度となる厚紙等を用いた場合の画像形成に関して図11及び図12を用いて説明する。
【0021】
厚紙上に画像を形成する場合には、定着器による転写材上に形成されたトナーに対する熱の授受関係により、転写材の搬送速度を例えば定常速度の1/2程度に落とす手法がある。
【0022】
そこで、図11に示すように、この定着速度の半減化に合わせて、露光/転写行程における画像形成速度も1/2にすることが行われ、装置全体として普通紙の画像形成速度の1/2速度で画像が形成される。この時各画像形成過程で形成される2次元画像を図12に示す。画像形成速度は、通常の1/2であるが、画像サイズとしては主走査方向Ls、副走査方向Lpの通常速度と同様サイズ画像で形成されている。
【0023】
以上は、中間転写ベルトを用いた画像形成装置の画像形成プロセスであるが、所謂、転写ベルトを用いた直接転写系も同様の画像形成プロセスを経て画像形成が行われている。それを図13を用いて説明する。
【0024】
図13に装置概要を示す。直接転写系の画像形成装置の全体構成及び各画像形成ステーションSの構成は、図8に示す中間転写ベルト方式の画像形成装置と同様である。ただ、中間転写ベルトの代わりに、転写ベルト52Aが配置され、転写ベルト52Aにて搬送される転写材Pに直接感光ドラム50上のトナー像が転写される。斯かる画像形成装置は当業者には周知である。従って、図13には、同じ構成及び機能をなす部材には同じ参照番号を付し、図8に関連してなした画像形成装置の説明を援用し、詳しい説明は省略する。
【0025】
斯かる画像形成装置においても、標準的な画像形成速度は露光での副走査速度V0、像担持体の回転速度V0、転写ベルト移動速度V0として画像が形成され、その時の各画像形成プロセスで形成される画像は、図14で示すようなものとなっている。
【0026】
また、厚紙を転写材とする時には、図15で示すように中間転写ベルトを用いた画像形成プロセスと同様に、露光、現像、転写の各画像形成プロセスを標準速度の1/2にする。この時形成される各画像プロセスにおける2次元画像を図16に示す。画像形成速度は通常の1/2であるが、画像サイズとしては主走査方向Ls、副走査方向Lpの画像が各プロセスで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2005−338362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
転写材の特性、特に坪量に拠るトナー定着熱量の授受関係により、定着速度を変化させている(遅くする)のが通常である。転写材の坪量80gr/m2程度の普通紙を標準速度とすると、坪量が120gr/m2、200gr/m2になると標準速度の1/2や1/3の速度にしてトナーを転写材に定着させるための熱量対応している。そのため、転写材の坪量によってプロセス速度を段階的に変化させている。例えば露光行程においては、ポリゴンミラーの回転数を変化させたり、ポリゴンミラー面を1面おきに使用したりして標準速度の1/2速度や1/3速度に対応している。また同時に、像担持体の回転速度若しくは中間転写体の移動速度も同様に1/2速度、1/3速度に変化させている。
【0029】
このように、転写材の坪量に合わせて画像形成プロセス速度を変化させると以下のような問題が生じる。
【0030】
像担持体、中間転写体の駆動速度が標準速度に対して1/2、1/3・・・・と用意するにあたり、像担持体、中間転写体を駆動するモータの回転速度の制御幅が広がり、広い周波数帯域で十分な精度を保証しなければならなくなる。このため、設計困難度が増したり、広帯域で精度を保証するために高価なモータを選択せざるを得ないことになったりする場合がある。
【0031】
また、広帯域な画像を形成するにあたり、像担持体、中間転写体を駆動する時に各駆動要素が発生する振動等により画像全体にわたり主走査方向のスジが副走査方向に発生する、所謂、バンディング画像が発生する確率が高くなる怖れがある。
【0032】
また、画像形成時重要なトナー現像プロセスにおいても、複数の速度で安定した特性を維持しなければならず、プロセス設計複雑度が増すとともに、保証部品の構成が複雑化し易く、装置の肥大化と高コスト化に繋がる怖れがある。
【0033】
そこで、本発明の目的は、像担持体周辺の画像形成プロセスが単純なカラー画像形成装置を提供することが可能であり、装置構成及び画像形成プロセスが複雑でなく、安価で小型な画像形成装置を提供することである。
【0034】
本発明の他の目的は、露光時に画像が搬送方向に一旦伸長された後、転写時に元の画像サイズに戻され、特定の周波数の速度変動によるバンディングが平均化され、バンディング画像欠陥を低減することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明の第一の態様によれば、所定の回転速度で駆動される像担持体と、前記像担持体に静電潜像を形成する露光手段と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像しトナー像とする現像手段と、前記トナー像を、移動する中間転写体に転写したあと転写材に転写するか、又は、移動する転写材搬送手段にて搬送される転写材に転写する転写手段と、前記転写手段からの前記転写材を所定の速度にて搬送し、前記トナー像を前記転写材に定着する定着手段と、を備えた画像形成装置において、
前記転写材の特性に応じて前記露光手段による画像形成速度、前記定着手段による前記転写材の搬送速度、並びに、前記中間転写体又は前記転写材搬送手段の移動速度を変更する場合においても、前記像担持体の回転速度は一定であることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0036】
本発明の第二の態様によれば、所定の回転速度で駆動される像担持体と、前記像担持体に静電潜像を形成する露光手段と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像しトナー像とする現像手段と、前記トナー像を、移動する中間転写体に転写したあと転写材に転写する転写手段と、前記転写手段からの前記転写材を所定の速度にて搬送し、前記トナー像を前記転写材に定着する定着手段と、を備えた画像形成装置において、
前記転写材の特性に応じて前記露光手段による画像形成速度及び前記定着手段による前記転写材の搬送速度を変更する場合においても、前記転写材の特性によらず前記像担持体の回転速度及び前記中間転写体の移動速度は一定であることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、像担持体周辺の画像形成プロセスが単純なカラー画像形成装置を提供することが可能となり、装置構成及び画像形成プロセスが複雑でない装置を安価で小型に作製できる。
【0038】
また、本発明によれば、像担持体上での露光時に画像が搬送方向に一旦伸長された後、転写時に搬送方向に圧縮され元の画像サイズに戻される。これにより、特定の周波数の速度変動によるバンディングが平均化され、バンディング画像欠陥を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る画像形成装置の実施例1の概略全体構成図である。
【図2】実施例1の画像形成行程を説明する図である。
【図3】従来例と実施例の画像特性比較図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置の実施例2の概略全体構成図である。
【図5】実施例2の画像形成行程を説明する図である。
【図6】本発明に係る画像形成装置の実施例3の概略全体構成図である。
【図7】実施例3の画像形成行程を説明する図である。
【図8】従来の画像形成装置の一例を示す全体構成図である。
【図9】従来の画像形成装置の概略全体構成図である。
【図10】図9に示す画像形成装置の画像形成行程を説明する図である。
【図11】従来の画像形成装置の他の例の概略全体構成図である。
【図12】図11に示す画像形成装置の画像形成行程を説明する図である。
【図13】従来の画像形成装置の他の例の概略全体構成図である。
【図14】図13に示す画像形成装置の画像形成行程を説明する図である。
【図15】従来の画像形成装置の他の例の概略全体構成図である。
【図16】図15に示す画像形成装置の画像形成行程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0041】
実施例1
図1及び図2を参照して、本発明に係る画像形成装置の第一実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の全体構成及び各画像形成ステーションSの構成は、図8を参照して背景技術で示した従来例と同様である。従って、図1は、詳しい説明を省略し、本発明を実施するための最良の形態を示す実施例を簡略的に示したものであり、従来例と同じ構成及び機能をなす部材には同じ参照番号を付している。
【0042】
中間転写ベルト52を用いた通常の画像形成プロセスにおいては、転写材Pの坪量に応じて露光/現像/転写/定着行程は、所定の同一プロセス速度V0、若しくは、その1/2、1/3の速度で実施されることは既に説明した。
【0043】
ここで、本実施例における、厚紙を用いた画像形成プロセスの場合を図1を用いて説明する。厚紙での定着は、通常のプロセス速度V0の1/2の速度で実施するので、基本的な画像形成プロセスは1/2V0となり、露光手段(レーザスキャナ装置)51による露光行程が1/2V0で実施される。この時、像担持体50での回転速度を通常1/2V0とするところを本実施例は通常速度V0のままとしていることが特徴である。その後の、転写手段である1次転写ローラ83による1次転写行程は、中間転写体としての中間転写ベルト52の移動速度を1/2V0として像担持体50から中間転写ベルト52へとトナーが転写される。更に、転写材Pへのトナー画像転写を行う、所謂、転写手段である2次転写ローラ60aによる2次転写行程において転写材Pは1/2V0で搬送される。
【0044】
この時の画像形成の様子を、図2を用いて説明する。先ずは、露光行程によって転写材搬送方向である副走査方向の画像形成速度1/2V0に対応した長さLp、主走査方向長さLsの露光画像(静電潜像)が形成される(図2(a))。この露光画像が形成されるべき像担持体の速度をV0(通常1/2V0)としているので、実際に露光行程によって像担持体上に形成される静電潜像は副走査方向2Lp、主走査方向Lsという副走査方向に画像が伸長した形状(伸長画像)となる(図2(b))。
【0045】
次に、1次転写行程によって1/2V0で移動する中間転写ベルト上へとトナー顕像が転写されるため、再び副走査方向の長さがLp、主走査方向長さLsの画像(圧縮画像)が再び形成される(図2(c))。
【0046】
これら一連のYMCK各色トナー顕像が中間転写ベルト上に順次形成され、フルカラートナー画像を形成した後、別途搬送速度1/2V0で搬送される転写材上へ2次転写部によってフルカラートナー画像が一括転写される(図2(d))。
【0047】
以上のプロセスを経て、最終的には厚紙に対して通常と同じ大きさの画像が形成されるが、本実施例の特徴は、普通紙、厚紙の坪量に拠らず、像担持体の回転速度が一定であることである。
【0048】
像担持体の回転速度は、精密に制御されなければならず、高精度の回転精度が要求される。これらは、像担持体を回転駆動させるための駆動系を高精度にすることに他ならない。
【0049】
特にその駆動源であるモータは、通常DCアウターロータ型のサーボモータが使用されることが多い。これは、回転速度を一定として回転制御することが比較的実現し易いためである。
【0050】
電子写真を用いた画像形成装置における像担持体の駆動系において、回転精度を高精度に維持するためには、モータから像担持体への駆動系は単一であることが望ましい(変速ギア等を用いた変速はしない)。また、種々の転写材に対応するために像担持体の回転速度を変更するには、モータの回転速度を通常速度の1/2、1/3等に変換するのが最も実現し易い系といえる。そのため、モータの回転数が単一ではなく、基準となる速度の1/2、1/3となることはやむを得ない選択ともいえる。
【0051】
しかしながら、モータの回転精度を良好なものにするためには、できるならば単純に一定の回転速度に集約された方が好ましい。それ故、モータの回転を制御するにあたり、単一の回転数に制御特性を集約し、モータ効率も合わせて単一の回転数に合わせられれば、低コストで高精度なモータを提供することが可能となる。
【0052】
また、像担持体へのトナーを像担持体上に現像するためのプロセス条件も複数の速度に最適な条件を設定するには、多大な設計労力と多くの評価を必要とする。そのため、プロセス条件を単一にすることは、設計負荷の低減と開発プロセスの効率を上げるためには有効である。
【0053】
また、通常の画像形成プロセスにおいて、各種駆動系の要因に拠り、所謂、バンディングと呼ばれる副走査方向での濃度ムラが観察される。図3(a)、(b)を用いて画像の画質の改善効果について述べる。横軸が画像の空間周波数、縦軸が画像の濃度変動の大きさを表している。
【0054】
ここで、図3(a)は、一定速度の単色画像の副走査方向の濃度変動を示している。図中各種周波数(丸)でピークが見られる。このようなピーク周波数は濃度ムラとして肉眼で確認することができ、画像の質を低下させるものである。
【0055】
これに対して図3(b)は、画像伸長圧縮有りの単色画像の副走査方向の濃度変動を示している。図3(a)の画像と比較すると、丸で示されたピークの周波数が観察されず全体的なノイズ成分があるが、突出したピーク周波数が観察されない状態になっている。これは、画像中でのバンディングが改善されたことを示している。これは、先に説明したように画像形成プロセスにおいて画像の伸長−圧縮が行われることにより、空間周波数でのピーク周波数が一旦別の周波数に写像され、復調することによりピーク周波数が平均化されると考えられる。
【0056】
以上のように、普通紙、厚紙の坪量に拠らず、像担持体の回転速度が一定であることは、低コストで高精度なモータ駆動系が実現でき、単純なプロセス条件を設定できる、更にはバンディングが低減し画質が向上するという有利な点が得られる。
【0057】
なお、現像手段の現像速度、即ち、現像装置53における現像剤担持体(現像ローラ)53a(53aY、53aM、53aC、53aK)の回転速度は一定とされる。これにより、現像速度を最も好ましい速度に設定することができ、現像プロセスにおける安定した現像が可能となり、また、現像装置の複雑化或いは高コスト化を避けることができる。
【0058】
実施例2
図4及び図5を参照して、本発明に係る画像形成装置の第二実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の全体構成は、図8を参照して背景技術で示した従来例と同様である。従って、図4は、詳しい説明を省略し、本発明を実施するための最良の形態を示す実施例を簡略的に示したものであり、従来例と同じ構成及び機能をなす部材には同じ参照番号を付している。
【0059】
厚紙での定着は、通常の1/2の速度で実施するので、基本的な画像形成プロセスは1/2V0であるので、露光行程が1/2V0で実施される。この時、像担持体での回転速度を通常1/2V0とするところを本実施例においてはV0のままとしている。その後の1次転写行程においても中間転写ベルトを1/2V0とするところをV0のままとし、転写材へのトナー画像転写を行う、所謂、2次転写行程において、転写材は1/2V0で搬送される。
【0060】
この時の画像形成の様子を、図5を用いて説明する。先ずは、露光行程によって転写材搬送方向である副走査方向に1/2V0に対応した長さLp、主走査方向長さLsの露光画像が形成される(図5(a))。この露光画像が形成されるべき像担持体の速度をV0(通常1/2V0)とする。すると、実際に露光行程によって像担持体上に形成される潜像は副走査方向2Lp、主走査方向Lsという副走査方向に画像が伸長した形状(伸長画像)となる(図5(b))。
【0061】
次に、1次転写行程においても像担持体と同様な速度V0で移動する中間転写ベルト上へとトナー顕像が転写されるため、副走査方向の長さが2Lp、主走査方向Lsの画像が転写される(図5(c))。
【0062】
これら副走査方向の長さが2Lpとなった一連のYMCK各色トナー顕像が中間転写ベルト上に順次形成され、フルカラートナー画像を形成した後、別途速度1/2V0で搬送される転写材上へ2次転写部によって一括転写される。この時フルカラートナー像は長さ2LpからLpへと圧縮されながら転写材上へと転写される(図5(d))。
【0063】
以上のプロセスを経て、最終的には厚紙に対して通常と同じ大きさの画像が形成される。
【0064】
本実施例の特徴は、普通紙、厚紙の坪量に拠らず、像担持体の回転速度及び中間転写ベルトの速度が一定であることである。像担持体の回転速度を一定にする有効な点は、実施例1で述べたが、これらの有効な点を中間転写ベルトの駆動に置き換えることもできる。画像形成装置内における画像形成部に関与する最も大きな要素は像担持体と中間転写ベルト体である。それらを低コストで精度よく回転駆動することは、重要であり、画像を像担持体上と中間転写ベルト上で伸長した形で担持し、2次転写部において速度差をもって圧縮(復調)することでそれらの実現が可能となる。
【0065】
なお、現像手段の現像速度、即ち、現像装置53における現像剤担持体(現像ローラ)53a(53aY、53aM、53aC、53aK)の回転速度は一定とされる。これにより、現像速度を最も好ましい速度に設定することができ、現像プロセスにおける安定した現像が可能となり、また、現像装置の複雑化或いは高コスト化を避けることができる。
【0066】
実施例3
図6及び図7を参照して本発明に係る画像形成装置の第三実施例について説明する。本実施例の画像形成装置は直接転写系の画像形成装置であり、この画像形成装置の全体構成は、図13に関連して説明した転写ベルト52Aを用いた従来例と同様である。従って、詳しい説明を省略し、本発明を実施するための最良の形態を示す実施例を簡略的に示した図6を用いて具体的な状態を説明する。
【0067】
転写ベルト52Aを用いた画像形成装置の場合でも通常厚紙を転写材とする時には、中間転写ベルト52を用いた画像形成プロセスと同様に、露光、現像、転写の各画像形成プロセスを標準速度の1/2にする。
【0068】
これに対して、本実施例においては、現像、転写における速度を通常速度のまま、具体的には像担持体の速度を通常速度のままとしている。この時の、画像形成プロセスを図7を用いて説明する。
【0069】
先ずは、露光行程によって転写材搬送方向である副走査方向に1/2V0に対応した長さLp、主走査方向長さLsの露光画像が形成される(図7(a))。この露光画像が形成されるべき像担持体の速度をV0(通常1/2V0)とする。すると、実際に露光行程によって像担持体上に形成される潜像は副走査方向2Lp、主走査方向Lsという副走査方向に画像が伸長した形状(伸長画像)となる(図7(b))。そして、その伸長された画像上にトナーが現像される。
【0070】
また、別途転写ベルトが1/2V0で駆動されており、転写材がそこに供給されベルト上に吸着し、転写ベルトと同様な速度1/2V0で転写材が転写部へと搬送される。各色トナー伸長画像が各転写部で復調(圧縮)画像となり長さLpの画像となり、通常の画像が形成される(図7(c))。
【0071】
本実施例の特徴は、転写ベルトを用いた画像形成装置において、普通紙、厚紙の坪量に拠らず、画像形成時に像担持体の回転速度が一定であることである。
【0072】
なお、現像手段の現像速度、即ち、現像装置53における現像剤担持体(現像ローラ)53a(53aY、53aM、53aC、53aK)の回転速度は一定とされる。これにより、現像速度を最も好ましい速度に設定することができ、現像プロセスにおける安定した現像が可能となり、また、現像装置の複雑化或いは高コスト化を避けることができる。
【符号の説明】
【0073】
50(50Y、50M、50C、50K) 感光ドラム(像担持体)
51(51Y、51M、51C、51K) レーザスキャナ装置(露光手段)
52 中間転写ベルト(中間転写体)
52A 転写ベルト(転写材担持体)
53(53Y、53M、53C、53K) 現像装置(現像手段)
53a(53aY、53aM、53aC、53aK)現像ローラ(現像剤担持体)
60a 2次転写ローラ(転写手段)
83(83Y、83M、83C、83K) 1次転写ローラ(転写手段)
61 定着器(定着手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転速度で駆動される像担持体と、前記像担持体に静電潜像を形成する露光手段と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像しトナー像とする現像手段と、前記トナー像を、移動する中間転写体に転写したあと転写材に転写するか、又は、移動する転写材搬送手段にて搬送される転写材に転写する転写手段と、前記転写手段からの前記転写材を所定の速度にて搬送し、前記トナー像を前記転写材に定着する定着手段と、を備えた画像形成装置において、
前記転写材の特性に応じて前記露光手段による画像形成速度、前記定着手段による前記転写材の搬送速度、並びに、前記中間転写体又は前記転写材搬送手段の移動速度を変更する場合においても、前記像担持体の回転速度は一定であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
所定の回転速度で駆動される像担持体と、前記像担持体に静電潜像を形成する露光手段と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像しトナー像とする現像手段と、前記トナー像を、移動する中間転写体に転写したあと転写材に転写する転写手段と、前記転写手段からの前記転写材を所定の速度にて搬送し、前記トナー像を前記転写材に定着する定着手段と、を備えた画像形成装置において、
前記転写材の特性に応じて前記露光手段による画像形成速度及び前記定着手段による前記転写材の搬送速度を変更する場合においても、前記転写材の特性によらず前記像担持体の回転速度及び前記中間転写体の移動速度は一定であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記転写材の特性によらず前記現像手段における現像剤担持体の回転速度を一定としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置
【請求項4】
前記転写材の特性は、前記転写材の坪量であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の画像形成装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−224059(P2010−224059A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69063(P2009−69063)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】