説明

画像形成装置

【課題】簡易な構成で中間転写ベルト上のキャリア液量を減らし、定着性を向上させる。
【解決手段】カラープリンタ1は、キャリア液にトナー粒子を混合させてなる現像液DLを表面に担持する現像ローラ56と、現像ローラ56の表面に担持された現像液DLに含まれるトナー粒子を現像ローラ56の表面に向けて凝集させ、現像ローラ56の表面に担持された現像液DLをトナー粒子高濃度層とトナー粒子低濃度層に分離するコロナ放電器57と、現像ローラ56から供給されたトナー粒子によりトナー像が形成される感光体ドラム51とを有する複数の画像形成ユニット50と、感光体ドラム51に対面して配置され、感光体ドラム51上のトナー像が転写される中間転写ベルト63とを備えている。複数の画像形成ユニット50のうち、現像ローラ56上のトナー粒子低濃度層の厚さが最も厚いものが、最初にトナー像を中間転写ベルト63に転写するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア液にトナー粒子(現像剤粒子)を混合させてなる現像液により画像形成を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、不揮発性のキャリア液にトナー粒子を混合させてなる現像液により画像形成を行う画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような画像形成装置では、まず、コンパクションローラやコロナ放電器などにより、現像ローラの表面に担持された現像液に電荷を飛ばして現像液に含まれるトナー粒子を現像ローラの表面に凝集させ、現像ローラ上の現像液をトナー粒子濃度が高いトナー粒子高濃度層とトナー粒子濃度が低いトナー粒子低濃度層に分離する。
【0003】
なお、カラー画像を形成する画像形成装置では、各色のトナー粒子(現像液)の特性を完全にそろえることが難しい。そのため、用紙上に同等の濃度を出すために必要な現像液の量は、トナー粒子の色の違いによって異なる場合がある。また、各色のトナー粒子は帯電特性が異なることがあるので、特定の色のトナー粒子を含む現像液でかぶりを防止するため、特定の色のトナー粒子を現像ローラの表面に強く凝集させる必要がある場合がある。これらの結果、現像ローラ上のトナー粒子低濃度層の厚さは、トナー粒子の色の違いによって異なっている。
【0004】
現像ローラ上のトナー粒子は、トナー粒子高濃度層から、静電潜像が形成された感光体ドラム上に供給されてトナー像を形成する。そして、感光体ドラム上のトナー像(トナー粒子)は、中間転写体に転写され、さらに中間転写体から用紙に転写されて熱定着される。これにより、用紙上に画像が形成される。
【0005】
以上のような画像形成の過程において、現像液に含まれるキャリア液の一部は、トナー粒子とともに、現像ローラから感光体ドラムおよび中間転写体を介して用紙に移動する。また、現像ローラから感光体ドラム、そして中間転写体へと現像液が供給される過程において、現像ローラ上のトナー粒子高濃度層とトナー粒子低濃度層は、一部が感光体ドラム、そして中間転写体へと移動し、感光体ドラムの表面や中間転写体の表面でトナー粒子高濃度層とトナー粒子低濃度層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−121392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、不揮発性のキャリア液は揮発しにくいため、用紙に移動するキャリア液量が多いと、トナー粒子の定着性が低下するという問題があった。この問題を解決する方法としては、例えば、中間転写体上のトナー粒子低濃度層(キャリア液)の一部を回収するローラなどを設け、中間転写体上のキャリア液量を減らして用紙に移動するキャリア液量を減らす方法が考えられる。しかしながら、このようなローラなどを設けると装置の構成が複雑化し、コストが上昇するという問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、簡易な構成で中間転写体上のキャリア液量を減らし、定着性を向上させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、本願発明者は、感光体の表面に形成されるトナー粒子低濃度層(現像剤粒子低濃度層)の厚さが現像ローラ(現像液担持体)上のトナー粒子低濃度層の厚さのおよそ半分となり、さらに、トナー像が転写された後の中間転写体の表面に形成されるトナー粒子低濃度層の厚さが、トナー像が転写される直前の中間転写体上のトナー粒子低濃度層の厚さと、感光体の表面のトナー粒子低濃度層の厚さとの和のおよそ半分となることを、実験事実として見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明の画像形成装置は、キャリア液に現像剤粒子を混合させてなる現像液を表面に担持する現像液担持体と、前記現像液担持体の表面に担持された現像液に含まれる現像剤粒子を前記現像液担持体の表面に向けて凝集させ、前記現像液担持体の表面に担持された現像液を現像剤粒子高濃度層と現像剤粒子低濃度層に分離する凝集手段と、前記現像液担持体から供給された現像剤粒子により現像剤像が形成される感光体ドラムとを有する複数の画像形成ユニットと、前記感光体ドラムに対面して配置され、前記感光体ドラム上の現像剤像が転写される中間転写体とを備えた画像形成装置であって、前記複数の画像形成ユニットのうち、前記現像液担持体上の現像剤粒子低濃度層の厚さが最も厚いものが、最初に現像剤像を前記中間転写体に転写するように配置されたことを特徴とする。
【0011】
このように構成された画像形成装置によれば、すべての画像形成ユニットからトナー像が転写された後の中間転写体上のトナー粒子低濃度層の厚さを、現像液担持体上のトナー粒子低濃度層の厚さが最も厚い画像形成ユニットを2番目以降に配置した場合と比較して、薄くすることができる。
【0012】
また、本発明の画像形成装置は、キャリア液に現像剤粒子を混合させてなる現像液を表面に担持する現像液担持体と、前記現像液担持体の表面に担持された現像液に含まれる現像剤粒子を前記現像液担持体の表面に向けて凝集させ、前記現像液担持体の表面に担持された現像液を現像剤粒子高濃度層と現像剤粒子低濃度層に分離する凝集手段と、前記現像液担持体から供給された現像剤粒子により現像剤像が形成される感光体ドラムと、現像液を貯溜する貯溜部と、前記貯溜部から前記現像液担持体に現像液を供給する少なくとも1つの現像液供給部材とを有する複数の画像形成ユニットと、前記感光体ドラムに対面して配置され、前記感光体ドラム上の現像剤像が転写される中間転写体とを備えた画像形成装置であって、前記複数の画像形成ユニットのうち、前記現像液担持体に供給される単位時間あたりの現像液の量が最も多いものが、最初に現像剤像を前記中間転写体に転写するように配置されたことを特徴とする。
【0013】
このように構成された画像形成装置によれば、すべての画像形成ユニットからトナー像が転写された後の中間転写体上のトナー粒子低濃度層の厚さを、現像液担持体に供給される単位時間あたりの現像液の量が最も多い画像形成ユニットを2番目以降に配置した場合と比較して、薄くすることができる。
【0014】
また、本発明の画像形成装置は、キャリア液に現像剤粒子を混合させてなる現像液を表面に担持する現像液担持体と、前記現像液担持体の表面に担持された現像液に含まれる現像剤粒子を前記現像液担持体の表面に向けて凝集させ、前記現像液担持体の表面に担持された現像液を現像剤粒子高濃度層と現像剤粒子低濃度層に分離する凝集手段と、前記現像液担持体から供給された現像剤粒子により現像剤像が形成される感光体ドラムとを有する複数の画像形成ユニットと、前記感光体ドラムに対面して配置され、前記感光体ドラム上の現像剤像が転写される中間転写体とを備えた画像形成装置であって、前記複数の画像形成ユニットのうち、現像剤粒子を前記現像液担持体の表面に向けて最も強く凝集させる凝集手段を有するものが、最初に現像剤像を前記中間転写体に転写するように配置されたことを特徴とする。
【0015】
このように構成された画像形成装置によれば、すべての画像形成ユニットからトナー像が転写された後の中間転写体上のトナー粒子低濃度層の厚さを、トナー粒子を現像液担持体の表面に向けて最も強く凝集させる凝集手段を有する画像形成ユニットを2番目以降に配置した場合と比較して、薄くすることができる。
【0016】
以上のように、すべての画像形成ユニットからトナー像が転写された後の中間転写体上のトナー粒子低濃度層の厚さを薄くすることで、用紙に移動するキャリア液量を減らすことができるので、トナー粒子の定着性を向上させることができる。また、本発明は、画像形成ユニットの配置順によって用紙に移動するキャリア液量を減らすことができるので、画像形成装置の構成を複雑化することはない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の画像形成装置によれば、簡易な構成で中間転写体上のキャリア液量を減らすことができるので、用紙に移動するキャリア液量を減らすことができ、結果として定着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例としてのカラープリンタの断面図である。
【図2】画像形成ユニットの拡大図である。
【図3】現像液に含まれるトナー粒子の凝集を説明する説明図(a)と、(a)より放電ワイヤに印加する電圧を大きくした場合の説明図(b)と、(a)より現像ローラに供給される現像液の量を多くした場合の説明図(c)である。
【図4】キャリア液層の移動を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<カラープリンタの全体構成>
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、方向は、カラープリンタを使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0020】
図1に示すように、画像形成装置の一例としてのカラープリンタ1は、本体筐体10内に、給紙ユニット30と、4つのLEDユニット40と、4つの画像形成ユニット50と、転写ユニット60と、定着ユニット70とを主に備えている。
【0021】
給紙ユニット30は、本体筐体10内の下部に設けられ、用紙Sを収容する給紙トレイ31と、給紙トレイ31から用紙Sを転写位置P(中間転写ベルト63と2次転写ローラ65とのニップ位置)に搬送する給紙機構32とを主に備えている。給紙トレイ31内の用紙Sは、給紙機構32によって1枚ずつ分離されて転写位置Pに搬送される。
【0022】
LEDユニット40は、感光体ドラム51の下方に対向して配置され、先端に図示しない複数の発光部(LED)が感光体ドラム51の軸方向(左右方向)に配列されている。このLEDユニット40は、画像データに基づいて発光部を明滅させることで、帯電器52により一様に帯電された感光体ドラム51の表面を露光し、感光体ドラム51上に画像データに基づく静電潜像を形成する。
【0023】
画像形成ユニット50は、給紙ユニット30の上方で前後に並んで配置され、感光体ドラム51と、帯電器52と、現像液DLを貯溜する貯溜部53と、現像液供給部材の一例としての供給ローラ54および中間ローラ55と、現像液担持体の一例としての現像ローラ56と、凝集手段の一例としてのコロナ放電器57とを主に備えている。
【0024】
貯溜部53内の現像液DLは、供給ローラ54および中間ローラ55を介して現像ローラ56に供給され、現像ローラ56の表面に担持される。現像ローラ56の表面に担持された現像液DL(トナー粒子T)は、現像ローラ56から感光体ドラム51上の静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化されて感光体ドラム51上にトナー像が形成される。
【0025】
なお、本実施形態の現像液DLは、正帯電性のトナー粒子T(現像剤粒子)を不揮発性のキャリア液Cに混合したものである(図3参照)。また、各画像形成ユニット50は、貯溜部53に貯溜される現像液DL中のトナー粒子Tの色が相違するのみであり、構成は略同一である。画像形成ユニット50の各部の詳細については後述する。
【0026】
転写ユニット60は、画像形成ユニット50の上方に設けられ、駆動ローラ61と、従動ローラ62と、駆動ローラ61および従動ローラ62の間に張設され、各感光体ドラム51に対面して配置された無端状の中間転写ベルト63(中間転写体)と、中間転写ベルト63を介して感光体ドラム51と対向配置された4つの1次転写ローラ64と、中間転写ベルト63を介して駆動ローラ61と対向配置された2次転写ローラ65とを主に備えている。
【0027】
各感光体ドラム51上に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト63上に順次重ね合わせて転写される。そして、給紙ユニット30から搬送された用紙Sが、中間転写ベルト63と2次転写ローラ65との間(転写位置P)を通過することで、中間転写ベルト63上のトナー像が用紙Sに転写される。
【0028】
定着ユニット70は、転写ユニット60の後側上方に設けられ、加熱ローラ71と、加熱ローラ71と対向配置されて加熱ローラ71を押圧する加圧ローラ72とを主に備えている。トナー像が転写された用紙Sは、加熱ローラ71と加圧ローラ72との間を通過することでトナー像が熱定着され、排出ローラ73によって排紙トレイ12上に排出される。
【0029】
<画像形成ユニット各部の詳細>
次に、図2を参照しながら画像形成ユニット50の各部の詳細について説明する。
感光体ドラム51は、導電性を有する円筒状のドラム本体の表面(外周面)に感光層が形成されて構成されている。この感光体ドラム51の回転方向における中間転写ベルト63と接触する位置より下流側には、クリーニングブレード51Bが摺接している。中間転写ベルト63に供給されずに残った現像液DLは、クリーニングブレード51Bによって掻き取られて回収され、図示しない廃現像液タンクに貯溜される。
【0030】
帯電器52は、感光体ドラム51と接触しないように所定間隔を隔てて対向して配置され、感光体ドラム51に電荷を飛ばすことによって感光体ドラム51の表面を一様に帯電させるように構成されている。
【0031】
貯溜部53は、現像液DLの濃度(キャリア液Cに対するトナー粒子Tの重量比率)を調整する公知の濃度調整部80から供給された現像液DLを貯溜している。
【0032】
供給ローラ54は、回転することで、貯溜部53に貯留された現像液DLを表面に担持して中間ローラ55に供給する金属製のローラである。
【0033】
中間ローラ55(アニロックスローラとも呼ばれる。)は、表面に形成された溝に所定量の現像液DLを担持可能に構成された金属製のローラである。この中間ローラ55を介して現像ローラ56に現像液DLを供給することで、現像ローラ56への現像液DLの供給量を均一に保つことができる。中間ローラ55の回転方向における供給ローラ54と接触する位置より下流側には、中間ローラ55の表面に付着した現像液DLを擦り切る液量規制ブレード55Bが摺接している。
【0034】
現像ローラ56は、中間ローラ55から供給された現像液DLを表面に担持しながら回転し、現像液DL(トナー粒子T)を感光体ドラム51に供給するローラである。この現像ローラ56の回転方向における感光体ドラム51と接触する位置より下流側には、クリーニングブレード56Bが摺接している。感光体ドラム51に供給されずに残った現像液DLは、クリーニングブレード56Bによって掻き取られて回収され、濃度調整部80に戻されて再利用される。
【0035】
図3(a)に示すように、コロナ放電器57は、現像ローラ56と接触しないように所定間隔を隔てて対向して配置され、現像ローラ56の軸方向(左右方向)に沿って張設された放電ワイヤ57Aを主に備えている。このコロナ放電器57は、放電ワイヤ57Aに電圧を印加してコロナ放電を発生させることで、現像ローラ56の表面に担持された現像液に電荷を飛ばす。
【0036】
これにより、現像液に含まれるトナー粒子Tが現像ローラ56の表面に向けて押し付けられるように凝集し、現像ローラ56の表面に担持された現像液がトナー粒子Tの濃度(重量比率)が高いトナー粒子高濃度層とトナー粒子Tの濃度が低いトナー粒子低濃度層とに分離される。
【0037】
なお、以下においては、説明の便宜のため、トナー粒子高濃度層をトナー粒子層TLといい、トナー粒子低濃度層をキャリア液層CLというが、いずれの層も、トナー粒子Tの重量比率が異なるだけでトナー粒子Tがキャリア液Cに混合されていることに変わりはない(図3(a)〜(c)のキャリア液層CLは、トナー粒子Tの図示を省略している)。
【0038】
<画像形成ユニットの配列順>
次に、本発明の特徴である複数の画像形成ユニット50の配列順について説明する。なお、以下の説明において、複数の画像形成ユニット50の配列順は、図1に示す矢印の方向に回転する中間転写ベルト63が転写位置Pを通過した後、最初にトナー像を転写する画像形成ユニット50(50A)から順に数えるものとする。
【0039】
したがって、本実施形態においては、図1における最も前側に配置された画像形成ユニット50Aが1番目となり、以下、中間転写ベルト63の回転方向に沿って、画像形成ユニット50Bが2番目、画像形成ユニット50Cが3番目となり、最も後側に配置された画像形成ユニット50Dが4番目となる。
【0040】
4つの画像形成ユニット50(50A〜50D)は、現像ローラ56上のキャリア液層CLの厚さが最も厚い画像形成ユニット50Aが、最初(1番目)に感光体ドラム51上のトナー像を中間転写ベルト63に転写するように配置されている。
【0041】
具体的に、本実施形態では、画像形成ユニット50A〜50Dのうち、トナー粒子Tを現像ローラ56の表面に向けて最も強く凝集させるコロナ放電器57を有する画像形成ユニット50Aが、1番目にトナー像を中間転写ベルト63に転写するように最も前側に配置されている。
【0042】
画像形成ユニット50Aは、コロナ放電器57(放電ワイヤ57A)に印加される電圧(絶対値)が最も大きく設定されている。また、画像形成ユニット50B〜50Dは、放電ワイヤ57Aに印加される電圧が互いに略等しく、かつ、画像形成ユニット50Aより小さく設定されている。このように画像形成ユニット50Aの放電ワイヤ57Aに印加される電圧を、画像形成ユニット50B〜50Dより大きくすることで、画像形成ユニット50Aの現像ローラ56上のキャリア液層CLの厚さは、画像形成ユニット50B〜50Dの現像ローラ56上のキャリア液層CLの厚さより厚くなる。
【0043】
詳細には、図3(b)に示すように、放電ワイヤ57Aに印加される電圧を大きくすることで、現像ローラ56の表面に担持された現像液DLに与えられる電荷量が大きくなり、トナー粒子Tが現像ローラ56の表面に向けて強く凝集させられる。これによって、トナー粒子層TLの厚さが、図3(a)の場合と比較して薄くなるので、結果として現像ローラ56上のキャリア液層CLの厚さが厚くなる。
【0044】
本実施形態では、コロナ放電器57によるトナー粒子Tの凝集の結果、画像形成ユニット50Aでは現像ローラ56上のキャリア液層CLの厚さがおよそ4.0μmとなり、画像形成ユニット50B〜50Dでは現像ローラ56上のキャリア液層CLの厚さがおよそ3.0μmとなる。
【0045】
<カラープリンタ1の作用効果>
次に、カラープリンタ1の作用効果について図4および表1を参照しながら説明する。
なお、図4では、説明の便宜のため、トナー粒子層TLの図示を省略しているが、トナー粒子層TL(トナー粒子T)は、現像ローラ56上から感光体ドラム51上の露光部(レーザ光によって露光された部分)に転写される。
【0046】
より詳細に、感光体ドラム51上には、レーザ光によって露光された露光部に表面側から順にトナー粒子層TL(トナー像)とキャリア液層CLが形成され、非露光部にキャリア液層CLのみが形成される。
【0047】
表1は、画像形成ユニット50A〜50Dの配列順と、現像ローラ56、感光体ドラム51および中間転写ベルト63に形成されるキャリア液層CLの厚さを示し、(A)は本実施形態の画像形成ユニット50A〜50Dの配列の結果であり、(B)は画像形成ユニット50A,50Dの順番を逆にした場合の結果(比較例)である。
【0048】
表1(A),(B)における条件は以下の通りである。
(1)現像ローラ
現像液の厚さ :6μm
現像バイアス :750V(画像形成ユニット50A)
600V(画像形成ユニット50B〜50D)
(用紙Sに転写されたトナー像の濃度を等しくするため。)
(2)放電ワイヤ
印加電圧 :4.0kV(画像形成ユニット50A)
3.7kV(画像形成ユニット50B〜50D)
(3)感光体ドラム
表面電位 :1000V(未露光部)
140V(露光部)
(4)転写ローラ
転写バイアス :−1000V
【0049】
【表1】

【0050】
図4および表1(A)に示すように、画像形成ユニット50Aの現像ローラ56上のキャリア液層CL1の厚さは4.0μmである。このキャリア液層CL1は、実験事実として半分が感光体ドラム51の表面に移動して厚さ2.0μmのキャリア液層CL2を形成する。このとき、感光体ドラム51の露光部には、現像ローラ56上から移動したトナー粒子層TL(トナー像)も形成されている(図示省略)。
【0051】
なお、画像形成ユニット50Aの現像ローラ56上のキャリア液層CL1の残りの半分は、現像ローラ56上にキャリア液層CL3として残り、クリーニングブレード56Bによって掻き取られて回収される。
【0052】
画像形成ユニット50Aの感光体ドラム51上に形成されたキャリア液層CL2の一部は、露光部のトナー粒子層TL(トナー像)とともに、中間転写ベルト63の表面に転写されてキャリア液層CL4を形成する。
【0053】
このとき、キャリア液層CL(トナー像)が転写された後の中間転写ベルト63上に形成されるキャリア液層CLの厚さは、トナー像が転写される直前の中間転写ベルト63上に形成されるキャリア液層CLの厚さと、感光体ドラム51上のキャリア液層CLの厚さとの和の半分となることが実験事実からわかっている。
【0054】
したがって、キャリア液層CL4の厚さは、画像形成ユニット50Aからトナー像が転写される直前の中間転写ベルト63上のキャリア液層CLの厚さ(0μm)と、感光体ドラム51上のキャリア液層CL2の厚さ(2.0μm)との和の半分である1.00μmとなる。
【0055】
なお、画像形成ユニット50Aの感光体ドラム51上のキャリア液層CL2の残りは、感光体ドラム51上にキャリア液層CL5として残り、クリーニングブレード51Bによって掻き取られて回収される。
【0056】
画像形成ユニット50B(画像形成ユニット50C,50Dも同様)の現像ローラ56上のキャリア液層CL6の厚さは3.0μmである。このキャリア液層CL6は、半分が感光体ドラム51の表面に移動して厚さ1.5μmのキャリア液層CL7を形成し、残りの半分が現像ローラ56上にキャリア液層CL8として残り、クリーニングブレード56Bによって回収される。
【0057】
画像形成ユニット50Bの感光体ドラム51上のキャリア液層CL7の一部は、トナー像とともに、中間転写ベルト63の表面に転写されてキャリア液層CL9を形成する。このとき、キャリア液層CL9の厚さは、画像形成ユニット50Bからトナー像が転写される前の中間転写ベルト63上のキャリア液層CL4の厚さ(1.00μm)と、感光体ドラム51上のキャリア液層CL7の厚さ(1.5μm)との和の半分である1.25μmとなる。
【0058】
なお、画像形成ユニット50Bの感光体ドラム51上のキャリア液層CL7の残りは、画像形成ユニット50Aの場合と同様に、感光体ドラム51上にキャリア液層CL10として残り、クリーニングブレード51Bによって回収される。
【0059】
以下、画像形成ユニット50Cの感光体ドラム51上のキャリア液層CL(トナー像)が転写された後の中間転写ベルト63上のキャリア液層CLの厚さは、画像形成ユニット50Cからトナー像が転写される前の中間転写ベルト63上のキャリア液層CL9の厚さ(1.25μm)と、画像形成ユニット50Cの感光体ドラム51上のキャリア液層CLの厚さ(1.5μm)との和の半分である1.38μmとなる。
【0060】
さらに、画像形成ユニット50Dの感光体ドラム51上のキャリア液層CL(トナー像)が転写された後、すなわち、すべてのトナー像が転写された後の中間転写ベルト63上のキャリア液層CLの厚さは、画像形成ユニット50Dからトナー像が転写される前の中間転写ベルト63上のキャリア液層CLの厚さ(1.38μm)と、画像形成ユニット50Dの感光体ドラム51上のキャリア液層CLの厚さ(1.5μm)との和の半分である1.44μmとなる。
【0061】
一方、表1(B)に示すように、画像形成ユニット50A,50Dの順番を逆、すなわち、画像形成ユニット50Aを4番目(最後)に配置した場合、すべてのトナー像が転写された後の中間転写ベルト63上のキャリア液層CLの厚さは1.66μmとなる。
【0062】
このように、画像形成ユニット50Aを最初に配置することで、すべてのトナー像が転写された後の中間転写ベルト63上のキャリア液層CLの厚さを、画像形成ユニット50Aを最後に配置した場合と比較して、およそ13%薄くすることができる。これにより、中間転写ベルト上のキャリア液Cの量を減らすことができる。
【0063】
すべてのトナー像が転写された後の中間転写ベルト63上のキャリア液Cは、転写位置P(図1参照)において用紙Sに移動する。したがって、すべてのトナー像が転写された後の中間転写ベルト上のキャリア液Cの量を減らすことで、用紙Sに移動するキャリア液Cの量を減らすことができるので、用紙Sに転写されたトナー像(トナー粒子T)の定着性を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態では、画像形成ユニット50Aを最初に配置するだけで、用紙Sに移動するキャリア液Cの量を減らすことができるので、カラープリンタ1の構成を複雑化することはない。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0066】
前記実施形態では、コロナ放電器57(放電ワイヤ57A)に印加する電圧が最も大きい画像形成ユニット50Aを最初に配置した構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、現像ローラ56に供給される単位時間あたりの現像液DLの量(以下、供給量という。)が最も多い画像形成ユニットを最初に配置する構成としてもよい。このような供給量が最も多い画像形成ユニットの現像ローラ56上のキャリア液層CLの厚さは、他の画像形成ユニットの現像ローラ56上のキャリア液層CLの厚さより厚くなる。
【0067】
詳細には、図3(c)に示すように、供給量を多くすることで、現像ローラ56上に担持される現像液DLの厚さが厚くなるので、電荷を与えた後のトナー粒子層TLの厚さが図3(a)の場合と同じであっても、キャリア液層CLの厚さは相対的に厚くなる。したがって、供給量が最も多い画像形成ユニットを最初に配置することによっても、前記実施形態と同様に、用紙Sに転写されたトナー粒子Tの定着性を向上させることができる。
【0068】
なお、現像ローラ56に供給される単位時間あたりの現像液DLの量(供給量)は、例えば、中間ローラ55の表面に形成された溝の深さを変えることや、中間ローラ55に印加するバイアスを変えることなどによって変化する。
【0069】
また、使用するトナー粒子Tの種類(色など)によっては、コロナ放電器57に印加する電圧が同じであっても、他のトナー粒子Tより現像ローラ56の表面に強く凝集されて、現像ローラ56上のキャリア液層CLの厚さが厚くなる場合がある。そこで、このように他より強く凝集されるトナー粒子Tを含む現像液DLを使用する画像形成ユニットを最初に配置することによっても、前記実施形態と同様に、用紙Sに転写されたトナー粒子Tの定着性を向上させることができる。
【0070】
前記実施形態では、2番目以降の画像形成ユニット50B〜50Dの配列順については特に述べていないが、画像形成ユニット50A〜50Dは、現像ローラ56上のキャリア液層CLの厚さが厚いものから順に、トナー像を中間転写ベルト63に転写するように配列することが望ましい。
【0071】
以下に示す表2(A)〜(C)は、画像形成ユニット50A〜50Dの配列順と、現像ローラ56、感光体ドラム51および中間転写ベルト63に形成されるキャリア液層CLの厚さを示し、(A)はキャリア液層CLの厚さが厚いものから順に配列した場合であり、(B)は2番目以降をキャリア液層CLの厚さが薄いものから順に配列した場合(比較例)であり、(C)は(A)の2番目と3番目を入れ替えた場合(比較例)である。
【0072】
【表2】

【0073】
表2(A),(B)に示すように、キャリア液層CLの厚さが厚いものから順に配列することで、すべてのトナー像が転写された後の中間転写ベルト63上のキャリア液層CLの厚さ(1.58μm)を、2番目以降の画像形成ユニット50B〜50Dをキャリア液層CLの厚さが薄いものから順に配列した場合(1.77μm)と比較して、薄くすることができる。
【0074】
また、表2(A),(C)に示すように、キャリア液層CLの厚さが厚いものから順に配列することで、すべてのトナー像が転写された後の中間転写ベルト63上のキャリア液層CLの厚さ(1.58μm)を、2番目と3番目の画像形成ユニット50B,50Cを入れ替えた場合(1.61μm)より、薄くすることができる。
【0075】
このように、キャリア液層CLの厚さが厚いものから順に配列することで、すべてのトナー像が転写された後の中間転写ベルト63上のキャリア液層CLの厚さを薄くできるので、すべてのトナー像が転写された後の中間転写ベルト上のキャリア液Cの量を減らすことができる。これにより、用紙Sに移動するキャリア液Cの量も減らすことができるので、用紙Sに転写されたトナー粒子Tの定着性を向上させることができる。
【0076】
なお、画像形成ユニット50A〜50Dを現像ローラ56上のキャリア液層CLの厚さが厚いものから順に配列する具体的な方法としては、例えば、予め各画像形成ユニット50A〜50Dの現像ローラ56上のキャリア液層CLの厚さを測定し、その結果に基づいて順に配列してもよい。
【0077】
また、画像形成ユニット50A〜50Dを、トナー粒子Tを現像ローラ56の表面に向けてより強く凝集させるコロナ放電器57(放電ワイヤ57Aに印加される電圧が大きいコロナ放電器57)を有するものから順に配列してもよい。さらに、画像形成ユニット50A〜50Dを、現像ローラ56に供給される単位時間あたりの現像液DLの量が多いものから順に配列してもよい。
【0078】
前記実施形態では、凝集手段として、現像ローラ56(現像液担持体)と接触しないように所定間隔を隔てて対向して配置されたコロナ放電器57を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、現像液担持体に接触した状態で回転し、電圧が印加されることで現像液担持体の表面に担持された現像液に電荷を飛ばすローラなどであってもよい。
【0079】
前記実施形態では、現像液供給部材として2つの現像液供給用のローラ(供給ローラ54および中間ローラ55)を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、1つや3つ以上の現像液供給用のローラからなる構成としてもよい。
【0080】
前記実施形態では、中間転写体として中間転写ベルト63を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ローラ状の中間転写体などであってもよい。
前記実施形態では、画像形成装置としてカラープリンタ1を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、複写機や複合機などであってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 カラープリンタ
50 画像形成ユニット
50A 画像形成ユニット
51 感光体ドラム
53 貯溜部
54 供給ローラ
55 中間ローラ
56 現像ローラ
57 コロナ放電器
63 中間転写ベルト
C キャリア液
CL キャリア液層
DL 現像液
T トナー粒子
TL トナー粒子層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア液に現像剤粒子を混合させてなる現像液を表面に担持する現像液担持体と、前記現像液担持体の表面に担持された現像液に含まれる現像剤粒子を前記現像液担持体の表面に向けて凝集させ、前記現像液担持体の表面に担持された現像液を現像剤粒子高濃度層と現像剤粒子低濃度層に分離する凝集手段と、前記現像液担持体から供給された現像剤粒子により現像剤像が形成される感光体ドラムとを有する複数の画像形成ユニットと、
前記感光体ドラムに対面して配置され、前記感光体ドラム上の現像剤像が転写される中間転写体とを備えた画像形成装置であって、
前記複数の画像形成ユニットのうち、前記現像液担持体上の現像剤粒子低濃度層の厚さが最も厚いものが、最初に現像剤像を前記中間転写体に転写するように配置されたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記複数の画像形成ユニットは、前記現像液担持体上の現像剤粒子低濃度層の厚さが厚いものから順に、現像剤像を前記中間転写体に転写するように配列されたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
キャリア液に現像剤粒子を混合させてなる現像液を表面に担持する現像液担持体と、前記現像液担持体の表面に担持された現像液に含まれる現像剤粒子を前記現像液担持体の表面に向けて凝集させ、前記現像液担持体の表面に担持された現像液を現像剤粒子高濃度層と現像剤粒子低濃度層に分離する凝集手段と、前記現像液担持体から供給された現像剤粒子により現像剤像が形成される感光体ドラムと、現像液を貯溜する貯溜部と、前記貯溜部から前記現像液担持体に現像液を供給する少なくとも1つの現像液供給部材とを有する複数の画像形成ユニットと、
前記感光体ドラムに対面して配置され、前記感光体ドラム上の現像剤像が転写される中間転写体とを備えた画像形成装置であって、
前記複数の画像形成ユニットのうち、前記現像液担持体に供給される単位時間あたりの現像液の量が最も多いものが、最初に現像剤像を前記中間転写体に転写するように配置されたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記複数の画像形成ユニットは、前記現像液担持体に供給される単位時間あたりの現像液の量が多いものから順に、現像剤像を前記中間転写体に転写するように配列されたことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
キャリア液に現像剤粒子を混合させてなる現像液を表面に担持する現像液担持体と、前記現像液担持体の表面に担持された現像液に含まれる現像剤粒子を前記現像液担持体の表面に向けて凝集させ、前記現像液担持体の表面に担持された現像液を現像剤粒子高濃度層と現像剤粒子低濃度層に分離する凝集手段と、前記現像液担持体から供給された現像剤粒子により現像剤像が形成される感光体ドラムとを有する複数の画像形成ユニットと、
前記感光体ドラムに対面して配置され、前記感光体ドラム上の現像剤像が転写される中間転写体とを備えた画像形成装置であって、
前記複数の画像形成ユニットのうち、現像剤粒子を前記現像液担持体の表面に向けて最も強く凝集させる凝集手段を有するものが、最初に現像剤像を前記中間転写体に転写するように配置されたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記複数の画像形成ユニットは、現像剤粒子を前記現像液担持体の表面に向けてより強く凝集させる凝集手段を有するものから順に、現像剤像を前記中間転写体に転写するように配列されたことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−256792(P2010−256792A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109377(P2009−109377)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】