説明

画像形成装置

【課題】転写体上にトナー像を重ね合わせてカラー画像を形成する画像形成装置において、転写体上に所望の量のトナーを付着させることができ、かつ、逆転写による画像の劣化を抑制することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】中間転写ベルト21上のトナー像に写するトナー像と重ならない部分があると判定したとき、トナー像を担持してない箇所にトナー像を転写するときの転写電界よりも弱くなるように、転写バイアスを制御する。また、感光体2に付着させるトナー付着量を、トナー像を担持していない箇所にトナー像を転写するときの付着量よりも多くなるよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体と、潜像担持体を帯電する帯電手段と、静電潜像形成手段により、画像情報に基づいて潜像担持体の画像に対応する表面部分の帯電電位を落として形成された静電潜像にトナーを付着させて現像する現像手段たる現像装置とを備えた画像形成ユニットを複数備え、各潜像担持体上に形成される静電潜像をそれぞれ現像して得た各色トナー像を転写体上に順次重ね合わせてカラー画像を得る所謂タンデム型の画像形成装置が知られている。
【0003】
また、潜像担持体上の転写残トナーをトナー一時捕捉手段によって一時捕捉し、プリントジョブ終了後などの所定のタイミングでトナー一時捕捉手段から潜像担持体の表面に戻し、現像装置で回収する所謂クリーナレス方式の画像形成装置も知られている(特許文献1乃至3)。
【0004】
しかし、上記タンデム型の画像形成装置においては、転写体移動方向上流側の画像形成ユニットで転写体に既に転写されたトナー像上にトナー像を転写する場合、既に転写体上に転写されたトナーの抵抗などにより、その部分には、転写電流が流れ難い。そのため、転写体上のトナー像(以下、転写済みトナー像という)と転写するトナー像(以下、転写前トナー像という)とが重なる部分以外に優先的に電流が流れてしまう。その結果、転写済みトナー像と転写前トナー像とが重なる部分が転写電流不足となり、転写済みトナー像に転写する部分の転写率(転写体に転写したトナーの質量/感光体上に現像されたトナーの質量)が低下してしまう。従って、転写済みトナー像上に転写されるトナー量が低下してしまい、その部分の画像濃度が低下してしまう。
【0005】
特許文献4には、次のようなタンデム型の画像形成装置が記載されている。すなわち転写体に転写する転写前トナー像と、転写体に既に転写されている転写体上の転写済みトナー像とが重なる部分の比率を算出し、算出した比率により転写電流を決定する画像形成装置である。このように、転写前トナー像における転写済みトナー像と重なる部分の比率を算出し、算出した比率により転写電流を決定することで、比率が大きい場合は、転写電流が大きくなり、転写済みトナー像上に転写されるトナーの転写率の低下を抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献4に記載のタンデム型の画像形成装置では、転写済みトナー像における転写前トナー像と重ならない部分のトナーが、転写前トナー像を担持した潜像担持体上に逆転写してしまう。その結果、転写済みトナー像における転写前トナー像と重ならない部分のトナーが減少してしまい、ボソついた画像となるなど、画像が劣化してしまう。また、クリーナレス方式を採用したタンデム型画像形成装置においては、この潜像担持体に逆転写した他色のトナーが、現像装置に回収されてしまい、混色が生じてしまう。その結果、形成する画像に色変化が起こり、色再現性の高い画像が長期にわたり形成できないという問題が生じてしまう。
【0007】
本発明者らは、転写体上の転写済みトナー像における転写前トナー像と重ならない部分のトナーが逆転写する理由について鋭意研究した結果、次のことがわかった。すなわち、転写済みトナー像における転写前トナー像と重ならない部分は、潜像担持体表面の非画像部と接触することになる。潜像担持体の非画像部の電位は、画像部の電位よりも高いため、画像部と転写ローラとの間の電位差よりも、潜像担持体表面の非画像部と転写ローラとの間の電位差の方が非常に大きくなる。従って、潜像担持体表面の画像部と転写ローラとの間よりも、潜像担持体表面の非画像部と転写ローラとの間に転写電流が優先的に流れる。従って、転写済みトナー像における転写前トナー像と重ならない部分に、転写済みトナー像における転写前トナー像と重なる部分に比べて多くの転写電流が流れ込む。その結果、転写済みトナー像における転写前トナー像と重ならない部分のトナーが、正規の帯電極性とは逆極性に帯電する所謂逆帯電トナーとなりやすい。そして、この逆帯電トナーが、潜像担持体へ逆転写することがわかったのである。
【0008】
また、これまでタンデム型の画像形成装置について説明したが、一つの潜像担持体と複数の現像装置とでカラー画像を形成する所謂1ドラム型のフルカラー画像形成装置であっても、上記と同様の問題が生じ得る。1ドラム型のフルカラー画像形成装置は、複数の現像装置のうちのひとつを用いて、潜像担持体上にトナー像を形成し、これを転写体たる中間転写ベルトに転写する。この後、これとは異なる色の現像装置を用いて同一の潜像担持体にトナー像を形成し、これを先程中間転写ベルト上に転写した中間転写ベルト上の転写済みトナー像と重ね合わせて転写する。この動作を繰り返すことで、中間転写ベルト上にフルカラートナー像を形成し、これを記録シートに2次転写することで、フルカラー画像を形成する。このように、1ドラム型のフルカラー画像形成装置も、タンデム型画像形成装置同様、既に中間転写ベルト上に転写された転写済みトナー像における転写前トナー像と重ならない部分は、潜像担持体表面の非画像部と接触することになり、この部分のトナーが潜像担持体へ逆転写するおそれがある。
【0009】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、転写体上にトナー像を重ね合わせてカラー画像を形成する画像形成装置において、転写体上に所望の量のトナーを付着させることができ、かつ、逆転写による画像の劣化を抑制することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の潜像担持体と、前記複数の潜像担持体にそれぞれ対応し、対応する潜像担持体上にトナーを付着させてトナー像を形成する複数のトナー像形成手段と、電源から転写バイアスが印加され、該複数の潜像担持体上に形成されたトナー像を転写体に重ね合わせるように順次転写する転写手段と、を備えた画像形成装置において、前記転写体上に既に転写された転写済みトナー像と該転写体上に転写する転写前トナー像との該転写体上での重なりを判定する重なり判定手段と、該重なり判定手段の判定結果に基づいて、前記トナー像形成手段を制御し、前記潜像担持体上での該転写前トナー像のトナー像形成あたりトナー付着量を制御するトナー付着量制御手段と、該重なり判定手段の判定結果に基づいて、該転写前トナー像を該転写体へ転写するときの転写バイアスを制御する転写バイアス制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、潜像担持体と、該潜像担持体上にトナーを付着させてトナー像を形成する複数のトナー像形成手段と、電源から転写バイアスが印加され、該潜像担持体上のトナー像を転写体に転写する転写手段とを備え、複数のトナー像形成手段のうち、ひとつを用いて形成された潜像担持体上のトナー像を該転写体に転写した後、該潜像担持体に別のトナー像形成手段を用いて形成した潜像担持体上のトナー像を該転写体上のトナー像に重ね合わせるように転写する画像形成装置において、前記転写体上に既に転写された転写済みトナー像と該転写体上に転写する転写前トナー像との該転写体上での重なりを判定する重なり判定手段と、該重なり判定手段の判定結果に基づいて、前記トナー像形成手段を制御し、前記潜像担持体上の該転写前トナー像のトナー像形成あたりトナー付着量を制御するトナー付着量制御手段と、該重なり判定手段の判定結果に基づいて、該転写前トナー像を転写体に転写するときの転写バイアスを制御する転写バイアス制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の画像形成装置において、前記重なり判定手段が、前記転写体上の前記転写済みトナー像に前記転写前トナー像と重ならない部分があると判定した場合、前記トナー付着量制御手段は、該転写体に転写前トナー像を転写する箇所が、該転写体の幅方向にわたって該転写済みトナー像がない該転写体の箇所である場合のトナー付着量よりも多くなるようトナー付着量を制御し、かつ、前記転写バイアス制御手段は、該転写体に転写前トナー像を転写する箇所が、該転写体の幅方向にわたって該転写済みトナー像がない該転写体の箇所である場合の転写電界よりも弱くなるように、前記転写バイアスを制御することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の画像形成装置において、前記転写手段は、前記電源から定電流制御された転写バイアスが印加されるものであって、前記重なり判定手段が、前記転写体上の転写済みトナー像に前記転写前トナー像と重ならない部分があると判定した場合、前記転写体に転写前トナー像を転写する箇所が、該転写体の幅方向にわたって該転写済みトナー像がない該転写体の箇所である場合の電流値をよりも小さくなるよう制御することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の画像形成装置において、該転写体に転写前トナー像を転写する箇所が、該転写体の幅方向にわたって該転写済みトナー像がない該転写体の箇所である場合、または、前記重なり判定手段が、該転写済みトナー像と該転写前トナー像とが全て重なると判定した場合は、前記転写バイアス制御手段は、該転写前トナー像に対応する画像の印字率が低いほど流す電流値を小さくするよう制御することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5いずれかの画像形成装置において、前記転写手段は、前記電源から定電流制御された転写バイアスが印加されるものであって、前記重なり判定手段が、前記転写済みトナー像に前記転写前トナー像が重ならない部分があると判定した場合、前記トナー付着量制御手段は、該転写前トナー像に対応する画像の印字率が低いほど該転写前トナー像のトナー付着量が多くなるようトナー付着量を制御することを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6いずれかの画像形成装置において、前記転写前トナー像がない場合、前記転写バイアス制御手段は、該転写前トナー像を転写する場合の転写電界よりも弱くなるように、前記転写バイアスを制御することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7いずれかの画像形成装置において、前記転写バイアス制御手段は、前記トナーの電荷量、温度、湿度、前記転写体搬送速度のうちの少なくとも一つを検知して、その検知結果に基づいて前記転写バイアスを制御することを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至8いずれかの画像形成装置において、前記トナー像形成手段は、前記潜像担持体を一様帯電させる帯電手段と、該一様帯電した潜像担持体上に潜像画像を形成する潜像形成手段と、少なくともトナーを含有する現像剤を担持する現像剤担持体に現像バイアスを印加しながら前記現像剤担持体上のトナーを、潜像担持体上の潜像に付着させて、現像する現像手段と、を備え前記トナー付着量制御手段は、前記現像バイアスを制御することで、トナー付着量を制御することを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1の構成を備えた請求項9の画像形成装置において、各潜像像担持体上の転写残トナーを、それぞれ対応する現像手段で回収することを特徴とするものである。
【0011】
本発明によれば、重なり判定手段の判定結果に基づいて、次のように潜像担持体の転写前トナー像のトナー付着量と、転写前トナー像を転写するときの転写バイアスとを制御することで、逆転写を抑制でき、かつ、転写体上に所望の量のトナーを転写させることができる。すなわち、重なり判定手段が、転写体上の転写済みトナー像に転写前トナー像が重ならない部分があると判定した場合、転写前トナー像のトナー付着量に関しては、転写体に転写前トナー像を転写する箇所が、転写体の幅方向にわたって転写済みトナー像がない転写体の箇所である場合のトナー付着量よりも多くなるよう転写前トナー像のトナー付着量を制御する。また、転写バイアスに関しては、重なり判定手段が、転写体上の転写済みトナー像に転写前トナー像が重ならない部分があると判定した場合、転写体に転写前トナー像を転写する箇所が、転写体の幅方向にわたって転写済みトナー像がない転写体の箇所である場合の転写電界よりも弱くなるように転写バイアスを制御する。転写バイアスをこのように制御することで、潜像担持体表面の非画像部と転写体との間に流れる電流を抑えることができる。その結果、転写体上の転写済みトナー像のうち転写前トナー像と重ならない部分が、逆帯電トナーとなるのを抑制することができ、この重ならない部分のトナーが、逆転写するのを抑制することができる。よって、転写体上のトナーの減少を抑制することができ、良好な画像を得ることができる。また、クリーナレス方式を採用したタンデム型画像形成装置においては、逆転写した他色のトナーが、現像手段に回収されてしまうのを抑制することができる。よって、現像手段内のトナーの混色を抑制でき、形成する画像に色変化が生じるのを長期にわたり抑制することができ、色再現性の高い画像を長期にわたり維持することができる。上述のように転写バイアスを制御すると、転写率が低下してしまうが、転写前トナー像のトナー付着量が、転写体に転写前トナー像を転写する箇所が、転写体の幅方向にわたって転写済みトナー像がない転写体の箇所である場合のトナー付着量よりも多くなるよう制御しているので、転写体上に所望量のトナーを転写させることができる。これにより、転写体上のトナー像の濃度低下を抑制することができ、高品位な画像を得ることができる。
【0012】
一方、重なり判定手段が、転写体上に転写されたトナー像に転写体上に転写するトナー像と重ならない部分があると判定しなかった場合、次のようにトナー付着量および転写バイアスを制御する。重なり判定手段が、重ならない部分があると判定しなかった場合は、転写体に転写前トナー像を転写する箇所が、転写体の幅方向にわたって転写済みトナー像がない転写体の箇所である場合か、転写前トナー像が、完全に転写済みトナー像と重なる場合である。これらの場合は、転写体上のトナーが逆転写することはほとんどない。よって、転写電界を弱める必要がないので、重なり判定手段が、転写体上に転写されたトナー像に転写体上に転写するトナー像と重ならない部分があると判定しなかった場合は、十分な転写率が得られるよう、転写バイアスを制御する。また、十分な転写率が得られるよう転写バイアスを制御しているので、転写前トナー像のトナー付着量を、転写体に転写前トナー像を転写する箇所が、転写体の幅方向にわたって転写済みトナー像がない転写体の箇所である場合のトナー付着量よりも多くなるよう制御する必要がない。よって、重なり判定手段が、転写体上に転写されたトナー像に転写体上に転写するトナー像と重ならない部分があると判定しなかった場合は、転写前トナー像のトナー付着量を、転写体に転写前トナー像を転写する箇所が、転写体の幅方向にわたって転写済みトナー像がない転写体の箇所である場合のトナー付着量に制御し、トナー消費量を抑える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、転写体上に所望の量のトナーを付着させることができ、かつ、逆転写による画像の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】プリンタの電気回路の一部を示すブロック図。
【図3】中間転写ベルトに形成されるシェブロンパッチを示す拡大模式図。
【図4】ベタパターンの一例を示す模式図。
【図5】一次転写率−一次転写電流曲線の印字率依存性を示すグラフ。
【図6】転写ニップ中で転写されるトナーと、予め中間転写ベルト上に存在したトナーとの重なりの関係を説明する図。
【図7】逆転写率の一次転写電流依存性を示す実験結果を示すグラフ。
【図8】タンデム型直接転写方式のフルカラー画像形成装置の概略構成図。
【図9】1ドラム型のフルカラー画像形成装置の要部構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を画像形成装置としてのタンデム型のトナー像形成部によってカラー画像を形成するカラープリンタ(以下、単にプリンタという)に適用した実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。
【0016】
図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、図示しない潜像形成手段たる光書込ユニット、タンデムトナー像形成部10、転写ユニット20、定着装置40、再送装置50などを備えている。タンデムトナー像形成部10は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の各色トナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kを有している。
【0017】
転写手段である転写ユニット20は、転写体たる無端状の中間転写ベルト21、駆動ローラ22、従動ローラ23、二次転写対向ローラ24、4つの一次転写ローラ25Y,M,C,K、二次転写ローラ26などを有している。無端状の中間転写ベルト21は、側方からの眺めが逆三角形状の形状になる姿勢で、駆動ローラ22、従動ローラ23及び二次転写対向ローラ24に掛け回されている。中間転写ベルト21は、カーボン分散ポリイミドベルトであり、厚さ60[μm]、体積抵抗率は、約1E9[Ω・cm](三菱化学製ハイレスターUP(MCP−HT450を用い印加電圧100[V]での測定値)、引張り弾性率は、2.6[GPa]である。そして、不図示の転写体搬送手段たる駆動装置により駆動ローラ22を回転駆動せしめ、中間転写ベルト21が、図中時計回り方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト21のループ内側には、駆動ローラ22、従動ローラ23、及び二次転写対向ローラ24の他に、4つの一次転写ローラ25Y,M,C,Kも配設されている。なお、一次転写ローラ25Y,M,C,Kや二次転写ローラ26の役割については後述する。
【0018】
タンデムトナー像形成部10は、4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kを中間転写ベルト21の上張架面に沿って水平方向に並べる姿勢で、転写ユニット20の上方に配設されている。画像形成部たる画像形成ユニット1Y,M,C,Kは、図中反時計回り方向に回転駆動されるドラム状の感光体2Y,M,C,Kと、現像ユニット3Y,M,C,Kと、帯電手段4Y,M,C,Kとを有している。潜像担持体たる感光体2Y,M,C,Kは、それぞれ中間転写ベルト21の上張架面に当接してY,M,C,K用の一次転写ニップを形成しながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる。各感光体2Y,M,C,Kは、有機感光体であり、感光層静電容量が、約9.5E−7[F/m]のものを用いた。帯電手段4Y,M,C,Kは、帯電電源80Y,M,C,Kにより帯電バイアスが印加され、感光体2Y,M,C,Kの表面をトナーの帯電極性と同じ極性に一様帯電せしめるものである。
【0019】
現像手段たる現像ユニット3Y,M,C,Kは、磁性キャリアとポリエステル系の材料からなる粉砕トナーとを収容しており、それぞれ現像剤担持体たる現像ローラ3aY,M,C,Kを有している。現像ローラ3aY,M,C,Kは不図示の駆動モータにより図中時計回りの方向に回転して、必要量の現像剤を表面に保持して感光体との対向位置へ搬送する。現像ローラ内部には、複数の磁石が設けられており、現像ローラ表面に保持されている現像剤は、現像領域で現像領域と対向する磁石による磁力で穂立ちし、現像ローラ表面上の磁気穂が感光体と接触する。現像ローラ3aY,M,C,Kには、不図示の電源から現像バイアスが印加されており、印加された現像バイアスと感光体上の静電潜像によって形成される潜像電界に応じて、現像ローラ3aY,M,C,Kに穂立ちした現像剤からトナーが感光体表面に移動し現像される。
【0020】
Y,M,C,K用の一次転写ニップの下方では、中間転写ベルト21のループ内で、一次転写ローラ25Y,M,C,Kが中間転写ベルト21を感光体2Y,M,C,Kに向けて押圧している。4つの一次転写ローラ25Y,M,C,Kは、金属製の芯金にスポンジ等の弾性体が被覆されたローラであり、芯金を除く体積抵抗値は、1E9[Ω・cm]である。これら一次転写ローラ25Y,M,C,Kには、一次転写電源81Y,M,C,Kによって定電流制御されるトナー帯電極性と逆極性の一次転写電流が印加される。
【0021】
タンデムトナー像形成部10の上方には、図示しない潜像形成手段たる光書込ユニットが配設されている。この光書込ユニットは、帯電手段4Y,M,C,Kによって−650[V]に一様帯電せしめられた感光体2Y,M,C,Kの表面に対し、走査光Lによる光書込処理を施して静電潜像を形成するものである。なお、ベタ画像時における静電潜像の電位Vlは、約−100[V]である。感光体2Y,M,C,Kに形成された静電潜像は、現像ユニット3Y,M,C,Kによって負極性(帯電量約−20[μc/g]トナーで反転現像されてY,M,C,Kトナー像(ベタ画像時におけるトナー付着量約0.6[mg/cm])になる。これらY,M,C,Kトナー像は、上述したY,M,C,K用の一次転写ニップにて、中間転写ベルト21のおもて面に重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト21のおもて面には、4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0022】
なお、本プリンタにおいては、帯電手段4Y,M,C,Kとして、帯電電源80Y,M,C,Kによって帯電バイアスが印加される帯電部材を感光体2Y,M,C,Kに近接せしめた(非接触)状態で、帯電部材と感光体2Y,M,C,Kとの間に放電を生じせしめて感光体2Y,M,C,Kを一様帯電させるものを採用している。このような帯電手段4Y,M,C,Kに代えて、スコロトロン帯電器などを採用してもよい。
【0023】
転写ユニット20は、中間転写ベルト21の下方に二次転写ローラ26を有している。ニップ形成部材としての二次転写ローラ26は、接地された状態で、中間転写ベルト21における二次転写対向ローラ24に対する掛け回し箇所にベルトおもて面側から当接して二次転写ニップを形成している。二次転写ローラ26は、金属製の芯金にウレタン等の弾性体が被覆されたローラであり、芯金を除く体積抵抗値は、1E9[Ω・cm]である。二次転写対向ローラ24も、二次転写ローラ同様、金属製の芯金にウレタン等の弾性体が被覆されたローラであり、芯金を除く体積抵抗値は、1E9[Ω・cm]である。二次転写ニップの上方にて、中間転写ベルト21を掛け回している二次転写対向ローラ24には、二次転写バイアス電源82により、トナーの帯電極性と同極性の二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写対向ローラ24と二次転写ローラ26との間の二次転写ニップには、トナーを二次転写対向ローラ24側から二次転写ローラ26側に静電移動させる二次転写電界が形成される。
【0024】
二次転写ニップには、記録シートが所定のタイミングで送り込まれる。そして、中間転写ベルト21上の4色重ね合わせトナー像が、ニップ圧や二次転写電界の作用によって記録シートに一括二次転写される。
【0025】
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト21表面に付着している二次転写残トナーは、ベルトクリーニング装置27によってベルト表面から除去される。
【0026】
二次転写ニップで4色重ね合わせトナー像が二次転写された記録シートは、二次転写ニップを出た後、図中反時計回り方向に無端移動せしめられる用紙搬送ベルト39の上張架面に吸着されて定着装置40内に送り込まれる。そして、定着装置40内において、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱定着ローラ41(設定温度:165[℃])と、これに向けて押圧される加圧ローラ42との当接による定着ニップに挟み込まれ、加圧や加熱処理によるトナー像の定着処理が施される。このようにしてトナー像が定着せしめられた記録シートは、図示しない排出ローラ対を経由して機外へと排出される。
【0027】
定着装置40から排出された記録シートについては、そのまま排紙ローラ対に送る場合と、排紙ローラ対に送らずに、再送装置50に送る場合とがある。具体的には、記録シートの第1面だけに画像を形成する片面モードのプリントジョブを実施する際には、定着装置40から排出された記録シートを例外なく排紙ローラ対に送る。これに対し、記録シートの両面に画像を形成する両面モードのプリントジョブを実施する際において、定着装置40から排出された記録シートが第1面だけにトナー像を担持するものである場合には、それを排紙ローラ対に送らずに、再送装置50に送る。但し、両面モードであっても、定着装置40から排出された記録シートが両面にトナー像を担持するものである場合には、それを排紙ローラ対に送る。定着装置40を通過した後の記録シートを排紙ローラ対に送るのか、再送装置50に送るのかの切り換えは、図示しない切り換え爪によるシート搬送先の切り換えによって行われる。
【0028】
再送装置50は、定着装置40から送られてくる記録シートをスイッチバック路51でスイッチバック搬送することで、その上下を反転させる。その後、記録シートをスイッチバック路52に送る。スイッチバック路52を通過した記録シートは、図示しない給紙カセットから二次転写ニップに搬送するための給紙路の途中に送り込まれる。これにより、上下を反転させた状態で、二次転写ニップに再送される。
【0029】
なお、給紙路の後半領域では、記録シートは、ローラ対31とレジストローラ対(ステンレス製)32とを順次通過する。再送装置50は、記録シートを給紙路におけるローラ対31よりも上流側の位置に送り込む。よって、記録シートは、給紙カセットから送り出された直後のものであるか、再送装置50によって再送されたものであるかにかかわらず、給紙路内において、ローラ対31とレジストローラ対32とを必ず経由することになる。
【0030】
レジストローラ対32は、2つのローラの回転を停止させた状態で、記録シートの先端が突き当てられることで、記録シートのスキューを矯正する。その後、2つのローラを回転させて記録シートの先端部をレジストニップ内にくわえ込むが、その後すぐにローラの回転を停止させる。そして、記録シートを二次転写ニップでベルト上のトナー像に同期させ得るタイミングで、ローラの回転を再開する。
【0031】
なお、本実施形態のプリンタのプロセス線速は、約280[mm/s]である。また、本実施形態のプリンタは、帯電手段、現像ユニット、光書込ユニットでトナー像形成手段としての機能を有している。
【0032】
本プリンタにおける各画像形成ユニット1Y,M,C,Kでは、いわゆるクリーナレス方式を採用している。このクレーナレス方式とは、感光体2Y,M,C,K上に付着している転写残トナーをクリーニング回収するための専用の手段を用いることなく感光体上での画像形成プロセスを実行する方式のことである。また、クリーニング回収するための専用の手段とは、具体的には、転写残トナーを感光体2Y,M,C,Kから分離した後、再び感光体2Y,M,C,Kに付着させることなく、廃トナー容器まで搬送して回収したり、現像ユニット3Y,M,C,K内に搬送してリサイクル回収したりする手段である。
【0033】
具体的には、各感光体上の転写残トナーは、帯電部材との対向領域を通過する際にマイナスに帯電され、その後、現像ローラ3aY,M,C,Kと感光体2Y,M,C,Kとが対向する現像領域において、感光体上の転写残トナーを現像ローラ3aY,M,C,Kに静電転移させることで、現像ユニット内に回収する。また、転写位置から現像領域の間にブラシ等の散らし部材を設けて、感光体2Y,M,C,K上の転写残トナーを引っ掻くことで、転写残トナーと感光体2Y,M,C,Kとの付着力を弱めてもよい。また、表面を感光体2Y,M,C,Kに接触させながら無端移動させる回転ブラシ部材などの捕捉部材を設け、捕捉部材で感光体2Y,M,C,K上の転写残トナーを一時的に捕捉し、プリントジョブ終了後やプリントジョブ間の紙間タイミングなどにおいて、捕捉部材上の転写残トナーを感光体2Y,M,C,Kに再転移させた後、現像ローラ3aY,M,C,Kに静電転移させて、現像ユニット内に回収するようにしてもよい。
【0034】
また、本実施形態のプリンタには、光学センサユニット86が所定の間隙を介して中間転写ベルト21と対向している。また、装置本体には、温湿度センサ85が設けられている。
【0035】
図2は、本プリンタの制御ブロック図である。同図において制御手段たる制御部200は、演算手段たるCPU200a(Central Processing Unit)、不揮発性メモリたるRAM200c(Random Access Memory)、一時記憶手段たるROM200b(Read Only Memory)等を有している。制御部200は、装置全体の制御を司るものであり、様々な機器やセンサが接続されているが、同図では、本プリンタの特徴点に関連する機器やセンサだけを示している。制御部200は、RAM200cやROM200b内に記憶している制御プログラムに基づいて、各手段の機能を実現している。具体的には、画像データに基づいて、各色の画像の印字率を演算する機能を有している。また、画像データに基づいて、中間転写ベルト上のトナー像と、転写するトナー像との重なりを判定する機能を有している。すなわち、制御部200は、重なり判定手段としての機能を有している。また、制御部200は、演算した印字率や重なり判定に基づいて、Y,M,C,K色の一次転写電流値を演算し、演算した一次転写電流値となるように、Y,M,C,K色の一次転写電源81Y,M,C,Kを制御する転写バイアス制御手段としての機能も有している。また、制御部200は、重なり判定に基づいて、C,M.K色の現像バイアスを制御して、感光体上のトナー付着量を制御するトナー付着量制御手段としての機能も有している。
【0036】
また、制御部200は、図示しない電源スイッチがONされた直後や、所定枚数のプリントを実施する毎に、書込条件補正処理としての位置ズレ量補正処理を実施するようになっている。そして、この位置ズレ量補正処理において、中間転写ベルト21に、図3に示すようなシェブロンパッチPVと呼ばれる複数のトナー像からなる位置ズレ検知用画像を形成する。上述した光学センサ86は、発光手段から発した光を集光レンズに通した後、中間転写ベルト21の表面で反射させ、その反射光を受光手段で受光して受光量に応じた電圧を出力する。中間転写ベルト21に形成されたシェブロンパッチPV内のトナー像が光学センサ86の直下を通過する際には、光学センサ86の受光手段による受光量が大きく変化する。これにより、制御部200は、中間転写ベルト21に形成されたシェブロンパッチPV内における各トナー像を検知することができる。このように、光学センサ86は、制御部200との組合せによって像検知手段として機能している。なお、発光手段としては、トナー像を検出するために必要な反射光を作り得る光量をもつLED等が用いられている。また、受光手段としては、多数の受光素子が直線状に配列されたCCDなどが用いられている。
【0037】
制御部200は、中間転写ベルト21に形成したシェブロンパッチPV内の各トナー像を検知することで、各トナー像における副走査方向(ベルト移動方向)の位置を検出する。シェブロンパッチは、図3に示すように、Y,M,C,Kの各色のトナー像を主走査方向(レーザ光が感光体表面上で走査する方向)から約45[°]傾けた姿勢で、副走査方向であるベルト移動方向に所定ピッチで並べたラインパターン群である。このようなシェブロンパッチPV内のY,C,Mトナー像について、Kトナー像との検知時間差を読み取っていく。同図では、紙面上下方向が主走査方向に相当し、左から順に、Y,C,M,Kトナー像が並んだ後、これらとは姿勢が90[°]異なっているK,M,C,Yトナー像が更に並んでいる。基準色となるKとの検出時間差tyk、tck、tmkについての実測値と理論値との差に基づいて、各色トナー像の副走査方向のズレ量、即ち位置ズレ量を求める。そして、その位置ズレ量に基づいて、不図示の光書込ユニットの感光体に対する光書込開始タイミングを補正して、感光体や中間転写ベルト21の速度変動に起因する各色トナー像の位置ズレを低減する。
【0038】
次に、各色の一次転写電流および現像バイアスについて説明する。
まず、中間転写ベルト21移動方向最上流に位置するY色の画像形成ユニットの一次転写電流I1および現像バイアスVb1について説明する。Y色の一次転写電流I1は、一次転写ニップ出口部における、Yトナー像の主走査方向(搬送方向と直交する方向)の印字率η1に基づき、副走査方向(中間転写ベルト移動方向)の画素毎に制御される。すなわち、中間転写ベルト21および感光体が、副走査方向に一画素分移動して、一次転写ニップ出口における印字率が変化すると、一次転写ローラ25に流れる一次転写電流が、その印字率に対応する一次転写電流値に変化するのである。
なお、一次転写ニップ出口における印字率に基づいて、一次転写電流を制御する理由は、次のとおりである。すなわち、感光体上の転写前トナーが感光体から剥離して中間転写ベルトに移るときに感光体と中間転写ベルトとの間に転写電流が流れる。すなわち、一次転写ローラ25に付与した一次転写電流は、感光体上の転写前トナーが剥離して中間転写ベルトに転写される一次転写ニップ出口に主に流れるのである。つまり、一次転写ローラ25に付与した一次転写電流は、主として一次転写ニップ出口でのトナーの転写に使われるのである。よって、一次転写電流を一次転写ニップ出口の印字率に基づいて、制御することにより、良好な転写率を得ることができる。
【0039】
ここで、印字率ηについて図4を用いて説明する。印字率ηは、主走査方向における中間転写ベルト21の画像形成領域の幅Wに対する各色画像サイズの総和の割合を示す数値である。例えば、図4に示したベタパターンは、帯状パターンを1つだけ具備するものであり、その主走査方向の幅が、画像形成領域の幅W×0.2[mm]になっている。これは、中間転写ベルト21の画像形成領域幅Wの20[%]に相当するので、図示のベタパターンは20[%]の印字率で形成されていることになる。なお、印字率は、パソコンやスキャナから得られた画像入力信号か、感光体へ潜像を形成する際のレーザの書き込み信号を用いて算出される。
【0040】
Y色の一次転写電流値は、トナー帯電量−20[μC/g]のとき、次の式で表すことができる。なお、η1は、0〜1の値である。
画像があるとき(η1>0)
I1=−13.16×η1+41.66[μA]・・・(式1)
画像がないとき(η1=0)
I1=5[μA]・・・・(式2)
【0041】
Y色の現像バイアスVb1は、トナー帯電量−20[μC/g]のとき、−500[V]である。
【0042】
図5は、一次転写率−一次転写電流曲線の印字率依存性を示すグラフである。
図に示すように、一次転写率が最大になる一次転写電流の値は、印字率が高い程小さく、印字率が低いほど大きいことがわかる。このように、一次転写率が最大になる電流値に差が生じる原因は、感光体上の非画像部の電荷量と画像部の電荷量に差があるためである。感光体の初期帯電電位は約−650[V]であり、感光体の静電容量は9.5E−7[F/m]であるから、非画像部の面積電荷密度は、約−620[μC/m]と見積もられる。一方、画像部の面積電荷密度は、トナーの電荷量0.60E−3[g/cm]×−20[μC/g]=−0.012[μC/cm]=−120[μC/m]と感光体の残留電位(約−100V)の電荷量(約−95[μC/m])との和である。すなわち、画像部の面積電荷密度は、約−215[μC/m]と見積もられ、非画像部の電荷量の方が画像部より約3倍多い。つまり、一次転写ニップにおける中間転写ベルト21と画像部との電界よりも、中間転写ベルト21と非画像部との電界の方が強くなる。よって、非画像部の面積が大きくなる程、付与した一次転写電流のうち、中間転写ベルト21と感光体の非画像部との放電に使われる電流の割合が高くなる。その結果、中間転写ベルト21と感光体の画像部との間の転写電流が不足し、転写率が低下する。よって、一定の転写率(トナーに働く静電気力)を得るためには、感光体の画像部と中間転写ベルト21との間に所定の電流が流れるよう、一次転写電流を高くする必要がある。
【0043】
Y色の一次転写電流は、式1に示すように、印字率が高い程一次転写電流を小さくし、印字率が低い程一次転写電流を大きくなるように制御している。よって、印字率が低い画像のときでも、感光体の画像部と中間転写ベルト21との間に所定の電流が流れ、良好な転写率を得ることができ、Y色画像の濃度低下を抑制することができる。
【0044】
次に、Y色の画像形成ユニット1Yよりも中間転写ベルト21移動方向下流側のM,C,K色の一次転写電流Iiと、現像バイアスVbiについて説明する。
上述したように、感光体の画像部の電荷量よりも非画像部の電荷量の方が高いため、画像部よりも非画像部に電流が流れやすく、非画像部で優先的放電が発生する。その結果、中間転写ベルト上の感光体の非画像部と対向するトナー(転写するトナーと重ならないトナー)が正規極性(負極性)と逆の極性に帯電する、所謂逆帯電トナーとなってしまう。その結果、中間転写ベルト上の非画像部と対向するトナー(転写するトナーと重ならないトナー)が、感光体に逆転写してしまう。この逆転写を抑制するために、一次転写ローラに付与する一次転写電流の値を下げてしまうと、転写率が低下してしまい、中間転写ベルト上に所望量のトナーを転写させることができず、画像の濃度低下を引き起こしてしまう。そこで、本実施形態では、中間転写ベルト上の非画像部と対向するトナー(転写するトナー像と重ならないトナー)が存在する可能性のあるM,C,K色については、次のように、一次転写電流Iiと、現像バイアスVbiとを制御している。すなわち、M,C,K色の一次転写電流Iiと、現像バイアスVbiとは、中間転写ベルト上の転写済みトナー像(副走査方向一画素分のトナー像)と、転写前トナー像(副走査方向一画素分のトナー像)との重なりを判定し、判定結果に基づいて設定するのである。なお、画像の重なりは画像情報(パソコンやスキャナから得られた画像入力信号や感光体へ潜像を形成する際のレーザの書き込み信号)から判定可能である。また、感光体や中間転写ベルト等の速度変動に起因する位置ずれは、上述したように光書込開始タイミングを補正しているので、画像情報から精度の高い重なりを判定することができる。
【0045】
M,C,K色の現像バイアスVbiは、トナー帯電量−20[μC/g]のとき、次の式で表すことができる。
(1)
感光体上の転写前トナー像(副走査方向一画素のトナー像)を中間転写ベルト21に転写する際、中間転写ベルト21上の転写前トナー像が転写される箇所に、転写済みトナー像が主走査方向に存在しない場合(図6(a))、または、感光体上の転写前トナー像(副走査方向一画素のトナー像)を中間転写ベルト21に転写する際、転写前トナー像と、中間転写ベルト上の転写済みトナー像とが完全に重なる場合(図6(d))、現像バイアスVbiは、次のように設定する。
Vbi=−500[V]・・・・(式3)
【0046】
(2)
感光体上の転写前トナー像(副走査方向一画素のトナー像)を中間転写ベルト21に転写する際、中間転写ベルト上の転写済みトナー像に転写前トナー像と重ならない部分が存在する場合(図6(b)や図6(c))
Vbi=24.7×ηi−541・・・・(式4)
なお、このときの現像バイアスVbiは、現像領域(磁気穂が感光体と接触する領域)の出口部における、潜像画像の主走査方向(搬送方向と直交する方向)の印字率ηiに基づき、副走査方向(搬送方向)の画素毎に制御される。すなわち、感光体3(M〜K)が、副走査方向に1画素分移動して、現像領域出口部における印字率が変化すると、現像バイアスVbiが、その印字率に対応する現像バイアスVbiに変化するのである。なお、ηiは、0〜1の値である。
【0047】
次に、M,C,K用の一次転写ローラ25M,25C,25Kの一次転写電流Iiは、トナー帯電量−20[μC/g]のとき、次の式で表すことができる。
(1)
転写するトナー像(転写前トナー像)があり(ηi>0)、かつ、感光体上の転写前トナー像(副走査方向一画素のトナー像)を中間転写ベルト21に転写する際、中間転写ベルト21上の転写前トナー像が転写される箇所に、主走査方向に転写済みトナー像が存在しない場合(図6(a))。または、転写前トナー像があり(ηi>0)、感光体上の転写前トナー像(副走査方向一画素のトナー像)を中間転写ベルト21に転写する際、転写前トナー像と、中間転写ベルト上の転写済みトナー像とが完全に重なる場合(図6(d))。
Ii=−13.16×ηi+41.66[μA]・・・(式5)
【0048】
(2)
転写前トナー像があり(ηi>0)、感光体上の転写前トナー像(副走査方向一画素のトナー像)を中間転写ベルト21に転写する際、中間転写ベルト上の転写済みトナー像に転写前トナー像と重ならない部分が存在する場合(図6(b)や図6(c))。
Ii=20[μA]・・・・(式6)
【0049】
(3)
転写前トナー像がない場合(ηi=0)の場合(図6(e))。
Ii=5[μA]・・・・・(式7)
【0050】
なお、このときの転写電流は、一次転写ニップ出口部における、トナー像の重なりに基づいて制御する。すなわち、中間転写ベルト21および感光体が、副走査方向に一画素分移動して、一次転写ニップ出口におけるトナー像の重なり具合が変化すると、一次転写ローラ25に流れる一次転写電流が、トナー像の重なり具合に対応する一次転写電流値に変化するのである。これは、上述したように、一次転写ローラ25に付与した一次転写電流は、主として一次転写ニップ出口に流れる。このため、非画像部での放電も、一次転写ニップ出口付近で主に起こる。このため、一次転写電流を一次転写ニップ出口のトナー像の重なり具合に基づいて、制御することにより、逆転写を抑制することができる。
【0051】
図7は、M色トナー(中間転写ベルト移動方向上流から3番目の画像形成ユニット)、K色トナー(中間転写ベルト移動方向最下流の画像形成ユニット)の印字率が5%の時の、M色トナーの逆転写率(K色の感光体2Kに逆転写したM色トナーの質量/中間転写ベルトに転写されたM色トナーの質量)と、K色の一次転写電流との関係を示すグラフである。なお、K色のトナーは、中間転写ベルト上のM色のトナーと重ならないように転写した。上述したように、本来K色トナーの印字率が5%の場合、最大の一次転写率を得るためには(式5)に示すように41.0[μA]の一次転写電流が必要である。しかし、20[μA]からM色トナーの逆転率が増加することがわかる。このため、M,C,K色の画像形成ユニットでは、中間転写ベルト上の転写済みトナー像に転写するトナー像と重ならない部分(感光体の非画像部と対向する部分)があり、逆転写が起こる可能性があるときは、一次転写電流Iiを20[μA]にしている。これにより、転写するトナー像と重ならない部分(感光体の非画像部と対向する部分)の逆転写を抑えることができる。
【0052】
しかし、一次転写電流を20[μA]で制御したときトナーの転写率は、印字率に応じて転写電流を制御した場合(転写率約95%)に比べて、印字率100%の場合で約3%、印字率が5%の場合で約7%低下する。転写率が低下すると、中間転写ベルト21に所望量のトナーを転写させることができなくなり、画像濃度が低下してしまう。そこで、本実施形態では、式4に示したように一次転写電流を20[μA]に制御したことに起因する転写率の低下を加味して現像バイアスを制御し、予め感光体上のトナーの付着量を多くしている。すなわち、(式4)に示すように、印字率ηiが低いほど、現像バイアスVbiを負極性側に大きくし、印字率ηiが低いほど、感光体の画像部に付着させるトナー量を多くしている。その結果、一次転写電流が20[μA]となって、転写率が低下しても、感光体に付着させるトナー量を、転写率の低下を加味して増やしているので、結果的に中間転写ベルト21に所望量のトナーを転写させることができる。従って、濃度低下のない良好な画像を得ることができる。
これにより、図6(b)、図6(c)のように、中間転写ベルト上のトナーに転写されるトナーと重ならない部分が存在しても、逆転写を抑えることができるとともに、中間転写ベルト上に所望量のトナーを転写させることができる。これにより、濃度低下のない良好な画像を得ることができる。
【0053】
一方、図6(d)のように、中間転写ベルト上の転写済みトナー像と転写前トナー像とが完全に重なるときは、中間転写ベルト上トナーが、感光体と当接することがないため、中間転写ベルト上のトナーが、感光体へ逆転写することは、ほとんどない。また、図6(a)にように、感光体の転写前トナー像を中間転写ベルトに転写するとき、中間転写ベルト上に転写済みトナー像がない場合も逆転写が起こることがない。よって、このような場合は、現像バイアスを−500[V]にして、感光体へのトナー付着量を通常時の付着量にし、一次転写電流を印字率に応じて制御する。これにより、中間転写ベルト21に所望量のトナーを転写させることができる。また、転写残トナーの量を低減させることができる。
【0054】
また、図6(e)に示すように、転写前トナー像がないときは、(式7)に示すように、一次転写電流を大幅に下げ、一定値(5μA)で制御する。これにより、一次転写ニップでの放電などを抑制することができ、中間転写ベルト21上のトナーが逆帯電して、感光体に逆転写するのを抑制することができる。これにより、画像の劣化や、現像ユニット内のトナーの混色を抑制することができる。
【0055】
このように、本実施形態においては、Y色画像については、完全に印字率に応じて一次転写電流が制御されるので、95%の転写率を確保できる。また、マゼンタ、シアン、ブラックの単色画像の場合も、完全に印字率に応じて一次転写電流が制御されるので、95%の転写率を確保できる。さらに、2色のトナーを完全に重ねて得られるブルー、レッド、グリーンなどの単色画像も各色完全に印字率に応じて一次転写電流が制御されるので、95%の転写率を確保できる。実際にユーザが出力する画像には、文字画像やグラフが多く、こういった画像では、主走査方向において、複数色存在することが少ない。よって、図6(b)や(c)のような状況が少ない。このため、印字率に応じて一次転写電流が制御されることが多いので高い転写率と、良好な最終画像を実現可能となる。
【0056】
従来の画像形成装置においては、一次転写電流を25[μA]の定電流制御を行っていたが、転写率は、90〜93%程度であり、各色の一次転写ニップを通過する度に中間転写ベルト上のトナーは約5%逆転写していた。そのため、例えば感光体に現像された印字率が5%のイエロートナー像(最上流ステーション)が、最下流のブラックステーションを通過する割合は、90%×(1−0.05)×(1−0.05)×(1−0.05)≒77%となる。これに対し、本実施形態では、風景画や人物画のような複雑なカラー画像の場合は、ほとんどが図6(b)や図6(c)であるため、M,C、Kの一次転写ニップの転写率がやや下がる(印字率5%で88%、印字率100%で92%)が、現像バイアスVbiを制御して、転写前トナー像のトナー付着量を増加させているので、転写率が下がっても、所望量のトナーを中間転写ベルトに転写させることができる。しかも、一次転写電流を20[μA]に抑えているので、逆転写の発生も低減できる(約2%)。また、中間転写ベルト21移動方向最上流の画像形成ユニットで形成されるY色画像や、ニップ中に上流のトナー像がない状況では、印字率に応じて一次転写電流が制御されるので、確実に95%の転写率が確保できる。すわなち、Y色の感光体2Yに現像された印字率が5%のY色トナー像が、最下流のK色の一次転写ニップを通過する割合(質量%)は、95%×(1−0.02)×(1−0.02)×(1−0.02)≒89%である。また、M色トナーで、感光体へのトナー付着量を増加させる制御を行わずに、最も不利な条件(最も転写率が低く、最も逆転写が発生する条件)でも、88%×(1−0.02)×(1−0.02)≒85%(最高で、95%×(1−0.02)×(1−0.02)≒91%)にすることができる。一方、従来技術の場合、90%×(1−0.05)×(1−0.05)≒81%)となり、本実施形態の優位性は明らかである。さらに、本実施形態においては、感光体の転写前トナー像のトナー付着量を、転写率の低下を見越して0.6[mg/cm]以上にしているので、0.6[mg/cm]を基準とした場合におけるK色の一次転写ニップ通過後のM色トナー付着量の割合は、上記85%や上記91%以上になることは、明らかである。
【0057】
また、特許文献4に記載されている画像形成装置においては、中間転写ベルト上の転写済みトナー像に転写前トナー像との重なりの割合と画像の比率(転写済みトナー像と転写前トナー像との和から重なり部分を差し引いた値)に基づいて、一次転写電流を制御している。しかし、特許文献4に記載されている画像形成装置では、低い印字率のカラー画像で、且つ、転写済みトナー像に転写前トナー像が重ならない部分があるときも、高い転写電流が付与される。その結果、この場合、逆転写率が大きくなり、画像濃度の低下や現像ユニット内の混色が進んでしまう。一方、本実施形態においては、転写済みトナー像に転写前トナー像が重ならない部分があるときは、印字率に応じて転写電流を制御しないので、このような問題が起きない点で優れている。
【0058】
以上のように、本実施形態のプリンタでは、現像ユニット内の混色を極限まで低減し、且つ、良好な最終画像を得ることができるクリーナレス方式の画像形成装置にすることができる。
【0059】
ところで、本プリンタでは、各色の一次転写電流は、印字率に基づいて算出している(M、C、Kにおいては、図6(a)や図6(d)の場合)が、トナーの電荷量や感光体の電位なども考慮にいれて、算出してもよい。これは、転写率が最大となる転写電流値と印字率との関係や、逆転写率が増加し始める一次転写電流の閾値は、感光体の非画像部電位と画像部電位、トナー電荷量によって変化するからである。感光体の非画像部電位と画像部電位やトナー電荷量は、一般に温湿度環境で変化するため、図1に示すように装置内に温湿度センサ85を設け、温湿度センサ85の情報に基づいて、トナー電荷量や感光体の非画像部電位と画像部電位を予測し、一次転写電流の算出式を補正する。具体的には、温湿度センサ85の情報に基づいて、トナー電荷量が高くなったと予測される場合は、通常時よりも、一次転写電流が高くなるよう係数(式1、式5における−13.16)を補正する。
【0060】
例えば、式1に対して,感光体の初期帯電電位(−650[V]一定)や感光体上に現像するトナーの量(0.6[mg/cm])が固定の条件下で、トナーの帯電量だけが変化する場合、トナー帯電量を考慮して一次転写電流を求める関数は、次のように表すことができる。
I1=−(13.16+{(Q1+20)/20}×8.01)η1+41.66
なお、Q1はトナー帯電量[μC/g]である。
この関数では、トナーの帯電量が大きくなるに従って、印字率100%のベタ画像印字時の一次転写電流量が多くなるように制御される。
【0061】
また、プロセスの線速によっても単位時間当たりに転写されるトナーの量や放電電流量が変わるため、プロセス線速を考慮に入れて、係数を補正してもよい。例えば、プロセス線速を考慮して一次転写電流を求める関数は、次のように表すことができる。
I1=(−13.16×η1+41.66)vp/280
なお、vpはプロセス速度[mm/s]である。上記式からわかるように、プロセス速度が大きくなるに従って一次転写電流量が多くなるように制御される。
【0062】
また、感光体の非画像部電位と画像部電位、トナー電荷量によって感光体に付着するトナー量も変化するため、温湿度センサ85の情報に基づいて、感光体の非画像部電位と画像部電位、トナー電荷量を予測し、(式4)の係数を補正してもよい。
【0063】
また、上記では、関数を用いて、一次転写電流を演算しているが、例えば、各トナーの帯電量と、印字率と、感光体の帯電電位と、一次転写電流とを対応づけたルックアップテーブルを記憶しておき、各トナーの帯電量と、印字率と、感光体の帯電電位と、ルックアップテーブルとに基づいて、一次転写電流を決定してもよい。また、ルックアップテーブルは、各色共通のものを用いてもよいし、各色毎に異なるルックアップテーブルを設けてもよい。また、中間転写ベルト上の転写済みトナー像に転写前トナー像と重ならない部分が存在する場合における、M,C,K色の現像バイアスVbiを、関数(式4)を用いて演算しているが、これら現像バイアスVbiを、印字率と現像バイアスとが関連づけられたルックアップテーブルに基づいて決定してもよい。
【0064】
また、上述では、印字率に基づいて一次転写電流を演算するための関数は、各色共通だが、各色毎に異ならせてもよい。また、中間転写ベルト上の転写済みトナー像に転写前トナー像と重ならない部分が存在する場合における、現像バイアスを演算するための関数(式4)を、M,C,K色共通にしているが、各色毎に異ならせてもよい。
【0065】
また、本プリンタにおいては、一次転写電流の制御の基準を、一次転写ニップ出口の印字率にしているが、これに限られない。一次転写電流の制御の基準は、一次転写電源81Y,M,C,Kの応答性などに基づいて、適宜決めればよい。例えば、一次転写電源81Y,M,C,Kの応答性などにより、一次転写ニップ出口の印字率を基準にした場合、制御基準の画像が、一次転写ニップ出口を通過した後に、一次転写電流が制御基準の画像の印字率に対応する一次転写電流となる場合は、一次転写ニップの中央の画像印字率を一次転写電流の制御の基準としてもよい。これにより、制御基準の画像が、一次転写ニップ出口にきたときに、制御基準の画像の印字率に対応する一次転写電流にすることができる。
【0066】
また、クリーナレス方式の場合は、その転写残トナーは、現像装置に回収され、再利用されるので、多少転写残トナーが多くても、問題がない。よって、もっと粗い範囲で一次転写電流およびトナー付着量を制御しても良い。例えば、副走査方向の100画素単位で重なり判定を行い、100画素中間転写ベルトが移動する毎に、一次転写電流や現像バイアスを変更するよう制御してもよい。具体的には、重なり判定で、重ならない部分があると判定されたときは、現像バイアスは、副走査方向100画素の印字率に基づき制御される。また、重なり判定で、完全に重なると判定されたときや、転写済トナー像がないとき、一次転写電流は、副走査方向100画素の印字率に基づき制御される。
【0067】
また、一次転写ニップ幅の単位や、一枚画像単位で重なり判定を行い、一次転写電流、現像バイアスを制御してもよい。一次転写ニップ幅の単位で制御を行った場合は、一次転写電流や現像バイアスを(一次転写ニップ幅/プロセス線速)秒毎に制御する。また、副走査方向の1000画素の単位で制御を行ってもよい。この場合、副走査方向1000画素毎に、重なり判定を行い、1000画素中間転写ベルトが移動する毎に、一次転写電流や現像バイアスを変更するよう制御する。
【0068】
例えば、一次転写電流や現像バイアスを画像一枚単位で制御する場合について、一例を挙げると、
(1)
転写前トナー像があり、かつ、感光体上の転写前トナー像を中間転写ベルト21に転写する際、中間転写ベルト21上に転写済みトナー像(一枚画像)が存在しない場合や、転写前トナー像があり、感光体上の転写前トナー像を中間転写ベルト21に転写する際、転写前トナー像と、中間転写ベルト上の転写済みトナー像とが完全に重なる場合は、一次転写電流をIi=26[μA]に設定する。また、現像バイアスは、Vbi=−500[V]にし、通常のトナー付着量となるよう制御する。
(2)
転写前トナー像があり、中間転写ベルト上の転写済みトナー像(一枚画像)に、転写前トナー像(一枚画像)と重ならない部分がある場合は、一次転写電流を、Ii=20[μA]に設定する。また、現像バイアスは、Vbi=−500[V]以上にし、通常のトナー付着量よりも多くなるよう制御する。
(3)
転写前トナー像がない場合は、一次転写電流をIi=5[μA]に設定する。
【0069】
また、重なり判定は、副走査方向1画素毎に行い、印字率に基づいて制御する場合の現像バイアス、一次転写電流を、もっと粗い範囲で制御してもよい。例えば副走査方向の100画素の印字率を算出し、100画素中間転写ベルトが移動する毎に、印字率で制御する場合の現像バイアス、一次転写電流を変更する。また、画像一枚当たりの平均印字率を用いて、印字率で制御する場合の一次転写電流や現像バイアスの値を決めてもよい。
【0070】
また、クリーナレス方式ではなく、転写残トナーをクリーニングするタイプの画像形成装置にも、本発明を適用することができる。この場合は、現像ユニット内の混色が生じないため、クリーナレス方式に比べて多少逆転写トナーが多くても画像に及ぼす影響が少ない。このため、もっと粗い範囲で重なり判定を行ってもよい。例えば、画像情報をY,M,C,Kの色情報に分解して、各副走査位置で印字する画素数を色毎にカウントする。転写前トナー像を中間転写ベルトに転写する場合、副走査方向一画素の転写前トナー像の画素数と、中間転写ベルト上の転写済みトナー像の画素数とを比較する。同じであれば、「重なっている」と判断し、異なっていれば「重なっていない」と判断するのである。この場合、実際は、図6(b)のような状態や、図6(c)のような状態であっても、画素数が、同じであれば、「重なっている」と判定しまう。その結果、転写済みトナー像の転写前トナーと重ならない部分が逆転写してしまうおそれがある。しかし、このような場合は、ほとんどないと考えられ、重なり判定に基づき制御を行わないものに比べて、逆転写を抑え、画像濃度の低下を抑えた画像を得ることができる。また、多少逆転写トナーが生じても、クリーニングするタイプの画像形成装置であるので、画像に及ぼす影響が少ない。さらに、画素毎に重なり判定を行う場合に比べて、重なり判定の計算負荷が少なくて済むというメリットもある。もちろん、上述した重なり判定を、クリーナレス方式の画像形成装置に適用してもよい。
【0071】
また、本プリンタでは、感光体へのトナー付着量の制御を、現像バイアスを制御することで、行っているが、感光体上に潜像を形成する際の書き込みユニットのレーザパワーや露光時間の制御することで、感光体へのトナー付着量の制御を行ってもよい。もちろん、現像バイアスと露光量との両方を制御して、感光体へのトナー付着量の制御を行ってもよい。
【0072】
また、現像バイアスの制御により、感光体の非画像部に現像ユニットからトナーやキャリアが現像される不具合が生じる場合は、画像情報(印字率)に応じて、感光体の帯電電位を制御するようにしてもよい。特に、クリーナレスの画像形成装置の場合は,感光体の帯電電位と現像スリーブとの電位差によって、感光体上に残留した転写残トナーを現像ユニット内に回収するため、回収能力を一定にできる点でこのような制御は有効である。
【0073】
また、本プリンタでは、感光体や中間転写ベルト21の速度変動に起因する位置ずれは、光書込ユニットの感光体に対する光書込開始タイミングで補正することで、画像情報から中間転写ベルト上の転写済みトナー像と転写前トナー像との重なりを精度よく判定できるようにしているが、これに限られない。例えば、中間転写ベルト21および感光体の回転速度を検知し、検知結果に基づいて中間転写ベルト21および感光体が一定速度で回転するよう駆動制御させることで、画像情報から中間転写ベルト上の転写済みトナー像と転写前トナー像との重なりを精度よく判定できるようにしてもよい。
【0074】
また、本発明は、感光体上のトナー像を一旦中間転写ベルトに転写してから、記録シートに転写する中間転写タンデム方式のカラー画像形成装置に限らず、例えば、図8に示すように、感光体上のトナー像を直接記録シートに転写する直接転写タンデム方式のカラー画像形成装置にも適用できる。
【0075】
また、図9に示すように、所謂1ドラム型のフルカラー画像形成装置にも本発明を適用できる。この1ドラム型のフルカラー画像形成装置は、1つの感光体2の周囲に、それぞれ、帯電手段4、Y、C、M、Kの各色に対応した現像ユニット3Y,C,M,Kなどを有している。画像形成を行う場合、まず、感光体2の表面を帯電手段4で一様に帯電した後、感光体2の表面に対してY用画像データで変調されたレーザ光Lを照射して、感光体2の表面にY用静電潜像を形成する。そして、このY用静電潜像を現像ユニット3YによりYトナーで現像を行う。これにより得られたY用トナー像は、中間転写ベルト上に一次転写される。その後、感光体2の表面に残留した転写残トナーをクリーニング装置100で除去した後、再び感光体2の表面を帯電手段4で一様に帯電する。次に、感光体2の表面に対してM用画像データで変調されたレーザ光Lを照射して、感光体2の表面にM用静電潜像を形成する。そして、このM用静電潜像を現像ユニット3MによりMトナーで現像を行う。これにより得られたM用トナー像は、中間転写ベルト21上に既に一次転写されているY用トナー像と重なり合うようにして、中間転写ベルト21上に一次転写される。以後、C及びKについても、同様に中間転写ベルト21上に一次転写する。このようにして互いに重なり合った状態の中間転写ベルト21上の各色トナー像は、二次転写ニップに搬送されてきた記録シート上に転写される。このようにしてトナー像が転写された記録シートは、定着ユニット40に搬送される。この定着ユニット40で、記録シートを加熱、加圧して、記録シート上のトナー像を記録シートに定着させる。定着後の記録シートは、図示しない排紙トレー上に排出する。
【0076】
1ドラム型のフルカラー画像形成装置に本発明を適用することによって、中間転写ベルト上に一旦転写された転写済みトナー像のトナーが、感光体2に逆転写するのを抑制することができるとともに、中間転写ベルト21上に所望量のトナーを転写することができる。これにより、画像濃度の低下のない良好な画像を得ることができる。
【0077】
以上、本実施形態の画像形成装置によれば、重なり判定手段たる制御部200が、転写体たる中間転写ベルト21上に既に転写された転写済みトナー像に中間転写ベルト21上に転写する転写前トナー像と重ならない部分があると判定したとき、転写バイアス制御手段たる制御部200は、中間転写ベルト21の幅方向(主走査方向)に転写済みトナー像がない中間転写ベルト21の箇所に転写前トナー像を転写する場合の転写電界よりも弱くなるように、転写バイアスを制御する。このように制御することで、感光体表面の非画像部と一次転写ローラ25との間に流れる電流を抑えることができる。その結果、転写済みトナー像のうち転写前トナー像と重ならない部分が、逆帯電トナーとなるのを抑制することができ、転写済みトナー像の重ならない部分のトナーが、逆転写するのを抑制することができる。よって、中間転写ベルト上のトナーの減少を抑制することができ、良好な画像を得ることができる。また、クリーナレス方式を採用したタンデム型画像形成装置においては、逆転写した他色のトナーが、現像ユニット3に回収されてしまうのを抑制することができる。よって、現像ユニット内のトナーの混色を抑制でき、形成する画像に色変化が生じるのを長期にわたり抑制することができ、色再現性の高い画像を長期にわたり維持することができる。
しかし、転写電界を弱めてしまうと、転写率が低下してしまう。このため、制御部200が、重ならない部分があると判定したときは、トナー付着量制御手段たる制御部200は、感光体2の転写前トナー像のトナー付着量を、主走査方向に転写済みトナー像がない中間転写ベルトの箇所に転写前トナー像を転写する場合の付着量よりも多くなるよう制御する。これにより、転写率が低下しても、転写前トナー像のトナー付着量を多くしているため、中間転写ベルト上に所望量のトナーを付着させることができる。これにより、中間転写ベルト21上のトナー像の濃度低下を抑制することができ、高品位な画像を得ることができる。
【0078】
また、一次転写ローラ25は、電源81から定電流制御された転写バイアスが印加されるものであって、制御部200は、転写済みトナー像に転写前トナー像と重ならない部分があると判定したとき、主走査方向に転写済みトナー像がない中間転写ベルト21の箇所に転写前トナー像を転写する場合の電流値をよりも小さくなるよう制御する。これにより、感光体表面の非画像部と一次転写ローラ25との間に流れる電流を抑えることができ、転写済みトナー像の転写前トナー像と重ならない部分のトナーが逆転写するのを抑制することができる。
【0079】
また、主走査方向に転写済みトナー像がない中間転写ベルト21の箇所に転写前トナー像を転写する場合、または、転写済みトナー像と転写前トナー像とが全て重なると判定した場合は、画像の印字率が低いほど流す転写電流値を小さくするよう制御する。中間転写ベルト21の転写済みトナー像が担持されていない部分に転写前トナー像を転写するとき、または、転写済みトナー像と転写前トナー像とが全て重なるときは、転写済みトナー像と、感光体の非画像部とが接触する部分がない。このため、転写済みトナー像のトナーが感光体に逆転写することがほとんどない。よって、この場合は、画像の印字率が低いほど流す転写電流値を小さくするよう制御することで、良好な転写率を得ることができる。このように、良好な転写率が得られるので、転写前トナー像のトナー付着量を増やさなくても、中間転写ベルトに所望のトナー量を転写させることができる。よって、感光体に付着させるトナー量を減らすことができ、無駄なトナー消費を抑制することができる。
【0080】
また、中間転写ベルト上の転写済みトナー像に転写前トナー像が重ならない部分があると判定したとき、転写前トナー像の画像の印字率が低いほど転写前トナー像のトナー付着量が多くなるようトナー付着量を制御する。転写バイアスを定電流制御したとき、印字率が低いほど、良好な転写率を得るためには大きな転写電流が必要である。このため、転写済みトナー像に転写前トナー像が重ならない部分があり、転写電流を小さくすると、転写前トナー像の印字率が低いときほど、転写前トナー像の転写率の低下が大きい。よって、転写前トナー像に対応する画像の印字率が低いほど転写前トナー像のトナー付着量が多くなるようトナー付着量を制御することによって、転写前トナー像の印字率が低いときも、所望量のトナーを中間転写ベルト21に転写することができ、画像濃度の低下のない良好な画像を得ることができる。
【0081】
現像バイアスを制御することで、転写前トナー像のトナー付着量を良好に制御することができる。
【0082】
また、転写前トナー像がないとき、転写済みトナー像を転写するときの転写電界よりも弱くなるように、転写バイアスを制御する。これにより、中間転写ベルト上の転写済みトナー像のトナーが、転写電流により逆帯電して、逆転写するのを抑制することができる。
【0083】
また、トナーの電荷量、温度、湿度、転写体搬送速度であるプロセス線速のうちの少なくとも一つを検知して、その検知結果に基づいて転写バイアスを制御することで、良好な転写性を得ることができる。
【0084】
また、各感光体上の転写残トナーを、それぞれ対応する現像手段たる現像ユニットで回収するので、転写残トナーを収容する廃トナータンクや、回収した転写残トナーを再利用するためにその転写残トナーを搬送するリサイクルトナー搬送通路などを設ける必要がなくなり、装置の小型化、部品点数の削減によるコストダウンを図ることができる。また、このような構成を採用しても逆転写トナーを良好に抑制できるので、混色による色合い低下を経時にわたり抑制することができる。
【符号の説明】
【0085】
2Y,M,C,K:感光体
3Y,M,C,K:現像ユニット
4Y,M,C,K:帯電手段
21:中間転写ベルト
25Y,M,C,K:一次転写ローラ
26:二次転写ローラ
80Y,M,C,K:帯電電源
81Y,M,C,K:一次転写電源
85:温湿度センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開平5−313431号公報
【特許文献2】特開平8−54771号公報
【特許文献3】特開2005−338636号公報
【特許文献4】特開2003−186284号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の潜像担持体と、
前記複数の潜像担持体にそれぞれ対応し、対応する潜像担持体上にトナーを付着させてトナー像を形成する複数のトナー像形成手段と、
電源から転写バイアスが印加され、該複数の潜像担持体上に形成されたトナー像を転写体に重ね合わせるように順次転写する転写手段と、を備えた画像形成装置において、
前記転写体上に既に転写された転写済みトナー像と該転写体上に転写する転写前トナー像との該転写体上での重なりを判定する重なり判定手段と、
該重なり判定手段の判定結果に基づいて、前記トナー像形成手段を制御し、前記潜像担持体上での該転写前トナー像のトナー像形成あたりトナー付着量を制御するトナー付着量制御手段と、
該重なり判定手段の判定結果に基づいて、該転写前トナー像を該転写体へ転写するときの転写バイアスを制御する転写バイアス制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
潜像担持体と、
該潜像担持体上にトナーを付着させてトナー像を形成する複数のトナー像形成手段と、
電源から転写バイアスが印加され、該潜像担持体上のトナー像を転写体に転写する転写手段とを備え、
複数のトナー像形成手段のうち、ひとつを用いて形成された潜像担持体上のトナー像を該転写体に転写した後、該潜像担持体に別のトナー像形成手段を用いて形成した潜像担持体上のトナー像を該転写体上のトナー像に重ね合わせるように転写する画像形成装置において、
前記転写体上に既に転写された転写済みトナー像と該転写体上に転写する転写前トナー像との該転写体上での重なりを判定する重なり判定手段と、
該重なり判定手段の判定結果に基づいて、前記トナー像形成手段を制御し、前記潜像担持体上の該転写前トナー像のトナー像形成あたりトナー付着量を制御するトナー付着量制御手段と、
該重なり判定手段の判定結果に基づいて、該転写前トナー像を転写体に転写するときの転写バイアスを制御する転写バイアス制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2の画像形成装置において、
前記重なり判定手段が、前記転写体上の前記転写済みトナー像に前記転写前トナー像と重ならない部分があると判定した場合、
前記トナー付着量制御手段は、該転写体に転写前トナー像を転写する箇所が、該転写体の幅方向にわたって該転写済みトナー像がない該転写体の箇所である場合のトナー付着量よりも多くなるようトナー付着量を制御し、かつ、
前記転写バイアス制御手段は、該転写体に転写前トナー像を転写する箇所が、該転写体の幅方向にわたって該転写済みトナー像がない該転写体の箇所である場合の転写電界よりも弱くなるように、前記転写バイアスを制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3の画像形成装置において、
前記転写手段は、前記電源から定電流制御された転写バイアスが印加されるものであって、
前記重なり判定手段が、前記転写体上の転写済みトナー像に前記転写前トナー像と重ならない部分があると判定した場合、前記転写体に転写前トナー像を転写する箇所が、該転写体の幅方向にわたって該転写済みトナー像がない該転写体の箇所である場合の電流値をよりも小さくなるよう制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置において、
該転写体に転写前トナー像を転写する箇所が、該転写体の幅方向にわたって該転写済みトナー像がない該転写体の箇所である場合、または、前記重なり判定手段が、該転写済みトナー像と該転写前トナー像とが全て重なると判定した場合は、前記転写バイアス制御手段は、該転写前トナー像に対応する画像の印字率が低いほど流す電流値を小さくするよう制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかの画像形成装置において、
前記転写手段は、前記電源から定電流制御された転写バイアスが印加されるものであって、
前記重なり判定手段が、前記転写済みトナー像に前記転写前トナー像が重ならない部分があると判定した場合、
前記トナー付着量制御手段は、該転写前トナー像に対応する画像の印字率が低いほど該転写前トナー像のトナー付着量が多くなるようトナー付着量を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかの画像形成装置において、
前記転写前トナー像がない場合、
前記転写バイアス制御手段は、該転写前トナー像を転写する場合の転写電界よりも弱くなるように、前記転写バイアスを制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかの画像形成装置において、
前記転写バイアス制御手段は、前記トナーの電荷量、温度、湿度、前記転写体搬送速度のうちの少なくとも一つを検知して、その検知結果に基づいて前記転写バイアスを制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかの画像形成装置において、
前記トナー像形成手段は、前記潜像担持体を一様帯電させる帯電手段と、該一様帯電した潜像担持体上に潜像画像を形成する潜像形成手段と、少なくともトナーを含有する現像剤を担持する現像剤担持体に現像バイアスを印加しながら前記現像剤担持体上のトナーを、潜像担持体上の潜像に付着させて、現像する現像手段と、を備え
前記トナー付着量制御手段は、前記現像バイアスを制御することで、トナー付着量を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1の構成を備えた請求項9の画像形成装置において、
各潜像像担持体上の転写残トナーを、それぞれ対応する現像手段で回収することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−262182(P2010−262182A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113929(P2009−113929)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】