説明

画像形成装置

【課題】位相制御と波数制御を組み合わせた制御を用いた定着装置において、定着温度制御上の電力切換えタイミングと電力値の更新タイミングとの時間差を小さくする制御技術を提供することを目的とする。
【解決手段】交流電源の4全波を制御周期として位相制御と波数制御を組み合わせた第一の制御パターンと、1全波を制御周期とした位相制御のみの第二の制御パターンを備え、供給電力の切換え時において、切換えタイミングと第一の制御パターンあるいは第二の制御パターン電力値が更新されるタイミングとの時間差が少なくなるように、第一の制御パターンと第二の制御パターンとを組合せて制御する定着装置23、及び該定着装置を備えた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセス等を利用した画像形成装置および、そのトナー像を記録紙上に定着させる定着装置のヒータ電力制御方法および、前記ヒータ電力制御方法を用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、電子写真、静電記録、磁気記録等の作像プロセスを用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置において、記録材またはOHPシートなどの記録媒体上の未定着トナー像を永久像とするため、熱で溶融して定着させる加熱定着装置が設けられている。
【0003】
上記画像形成装置では、定着加熱装置として、ハロゲンヒータを熱源とする熱ローラ式の熱定着装置や、セラミックヒータを熱源とするフィルム定着式の熱定着装置が用いられている(特許文献1〜4参照)。
【0004】
その他にIH定着方式、フラッシュ加熱方式、オーブン加熱方式等の多種の方式、構成のものが知られており実用化されている。
【0005】
中でも熱容量の極めて小さなフィルムを内部から加熱する前記フィルム定着方式の加熱定着装置は、エネルギー効率が高く、昇温速度が大きい。そのため、プリント時のみ加熱すればよく、電源オンから印字可能状態になるまでの時間が短く、プリント待機時の消費電力も大幅に小さいという利点を有する。
【0006】
一般に、ヒータはトライアック等のスイッチング素子を介して交流電源に接続されており、この交流電源により電力が供給される。定着加熱装置には温度検出素子、例えばサーミスタ感温素子が設けられている。前記温度検出素子により定着加熱装置の温度が検出され、その検出温度情報をもとに、エンジンコントローラがスイッチング素子をオン/オフ制御することにより、ヒータへの電力供給をオン/オフし、定着装置の温度が目標の一定温度に制御される。
【0007】
セラミックヒータへのオン/オフ制御は商用電源の位相制御(特許文献5、特許文献6参照)又は波数制御(特許文献7参照)又は位相制御と波数制御を組み合わせた方式(特許文献8参照)により行われる。
【0008】
前記ヒータはトライアック等のスイッチング制御素子を介して交流電源に接続されており、この交流電源により電力が供給される加熱定着装置には温度検出素子例えば、サーミスタ感温素子が設けられている。前記温度検出素子により定着器の温度が検出され、その検出温度情報をもとに、装置のエンジンコトンローラがスイッチング素子をオン/オフ制御することにより、ヒータへの電力供給をオン/オフし、加熱定着装置の温度が目標の温度に調整制御される。
【0009】
位相制御は、交流電源を1半波内の任意の位相角でヒータをオンすることでヒータに電力を供給する方式である。図13(a)に位相制御のテーブル例を示す。波数制御は、ヒータのオン/オフを交流電源の半波単位で行う電力制御方式である。位相制御と波数制御を組み合わせた制御は、複数半波を一制御周期とするうちの一部の半波を位相制御し、残りを波数制御する電力制御方式である。
【0010】
位相制御を選択する理由としては、照明機器のちらつき、いわゆるフリッカや定着加熱装置の温度リップルの抑制が挙げられる。フリッカとは、装置の負荷電流変動と、接続されているAC商用電源の内部インピーダンスや屋内配電網のインピーダンスの影響で、AC商用電源の交流電源電圧の急激な変動を引き起こし、同じAC商用電源に接続される照明機器がちらつく等の不具合現象をさす。
【0011】
位相制御は半波ごとに電流が流れるため、電流の変化量および変化周期が小さく、フリッカの発生を抑えることができる。また、半波ごとに電力を制御できるため、定着加熱装置の温度調整制御の応答性が速く、定着加熱装置の温度リップルを小さくできるメリットがある。その一方で、交流電源を1半波内の任意の位相角でヒータをオンするため、ヒータをオンする際に生じる急激な電流変動により高調波電流歪やスイッチングノイズが発生するデメリットがある。
【0012】
波数制御を選択する理由としては、高調波電流歪やスイッチングノイズの抑制が挙げられる。ヒータのオン/オフ制御を必ずゼロクロスポイントで行う波数制御は、交流電源の半波の途中でスイッチングする位相制御よりも発生しにくいからである。その一方で、位相制御と比較してより装置の負荷電流変動が大きく、交流電源の電圧変動が大きいため、フリッカが発生しやすいデメリットがある。
【0013】
位相制御と波数制御を組み合わせた制御を選択する理由としては、位相制御のみと比較して高調波電流歪やスイッチングノイズの抑制に有利であり、かつ、波数制御のみと比較してフリッカ抑制に有利であることがあげられる。高調波電流歪やスイッチングノイズは、使用するAC交流電源の電圧が高い方が、より大きく発生する傾向がある。したがって、画像形成装置が使用される地域のAC商用電源電圧に応じた制御方式を採用する必要がある。例えば、100〜120VのAC商用電源電圧の地域向けにはフリッカに有利な位相制御方式が、220V〜240VのAC商用電源電圧の地域向けには高調波電流歪やスイッチングノイズに有利な波数制御方式がヒータの制御に採用されている。しかし、近年の画像形成装置の高速化による定着加熱装置のヒータ電力増大に伴い、定着性能を満足した上で、位相制御のみでは高調波電流歪規制を満足することが困難であり、かつ、波数制御のみではフリッカ規制を満足できない場合が生じていた。その場合、位相制御と波数制御を組み合わせた制御は、高調波電流歪規制とフリッカ規制の両方を満足する方式として有効であった。
【0014】
図13(b)に位相制御と波数制御を組み合わせたヒータ電力制御のテーブル例をテーブル2として示す。ヒータへの供給電力比は、隣り合うテーブル1と同じ電力となるように記載してある。
【0015】
図13(b)の一例では、8半波(4全波)を一制御周期とし、そのうち6半波を波数制御、2半波を位相制御で制御する。テーブル2において、ヒータ供給電力比duty4/12(=33.3%)の場合を説明する。1波目と2波目の半波の電力dutyが33.3%になるように制御部がトランジスタにTcのタイミングでトランジスタにON信号を送信し位相制御を行う。そして、残り6半波のうち2半波を波数制御でオンし、その他4半波は全てオフとすることで、一制御周期において約33.3%の電力が供給される。
【0016】
このようにヒータ供給電力の0%から100%までの間を12分割したヒータ制御テーブルの13段階をあらかじめ定めておき、制御部は前記ヒータ電力制御テーブルを元にヒータ通電制御を行うことができる。波数制御に比べて位相制御を含むためフリッカが抑制され、且つ、位相制御に比べて波数制御を含むため高調波電流歪が抑制される特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開昭63−313182号公報
【特許文献2】特開平2−157878号公報
【特許文献3】特開平4−44075号公報
【特許文献4】特開平4−44076号公報
【特許文献5】特開平09−101718号公報
【特許文献6】特開平09−106215号公報
【特許文献7】特開2000−268939号公報
【特許文献8】特開2003−123941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
例えば近年の画像形成装置においては、フルカラー画像の形成がなされ、かつ、プリント速度の高速化、高画質化が重要になっている。さらには、省エネルギー化や、プリント開始してから1枚目の転写紙が出力される時間、すなわちファーストプリントアウトタイムの短縮等の付加価値がこれまで以上に市場から求められている。
【0019】
このような背景の中、プリントスピードの高速化やファーストプリントアウトタイム短縮化に伴い、従来のセラミックヒータを用いたフィルム定着式の定着装置も、そのヒータに要求される電力は増加する傾向にある。ヒータ電力が増加するということは、言い換えるとヒータの抵抗値が減少するということを意味する。ヒータの抵抗値減少は、ヒータ電力供給時における交流電源の電流増加を意味し、この電流増加は、更なる高調波歪とフリッカを生じさせる。
【0020】
また、さらなる高画質化を達成するために、定着加熱装置の温度リップルや温度ムラの低減も求められている。例えば、プリント速度の高速化に伴って、定着装置から転写紙に奪われる単位時間の熱量が増加することで、定着加熱装置の温度ムラが発生し、特に高い光沢を要求される画像の光沢ムラが顕著に現れやすくなる。これは、転写紙が定着器のニップ部へ搬送されると、定着器のフィルム(あるいはローラ)の熱は紙に奪われるため、フィルム1回転後のフィルム表面温度は特に低下する。このためこの温度低下部で定着された転写紙上の画像は、定着温度が不十分なため、画像の光沢ムラとして現れる。
【0021】
この定着装置の温度ムラに伴う画像の光沢ムラを低減するための対策として、紙が定着器のニップに到達する前に、あらかじめ紙に奪われる熱量に相当する電力を通常の画像形成時のターゲット電力へ重畳して印加する補正電力重畳制御を実施している。
【0022】
また、その他の対策として定着装置を構成するローラ等を蓄熱しやすい構成へ変更する方法もある。しかし、プリント開始から画像形成可能な所定の定着温度に達するまでの時間が長くかかるため、結果として、ファーストプリントアウトタイムが遅くなってしまうという問題がある。つまり、温度ムラの改善と、ファーストプリントアウトタイムの短縮がトレードオフの関係になっているため、両者のバランスを取った上で、定着装置を設計する必要がある。
【0023】
一方で、高調波電流歪に関しては更なる効率的なエネルギー利用のために規制が強化され、交流電源の基本波周波数の整数倍高調波電流歪のみならず、非整数倍高調波電流歪(次数間高調波)の抑制が求められている。このため、特に高速のフルカラーの画像形成装置においては、前述のようにヒータ抵抗値の減少により従来の位相制御のみのヒータ制御では高調波電流歪規格を満足させることが困難である。
【0024】
また、高調波電流歪規格を満たすため、高調波電流歪抑制に最も有利な波数制御のみのヒータ制御を用いた場合、ヒータのオン/オフを交流電源の半波単位で電力制御を行う際に温度リップルを生じると共に、フリッカの規制を満足することが困難となる。
【0025】
このため、特に高速のフルカラーの画像形成装置では、前述の位相制御と波数制御を組み合わせた制御を用いて、高調波電流歪規制とフリッカ規制の両方を満足させている。
【0026】
しかし、この位相制御と波数制御を組み合わせた制御の場合、定着ヒータへの投入電力の更新タイミングは、上述のように一制御周期ごとになる。このため、前述の補正電力の重畳する電力切換え制御を所定のタイミングで実施しようとした場合、最大で一制御周期分のタイムラグが発生するというデメリットがある。
【0027】
図14はこのタイムラグを模式的に表した説明図である。
【0028】
図では、通常の画像形成時のターゲット電力W1よりも高い電力W2へ、T1のタイミングで電力増加させ、その100msec後のT2のタイミングで、元の電力W1へ戻す電力制御例を示している。
【0029】
ここで、例えば、商用AC電源の周波数が50Hzの場合、1全波は20msecであるから、位相制御と波数制御を組み合わせた制御の一制御周期(4全波)では、80msecとなる。
【0030】
W2へ変更するタイミングT1とT1の直前に更新された一制御周期分の電力パターンの終わりのタイミングT0の整合はとれていない。そのため、図のように一制御周期分の電力パターン投入中に、タイミングT1で電力を切換えようとしても、つぎの電力更新タイミングT11での切換えとなってしまう。このため、所定のタイミングT1よりもt11遅れたタイミングT11でヒータへの投入電力が切り換わる。
【0031】
一方、タイミングT2でW2からW1の電力へ戻す制御をする場合においても、図のように一制御周期分の電力パターン投入中に、タイミングT2で電力を切換えようとしても、つぎの電力更新タイミングT22での切換えとなってしまう。このため、所定のタイミングT2よりもt22遅れたタイミングT22でヒータへの投入電力が切り換わる。この結果、W2への電力増加した期間は、制御上の100msecに対して実際は80msecと短くなってしまう。
【0032】
以上のように、実際に電力が切り換わるまでの間が最大約一制御周期分80msec遅延すると共に、電力の増加期間も短くなることから、定着装置の温度が不足する。その結果、所定の温度よりも低温で定着された画像は、光沢ムラが発生することがあった。
【0033】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、位相制御と波数制御を合わせた制御を用い、制御上の電力切換えタイミングと実際の電力切換えタイミングとの時間差を減らして温度ムラを抑制した定着加熱装置の制御技術を提供することを目的とする。また、その定着装置を備えることで、光沢ムラを軽減するとともに、フリッカと電源高調波歪の両方の規制を満足した画像形成装置の制御技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、上述の目的を達成するため、以下の構成を備えるものである。
【0035】
電子写真プロセスを用いて転写紙上にトナー像を形成する画像形成手段と、
加熱手段の熱により前記トナー像を加熱するとともに前記転写紙を加圧する定着装置と、
前記加熱手段に交流電源からの電力を供給あるいは遮断するスイッチ手段と、
前記交流電源のゼロクロスを検知するゼロクロス検出手段と、
前記ゼロクロスに基づいて前記スイッチ手段を前記交流電源の1半波のうち所定の位相角で通電制御する位相制御と、前記ゼロクロスに基づいて前記スイッチ手段を前記交流電源の1半波ごとに全通電あるいは非通電制御する波数制御を行い、
かつ、前記交流電源の連続する複数Nの半波を一制御周期として、そのうちの一部の半波に前記位相制御を行い、残りの半波に前記波数制御を行う供給電力に応じて設けられた第一の投入電力パターンを有し、前記加熱手段への供給電力を所定のタイミングで変更する制御手段とを有する画像形成装置において、
前記制御手段は、前記Nよりも少ない連続するM数の半波を一制御周期とした第二の投入電力パターンとを更に有し、
供給電力を変更する前記所定のタイミングと、前記第一の投入電力パターンあるいは前記第二の投入電力パターンの電力が変更されるタイミングとの時間差が少なくなるように、前記第一の投入電力パターンと前記第二の投入電力パターンとを組み合わせた組合せパターンを選択することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、位相制御と波数制御を組み合わせた制御を用いた定着装置において、定着温度制御上の電力切換えタイミングと実際の電力切換えタイミングとの時間差を極力減らすことで温度ムラを抑制した定着加熱装置を提供できる。また、その定着装置を備えることで、光沢ムラを軽減するとともに、フリッカと電源高調波歪の両方の規制を満足した画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例に関わる画像形成装置の略図
【図2】本発明の実施例に関わるスキャナユニットの説明図
【図3】本発明の実施例に関わる定着装置の略図
【図4】本発明の実施例に関わるセラミックヒータの略図
【図5】本発明の実施例に関わる定着駆動回路を示す説明図
【図6】本発明の実施例に関わる位相制御を示す説明図
【図7】本発明の実施例に関わる波数制御を示す説明図
【図8】本発明の実施例に関わる位相制御と波数制御とを組み合わせた制御を示す説明図
【図9】本発明第一の実施例に関わる定着制御のタイミングチャート
【図10】本発明第一の実施例に関わる定着制御のフローチャート
【図11】本発明第二の実施例に関わる定着制御のタイミングチャート
【図12】本発明第三の実施例に関わる定着制御のタイミングチャート
【図13】本発明の実施例に関わる制御テーブルの説明図
【図14】従来の定着制御のタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0039】
なお、以下では本発明の一実施形態として、カラーレーザビームプリンタを例にとって説明する。ただし、本発明はカラーレーザビームプリンタに限定されるものではなく、電子写真プロセスを使用した画像形成装置全般に適用することができる。
【0040】
また、従来の技術例で説明した部品と同じ部品は、説明を省略あるいは簡略化する。
【実施例1】
【0041】
はじめに、本発明が対象とする画像形成装置の一例である、タンデムタイプのカラーレーザビームプリンタ200の構成について説明する。
【0042】
図1は、タンデムタイプのカラーレーザビームプリンタ200の概略構成を示す図である。
【0043】
このカラーレーザビームプリンタ200は、黒(Bk),イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)の各色ごとに画像形成部を設けているいわゆるタンデムタイプのプリンタである。それぞれの画像形成部には、感光ドラム18、感光ドラム18を一様に帯電する一次帯電器16、感光ドラム18上にレーザビーム13を照射し潜像を形成するスキャナユニット11、潜像を現像して可視像とする現像器14(現像ローラ17)が備えられる。さらに、可視像を中間転写ベルト50に転写する一次転写ローラ19、転写可視像を中間転写ベルト50から転写紙に転写する二次転写ローラ42、感光体の残留トナーを除去するクリーニング装置15等も備えられている。なお、図1では、各色用の画像形成部を構成する同機能の構成要素を区別するため、上記符号の添字としてそれぞれa,b,c,dを付けている。
【0044】
ここでスキャナユニット11の詳細な構成について説明する。図2は、スキャナユニット11の構成を示す図である。
【0045】
パーソナルコンピュータ等の外部機器からの画像形成指示があると、カラーレーザビームプリンタ200内の制御回路において、画像情報が露光手段であるレーザビームをオン/オフするための画像信号(VDO信号)101に変換される。この画像信号(VDO信号)101は、スキャナユニット11内のレーザユニット102に入力される。103は、レーザユニット102によりオン/オフ変調されたレーザビームである。104は、回転多面鏡(ポリゴンミラー)105を定常回転させるスキャナモータである。106は、ポリゴンミラー105によって変更されたレーザビーム107を被走査面である感光ドラム18上に焦点を結ばせる結像レンズである。
【0046】
この構成により、画像信号101により変調されたレーザビーム107が感光ドラム108上を水平走査(主走査方向への走査)し、感光ドラム108上に潜像が形成される。
【0047】
109はビーム検出口で、スリット状の入射口よりビームを取り入れる。この入射口より入ったレーザビームは、光ファイバ110内を通って光電変換素子111に導かれる。光電変換素子111により電気信号に変換されたレーザビームは、増幅回路(図示しない)により増幅された後、水平同期信号となる。
【0048】
説明を図1に戻す。カセット22から給紙される記録媒体としての転写紙は、画像形成部とタイミングをとるために、レジストローラ21で待機する。レジストローラ21の近傍には、給紙された転写紙の先端を検知するためのレジセンサ24が設けてある。画像形成部を制御する画像形成装置制御手段(不図示:以下、「制御手段」と称す)はレジセンサ24の検出結果により、紙の先端がレジストローラ21に到達したタイミングを検知する。そして、1色目(図の例ではイエロー色)の像を、像担持体である感光ドラム18a上に形成するとともに、定着器23のヒータ(加熱ヒータ)の温度が所定の温度になるよう制御する。
【0049】
50は各色画像形成部を貫通するように配置された中間転写ベルト50である。中間転写ベルト50は感光ドラム18の回転と共に回転駆動されており、一次転写ローラ19に一次転写バイアスとして高圧電圧が印加されると、中間転写ベルト50の基準位置をもとに、形成された1色目のトナー画像が順次中間転写ベルト50上に転写される。
【0050】
同様に、2色目(図の例ではマゼンタ)の像は、1色目の画像先端と2色目の像形成プロセスとのタイミングをとって、中間転写ベルト50上に形成された1色目の像の上に重畳転写される。以降同様に、3色目(図の例ではシアン)の像,4色目(図の例では黒色)の像が、各像形成プロセスとのタイミングを取って、中間転写ベルト50上に順次重畳転写される。
【0051】
42は中間転写ベルト50上に形成されたトナー像を転写紙に二次転写するための二次転写ローラであり、像形成時には中間転写ベルト50と離間した位置に退避している。
【0052】
転写材である転写紙は、カセット22から給紙され、画像形成部とタイミングをとるために、レジストローラ21で待機する。また、レジストローラ21の近傍には、給紙された転写紙の先端を検知するためのレジセンサ24が設けられている。制御回路はレジセンサ24の検出した紙の先端位置と紙搬送方向(副走査方向)の像形成の先端位置とのタイミングをとって、レジストローラ21で待機した転写紙を再搬送させる。この時、二次転写ローラ42は中間転写ベルト50に当接し、二次転写ローラ42に二次転写バイアスとして高圧電圧が印加されると、中間転写ベルト50上の4色のトナー像が転写紙上に一括転写される。
【0053】
4色のトナー像を転写された転写紙は、ヒータを内蔵した定着器23のニップ部を通過することにより、トナーが加圧、加熱されて転写紙に溶融定着される。転写紙の定着器23前後の搬送状況は、定着前センサ37および、定着排紙センサ38によって監視され、定着器23を通過した転写紙は機外に排紙されフルカラーの画像形成が終了する。
【0054】
次に定着器23として、ヒータにセラミックを用いたセラミックヒータを熱源とするフィルム定着装置について説明する。図3はヒータをセラミックヒータ640として適用した定着装置を示す概略構成図である。
【0055】
610はステーであり、このステー610はセラミックヒータ640を露呈させて支持した横断面U字状の本体部611と該本体部を対向する加圧ローラ620側へ加圧する加圧部613とで構成されている。ここで、セラミックヒータは、発熱体が後述のニップ部と反対側であっても、ニップ部側であっても構わない。614はステー610に外嵌させてある横断面円形の耐熱性フィルム(以下、「フイルム」と略称する)である。
【0056】
上記加圧ローラ620は、セラミックヒータ640との間にフィルム614を挟んで圧接ニップ部(定着ニップ部)Nを形成し、且つフィルム614を回転駆動させるフィルム外面接触駆動手段として作用する。このフィルム駆動ローラ兼加圧ローラ620は芯金620aとシリコンゴム等よりなる弾性体層620bと最外層の離形層620cよりなる。そして、不図示の軸受け手段・付勢手段により所定の押圧力をもってフィルム614を挟んでセラミックヒータ640の表面に圧接させて配設してある。この加圧ローラ620はモータMによる回転駆動により、この加圧ローラ620とフィルム614の外面との摩擦力で該フィルムに搬送力を付与する。
【0057】
次に、セラミックヒータと温度検出素子605と過昇温防止手段602の位置関係の概略について図4に示す。図4(a)はセラミックヒータの断面図であり、図4(b)は発熱体601が形成されている面を示している。
【0058】
セラミックヒータはSiC、AlN、Al等のセラミックス系の絶縁基板607と絶縁基板面上にペースト印刷等で形成されている発熱体601(通電発熱抵抗層)と、発熱体を保護しているガラス等の保護層606から構成されている。保護層上には、セラミックヒータの温度を検出するサーミスタ等の温度検出素子605および過昇温を防止する手段としての過昇温防止手段602が配置されている。過昇温防止手段602は、例えば温度ヒューズやサーモスイッチである。
【0059】
発熱体601は、電力が供給されると発熱する部分と、該発熱部分に接続した導電部603と、コネクタを介して電力が供給される電極604とから構成され、発熱体601は通紙可能な最大の記録紙幅LFとほぼ同じ長さである。2つの電極604のうち1つへは、交流電源のHOT側端子が過昇温防止手段602を介して接続されている。電極部は発熱体を制御するトライアックに接続され、交流電源のNEUTRAL端子に接続される。
【0060】
図5に、本発明におけるセラミックヒータの駆動および制御回路を示す。621は本画像形成装置を接続する交流電源で、本画像形成装置は商用電源をACフィルタ(図示せず)を介してセラミックヒータ640の発熱体601へ供給することによりセラミックヒータの発熱体601を発熱させる。
【0061】
この発熱体601への電力供給は、トライアック639によって通電・遮断が制御される。抵抗631,632はトライアック639のためのバイアス抵抗であり、フォトトライアックカプラ633は一次、二次間を隔離するためのデバイスである。フォトトライアックカプラ633の発光ダイオードに通電することにより、トライアック639をオンする。抵抗634はフォトトライアックの電流を制限するための抵抗であり、トランジスタ635によりオン/オフする。トランジスタ635は抵抗636を介してエンジン制御回路316からのON信号にしたがって動作する。
【0062】
また、交流電源は、ACフィルタを介してゼロクロス検出回路618に入力される。ゼロクロス検出回路618では、商用AC電源があるしきい値以下の電圧になっていることをエンジン制御回路316に対してパルス信号として報知する。以下エンジン制御回路316に送信されるこの信号を「ゼロクロス信号」と呼ぶ。エンジン制御回路316はゼロクロス信号のパルスのエッジを検知し、トライアック639をオン/オフするためのタイミング信号として用いる。
【0063】
また、605は発熱体601が形成されているセラミックヒータ温度を検知する温度検出素子、例えば、サーミスタ感温素子であり、セラミックヒータ640上に発熱体601に対して絶縁距離を確保するため絶縁耐圧を有する絶縁物を介して配置されている。この温度検出素子605によって検出される温度は、抵抗637と温度検出素子605との分圧として検出され、エンジン制御回路316にTH信号として制御回路内のCPUのA/Dポートへ入力される。セラミックヒータ640の温度は、TH信号としてエンジン制御回路316において監視され、エンジン制御回路316は所定のセラミックヒータの設定温度と比較することによって、セラミックヒータを構成する発熱体601に供給するべき電力を算出する。後述の位相制御によりヒータの電力制御を行う場合には、その供給する電力に対応して、ゼロクロス信号のエッジからヒータオン信号を送信すべき時間に換算する。すなわち、交流電圧の位相角のうちヒータをオンすべき位相角を決定する。この設定時間に基いて、エンジン制御回路316はゼロクロス信号と同期をとって、トランジスタ635にヒータ駆動信号を送信し、所定のタイミングでヒータ640へ通電する。以上のように温度検出素子605よる温度情報をもとに、エンジン制御回路316はヒータ640への電力供給をオン/オフし、加熱定着装置の温度が目標の温度(設定温度範囲内)になるよう制御される。
【0064】
万一、エンジン制御回路316等の故障により、発熱体が熱暴走に至り過昇温防止手段602が所定の温度以上になると、過昇温防止手段602がオープンとなる。過昇温防止手段602のオープンにより、セラミックヒータ640への通電経路が遮断され、発熱体601への通電が断たれ故障時の保護がなされている。
【0065】
625は定着器23のセラミックヒータ640へ流れる電流検出するための、カレントトランスを用いた電流検出手段である。セラミックヒータ640へ流れる電流は、カレントトランス625により電圧変換される。整流回路626にて正の電圧に整流された後、平均電流演算回路627にてセラミックヒータ640へ流れる電流の平均値に対応したアナログ信号としてエンジン制御回路316内にあるCPU(図示しない)のA/Dポートに送信される。制御回路316は常時電流をモニタし、検出された平均電流より所定の最大実効電流を超えないような位相角を演算により決定し、セラミックヒータ640への最大電力の制御を行っている。
【0066】
次に、定着装置のヒータへ供給される電力の制御方法について説明する。
【0067】
図6に位相制御によるヒータ電力制御の例を示す。ゼロクロス信号(10−b)は交流電源電圧波形(10−a)の正から負、負から正に切り替わるポイントで論理が切り替わる。ゼロクロス信号は、商用電源周波数(50Hz)の周期T(=1/50sec)で、繰り返しパルスをエンジン制御回路316へ送信しており、パルスのエッジが商用電源の電圧波形が位相角0°,180°で0V(ゼロクロス)となるタイミングを示している。エンジン制御回路316が、その立ち上がりおよび立ち下がりエッジからTa時間後にヒータ駆動信号(10−c)をオンすると、トライアック639がオンしてヒータ電流(10−d)の斜線で示した部分でヒータ640が通電し電力が供給される。なお、ヒータをオンした後、次のゼロクロスポイントでトライアック639がオフすることでヒータへの通電はオフされるため、再びゼロクロス信号のエッジから時間Ta後にヒータ駆動信号をオンすることにより、次の半波でもヒータに同じ電力が供給される。
【0068】
また時間Taと異なる時間Tb後にヒータ駆動信号をオンするとヒータへの通電時間が変わるため、ヒータへの供給電力を変化させることができる。このように、半波ごとにゼロクロス信号のエッジからヒータ駆動信号をオンする時間を変化させることでヒータへの供給電力を制御することができる。ヒータへの電力供給を増加させる場合には、ゼロクロス信号のエッジからヒータ駆動信号を送信するタイミングを早め、逆に電力供給を低減させる場合には、ゼロクロス信号のエッジからヒータ駆動信信号を送信するタイミングを遅くする。この制御を1周期あるいは必要に応じて複数周期ごとに行うことでセラミックヒータ640の温度をコントロールしている。
【0069】
位相制御は図6のように交流電源波形の半波の途中でヒータへの通電をオンするためヒータに流れる電流が急激に立ち上がり、高調波電流が流れる。ヒータ640に流れる電流波形は、図の例では1周期において正負対称の電流波形を示す。このヒータ電流の高調波電流成分は、一般に電流の立ち上がり量が大きいほど多くなるので、位相角90°、すなわち供給電力50%の時に最大になる高調波電流の次数が多い。また、この電流の立ち上がりエッジが毎半波ごとに発生するため多くの高調波電流が流れ、高調波規制への対応が必須となる。そのためフィルタ等の回路部品が必要になる場合が多い。一方、1半波より小さい電流が毎半波ごとに流れるため、電流の変化量は小さく、さらに変化周期も早いためフリッカへの影響は小さいというメリットもある。
【0070】
図7に波数制御によるヒータ電力制御テーブルのパターン例を示す。波数制御では交流電源の半波単位でオン/オフ制御(全通電/非通電制御)を行うので、オンする時はゼロクロス信号のエッジとともにヒータ駆動信号をオンする。そして例えば8半波を制御の1周期とし、一制御周期の中でオンする半波の数を変えていくことで、ヒータへの供給電力を制御している。図7は8半波のうち4半波をオンしているため、ヒータへの供給電力は50%となる。このようにヒータ供給電力の0%から100%までの間を12分割したヒータ制御パターンをあらかじめ定めておき、制御回路316は前記ヒータ制御パターンを元にヒータ電力制御を行うことができる。なおここではオンする場合は連続する2半波をオンすることとする。波数制御ではヒータのオン/オフが常にゼロクロスで行われるため位相制御のような電流の急激な立ち上がりエッジがなく高調波電流は非常に少ない。一方、電流は半波単位で流れるため、電流の変化量は大きく、変化周期も長いためフリッカへの影響が大きい。そこで、一制御周期内でオンする半波の位置(制御パターン)を工夫することで電流の変動周期のフリッカへの影響をできるだけ少なくなるようにしている。
【0071】
図8に位相制御と波数制御を組み合わせたヒータ電力制御のパターン例を示す。図12の一例では、8半波(複数N、Nは偶数)を一制御周期とし、そのうち一部の6半波を波数制御、2半波を位相制御で制御し、ヒータ供給電力比duty4/12(=33.3%)の場合を示す。1波目と2波目の半波の電力dutyが33.3%になるように制御回路316がトランジスタ635にTcのタイミングでトランジスタ635にON信号を送信し位相制御を行い、残り6半波のうち2半波を波数制御でオンし、その他4半波は全てオフとする。その結果、一制御周期において約33.3%の電力が供給される。このようにヒータ供給電力の0%から100%までの間を12分割したヒータ制御テーブルを図13のようにあらかじめ定めておき、エンジン制御回路316は前記ヒータ電力制御パターンを元にヒータ通電制御を行うことができる。波数制御に比べて位相制御を含むためフリッカが抑制され、且つ、位相制御に比べて波数制御を含むため高調波電流歪が抑制される特徴がある。
【0072】
上記位相制御と波数制御を組み合わせたヒータ電力制御を用いて、定着温度制御上の電力切換えタイミングと実際の電力切換えタイミングとの時間差を極力減らす実施例について図9,10を用いて説明する。
【0073】
図9は第一の実施例のタイミングチャート、図10は第一の実施例のフローチャートである。
【0074】
本実施例では、エンジン制御回路316内の記録部には2種類(テーブル1:位相制御、テーブル2:位相制御と波数制御を組み合わせた制御)のヒータ電力制御テーブルを記録してあり、エンジン制御回路316がそれぞれのヒータ電力制御テーブルを切り替える。テーブル1は第二の投入電力パターンを示し、テーブル2は第一の投入電力パターンを示すものとする。テーブル1は、一般に電源高調波歪には不利であるもののフリッカに対しては有利な位相制御パターンである。エンジン制御回路316はヒータへの供給設定電力を、商用AC電源周期の1周期(1全波)ごとに、ヒータへ通電開始する位相角を調整することで電力制御する。テーブル2は、電源高調波歪抑制とフリッカ抑制の両方に対して効果がある位相制御と波数制御を組み合わせたヒータ電力制御パターンである。4全波を一制御周期する位相制御と波数制御を組み合わせたパターンとし、温度検出素子605によるヒータ640の温度により、定着加熱装置の温度制御がなされ、エンジン制御部は1周期(4全波)毎に最適なヒータ電力制御パターンをテーブル2から選択する。
【0075】
制御回路はゼロクロス信号の繰返し周期より、商用AC電源の周期TAをあらかじめ算出しておく(S700)。例えば、商用AC電源の周波数が50Hzの場合には、その1周期TAは20msecとなる。またこの時の、テーブル1の一制御周期(2半波、M数)は20msec、テーブル2の一制御周期(4全波)は80msecと求められる(S701)。
【0076】
カラーレーザビームプリンタ200が画像形成を実行するため、エンジン制御回路316は定着加熱装置の温度の立ち上げ、前回転を行うヒータ電力制御パターンをテーブル2から選択する(S702)。
【0077】
画像形成動作が開始され、中間転写ベルト50上の4色のトナー像を二次転写により写し取った転写紙が搬送され、その転写紙の先端が上流側の定着前センサまで到達すると、センサからの信号によりエンジン制御回路は紙先端位置を検出する(S703)。また、その定着前センサ(搬送センサ)の先端搬送位置の検出タイミングにより、転写紙が定着ニップ部Nに到達する時間T2を算出する(S704)。
【0078】
紙の定着ニップ部Nに到達するタイミングT2から所定時間前(ここでは100msec)のタイミングT1を算出し(S705)、T1とT2のタイミング間で、制御回路は、定着電力を通常の画像形成時(定着時)に必要な電力W1より高い電力W2を設定する。なお、ここでは説明の都合上、ヒータへの供給電力を設定値W1からW2へ直接変更する例を説明するものの、実際には電力そのものではなく、電力増加に相当するようにセラミックヒータの設定温度値を上げる方が現実的である。設定温度値を上げる場合も、結果としてヒータへの供給電力を上げることができる。
【0079】
この電力W2を設定する理由は、さらなる高画質化を達成するために、定着加熱装置の温度ムラを低減させるためである。例えば、プリント速度高速化に伴って、定着装置から転写紙に奪われる単位時間の熱量が増加することで、定着加熱装置の温度ムラが発生し、特に高い光沢を要求される画像への光沢ムラが顕著に現れやすくなってきている。これは、転写紙が定着器のニップ部へ搬送されると、定着器のフィルム(あるいはローラ)の熱が紙に奪われるため、フィルム1回転後のフィルム表面温度は特に低下する。このためこの温度低下部で定着された転写紙上の画像は、定着温度が不十分なため、画像の光沢ムラとして現れる。この定着装置の温度ムラに伴う画像の光沢ムラを低減するための対策として、紙が定着器のニップに到達する前に、あらかじめ紙に奪われる熱量を想定した電力を通常の画像形成時のターゲット電力へ重畳して電力を印加する補正電力重畳制御を実施している。
【0080】
エンジン制御回路316は、電力をW2へ増加させるタイミングT1を算出すると共に、タイミングT1の直前に更新される一制御周期分の電力パターンの終わりのタイミングT0を定着電力の更新周期から予測する(S706)。
【0081】
本実施形態では、この電力増加タイミングT1とその直前の一制御周期分の電力パターンの終わりのタイミングT0との差に応じて、電力切換え時のテーブル1とテーブル2を組み合わせて使用することを説明する。
【0082】
図9に示した電力パターンのうち、正方形で示されているのは位相制御(テーブル1)の一制御周期であり、長方形で示されているのは、位相制御と波数制御を組み合わせた制御(テーブル2)の一制御周期である。つまり、これらは前記図13に示した制御テーブルを模式的に表したものである。また、それぞれの正方形と長方形の中に示されたW1,W2の記号は、供給電力を示しており、同一記号は同じ投入電力であることを示している。つまり、正方形内のW1と長方形内のW1が同一であれば、テーブルはそれぞれテーブル1とテーブル2とで異なるものの、供給電力(ヒータへの供給電力比)は同じであることを示している。
【0083】
エンジン制御回路316は、T1−T0を演算し、その結果と商用AC電源の周期TAとの関係に応じて、次のようにそれぞれ図9に示す電力パターンを選択する(S707)。
0≦T1−T0<0.5×TA :電力パターン11
0.5×TA≦T1−T0<1.5×TA :電力パターン12
1.5×TA≦T1−T0<2.5×TA :電力パターン13
2.5×TA≦T1−T0<3.5×TA :電力パターン14
3.5×TA≦T1−T0<4.0×TA :電力パターン15
例えば、演算の結果、電力パターン12が選択された場合、切換えタイミングT1の直前に更新されるテーブル2の一制御周期分の電力パターンの終わりのタイミングはT02であり、その制御周期(80msec)の終了後に電力テーブルを2から1へ切換える。電力テーブル1でW1の電力設定として、1周期分(1全波)の位相制御を行うことで、タイミングT1でW2の電力へ切換える際のズレt11’を最小限(20msec以内)にすることができる。このとき実際に電力がW2へ切り換わるタイミングは、t11’を加味したT11’のタイミングとなる。
【0084】
電力W2へ設定する期間は、この例では100msecであるから、テーブル1の一制御周期(20msec)とテーブル2の一制御周期(80msec)を組み合わせることで制御する。テーブル2のみでW2の電力設定制御をしようとすると、その一制御周期は80msecのため、この整数倍の80msec,160msec,240msec等でしか設定することができない。テーブル1を組み合わせることで、電力設定期間が必ずしもテーブル2の制御周期の整数倍でなくても制御が可能となる。すなわち、T11’のタイミングでテーブル2でW2の電力を設定した後に、テーブルを2から1へ切換えて、テーブル1でW2の電力に設定する。ここでの、電力W2の設定の際は、2つのテーブルを使用する順番を逆にして、テーブル1を先に使用した後、テーブル2に切換えても構わない。また、W2の電力設定期間が、例えば120msec必要な場合には、さらに1周期分の位相制御を追加で行うことで実現可能である。
【0085】
一方、タイミングT2でW2からW1の電力へ戻す制御をする場合においては、t11’のズレがほぼそのままt22’のズレとして残っているため、T2よりもt22’遅れたタイミングT22’でヒータへの投入電力が切り換わる。このように、従来よりも電力切換えタイミングのズレを補正することができ、必要な電力を必要なタイミングで定着器へ供給することができる。
【0086】
なお、本実施形態で追加したテーブル1による位相制御の使用継続時間はここでは約100msec程度と短時間であり、高調波歪の規格で認められている測定器のフィルタ時定数に比較して十分小さい。そのため、本実施形態のような制御を実施しても、高調波歪の測定結果を著しく悪化させることはないため問題にはならない。また、フリッカについても、フリッカに有利な位相制御を電力切換え時に追加する制御であるため、問題ない。
【0087】
なお、転写紙が定着加熱装置へ達する前に、ヒータへの電力を所定時間の間増加させる電力制御の例を説明しが、このような電力制御に限るものではなく、画像形成シーケンスの中で所定のタイミングで電力を増加または減少させる制御を行う場合にも有効である。また、所定時間電力を増加させるのではなく、定着加熱装置の温度調節制御を行うためのターゲット温度の値を増加させる場合においても有効であることは言うまでもない。
【0088】
また、ここではエンジン制御回路316の記録部に保存してあるヒータ電力制御テーブルが2種類の場合について本実施例を説明しているものの、これも一例にすぎず、3種類以上の複数テーブルを記録部に保存してあれば応用が可能である。例えば、商用AC電源電圧が高い電圧(例えば220V〜240V)の場合、フリッカ規格に対して比較的マージンがある場合多いため、入力電圧に応じて最適な、位相制御と波数制御を組み合わせた制御テーブルを設けておいてもよい。また位相制御においては、テーブルではなく、ヒータへの供給電力とヒータへの通電を行う商用AC電源の位相角との関係式により、ヒータへの通電タイミングを算出しても良い。
【0089】
更に、エンジン制御回路316が紙有りの検知結果から算出する定着ニップ部Nまでの到達時間T2は、定着前センサと定着ニップ部までの搬送距離を搬送スピードで除算し、制御部のチャタ取りを含めた定着前センサの出力遅延時間を減算して求めることができる。事前に画像形成装置で設定可能ないくつかの搬送スピードに対応した到達時間を制御部の記録部に予め記録しておいても良い。また、転写紙搬送路上のレジセンサ24、定着前センサ37、定着排紙センサ38等を用いて、画像形成装置の環境変化等による微小な速度変動も含めた速度を計算あるいは補間計算をするのも良い。
【0090】
以上これらの補足説明は、後述の第二および第三の実施例においても同様に言えることである。
【0091】
以上のように、本発明によれば、ヒータへの電力供給制御として、位相制御と波数制御を組み合わせた制御を用いた定着装置において、定着温度制御上の電力切換えタイミングと実際の電力切換えタイミングとの時間差を極力減らすことができる。また、電力の切換え期間が必ずしもその制御周期の整数倍でなくても制御が可能となる。このため、これまでよりも最適なタイミングで定着電力切換え制御を行うことができ、温度ムラを抑制した定着加熱装置を提供することができる。また、その定着装置を備えることで、光沢ムラを軽減するとともに、フリッカと電源高調波歪の両方の規制を満足した画像形成装置を提供することができる。
【実施例2】
【0092】
本実施形態における定着電力切換え制御では、電力増加期間にテーブル1のみを使用することを特徴としている。図11は第二の実施例のタイミングチャートである。
【0093】
ここでは図11を参照して第2の実施例の定着電力切換え制御を説明する。第1の実施例で説明した部品と同じ部品は、説明を省略あるいは簡略化すると共に、第1の実施例で説明に使用した同一符号を使用して現している。
【0094】
実施例1と同様に、エンジン制御回路316は、T1−T0を演算し、その結果に応じて、次のようにそれぞれ図11に示す電力パターンを選択する。
0≦T1−T0<0.5×TA :電力パターン21
0.5×TA≦T1−T0<1.5×TA :電力パターン22
1.5×TA≦T1−T0<2.5×TA :電力パターン23
2.5×TA≦T1−T0<3.5×TA :電力パターン24
3.5×TA≦T1−T0<4.0×TA :電力パターン25
例えば、演算の結果電力パターン22が選択された場合、切換えタイミングT1の直前に更新されるテーブル2の一制御周期分の電力パターンの終わりのタイミングはT02であり、その制御周期(80msec)の終了後に、電力テーブルを2から1へ切換える。電力テーブル1でW1の電力設定として、1周期分(1全波)の位相制御を行うことで、タイミングT1でW2の電力へ切換える際のズレt11’を最小限(20msec以内)にすることができる。このとき実際に電力がW2へ切り換わるタイミングは、t11’を加味したT11’のタイミングとなる。
【0095】
電力W2へ設定する期間は、この例では100msecであるから、テーブル1の5制御周期(100msec)のみで制御する。テーブル1の一制御周期は20msecのため、この整数倍の20msec,40msec,60msec等であれば、設定することができる。テーブル1を用いることで、電力設定期間が必ずしもテーブル2の制御周期の整数倍でなくても制御が可能となる。また、W2の電力設定期間が、例えば120msec必要な場合には、さらに1周期分の位相制御を追加で行うことで実現可能である。
一方、タイミングT2でW2からW1の電力へ戻す制御をする場合においては、t11’のズレがほぼそのままt22’のズレとして残っているため、T2よりもt22’遅れたタイミングT22’でヒータへの投入電力が切り換わる。このように、従来よりも電力切換えタイミングのズレを補正することができ、必要な電力を必要なタイミングで定着器へ供給することができる。
【0096】
なお、本実施形態で追加したテーブル1による位相制御の使用継続時間は、電力パターン25の場合であっても、約200msec程度と短時間であり、高調波歪の規格で認められている測定器のフィルタ時定数に比較して十分小さい。そのため、本実施形態のような制御を実施しても、高調波歪の測定結果については問題にはならない。また、フリッカについても、フリッカに有利な位相制御を電力切換え時に追加する制御であるため問題ない。
【0097】
以上のような制御とすることで、第1の実施例と同様に、これまでよりも最適なタイミングで定着電力切換え制御を行うことができ、温度ムラを抑制した定着加熱装置を提供することができる。また、その定着装置を備えることで、画像品質の低下を軽減するとともに、フリッカと電源高調波歪の両方の規制を満足した画像形成装置を提供することができる。
【実施例3】
【0098】
本実施形態における定着電力切換え制御では、電力切換え時のテーブル1とテーブル2を組み合わせて使用するタイミングが異なることを特徴としている。図12は第三の実施例のタイミングチャートである。
【0099】
ここでは図12を参照して第3の実施例の定着電力切換え制御を説明する。第1の実施例で説明した部品と同じ部品は、説明を省略あるいは簡略化すると共に、第1の実施例で説明に使用した同一符号を使用して現している。
【0100】
エンジン制御回路316は、電力をW2へ増加させるタイミングT1を算出すると共に、タイミングT1の直前に更新される2制御周期分前の電力パターンの終わりのタイミングT0’を定着電力の更新周期から予測する。
【0101】
本実施形態では、この電力増加タイミングT1とその2制御周期分前の電力パターンの終わりのタイミングT0’の差に応じて、電力切換え時のテーブル1とテーブル2を組み合わせて使用することを説明する。
制御回路316は、T1−T0を演算し、その結果に応じて、次のようにそれぞれ図4に示す電力パターンを選択する。
4.0≦T1−T0<4.5×TA :電力パターン31
4.5×TA≦T1−T0<5.5×TA :電力パターン32
5.5×TA≦T1−T0<6.5×TA :電力パターン33
6.5×TA≦T1−T0<7.5×TA :電力パターン34
7.5×TA≦T1−T0<8.0×TA :電力パターン35
例えば、演算結果、電力パターン32が選択された場合、切換えタイミングT1の2制御周期分前に更新されるテーブル2の一制御周期の終わりのタイミングはT02’であるから、その制御周期(80msec)の終了後に、電力テーブルを2から1へ切換える。電力テーブル1でW1の電力設定として、1周期分(1全波)の位相制御を行うことで、タイミングT1でW2の電力へ切換える際のズレt11’を最小限(20msec以内)に吸収する。その後、再度テーブルを2に戻して、テーブル2でW1の電力設定として、1周期分(4全波)の位相制御と波数制御の組合せた制御を行う。このとき実際に電力がW2へ切り換わるタイミングは、t11’を加味したT11’のタイミングとなる。
【0102】
以下、第2の実施例と同様に、電力W2へ設定する期間は、この例では100msecであるから、テーブル1の5制御周期(100msec)のみで制御する。実施例2において、万一高調波歪の規格に対するマージンが少なくなる場合には、本実施例が有効となる可能性がある。
【0103】
以上のような制御とすることで、第一の実施例と同様に、これまでよりも最適なタイミングで定着電力切換え制御を行うことができ、温度ムラを抑制した定着加熱装置を提供することができる。また、その定着装置を備えることで、画像品質の低下を軽減するとともに、フリッカと電源高調波歪の両方の規制を満足した画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0104】
13 レーザ光
18 感光ドラム
11 スキャナユニット(画像形成手段に対応)
14 現像器
19 一次転写ローラ
22 給紙カセット
23 定着器ユニット(定着装置に対応)
24 レジセンサ
37 定着前センサ
38 定着排紙センサ
42 二次転写ローラ
50 中間転写ベルト
102 レーザユニット
316 エンジン制御回路(制御手段に対応)
601 発熱体
602 温度ヒューズ
605 サーミスタ
610 ステー
614 耐熱性フィルム
618 ゼロクロス検出回路(ゼロクロス検出手段に対応)
620 加圧ローラ
625 カレントトランス
639 トライアック(スイッチ手段に対応)
640 セラミックヒータ(加熱手段に対応)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真プロセスを用いて転写紙上にトナー像を形成する画像形成手段と、
加熱手段の熱により前記トナー像を加熱するとともに前記転写紙を加圧する定着装置と、
前記加熱手段に交流電源からの電力を供給あるいは遮断するスイッチ手段と、
前記交流電源のゼロクロスを検知するゼロクロス検出手段と、
前記ゼロクロスに基づいて前記スイッチ手段を前記交流電源の1半波のうち所定の位相角で通電制御する位相制御と、前記ゼロクロスに基づいて前記スイッチ手段を前記交流電源の1半波ごとに全通電あるいは非通電制御する波数制御を行い、
かつ、前記交流電源の連続する複数Nの半波を一制御周期として、そのうちの一部の半波に前記位相制御を行い、残りの半波に前記波数制御を行う供給電力に応じて設けられた第一の投入電力パターンを有し、前記加熱手段への供給電力を所定のタイミングで変更する制御手段とを有する画像形成装置において、
前記制御手段は、前記Nよりも少ない連続するM数の半波を一制御周期とした第二の投入電力パターンとを更に有し、
供給電力を変更する前記所定のタイミングと、前記第一の投入電力パターンあるいは前記第二の投入電力パターンの電力が変更されるタイミングとの時間差が少なくなるように、前記第一の投入電力パターンと前記第二の投入電力パターンとを組み合わせた組合せパターンを選択することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第二の投入電力パターンとは、その全ての半波において位相制御あるいは波数制御を行う投入電力パターンであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第二の投入電力パターンとは、そのうちの一部の半波に位相制御を行い、残りの半波に波数制御を行う投入電力パターンであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記定着装置よりも転写紙の搬送方向の上流側に配置されて該転写紙の先端搬送位置を検知する搬送センサとを更に有し、
前記制御手段は、前記搬送センサの検出結果から前記所定のタイミングを算出するとともに、
転写紙の先端が前記定着装置へ到達する前に、前記所定のタイミングから所定時間、前記定着装置への供給電力を転写紙の定着時よりも増加させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記所定時間の間は前記第二の投入電力パターンのみを使用して電力制御することを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記加熱手段の温度を検出するために設けられた温度検出手段の検出結果をもとに前記加熱手段の温度を設定温度範囲内に制御するとともに、前記設定温度を変更することにより前記加熱手段への供給電力を変更することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記NおよびMは正の偶数であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記加熱手段は、通電により発熱する通電発熱抵抗層を有する加熱ヒータであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−286649(P2010−286649A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140246(P2009−140246)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】