説明

画像形成装置

【課題】感光体周辺の各ステーションが密集配置してもポリゴンモータの回転軸を傾ける必要がなく、かつ、感光体および現像部を効果的に放熱できるように各ステーションを配置する。
【解決手段】円筒状の感光体211と、レーザービームLBをポリゴンミラー201dに反射させた後、感光体の周面に照射して静電潜像を形成するレーザー走査部201と、静電潜像をトナーを用いて現像を行う現像部212と、現像部へ供給するトナーを収容するトナー収容部216とを備え、現像部は、感光体の中心軸より下方で周面と接するように配置され、トナー収容部は現像部との間に空隙が形成されるように現像部の上方に配置され、レーザー走査部は、ポリゴンミラーの回転軸VV’が鉛直方向を向くように配置され、かつ、ポリゴンミラーで反射されたビームが空隙を介して感光体に達し、感光体の中心軸より上方の位置で、周面を照射するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置に関し、より詳細には画像形成装置における電子写真プロセス用の感光体、現像部、トナー収容部およびレーザー走査部の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、装置の小型化のために電子写真プロセス用の感光体ドラムの小径化が進んでいる。中低速機では直径が30mm程度の感光体ドラムが一般的になりつつある。低コスト化の要請、省資源化の要請等がその背景にあり、また、感光体材料の特性および電子写真プロセス技術の技術的進歩がそれを可能にしている。そして、装置の小型化のため、印刷シートを縦方向に搬送するレイアウトが採用されている(例えば、特許文献1参照)。
また、画像形成装置の高機能化も進んでおり、中低速機であっても自動両面印刷機能への対応は当然のようになされている。省資源化の要請がその背景にある。
【0003】
一方、前記感光体ドラムの露光には、レーザー走査装置(レーザー・スキャニング・ユニット、LSU)が多用されている。LSUは、ポリゴンミラー、すなわち回転多面鏡をその回転軸と直結させた駆動モータ(ポリゴンモータ)により軸周りに回転させ、回転する多面体鏡にレーザービームを反射させて偏向させるものである。高い解像度の画像形成装置を実現するためには、ポリゴンモータを非常に高速に回転させる必要がある。近年の高解像度化の趨勢に伴い、回転数は毎分数万回転に達し、さらに高速化する傾向にある。このような高速回転体は、回転時に偏心が生じることがなく、バランスがとりやすいようにすることが重要である。回転時の偏心をなくするため、ポリゴンミラーを組み立てるときにポリゴンミラーを加圧する加圧部材と同加圧部材を駆動モータ軸に固定する固定部材とをモールドばねを用いた一部材で構成し、当該部材でポリゴンモータを駆動モータに固定するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、前記感光体ドラムを露光する走査装置の配置に関し、感光体の中心を外してレーザービームを照射する構成が示されている(例えば、特許文献3における従来の手段の記載参照)
【特許文献1】特開2006−78575号公報
【特許文献2】特開平5−134201号公報
【特許文献3】特開昭61−132921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリゴンモータのような高速回転体を、傾斜状態に配置した場合、その回転軸の軸受部分にストレスがかかり、軸受の寿命が短くなるという問題が生じるおそれがある。特に、ポリゴンモータの軸受として高速対応型の空気軸受などの流体軸受を採用した場合、軸が傾斜した状態で回転させると回転バランスが悪く、軸が周囲の軸受部材に接触してしまい、軸受けの寿命が低下するおそれがある。さらに、極端な場合、ポリゴンモータが正常に回転しなくなるおそれがある。ポリゴンモータが高速回転になればなる程、モータ軸の配置について充分な注意を払う必要がある。
さらに、多数の印刷シートに両面印刷を行うと第1面の印刷時に熱せられた印刷シートが第2面の転写時に感光体に接触し、それによって感光体ドラムが次第に熱せられる。感光体ドラムに与えられた熱は、それと接触する現像部へ伝わり、現像部内でトナーのかたまりが発生することがある。これを回避するためには、放熱用の空気の流れを作ることが好ましい。
しかし、感光体ドラムの小径化に伴い、レーザー走査装置を初めとして、感光体の周辺に配置される帯電、現像、転写、クリーニング等電子写真プロセスに係る各工程を実行するためのステーションが密集する傾向にある。従って、レーザー走査装置の配置は他のステーションの配置関係から制約が課される。
【0005】
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、感光体の小径化に伴い当該感光体の周辺に配置される各ステーションが密集してもポリゴンモータの回転軸を傾けて配置する必要がなく、かつ、感光体および現像部を効果的に放熱することのできるように各ステーションが配置された画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、電子写真プロセスによる画像形成に用いる円筒状の感光体と、軸中心に回転し得るポリゴンミラーおよびレーザー光源を含んでなり、前記レーザー光源からのレーザービームをポリゴンミラーに反射させた後、前記感光体の周面に照射して静電潜像を形成するレーザー走査部と、前記静電潜像をトナーを用いて現像を行う現像部と、前記現像部へ供給するトナーを収容するトナー収容部とを備え、前記現像部は、前記感光体の中心軸より下方で周面と接するように配置され、前記トナー収容部は現像部との間に空隙が形成されるように現像部の上方に配置され、前記レーザー走査部は、ポリゴンミラーの回転軸が鉛直方向を向くように配置され、かつ、前記ポリゴンミラーで反射されたビームが前記空隙を介して感光体に達し、前記感光体の中心軸より上方の位置で前記周面を照射するように配置されることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
この発明の画像形成装置において、前記レーザー走査部は、ポリゴンミラーの回転軸が鉛直方向を向くように配置されるので、ポリゴンモータを長期に亘って正常に、かつ、安定して回転させることができる。さらに、前記トナー収容部は、現像部との間に空隙が形成されるように現像部の上方に配置され、前記ポリゴンミラーにより偏向されたビームが前記空隙を介して感光体に達し、前記感光体の中心軸より上方の位置で前記周面を照射するように前記感光体、現像部およびトナー収容部に対して配置されるので、前記空隙によって現像部を効果的に放熱することができる。即ち、周辺各ステーションが周囲に密集する感光体に向けて空気の流れを作ることができる。さらにまた、前記レーザー走査部は、前記空隙を介して前記周面へ走査ビームを照射し前記周面を露光するので、前記空隙は走査ビームが通過する光路として無駄なく使用され装置の小型化を実現することができる。
【0008】
この発明において、感光体は円筒状のものである。感光体は、電子写真プロセスによる画像形成時、軸中心に回転する。また、感光体は電子写真プロセスに適用可能なものであればその材質や物性は特に限定されない。画像形成時、感光体の周面は一方向(副走査方向)に移動する。ドラム状感光体では、ドラムの回転により周面が移動する。
【0009】
レーザー走査部は、前記周面の移動方向と直交する方向(主走査方向)にレーザービーム走査して前記周面を露光する。レーザー走査部は、固定されたレーザー光源から出射されるレーザービームを回転する多面体(ポリゴンミラー)の側面に反射させてレーザービームを変更させ、走査ビームを得る。
【0010】
現像に用いられるトナーは、一成分、二成分の種別を問わないが、現像部とトナー収容部が分離されて配置されることがこの発明の一つの特徴である。現像部は、感光体の周面を現像するため周面と対向して主走査方向に延びるように配置される。トナー収容部は、現像部から所定距離を隔てて配置される。前記所定距離は、少なくとも現像部とトナー収容部との間に形成される空隙を介して前記周面へ走査ビームを照射し得る距離である。
【0011】
なお、前述のように走査ビームは、主走査方向に感光体の周面を走査するので、トナー収容部は、少なくともその一部が主走査方向と略平行に延びて現像部との間に空隙を形成する。
【0012】
以下、この発明の好ましい態様について説明する。
この発明に係る画像形成装置は、前記感光体の周面上の一側部に印刷シートを接触させて下方から上方へ通過させるように配置される縦搬送路と、前記現像部で現像されたトナー像を前記感光体の周面から前記印刷シートへ転写させる転写部と、前記転写部を通過した印刷シートが搬送される先に配置される定着部と、定着部を通過した前記印刷シートを表裏反転させて前記転写部へ還流する反転搬送路とをさらに備え、前記縦搬送路は、前記転写部でトナーが転写された後に定着部、反転搬送路を経て還流させられた印刷シートを下方から前記転写部へ導くものであってもよい。前述のように、両面印刷時、第1面の印刷時に熱せられた印刷シートが第2面の転写時に感光体に接触し、感光体ドラムを熱するが、このように構成すれば、前記空隙から感光体ドラムを放熱するための空気が流入するような空気の流れを作ることができる。それによって、効果的に感光体ドラムを放熱させることができる。従って、感光体ドラムから伝わる熱により現像部内でトナーのかたまりが発生するといった不具合を抑制することができる。
【0013】
即ち、前記転写部は、感光体ドラムの周面上の一側部に接して通過する印刷シートにトナーを転写するため、感光体ドラムの側方に配置される。前記現像部は、感光体の周面上において前記転写部より上流側で前記周面と接する。トナー収容部は現像部より上方に配置される。レーザー走査部は、感光体ドラムを基準として前記転写部と反対側の側方に配置され、感光体ドラムへ向けて略水平方向に走査ビームを照射する。そして、現像部とトナー収容部との間に形成された空隙を介して前記周面への露光を行う。
【0014】
感光体ドラムの小径化を行う場合の最大のネックは感光体の減衰時間(走査ビームによって露光された部分の表面電位が安定するまでの時間)である。感光体ドラムを小径化する場合、所定の減衰時間を確保するためには感光体ドラムの中心軸からみたときの走査ビームによる露光位置−現像位置の角度をより広くする必要がある。
【0015】
後に詳述するが、図1のように縦搬送路を有するレイアウトでは、現像部がドラムの下方に配置される。その場合、現像部の上方にトナー収容部を配置しようとすると、感光体ドラムの小径化に伴って走査ビームの光路が遮られるようになる。
【0016】
この構成で、露光位置−現像位置の角度をより広く確保するためには、クリーナーと帯電チャージャを縦搬送路の下流側(転写部より上方の側)へ寄せ、露光位置をできるだけ上方に配置する必要がある。その一方で、現像部は縦搬送路の上流側(転写部より下方の側)に寄せる必要がある。しかし、実際にクリーナーと帯電チャージャを配置すると、露光位置はせいぜい感光体の中心軸に水平な面より上方に寄せられる程度である。
【0017】
ここで、トナー収容部は、現像部の上方に配置することが望ましい。重力に逆らわずトナーを現像部へ供給することができ機構的に無理がないからである。現像部の直上にトナー収容部を配置するのが最も単純である。また、前述のように、レーザー走査部は、ポリゴンミラーの回転軸が鉛直方向に向くように配置されることが好ましい。一方、現像部の放熱特性を改善するためには現像部周辺に放熱用の空隙を設けることが望ましく、その観点からトナー収容部を現像部から分離して配置するのが好ましい。
【0018】
これらの要求を満足させるように、この態様においては現像部より上方、かつ、現像部から所定距離を隔てた位置にトナー収容部を配置する。そして、レーザー走査部を現像部の側方に配置し、ポリゴンミラーの回転軸が鉛直方向に向くように配置する。従って、ポリゴンミラーに反射した後の走査ビームは略水平方向になってレーザー走査部から出射する。そして、前記走査ビームは、現像部上方に形成された空隙を介して感光体ドラムに達し、前記周面への露光を行うようにする。
【0019】
このようにレーザー走査部を感光体ドラムおよびその周辺の各ステーションに対して配置すれば、現像部および感光体ドラムの放熱特性を改善し、また、無駄な空隙を作らずかつ所定の減衰時間を確保することによって小型化が可能な画像形成装置を実現することができる。
さらに、前記レーザー走査部は前記感光体の中心軸よりも上方で感光体ドラムの周面を照射する。このようにすれば、前記周面で反射した走査ビームがレーザー走査部へ戻るために走査ビームの光量が減少するという不具合を回避することができる。
トナー搬送部は感光体を含む画像形成装置本体に配置され、トナー収容部と現像部は、画像形成装置本体に対してそれぞれ着脱可能であってもよい。
前記現像部は、感光体の中心軸と平行に伸びる領域で前記現像を行うように配置されてなり、現像部の前記領域の一端側に配置され、トナー収容部と現像部とを連通させるトナー搬送部をさらに備え、前記トナー搬送部は、トナー収容部に収容されたトナーを現像部へ搬送するものであってもよい。
ここで示した種々の好ましい態様は、それら複数を組み合わせることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
【0021】
≪画像形成装置の全体構成≫
まず、この発明に係る画像形成装置の全体構成について説明する。この発明に係る感光体、レーザー走査部、現像部、トナー収容部、縦搬送路、転写部、トナー搬送部の具体例を説明する。
図1は、本発明の画像形成装置の全体構成を模式的に示す説明図である。図6に示すように、画像形成装置は、大別すると原稿読取部100、画像形成装置本体200、後処理装置300、シートスタック部400から構成される。
【0022】
上記原稿読取部100は、透明な原稿台101に載置された原稿(図示せず)を読み取るもので、そのためにスキャナ光学系111が配されている。原稿の画像は、光電変換素子(CCD(Charge Coupled Device))115によって電気信号(画像信号)に変換される。
画像形成装置本体200は、さらに画像形成部210と給送搬送部220に分けられる。画像形成部210は、前記画像信号に基づいて原稿の画像を形成する。給送搬送部220は、給送カセット221に印刷シートPを収容すると共に収容された印刷シートPを第1給送路225へ順次搬送する。第1給送路225へ搬送された印刷シートは、画像形成部210へ搬送される。
【0023】
上記画像形成部210は、電子写真プロセス用の感光体ドラム211を有している。感光体ドラム211は、この発明の感光体に相当する。感光体ドラム211の周囲には、主帯電器215、この発明のレーザー走査部としてのLSU201、この発明の現像部としての現像装置212、転写ローラ213およびクリーニング装置214が配置されている。また、この発明のトナー収容部としてのトナーカートリッジ216が配置されている。現像装置212とトナーカートリッジ216とは、感光体ドラム211の一端側に配置されたトナー搬送パイプ217により連通している。転写ローラ213は、この発明の転写部に相当し、トナー搬送パイプ217はこの発明のトナー搬送部に相当する。
【0024】
主帯電器215は、感光体ドラム211の周面を略均一に帯電させる。感光体ドラム211は、矢印方向に回転駆動される。その方向に沿って主帯電器215の下流側には、LSU201からのレーザービームが照射される露光ポイントLがある。前記画像信号に基づき出射光量が制御されたレーザービームによって露光されることにより感光体ドラム211の周面に静電潜像が形成される。露光ポイントLの下流に側にある現像装置212は、形成された静電潜像をトナーにより可視像(トナー像)化する。この実施形態では、2成分現像を行うものとする。
【0025】
現像装置212の下流側にある転写ローラ213は、印刷シートPに現像されたトナー像を転写する。転写ローラ213は、縦搬送パス226の途中に配置されている。前記印刷シートPは、レジストローラ229を通過し、縦搬送パス226の途中で転写ローラ213によりトナー像が転写され、その後立て搬送の終端に配置された定着ローラ230へ導かれる。縦搬送パス226は、この発明の縦搬送路に相当する。転写ローラ213の下流側にあるクリーニング装置214は、転写後の感光体ドラム211上に残留しているトナーを除去する。クリーニング装置は、縦搬送パス226の一部を構成している。なお、変形例として、転写ローラ213とクリーニング装置214の間に、感光体ドラム211上に残留している電荷を除去する除電器が配置されてもよい。その場合、クリーニング装置214に代えて除電器が立て搬送パス226の一部を構成する。
【0026】
ここで、LSU201からのレーザービームは、原稿の画像を表す画像信号に基づき制御されると説明したが、この発明の画像形成装置はそれに限定されず、通信線を介して接続された外部のコンピュータ(図示せず)等の機器からの印刷データ、公衆回線を介して接続されるFAXからのファクシミリデータに基づいて制御されてもよい。即ち、画像形成装置は、いわゆるデジタル複合機として機能してもよい。
【0027】
転写ローラ213によってトナー像が転写された印刷シートPは、定着ローラ230を通過する際に印刷シートP上にトナーが溶融固着され、シート搬送パス231、第2切替ゲート238、第1切替ゲート235、第1排出パス233および排出ローラ232を経て第1排出部234へ排出される。あるいは、印刷シートPは、定着ローラ230の下流側に設けられた第1切替ゲート235によって後処理装置300の第2排出パス301へ導かれ、エスケープパス302またはステイプルトレイ303を経てシートスタック部400の第1シートスタックトレイ401または第2シートスタックトレイ402に排出される。
【0028】
また、給送搬送部220には、シート搬送パス231に平行して反転搬送路237が設けられている。この反転搬送路237は、印刷シートPの両面に画像を印刷する自動両面印刷機能のために設けられている。自動両面印刷の際、定着ローラ230を通過した印刷シートPは、一旦排出ローラ232へ向けて搬送された後、その後端が第2切替ゲート238を通過したところで反対方向に搬送され、第2切替ゲート238によって反転搬送路237へ導かれた後に転写ローラ213の上流側に配置されたレジストローラ229まで搬送される。その後、印刷シートPは、転写ローラ213を再び通過し、前回の通過と反対側のシート面にトナー像が転写される。トナー像が転写された印刷シートPは、定着ローラ230を経て第1排出部234、第1シートスタックトレイ401または第2シートスタックトレイ402のいずれかに排出される。
【0029】
≪レーザー走査部および感光体の周囲のレイアウト≫
続いて、感光体周辺のレイアウトについて説明する。図1に示す画像形成装置では、装置の小型化のために、感光体ドラム211の側方を縦方向に搬送される印刷シートにトナー像を転写するレイアウトを採用している。また、前記小型化のため、感光体の直径はできるだけ小さく設定されている。この実施形態では、感光体の直径は30mmである。前述のように、電子写真プロセスの特性上、プロセス速度(感光体の周面の移動速度)を変えずに感光体を小径化する場合に問題となるのは感光体の減衰時間である。前記減衰時間は、異なる表現をすれば、感光体ドラム211の周面の一点が露光ポイントLから現像装置211により静電潜像の可視像化が行われる位置(現像ポイント)へ移動するまでの移動時間である。所定のプロセス速度の条件下では、前記移動時間は、露光ポイントLと現像ポイント間の感光体周面に沿う距離で決まる。
【0030】
図2は、この実施形態の画像形成装置において、感光体ドラム211の周囲に配置される各ステーションの配置を示す説明図である。図2で、感光体ドラム211は、その回転軸を延長した遠方の点からみたときの形状を示している。図2には、主帯電器215、現像装置212、転写ローラ213、クリーニング装置214の配置を示している。クリーニング装置214の右側面は縦搬送パス226の一部を構成し、その部分には印刷シートPを物理的に感光体ドラム211から分離する分離爪227が配置されている。
【0031】
図2で、感光体ドラム211の周面上の露光ポイントにはL、現像ポイントにはDの符号を付している。また、感光体ドラム211の周面に沿って露光ポイントLから現像ポイントDに至る距離にPldの記号を付している。さらに、感光体ドラム211の周面上の帯電が行われるポイントにC、転写が行われるポイントにTの符号を付している。
【0032】
減衰時間は、距離Pldをプロセス速度で除した時間である。プロセス速度を変えずに感光体ドラム211を小径化するためには、感光体ドラム211の直径が小さくなっても距離Pldを一定に保つ必要がある。そのためには、感光体ドラム211の回転軸からみたときの露光ポイントLと現像ポイントDのなす角度をより広くする必要がある。
【0033】
感光体ドラム211の右側方に縦搬送パスを設けることを前提にした場合、転写ポイントTおよびクリーニング装置214の配置は感光体ドラム211の径に依存することなく決まる。転写ポイントTは、移動する印刷シートPの表面にブレ、滲みや飛び散りを生じることなく微小なトナー粒を転写する必要がある。そして、転写された未定着トナーを定着ローラ230へ導く必要がある。このため、印刷シートPの進行に無理な外力が加わらないようにしながら印刷シートPを転写ポイントTから定着ローラ230へ搬送する必要がある。必然的に、縦搬送パスは、印刷シートPを直進させるような経路に決まる。
【0034】
小径化に伴い露光ポイントLと現像ポイントDのなす角度を広げていくと、現像ポイントDは縦搬送パス226の上流側(下方)に限りなく接近し、帯電ポイントCおよび露光ポイントDは縦搬送パス226の下流側(上方)に限りなく接近する。しかし、クリーニング装置214は、クリーニングブレードを感光体ドラム211の周面に鋭角に接触させ、かつ、回収されたトナーを搬出するためのスペースを要する。従って、その小型化には限度がある。また、現像装置212は、トナーカートリッジ216から供給されるトナーを現像ポイントDへ均一に供給するための攪拌機構および対流機構を設ける必要がある。従って、その小型化には限度がある。これらの制約条件から、露光ポイントLは、感光体の回転軸を含む水平面よりやや上方の位置が限度である。また、現像ポイントDは、感光体の回転軸を含む鉛直面よりやや露光ポイントL寄りの位置が限度である。図2に示すとおりである。
【0035】
ここで、小径化に伴いトナーカートリッジ216の配置が問題となる。トナーカートリッジ216は、重力に逆らわずにトナーを現像部へ供給することができるよう現像部の上方に配置することが望ましい。
【0036】
図3は、この実施形態の画像形成装置において、現像装置212、トナーカートリッジ216およびLSU201の配置を示す説明図である。また、図2に示す感光体ドラム211、主帯電器215、転写ローラ213およびクリーニング装置214の配置、定着ローラ230の配置を合わせて示している。図3に示すように、トナーカートリッジ216は、現像装置212の上方に配置され、かつ、トナーカートリッジ216と現像装置212との間に空隙が形成されるよう互いに分離して配置されている。LSU201は、前記空隙の側方、現像装置212とトナーカートリッジ216との左方に配置されている。LSU201は、内部にポリゴンミラー201dおよびポリゴンミラー201dを回転させるポリゴンモータ201h、レーザー光源としてのレーザーダイオード201aを含む。ポリゴンモータ201hの回転軸はポリゴンミラー201dに直結されており、鉛直方向(図3のV−V’方向)と一致する。レーザーダイオード201aから出射されたレーザービームは、回転するポリゴンミラー201dに反射して、水平方向に変更された走査ビームLBになる。前記走査ビームLBは略水平方向に照射され、前記空隙を経て感光体ドラム211に達する。感光体ドラム211の周面上の露光ポイントは、感光体ドラム211の回転中心よりもやや上方、主帯電器215のやや下流側になる。
【0037】
≪現像装置および感光体ドラムの放熱用空隙≫
現像装置212内ではトナーが攪拌され、対流するのでその摩擦熱が発生する。それに加えて、自動両面印刷を行うと、第1面の転写後、定着ローラ230で熱せられた印刷シートが反転搬送路237を経て第2面の転写時に感光体ドラム211に接触する。多量の印刷シートに自動両面印刷を行うと、印刷シートから供給される熱によって感光体ドラム211の温度が次第に上昇する。
【0038】
現像装置212は、現像ローラ212aを有している。現像ローラ212aは、その内部に磁石が配置され、磁石の作用によって周面上に磁気ブラシが形成される。現像ローラ212aは感光体ドラム211の周面に対向して配置され、前記磁気ブラシが感光体ドラム211の周面と接触している。感光体ドラム211の温度が上昇すると、熱が磁気ブラシを経て現像ローラ212aおよび現像装置内の現像剤(トナーおよびキャリア)に伝わる。印刷が終了して現像装置212の攪拌が停止した後も、磁気ブラシは感光体ドラム211と接触しており、感光体ドラム211の余熱によりトナーが熱せられる。そのような状態が長く続くと、現像装置211の内部でトナーのかたまりが発生し、印刷の画質に悪影響を与える。これを回避するためには、現像装置211の放熱性を高める必要がある。
【0039】
前述のように、この実施形態では、トナーカートリッジ216と現像装置212とが互いに分離して配置されている。現像装置212の周囲に空隙が設けられているので、優れた放熱性が得られる。また、この空隙により感光体に向けて空気の流れを作ることができる。
【0040】
ここで、本願発明の特徴をよりよく理解できるように、従来のレイアウトを説明する。図6は、従来の画像形成装置における現像装置、トナーカートリッジおよびLSUの配置を示す説明図である。図6では、感光体ドラムに1211、現像装置に1212、トナーカートリッジに1216、LSUに1201の符号を付している。さらに、主帯電器に1215、転写ローラに1213、クリーニング装置に1214、定着ローラに1230の符号を付している。現像装置1212の直上には、トナーカートリッジ1216の一部が接触している。その接触部分には開口が設けられ、トナーカートリッジ1216からのトナーが開口を経て現像装置1212へ落下し、供給されるようになっている。
【0041】
LSU1201は、走査ビームを感光体ドラム1211の斜め上方から照射する。このため、LSUに1201の内部では、ポリゴンミラーの回転軸を傾斜させて配置するか、あるいは、それを避けてポリゴンミラーの回転軸を鉛直方向に配置するためには、ポリゴンミラーで反射後の走査ビームの方向を下方へ向けるための反射ミラーを設ける必要がある。そのための光学系の部品が増えてしまう。また、LSUに1201が薄型化できない。
また、現像装置1212の周囲の空気はトナーカートリッジ1216で遮られてしまい、上昇が妨げられてしまう。この点、図3の画像形成装置は、現像装置212の上方が開放されており、放熱性に優れる。しかも、現像装置212の上方の空隙は走査ビームの経路として使用されており、感光体ドラム211の周囲の限られたスペースが有効に活用されている。また、図1のレイアウトと対応させるとわかるように、第1排出部234の下方のスペースに配置されるLSU201をより低い位置に配置できるので、この点でも画像形成装置の小型化に寄与する。
【0042】
図5は、この実施形態に係るLSU201の内部構成、並びに、LSU201、現像装置212、トナーカートリッジ216および感光体ドラム211の配置を示す説明図である。(a)は上方から見た図、(b)は側方から見た図である。
図5に図示するように、レーザー光源としてのレーザーダイオード201aからレーザービームが出射される。出射されたレーザービームはコリメーターレンズ201bにより、主走査方向(略水平方向)に集光され、続いてシリンドリカルレンズ201cにより、副走査(略鉛直方向)方向に集光される。その後、レーザービームは回転する多面鏡(ポリゴンミラー)201dの鏡面に仕上げられた側面に入射し、反射される。ポリゴンミラー201cは、矢印A方向に一定速度で回転している。ポリゴンミラー201dの回転に伴い、レーザービームの反射角は変化し、ポリゴンミラー201dから反射されたレーザービームは主走査方向に偏向された走査ビームとなる。走査ビームは、fθ特性を有するfθレンズ201e、201fを通り、さらに防塵ガラス201gを通ってLSU201から外部へ出射される。
【0043】
出射された走査ビームは、現像装置212とその上方のトナーカートリッジ216の間の空隙を介して感光ドラム211に至り、その周面を主走査方向、即ち、感光体ドラム211の回転軸に沿う方向に走査する。感光体ドラム211は、矢印B方向に回転駆動される。走査ビームで露光されることにより、感光ドラム211の周面上に静電潜像が形成される。
【0044】
≪露光ポイントのバラツキとLSUの取付け≫
図3で、LSU201内のレーザー発光部から感光体ドラム211の中心までの距離は50mmである。露光ポイントは、感光体の回転軸を含む水平面から2mm上方の周面に位置するように設計されている。ただし、画像形成装置が組み立てられた状態で感光体ドラム211とLSU201の取付けの誤差などがあるため、鉛直方向における露光ポイントLの位置バラツキを幅3mmの範囲で許容している。
【0045】
図4は、この実施形態において、露光位置が感光体ドラム211の中心軸よりも上方を照射するように配置されることを示す説明図である。図4で、露光ポイントの基準位置は、感光体ドラム211の回転軸を通る水平面の上方2mmにあり、感光体ドラム211の周面上のバラツキの許容範囲が、基準の露光ポイントLを中心とする幅3mmの範囲にあることを示している。即ち、露光ポイントの最下点は感光体の中心軸よりも0.5mm上方であり、最上点は感光体の中心軸よりも3mm上方である。現像装置211とトナーカートリッジ216の間の空隙は、このバラツキを考慮して走査ビームを遮ることのないように決定される。
【0046】
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の画像形成装置の全体構成を模式的に示す説明図である。
【図2】この実施形態の画像形成装置において、感光体ドラムの周囲に配置される各ステーションの配置を示す説明図である。
【図3】この実施形態の画像形成装置において、現像装置、トナーカートリッジおよびLSUの配置を示す説明図である。
【図4】この実施形態において、露光位置が感光体ドラムの中心軸よりも上方を照射するように配置されることを示す説明図である。
【図5】この実施形態に係るLSUの内部構成、並びに、LSU、現像装置、トナーカートリッジおよび感光体ドラムの配置を示す説明図である。
【図6】従来の画像形成装置における現像装置、トナーカートリッジおよびLSUの配置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
100:原稿読取部
101:原稿台
111:スキャナ光学系
115:光電変換素子、CCD
200:画像形成装置本体
201:LSU
201a:レーザーダイオード
201d:ポリゴンミラー
201h:ポリゴンモータ
210:画像形成部
211:感光体
212:現像装置
213:転写ローラ
214:クリーニング装置
215:主帯電器
216:トナーカートリッジ
217:トナー搬送パイプ
220:給送搬送部
221:給送カセット
225:第1給送路
226:縦搬送パス
227:分離爪
229:レジストローラ
230:定着ローラ
231:シート搬送パス
232:排出ローラ
233:第1排出パス
234:第1排出部
237:反転搬送路
238:第2切替ゲート
300:後処理装置
301:第2排出パス
302:エスケープパス
303:ステイプルトレイ
400:シートスタック部
401:第1シートスタックトレイ
402:第2シートスタックトレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真プロセスによる画像形成に用いる円筒状の感光体と、
軸中心に回転し得るポリゴンミラーおよびレーザー光源を含んでなり、前記レーザー光源からのレーザービームをポリゴンミラーに反射させた後、前記感光体の周面に照射して静電潜像を形成するレーザー走査部と、
前記静電潜像をトナーを用いて現像を行う現像部と、
前記現像部へ供給するトナーを収容するトナー収容部とを備え、
前記現像部は、前記感光体の中心軸より下方で周面と接するように配置され、
前記トナー収容部は現像部との間に空隙が形成されるように現像部の上方に配置され、
前記レーザー走査部は、ポリゴンミラーの回転軸が鉛直方向を向くように配置され、かつ、前記ポリゴンミラーで反射されたビームが前記空隙を介して感光体に達し、前記感光体の中心軸より上方の位置で前記周面を照射するように配置されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記感光体の周面上の一側部に印刷シートを接触させて下方から上方へ通過させるように配置される縦搬送路と、
前記現像部で現像されたトナー像を前記感光体の周面から前記印刷シートへ転写させる転写部と、
前記転写部を通過した印刷シートが搬送される先に配置される定着部と、
定着部を通過した前記印刷シートを表裏反転させて前記転写部へ還流する反転搬送路とをさらに備え、
前記縦搬送路は、前記転写部でトナーが転写された後に定着部、反転搬送路を経て還流させられた印刷シートを下方から前記転写部へ導く請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像部は、感光体の中心軸と平行に伸びる領域で前記現像を行うように配置されてなり、
現像部の前記領域の一端側に配置され、トナー収容部と現像部とを連通させるトナー搬送部をさらに備え、
前記トナー搬送部は、トナー収容部に収容されたトナーを現像部へ搬送する請求項1又は2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−32886(P2010−32886A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196356(P2008−196356)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】