説明

画像形成装置

【課題】 電界力によってトナー像担持ベルト上のトナー像を被転写部材に転写させる画像形成装置において、トナー像担持ベルトから被転写部材への転写効率が高い状態で維持され、被転写部材に対して均一で高品位な画像を形成することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 対向ローラ321と駆動ローラ312によって張架されて回転駆動する中間転写ベルト311と、中間転写ベルト311を介して対向ローラ321と圧接する2次転写ローラ322と、対向ローラ321に対して所定の間隙を有して対向する電極部材323と、電極部材323に所定の周波数および振幅を有する電圧を印加する電源324とを含む画像形成装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式によって画像形成を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、静電潜像保持体上の静電潜像をトナーで現像してトナー像を得て、このトナー像を被転写部材へ転写して被転写部材上にトナー像を形成する方法が採用されている。
【0003】
このような画像形成装置における転写方法としては、静電潜像保持体上に形成されたトナー像が転写されて、トナー像を担持搬送するトナー像担持部材に対して、被転写部材を介して対向する転写手段により、トナー像を静電気力にて移動させることで、トナー像を被転写部材へ転写させる転写方法が使用されている。
【0004】
たとえば、カラー画像を得る画像形成装置では、各色に対応した静電潜像担持体である感光体ドラム上の静電潜像を各色のトナーにより現像してトナー像を得て、トナー像担持部材である中間転写ベルトに各色のトナー像を一次転写して重ね合わせた後、一括して被転写部材である記録媒体へ2次転写する方法が採用されている。また、感光体ベルトを用い、感光体ベルト上のトナー像を記録媒体や中間転写ベルトへ電界力により転写させる場合もある。
【0005】
画像形成装置において高品位な画像形成を行うためには、トナー像を担持するベルト状部材である中間転写ベルトや感光体ベルトなどのトナー像担持ベルトから被転写部材への、トナーの転写効率を高める必要がある。トナー像担持ベルトから被転写部材へのトナーの転写効率を高めるためには、電界力を強くすればよい。しかしながら、電界力が強すぎる場合には、トナーに電荷が注入されてトナーが所定の極性と逆極性に帯電する。これにより、トナーが被転写部材へ転写せずトナー像担持ベルトに残留して、転写効率が低下してしまう。
【0006】
また、コート層を有しない普通紙では、表面に凹凸があり、記録用紙の凹部はトナー像担持ベルト上のトナー像に直接接触しない。記録用紙の凹部にトナー像を転写させるためには、トナーを電界力により飛翔させる必要がある。このとき、トナー像担持ベルトとトナーとの付着力が電界力よりも大きい場合には、トナーは飛翔せず記録用紙の凹部への転写効率が低下して、記録用紙上に均一で高品位な画像を形成することができない。
【0007】
トナー像担持ベルトから被転写部材へのトナーの転写効率を高めることが可能な画像形成装置が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される画像形成装置によれば、トナー像担持ベルトである中間転写ベルト上のトナー像を、被転写部材である記録用紙に転写する2次転写部において、中間転写ベルトの内面にピエゾ素子を配置し、中間転写ベルトにピエゾ素子による機械的振動を与えて、中間転写ベルトとトナーとの付着力を低下させ、中間転写ベルトから記録用紙への転写効率を高めることができる。
【0008】
【特許文献1】特開2006−243596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示される画像形成装置では、超音波機械振動を発生させるピエゾ素子のような超音波振動子を中間転写ベルトに摺擦させるため、超音波振動子と中間転写ベルトとの接触部で摩耗が生じる。このため、中間転写ベルト内面と転写電極との接触抵抗が変動して転写電界が不均一になり、転写効率が低下して、記録用紙上に均一で高品位な画像を形成することができない。また、中間転写ベルトに不均一な摩耗が生じると、超音波振動子によって付与される振動が不均一なものとなり、中間転写ベルトとトナーとの付着力が不均一となって、記録用紙上に高品位な画像を形成することができない。
【0010】
したがって本発明の目的は、電界力によってトナー像担持ベルト上のトナー像を被転写部材に転写させる画像形成装置において、トナー像担持ベルトから被転写部材への転写効率が高い状態で維持され、被転写部材に対して均一で高品位な画像を形成することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数の支持ローラによって張架されて支持ローラの回転に伴って回転駆動する無端状のベルト部材であり、表面上のトナー像担持領域内においてトナー像を担持するトナー像担持ベルトと、
前記複数の支持ローラのうちの1本であり中空円筒状に形成される対向ローラに対して、所定の間隙を有して対向する電極部材と、
前記電極部材に、所定の周波数を有する電圧を印加する電源とを含み、
前記トナー像担持ベルトの前記対向ローラに懸架される部分に接触しながら搬送される被転写部材に、前記トナー像担持ベルトのトナー像担持領域内に担持されるトナー像を転写するとき、前記電源が前記電極部材に電圧を印加して、前記対向ローラを介して前記トナー像担持ベルトを振動させることを特徴とする画像形成装置である。
【0012】
また本発明は、前記対向ローラに対して、前記トナー像担持ベルトを介して対向して配置されて前記トナー像担持ベルトを圧接する転写部材をさらに含み、前記トナー像担持ベルトと前記転写部材との間を通過して搬送される被転写部材に、前記トナー像担持ベルト上に担持されるトナー像を転写するように構成されることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記電極部材の前記対向ローラに対向する部分に、絶縁材料からなるコート層を設けることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記電極部材の前記対向ローラに対する対向方向への曲げ剛性が、前記対向ローラの円筒面の半径方向の曲げ剛性よりも高いことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記電源は、前記対向ローラの円筒面の固有振動数の整数倍となる周波数を有する電圧である固有振動電圧を、前記電極部材に印加することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記電源が前記固有振動電圧を前記電極部材に印加したときに、前記対向ローラに生じる共振モードでの振動の腹部に対応するトナー像担持ベルトの部分に、被転写部材が接触して搬送されることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記電源が前記電極部材に印加する電圧の周波数は、20kHz以上であることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記電極部材における前記対向ローラの軸線方向に延びる長さは、前記トナー像担持領域が軸線方向に延びる長さ以上であり、かつ対向ローラが軸線方向に延びる長さ以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の支持ローラによって張架されて回転駆動する無端状のベルト部材であり表面上のトナー像担持領域内においてトナー像を担持するトナー像担持ベルトと、複数の支持ローラのうちの1本であり中空円筒状に形成される対向ローラに対して、所定の間隙を有して対向する電極部材と、電極部材に所定の周波数を有する電圧を印加する電源とを含む画像形成装置である。そして、トナー像担持ベルトの対向ローラに懸架される部分に接触しながら搬送される被転写部材に、トナー像担持ベルト上に担持されるトナー像を転写するとき、電源が電極部材に所定の周波数および振幅を有する電圧を印加する。このように、電極部材に電圧が印加されると、電極部材と対向ローラとの間隙には振動電界が形成され、この振動電界によって対向ローラが振動して、対向ローラに懸架されるトナー像担持ベルトが振動する。トナー像担持ベルトが振動することによって、トナー像担持ベルトに担持されているトナー像を構成するトナーと、トナー像担持ベルトとの付着力は、トナー自身の質量に起因する慣性力によって低下する。これによって、トナー像担持ベルトから被転写部材への転写効率が高い状態で維持され、被転写部材に対して均一で高品位な画像を形成することができる。
【0020】
また、従来技術では、超音波振動子をトナー像担持ベルトに接触させて振動させているために、長期間の使用により、超音波振動子とトナー像担持ベルトとの接触部で摩耗が発生するが、本発明の画像形成装置では、電極部材と対向ローラとの間隙に発生する振動電界によってトナー像担持ベルトを振動させるように構成されているので、電極部材、対向ローラおよびトナー像担持ベルトのそれぞれにおいて、長期間にわたって振動に起因する摩耗が発生することはない。そのため、長期間にわたって、トナー像担持ベルト上のトナー像を被転写部材に転写させるときの転写電界が不均一になるのが防止され、転写効率が高い状態で維持され、被転写部材に対して均一で高品位な画像を形成することができる。
【0021】
また本発明によれば、対向ローラに対して、トナー像担持ベルトを介して対向して配置されてトナー像担持ベルトを圧接する転写部材をさらに含む。そして、トナー像担持ベルトと転写部材との間を通過して搬送される被転写部材に、トナー像担持ベルト上に担持されるトナー像を転写するように構成されている。対向ローラと転写部材との圧接力によって、トナー像担持ベルトと被転写部材とを密着させることができ、転写効率を向上することができる。
【0022】
また本発明によれば、電極部材の対向ローラに対向する部分に、絶縁材料からなるコート層を設ける。このように、絶縁材料からなるコート層が電極部材の表面に設けられることによって、対向ローラに対向する部分が導電体で構成されている場合に比べて、電極部材に高い電圧を印加しても、気中放電の発生を防止することができる。そのため、高い電圧を電極部材に印加して、対向ローラと電極部材との間隙に大きな振動電界を発生させることができる。
【0023】
また本発明によれば、電極部材の対向ローラに対する対向方向への曲げ剛性が、対向ローラの円筒面の半径方向の曲げ剛性よりも高くなるように構成されている。これによって、電極部材と対向ローラとの間隙に生じる振動電界による引力が作用したときに、電極部材の撓みを抑制しながら対向ローラを振動させることができる。また、電極部材が撓む場合には、この撓みによって電極部材と対向ローラとの間隙幅が小さくなり、気中放電が発生しやすくなる。電極部材の曲げ剛性を高めて電極部材の撓みを抑制することによって、高い電圧を電極部材に印加しても、電極部材と対向ローラとの間隙幅が小さくなり過ぎるのを防止して、対向ローラを大きく振動させて、トナー像担持ベルトに大きな振動を付与することができる。
【0024】
また本発明によれば、電源は、対向ローラの円筒面の固有振動数の整数倍となる周波数を有する電圧である固有振動電圧を、電極部材に印加する。これによって、対向ローラの円筒面を共振させることができる。そのため、対向ローラの振動振幅が大きくなり、トナー像担持ベルト上のトナーを大きく振動させることができる。したがって、トナーに働く慣性力が大きくなって、トナー像担持ベルトに対するトナーの付着力を低下させることができる。
【0025】
また本発明によれば、電源が固有振動電圧を電極部材に印加したときに、対向ローラに生じる共振モードでの振動の腹部に対応するトナー像担持ベルトの部分に、被転写部材が接触して搬送されるように構成されている。対向ローラに生じる共振モードでの振動の腹部に対応するトナー像担持ベルトの部分は、大きな振動が付与されることになる。そのため、トナー像担持ベルト上のトナーを大きく振動させることができ、トナーに働く慣性力が大きくなって、トナー像担持ベルトに対するトナーの付着力を低下させることができる。
【0026】
また本発明によれば、電源が電極部材に印加する電圧の周波数は、20kHz以上である。電極部材と対向ローラとの間隙に発生する振動電界によって対向ローラが振動するときに、対向ローラが振動することにより生じる空気振動が、人間の可聴周波数以上となり、動作時の不快感を防止することができる。
【0027】
また本発明によれば、電極部材における対向ローラの軸線方向に延びる長さは、トナー像担持領域が軸線方向に延びる長さ以上であり、かつ対向ローラが軸線方向に延びる長さ以下である。これによって、トナー像担持ベルトがトナー像担持領域内に担持したトナー像における全てのトナーの付着力を、振動によって低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、本発明の実施の一形態である画像形成装置1の構成を示す図である。画像形成装置1は、カラー画像を形成可能とするタンデム方式のカラー画像形成装置である。画像形成装置1は、ネットワークを介して接続されたPC(Personal Computer)等の各種端末装置から送信される画像データや、スキャナ等の原稿読み取り装置によって読み取られた画像データに基づいて、記録媒体となる記録用紙に対して、カラー画像またはモノクロ画像を形成するプリンタ機能を有するものである。
【0029】
画像形成装置1は、トナー像形成部20と1次転写部31を有する画像形成ステーション部2と、2次転写ステーション部32と、定着手段4と、用紙供給手段5と、排紙手段6とを含んで構成される。画像形成ステーション部2は、カラー画像情報に含まれるイエロー(y)、マゼンタ(m)、シアン(c)およびブラック(k)の各色の画像情報に対応するために、イエロー画像用、マゼンタ画像用、シアン画像用およびブラック画像用の4つの画像形成ステーションにわかれている。そして、後述する中間転写ベルト311の回転方向に、イエロー画像用、マゼンタ画像用、シアン画像用、ブラック画像用の画像形成ステーションがこの順に並設されている。
【0030】
イエロー画像用、マゼンタ画像用、シアン画像用およびブラック画像用の4つの画像形成ステーションは、それぞれ、実質的に同一の構成を有しており、各色に対応する画像データに基づいて、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの画像を形成して、中間転写ベルト311上で重ね合わせて4色のトナーからなる画像を形成し、2次転写ステーション部32で記録用紙上にトナー像を転写する。そして、記録用紙上のトナー像を定着手段4で加熱加圧することにより、記録用紙上にフルカラー画像を形成する。
【0031】
画像形成ステーション部2を構成する各部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(k)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
【0032】
画像形成ステーション部2は、トナー像形成部20と1次転写部31を有する。トナー像形成部20は、感光体ドラム21と、帯電手段22と、露光ユニット23と、現像手段24と、クリーナ25とを含む。帯電手段22、現像手段24およびクリーナ25は、感光体ドラム21の回転方向まわりに、この順序で配置される。
【0033】
感光体ドラム21は、OPC(Organic Photoconductor;有機光導電体)などの感光性材料を表面に有する略円筒のドラム形状を呈し、露光ユニット23の上方に配設され、駆動手段と制御手段によって、所定方向に回転駆動するように制御されている。帯電手段22は、感光体ドラム21の表面を所定の電位に均一に帯電するためのスコロトロン方式の帯電器であって、感光体ドラム21の外周面に近接して配置されている。
【0034】
露光ユニット23は、画像処理部(不図示)から出力された画像データに基づいて、帯電手段22にて帯電される感光体ドラム21の表面にレーザ光を照射して露光することにより、感光体ドラム21表面における露光部の電位を低下させ、当該表面に画像データに応じた静電潜像を書込み形成する機能を有する。露光ユニット23は、各色に対応する画像形成ステーションに応じて、イエロー、マゼンタ、シアン、またはブラックに対応する画像データが入力されることにより、対応する色に応じた静電潜像を形成するようになっている。露光ユニット23としては、レーザ照射部および反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)の他、EL(Electro Luminescence)やLED(Light
Emitting Diode)などの発光素子をアレイ状に並べた書込み装置(たとえば、書込みヘッド)を使用することができる。
【0035】
現像手段24は、現像剤を担持する現像剤潜像体となる現像ローラと、現像剤を収容する現像槽とを備える。ここで、本実施の形態では、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いて、露光ユニット23にて感光体ドラム21表面に形成された静電潜像を当該トナーにて反転現像してトナー像を形成する。なお、現像剤としては、二成分現像に限定されるものではなく、一成分現像剤も用いることができる。また、現像手段24は、各色に対応したそれぞれのトナーを収容し、トナーの消費量に応じて現像槽にトナーを補給するトナーボトル241を備える。現像ローラは、トナーが感光体ドラム21へ移動し得る現像領域へ現像剤を搬送するように構成されている。また、現像槽に収容される現像剤中のトナーは、感光体ドラム21に帯電される表面電位と同極性に帯電されている。なお、感光体ドラム21に帯電される表面電位の極性および使用するトナーの帯電極性は、ここでは、何れもマイナスとされている。
【0036】
クリーナ25は、中間転写ベルト311へのトナー像転写後に、感光体ドラム21の外周面上に残存しているトナーを除去・回収するものであり、ウレタンゴムからなるクリーニングブレードを感光体ドラム21表面に当接している。
【0037】
1次転写部31は、トナー像担持ベルトである中間転写ベルト311と、駆動ローラ312と、1次転写ローラ313と、ベルトクリーナ314とを含む。中間転写ベルト311は、後述する2次転写ステーション部32の構成部材の一部材である対向ローラ321と、駆動ローラ312とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端状のベルト部材であり、駆動ローラ312の回転に伴って回転駆動する。駆動ローラ312は、中間転写ベルト311との摩擦力を高めるために円筒部表面にゴム層を備え、装置本体に設けられる不図示のモータに機構的に連結され、回転駆動される。
【0038】
中間転写ベルト311が、感光体ドラム21に接しながら感光体ドラム21を通過する際、中間転写ベルト311を介して感光体ドラム21に対向配置される1次転写ローラ313から、感光体ドラム21表面のトナーの帯電極性とは逆極性(ここでは、正極性)の転写バイアスが印加され、感光体ドラム21の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト311上へ転写されて担持される。
【0039】
中間転写ベルト311は、各色の画像形成ステーションの感光体ドラム21上に形成されたトナー像を、位置を合わせて重ね合わせることにより、4色のトナーからなるトナー像を、表面のトナー像担持領域内に担持する。中間転写ベルト311は、厚さ80μmで半導電性のポリイミドからなり、体積抵抗率が1010Ω・cm、表面抵抗率が1010Ω/□である。そして、中間転写ベルト311が回転することにより4色のトナーからなるトナー像は、2次転写ステーション部32へ搬送される。
【0040】
ベルトクリーナ314は、2次転写ステーション部32における被転写材となる記録用紙へのトナー像転写後に、中間転写ベルト311の外周面上に残存しているトナーを除去・回収するものであり、前述したクリーナ25と同様にウレタンゴムからなるクリーニングブレードを中間転写ベルト311に当接している。
【0041】
2次転写ステーション部32では、詳細は後述するが、中間転写ベルト311上に担持されるトナー像の搬送とタイミングを合わせて用紙供給手段5によって供給搬送される記録用紙を介して、2次転写ローラ322が中間転写ベルト311に圧接する。この2次転写ローラ322と中間転写ベルト311との圧接部分が転写ニップ部となる。中間転写ベルト311上に担持されるトナー像と記録用紙とが、タイミングを合わせて転写ニップ部を通過するとき、2次転写ローラ322にはトナーを引きつける正電位(転写電界)が印加され、中間転写ベルト311上のトナー像を記録用紙へ転写させる。
【0042】
定着手段4は、2次転写ステーション部32よりも記録用紙の搬送方向下流側に設けられ、加熱ローラ41と加圧ローラ42とを含む。加熱ローラ41は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録用紙に転写されて担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録用紙に定着させる。加熱ローラ41の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、加熱ローラ41表面が所定の温度(加熱温度)になるように加熱ローラ41を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。
【0043】
加圧ローラ42は加熱ローラ41に圧接するように設けられ、加圧ローラ42の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ42は、加熱ローラ41によってトナーが溶融して記録用紙に定着する際に、トナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録用紙への定着を補助する。加熱ローラ41と加圧ローラ42との圧接部が定着ニップ部である。定着手段4によれば、2次転写ステーション部32においてトナー像が転写された記録用紙が、加熱ローラ41と加圧ローラ42とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録用紙に押圧されることによって、トナー像が記録用紙に定着され、画像が形成される。
【0044】
用紙供給手段5は、用紙給紙トレイ51と、ピックアップローラ52と、レジストローラ53と、搬送ローラ54と、用紙ガイド55とを含む。用紙給紙トレイ51は画像形成装置1の鉛直方向下部に設けられ、記録用紙を貯留する容器状部材である。記録用紙としては、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などを挙げることができるが、特に、表面凹凸のある普通紙(粗悪紙)を用いた場合には、後述する本発明における優れた効果である転写効率の向上が顕著に認められる。
【0045】
ピックアップローラ52は、用紙給紙トレイ51に貯留される記録用紙を1枚ずつ取り出し、レジストローラ53に向けて送給する。レジストローラ53は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、ピックアップローラ52から送給される記録用紙を、中間転写ベルト311に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給されるように、記録用紙の搬送経路を規定する用紙ガイド55に送給する。用紙ガイド55に送給された記録用紙は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材である搬送ローラ54に搬送され、転写ニップ部に搬送される。
【0046】
排紙手段6は、排出ローラ61を含む。排出ローラ61は、用紙搬送方向において定着手段4における定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録用紙を、画像形成装置1の鉛直方向上面に設けられる排出トレイに排出する。排出トレイは、画像が定着された記録用紙を貯留する。
【0047】
図2は、本発明の第1実施形態である2次転写ステーション部32の構成を示す図である。2次転写ステーション部32は、対向ローラ321と、2次転写ローラ322と、電極部材323と、電源324とを含む。
【0048】
対向ローラ321は、中間転写ベルト311の回転方向最下流側に配置される支持ローラであり、中空円筒状に形成される。対向ローラ321は、外径が30mmで、軸線方向の長さが310mmで、アルミニウム(A5052)からなる厚さ0.8mmの円筒端部に、導電性の樹脂フランジを設け、ボールベアリングを介して回転軸まわりに従動回転可能に支持されている。対向ローラ321は、中間転写ベルト311の回転に伴って従動回転する。そして、対向ローラ321は、回転軸を介して電気的に接地されている。
【0049】
2次転写ローラ322は、対向ローラ321に対して中間転写ベルト311を介して対向して配置されて、中間転写ベルト311を圧接する転写部材である。この2次転写ローラ322と中間転写ベルト311との圧接部分が転写ニップ部となる。中間転写ベルト311のトナー像担持領域内に担持されて搬送されるトナー像と、用紙供給手段5によって搬送される記録用紙10とが、タイミングを合わせて転写ニップ部を通過するとき、2次転写ローラ322には、負極性に帯電するトナーを引きつける正電位が印加され、電界力(転写電界力)によって、中間転写ベルト311上のトナー像を記録用紙10へ転写する。
【0050】
電極部材323は、中間転写ベルト311の内側であり、かつ対向ローラ321に対して所定の間隙を有して対向するように配置されている。電極部材323を構成する材料は、ステンレス(SUS)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、真ちゅう、カーボンなどの導電性材料であれば特に限定されないが、本実施の形態ではSUSからなる。また、本実施の形態では、電極部材323は、直方体形状に形成され、対向ローラ321の軸線に直交する面で切断した切断面は長方形状でありその寸法は、対向ローラ321に対する対向方向Aに対応する寸法Lが20mmで、対向方向Aに直交する方向に対応する寸法Hは、対向ローラ321の直径D1よりも小さく、2次転写ローラ322の直径D2と略同一の10mmである。ここで、対向方向Aとは、電極部材323から対向ローラ321に向かう方向である。そして、電極部材323における対向ローラ321の軸線方向に延びる長さは300mmである。また、本実施の形態では、電極部材323と対向ローラ321との間隙の間隙幅Gは、200μmに設定されている。ここで、対向ローラ321の周面に対向する電極部材323の面は平坦面であるが、前記間隙幅Gは、互いに対向する面同士の最短距離のことである。
【0051】
電源324は、電極部材323に所定の周波数および振幅を有する電圧を印加する。本実施の形態では、電源324は、周波数が2.4kHzで、振幅が4kVppの正弦波の波形を有する電圧を電極部材323に印加し、オフセット電圧は0Vである。電源324は、中間転写ベルト311のトナー像担持領域内に担持されて搬送されるトナー像と、用紙供給手段5によって搬送される記録用紙10とが、タイミングを合わせて転写ニップ部を通過開始するときに電極部材323に対する電圧供給を開始し、転写ニップ部を通過完了したときに電極部材323に対する電圧供給を停止する。
【0052】
このように、対向ローラ321に対向して配置される電極部材323に所定の周波数および振幅を有する電圧が印加されると、電極部材323と対向ローラ321との間隙には振動電界が形成され、この振動電界によって対向ローラ321の円筒面が対向方向Aに振動し、中間転写ベルト311が対向ローラ321に懸架される領域において対向方向Aに振動する。中間転写ベルト311が対向方向Aに振動すると、中間転写ベルト311に担持されているトナー像を構成するトナーは対向方向Aに振動することになり、この振動によって生じる慣性力により、トナーの中間転写ベルト311に対する付着力が低下する。これによって、中間転写ベルト311から記録用紙10への転写効率が向上し、記録用紙10に対して均一で高品位な画像を形成することができる。
【0053】
また、従来技術では、超音波振動子を中間転写ベルト311に接触させて振動させているために、長期間の使用により、超音波振動子と中間転写ベルト311との接触部で摩耗が発生するが、本発明の画像形成装置1では、電極部材323と対向ローラ321との間隙に発生する振動電界によって中間転写ベルト311を振動させるように構成されているので、電極部材323、対向ローラ321および中間転写ベルト311のそれぞれにおいて、長期間にわたって振動に起因する摩耗が発生することはない。そのため、長期間にわたって、中間転写ベルト311上のトナー像を記録用紙10に転写させるときの転写電界が不均一になるのが防止され、転写効率が高い状態で維持され、記録用紙10に対して均一で高品位な画像を形成することができる。
【0054】
次に、中間転写ベルト311上に担持されるトナー像を構成するトナーを、対向方向Aに振動させて中間転写ベルト311に対する付着力を低下させ、記録用紙10に対する転写効率を向上させるために考慮すべき事項について説明する。トナー像を担持する中間転写ベルト311を振動させて、トナーの中間転写ベルト311に対する付着力を低下させるときに考慮すべき重要な事項としては、(a)中間転写ベルト311の振動周波数および振動振幅、(b)中間転写ベルト311の振動領域の大きさ、(c)中間転写ベルト311の振動領域における振動振幅の大きさの分布、である。
【0055】
(a)中間転写ベルト311の振動周波数および振動振幅
中間転写ベルト311に発生する対向方向Aの振動の、振動周波数および振動振幅は、電極部材323に電圧が印加されることによって発生する対向ローラ321の振動に左右される。
【0056】
まず、電極部材323から対向ローラ321に働く力について説明する。電極部材323と対向ローラ321を電極板とするコンデンサを考えると、電極板間に働く引力Fは下式(1)で表される。
F=(1/2)×Q×E …(1)
[式中、Fは電極板間に働く引力を示し、Qは電荷量を示し、Eは電界の強さを示す。]
【0057】
また電荷量Qは、下式(2)で表される。
Q=(εS/d)V …(2)
[式中、εは誘電率を示し、Sは対向面積を示し、dは電極間隔を示し、Vは電位差を示す。]
【0058】
式(1)および式(2)に、たとえば、S=300mm×5mm、d=200μm、ε=8.85(s・A・kg−1・m−3)、V=2kVを代入して電極板間に働く引力Fを算出すると、F=0.33Nとなる。
【0059】
つまり、電極部材323に電源324から電圧が印加されると、電極部材323と対向ローラ321との間には前述のような引力が働き、この引力は印加電圧の周波数で繰り返し生じる。これによって、対向ローラ321の円筒面が対向方向Aに、引力に対応する振動振幅で、かつ印加電圧の周波数に対応する振動周波数で振動する。そして、この対向ローラ321の振動に伴って、中間転写ベルト311は、対向ローラ321に懸架される領域において対向方向Aに、前記振動振幅および振動周波数で振動する。
【0060】
以上のことより、中間転写ベルト311の振動周波数は、電極部材323に印加される印加電圧の周波数によって調整することができるが、トナーの中間転写ベルト311に対する付着力を低下させて転写効率を向上させるためには、印加電圧の周波数を所定値以上に調整する必要がある。つまり、前述したように、トナーが振動することによって生じる慣性力により、トナーの中間転写ベルト311に対する付着力が低下するが、印加電圧の周波数が低すぎると、トナーに付与される慣性力が小さくなり過ぎて付着力の低下幅が小さく、転写効率の向上が認められなくなる。そのため、本実施の形態では、電極部材323に印加する印加電圧の周波数は、2.4kHzに設定している。
【0061】
また、電極部材32に印加する印加電圧の周波数は、20kHz以上(たとえば、24kHz)であるのが好ましい。これによって、対向ローラ321が振動することにより生じる空気振動が、人間の可聴周波数以上となり、動作時の不快感を防止することができる。
【0062】
また、電極部材323と対向ローラ321との間に生じる前記引力に対応する中間転写ベルト311の振動振幅は、式(1)および式(2)から明らかに、電極部材323および対向ローラ321を構成する材料の誘電率を高くし、電極部材323と対向ローラ321との対向面積を大きくし、電極部材323に印加する印加電圧を高くし、電極部材323と対向ローラ321との間隙幅を小さくすることによって、振動振幅を大きくすることができる。このように、中間転写ベルト311の振動振幅が大きくなると、中間転写ベルト311に担持されるトナー像を構成するトナーに付与される慣性力が大きくなり、トナーの中間転写ベルト311に対する付着力が低下する。ただし、電極部材323に印加する印加電圧が高すぎる、または、電極部材323と対向ローラ321との間隙幅が小さ過ぎると、気中放電が発生してしまうので好ましくない。
【0063】
次に、中間転写ベルト311の振動振幅を効率よく大きくすることが可能な構成について説明する。
【0064】
電源324によって電極部材323に印加する印加電圧を、対向ローラ321の円筒面の固有振動数の整数倍となる周波数を有する電圧である固有振動電圧とすることによって、対向ローラ321の円筒面を共振させることができる。具体的には、対向ローラ321の円筒面の半径方向の面内振動の固有振動数fは下式(3)で表される。
【0065】
【数1】

【0066】
[式中、Rは対向ローラ321の半径を示し、nは振動次数を示し、Eはヤング率を示し、νはポアソン比を示し、Iは断面2次モーメントを示し、ρは周方向の単位長さ当りの質量を示す。]
また、断面2次モーメントIは、下式(4)で表される。
【0067】
【数2】

【0068】
[式中、bは対向ローラ321の軸線方向長さを示し、hは対向ローラ321の肉厚を示す。]
【0069】
また、周方向の単位長さ当りの質量ρは、下式(5)で表される。
ρ=γbh …(5)
[式中、γは密度を示し、bは対向ローラの軸線方向長さを示し、hは対向ローラ321の肉厚を示す。]
【0070】
式(3)、式(4)および式(5)に、対向ローラ321の半径R=15mm、対向ローラ321の肉厚h=0.8mm、対向ローラ321の軸線方向長さb=300mm、ヤング率E=70GPa、ポアソン比ν=0.35、密度γ=2.7×10kg/mを代入して、基本固有振動数(振動次数n=2)f1を算出すると、f1=2.4kHzとなる。この基本固有振動数f1および、その整数倍の周波数を有する電圧を電極部材323に印加することによって、対向ローラ321の円筒面を共振させることができる。そのため、対向ローラ321の対向方向Aに振動する振動振幅が大きくなり、中間転写ベルト311上のトナーを大きく振動させることができる。したがって、トナーに働く慣性力が大きくなって、中間転写ベルト311に対するトナーの付着力を低下させることができる。
【0071】
また、電極部材323は、対向ローラ321に対する対向方向Aへの曲げ剛性が、対向ローラ321の円筒面の半径方向の曲げ剛性よりも高く設定されるのが好ましい。これによって、電極部材323と対向ローラ321との間隙に生じる振動電界による引力が作用したときに、電極部材323の撓みを抑制しながら対向ローラ321を振動させることができる。具体的には、軸方向に延びる梁を考える場合、その曲げ剛性Aは、A=E×I(Eはヤング率、Iは断面2次モーメントを示す)で表される。
【0072】
対向ローラ321の軸線に直交する面で切断した切断面が長方形状でありその寸法が、対向ローラ321に対する対向方向Aに対応する寸法Lが20mmで、対向方向Aに直交する方向に対応する寸法Hが10mmである電極部材323では、断面2次モーメントI1は、下式(6)で表される。
【0073】
【数3】

【0074】
電極部材323の構成材料がステンレスである場合、ステンレスのヤング率E=170GPaであるので、電極部材323の曲げ剛性A1は、A1=E×I1=1.1×10N・mとなる。
【0075】
一方、外径Dが30mmで、肉厚が0.8mm(内径d=28.4mm)の円筒形状の対向ローラ321では、断面2次モーメントI2は、下式(7)で表される。
【0076】
【数4】

【0077】
対向ローラ321の構成材料がアルミニウムである場合、アルミニウムのヤング率E=70GPaであるので、対向ローラ321の曲げ剛性A2は、A2=E×I2=5.5×10N・mとなる。
【0078】
このように、電極部材323が、その対向方向Aへの曲げ剛性が、対向ローラ321の円筒面の半径方向の曲げ剛性よりも高く設定されている場合には、電極部材323と対向ローラ321との間隙に生じる振動電界による引力が作用したときに、電極部材323の撓みを抑制しながら対向ローラ321を振動させることができる。
【0079】
また、電極部材323が撓む場合には、この撓みによって電極部材323と対向ローラ321との間隙幅が小さくなり、気中放電が発生しやすくなる。電極部材323の曲げ剛性を高めて電極部材323の撓みを抑制することによって、高い電圧を電極部材323に印加しても、電極部材323と対向ローラ321との間隙幅が小さくなり過ぎるのを防止して、対向ローラ321を大きく振動させて、中間転写ベルト311に大きな振動振幅の振動を付与することができる。
【0080】
また、電源324が前述した固有振動電圧を電極部材323に印加したときに、対向ローラ321に生じる振動モードでの振動の腹部に対応する中間転写ベルト311の部分に、転写ニップ部が形成される(記録用紙10が接触して搬送される)ように構成されるのが好ましい。対向ローラ321に生じる振動モードでの振動の腹部に対応する中間転写ベルト311の部分は、大きな振動振幅の振動が付与されることになる。そのため、転写ベルト311上のトナーを大きな振動振幅で振動させることができ、トナーに働く慣性力が大きくなって、中間転写ベルト311に対するトナーの付着力を低下させることができる。
【0081】
具体的には、図3を用いて以下に説明する。図3は、対向ローラ321の振動モードを説明する図である。電極部材323に前述した基本固有振動数f1を有する電圧が印加された場合、対向ローラ321の振動モードは、図3(a)に示すように、一次振動モード(n=2)となる。このとき、振動の腹に当たる部分である腹部11における振幅が最大である。また、図3(b)に示す二次振動モード(n=3)、図3(c)に示す三次振動モード(n=4)においても、振動の腹部11における振幅が最大である。この対向ローラ321の振動の腹部11に対応する中間転写ベルト311の部分に、2次転写ローラ322が圧接して転写ニップ部が形成されるようにすればよい。
【0082】
(b)中間転写ベルト311の振動領域の大きさ
図4は、2次転写ステーション部32の構成を示す上面図である。中間転写ベルト311が振動する振動領域は、振動する対向ローラ321に懸架されて接触する部分である。ただし、中間転写ベルト311表面上に担持されるトナー像を構成するトナーの付着力を低下させるために重要なのは、中間転写ベルト311表面のトナー像担持領域が、軸線方向に延びる全範囲にわたって振動することである。
【0083】
中間転写ベルト311表面上のトナー像担持領域が軸線方向に延びる長さW2は、搬送される記録用紙10における軸線方向長さW1よりも少し小さく設定される。電極部材323の軸線方向に延びる長さW3は、トナー像担持領域が軸線方向に延びる長さW2以上であり、かつ対向ローラ321が軸線方向に延びる長さW4以下となるように設定するのが好ましい。これによって、中間転写ベルト311がトナー像担持領域内に担持したトナー像における全てのトナーの付着力を、振動によって低下させることができる。本実施の形態では、搬送される記録用紙10における軸線方向長さW1が、A4サイズの長辺の方の長さである297mmに設定されている。そして、中間転写ベルト311の軸線方向長さW5が320mmであるのに対してトナー像担持領域の軸線方向長さW2が295mmに設定されている。そして、電極部材323の軸線方向長さW3が300mmに設定され、対向ローラ321の軸線方向長さW4が310mmに設定されている。
【0084】
(c)中間転写ベルト311の振動領域における振動振幅の大きさの分布
直方体形状に形成される電極部材323において、対向ローラ321の周面に対向する対向面は平坦面である。そのため、電極部材323と対向ローラ321とが間隙を有して対向する対向領域では、その間隙幅は、軸線方向から見た場合、対向領域中央部で間隙幅が狭く、対向領域両端部で間隙幅が広くなっている。したがって、電極部材323に電圧が印加されたときに対向領域に形成される振動電界は、軸線方向から見た場合、対向領域中央部で大きく、対向領域両端部で小さくなる。これによって、軸線方向から見た場合、中間転写ベルト311を、対向領域中央部に対応する部分が大きな振動振幅で、対向領域両端部に対応する部分が小さな振動振幅で振動させることができる。したがって、中間転写ベルト311における転写ニップ部以外の領域の振動振幅が大きくなり過ぎるのを防止することができ、転写ニップ部以外の領域でトナーが剥離するのを防止することができる。
【0085】
図5は、2次転写ステーション部32が有する電極部材の他の構成を示す図である。前述した電極部材323では、対向ローラ321の周面に対向する対向面は平坦面であった。図5(a)に示す電極部材323aは、対向ローラ321の周面に対向する対向面が、対向ローラ321の周面に沿うように形成されている。そのため、電極部材323aと対向ローラ321とが間隙を有して対向する対向領域では、全領域にわたって同一の間隙幅となる。したがって、電極部材323aに電圧が印加されたときに対向領域に形成される振動電界は、対向領域の全体にわたって均一になる。これによって、電極部材323aと対向ローラ321の対向部の間隔の狭い範囲が広くなる。このため、上記(2)式での電荷量Qが大きくなり、上記(1)式での起震力が大きくなる。そのため、対向ローラ321に接する中間転写ベルト311上のトナーを大きく振動させることができ、中間転写ベルト311とトナーとの付着力をより低減できるという効果が得られる。
【0086】
また、図5(b)に示す電極部材323bは、円柱状に形成され、対向ローラ321の周面に対向する対向面が、円弧状の周面となる。このように形成された電極部材323bでは、前述した電極部材323と同様に、電極部材323bと対向ローラ321とが間隙を有して対向する対向領域では、その間隙幅は、軸線方向から見た場合、対向領域中央部で間隙幅が狭く、対向領域両端部で間隙幅が広くなる。電極部材323bと電極部材323との違いは、電極部材323bの方が電極部材323よりも、対向領域両端部における間隙幅がより広いことである。したがって、中間転写ベルト311における転写ニップ部以外の領域の振動振幅が大きくなり過ぎるのをさらに防止することができ、転写ニップ部以外の領域でトナーが剥離するのをさらに防止することができる。
【0087】
ただし、電極部材を転写ニップ部に対応する厚みを有する板状体とした場合、つまり、電極部材と対向ローラ321とが対向する対向領域を極狭く構成した場合には、電極部材と対向ローラ321との対向面積が小さくなり、上記(2)式での電荷量Qが小さくなり、上記(1)式での起震力が小さくなる。そのため、対向ローラ321に接する中間転写ベルト311上のトナーを十分に振動できないという不具合が発生して好ましくない。
【0088】
図6は、本発明の第2実施形態である2次転写ステーション部72の構成を示す図である。2次転写ステーション部72は、前述した2次転写ステーション部32に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。2次転写ステーション部72において特徴的な構成は、電極部材323の対向ローラ321に対向する部分に、絶縁材料からなるコート層721が設けられている点である。2次転写ステーション部72は、電極部材323にコート層721が設けられていること以外は、2次転写ステーション部32と同様に構成されている。
【0089】
コート層721を構成する材料としては、たとえば、チタン酸バリウム(比誘電率;1200)やチタン酸ストロンチウム(比誘電率;332)、酸化チタン(比誘電率;100)の様な誘電率が高く、絶縁性の材料が望ましい。このように、絶縁材料からなるコート層721が電極部材323の表面に設けられることによって、対向ローラ321に対向する部分が導電体で構成されている場合に比べて、電極部材323に高い電圧を印加しても、気中放電の発生を防止することができる。そのため、2次転写ステーション部72の電極部材323に印加する電圧は、2次転写ステーション部32の電極部材323に印加する電圧よりも高い電圧である、空気中のパッシェンの放電電圧よりも高く設定している。このようにして、対向ローラ321と電極部材323との間隙に大きな振動電界を発生させることができる。
【0090】
また、絶縁材料からなるコート層721は誘電率が高いので、対向ローラ321と電極部材323との間隙に、さらに大きな振動電界を発生させることができる。そのため、対向ローラ321を大きく振動させて、中間転写ベルト311に大きな振動を付与することができる。したがって、トナー像を構成するトナーと、中間転写ベルト311との付着力を低下させることができ、中間転写ベルト311から記録用紙10への転写効率が高い状態で維持され、記録用紙10に対して均一で高品位な画像を形成することができる。
【0091】
図7は、本発明の第3実施形態である画像形成ステーション部が有する1次転写部81の構成を示す図である。1次転写部81において特徴的な構成は、露光ユニット23によってレーザ光が照射されて画像データに基づいた静電潜像が形成され、静電潜像が現像されたトナー像を担持するのが、感光体ベルト811であることである。感光体ベルト811は、複数の支持ローラ812によって張架されて支持ローラ812の回転に伴って回転駆動する無端状のベルト部材である。感光体ベルト811の表面には、感光性材料が形成されている。
【0092】
そして、感光体ベルト811の内側に、支持ローラ812に対して所定の間隙を有して対向する電極部材323が配置されている。また、電極部材323が支持ローラ812に対して対向する対向方向Aには、感光体ベルト811と接触するように回転駆動する中間転写ベルト311が配置され、感光体ベルト811に担持されるトナー像が中間転写ベルト311上に転写されるときに、電極部材323に電源324から所定の周波数を有する電圧が印加される。これによって、支持ローラ812が振動し、さらに感光体ベルト811が振動するようになっている。したがって、トナー像を構成するトナーと、感光体ベルト811との付着力を低下させることができ、感光体ベルト811から中間転写ベルト311への転写効率が高い状態で維持され、中間転写ベルト311に対して均一で高品位な画像を形成することができる。
【0093】
そして、中間転写ベルト311上に転写されたトナー像は、2次転写ローラ322が中間転写ベルト311に圧接して形成される2次転写ニップ部において、記録用紙10に転写される。
【0094】
以上のような本実施の形態は、発明の例示に過ぎず、発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば、中間転写ベルトに担持されるトナー像を記録用紙に転写するときに中間転写ベルトを振動させる構成、感光体ベルトに担持されるトナー像を中間転写ベルトに転写するときに感光体ベルトを振動させる構成について、説明した。しかしながら本発明は、これに限定するものではなく、たとえば、感光体ベルトに担持されるトナー像を直接記録用紙に転写するときに感光体ベルトを振動させる構成も、本発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の一形態である画像形成装置1の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態である2次転写ステーション部32の構成を示す図である。
【図3】対向ローラ321の振動モードを説明する図である。
【図4】2次転写ステーション部32の構成を示す上面図である。
【図5】2次転写ステーション部32が有する電極部材の他の構成を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態である2次転写ステーション部72の構成を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態である画像形成ステーション部が有する1次転写部81の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1 画像形成装置
2 画像形成ステーション部
4 定着手段
5 用紙供給手段
6 排紙手段
10 記録用紙
20 トナー像形成部
31,81 1次転写部
32,72 2次転写ステーション部
311 中間転写ベルト
321 対向ローラ
322 2次転写ローラ
323,323a,323b 電極部材
324 電源
721 コート層
811 感光体ベルト
812 支持ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持ローラによって張架されて支持ローラの回転に伴って回転駆動する無端状のベルト部材であり、表面上のトナー像担持領域内においてトナー像を担持するトナー像担持ベルトと、
前記複数の支持ローラのうちの1本であり中空円筒状に形成される対向ローラに対して、所定の間隙を有して対向する電極部材と、
前記電極部材に、所定の周波数を有する電圧を印加する電源とを含み、
前記トナー像担持ベルトの前記対向ローラに懸架される部分に接触しながら搬送される被転写部材に、前記トナー像担持ベルトのトナー像担持領域内に担持されるトナー像を転写するとき、前記電源が前記電極部材に電圧を印加して、前記対向ローラを介して前記トナー像担持ベルトを振動させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記対向ローラに対して、前記トナー像担持ベルトを介して対向して配置されて前記トナー像担持ベルトを圧接する転写部材をさらに含み、前記トナー像担持ベルトと前記転写部材との間を通過して搬送される被転写部材に、前記トナー像担持ベルト上に担持されるトナー像を転写するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記電極部材の前記対向ローラに対向する部分に、絶縁材料からなるコート層を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記電極部材の前記対向ローラに対する対向方向への曲げ剛性が、前記対向ローラの円筒面の半径方向の曲げ剛性よりも高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記電源は、前記対向ローラの円筒面の固有振動数の整数倍となる周波数を有する電圧である固有振動電圧を、前記電極部材に印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電源が前記固有振動電圧を前記電極部材に印加したときに、前記対向ローラに生じる共振モードでの振動の腹部に対応するトナー像担持ベルトの部分に、被転写部材が接触して搬送されることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記電源が前記電極部材に印加する電圧の周波数は、20kHz以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記電極部材における前記対向ローラの軸線方向に延びる長さは、前記トナー像担持領域が軸線方向に延びる長さ以上であり、かつ対向ローラが軸線方向に延びる長さ以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−61046(P2010−61046A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229037(P2008−229037)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】