説明

画像形成装置

【課題】定着装置の位置決めに用いられる部材の破損に鑑み、その部材の耐久性を高めて破損による弊害を未然に防止できる構成を有する画像形成装置を提供する。
【解決手段】装置本体の対して挿脱可能な定着ユニットを、挿入方向の逆方向へ移動するのを阻止するために設けられている定着係止部材が、上記定着ユニットに作用する上記挿入方向と逆方向の反力を受ける面の断面構造として、反力の作用方向での断面係数を大きくして定着ユニットを係止する係止面での変形や破損を防止する剛性を備えた断面構造とされていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、さらに詳しくは、着脱可能な構造体の保持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、複写機やプリンタあるいは印刷機などの画像形成装置においては、潜像担持体である感光体上に形成された静電潜像が現像装置から供給される現像剤によって可視像処理される。
【0003】
可視像処理されたトナー像は転写材に転写された後、定着装置による加熱・加圧によってトナーが融解・浸透することで定着されて複写画像とされる。
【0004】
画像形成装置には、画像形成処理を行うための各種装置および画像を転写される転写紙などの貯蔵バンクである給紙装置、さらには、トナー像を定着するための定着装置が装備されている。
【0005】
トナー像が転写される転写紙は、給紙装置から繰り出されて転写部に至り、転写後には定着装置によってトナー像を定着されて排出される搬送過程を経過するようになっており、この搬送過程には転写紙を搬送するための搬送路が設けられている。
【0006】
転写紙は、この搬送路内で紙詰まりなどの搬送不良を発生する場合がある。このため、画像形成装置においては、搬送路の一部を外部に露呈できるように側壁に設けられているカバーを開閉できるようにしている。
【0007】
しかし、カバーの開閉のみで転写紙の搬送路を露呈できない装置もあり、その代表的なものとして定着装置がある。
【0008】
定着装置は、トナー像に対向接触する定着部材とこの定着部材に対峙して定着部材に向け転写紙を加圧する加圧部材とをケーシング内に備えた定着ユニット構造が用いられ、定着ユニット内の定着部材と加圧部材とで転写紙を挟持しながら搬送できる構成がよく知られている。
【0009】
定着装置内での紙詰まりを解消するための構成としては、定着ユニットを画像形成装置に対して着脱可能に設け、装置側のカバーを開放して装置外部に定着ユニットを引き出すことができる構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0010】
上記特許文献には、画像形成装置内部において定着ユニットの挿入方向前側および後側にそれぞれ定着ユニットの摺動方向に平行したガイド部が設けられ、これら各ガイド部には、定着ユニット側に設けられている位置決め用基準部材がそれぞれ嵌合できるようになっている。
【0011】
図11は、上記特許文献に開示されている構成を示す模式図であり、同図は、側壁内面を示している。
【0012】
図11において、装置本体の筐体100には、定着ユニット120の挿入方向(符号Fで示す方向)の前側および後側にそれぞれ挿入方向に平行するガイド部101,102が設けられている。
【0013】
ガイド部101,102は、上下方向での位置をずらした状態で設けられている。
ガイド部101,102には、定着ユニット120側に設けられている位置決め基準部材121,122が嵌合するようになっており、嵌合した状態で挿脱方向に定着ユニット120をガイドするようになっている。
【0014】
定着ユニット120側の位置決め基準部材121,122は、挿入方向前側に位置する前側基準部材121が板金部材を折り曲げて湾曲断面とした構成とされ、後側基準部材122が支持ピンで構成されている。これら各基準部材121,122は、ガイド部101,102の挿入方向前端に突き当たることで定着ユニット120を装置内部で所定位置に位置決めすることができるようになっており、この位置決め状態は後側基準部材122を対象とした係止機構によって維持されるようになっている。
【0015】
係止機構は、後側基準部材122である支持ピンを嵌合させる凹部を有した揺動部材123で構成されており、後側基準部材122を定着ユニット120の挿入方向後側から衝止することにより定着ユニット120が挿入方向後側に向け移動するのを阻止するようになっている。
定着ユニット120を装置外部に引き出す場合には、係止機構に用いられている揺動部材123を後側基準部材122との衝止を解除する方向に揺動させる(図11中、二点鎖線で示す状態)。
【0016】
一方、定着ユニットでは、転写紙を挟持搬送できるように、定着部材と加圧部材とが圧接されるようになっている。
しかし、この圧接関係を常時維持することは、紙詰まりを起こした転写紙を定着ユニットから排除する場合の抵抗となり、好ましくない。
【0017】
そこで、従来の定着装置では、定着部材としての定着ローラに対して加圧部材としての加圧ローラを接離可能に設ける場合がある(例えば、特許文献1)。
【0018】
加圧ローラを定着ローラから離すことにより挟持されていた転写紙の解放が可能となる。
また、加圧ローラを離すことは、近年、定着温度の立ち上がり向上のために用いられる構成の一つである、電磁誘導加熱機構(IH加熱機構)を用いることにも影響している。具体的には、定着ローラ表面に設けられている誘導加熱部としての金属膜が継続的な加圧状態に置かれると金属膜の変形や破損を招く虞があるので、これを回避するうえで重要な機能となる。
【0019】
加圧ローラの接離機構としては、図12に示す構成が知られている。図12は図11に示した後側基準部材122の周辺構成を示す斜視図である。
【0020】
図12において、定着ユニット120内で定着部材として用いられる定着ローラ124には、加圧部材としての加圧ローラ125が接離可能に設けられており、加圧ローラ125の接離機構として、揺動レバー126および揺動カム127が用いられるようになっている。
【0021】
揺動レバー126は、定着ユニット120内で揺動可能に設けられており、揺動端が加圧ローラ125の支軸部外周面と揺動カム127とにそれぞれ対向している。
【0022】
揺動カム127は、従動ギヤ128と同軸に支持された偏心カムである。
従動ギヤ128が、定着ユニット120の外部に位置する駆動モータ129の出力軸に設けてある駆動ギヤ130に噛み合っていることにより揺動カム127が回転できるようになっている。
揺動カム127は回転すると揺動レバー126側に設けてあるカムフォロワを介して揺動レバー126を揺動させて加圧ローラ125を定着ローラ124に対して接離させる。
【0023】
上述した従動ギヤ128と駆動ギヤ130との噛み合いは、上下方向に各ギヤを配置した噛み合いとされ、定着ユニット120の挿脱に対してギヤの噛み合う位置が邪魔にならないようにされている。
【0024】
【特許文献1】特開2006−258998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
加圧ローラ125を定着ローラ124に対して加圧した場合には、定着ユニット120において装置本体側により位置決めされている部分からの反力が発生し、この反力によって定着ユニット120が挿入方向と逆方向に移動することがある。
【0026】
定着ユニット120は、装置本体内に挿入されると、後側基準部材122が、係止機構として用いられる定着係止部材123によって挿入方向と逆方向への移動を阻止されるようになっている。
【0027】
定着係止部材123は、図13に示すように、装置本体側に支持される支持ピン123Aを中心に揺動可能な部材であり、揺動端に至る途中には、定着ユニット120側の後側基準部材122を係止する係止面123Bを有した凹部が形成されている。
【0028】
凹部123Bに隣接する位置には、スリット123Cが形成されている。このため、スリット123Cにより凹部123Bには、撓み変形可能な片部123Dが構成され、この撓み変形可能な片部123Dの弾性復元力によって後側基準部材122を押圧できるようになっている。
【0029】
定着ユニット120は、自身に作用する反力により挿入方向と逆方向に移動するとき、その移動を後側基準部材123が定着係止部材123の係止面123Bに衝止されるが、定着係止部材123には、反力の全てが作用する結果となる。
【0030】
このように、定着係止部材123には、加圧ローラ125の当接運動に応じて反力が繰り返し作用することになる。この結果、位置決め基準部材が衝止される係止面123Bへの衝撃が繰り返されることで経時的に係止面123Bを構成する片部123Dでのせん断破壊が生じる虞がある。
【0031】
定着係止部材123が破損してしまうと、係止面を用いた基準部材の衝止が行えなくなり、定着ユニット120が挿入方向と逆方向に移動するのを阻止することもできなくなる。これにより定着ユニットの位置決め不能状態を招くことになる。
【0032】
特に、図12に示した構成において、揺動カム126の回転駆動力伝達部に用いられる従動ギヤ127と駆動ギヤ130との噛み合いが上下方向で行われ、定着ユニット120の移動方向に干渉しない関係とされていることが原因して、定着係止部材123に対して集中的に定着ユニット120側の反力が作用することになる。
このような理由により、定着係止部材123が破損してしまうと、装置本体内に挿入された定着ユニットの位置決めができないことにより、転写紙の搬送路の一部を構成することができなくなることや、定着に必要な挟持圧力(ニップ圧力)が得られなくなるという不具合を招く。
【0033】
本発明の目的は、上記従来の画像形成装置における問題、特に、定着装置の位置決めに用いられる部材の破損に鑑み、その部材の耐久性を高めて破損による弊害を未然に防止できる構成を有する画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
この目的を達成するための、本発明は次の構成よりなる。
(1)画像形成処理部において形成された画像を転写される記録シートの搬送路の一部を構成し、該搬送路を通過する記録シートに担持されているトナー画像の定着を行う定着装置を備え、該定着装置が装置本体に対して挿脱可能に設けられている画像形成装置において、
上記定着装置は、上記装置本体側で挿脱方向に平行して設けられているガイド部を摺動可能な定着ユニットを備え、
上記定着ユニットは、該定着ユニットの挿入方向前側および後側にそれぞれ上記ガイド部に嵌合可能な位置決め用の基準部材が設けられ、該基準部材が上記ガイド部の前端側に衝止されることで挿入位置に位置決めされ、
上記位置決め用の基準部材のうちで、上記挿入方向の後側に位置する基準部材は、上記ガイド部近傍に設けられている係止部材に係止されることにより挿入方向と逆方向への移動を阻止されることを特徴とする画像形成装置。
(2)上記定着ユニットは、上記トナー画像に対する加熱側に位置する定着部材と、該定着部材に対して接離可能に設けられている加圧部材とを備え、定着部材に対して加圧部材を当接させた際に上記挿入方向と逆方向の反力が作用する構成であることを特徴とする(1)に記載の画像形成装置。
(3)上記係止部材は、上記装置本体のガイド部近傍に設けられている支軸を支点とする揺動部材で構成され、上記定着ユニットが挿入方向と逆方向に移動するのを阻止する係止面を有した凹部が揺動端側に設けられていることを特徴とする(1)または(2)に記載の画像形成装置。
(4)上記係止部材は、上記係止面の断面構造として、上記挿入方向と逆方方向の反力以上の荷重に対して変形を阻止可能な形状であることを特徴とする(1)または(3)に記載の画像形成装置。
(5)上記係止部材の係止面は、上記挿入方向と逆方方向の反力以上の許容応力を持つ材質が用いられていることを特徴とする(4)に記載の画像形成装置。
(6)上記係止部材の係止面は、上記定着ユニットの挿脱方向と平行する方向の断面長さをこの方向と直角な方向の断面長さよりも大きくした断面形状とされていることを特徴とする(3)乃至(5)のいずれかに記載の画像形成装置。
(7)上記定着ユニットに装備されている定着部材として、電磁誘導加熱コイルを用いた熱源を表面に備えた定着ローラが用いられることを特徴とする(1)に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、装置本体内に挿入された定着装置を、これの挿入方向後側を対象とする位置決めに用いられる基準部材を係止することにより挿入方向と逆方向の反力により挿入された定着装置が不用意に抜けてしまうのを防止することができる。
特に、後側の位置決めに用いる基準部材を係止する係止部材が、基準部材に対する係止面の構造として、上記反力による変形を阻止可能な断面構造とされていることにより、反力が継続的に作用した場合でも変形や破損を阻止されて定着装置の位置決め状態を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面により本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、図1以下の図面において、図11以降の図面に示した部材と同じものについては同符号により示すことを前置きしておく。
【0037】
図1は、定着装置を備えた画像形成装置の構成を説明するための模式図である。 図1において画像形成装置1000は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y、1C、1M、1Kを備える。尚、Y、C、M、Kの色順は、図1に限るものでなく、他の並び順であっても構わない。
【0038】
画像形成ユニット1Y、1C、1M、1Kは、図2に示すように、それぞれ、像担持体としての感光体ドラム11Y、11C、11M、11K(図2においては便宜上、共通する符号としての数字のみが用いられている)と、帯電手段14、現像手段10、クリーニング手段とを備えている。また、各画像形成ユニット1Y、1C、1M、1Kの配置は、各感光体ドラムの回転軸が平行になるように、かつ、転写紙移動方向に所定のピッチで配列するように設定されている。
【0039】
画像形成ユニット1Y、1C、1M、1Kの下方には光源ユニット3が配置されている。
光書込ユニット3には、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備えられ、画像データに基づいて各感光体ドラム11Y、11C、11M、11Kの表面にレーザー光を走査しながら照射するようになっている。
【0040】
光書込ユニット3の上方には、各画像形成ユニットのトナー像を重ね合わせて転写するように搬送する転写搬送ベルト60を有するベルト駆動装置としての一次転写ユニット6が配置されている。
転写搬送ベルト60は複数のローラに掛け回され、展張面の一つが上記各画像形成ユニットにおける感光体に当接して移動するようになっており、外周面には、ブラシローラとクリーニングブレードから構成されたクリーニング装置61が接触するように配置されている。なお、転写部材としては上記のベルトに限らず、ドラムを用いることも可能である。
このクリーニング装置61により転写搬送ベルト60上に付着したトナー等の異物が除去される。
【0041】
図1において一次転写ユニット6の右側には、転写紙にトナー像を転写する二次転写ユニット7が配置され、その上方には定着ユニット(便宜上、図11で用いた符号120により示す)が備えられている。
【0042】
本実施形態に用いられる定着ユニット120は、トナー像に接触する加熱部材である定着ローラとこれに対して転写紙を挟持してニップ圧を作用させる加圧ローラとを組み合わせた熱ローラ定着方式が採用されている。加熱部材である定着ローラには電磁誘導加熱構造を利用したローラが用いられ、このため、定着ローラの表面には誘導加熱層としての金属膜が設けられている。
【0043】
画像形成装置1000の下部には、転写紙Sが載置された給紙カセット4a、4bを備えている。また、この給紙カセットからの給紙とは別に画像形成装置1000には、画像形成装置側面から手差しで給紙を行う手差しトレイ4cが備えられている。なお、図1において、転写搬送ベルト60の上方空間には、トナー補給容器5Y、5C、5M、5Kが備えられ、図示していない廃トナーボトル、電源ユニットなども備えられている。
【0044】
現像手段としての現像装置10Y、10C、10M、10K(図2において符号10で示す部材に相当)は、いずれも同様の構成からなり、それらは使用するトナーの色のみが異なる二成分現像方式の現像装置10Y、10C、10M、10Kであり、トナーと磁性キャリアからなる現像剤が収容されている。
【0045】
現像装置10Y、10C、10M、10Kは、詳細を説明しないが、感光体ドラム11に対向した現像ローラ12(図2参照)、現像剤を搬送・撹拌するスクリュー、トナー濃度センサ等から構成される。
現像ローラ12は、外側の回転自在のスリーブと内側に固定された磁石から構成されている。現像装置では、トナー濃度センサの出力に応じて、トナー補給装置よりトナーが補給されるようになっている。
【0046】
画像形成装置1000では、まず、帯電ローラ14(図2参照)に図示しない電源より所定の電圧が印加されて、対向する感光体ドラム11表面を帯電する。所定の電位に帯電した感光体ドラム11表面には、引き続いて光書込ユニット3により画像データに基づくレーザー光が走査され、静電潜像が書き込まれる。静電潜像を担持した感光体ドラム11表面が現像装置10に到達すると、感光体ドラム11と対向配置される現像ローラ12により、感光体ドラム11表面の静電潜像にトナーが供給されて、トナー像が形成される。
【0047】
上記の動作が各画像形成ユニット1Y、1C、1M、1Kの全てに同様にして所定のタイミングで行われ、感光体ドラム11Y、11C、11M、11K表面にはそれぞれ所定の色のトナー像が形成される。
【0048】
転写紙Sは、給紙カセット4a、4b、もしくは手差しトレイ4cのいずれかから搬送され、レジストローラ4に到達したところで一旦停止する。
感光体ユニット2Y、2C、2M、2K(図2において符号2で示す部材)の画像形成動作タイミングで転写搬送ベルト60上に、各感光体ドラム11上のトナー像を順次転写していく。このトナー像の転写は、転写搬送ベルト60を挟んで各感光体ドラム11Y、11C、11M、11Kと対向配置されている一次転写ローラ67Y、67C、67M、67Kから、図示しない電源より感光体ドラム11上のトナーの極性と逆の極性の電圧が印加されることで行われる。
【0049】
そして、感光体ドラム11Kとの対向位置を通過し、4色のトナー像が重ね合わされたトナー像は、レジストローラ4で送り出された転写紙S上に、二次転写ユニット7で転写される。
【0050】
転写紙Sは、引き続いて定着ユニット120に搬送され、熱と圧力を受けてトナー画像を定着される。
【0051】
画像形成装置1000は、定着ユニット120を含む給紙カセット4a,4bから排紙部に至る搬送路が外部に露呈できるようになっており、このための構成として、図3に示すように、装置本体の側壁の一つである、手差し給紙部側の側壁1000Aが開閉可能に設けられている。この側壁1000Aが開放されると、定着ユニット120が外部に引き出されて定着ローラと加圧ローラとの圧接を解除して転写紙の取り出しを行えるようになっている。定着ローラに対する加圧ローラの接離機構に関しては、図12に示した構成が用いられる。
【0052】
画像形成装置1000は、装置本体として、図4に示す構造体が用いられており、構造体は、本体ベース1001およびこれの両側端にそれぞれ一体化されている側壁部1002,1003とを備えている。
【0053】
各側壁部1002,1003には、定着ユニット120を装着するための収容部1002A,1003Aがそれぞれ設けられている。
収容部1002A,1003Aには、図11において説明したガイド部101,102が設けられている。
ガイド部101,102は、図5および図6に示すように、定着ユニット120の挿入方向に平行する溝部で構成されており、図7に示す構成からなる定着ユニット120に設けられている位置決め用の基準部材121,122が嵌合する部分として用いられる。
【0054】
図7において、定着ユニット120は、ガイド部101,102に対して挿入される方向(矢印Fで示す方向)の前側に前側位置決め用の基準部材121が、そして後側に後側位置決め用の基準部材122が設けられている。これら基準部材の構成は、図11に示した場合と同様に、前側位置決め用の基準部材121が湾曲した板金部材であり、後側位置決め用の基準部材122が支持ピンで構成されている。
【0055】
前側位置決め用の基準部材121が嵌合するガイド部101は、挿入方向前端部での内寸が基準部材121の外寸よりもわずかに小さくされており、これにより、基準部材121が撓み変形した際の形状復元力を利用して基準部材121がガイド部101内に圧接することができる。これにより挿入された定着ユニット120を所定位置に位置決めした状態で保持できるようになっている。なお、図7において符号1201は、挿脱に際して用いる把手を示している。
【0056】
一方、ガイド部101,102に挿入されて装置本体内で位置決めされる定着ユニット120は、図8において二点鎖線で示すように、後側位置決め用の基準部材122が、図11に示した場合と同様に定着係止部材(便宜上、符号1230で示す)により係止されることにより挿入方向(図8において符号Fで示す、左に向かう方向)と逆方向(図8において符号Rで示す、右に向かう方向)に移動するのを阻止されている。
【0057】
なお、図8において括弧を付けて示す符号は、定着ユニット120が装置本体内に挿入された位置での各部材を示すものである。
【0058】
定着係止部材1230は、定着ユニット120の挿脱時には後側位置決め用の基準部材122の移動路から外れる位置に揺動し(図8において実線で示す状態)、定着ユニット120の挿入後には基準部材122を係止する係止面が対向する位置に揺動する。
【0059】
定着係止部材1230による係止が解除されると定着ユニット120は、図9に示すように装置本体外部に引き出される。この位置に移動する際には、加圧ローラ125が定着ローラ124に対する加圧状態を解除されているので、両ローラ同士に挟持されていた転写紙が取り除けることになる。
【0060】
以上のような構成を対象として本実施形態での特徴を以下に説明する。
本実施形態の特徴は、定着係止部材1230の構成にある。つまり、定着係止部材1230は、図10に示すように、装置本体側に支持されている支軸1230Aを支点(図10中、符号S1で示す位置)として揺動可能な部材であり、定着ユニット120が挿入方向と逆方向に移動するのを阻止するための係止面1230Bを有した凹部が形成されている。
【0061】
係止面1230Bには、定着ユニット120側に設けられている後側位置決め用の基準部材122が対向して衝止されるようになっている。
【0062】
定着係止部材1230は、図13に示した場合と同様に、定着ユニット120に作用する反力を受ける部分が係止面1230Bである。そこで、係止面1230Bは、上記反力が作用する方向、つまり挿入方向と逆方向の荷重に対して変形を阻止できる断面形状を有した断面構造が用いられている。
【0063】
図10において、定着係止部材1230には、係止面1230Bに衝止されている基準部材122を介して前述した反力が作用するが、その反力の作用方向は、定着係止部材1230の支点(S1)から係止面1230Bで基準部材122が衝止される位置とを結ぶ延長線方向となり、反力(P)は、次の式で表される。
【0064】
反力(P)=σ・A
ただし、σ:応力(せん断応力)、A:図10において符号Dで示す領域の断面積
上記の式から明らかなように、定着係止部材1230における係止面1230Bでの反力作用方向での断面積(領域Dでの断面積)が反力の大きさと比例する関係にあるので、断面積を大きくすることにより、強い反力に耐えうるといえる。
このことは、図13に示した断面構造における、符号D’で示す領域での断面積が本実施形態の場合と違って小さくなっている場合と違って、反力を受ける方向での断面係数が大きくなっていることからも明らかである。
【0065】
上記反力の作用方向に沿った断面係数を大きくするための簡単な構成としては、図10(B)に示すように、反力の作用方向(図10(B)において矢印Pで示す方向)、つまり、定着ユニット120の挿脱方向に沿った領域Dでの断面長さ(x)をこの方向と直角な方向である定着係止部材123の厚さ方向での断面長さ(y)よりも大きくした断面形状とすることが挙げられる。
これにより、係止面1230Bを構成する断面形状において反力に耐えうる形状とすることができる。
【0066】
また、上述した反力を許容できる応力を持つ材質によって係止面1230Bを含む定着係止部材1230の構成することによっても、反力に耐えうる構成が得られる。
【0067】
本実施形態は以上のような構成であるから、定着ユニット120が装置本体内で位置決めされた状態で定着ローラに対する加圧ローラの圧接が行われると、定着ローラおよび定着ユニットが装置本体に位置決めされて固定されていることから、加圧ローラに対して反力が作用し、加圧ローラを支持している定着ユニット120が反力の作用方向、つまり、挿入方向と逆方向に移動する。
【0068】
定着ユニット120が反力の作用方向に移動した場合には、この移動を阻止する部材である定着係止部材1230に反力の全てが作用することになるが、定着係止部材1230は、その反力に耐えることができる断面構造を備えているので、定着ユニットが不用意に反力の作用方向に移動するようなことがなく、しかも、その移動を阻止する定着係止部材1230での変形や破損も防ぐことができる。
これにより、定着ユニット120の位置決め精度を経時的に維持することが可能となる。
【0069】
本実施形態においては、定着係止部材1230における係止面1230Bの断面構造において、反力が作用する方向の長さをこれと直角な方向である厚さ方向よりも長くするだけで断面係数を増加させることができる。これにより、単位面積あたりの荷重を小さくする目的で係止面1230Bにおいて基準部材122からの受圧面積を大きくしなくても、反力に対する耐久性を確保することができる。
【0070】
しかも、反力に対する耐久力を確保できることで定着係止部材により衝止される基準部材を備えた定着ユニットは、位置決め精度を低下させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明による画像形成装置の構成を説明するための模式図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジの構成を説明するための模式図である。
【図3】図1に示した画像形成装置における側壁の一部を開放した状態を示す模式図である。
【図4】図1に示した画像形成装置本体として用いられる構造体の構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示した構造体に設けられている定着ユニット支持部の構成を一方向から見た斜視図である。
【図6】図4に示した構造体に設けられている定着ユニット支持部の構成を図5に示した方向と逆の方向から見た斜視図である。
【図7】図1に示した画像形成装置に用いられる定着装置を構成する定着ユニットの構成を説明するための模式的な斜視図である。
【図8】図4に示した構造体での定着ユニットの支持部の作用を説明するための側面図である。
【図9】図8に示した構造体から定着ユニットを外部に引き出した状態を説明するための側面図である。
【図10】本発明の特徴部である定着係止部材の構成を説明するための図である。
【図11】定着ユニットの支持構造に関する従来構成の一例を説明するための側面図である。
【図12】図11に示した定着ユニットの支持構造に用いられる定着部材と加圧部材との接離構造を説明するための部分的な斜視図である。
【図13】図11に示した定着ユニットの支持構造に用いられる定着係止部材の構成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0072】
101,102 ガイド部
120 定着ユニット
121 前側位置決め用の基準部材
122 後側位置決め用の基準部材
124 定着ローラ
125 加圧ローラ
127 接離用の偏心カム
1230 定着係止部材
1230A 支軸
1230B 係止面
P 反力
D 反力の作用方向に沿った断面積を有する領域
x 反力の作用方向に沿った断面長さ
y 断面長さxと直角な方向の断面長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成処理部において形成された画像を転写される記録シートの搬送路の一部を構成し、該搬送路を通過する記録シートに担持されているトナー画像の定着を行う定着装置を備え、該定着装置が装置本体に対して挿脱可能に設けられている画像形成装置において、
上記定着装置は、上記装置本体側で挿脱方向に平行して設けられているガイド部を摺動可能な定着ユニットを備え、
上記定着ユニットは、該定着ユニットの挿入方向前側および後側にそれぞれ上記ガイド部に嵌合可能な位置決め用の基準部材が設けられ、該基準部材が上記ガイド部の前端側に衝止されることで挿入位置に位置決めされ、
上記位置決め用の基準部材のうちで、上記挿入方向の後側に位置する基準部材は、上記ガイド部近傍に設けられている係止部材に係止されることにより挿入方向と逆方向への移動を阻止されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
上記定着ユニットは、上記トナー画像に対する加熱側に位置する定着部材と、該定着部材に対して接離可能に設けられている加圧部材とを備え、定着部材に対して加圧部材を当接させた際に上記挿入方向と逆方向の反力が作用する構成であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
上記係止部材は、上記装置本体のガイド部近傍に設けられている支軸を支点とする揺動部材で構成され、上記定着ユニットが挿入方向と逆方向に移動するのを阻止する係止面を有した凹部が揺動端側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
上記係止部材は、上記係止面の断面構造として、上記挿入方向と逆方方向の反力以上の荷重に対して変形を阻止可能な形状であることを特徴とする請求項1または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
上記係止部材の係止面は、上記挿入方向と逆方方向の反力以上の許容応力を持つ材質が用いられていることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
上記係止部材の係止面は、上記定着ユニットの挿脱方向と平行する方向の断面長さをこの方向と直角な方向の断面長さよりも大きくした断面形状とされていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
上記定着ユニットに装備されている定着部材として、電磁誘導加熱コイルを用いた熱源を表面に備えた定着ローラが用いられることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−85449(P2010−85449A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251283(P2008−251283)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】