説明

画像形成装置

【課題】電子写真方式を用いた画像形成時の消費電力を低減させ、且つ、片面及び両面への画像形成速度をより高速化する。
【解決手段】互いに逆方向に用紙50を搬送して用紙50にトナー像を転写する第1及び第2の画像転写部1,2と、この第1及び第2の画像転写部1,2に共通に設けられ、用紙50にトナー像を定着させる定着装置3とを備え、第1及び第2の画像転写部1,2に用紙50を供給する第1及び第2の給紙機構10,11と、第1及び第2の画像転写部1,2から到来する用紙50を受け入れる第1及び第2の排紙口18,19とで構成され、第1及び第2の画像転写部1,2とに並行して用紙50を給紙する高速な片面印刷と、第1の画像転写部1、定着装置3、第2の画像転写部2、定着装置3の順に用紙50を通過させる両面印刷を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式を用いて画像形成を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いて画像形成を行う画像形成装置は、露光、現像、転写及び定着を行う画像形成部を有し、詳しくは、感光ドラム上に印刷イメージを露光することにより静電潜像を形成した後、トナー像を付着させ(現像)、感光ドラムから用紙にトナー像を転写し、用紙に転写されたトナー像を熱と圧力とで定着させているものが一般的に知られている。
【0003】
近年、このような画像形成装置は、広くオフィス等に普及されており、資源を節約するという観点から用紙の両面に画像形成が可能な画像形成装置、また、両面、片面に限定されず、画像形成時の高速化に対応可能な画像形成装置などが求められている。
【0004】
ここで、一つの画像形成部によって両面印刷を実現する画像形成装置の場合、用紙をスイッチバックさせて両面に画像形成する方法が一般的に知られている。この方法は、位置決めなどを行う位置検出装置が必要になり、制御の構成が複雑になってしまう。また、位置決めを行う際に、用紙を一度停止させなければならないため、画像形成速度が低下してしまう。
【0005】
また、高速化に対応可能な画像形成装置の場合、作像線速をあげるか、又は、定着部の定着ニップ幅を広くする方法が一般的に知られているが、定着ニップ幅を広くするためには、定着装置に備えられたローラの大型化が必要になり、これにより、用紙を分離する際の分離性が悪くなってしまう。
【0006】
そこで、各々が転写紙供給部及び印刷後の収納部を別個に備えた複数のカラー画像形成装置を直列に配置し、その間に転写紙の面を反転させる反転装置を設け、スイッチバックを行わずに画像形成することができるとする提案がなされている。(例えば、特許文献1参照。)
【0007】
また、互いに印刷面が逆さな第1の画像形成ユニット及び定着装置と、第2の画像形成ユニット及び定着装置とを設け、別個に設けられた二つのカセットから各々に給紙するとともに、片面印刷の場合には、第1の画像形成ユニットから出力される記録紙を迂回させ、両面印刷の場合には、第1の画像形成ユニットから出力される記録紙を第2の画像形成ユニットに入力する画像形成装置の提案がなされている。(例えば、特許文献2参照。)
【0008】
また、複数のカセットの上方向に同一の構成の二つの画像形成部を積層して配置し、下側の画像形成部の周囲に設けられた複数の搬送切替え手段によって、複数の転写紙の各々に各画像形成部を並行して記録する片面記録と、下側の画像形成部で片面記録された転写紙をスイッチバックで反転させて上側の画像形成部に送り込む両面記録を行う画像形成装置の提案がなされている。(例えば、特許文献3参照。)
【特許文献1】特開平8−248695号公報
【特許文献2】特開2000−284644号公報
【特許文献3】特開2007−163809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1〜3の技術は、何れも、高速化は可能になるものの、二つの画像形成部の夫々に定着装置が設けられているため、大きな消費電力が必要になるという技術的課題がある。
【0010】
また、特許文献1の技術は、両面に画像形成する場合、反転装置の内部構成が不明であり、反転装置を用いて用紙を反転させる場合、画像形成速度にどのように影響するのか明確でない。また、転写紙供給部及び収納部が各々に必要になり、装置が大きくなるという技術的課題がある。
【0011】
また、特許文献2の技術は、片面に画像形成する場合、第1の画像形成ユニットで形成された用紙と第2の画像形成ユニットで形成された用紙とが裏表に排紙されてしまい、裏表を反転させる並べ替え等の煩雑な作業が必要になるという技術的課題がある。また、第1及び第2の画像形成ユニットの各々に2つの給紙カセットが設けられており、装置が大きくなるという技術的課題がある。
【0012】
また、特許文献3の技術は、両面に画像形成する場合、用紙をスイッチバックさせて画像形成しており、この時、上述したように、位置決めなどを行う位置検出装置が必要になり、制御の構成が複雑になるという技術的課題がある。また、位置決めを行う際に、用紙を一度停止させなければならないため、画像形成速度が低下してしまうという技術的課題がある。また、上記特許文献2と同様に2つの給紙カセットが設けられており、装置が大きくなるという技術的課題がある。
【0013】
本発明の目的は、電子写真方式を用いて画像形成する画像形成装置の画像形成時の消費電力を低減させ、且つ、片面及び両面への画像形成速度をより高速化することが可能な画像形成技術を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は装置を大型化することなく、画像形成速度の向上及び両面印刷を実現することが可能な画像形成技術を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の画像形成装置は、互いに逆方向に用紙を搬送して上記用紙にトナー像を転写する第1及び第2の画像転写部と、上記第1及び第2の画像転写部に共通に設けられ、上記用紙に上記トナー像を定着させる定着部とを備えて構成される。
【0016】
更に、この画像形成装置は、例えば、上記定着部は、各々が加熱および加圧の少なくとも一方を行う複数のローラを備え、互いに圧接する複数の上記ローラによって、上記第1の画像転写部から搬送される上記用紙に上記トナー像を定着する第1の定着機構部と、上記第2の画像転写部から搬送される上記用紙に上記トナー像を定着する第2の定着機構部とを備えて構成される。
【0017】
更に、この画像形成装置は、例えば、上記第1及び第2の画像転写部に共通な給紙部が設けられ、上記給紙部は、上記第1の画像転写部に上記用紙を供給する第1の給紙機構と、上記第2の画像転写部に上記用紙を供給する第2の給紙機構と、上記給紙部内に移動可能に設けられ、上記第1及び第2の給紙機構の夫々に供給される上記用紙を個別に収納するための仕切り部材とを備えて構成される。
【0018】
更に、この画像形成装置は、例えば、上記仕切り部材を上記給紙部の中央部に配置して、上記第1及び第2の給紙機構の夫々に供給される上記用紙を個別に複数列に収納する設定と、上記仕切り部材を上記給紙部の一端に片寄せて配置し、上記第1または第2の給紙機構に供給される上記用紙を一列に収納する設定とが実現される。
【0019】
更に、この画像形成装置は、例えば、上記第1及び第2の画像転写部に共通な排紙収納部が設けられ、上記排紙収納部は、上記第1の画像転写部から到来する上記用紙を受け入れる第1の排紙口と、上記第2の画像転写部から到来する上記用紙を受け入れる第2の排紙口とを備えて構成される。
【0020】
更に、この画像形成装置は、例えば、上記第1及び第2の画像転写部の夫々に上記用紙を供給して片面印刷を並列して行わせる第1の動作と、一つの上記用紙を上記第1の画像転写部、上記第1の定着機構部、上記第2の画像転写部、上記第2の定着機構部の順に通過させることで両面印刷を行わせる第2の動作とに切替え可能である。
【0021】
更に、この画像形成装置は、例えば、上記第1の動作では上記第1及び第2の給紙機構から並行して上記第1及び第2の画像転写部に給紙し、上記第2の動作では上記第1の給紙機構から上記第1の画像転写部に給紙する。
【0022】
更に、この画像形成装置は、例えば、上記第1の動作では上記排紙収納部に対して上記第1及び第2の排紙口から交互に上記用紙を受け入れ、上記第2の動作では上記排紙収納部に対して上記第2の排紙口から上記用紙を受け入れる。
【0023】
更に、この画像形成装置は、例えば、上記第1の画像転写部と上記定着部とを通過した上記用紙を上記第2の画像転写部に送り込むか、上記第1の排紙口に送り込むかを切替る搬送経路切替え部を備えて構成される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電子写真方式を用いて画像形成する画像形成装置の画像形成時の消費電力を低減させ、且つ、片面及び両面への画像形成速度をより高速化することができる。また、装置を大型化することなく、画像形成速度の向上及び両面印刷を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
(実施形態1)
図1は本実施の形態における画像形成装置の内部構成を簡略に示した側断面図である。画像形成装置23は、互いに逆方向に用紙50を搬送して用紙50にトナー像を転写する第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2と、この第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2に共通に設けられ、用紙50にトナー像を定着させる定着装置3(定着部)とを備えて構成されている。
【0027】
そして、後述のように、第1の画像転写部1と第2の画像転写部2との夫々に用紙50を供給して片面印刷を行わせる第1の動作と、一つの用紙50を第1の画像転写部1、定着装置3、第2の画像転写部2、定着装置3の順に通過させて両面印刷を行わせる第2の動作とに切り替え可能に構成されている。
【0028】
ここで、第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2は、用紙50の搬送方向が異なること以外、全て同じ構成であるので、以下、第1の画像転写部1について内部構成を説明する。
【0029】
第1の画像転写部1は最下部に感光体ドラム24を備えている。この感光体ドラム24は、その周面が例えば有機光導電性材料で構成されている。そして、感光体ドラム24の周面近傍を取り巻いて、クリーナ25、初期化帯電器26、光書込ヘッド27、現像器28、現像ローラ29及び用紙案内路を挟んで帯電転写ローラ30が配置されている。
【0030】
ここで、現像器28は、本実施の形態の場合、白黒印刷のため、上部のトナー容器にブラック(K)のトナーを収容し、中間部には下部へのトナー補給機構を備えている。
【0031】
尚、図1では、ブラック(K)のトナーを収容しているが、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)のトナーが収容された画像転写部を搬送方向に並設してカラー印刷の構成にすることも可能である。
【0032】
また、現像器28の下部には側面開口部に上記現像ローラ29を備え、内部にトナー撹拌部材、上記現像ローラ29にトナーを供給するトナー供給ローラ、上記現像ローラ29上のトナー層を一定の層厚に規制するドクターブレード等を備えている。
【0033】
本実施の形態では、第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2に共通な定着装置3が設けられ、この定着装置3は加熱および加圧の少なくとも一方を行うとともに、互いに圧接して転動する複数のローラを有し、これらのローラによって、第1の画像転写部1から搬送される用紙50にトナー像を定着する第1の定着機構部35と、第2の画像転写部2から搬送される用紙50にトナー像を定着する第2の定着機構部36とを備えて構成されている。
【0034】
詳述すると、定着装置3は三本の加熱機能を備えたローラを用紙50の搬送方向に対して直交した方向に互いに圧接する姿勢で配列させた構成となっている。すなわち、本実施の形態の定着装置3は中央の第2のローラ5と、この中央の第2のローラ5の上下に配置され、当該第2のローラ5に圧接する第1のローラ4および第3のローラ6を備えている。
そして、第2のローラ5と第1のローラ4とで第2の定着機構部36を構成し、第2のローラ5と第3のローラ6とで第1の定着機構部35を構成している。
【0035】
そして、中央の第2のローラ5を回転駆動させることで、第1のローラ4と第3のローラ6とが互いに反対方向に回転し、第1の定着機構部35と第2の定着機構部36の各々において、搬送方向が反対な複数の用紙50の定着動作を並行して同時に行うことが可能になっている。このような構成とすることで、上記定着装置3は用紙50の搬送方向が逆な第1の画像転写部1と第2の画像転写部2とに共通して用いることが可能になっている。
【0036】
ここで、定着装置3に備えられた第1のローラ4、第2のローラ5、第3のローラ6の内部には、夫々、ヒータ7、ヒータ8、ヒータ9が設けられている。尚、本実施の形態では、各ローラの全てにヒータを設けているが、定着性能が確保できれば、例えば、第2のローラ5のみでも、第1のローラ4と第3のローラ6との2本でも良い。
【0037】
第1の画像転写部1の搬送方向上流側には待機ローラ対31が位置し、その左方には下方から右に反転する形状に屈曲した用紙案内路32が位置する。また、第1の画像転写部1の下流側には定着装置3が位置する。
【0038】
第2の画像転写部2の搬送方向上流側にも待機ローラ対33が位置し、その右方には下方から左に反転する形状に屈曲した用紙案内路34が位置する。また、第2の画像転写部2の下流側にも定着装置3が位置する。そして、第2のローラ5と第3のローラ6とで構成された第1の定着機構部35の搬送方向下流側には、上方向(図1に示す搬送方向a)に延びた用紙案内路と、下方から右に反転する形状(図1に示す搬送方向b)に屈曲した用紙案内路37とが位置している。
【0039】
この用紙案内路37には、用紙案内路37を狭持する搬送ローラ21が設けられている。また、搬送方向aに延びた用紙案内路には、この用紙案内路を狭持する搬送ローラ22が設けられている。
【0040】
ここで、図1に示す搬送方向aと搬送方向bの分岐点である搬送ローラ21の近傍には、第1の画像転写部1と定着装置3とを通過した用紙50を第2の画像転写部2に送り込むか、後述する第1の排紙口に送り込むかの切替えを行う図示しない搬送経路切替え部を備えている。或いは、搬送ローラ21の図1に示す左方のローラと右方のローラとの回転速度を異ならせて切替えを行ってもよい。
【0041】
また、本実施の形態では第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2に共通に設けられた給紙カセット12(給紙部)が、画像形成装置23の底部に設けられている。給紙カセット12はこの給紙カセット12の両端部配置された第1の画像転写部1に用紙50を供給する第1の給紙機構10と、第2の画像転写部2に用紙50を供給する第2の給紙機構11とを備えて構成されている。
【0042】
第1の給紙機構10は給紙カセット12の左上方に形成された給紙口40の近傍に供給ローラ41、分離ローラ対42を設けて構成されている。また、第2の給紙機構11は給紙カセット12の右上方に形成された給紙口43の近傍に給紙ローラ44、分離ローラ対45を設けて構成されている。
【0043】
給紙カセット12はA3サイズと同等のサイズであり、この給紙カセット12には第1の給紙機構10及び第2の給紙機構11の夫々に用紙50を収納するための仕切り部材39が移動可能に設けられている。この仕切り部材39は左右に移動可能な第1の仕切り板13及び第2の仕切り板14を備えている。
【0044】
給紙カセット12の底部には第1の給紙機構10と第2の給紙機構11との各々に用紙50を送り込むために、用紙50を給紙可能な位置まで押し上げるための第1の押上げ板15と第2の押上げ板16とが設けられている。
【0045】
そして、上記第1の動作では第1の給紙機構10及び第2の給紙機構11から並行して第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2に用紙50を供給し、上記第2の動作では第1の給紙機構10から第1の画像転写部1に給紙するように構成されている。
【0046】
また、第1の給紙機構10は用紙案内路32の始端部に位置し、第2の給紙機構11は用紙案内路34の始端部に位置する。これにより、上述したように、上記第1の動作では第1の給紙機構10及び第2の給紙機構11から並行して第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2に用紙50を供給し、上記第2の動作では第1の給紙機構10から第1の画像転写部に給紙するように構成されている。
【0047】
また、本実施の形態の形態では第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2に共通して設けられた排紙収納部17が、画像形成装置23の筐体内の上部に設けられている。この排紙収納部17には第1の画像転写部1から到来する用紙50を受け入れる第1の排紙口18と、第2の画像転写部2から到来する用紙50を受け入れる第2の排紙口19とが備えられている。
【0048】
排紙収納部17は図1に示す幅AをA4横サイズより若干長い215mmから220mm程度の幅で構成されている。また図1に示す幅BをA3縦サイズより若干長い425mmから430mm程度の幅で構成されている。
【0049】
図1によりA4サイズ以下の用紙50への印刷工程を説明する。給紙カセット12に用紙50を二組に分け二列に挿入する。二組の用紙50の間には、第1の仕切り板13と第2の仕切り板14とがあり、A4サイズ以下の用紙50の場合は、第1の仕切り板13を第1の給紙機構10側に移動し、用紙50のサイズに合わせた位置にしており、第2の仕切り板14を第2の給紙機構11側に移動し、用紙50のサイズに合わせた位置にしている。
【0050】
片面印刷を行う場合は第1の給紙機構10より給紙された用紙50は第1の画像転写部1により画像転写され、定着装置3における第1の定着機構部35の第2のローラ5と第3のローラ6とによって転写画像を定着する。
【0051】
定着された用紙50は、図1に示す搬送方向aへ搬送され、第1の排紙口18により排紙収納部17に排出される。
【0052】
また、第2の給紙機構11より給紙された用紙50は、第2の画像転写部2により画像転写され、定着装置3における第2の定着機構部36の第1のローラ4と第2のローラ5とによって転写画像を定着し、第2の排紙口19により排紙収納部17に排出される。
【0053】
この時、排紙収納部17には第1の排紙口18と第2の排紙口19とにより排出される用紙50の印刷面は下向きのため、頁順に整列される。
【0054】
また、本印刷工程では、第1の給紙機構10より給紙された用紙50と第2の給紙機構11より給紙された用紙50とが交差部20で交差しているため、以下のようにして用紙50同士の衝突を回避する。
【0055】
この衝突を回避する方法として、たとえば、第2の給紙機構11より給紙された用紙50間を第1の給紙機構10より給紙された用紙50を通過させるようにしている。その為に搬送ローラ21により通過のタイミングを計り、搬送ローラ21と搬送ローラ22とにより用紙50の搬送スピードを速くしている。
【0056】
一例を示すと、第2の給紙機構11より給紙される用紙50の紙間が60mmとした場合、第1の給紙機構10より給紙された用紙50の交差部20での用紙50の搬送速度は、A4サイズの用紙50(紙幅210mm)の場合、第2の給紙機構11の搬送速度に対し、4倍程度速くしたスピードにする必要がある。
【0057】
両面印刷を行う場合は給紙カセット12から給紙される用紙50は第1の給紙機構10のみの給紙となる。第1の給紙機構10より給紙された用紙50は、第1の画像転写部1に画像転写され、定着装置3の第2のローラ5と第3のローラ6とによって転写画像を定着することにより、片面印刷を完成させる。
【0058】
その後、用紙50は図1に示す搬送方向bを通り、用紙50の裏面に対して第2の画像転写部2により画像転写され、定着装置3における第2の定着機構部36の第1のローラ4と第2のローラ5とによって転写画像を定着し、第2の排紙口19により排紙収納部17に排出される。
【0059】
(実施形態2)
図2により、A4サイズ以上の大きな用紙50を給紙カセット12に一列に収納して使用する場合の印刷工程を説明する。給紙カセット12内の第1の仕切り板13と第2の仕切り板14とを第1の給紙機構10側端面より用紙50のサイズに合わせて移動する。
【0060】
例えば、A3の場合の第1の仕切り板13と第2の仕切り板14とは、第2の給紙機構11側へ最大移動させるようになっている。その際、第2の押上げ板16による用紙50の押上げを行わないようにする。
【0061】
第2の押上げ板16の押上げ動作を抑止する方法としては、図示しないモータにより押上げる場合は、当該第2の押上げ板16を水平にした姿勢でモータを停止し、図示しないスプリングで押上げる場合は、第1の仕切り板13と第2の仕切り板14とに設けられた図示しないストッパ機能により、第2の押上げ板16を給紙カセット12の底部に水平に固定して押上げないようにする。
【0062】
第1の仕切り板13と第2の仕切り板14とを所定の位置にセットしたら、用紙50を挿入する。
【0063】
片面印刷を行う場合は、第1の給紙機構10より給紙された用紙50は、第1の画像転写部1を通過するが、ここでは、画像転写は行わない。その後、定着装置3の第2のローラ5と第3のローラ6との間を通過し、図2に示す搬送方向bに搬送されて、第2の画像転写部2により画像転写され、定着装置3の第1のローラ4と第2のローラ5とによって転写画像を定着し、第2の排紙口19により排紙収納部17に排出される。この時、排出される用紙50の印刷面は下向きとなる。
【0064】
両面印刷を行う場合は、上述したA4サイズ以下の用紙50への印刷工程と同様に、第1の給紙機構10から給紙を行い、第1の画像転写部1により画像転写され、定着装置3の第2のローラ5と第3のローラ6とによって転写画像を定着することによって、片面が印刷される。
【0065】
その後、用紙50は図2に示す搬送方向bに搬送され、裏面を第2の画像転写部2により画像転写され、定着装置3の第1のローラ4と第2のローラ5とによって転写画像を定着し、第2の排紙口19により排紙収納部17に排出される。
【0066】
上述の給紙カセット12における二列収納で片面印刷を並行して行う動作(第1の動作)を図3で示すフローチャートを参照してさらに詳細に説明する。図3は本実施の形態の画像形成装置における片面印刷時の動作の一例を示したフローチャートである。
【0067】
片面印刷を行う場合、印刷データが入力され(ステップS1)、この印刷データの頁の奇遇判断を行う(ステップS2)。そして、奇数頁と判断された印刷データを第1の画像転写部1に転送し(ステップS3)、偶数頁と判断された印刷データを第2の画像転写部2に転送する(ステップS4)。
【0068】
第1の給紙機構10より給紙された用紙50は、第1の画像転写部1により画像転写され(ステップS5)、定着装置3の第2のローラ5と第3のローラ6によって転写画像を定着する(ステップS6)。
【0069】
定着された用紙50は図1に示す搬送方向aへ搬送され、第1の排紙口18により排紙収納部17に排出される(ステップS7)。
【0070】
第2の給紙機構11より給紙された用紙50は、第2の画像転写部2により画像転写され(ステップS8)、定着装置3の第1のローラ4と第2のローラ5とによって転写画像を定着し(ステップS9)、第2の排紙口19により排紙収納部17に排出される(ステップS10)。
以上の処理を、印刷データの入力完了まで反復する(ステップS11)。
【0071】
この時、排紙収納部17では第1の排紙口18と第2の排紙口19とにより排出される用紙50の画像形成面は下向きのため、頁順に整列される。
【0072】
このように、本実施の形態の画像形成装置23の第1の動作では第1の給紙機構10及び第2の給紙機構11から並行して第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2に用紙50を供給することで、第1の画像転写部1と第2の画像転写部2とでは同時に用紙50にトナー像を転写することができ、定着装置3で同時に定着させることができる。これにより、片面に画像形成する際の画像形成速度をより高速化することができる。
【0073】
また、第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2に定着装置3を共通して設けることで、二つの定着装置を備える画像形成装置に比べ、消費電力を半減させることができる。
【0074】
また、一つの給紙カセット12に第1の給紙機構10と第2の給紙機構11とを備えることで、画像形成装置23の装置全体をより小型化することができる。
【0075】
また、1つの排紙収納部17に2つの排紙部を備えることで、画像形成装置23をより小型化することができる。
【0076】
また、第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2に短い用紙案内路で用紙50を搬送することができるので、搬送時のジャム率を低減させることができる。よって、より多量の画像形成を行うことができる。
【0077】
上述の両面印刷の動作(第2の動作)を図4で示すフローチャートを参照してさらに詳細に説明する。図4は本実施の形態の画像形成装置における両面印刷時の動作の一例を示したフローチャートである。
【0078】
両面印刷を行う場合、印刷データが入力され(ステップS41)、この印刷データの頁の奇遇判断を行う(ステップS42)。そして、奇数頁と判断された印刷データを第1の画像転写部1に転送し(ステップS43)、偶数頁と判断された印刷データを第2の画像転写部2に転送する(ステップS44)。
【0079】
第1の給紙機構10より給紙された用紙50は、第1の画像転写部1により、奇数頁が画像転写され(ステップS45)、定着装置3の第2のローラ5と第3のローラ6によって転写画像を定着することにより(ステップS46)、片面の画像形成を完成させる。
【0080】
その後、用紙50は図1に示す搬送方向bに搬送され、用紙50の裏面に対して第2の画像転写部2により偶数頁が画像転写され(ステップS47)、定着装置3の第1のローラ4と第2のローラ5とによって転写画像を定着し(ステップS48)、第2の排紙口19により排紙収納部17に排出される(ステップS49)。この時、用紙50は奇数頁面が下方に向けて排出される。これにより、用紙50は頁順に配列されて排出される。
以上の処理を、印刷データの入力完了まで反復する(ステップS50)。
【0081】
このように、第1の定着機構部35の搬送方向下流側に下方から右に反転する形状に屈曲した用紙案内路37で用紙50が第2の画像転写部2、第2の定着機構部36に搬送されるため、用紙50を停止させずに両面に画像形成することができる。よって、両面印刷時の画像形成速度をより高速化することができる。
【0082】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2を互いに対向させ、その間に定着装置3を設けたことにより、一台の定着装置3で二枚の用紙50を同時に定着する事が可能となり、定着装置を二台搭載の画像形成装置に比べ、熱効率を向上させ消費電力の低減が図れると共に、画像形成装置の小型化及びコストの削減の効果がある。
【0083】
また、第1の給紙機構10と第2の給紙機構11とを給紙カセット12の両端に設けたことにより、互いに対向させた第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2へ短い距離で用紙50を搬送でき、搬送時のジャム率の低減効果がある。
【0084】
また、可動式の第1の仕切り板13及び第2の仕切り板14を採用したことにより、一つの給紙カセット12で、二列収納による二枚の用紙50の同時給紙と、用紙50のサイズに応じた一列収納の切替えが可能となる効果がある。
【0085】
また、一つの排紙収納部に互いに対向する第1の排紙口18及び第2の排紙口19を設けたことにより、互いに対向する第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2においても、印刷された用紙50の印刷面を統一して頁順に整列させることができるという効果がある。
【0086】
また、第1の排紙口18及び第2の排紙口19の下側に排紙収納部17を設けることにより、用紙切替え機能を持たずにA3までのどのサイズに対しても、用紙50を整列させられるので、コスト削減の効果がある。
【0087】
これにより、本実施の形態の画像形成装置23は、小型化、省スペース、省電力、コストの削減、高速印刷機の提供が可能となるという効果がある。
【0088】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されない。
上述した実施例では、用紙50同士の衝突を避ける方法として、一枚の用紙50の搬送速度を速め、紙間を通過させる場合を例示したが、本発明は第1の給紙機構10より搬送されてくる用紙50を定着装置3で定着した後に搬送方向を90度変えて、用紙50を第2の画像転写部2の前面を通して第1の排紙口18に搬送しても良い。
【0089】
また、A3サイズの給紙カセット12を一台使用した場合を例示したが、給紙カセット12を2段にして、A3の場合でも、A4の場合と同様に片面印刷を二枚同時に行ってもよいし、A2サイズの給紙カセットにして、A4の四枚同時印刷又はA3の二枚同時印刷でもよい。
【0090】
また、対向した第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2と、三本のローラからなる一台の定着装置3と、一台の給紙カセット12とで構成された場合を例示したが、対向した第1の画像転写部1及び第2の画像転写部2を上下二列に配置し定着装置3は五本のローラ使用による一台の定着装置で二段にした二台の給紙カセット12を使用するように構成しても良い。また、それ以上でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の形態の画像形成装置の内部構成を簡略に示した側断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の他の画像形成装置の内部構成を簡略に示した側断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の画像形成装置における片面印刷の印刷工程を示したフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態の画像形成装置における両面印刷時の動作の一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0092】
1 第1の画像転写部
2 第2の画像転写部
3 定着装置
4 第1のローラ
5 第2のローラ
6 第3のローラ
7 ヒータ
8 ヒータ
9 ヒータ
10 第1の給紙機構
11 第2の給紙機構
12 給紙カセット
13 第1の仕切り板
14 第2の仕切り板
15 第1の押上げ板
16 第2の押上げ板
17 排紙収納部
18 第1の排紙口
19 第2の排紙口
20 交差部
21 搬送ローラ対
22 搬送ローラ対
23 画像形成装置
24 感光体ドラム
25 クリーナ
26 初期化帯電器
27 光書込ヘッド
28 現像器
29 現像ローラ
30 帯電転写ローラ
31 待機ローラ対
32 用紙案内路
33 待機ローラ対
34 用紙案内路
35 第1の定着機構部
36 第2の定着機構部
37 用紙案内路
39 仕切り部材
40 給紙口
41 供給ローラ
42 分離ローラ対
43 給紙口
44 供給ローラ
45 分離ローラ対
50 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに逆方向に用紙を搬送して前記用紙にトナー像を転写する第1及び第2の画像転写部と、
前記第1及び第2の画像転写部に共通に設けられ、前記用紙に前記トナー像を定着させる定着部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定着部は、各々が加熱および加圧の少なくとも一方を行う複数のローラを備え、互いに圧接する複数の前記ローラによって、
前記第1の画像転写部から搬送される前記用紙に前記トナー像を定着する第1の定着機構部と、
前記第2の画像転写部から搬送される前記用紙に前記トナー像を定着する第2の定着機構部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の画像転写部に共通な給紙部が設けられ、前記給紙部は、
前記第1の画像転写部に前記用紙を供給する第1の給紙機構と、
前記第2の画像転写部に前記用紙を供給する第2の給紙機構と、
前記給紙部内に移動可能に設けられ、前記第1及び第2の給紙機構の夫々に供給される前記用紙を個別に収納するための仕切り部材と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記仕切り部材を前記給紙部の中央部に配置して、前記第1及び第2の給紙機構の夫々に供給される前記用紙を個別に複数列に収納する設定と、
前記仕切り部材を前記給紙部の一端に片寄せて配置し、前記第1または第2の給紙機構に供給される前記用紙を一列に収納する設定と、
が実現されることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の画像転写部に共通な排紙収納部が設けられ、前記排紙収納部は、
前記第1の画像転写部から到来する前記用紙を受け入れる第1の排紙口と、
前記第2の画像転写部から到来する前記用紙を受け入れる第2の排紙口と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の画像転写部の夫々に前記用紙を供給して片面印刷を並列して行わせる第1の動作と、
一つの前記用紙を前記第1の画像転写部、前記第1の定着機構部、前記第2の画像転写部、前記第2の定着機構部の順に通過させることで両面印刷を行わせる第2の動作と、
に切替え可能であることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1の動作では前記第1及び第2の給紙機構から並行して前記第1及び第2の画像転写部に給紙し、
前記第2の動作では前記第1の給紙機構から前記第1の画像転写部に給紙する、
ことを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1の動作では前記排紙収納部に対して前記第1及び第2の排紙口から交互に前記用紙を受け入れ、
前記第2の動作では前記排紙収納部に対して前記第2の排紙口から前記用紙を受け入れる、
ことを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第1の画像転写部と前記定着部とを通過した前記用紙を前記第2の画像転写部に送り込むか、前記第1の排紙口に送り込むか、を切替る搬送経路切替え部を備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−8817(P2010−8817A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169623(P2008−169623)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】