説明

画像形成装置

【課題】走査線の傾きや副走査方向のレジストズレによる色ズレが生じた場合の調整を、作業しやすい状態で簡単に行う。
【解決手段】光走査装置40は排紙トレイ6のすぐ下に配置されている。排紙トレイ手前側の装置前端部の外装部材に調整穴10を設ける。また、光走査装置40の上蓋にも導入穴41を設ける。上記調整穴10は、排紙トレイ6の上方にある読取部や圧板(又はADF)と重ならない位置に(投影範囲外に)設けられる。調整穴10から調整用工具49を差し込み、導入穴41から工具49を光走査装置40内に導入させ、調整ネジ45を回して傾き調整あるいはレジスト調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関し、特に、光走査装置の走査線の調整に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いる複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置においては、近年、機械の小型化および低価格化が進んでおり、合わせて、高速化・画像の高画質化が要求されている。カラー画像形成装置にあっては高速化に対応可能なタンデム型が広く採用されているが、そのタンデム型画像形成装置においては、小型化を図るために、複数備えている感光体のピッチ(間隔)を狭くする傾向にある。
【0003】
感光体に静電潜像を形成させるための光走査装置は、1台の画像形成装置に一つに限定されるものではなく、各感光体に個別に光走査装置を備える構成もある。そのような構成において、光走査装置を小型化することは可能ではあるが、ポリゴンスキャナが高価なために、光走査装置を複数台搭載することはコストを上昇させることとなる。一方、光走査装置が一つ(1台)の場合、ポリゴンスキャナは1個で済むが、感光体までの光路が複雑になり、折り返しミラーを備えることによって光走査装置の大型化を招く。最近では、2台の光走査装置を備え、ポリゴンスキャナの数を抑制するとともに、光路の複雑化を避けて小型化を図るようにした画像形成装置も発売されている。
【0004】
また、近年は、装置小型化を計るために、装置筐体内に排紙部を設けた、いわゆる胴内排紙型の画像形成装置が数多く生産されている。胴内排紙型については、例えば、特開2004−271896号公報(特許文献1)、特開平11−160941号公報(特許文献2)、特開平8−339106号公報(特許文献3)などで開示がなされている。
【0005】
ところで、画像品質に関しては、カラー画像形成装置では色ズレなどによる画像品質の低下が大きな問題となっている。これは、それぞれの感光体に書かれた潜像がズレていたり,転写工程でズレたり,定着時にズレるなどが要因となっている。画像の高画質化を図るために、折返しミラーや走査レンズを変形させたり移動させることで走査線を重ねたときに色ズレを小さくするような方法が広く知られている。例えば、折返しミラーの反射面の裏面の中央部近傍をネジで湾曲させて走査線の曲がりを補正したり、レンズの副走査方向からネジで押圧してレンズを変形させ、走査線を曲げたりする方法が用いられている。
【0006】
また,走査線が感光体に対して傾いて書き込まれるときには、ミラ−やレンズ端部を光軸方向に前後させ、走査線の位置を相互に一致させるようにする方法が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
画像品質の低下に関しては、工場での組立調整時のみならずユーザー元への着荷時に、走査線の傾きや副走査方向のレジストズレによる色ズレが発生することが充分に考えられる。例えば、画像形成装置の光走査装置を組付けている部分や、光走査装置の剛性が不足している場合、ユーザーの機械設置で段差が生じていると、簡単に走査線が設定していた位置から傾いたり、副走査方向レジストがずれることが頻繁に起こっている。それに対して、走査線曲りはほとんど変動することはない。
【0008】
従来より、モータ等を使用して走査線の傾きや曲がりを調整する方法が提案されているが、大きく色ズレが生じるのは機械を移動させたときのみであり、極論すれば1回使うかどうかの機構にコストを掛けるのは無駄が大きい。
【0009】
手動で調整を行う場合でも、調整機構が前カバーを開けた状態で行う場合には、一々カバーを開け閉めして調整するのは面倒な作業で、調整に時間がかかってしまう。カバーを開放した状態で作業をしようとすると、カバーが開いた状態でも機械が動作するような治具が必要となる。また、排紙された画像を見ながら調整できないので時間がかかってしまう。
【0010】
さらに、胴内排紙部から手を入れて調整しようとすると、調整部分にアクセスするまでに時間がかかり、最悪スキャナ部分を外して作業しなければならない。また、排紙される紙と接触する可能性があるので、工具等を一次退避させなければならず、面倒であり調整に時間がかかってしまう。
【0011】
本発明は、従来の画像形成装置における上述の問題を解決し、走査線の傾きや副走査方向のレジストズレによる色ズレが生じた場合の調整を、作業しやすい状態で簡単に行うことのできる、調整作業性に優れた画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題は、本発明により、光源から出射された光ビームを偏向器により偏向させて被走査面を走査する光走査装置を備えた画像形成装置であって、被走査面上における前記光ビームの位置を変化させる走査線調整手段を有し、当該画像形成装置の外装部材に前記走査線調整手段を調整する調整穴が設けられ、装置外部から前記走査線調整手段を調整可能であることを特徴とする画像形成装置により解決される。
【0013】
また、前記調整穴が、当該画像形成装置の上方から視認可能な位置に設けられていると好適である。
また、原稿画像を読み取る読取装置を具備し、前記調整穴が、前記読取装置の投影面に重ならないように配置されていると好適である。
【0014】
また、前記読取装置と前記光走査装置の間に排紙部が設けられ、前記調整穴が、前記排紙部に排紙された記録媒体と重ならないように配置されていると好適である。
また、当該画像形成装置の上面に排紙部が設けられ、前記調整穴が、前記排紙部に排紙された記録媒体と重ならないように配置されていると好適である。
【0015】
また、前記走査線調整手段が前記読取装置の投影範囲内または前記排紙部に排紙された記録媒体の投影範囲内に配置されていると好適である。
また、前記調整穴が被覆部材により被覆されていると好適である。
【0016】
また、前記調整穴の周囲に、調整用工具の挿入をガイドするガイドリブが設けられていると好適である。
また、前記走査線調整手段が走査線の傾きを調整すると好適である。
【0017】
また、前記走査線調整手段が走査線の副走査方向の位置を調整すると好適である。
また、前記走査線調整手段が調整ネジを有し、該調整ネジが被調整部材に対して非垂直又は光軸方向に非水平な方向に当接されると好適である。
【0018】
また、前記光走査装置による被走査面としての像担持体を複数個備え、各像担持体上に形成した可視像を重ねて出力可能であるとと好適である。
また、前記光走査装置を複数個備えると好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の画像形成装置によれば、外装部材に調整穴が設けられて装置外部から走査線調整手段を調整可能であるため、作業しやすい状態で簡単に調整作業を行うことができる。また、前カバーを開けたり、光走査装置を取り外す必要も無く、調整作業がきわめて容易になる。さらに、前カバーを開ける必要が無いためインターロックスイッチにより電源がオフにならず、装置のダウン時間を低減させることができる。また、装置の動作可能状態で調整作業ができるため、調整結果をすぐに確かめることができる。
【0020】
請求項2の構成により、調整穴の視認及びアクセスがし易く、作業性が向上する。
請求項3の構成により、読取装置が調整作業の邪魔にならず、調整作業がやり易い。
請求項4の構成により、胴内排紙部に排紙された記録媒体が調整作業の邪魔にならず、調整作業がやり易い。
【0021】
請求項5の構成により、装置上面の排紙部に排紙された記録媒体が調整作業の邪魔にならず、調整作業がやり易い。
請求項6の構成により、走査線調整手段を読取装置の投影範囲内または排紙された記録媒体の投影範囲内に配置できるため、画像形成装置内部における光走査装置のレイアウトの余裕度が向上する。
【0022】
請求項7の構成により、調整穴からの埃等の侵入を防ぎ、画質の低下や機械の故障を防止することができる。
請求項8の構成により、調整穴への工具の挿入がし易くなり、作業性を向上させることができる。
【0023】
請求項9の構成により、走査線の傾きを調整して良好な出力画像を得ることができる。
請求項10の構成により、走査線の副走査方向の位置を調整して良好な出力画像を得ることができる。
【0024】
請求項11の構成により、調整ネジの送り方向に対して送りピッチを細かくすることができ、調整の分解能を高めることができる。そのため、より細かな色合わせが可能となる。また、調整対象である光学素子に対するネジ角度の自由度が大きく、調整しやすい角度に設定することができるため、調整手段へのアクセスがし易くなり、調整作業が容易になる。
【0025】
請求項12の構成により、像担持体を複数個備えた画像形成装置における色ずれを無くして高品質なカラー画像を得ることができる。
請求項13の構成により、光ビームの光路を単純化でき、光走査装置及び画像形成装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例である胴内排紙型複写装置を示す外観斜視図である。
【図2】その複写装置の上面図である。
【図3】その複写装置の画像形成部の概略を示す構成図である。
【図4】排紙トレイを取り外した状態の上面図である。
【図5】片方の光走査装置の上蓋をはずした状態の上面図である。
【図6】調整穴と光走査装置の位置関係を示す部分断面図である。
【図7】調整ネジが排紙領域内又は読取装置投影範囲内にある構成を示す模式図である。
【図8】調整穴を排紙トレイとは別の部材に設けた構成例を示す部分斜視図である。
【図9】個別の調整穴に代わる調整角穴を設けた構成例を示す部分斜視図である。
【図10】その調整角穴を覆うカバー部材を外した状態を示す部分上面図である。
【図11】光走査装置の一般的な構成を示す模式図である。
【図12】走査線の調整方法の一例を示す模式図である。
【図13】2つの調整ネジによるミラーの変位が特殊な例を示す模式図である。
【図14】読取部をもたない画像形成装置の一例を示す外観斜視図である。
【図15】そのカラープリンタの上面図である。
【図16】その内部構成を示す断面図である。
【図17】装置の一部を切り欠いて内部構成を示す斜視図である。
【図18】光走査装置を1つ備えたカラープリンタの内部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例である胴内排紙型複写装置を示す外観斜視図である。また、図2は、その複写装置の上面図である。これらの図に示す本実施形態の複写装置は、装置本体の中央部を占めるように画像形成部1が設けられ、その画像形成部1の下に給紙部2が設けられる。画像形成部1の上の筐体内空間は胴内排紙部5として構成され、その胴内排紙部5の底部は排紙トレイ6となっている。さらに胴内排紙部5の上方には、原稿画像を読み取る読取部3が配設されている。読取部3の上面には圧板4が配置される。本実施形態では備えていないが、ADFと呼ばれる自動原稿送り装置を読取部3の上面に装着しても良い。また、読取部3の片側の装置前面に位置して操作パネル7が設けられる。この操作パネル7は、各種情報を表示する表示手段8を備えている。なお、表示手段8を、入力も可能なタッチパネルとしても良い。
【0028】
図3は、画像形成部1の概略を示す構成図である。本例の画像形成部1は、タンデム方式を採用してフルカラー画像を形成可能に構成されており、4個の作像ユニット30(Bk,M,C,Y)を備えている。各作像ユニット30(Y,C,M,Bk)は、中間転写ベルト38の上部走行辺に沿って並設されている。支持ローラ36,37に巻き掛けられた中間転写ベルト38は図中反時計回りに走行駆動される。
【0029】
各作像ユニット30は扱うトナーの色が異なるのみで構成は同一であり、像担持体としての感光体ドラム31を具備している。この感光体ドラム31の周りには、帯電手段32、現像装置33、クリーニング手段34等が配置され、さらに各感光体ドラム31に対向するように中間転写ベルト38の内側に一次転写手段としての転写ローラ35が設けられている。
【0030】
4つの作像ユニット30の上方には光走査装置40が設けられている。光走査装置40はポリゴンミラーやレンズ及びミラー等の光学素子を有しており、光変調されたレーザ光を各色作像ユニットの感光体ドラム31の表面に照射する。なお、図示例では、各作像ユニットごとに光走査装置を備える構成であるが、一つの光走査装置で4つの感光体を走査する構成や、二つの光走査装置で4つの感光体を走査する構成も可能である。
【0031】
装置本体の下部に位置する給紙部2(図1)には、用紙を積載する給紙トレイ21が配設されており、給紙ローラが用紙を一枚ずつに分離して送り出す。給紙ローラの上方(用紙搬送方向の下流側)にはレジストローラ22が設けられている。さらに、レジストローラ22の上方には、二次転写手段としての転写ローラ23が、転写対向ローラとなる支持ローラ37に対向して設けられ、二次転写部を形成している。
【0032】
二次転写部の上側には定着装置24が設けられている。本例の定着装置24は定着ローラ及び加圧ローラを有する構成であり、二次転写部にて未定着トナー像が転写された用紙を加熱・加圧することにより定着する。定着装置24の上方には排紙ローラ25が設けられ、胴内排紙部の排紙トレイ6上に定着後の用紙を排出する。
【0033】
このように構成された画像形成部1における作像動作は、従来周知の電子写真方式によるものであるため、作像動作についての説明は省略する。本実施形態では、コピー枚数の設定や用紙選択、あるいは画像濃度や複写倍率等の指定・入力は、図1に示す操作パネル7から、表示部8の表示を見ながら行うことができる。
【0034】
上述したように、画像形成部1においては、4個の作像ユニット30(Bk,M,C,Y)が並んだタンデム作像部の上に光走査装置40が設けられている。この光走査装置40は、図3からも分かるように、胴内排紙部の底面である排紙トレイ6の直ぐ下に位置して配設されたものである。そして、図1,2に示されるように、本実施形態においては、排紙トレイ6の前端部(装置前側の端部)に、4つの調整穴10が設けられている。この調整穴10は、排紙トレイ6の直下に位置する光走査装置40にアクセスして走査線の調整を行うためのものである。走査線の調整方法については後述する。図2の上面図から分かるように、4つの調整穴10は、読取部3及び圧板4と重ならない位置に(投影範囲外に)設けられる。また、図4で後述するように、4つの調整穴10は、胴内排紙部5の排紙トレイ6上に排出された用紙とも重ならない位置に設けられる。調整穴10の大きさは、ドライバや六角のホールセットキーなどの調整用工具が入る大きさに設定する。孔の形状は適宜設定すればよい。なお、調整穴10からゴミなどの塵芥が入らないように、シール部材やカバー等で塞いでも良いし、樹脂フック等の穴塞ぎ用部材を用いて塞いでも良い。
【0035】
本例では、排紙トレイ6の前端部(装置前側の端部)が装置外装材の一部となっており、その部分に調整穴10を設けているが、装置手前側部分を排紙トレイとは別の外装材により覆うように設け、その外装部材に調整穴10を設けてもよい。
【0036】
図4は、排紙トレイ6を取り外した状態の上面図である。ここでは、二つの光走査装置(40,40)で4つの感光体を走査する構成で示してある。排紙トレイ6を取り外したことにより、画像形成部1の最上部に配置されている光走査装置40,40(の一部)が見えている。図に示すように、光走査装置40の上蓋には、上記調整穴10から挿入された工具を光走査装置内部に導入させるための導入穴41,41が設けられている。図3の各作像ユニットごとに光走査装置を備える構成では、1つの光走査装置40に1つの導入穴41で良い。また、図示していないが、一つの光走査装置で4つの感光体を走査する構成では、光走査装置に4つの導入穴41を設ける。
【0037】
図5は、片方の光走査装置40の上蓋をはずした状態の上面図である。また、図6は、調整穴10と光走査装置40の位置関係を示す部分断面図である。これらの図に示すように、光走査装置40の内部には、光ビーム偏向手段としての回転多面鏡であるポリゴンミラーを備えるポリゴンスキャナ54や折返しミラー56などが配置されている。なお、ここでは光走査装置40の構成は簡略化して示しており、図11を参照して後述するような構成を有するものである。さて、折返しミラー56はホルダ44に保持され、そのホルダ44には、走査線を調整するための調整ネジ45が設けられている。調整ネジ45は折返しミラー56の長手方向の一端部近傍を押す位置関係を取るように、画像形成装置の前後方向で言うと装置手前側の端部に位置するように設けられたものである。なお、傾き調整とレジスト調整のどちらを調整するかは機械によって異なるので、一つのミラー・光学素子で両方の調整を行う場合は、より調整が必要となる方を装置手前側に持ってくるようにし、調整穴10からその調整を行うように構成する。また、以下では走査線の調整を行う光学素子を折返しミラーとして説明するが、レンズその他の光学素子であっても構わない。
【0038】
光走査装置40の上蓋に設けられた導入穴41は、調整ネジ45の位置に合わせて設けられている。そして、その導入穴41の位置に合うように、上述した調整穴10が設けられる。導入穴41及び調整穴10は、装置幅方向だけでなく、装置前後方向においても調整ネジ45と対応する位置に設けられたものである。なお、走査線の調整は、複数の折返しミラーを有する場合はどのミラーで行っても良いが、光路上の感光体31に最も近い折返しミラーで調整するのが望ましい。また、傾き調整とレジスト調整を1つのミラーにまとめても良いし、別のミラーでそれぞれ傾き調整、レジスト調整を行うようにしても良い。その場合は、調整を行うミラー(調整ネジ)に合わせて導入穴41及び調整穴10を設ける。
【0039】
そして、図6に示すように、調整穴10から調整用工具49を差し込み、導入穴41から工具49を光走査装置40内に導入させ、調整ネジ45を回して傾き調整あるいはレジスト調整を行う。このとき、図2,4から明らかなように、調整穴10は読取部3及び圧板4と重ならない位置に設けられる。また、調整穴10は胴内排紙部5の排紙トレイ6上に排出された用紙とも重ならない位置に設けられている。したがって、調整穴10から調整用工具49を差し込んで走査線の調整を行うにあたって、画像形成装置の上方(上面)から簡単に作業を行うことができる。
【0040】
また、図6に示すように、調整穴10は、孔の周囲を囲うようにして設けられ光走査装置40方向に向かって延びる筒状のガイドリブ11を有している。ガイドリブ11は、調整穴10が設けられる排紙トレイ6の延長部分(装置手前側の部分)あるいはトレイとは別部材のカバー等に凸設されるものである。このガイドリブ11により、調整用工具49の挿入時に工具が案内されて下方の導入穴41に導かれ、工具49が容易に光走査装置40内に導入される。なお、導入穴41にも(光走査装置40の上蓋にも)ガイドリブ11と同様のガイドリブを設けてやれば、より簡単に工具を調整ネジ45に導くことができる。ガイドリブ11(及び、導入穴41に設けるガイドリブ)は、調整穴10(及び、導入穴41)の孔(穴)の大きさが入口部よりも出口部の方が小さくなるように設けることで、工具の遊びを少なくでき、より確実に工具を調整ネジ45に導くことができる。
【0041】
ここで、図6では、調整用工具49が光走査装置40に対して垂直(角度βが90度)になるように記載されているが、調整穴10,導入穴41,調整ネジ45が一直線に並ぶようになっていれば良く、βが90度でなくとも良い。また、折返しミラー56と調整ネジ45の当接角θは、必ずしも折返しミラー56の反射面に直交する(θ=90度である)必要はなく、機械上方から調整しやすい方向に設定すれば良い。
【0042】
また、図7で説明するように、調整用工具を装置奥側に傾けて挿入し、走査線の調整を行うように構成しても良い。図7において、図の右側が装置手前側、図の左側が装置奥側である。この例では、調整穴10と導入穴41は、装置前後方向にズレた配置となっており、調整穴10の方が導入穴41よりも手前側にある。そして、調整用工具49を装置奥側に傾けて挿入し、調整ネジ45を回して折返しミラー56の走査線調整を行う。図中の「H」は排紙領域又は読取装置3と重なる領域(投影範囲)を示しており、調整ネジ45は排紙領域内又は読取装置投影範囲内にあるが、調整作業を排紙領域外又は読取装置投影範囲外からできるように、調整ネジ45の折返しミラー56に対する角度γおよび調整穴10,導入穴41の位置を適宜設定する。
【0043】
ところで、一般的な画像形成装置においては、メンテナンス作業時等に外装カバーの開放により装置の主電源をOFFさせるインターロックスイッチが設けられている。このようなインターロックスイッチは、ユーザーの安全確保を目的として設けられるもので、本実施形態でも、図1に示す前カバー9の開放により装置の主電源がOFFされる。従来の画像形成装置では、走査線の調整は前カバー等の外装カバーを開放または取り外して作業を行う必要があったため、カバーの開閉やカバーの脱着に手間がかかり、作業が面倒であった。また、外装カバーの開放または取り外しによって装置の主電源がOFFされるため、走査線調整の結果を直ぐに見ることができなかった(調整結果を見るための出力を直ちに行うことができなかった)。
【0044】
これに対し、本実施形態においては、前カバー9を開けずに装置上面の調整穴10から調整でき、また、上述したように読取部3が邪魔になることもなく、調整作業がきわめて容易である。さらに、前カバー9の開放が必要ないことからインターロックスイッチにより装置の主電源がOFFされることもなく、調整後直ちにプリント出力を行って調整具合を確かめることができ、この面でも作業性を大きく向上させることができる。一度調整した後に(結果確認後に)再調整が必要であればすぐにまた、調整作業を行うことができる。
【0045】
図8は、調整穴10を排紙トレイ6を構成する部材に設けるのではなく、別部材に設けた構成例(第2実施例)を示す部分斜視図である。この図において、胴内排紙部5の手前側部分の装置外装部材12は、排紙トレイ6とは別部材で構成されている。そしてその装置外装部材12に調整穴10が設けられている。これ以外は上記説明した第1実施例と同じであり、重複説明は省略する。
【0046】
次に、個別の調整穴10を設けずに装置上面から走査線の調整を可能とした実施例(第3実施例)を説明する。
図9は、第3実施例の画像形成装置(の一部)を示す部分斜視図である。この図に示すように、本実施例の装置では、胴内排紙部5手前側の装置前面の外装部に個別の調整穴10が設けられておらず、代わりに装置外装部(排紙トレイ6と一体の部材でも、別体の部材でもよい)に脱着可能な小カバー13が設けられている。この小カバー13を取り外すと、図10に示すように、調整角穴14を通して下方の光走査装置40,40が見え、光走査装置の上蓋に設けた導入穴41にアクセスできるようになっている。そして、上述した調整工具49を導入穴41から差込、第1実施形態の場合と同様にして調整ネジ45を回して折返しミラー56の走査線調整を行う。ここでは光走査装置40を二つ備える例を示したが、光走査装置を1つ、あるいは4つ備える構成も可能である。個別の調整穴10に代えて調整角穴14(とそれを塞ぐ小カバー13を)設けたこと以外は、上記した第1、第2実施例と同様であるため、重複説明を省略する。
【0047】
次に、光走査装置における走査線の調整方法について説明する。なお、走査線の調整自体は、従来周知な方法を採用できるため、一般的な構成により説明する。
図11は、光走査装置の一般的な構成を示す模式図である。通常、光走査装置は、光源部であるレーザダイオード51,光源部から拡散するレーザ光を平行光にするコリメータレンズ52,平行光を偏向器であるところの回転多面鏡54で集束させるシリンドリカルレンズ53,回転多面鏡54で走査され再び拡散するレーザ光を被走査媒体であるところの感光ドラム31上に集束させ、かつ走査速度を一定にするためのfθレンズ55,走査されたレーザ光を感光体ドラム31上に導くミラー56にて構成されている。なお、本発明は走査線の調整を行う点に特徴があるので、実施形態においては、ミラー56を図6で説明したように走査線の調整が可能なように構成している。ただし、ミラー以外の光学素子、たとえばレンズを用いて走査線を調整するようにしても良い。
【0048】
レーザ光を走査する場合に、感光ドラム31上の所望の走査線Lに対して、「位置ずれ」と称する平行にずれる走査線Li,「角度ずれ」と称する角度を成してずれる走査線Lkとなる。ずれが生ずる原因としては各部品及び筐体の加工誤差、組立誤差が有り、これらを無くす為には多大な労力を要し、現在の加工技術ではコスト的に不可能に近い。
【0049】
つまり、あらかじめ書式の印刷された用紙に書き込みを行なう場合に、その書式からずれるという不都合が生じる為、走査線のずれを補正する調整作業を行なわなければならない。そこでミラー56を用いて走査線を調整することにより、ずれた走査線Li又は走査線Lkを所望の走査線Lに近ずけることが必要となる。
【0050】
図12は、走査線の調整方法の一例を示す模式図である。
(a)図には折返しミラー56の平面図が示されている。(b)図及び(c)図にはそれぞれ折返しミラー56がホルダ44に保持される様子が断面図で示されている。折返しミラー56を保持するホルダ44はアルミ鋳物やプラスチック等で形成され、調整ネジ45(45A,45B)がねじ込まれるネジ穴が設けられている。また、ホルダ44には、ミラー長手方向における調整ネジ45A側でミラーを載せる凸部44aと、ミラー長手方向における調整ネジ45B側でミラーを載せる凸部44bと、ミラー長手方向における調整ネジ45B側と反対側でホルダ壁部から突設される凸部44cとが設けられている。
【0051】
(b)図は返しミラー56の点60を通るミラーに垂直な面で切断した断面図である。折返しミラー56は、ホルダに固定された板バネ67によって片面側から押圧され、その反対側を調整ネジ45Aで押さえられている。調整ネジ45Aは、(a)図の点60に当接される。(b)図では調整ネジ45Aがミラー56に当接する点を76で示してある。また、ミラー56が凸部44aに当接する点が68で示してある。
【0052】
(c)図は、直線63を通るミラーに垂直な面で切断した断面図である。折返しミラー56は、ホルダに固定された板バネ74によって片面側から押圧され、その反対側を調整ネジ45Bで押さえられている。調整ネジ45Bは、(a)図の直線63上にある点64でミラー56に当接される。(b)図では調整ネジ45Bがミラー56に当接する点を72で示してある。さらに、ミラー56は、凸部44cの角部である点75にて当接されている。
【0053】
すなわち、折返しミラー56は、その片面において、上記の点76,72,75の3点により一平面が規定され、これによりミラー反射面が空間上の一平面に固定される。さらにその平面上でのミラー56の移動を規制することを目的に、点68及び点73にてホルダ44(の凸部44a,44b)に当接している。したがって、調整ネジ45A,調整ネジ45Bをそれぞれ進退させれば、折返しミラー56の走査光束に対する角度をある範囲で変えることができる。
【0054】
つまり、調整ネジ45Aを進退させるとミラー56は直線63を中心として回転し、走査線の角度ズレ(傾き)の補正を行うことができる。また、調整ネジ45Bを進退させるとミラー56は直線61を中心として回転し、走査線の位置ズレの補正を行うことができる。ただし、この位置ズレの補正では少なからず角度ズレが発生する。しかし、直線61が直線63に対して十分に大きければ、角度ズレは僅かなものとなり、再度調整ネジ45Aを進退させて角度ずれの補正を行えば、走査線は所望の走査線Lとすることができる。この様に、位置ズレの補正には角度ズレも含まれてしまうが、角度ズレの補正には位置ズレが殆ど含まれていないので、調整が容易となる。
【0055】
図13は、直線63と直線61が直交している特殊な場合を示している。この場合、調整ネジ45Bの進退による走査線の位置ズレ補正では角度ズレが殆ど含まれず、位置ズレの補正と角度ズレの補正は互いに独立している。したがって調整はさらに容易となる。
【0056】
このような調整方法を用いる場合、上述した調整穴10あるいは調整角穴14から調整工具49を差し込んで調整ネジ45Aまたは調整ネジ45Bを回すことによって、画像形成装置の上方から容易に走査線の調整を行うことができる。
【0057】
工場での組み立て調整時のみならず、ユーザ着荷時においても走査線の傾きや副走査方向のレジストズレ(位置ズレ)による色ズレが発生することが充分に考えられる。例えば、画像形成装置の光走査装置を組付けている部分や、光走査装置の剛性が不足している場合、ユーザーの機械設置で段差が生じていると、簡単に走査線が設定していた位置から傾いたり、副走査方向レジストがズレることが発生する。そのような場合に、本発明の画像形成装置であれば、読取部やADF(備えている場合)などが邪魔にならずに装置上面から作業しやすい状態で調整作業を行うことができる。また、調整時にインターロックがオフしないことから作業に手間がかからず、調整結果もすぐに確かめることができる。これらにより、調整作業性に優れた画像形成装置を提供することが実現できる。
【0058】
ところで、本発明は、原稿画像を読み取る読取部をもたない画像形成装置にも適用可能である。読取部をもたない画像形成装置の一例であるプリンタに本発明を適用した実施形態について図14〜図17を参照して説明する。なお、上述した胴内排紙型複写装置と同一または同等の部分には同じ符号を用いる。
【0059】
図14は、本発明に係る画像形成装置の一例であるカラープリンタを示す外観斜視図である。また、図15は、そのカラープリンタの上面図である。図16は、その内部構成を示す断面図である。また、図17は、画像形成部の構成を示すように、装置の一部を切り欠いて示す斜視図である。
【0060】
これらの図に示す本実施形態のカラープリンタは、装置本体の中央部を占めるように画像形成部1が設けられ、その画像形成部1の下に給紙部2が設けられる。画像形成部1の上の装置上面は排紙部15として構成され、その排紙部15の底部は排紙トレイ6となっている。排紙トレイ6の手前側(装置前側の端部)に、4つの調整穴10が設けられている。この調整穴10は、排紙トレイ6の直下に位置する光走査装置40にアクセスして走査線の調整を行うためのものである。図16、図17に示される画像形成部1の構成は、上述した胴内排紙型複写装置の画像形成部1と同じである。なお、4つの調整穴10に代えて調整角穴14を設けても良いこと、調整穴又は調整角穴を設ける部材を排紙トレイ6とは別部材としても良いこと、光走査装置は1つ、2つ、あるいは4つでも良いこと、などは上述した胴内排紙型複写装置の場合と同様である。
【0061】
本実施形態のカラープリンタにおいても、調整穴10あるいは調整角穴14から調整工具49を差し込んで調整ネジ45Aまたは調整ネジ45Bを回すことによって、画像形成装置の上方から容易に光走査装置の走査線の調整を行うことができる。したがって、工場での組み立て調整時のみならず、ユーザ着荷時においても走査線の傾きや副走査方向のレジストズレ(位置ズレ)による色ズレを容易に調整して高品質な画像を得ることができる。また、調整時にインターロックがオフしないことから作業に手間がかからず、調整結果もすぐに確かめることができる。
【0062】
図18は、読取部をもたない画像形成装置の実施形態で、光走査装置を1つ備えた構成例を示す、カラープリンタの断面図である。図3の構成と同じ部分に同一の符号を付すとともに、構成についての説明は省略する。このカラープリンタにおいても、装置上面の排紙トレイ手前側の外装部分に調整穴10あるいは調整角穴14を設けることで、上記説明した胴内排紙型複写装置および図14のカラープリンタと同様、装置上方から容易に光走査装置の走査線の調整を行うことができる。
【0063】
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、光走査装置各部の構成は適宜なものを採用可能であり、上記説明したように、折り返しミラーあるいはレンズを、走査線の調整が可能な構成とすればよい。調整穴の形状や大きさ等は任意に設定できる。また、光走査装置の数も任意である。
【0064】
また、画像形成装置の作像部の構成も任意であり、タンデム式における各色プロセスカートリッジの並び順などは任意である。また、中間転写方式に限らず、直接転写方式でも良い。また、3色のトナーを用いるフルカラー機や4色以上のトナーを用いるフルカラー機、2色のトナーによる多色機、あるいはモノクロ装置にも本発明を適用することができる。もちろん、画像形成装置としてはプリンタやに複写機に限らず、ファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 画像形成部
2 給紙部
3 読取部
4 圧板
5 胴内排紙部
6 排紙トレイ
10 調整穴
11 ガイドリブ
13 小カバー
14 調整角穴
30 作像ユニット
31 感光体ドラム
40 光走査装置
41 導入穴
44 ホルダ
45 調整ネジ
49 調整用工具
54 ポリゴンスキャナ
56 折返しミラー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開2004−271896号公報
【特許文献2】特開平11−160941号公報
【特許文献3】特開平8−339106号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光ビームを偏向器により偏向させて被走査面を走査する光走査装置を備えた画像形成装置であって、
被走査面上における前記光ビームの位置を変化させる走査線調整手段を有し、
当該画像形成装置の外装部材に前記走査線調整手段を調整する調整穴が設けられ、装置外部から前記走査線調整手段を調整可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記調整穴が、当該画像形成装置の上方から視認可能な位置に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
原稿画像を読み取る読取装置を具備し、
前記調整穴が、前記読取装置の投影面に重ならないように配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記読取装置と前記光走査装置の間に排紙部が設けられ、
前記調整穴が、前記排紙部に排紙された記録媒体と重ならないように配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
当該画像形成装置の上面に排紙部が設けられ、
前記調整穴が、前記排紙部に排紙された記録媒体と重ならないように配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記走査線調整手段が前記読取装置の投影範囲内または前記排紙部に排紙された記録媒体の投影範囲内に配置されていることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記調整穴が被覆部材により被覆されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記調整穴の周囲に、調整用工具の挿入をガイドするガイドリブが設けられていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記走査線調整手段が走査線の傾きを調整することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記走査線調整手段が走査線の副走査方向の位置を調整することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記走査線調整手段が調整ネジを有し、該調整ネジが被調整部材に対して非垂直又は光軸方向に非水平な方向に当接されることを特徴とする、請求項1,9,10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記光走査装置による被走査面としての像担持体を複数個備え、各像担持体上に形成した可視像を重ねて出力可能なことことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記光走査装置を複数個備えることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−186382(P2011−186382A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54309(P2010−54309)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】