説明

画像形成装置

【課題】複数の現像器を用いて画像を順次重ねて画像形成を行うときの生産性の低下を抑えることができる画像形成装置を得る。
【解決手段】画像形成装置10は、感光体62と、帯電部材64と、露光装置66と、感光体62と対向するように切り換えられる複数の現像器72と、感光体62上のトナー画像が順次重ねて転写される中間転写ベルト68と、一次転写ロール67及び二次転写ロール71と、現像器72の使用数に応じて、感光体62の帯電から一次転写までの第1工程速度VAと一次転写から二次転写までの第2工程速度VBとの組合せを変更する制御部20とを有している。ここで、制御部20が、現像器72の使用数に応じて第1工程速度VAと第2工程速度VBとの組合せを変更するので、現像器72の使用数に応じた最大速度で画像形成が行われる。これにより、画像を順次重ねて画像形成を行うときの生産性の低下を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の画像形成装置は、転写紙を第1速度で搬送する通常モードと、転写紙を第1速度より低い第2速度で搬送する低速モードとを有している。そして、トナー像形成終了後に中間転写媒体の駆動速度が第1速度から第2速度に低下し、1次転写トナー像の先端が第1転写部に到達した時点において、中間転写媒体が第2速度で安定して駆動されるように、第1速度から第2速度への減速開始時点を制御している。
【0003】
特許文献2の画像形成装置は、現像器の切り替え時間を確保するために、中間転写ベルトの駆動を一時停止もしくは減速させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−215945号公報
【特許文献2】特開平09−274353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複数の現像器を用いて画像を順次重ねて画像形成を行うときの生産性の低下を抑えることができる画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る画像形成装置は、潜像保持体上の潜像を現像剤で現像して現像剤像を形成する複数の現像器の切り換えにより該現像剤像が順次重ねて転写される被転写部材と、前記潜像保持体上の現像剤像を前記被転写部材へ一次転写する一次転写手段と、前記被転写部材上の現像剤像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、前記現像器の使用数に応じて、前記一次転写での第1工程速度と前記二次転写での第2工程速度との組合せを選択する選択手段と、を有する。
【0007】
本発明の請求項2に係る画像形成装置は、潜像を保持する潜像保持体と、前記潜像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、前記帯電手段で帯電された前記潜像保持体の表面を露光して潜像を形成する露光手段と、前記潜像保持体と対向し前記潜像保持体上の潜像を現像剤で現像して現像剤像を形成する複数の現像器と、複数の前記現像器の切り換えにより前記現像剤像が順次重ねて転写される被転写部材と、前記潜像保持体上の現像剤像を前記被転写部材へ一次転写する一次転写手段と、前記被転写部材上の現像剤像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、前記現像器の使用数に応じて、前記潜像保持体の帯電から一次転写までの第1工程速度と一次転写から二次転写までの第2工程速度との組合せを選択する選択手段と、を有する。
【0008】
本発明の請求項3に係る画像形成装置は、前記選択手段が、前記現像器の使用数及び記録媒体の長さに応じて、前記第1工程速度を変更する。
【0009】
本発明の請求項4に係る画像形成装置は、前記選択手段が、前記現像器の使用数及び記録媒体の厚さに応じて、前記第1工程速度を変更する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明は、一次転写での第1工程速度と二次転写での第2工程速度との組合せを選択できない構成に比べて、複数の現像器を用いて画像を順次重ねて画像形成を行うときの生産性の低下を抑えることができる。
【0011】
請求項2の発明は、潜像保持体の帯電から一次転写までの第1工程速度と、一次転写から二次転写までの第2工程速度との組合せを選択できない構成に比べて、複数の現像器を用いて画像を順次重ねて画像形成を行うときの生産性の低下を抑えることができる。
【0012】
請求項3の発明は、現像器の使用数及び記録媒体の長さに応じて第1工程速度を変更しない構成に比べて、複数の現像器を用いて画像を順次重ねて画像形成を行うときの生産性の低下を抑えることができる。
【0013】
請求項4の発明は、現像器の使用数及び記録媒体の厚さに応じて第1工程速度を変更しない構成に比べて、複数の現像器を用いて画像を順次重ねて画像形成を行うときの生産性の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の全体構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成部の構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るクリーニング装置の斜視図である。
【図4】(A)、(B)本発明の第1実施形態に係る画像形成装置における4色の画像形成時の中間転写ベルトの状態を示す模式図である。
【図5】(A)、(B)本発明の第1実施形態に係る画像形成装置における6色の画像形成時の中間転写ベルトの状態を示す模式図である。
【図6】(A)、(B)本発明の第2実施形態に係る画像形成装置における6色の画像形成時の中間転写ベルトの状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の一例について説明する。
【0016】
図1には、第1実施形態の一例としての画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、上下方向(矢印V方向)の下側から上側へ向けて、記録用紙Pが収容される用紙収容部12と、用紙収容部12の上に設けられ用紙収容部12から供給される記録用紙Pに画像形成を行う画像形成部14と、画像形成部14の上に設けられ読取原稿Gを読み取る原稿読取部16と、画像形成部14内に設けられ画像形成装置10の各部の動作を制御するとともに後述する第1工程速度又は第2工程速度を選択する選択手段の一例としての制御部20と、を含んで構成されている。なお、以後の説明では、画像形成装置10の装置本体10Aの上下方向を矢印V方向、水平方向を矢印H方向と記載する。
【0017】
用紙収容部12は、記録媒体の一例としてのサイズの異なる記録用紙Pが収容される第1収容部22、第2収容部24、及び第3収容部26が設けられている。第1収容部22、第2収容部24、及び第3収容部26には、収容された記録用紙Pを画像形成装置10内に設けられた搬送路28に送り出す送り出しロール32が設けられており、搬送路28における送り出しロール32よりも下流側には、記録用紙Pを一枚ずつ搬送するそれぞれ一対の搬送ロール34及び搬送ロール36が設けられている。また、搬送路28における記録用紙Pの搬送方向で搬送ロール36よりも下流側には、記録用紙Pを一端停止させるとともに、決められたタイミングで後述する二次転写位置QBへ送り出す位置合せロール38が設けられている。
【0018】
搬送路28の上流側部分は、画像形成装置10の正面視において、矢印V方向に向けて用紙収容部12の左側から画像形成部14の左側下部まで直線状に設けられている。また、搬送路28の下流側部分は、画像形成部14の左側下部から画像形成部14の右側面に設けられた排紙部15まで設けられている。さらに、搬送路28には、記録用紙Pの両面に画像形成を行うために記録用紙Pが搬送及び反転される両面搬送路29が接続されている。
【0019】
両面搬送路29は、画像形成装置10の正面視において、搬送路28と両面搬送路29の切り替えが行われる第1切替部材31と、画像形成部14の右側下部から用紙収容部12の右側まで矢印V方向に直線状に設けられた反転部33と、反転部33に搬送された記録用紙Pの後端が進入するとともに矢印H方向に搬送される搬送部37と、反転部33と搬送部37の切り替えが行われる第2切替部材35と、を有している。そして、反転部33には一対の搬送ロール42が間隔をあけて複数箇所に設けられており、搬送部37には一対の搬送ロール44が間隔をあけて複数箇所に設けられている。
【0020】
第1切替部材31は三角柱状の部材であり、図示しない駆動手段によって先端部が搬送路28又は両面搬送路29のいずれか一方に移動されることで、記録用紙Pの搬送方向を切り替えるようになっている。同様に、第2切替部材35は正面視で三角柱状の部材であり、図示しない駆動手段によって先端部が反転部33又は搬送部37のいずれか一方に移動されることで、記録用紙Pの搬送方向を切り替えるようになっている。なお、搬送部37の下流側端部は、搬送路28の上流側部分にある搬送ロール36の手前側に図示しない案内部材により接続されている。また、画像形成部14の左側面には、折り畳み式の手差給紙部46が設けられており、手差給紙部46から搬送路28の位置合せロール38の手前までが接続されている。
【0021】
原稿読取部16は、読取原稿Gを1枚ずつ自動で搬送する原稿搬送装置52と、原稿搬送装置52の下側に配置され1枚の読取原稿Gが載せられるプラテンガラス54と、原稿搬送装置52によって搬送された読取原稿G又はプラテンガラス54に載せられた読取原稿Gを読み取る原稿読取装置56とが設けられている。原稿搬送装置52は、一対の搬送ロール53が複数配置された自動搬送路55を有しており、自動搬送路55の一部は記録用紙Pがプラテンガラス54上を通るように配置されている。また、原稿読取装置56は、プラテンガラス54の左端部に静止した状態で原稿搬送装置52によって搬送された読取原稿Gを読み取り、又は矢印H方向に移動しながらプラテンガラス54に載せられた読取原稿Gを読み取るようになっている。
【0022】
一方、画像形成部14は、装置本体10Aの中央に潜像保持体の一例としての円筒状の感光体62が設けられている。感光体62は、図示しない駆動手段によって矢印+R方向(図示の時計回り方向)に回転すると共に光照射によって形成される静電潜像を保持するようになっている。また、感光体62の上方で且つ感光体62の外周面と対向する位置には、感光体62の表面を帯電するコロトロン方式の帯電部材64が設けられている。
【0023】
感光体62の回転方向における帯電部材64よりも下流側で且つ感光体62の外周面と対向する位置には、露光装置66が設けられている。露光装置66は、図示しない半導体レーザ、f−θレンズ、ポリゴンミラー、結像レンズ、及び複数のミラーを有しており、画像信号に基づき半導体レーザから出射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、帯電部材64により帯電された感光体62の外周面に照射(露光)して、静電潜像を形成するようになっている。なお、露光装置66はレーザ光をポリゴンミラーで走査する方式に限らず、LED(Light Emitting Diode)方式であってもよい。
【0024】
感光体62の回転方向で露光装置66の露光光が照射される部位よりも下流側には、感光体62の外周面に形成された静電潜像を決められた色のトナーで現像して可視化させる回転切り替え式の現像装置70が設けられている。なお、現像装置70の詳細については後述する。
【0025】
感光体62の回転方向で現像装置70よりも下流側であり且つ感光体62の下側には、感光体62の外周面に形成されたトナー画像が転写される被転写部材の一例としての中間転写ベルト68が設けられている。中間転写ベルト68は、無端状であり、制御部20により回転駆動される駆動ロール61、中間転写ベルト68に張力を付与するための張力付与ロール65、中間転写ベルト68の裏面に接触して従動回転する複数の搬送ロール63、及び後述する二次転写位置QBにおいて中間転写ベルト68の裏面に接触して従動回転する補助ロール69に巻き掛けられている。そして、中間転写ベルト68は、駆動ロール61が回転することにより、矢印−R方向(図示の反時計回り方向)に周回移動するようになっている。
【0026】
また、中間転写ベルト68を挟んで感光体62の反対側には、感光体62の外周面に形成されたトナー画像を中間転写ベルト68に一次転写させる一次転写手段の一例としての一次転写ロール67が設けられている。一次転写ロール67は、感光体62と中間転写ベルト68とが接触する位置(これを一次転写位置QAとする)から中間転写ベルト68の移動方向下流側に離れた位置で、中間転写ベルト68の裏面に接触している。そして、一次転写ロール67は、図示しない電源から通電されることにより、接地されている感光体62との電位差で感光体62のトナー画像を中間転写ベルト68に一次転写するようになっている。
【0027】
さらに、中間転写ベルト68を挟んで補助ロール69の反対側には、中間転写ベルト68上に一次転写されたトナー画像を記録用紙Pに二次転写させる二次転写手段の一例としての二次転写ロール71が設けられており、二次転写ロール71と補助ロール69との間が記録用紙Pへトナー画像を転写する二次転写位置QBとされている。二次転写ロール71は、中間転写ベルト68の表面に接触している。そして、二次転写ロール71は接地されており、図示しない電源から通電(電源供給)された補助ロール69と二次転写ロール71との電位差で、中間転写ベルト68のトナー画像を記録用紙Pに二次転写するようになっている。
【0028】
また、中間転写ベルト68を挟んで駆動ロール61の反対側には、中間転写ベルト68の二次転写後の残留トナーを回収するクリーニング装置100が設けられている。なお、クリーニング装置100の詳細については後述する。さらに、中間転写ベルト68の周囲で搬送ロール63と対向する位置には、中間転写ベルト68の表面に付されたマークMA、MB、MC、MD(例えば、図4(A)参照)を検知することで中間転写ベルト68上の予め定めた基準位置を検出し、画像形成処理の開始タイミングの基準となる位置検出信号を出力する位置検出センサ83が設けられている。
【0029】
マークMA、MB、MC、MDは、四角形状で表面に反射材が設けられた構成となっており、いずれも同じ大きさに形成されている。そして、位置検出センサ83から照射された光がマークMA、MB、MC、MDのいずれかの表面で反射されることで、中間転写ベルト68の移動位置が検出されるようになっている。なお、本実施形態では、マークMA、MB、MC、MDが中間転写ベルト68の周方向で等しい間隔をあけて設けられており、マークMAを基準として黒い四角形で図示し、マークMB、MC、MDを白い四角形として図示して区別する。
【0030】
また、感光体62の回転方向で一次転写ロール67よりも下流側には、中間転写ベルト68に一次転写されずに感光体62の表面に残留した残留トナー等を清掃するクリーニング装置73が設けられている。クリーニング装置73は、感光体62表面に接触するクリーニングブレード及びブラシロールにより残留トナー等を回収する構成となっている。また、感光体62の回転方向でクリーニング装置73の上流側(一次転写ロール67よりも下流側)には、感光体62の外周面に一次転写後に残留したトナーの除電を行うコロトロン81が設けられている。さらに、感光体62の回転方向でクリーニング装置73の下流側(帯電部材64よりも上流側)には、クリーニング後の感光体62の外周面に光を照射して除電を行う除電装置75が設けられている。
【0031】
二次転写ロール71によるトナー画像の二次転写位置QBは、前述の搬送路28の途中に設定されており、搬送路28における記録用紙Pの搬送方向(矢印Aで図示)で二次転写ロール71よりも下流側には、二次転写ロール71によってトナー画像が転写された記録用紙Pにトナー画像を定着させる定着装置80が設けられている。定着装置80は、記録用紙Pのトナー画像面側(上側)に配置され、通電により発熱する熱源を有する加熱ロール82と、加熱ロール82の下側に配置され記録用紙Pを加熱ロール82の外周面に向けて加圧する加圧ロール84とで構成されている。なお、搬送路28における記録用紙Pの搬送方向で定着装置80よりも下流側には、排紙部15又は反転部33へ向けて記録用紙Pを搬送する搬送ロール39が設けられている。
【0032】
一方、原稿読取装置56の下側で現像装置70よりも上側には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、第1特別色(E)、第2特別色(F)の各トナーを収容するトナーカートリッジ78Y、78M、78C、78K、78E、78Fが水平方向に並んで交換可能に設けられている。第1特別色E及び第2特別色Fは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック以外の特別色(透明を含む)から選択され、または、選択されないようになっている。そして、現像装置70では、第1特別色E及び第2特別色Fが選択された場合はY、M、C、K、E、Fの6色での画像形成を行い、第1特別色E及び第2特別色Fが選択されない場合はY、M、C、Kの4色での画像形成を行うようになっている。なお、本実施形態では、一例として、Y、M、C、Kの4色又はY、M、C、K、E、Fの6色で画像形成を行う場合について説明するが、他の例として、Y、M、C、Kの4色と第1特別色E又は第2特別色Fを用いて5色で画像形成を行ってもよい。
【0033】
次に、現像装置70について説明する。
【0034】
図2に示すように、現像装置70は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、第1特別色(E)、第2特別色(F)の各トナー色にそれぞれ対応する現像器72Y、72M、72C、72K、72E、72Fが、周方向に(反時計回り方向にこの順番で)並んで配置されており、回転手段であるモータ(図示省略)によって中心角で60°ずつ回転することで、現像処理を行う現像器72Y、72M、72C、72K、72E、72Fが切り替えられ、感光体62の外周面と対向するようになっている。なお、現像器72Y、72M、72C、72K、72E、72Fは同様の構成となっているため、ここでは現像器72Yについて説明し、他の現像器72M、72C、72K、72E、72Fについては説明を省略する。また、Y、M、C、Kの4色の画像形成を行う場合は、現像器72E、72Fを使用しないため、現像器72Kから現像器72Yへの回転角度が180°となる。
【0035】
現像器72Yは、本体となるケース部材76を有しており、ケース部材76内にトナーカートリッジ78Y(図1参照)からトナー供給路(図示省略)を経由して供給されるトナー及びキャリアから成る現像剤(図示省略)が充填されている。また、ケース部材76には、感光体62の外周面と対向して矩形状の開口部76Aが形成されており、開口部76Aには、外周面が感光体62の外周面と対向する現像ロール74が設けられている。さらに、ケース部材76内で開口部76Aに近い部位には、現像剤の層厚を規制するための板状の規制部材79が、開口部76Aの長手方向に沿って設けられている。
【0036】
現像ロール74は、回転可能に設けられた円筒状の現像スリーブ74Aと、現像スリーブ74Aの内側に固定された複数の磁極から成る磁性部材74Bとで構成されており、現像スリーブ74Aが回転することで現像剤(キャリア)の磁気ブラシが形成されると共に、規制部材79で層厚が規制されることで、現像スリーブ74Aの外周面に現像剤層を形成するようになっている。そして、現像スリーブ74Aの外周面の現像剤層は、感光体62に対向する位置に搬送され、感光体62の外周面に形成された潜像(静電潜像)に応じたトナーを付着させて現像を行う。
【0037】
また、ケース部材76内には、螺旋状に形成された搬送ローラ77が2本回転可能に並列配置されており、この2本の搬送ローラ77が回転することで、ケース部材76内に充填された現像剤が、現像ロール74の軸方向(現像器72Yの長手方向)に循環搬送されるようになっている。なお、各現像器72Y、72M、72C、72K、72E、72Fに設けられた6本の現像ロール74は、隣の現像ロール74との間隔が中心角60°となるように周方向に配置されており、現像器72の切り替えにより、次の現像ロール74が感光体62の外周面と対向するようになっている。
【0038】
一方、図3に示すように、クリーニング装置100は、中間転写ベルト68(図2参照)と対向配置される矩形状の開口部104が形成された筐体102と、開口部104に設けられ中間転写ベルト68に接触してトナーを回収するクリーニングブレード106と、クリーニングブレード106とは反対側の位置で開口部104に設けられ、中間転写ベルト68に接触して筐体102と中間転写ベルト68との隙間を密閉するシール部材108とを有している。また、クリーニングブレード106は、板状で且つ筐体102の上部において円弧状に移動可能とされた第1可動部116に取り付けられており、シール部材108は、板状で且つ筐体102の下部において円弧状に移動可能とされた第2可動部120に取り付けられている。
【0039】
さらに、クリーニング装置100は、中間転写ベルト68の残留トナー等を筐体102内へ吸引する図示しない吸引手段(一例として吸気ファン及びダクト)と、筐体102内に設けられトナーを含む塵埃を集めるフィルタ112と、クリーニングブレード106及びシール部材108を中間転写ベルト68の外周面に接触させる位置又は中間転写ベルト68の外周面から離れた位置の間で移動させるリトラクト機構部130とを有している。
【0040】
リトラクト機構部130は、矢印Z方向(画像形成装置10(図1参照)の手前側から奥側へ向かう方向)における筐体102の両端部に取り付けられた側板114に設けられており、駆動源によって回転される偏心カム(図示省略)の移動に合わせて支軸122を支点として円弧状に移動するリンク部材134を有している。また、リトラクト機構部130は、支軸122に第2可動部120が取り付けられており、支軸122の回転によって第2可動部120及びシール部材108が移動するようになっている。さらに、リトラクト機構部130は、リンク部材134が第1可動部116の端部116Bと接触することでクリーニングブレード106を移動させるようになっている。
【0041】
次に、制御部20に設定された第1工程速度VA及び第2工程速度VBの組合せについて説明する。
【0042】
図2において、制御部20(図1参照)には、現像器72Y、72M、72C、72K、72E、72Fの使用数(本実施形態では4又は6)及び記録用紙Pの厚さに応じて、感光体62の帯電から一次転写までの第1工程速度(VA)と、一次転写から二次転写までの第2工程速度(VB)との組合せが予め設定されている。
【0043】
詳細には、第1工程とは、帯電部材64による感光体62の帯電開始から、露光装置66による露光工程及び現像装置70による現像工程を経て、一次転写ロール67による一次転写が終了するまでの工程が、使用される現像器72の数(色の数)だけ繰り返される工程である。また、第2工程とは、最後の色のトナー画像が中間転写ベルト68に一次転写されたときから、二次転写ロール71による記録用紙Pへの一括した二次転写が終了するまでの工程である。ここで、第1工程は感光体62から中間転写ベルト68へのトナー画像の転写であり、第2工程は中間転写ベルト68から記録用紙Pへのトナー画像の転写であるため、第1工程速度VA、第2工程速度VBは、いずれも中間転写ベルト68の移動速度として設定される速度となる。
【0044】
また、第2工程速度VBは、二次転写位置QBにおける中間転写ベルト68の移動速度であり、且つ定着装置80(図1参照)における記録用紙Pの搬送速度(定着速度)に相当するため、基本的に第2工程速度VBを第1工程速度VAよりも速くすることはない。このため、第1工程速度VA≧第2工程速度VBとなる。これにより、本実施形態の制御部20には、第1工程速度VAと第2工程速度VBの組合せとして、Y、M、C、Kの4色で画像形成するときのVA>VBの場合、VA=VBの場合と、Y、M、C、K、E、Fの6色で画像形成するときのVA>VBの場合、VA=VBの場合との4通りが設定されている。
【0045】
図4(A)には、Y、M、C、Kの4色の画像形成で第1工程速度VA>第2工程速度VBのときの時間経過に対する中間転写ベルト68上のトナー画像の転写状態が模式図で示されている。なお、以後は、減速されていないときの中間転写ベルト68の移動速度(周回速度)をV1、移動速度V1から減速されたときの中間転写ベルト68の移動速度をV2、Yのトナー画像が開始される時点をt0、中間転写ベルト68の減速開始時点をt1、減速終了時点をt2、加速開始時点をt3、加速終了時点をt4、記録用紙Pの1枚当りの画像形成が終了する時点をt5として説明する。また、時点t1、t2、t3、t4、t5は画像形成の設定条件によって異なる値となり、図示の横軸における間隔が短いほど、その条件においての時間が短いことを表している。
【0046】
図4(A)に示すように、第1工程速度VA>第2工程速度VBのときは、VA=V1として、時点t0から時点t1までの間にY、M、C、Kの4色のトナー画像が中間転写ベルト68上に順次転写され重ねられる。このとき、各色の転写間隔において、現像器72の色の切り換えが行われている。そして時点t1から時点t2までで中間転写ベルト68の移動速度がV1からV2へ減速され、第1工程速度VAが第2工程速度VB(=V2)に合わせられる。なお、本実施形態では、減速している間に4色のトナー画像(図示のK)が二次転写位置QB(図2参照)に到達するため、中間転写ベルト68を1周分余計に周回させている。
【0047】
続いて、移動速度V2の状態で記録用紙Pにトナー画像が一括で二次転写され、中間転写ベルト68上にはトナーの転写残LT(2点鎖線で図示)が残存している。ここで、転写残LTが載っている間は中間転写ベルト68の移動速度を自由に変更できるので、この間(時点t3から時点t4)で中間転写ベルト68を加速して移動速度をV2からV1とし、元の第1工程速度VAに戻す。そして、クリーニング装置100のリトラクト機構部130(図3参照)を作動させ、クリーニングブレード106を中間転写ベルト68の外周面に接触させると共に中間転写ベルト68上の転写残(二点鎖線LTで図示)をクリーニングブレード106で除去する(破線CLで図示)。さらに、転写残LTの除去後、リトラクト機構部130(図3参照)を逆方向に作動させ、クリーニングブレード106を中間転写ベルト68の外周面から離す。ここで、時点t5となり、記録用紙Pの1枚分の画像形成工程が終了する。なお、時点t5以降は、次の記録用紙Pの画像形成工程が同様に行われる。
【0048】
また、図4(B)には、Y、M、C、Kの4色の画像形成で第1工程速度VA=第2工程速度VBのときの時間経過に対する中間転写ベルト68上のトナー画像の転写状態が模式図で示されている。
【0049】
図4(B)に示すように、第1工程速度VA=第2工程速度VBのときは、VA=VB=V1として、時点t0から時点t5までの間にY、M、C、Kの4色のトナー画像が中間転写ベルト68上に順次転写され重ねられる。このとき、各色の転写間隔において、現像器72の色の切り換えが行われている。そしてKのトナー画像の後端が中間転写ベルト68上に一次転写された後に、移動速度V1の状態で記録用紙Pにトナー画像が一括で二次転写されると共に、中間転写ベルト68上の転写残トナーがクリーニング装置100で除去される。そして、クリーニングブレード106を中間転写ベルト68の外周面から離して、記録用紙Pの1枚分の画像形成工程が終了する。なお、時点t5以降は、次の記録用紙Pの画像形成工程が同様に行われる。
【0050】
一方、図5(A)には、Y、M、C、K、E、Fの6色の画像形成で第1工程速度VA>第2工程速度VBのときの時間経過に対する中間転写ベルト68上のトナー画像の転写状態が模式図で示されている。
【0051】
図5(A)に示すように、第1工程速度VA>第2工程速度VBのときは、VA=V1として、時点t0から時点t1までの間にY、M、C、K、E、Fの6色のトナー画像が中間転写ベルト68上に順次転写され重ねられる。このとき、各色の転写間隔において、現像器72の色の切り換えが行われている。そして時点t1から時点t2までで中間転写ベルト68の移動速度がV1からV2へ減速され、第1工程速度VAが第2工程速度VB(=V2)に合わせられる。なお、本実施形態では、減速している間に6色のトナー画像(図示のF)が二次転写位置QB(図2参照)に到達するため、中間転写ベルト68を1周分余計に周回させている。
【0052】
続いて、移動速度V2の状態で記録用紙Pにトナー画像が一括で二次転写され、中間転写ベルト68上にはトナーの転写残LTが残存している。ここで、時点t3から時点t4で中間転写ベルト68を加速して移動速度をV2からV1とし、元の第1工程速度VAに戻す。そして、クリーニング装置100のリトラクト機構部130(図3参照)を作動させ、クリーニングブレード106を中間転写ベルト68の外周面に接触させると共に中間転写ベルト68上の転写残LTをクリーニングブレード106で除去する(破線CLで図示)。さらに、転写残LTの除去後、リトラクト機構部130(図3参照)を逆方向に作動させ、クリーニングブレード106を中間転写ベルト68の外周面から離す。ここで、時点t5となり、記録用紙Pの1枚分の画像形成工程が終了する。なお、時点t5以降は、次の記録用紙Pの画像形成工程が同様に行われる。
【0053】
また、図5(B)には、Y、M、C、K、E、Fの6色の画像形成で第1工程速度VA=第2工程速度VBのときの時間経過に対する中間転写ベルト68上のトナー画像の転写状態が模式図で示されている。
【0054】
図5(B)に示すように、第1工程速度VA=第2工程速度VBのときは、VA=VB=V1として、時点t0から時点t5までの間にY、M、C、K、E、Fの6色のトナー画像が中間転写ベルト68上に順次転写され重ねられる。このとき、各色の転写間隔において、現像器72の色の切り換えが行われている。そして、Fのトナー画像の後端が中間転写ベルト68上に一次転写された後に、移動速度V1の状態で記録用紙Pにトナー画像が一括で二次転写されると共に、中間転写ベルト68上の転写残トナーがクリーニング装置100で除去される。そして、クリーニングブレード106を中間転写ベルト68の外周面から離して、記録用紙Pの1枚分の画像形成工程が終了する。なお、時点t5以降は、次の記録用紙Pの画像形成工程が同様に行われる。
【0055】
ここで、制御部20(図1参照)において、第1工程速度VAと第2工程速度VBの4つの組合せが、記録用紙Pの用紙厚さに応じて選択されるようになっており、一例として、4色の画像形成で記録用紙Pの用紙厚さが128gsm(gram per square meter)以下のときに、第1工程速度VA=220mm/秒、第2工程速度VB=220mm/秒と設定されている。
【0056】
また4色の画像形成で記録用紙Pの用紙厚が129gsm以上のときに、VA=160mm/秒、VB=160mm/秒、6色の画像形成で記録用紙Pの用紙厚が128gsm以下のときに、VA=220mm/秒、VB=220mm/秒、6色の画像形成で記録用紙Pの用紙厚が129gsm以上のときに、VA=160mm/秒、VB=160mm/秒と設定されている。なお、上記値は、中間転写ベルト68の周長=527.8mm、対象用紙サイズはA3縦(420mm)、中間転写ベルト68の一次転写位置QAから二次転写位置QBまでの長さ=311.1mm(移動方向下流側に向けて)としたときの設定値である。
【0057】
次に、第1実施形態の作用について説明する。
【0058】
図1に示すように、一例として、現像器72(図2参照)の使用数が4色、記録用紙Pの厚さが128gsm以下であった場合、制御部20は、第1工程速度VA=220mm/秒、第2工程速度VB=220mm/秒の組合せを選択して設定する。そして、画像形成装置10が作動すると、画像処理装置(図示省略)又は外部から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像データが露光装置66に順次出力される。このとき、現像装置70は、現像器72Y(図2参照)が感光体62の外周面と対向するように回転し保持されている。また、クリーニング装置100のクリーニングブレード106及びシール部材108(図3参照)は、各色のトナー画像が中間転写ベルト68に多重(一次)転写され且つ記録用紙P上に二次転写されるまで、リトラクト機構部130(図3参照)の動作によって中間転写ベルト68の外周面から離されている。
【0059】
続いて、露光装置66から画像データに応じて出射された光は、帯電部材64により帯電された感光体62の外周面(表面)を露光し、感光体62の表面にはイエローの画像データに対応した静電潜像が形成される。さらに、感光体62の表面に形成された静電潜像は、現像器72Yによってイエローのトナー画像として現像される。そして、感光体62の表面のイエローのトナー画像は、一次転写ロール67によって中間転写ベルト68に一次転写される。このとき、中間転写ベルト68の移動速度は第1工程速度VA=220mm/秒となっている。
【0060】
続いて、図2に示すように、現像装置70が矢印+R方向に60°回転され、現像器72Mが感光体62の表面と対向する。そして、帯電、露光、現像の各工程が行われ、感光体62の表面のマゼンタのトナー画像は、一次転写ロール67によって中間転写ベルト68のイエローのトナー画像上に転写される。同様にして、シアン(C)、黒(K)のトナー画像が中間転写ベルト68上に順次多重転写される。
【0061】
一方、図1に示すように、用紙収容部12から送り出され、搬送路28を搬送されてきた記録用紙Pは、位置合せロール38により、中間転写ベルト68への各トナー画像の多重転写とタイミングを合わせて二次転写位置QBに搬送される。そして、中間転写ベルト68上に多重転写されたトナー画像は、二次転写位置QBに搬送されてきた記録用紙P上に二次転写ロール71によって二次転写される。このとき、中間転写ベルト68の移動速度は第2工程速度VB=220mm/秒となっている。また、二次転写後、クリーニング装置100のクリーニングブレード106及びシール部材108は、リトラクト機構部130(図3参照)の動作により中間転写ベルト68の外周面と接触する。そして、中間転写ベルト68の外周面に付着したトナーTがクリーニングブレード106で除去される。
【0062】
続いて、トナー画像が転写された記録用紙Pは、定着装置80に向けて矢印A方向(図示の右方向)に搬送される。そして、定着装置80では、トナー画像が加熱ロール82及び加圧ロール84によって加熱、加圧されることで記録用紙Pに定着される。さらに、トナー画像が定着された記録用紙Pは、一例として、排紙部15に排出される。
【0063】
なお、記録用紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着装置80で表面に画像定着を行った後、記録用紙Pを矢印−V方向に沿って反転部33に送り込むと共に矢印+V方向に沿って送り出すことで、記録用紙Pの先端と後端を入れ替える。そして、記録用紙Pを両面搬送路29によって矢印B方向(図示の左方向)に搬送し、さらに搬送路28に送り込んで、記録用紙Pの裏面の画像形成及び定着を行う(このとき、クリーニングブレード106及びシール部材108はリトラクト状態となっている)。そして、この定着後に、クリーニングブレード106及びシール部材108がリトラクト機構部130の動作によって中間転写ベルト68の外周面と接触する。そして、中間転写ベルト68の外周面に付着したトナーTがクリーニングブレード106で除去される。
【0064】
ここで、表1には、現像器72の使用色数及び記録用紙Pの用紙厚さの組合せに対して設定された第1工程速度VA及び第2工程速度VBの設定値と、そのときの設定条件で記録用紙Pの1枚当りに要した画像形成時間とが示されている。なお、表1では本実施形態との比較例として、第1工程速度VAを267.3mm/秒、第2工程速度VBを220mm/秒又は160mm/秒の組合せで選択した場合の結果を示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1に示すように、いずれの条件においても、本実施形態の記録用紙Pの1枚当りの画像形成時間が比較例よりも短くなることが確認された。即ち、本実施形態では、比較例に比べて画像形成を行うときの生産性の低下が抑えられることが確認された。
【0067】
ここで、表1における第1工程速度VA=第2工程速度VBのときの記録用紙Pの1枚当りの画像形成時間(ここではΔtとする)の計算例として、例えば、画像形成色数4、記録用紙厚128gsm以下のときは、VA=220mm/秒、VB=220mm/秒であるから、Δt=(中間転写ベルト68の周長(527.8mm)×色数(4))/220≒9.6秒と求められる(図4(B)参照)。
【0068】
一方、表1における第1工程速度VA>第2工程速度VBのときの記録用紙Pの1枚当りの画像形成時間(ここではΔtとする)の計算例として、例えば、画像形成色数6、記録用紙厚129gsm以上のときは、VA=267.3mm/秒、VB=220mm/秒の設定となる。なお、中間転写ベルト68の加速又は減速に必要な時間を0.14秒とする。そして、図5(A)を参照すると、画像開始時点t0から減速開始時点t1までの時間Δt1=(527.8mm(周長)×5(色)+420mm(1色分の長さ))/267.3≒11.4秒、減速開始時点t1から減速終了時点t2までの時間Δt2=0.14秒となる。
【0069】
また、減速時の平均速度は(267.3+220)/2=243.65mm/秒となるから、減速する間の中間転写ベルト68の移動距離は0.14秒×243.65=34.111mmとなる。これと、一次転写位置QAから二次転写位置QBまでの長さ=311.1mmを用いて、減速終了時点t2から加速開始時点t3までの時間Δt3=(527.8−34.111+311.1)/220≒3.66秒となる。そして、加速開始時点t3から加速終了時点t4までの時間Δt4=0.14秒である。
【0070】
さらに、図5(A)を参照して、加速終了時点t4から画像形成終了時点t5までの時間Δt5=(527.8×3−420−311.1−34.111)/267.3≒3.06秒となる。これらから、VA=267.3mm/秒、VB=220mm/秒のときの記録用紙Pの1枚当りの画像形成時間Δt=Δt1+Δt2+Δt3+Δt4+Δt5=11.4+0.14+3.66+0.14+3.06≒18.4秒と求められる。
【0071】
次に、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0072】
第2実施形態の制御部20(図1参照)では、現像器72(図2参照)の使用数(一例として4又は6)及び記録用紙Pの長さに応じて、第1工程速度VAと第2工程速度VBの組合せが予め選択されるようになっている。本実施形態では一例として、6色の画像形成で記録用紙Pの搬送方向の長さが488mmのとき、第1工程速度VA=第2工程速度VB=220mm/秒と設定されている。なお、この値は、中間転写ベルト68(図2参照)の周長=527.8mm、対象用紙厚さが128gsm以下、中間転写ベルト68の一次転写位置QAから二次転写位置QBまでの長さ=311.1mm(移動方向下流側に向けて)としたときの設定値である。また、本実施形態では、記録用紙Pの搬送方向の長さが420mm(A3サイズ)の場合においても、第1工程速度VA=第2工程速度VB=220mm/秒と設定されている。
【0073】
次に、第2実施形態の作用について説明する。
【0074】
まず、本実施形態との比較例について説明する。図6(A)には、比較例として、記録用紙Pの長さが488mmで且つY、M、C、K、E、Fの6色の画像形成における第1工程速度VA>第2工程速度VBのときの時間経過に対する中間転写ベルト68上のトナー画像の転写状態が模式図で示されている。なお、一例として、比較例の第1工程速度VA=267.3mm/秒、第2工程速度VB=220mm/秒とする。
【0075】
図6(A)に示すように、比較例では、時点t0から時点t1までの間にY、M、C、K、E、Fの6色のトナー画像が中間転写ベルト68上に順次転写され重ねられる。このとき、各色の転写間隔において、現像器72の色の切り換えが行われている。そして、時点t1から時点t2までで中間転写ベルト68の移動速度がV1からV2へ減速され、第1工程速度VAが第2工程速度VB(=V2)に合わせられる。なお、減速している間に6色のトナー画像(図示のF)が二次転写位置QB(図2参照)に到達するため、中間転写ベルト68を1周分余計に周回させている。
【0076】
続いて、移動速度V2の状態で記録用紙Pにトナー画像が一括で二次転写され、中間転写ベルト68上にはトナーの転写残LTが残存している。ここで、時点t3から時点t4で中間転写ベルト68を加速して移動速度をV2からV1とし、元の第1工程速度VAに戻す。そして、クリーニング装置100のリトラクト機構部130(図3参照)を作動させ、クリーニングブレード106を中間転写ベルト68の外周面に接触させると共に中間転写ベルト68上の転写残LTをクリーニングブレード106で除去する(破線CLで図示)。さらに、転写残LTの除去後、リトラクト機構部130(図3参照)を逆方向に作動させ、クリーニングブレード106を中間転写ベルト68の外周面から離す。ここで、時点t5となり、記録用紙Pの1枚分の画像形成工程が終了する。なお、時点t5以降は、次の記録用紙Pの画像形成工程が同様に行われる。
【0077】
ここで、比較例では、時点t0から時点t1までの間において、中間転写ベルト68が本実施形態よりも速い速度で移動しているため、中間転写ベルト68のトナー画像が載っていない領域の移動時間が短くなっており、現像器72(図2参照)の回転移動が追いつかない。このため、比較例では、中間転写ベルト68を1周分余計に回転させており、各色のトナー画像の間隔が広がっている。
【0078】
一方、本実施形態では、一例として、現像器72(図2参照)の使用数が6色、記録用紙Pの長さが488mmであった場合、制御部20は、第1工程速度VA=第2工程速度VB=220mm/秒の組合せを選択して設定している。そして、図1において、画像形成装置10が作動すると、画像処理装置(図示省略)又は外部から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像データが露光装置66に順次出力される。このとき、現像装置70は、現像器72Y(図2参照)が感光体62の外周面と対向するように回転し保持されている。また、クリーニング装置100のクリーニングブレード106及びシール部材108(図3参照)は、各色のトナー画像が中間転写ベルト68に多重(一次)転写され且つ記録用紙P上に二次転写されるまで、リトラクト機構部130(図3参照)の動作によって中間転写ベルト68の外周面から離されている。
【0079】
続いて、露光装置66から画像データに応じて出射された光は、帯電部材64により帯電された感光体62の外周面(表面)を露光し、感光体62の表面にはイエローの画像データに対応した静電潜像が形成される。さらに、感光体62の表面に形成された静電潜像は、現像器72Yによってイエローのトナー画像として現像される。そして、感光体62の表面のイエローのトナー画像は、一次転写ロール67によって中間転写ベルト68に一次転写される。なお、このとき、中間転写ベルト68の移動速度は220mm/秒となっている。
【0080】
続いて、図2において、現像装置70が矢印+R方向に60°回転され、現像器72Mが感光体62の表面と対向する。そして、帯電、露光、現像の各工程が行われ、感光体62の表面のマゼンタのトナー画像は、一次転写ロール67によって中間転写ベルト68のイエローのトナー画像上に転写される。同様にして、シアン(C)、黒(K)、第1特別色(E)、及び第2特別色(F)のトナー画像が中間転写ベルト68上に順次多重転写される。
【0081】
ここで、本実施形態では、第1工程速度VA(220mm/秒)が比較例の第1工程速度VA(267.3mm/秒)よりも低くなっている。このため、各色のトナー画像間で、現像装置70(複数の現像器72)の回転動作が間に合うため、中間転写ベルト68を1周分余計に周回させる必要がなく、比較例に対してトナー画像間の間隔が狭くなっている。
【0082】
一方、図1に示すように、用紙収容部12から送り出され、搬送路28を搬送されてきた記録用紙Pは、位置合せロール38により、中間転写ベルト68への各トナー画像の多重転写とタイミングを合わせて二次転写位置QBに搬送される。そして、中間転写ベルト68上に多重転写されたトナー画像は、二次転写位置QBに搬送されてきた記録用紙P上に二次転写ロール71によって二次転写される。なお、このとき、中間転写ベルト68の移動速度は220mm/秒となっている。
【0083】
続いて、記録用紙P上へのトナー画像の二次転写後、クリーニング装置100のクリーニングブレード106及びシール部材108は、リトラクト機構部130(図3参照)の動作によって中間転写ベルト68の外周面と接触する。そして、中間転写ベルト68の外周面に付着したトナーTがクリーニングブレード106で除去される。
【0084】
続いて、二次転写位置トナー画像が転写された記録用紙Pは、定着装置80に向けて矢印A方向(図示の右方向)に搬送される。そして、定着装置80では、トナー画像が加熱ロール82及び加圧ロール84によって加熱、加圧されることで記録用紙Pに定着される。さらに、トナー画像が定着された記録用紙Pは、一例として排紙部15に排出される。
【0085】
ここで、表2には、現像器72の使用色数及び記録用紙Pの長さの組合せに対して設定された第1工程速度VA及び第2工程速度VBの設定値と、そのときの設定条件で記録用紙Pの1枚当りに要した画像形成時間とが示されている。
【0086】
【表2】

【0087】
表2に示すように、記録用紙Pの長さが420mmから488mmに長くなっても、本実施形態のように第1工程速度VAと第2工程速度VBの組合せを選択し、特に第1工程速度VAを最適化すれば、記録用紙Pの1枚当りの画像形成時間が短くなることが確認された。即ち、本実施形態の画像形成装置10では、比較例に対して画像形成を行うときの生産性の低下が抑えられることが分かった。
【0088】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0089】
現像装置70は、6色の現像器で4色又は6色を使用するだけでなく、4色や6色を除く複数の現像器を有する現像装置において、現像器の全数又は一部の現像器を使用して画像形成を行ってもよい。また、第1工程速度VAと第2工程速度VBの組合せは、コート紙、非コート紙といった紙質に応じて設定してもよく、あるいは、定着後のトナー画像で必要とされる光沢度に応じて設定してもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 画像形成装置
20 制御部(選択手段)
62 感光体(潜像保持体)
64 帯電部材(帯電手段)
66 露光装置(露光手段)
67 一次転写ロール(一次転写手段)
68 中間転写ベルト(被転写部材)
71 二次転写ロール(二次転写手段)
72 現像器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像保持体上の潜像を現像剤で現像して現像剤像を形成する複数の現像器の切り換えにより該現像剤像が順次重ねて転写される被転写部材と、
前記潜像保持体上の現像剤像を前記被転写部材へ一次転写する一次転写手段と、
前記被転写部材上の現像剤像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、
前記現像器の使用数に応じて、前記一次転写での第1工程速度と前記二次転写での第2工程速度との組合せを選択する選択手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
潜像を保持する潜像保持体と、
前記潜像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段で帯電された前記潜像保持体の表面を露光して潜像を形成する露光手段と、
前記潜像保持体と対向し前記潜像保持体上の潜像を現像剤で現像して現像剤像を形成する複数の現像器と、
複数の前記現像器の切り換えにより前記現像剤像が順次重ねて転写される被転写部材と、
前記潜像保持体上の現像剤像を前記被転写部材へ一次転写する一次転写手段と、
前記被転写部材上の現像剤像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、
前記現像器の使用数に応じて、前記潜像保持体の帯電から一次転写までの第1工程速度と一次転写から二次転写までの第2工程速度との組合せを選択する選択手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項3】
前記選択手段が、前記現像器の使用数及び記録媒体の長さに応じて、前記第1工程速度を変更する請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記選択手段が、前記現像器の使用数及び記録媒体の厚さに応じて、前記第1工程速度を変更する請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−203689(P2011−203689A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73497(P2010−73497)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】