説明

画像形成装置

【課題】複数の像形成ユニットが並んで配置された画像形成装置において、装置内部に生じる温度差を低減し、従来よりも大幅な冷却効率の向上を図る。
【解決手段】ファン40により発生した風が、感光ドラム12の回転軸方向両端側から複数のプロセスカートリッジ42のうち隣り合う2つのプロセスカートリッジ42の間の空間(隙間37,38)へ送られ、風向き変更部材(ステー部材43)により該空間の前記回転軸方向両端から中央へ流れるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート等の記録材上に画像を形成する機能を備えた、例えば、複写機、プリンタなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、精密な技術を利用して画像形成動作を行っている為、連続動作に伴って装置内が過昇温した場合、影響が生じる要素が存在する。その中でも、特に影響を考慮すべきものが、トナー像の形成に関わる作像部(画像形成部、プロセスカートリッジ、トナーカートリッジ、像形成ユニット)である。
作像部には、現像ローラへのトナー供給量を規制する現像ブレードや、転写プロセス後に、感光ドラムに残留した未転写トナーを回収するクリーニングブレードなど、摺擦摩擦に伴い発熱する要素が存在する。トナーは熱によって溶融する性質を持つ為、これらの要素の温度を所定温度以下に維持しなければ、昇温によってトナー物性が変化し、ブレード先端やドラム面等にトナーの塊が融着する場合がある。この現象は、作像プロセスの妨げとなり、画像不良という形で表面化する。
同様の問題は、作像部のトナーの収容・供給に関わるエリア全般について該当し、画像形成装置の駆動部や定着器、電気基板など、周囲からの熱影響を含めて過昇温を防止しなければ、これらカートリッジの寿命を通じて、画像品質を保証する事は難しい。
【0003】
作像部が一つしかないモノクロ製品の場合、作像部周辺の空間的な制約が少ないため、冷却風路を構成する自由度が高く、上記問題を比較的容易に回避する事ができる。
これに対し、作像部が複数並ぶカラー製品の場合、図7に示すように作像部70が直方体であると仮定すると、次に示すように風路構成上の制約が非常に大きい。すなわち、作像部の周囲を囲む6面のうち、隣接する作像部により2面(71,72)、中間転写ベルトにより1面(73)、レーザスキャナにより1面(74)、作像部を駆動する駆動部により1面(75)と、計5面を塞がれる。このため、風路構成上の制約が非常に大きくなる。
【0004】
近年の画像形成装置の小型化に伴い、装置を構成する部品やユニットの空間密度が高まってきており、この制約はさらに厳しくなってきている。機内の過昇温防止の設計思想としては、大きく2タイプに分類される。その1つは、「動作保証環境のいかなる条件で連続動作させた場合でも安全温度を超えないだけの、十分な機内冷却性能を持たせる」方法である。他の1つは、「機内温度検知手段によって機内温度状態を検出し、安全温度を超える前に、昇温がそれ以上進行しない安全な動作モードに切り替える」方法である。画像形成装置に十分な冷却能力を持たせられる場合は前者、そうでない場合は後者の設計思想を採用する事になる。
近年のカラー製品では、先述の通り風路構成上の制約が大きくなる一方、駆動部や摺擦部の発熱に影響する印字スピードは徐々に高速化しており、発熱量に対して十分な冷却能力を確保する事が難しくなっている。その結果、後者の方法を選択しているケースが多い。後者の設計思想を選択した場合でも、安全な動作モードに切り替わった際の、画像形成のスループット(生産性)低下をいかに抑制するかが、製品性能として非常に重要となるため、装置冷却性能を極限まで高める事が求められる。
【0005】
カラー製品の機内昇温問題を取り巻くこれらの制約の中で、従来は、以下に説明するような、大きく分けて2種類の手法を用いて、作像部の冷却を行っている。その1つは、図8に示すように、作像部80の内部に、感光ドラム85に沿った一方向の風の流れを形成する手法である。この手法では、作像部の長手方向の一端側からファンで冷却風を供給し
、他端側から別のファンで排気する構成(特許文献1参照)が代表的である。なお、ファンを片側だけに配置する構成も存在する。他の1つは、作像部の両端に放熱手段を設け、該放熱手段に対して冷却風を当てる事により、両端部から放熱させる手法(特許文献2参照)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−268528号公報
【特許文献2】特開2005−173335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの従来技術には、作像部の冷却効率が低く、製品に要求される冷却性能を満足する事が困難であったり、冷却効率の低さを風量で補うために、多くのファンが必要となったりする課題が存在する。以下に具体的に説明する。
【0008】
前者の従来構成(ドラムに沿った一方向冷却)の場合、以下の2点が、冷却効率低下の主要因となっている。(図8参照)
・風路下流側における風速・風量の低下
・風路下流側における冷却風の温度上昇
作像部内は、レーザスキャナ84からのレーザ照射の為の空間や、現像器の当接離間の為の空間など、多くの開放部が存在し、閉じた風路を形成する事ができない。よって、作像部80の一端に供給された冷却風Aは、これらの開放部から機内へと拡散してしまい、感光ドラム85全域できれいな流れを形成できない。また、風路下流側に作像部の駆動ユニット81が位置する場合、空間的な制約により、理想的な排気ルートを確保する事が困難となるため、駆動ユニット81が冷却風の拡散を助長する風路抵抗となる。これらの影響により、風路下流側ほど風速・風量が低下する。
この問題を緩和する方法には、特許文献2の実施例のように、吸気側以外に排気側にもファンを設けて、風の拡散を抑制する手法が知られている。しかし、排気側のファンは、作像部以外のエリアの熱も吸引するため、期待通りの冷却効果を得る事は容易ではない。
【0009】
また、冷却風は、作像部の熱を奪う過程で徐々に温度が上昇する。一方向の風の流れで冷却する構成では、下流側ほど冷却風の温度が高くなるために冷却効果が低下し、作像部の軸方向に渡って、大きな温度分布勾配が生じる。この温度分布の最大差は、すなわち画像形成装置を構成するフレーム82,83の温度差(前奥温度差)に相当する。一般的に、作像部80はドラムの軸方向両端で画像形成装置のフレーム82,83に位置決めされる。フレームの前奥温度差は、作像部位置決め部の熱膨張量の差につながり、隣接する作像部間の位置決め部の間隔に前後差が生じる。この差は、カラー製品における「色ズレ問題」として出力画像に現れる。ここで、図8において、86は中間転写ベルトユニット、87は一次転写ローラ、88は中間転写ベルトを示している。
【0010】
後者の従来構成(作像部両端から放熱)の場合も、以下の2点の理由により、冷却効率を高める事が難しい。
・作像部の各要素は、形状的に伝熱効果を高めにくい
・作像部両端に、十分な放熱部を確保する事が困難
一般的に、作像部を構成する要素は、長手寸法に対して断面積が非常に小さい「細長い形状」である。そのため、長手中央部の発熱は、両端部に効率よく伝達されず、放熱による冷却効果が得られにくい。画像形成装置の対応メディア幅が広ければ広いほど、この影響は顕著となり、両端部からの放熱は困難になる。
また、放熱部には、放熱に寄与する表面積を有する放熱部材を設ける必要があるものの
、多くの要素が密集して配置される作像部において、十分な大きさの放熱部材を設けることは容易ではない。特に、作像部と駆動ユニットとのインタフェース側については、多くの駆動カップリングや電気接点がレイアウトされるため、空間的な制約は非常に大きく、同時に、そこへ冷却風を供給する事も容易ではない。
以上の通り、従来技術には冷却効率を高める上での大きな制約が存在するため、この課題を解決し得る冷却手法の開発が求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、複数の像形成ユニットがベルトに沿って並んで配置された画像形成装置において、装置内部に生じる温度差を低減し、従来よりも大幅な冷却効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
回転可能な像担持体と、前記像担持体上にトナー像を形成するための像形成部と、をそれぞれ備える複数の像形成ユニットと、
前記複数の像形成ユニットを冷却する風を発生させる送風手段と、
を有し、前記複数の像形成ユニットが並んで配置された画像形成装置において、
前記複数の像形成ユニットのうち隣り合う2つの像形成ユニットの間の空間に設けられ、前記送風手段により発生した風が流れる向きを変更する風向き変更部材を有し、
前記風向き変更部材によって、前記送風手段により発生した風が、前記像担持体の回転軸方向において前記空間の両端から中央へ流れることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の像形成ユニットがベルトに沿って並んで配置された画像形成装置において、装置内部に生じる温度差を低減し、従来よりも大幅な冷却効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図
【図2】図1において1点鎖線で切断した場合の断面Xにおける概略図
【図3】実施例1のプロセスカートリッジ周囲の冷却風の流れ方を示す図
【図4】実施例2に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図
【図5】図4において1点鎖線で切断した場合の断面Yにおける概略図
【図6】実施例2のプロセスカートリッジ周囲の冷却風の流れ方を示す図
【図7】従来技術において作像部周辺の空間的制約について説明する図
【図8】従来技術における作像部の冷却構成について示す図
【図9】図1において1点鎖線で切断した場合の断面Xにおける概略図
【図10】プロセスカートリッジ周囲の冷却風の流れ方を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0015】
図1〜図3を用いて、本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
プリンタ本体(画像形成装置本体)1の上部には、イエロー・マゼンタ・シアン・ブラック(以下、省略してY,M,C,Kとする)計4色の一次画像を形成する為の、作像ステーションがレイアウトされている。
PC等の外部機器から送信されてきた印刷データは、プリンタ本体1を制御するコントローラで受信され、書き込み画像データとしてレーザスキャナ10へ出力される。レーザスキャナ10は感光ドラム12上へとレーザを照射し、書き込み画像データに従った光像を描く。本実施例の画像形成装置では、一つのレーザスキャナ10でY,M,C,Kの各感光ドラムへのレーザ照射を行う構成を採用している。
【0016】
作像ステーションには、Y,M,C,Kの各色に対応して、1次画像を形成する為の作像部(像形成ユニット)としてのプロセスカートリッジ42(図中42Y,42M,42C,42Kで示す)が配置されている。複数のプロセスカートリッジは、中間転写ベルト34の移動方向に沿って並んで配置されている。本実施例においては、中間転写ベルト34は、複数のプロセスカートリッジの上方に配置されている。ここで、各プロセスカートリッジにおける構成及び動作は、用いるトナーの色が異なることを除いては実質的にそれぞれ同じである。このため、図1では、プロセスカートリッジ42Yを構成する部材にのみ符号を付し、プロセスカートリッジの構成及び動作について以下に説明する。
【0017】
プロセスカートリッジ42は、回転可能な像担持体としての感光ドラム12、帯電器13、現像器14、クリーナ(図示せず)などから構成される。ここで、帯電器13は、感光ドラム12の表面に均一な帯電を施すためのものである。また、現像器14は、帯電器13により帯電された感光ドラム12の表面にレーザスキャナ10が光像を描く事で作成された静電潜像を、中間転写ベルト34へ転写すべきトナー像に現像するためのものである。また、クリーナは、トナー像を転写した後、感光ドラム12に残留したトナーを除去するためのものである。ここで、帯電器13、レーザスキャナ10、現像器14、クリーナは、感光ドラム12上にトナー像を形成するための像形成手段(感光ドラム12に作用するプロセス手段、像形成部)を構成するものである。プロセスカートリッジ42としては、このプロセス手段のうちの少なくとも1つと感光ドラム12とが、一体的にカートリッジ化され、プリンタ本体1に対して着脱可能とされるとよい。
感光ドラム12の対向位置には、感光ドラム12の表面に現像されたトナー像を中間転写ベルト34に転写するための転写部材としての一次転写ローラ33が配置されている。
【0018】
中間転写ベルト34に転写(1次転写)されたトナー像(1次画像)は、その後、2次転写部でシート等の記録材上へ再転写(2次転写)される。すなわち、中間転写ベルト上に転写されたトナー像は、中間転写ベルト34の駆動ローラを兼ねる2次転写ローラ31と、対向する2次転写外ローラ24とで構成される2次転写部で、記録材上へ再転写される。2次転写部で記録材へ転写されずに中間転写ベルト34上に残留したトナーは、中間転写ベルトクリーナ18によって回収される。
【0019】
給送部20は、記録材搬送の最上流に位置し、プリンタ本体1の下部に設けられている。給送トレイ21に積載収納されている記録材は、給送部20によって給送されると、搬送パス22を通り、下流側へと搬送される。搬送パス22には、レジストローラ対23が配置され、ここで最終的な記録材の斜行補正と、作像部での画像書き込みと記録材搬送のタイミング合わせが行われる。
【0020】
作像部の下流側には、記録材上のトナー像を永久画像として定着するための定着ローラ25が設けられている。そして、その下流には、記録材をプリンタ本体1から排出するための排出ローラ26へと続く排出搬送パスと、両面プリント時に記録材の搬送方向を反転させるための反転ローラ35を有する反転パスとが設けられている。いずれのパスへと記録材を導くかは、反転フラッパ36を切り替える事で選択可能になっている。
片面プリント及び両面プリントの2面目に関しては、記録材は排出搬送パスへと導かれ、排出ローラ26によって機外へ排出される。排出された記録材は、プリンタ本体1の上部に設けられた排出トレイ27に積載される。
【0021】
一方、両面プリントの1面目の記録材に関しては、反転パスへと導かれた後、反転ローラ35によって搬送方向を反転され、作像部へ戻る為の両面搬送パス28へと搬送される。両面搬送パス28には、反転ローラ35によって反転搬送されてきた記録材を作像部へと再給送するための両面搬送ローラ29が設けられている。
【0022】
以下に、本実施例におけるプロセスカートリッジ周辺の冷却構成について説明する。プリンタ本体1の左側面(図1の紙面左側の側面)には、1つのファン40が設けられており、外気を機内へ取り込むことができる。プロセスカートリッジ42の長手方向におけるファン40の位置は、中間転写ベルト34の該長手方向略中央に対応する位置である。ファン40の下流には、排出トレイ27と中間転写ベルト34の間に分岐部材としてのダクト41が設けられている。ダクト41の内部には、整流板(図示せず)が設けられており、冷却風を装置の前奥2方向へと分岐させるとともに、各プロセスカートリッジの周辺に対する送風量が適正になるように規制している。上記のようにファン40を配置し、装置の前と奥の2方向へ分岐させることにより、分岐後に装置の前に流れる冷却風と装置の奥に流れる冷却風の送風量を略同じにすることができ、装置の前奥で冷却ムラができることを防いでいる。
ここで、プリンタ本体1に関して「前」とは図1の紙面手前側(感光ドラム12の回転軸方向(感光ドラム12、プロセスカートリッジ42の長手方向)のうち一方側)をいう。また、「奥(後ろ)」とは図1の紙面奥側(感光ドラム12の長手方向のうち他方側)をいう。プリンタ本体1を図1の紙面右側から見た場合には、左側が「前」となり、右側が「奥」となる。ファン40及びダクト41は、中間転写ベルト34と、複数の感光ドラム12との間にそれぞれ存在する空間のうち、感光ドラム12の長手方向両端部に向かう空気(冷却風、風)を発生させる。ファン40及びダクト41は、複数のプロセスカートリッジ42を冷却する風を発生させる送風手段を構成している。
【0023】
図2に、図1において1点鎖線で切断した場合の断面Xにおける概略図を示す。図2に示す矢印は、冷却風の流れを表している。
ダクト41内部で分岐した冷却風は、ダクト開口部41aより、次のような空間(隙間、風路)に導かれ、プロセスカートリッジ42の長手方向両端側(回転軸方向両端側)から長手方向中央部(回転軸方向中央)へ向けて供給される。それは、前側板44と後側板45、中間転写ベルトユニット30、プロセスカートリッジ42の三者によって壁面を構成される隙間(空間、風路)37である。またそれは、隣り合う2つのプロセスカートリッジ42の間の空間(隙間37及び後述する隙間38を含む)である。ここで、前側板44と後側板45は、プリンタ本体1のフレーム(枠体)を構成する側板のうち、長手方向においてプロセスカートリッジ42を両端から挟むように配置された側板である。また、図1に示すように、ダクト開口部41aは、複数存在する隣り合う2つのプロセスカートリッジ42の間の空間のそれぞれに対向して設けられている。このことにより、隙間37へ効率良く冷却風を届けることができる。また、ダクト41を用いて、プロセスカートリッジ42の長手方向における中間転写ベルトユニット30の両端の外側を通り、隙間37へ冷却風が供給される風路となっている。このような風路であれば、中間転写ベルト34の隙間37を構成する部分には直接的に冷却風が当たりにくいので、中間転写ベルト34上のトナー像を乱しにくい。
【0024】
冷却風は、この空間を通過する際、前側板44と後側板45の冷却も行い、両者の温度差を抑制する。これにより、前後側板44,45の熱膨張差に起因するカラー画像の色ズレを抑制することができる。
また、前後側板44,45には、プロセスカートリッジ42を位置決めするための位置決め部が設けられており、ファン40により送風された冷却風が、この位置決め部に供給されるように構成されている。これにより、位置決め部において熱膨張量に差が生じてし
まうことを抑制できるので、隣接するプロセスカートリッジ間の位置決め部の間隔に前後差が生じてしまうことを抑制することができ、カラー画像の色ズレを抑制することができる。
各作像ステーションのプロセスカートリッジに対し、どの位置にどの程度の冷却風を供給するかは、プリンタ本体1内の熱分布特性などに応じて最適化する。
【0025】
互いに隣接する(隣り合う)プロセスカートリッジの間には、中間転写ベルト34と対向する位置に、前側板44と後側板45を連結するステー部材43が設けられている。ステー部材43は、プロセスカートリッジ42との間で隙間を形成するように設けられている。なお、ステー部材43は、プロセスカートリッジ42を装置本体へ着脱する際のガイド部として機能する。また、互いに隣接するプロセスカートリッジ42の間には、ファン40により送られた冷却風を隙間37から最終的に装置外部(機外)へ排気するための排気空間46が形成されている。
【0026】
隣り合う2つのプロセスカートリッジ42の間の空間のうち、ステー部材43とプロセスカートリッジ42との間に設けられた隙間38は、中間転写ベルト34側(隙間37側)から排気空間46側へ向けた風路になっている。このステー部材43を設けたことにより、隙間37、隙間38の長手方向全域へ空気(冷却風)が流れ、プロセスカートリッジ42の長手方向中央部をこの冷却風によって冷却することができる。
このようにステー部材43は、隙間37から隙間38を通って排気空間46へ流れる空気の量を、排気空間46における長手方向の全域で一定となるように規制する。また、ステー部材43は、ファン40により発生した風が隙間37、隙間38の長手方向中央部まで流れるよう、ファン40により発生した風の流量を規制する。ここで、ステー部材43は流量規制部材に相当する。また、間にステー部材43が設けられた隣り合う2つの像形成ユニットに対して、ステー部材43は、それぞれが隙間を介して対向する対向部(対向面)を備え、前記対向部と前記像形成ユニットとの間に流れる風の流量を規制している。
このステー部材43によって、隙間37、隙間38の形状が、画像形成動作時に、プロセスカートリッジ42を構成する各要素(構成部材)の温度分布が、長手方向(感光ドラム12の回転軸方向)でなるべく均等化されるようになっている。本実施例では、隙間37、隙間38の長手方向全域で均等に冷却風が流れるよう、冷却風の供給風量に対して十分に狭い寸法で全域均等にしている。このように、流量規制部材であるステー部材43は、風の流量を規制することにより、ベルトユニット30の両側を下方のカートリッジに向かって流れてきた冷却風の流れる向きを感光ドラム12の回転軸方向に変更している。このように冷却風の流れる向きを変更することにより、隙間37、隙間38の長手方向全域で均等に冷却風が流れるようにしている。換言すれば、ステー部材43は冷却風の流れる向きを変更する風向き変更部材としても機能している。
また、図9、図10に示すように、長手方向両端部に対して長手方向中央部の隙間を広くする事で、長手方向中央部へ冷却風が流入し易くする形状としてもよい。
図9は、図1の断面Xにおける断面図である。この図のように、ステー部材43の中間転写ベルトに対向する中間転写ベルト対向部(ベルト対向部、対向面)43aに、長手方向両端部から中央部に向かうにつれて中間転写ベルト34との間の距離が大きくなるようなテーパ形状の部分を設けている。これにより、隙間37は長手方向両端部から長手方向中央部に向かうにつれて広くなる隙間となっている。
また、図10は、プロセスカートリッジ周囲の冷却風の流れ方を示す斜視図である。この図のように、ステー部材43のカートリッジに対向するカートリッジ対向部(像形成ユニット対向部、対向面)43bに、長手方向両端部から中央部に向かうにつれてプロセスカートリッジ42との間の距離が大きくなるようなテーパ形状の部分を設けている。これにより、隙間38は長手方向両端部から長手方向中央部に向かうにつれて広くなる隙間となっている。
このようにしても、隙間37、隙間38の長手方向全域へ空気(冷却風)が流れ、プロ
セスカートリッジ42の長手方向中央部をこの冷却風によって冷却することができる。なお、上述したステー部材43のテーパ形状は、中間転写ベルト対向部43a、及び、カートリッジ対向部43bに設けてもよい。また、プロセスカートリッジ42側にテーパ形状を設けて、プロセスカートリッジ42とカートリッジ対向部43bとの間の距離が大きくなるようにしてもよい。
【0027】
排気空間46へ流出した冷却風は、プリンタ本体1内部のユニット間や部品間の隙間を経由して機外に排気される。プリンタ本体1の前側(フロント側、図にFで示す)はカートリッジ交換ドアや外装の隙間を経由して排出される。また、プリンタ本体1の奥側(リア側、図にRで示す)は、装置駆動部47や電装部を経由しつつ、これらの熱源の排熱を伴って、背面カバーに設けられた排気ルーバから排出される。なお、レーザスキャナ10の光学系に対する飛散トナー付着を防止する観点から、排気空間46からレーザスキャナ10の周辺空間に対する空気の流入は規制されている。例えば、図示しない別のファンによってレーザスキャナ空間の気圧を高く維持する事により、この方向の空気の移動を防止できる。
【0028】
本実施例の作像部冷却構成における、プロセスカートリッジ42周囲の冷却風の流れ方(冷却風路)を、図3に示す。冷却風は、まず、自己昇温する要素が集中する感光ドラム12周辺に沿って、プロセスカートリッジ42の長手方向中央付近まで流入する。この際、冷却風は、感光ドラム12周辺の要素の熱を直接的に奪うため、より効率の良い冷却が為される。また、この冷却風の流れによって、長手方向前奥の温度差が抑制されると共に、要素両端付近からの放熱効果により、長手方向の温度分布も均一化される。
【0029】
プロセスカートリッジ42とステー部材43の隙間を介した、中間転写ベルト34側から排気空間46側へ向けた空気の流れは、プロセスカートリッジ42全体を包み込むように流れる。また、排気空間46から機外へ向かう流れは、プロセスカートリッジ42の長手中央から前奥2方向へと、すなわち「プリンタ本体1の内から外へと向かう空気の流れ」を形成する。これらの冷却風の流れは、プロセスカートリッジ全体を均等に冷却する効果を生むと同時に、定着器や装置駆動部、電装部といった隣接する外部ユニットから、プロセスカートリッジ42に向けた熱の流入を遮断する。
【0030】
上述のように、複数の作像部を有する画像形成装置に対し、作像部の冷却構成へ本発明を適用する事により、従来よりも大幅な冷却効率の向上を実現することができるとともに、従来技術が有していた弊害をも解消する事ができる。
そして、作像部と転写部の間の空間に対して、作像部の両端から冷却風を供給すると共に、隣接する作像部間に設けた排気風路に対して風量を規制しながら排気する事により、次の特徴を有する冷却風路を形成する事ができる。
・作像部の長手方向中央部付近にまで冷却風を供給でき、バランスの良い冷却が可能(中央部における熱淀みを防止)。
・作像部の主要発熱部である感光ドラム周辺の要素(現像ブレード、クリーニングブレード等)を、直接的に冷却可能。
・作像部全体を包み込むような風の流れによって、作像部を均等に冷却可能となるとともに、隣接する作像部間の熱淀みも解消可能。
・排気ルートに関しては、画像形成装置の内部と外部の圧力差により、作像部中心から画像形成装置外側へ向けた「内から外」の流れが形成される。これにより、外部熱源から作像部への熱の進入が遮断される。
【0031】
本発明に基づく冷却風路が持つこれらの特徴により、以下の効果が得られる。
・少ない風量でも、より大きな冷却効果が得られる。
・色ズレの要因となる、側板における作像部周辺温度の長手方向前奥差を解消できる。
・ファンを1つとすることができるので、複数のファンを用いていた従来に対してファンが削減可能となり、製品の小型化や省電力化、静音化にも寄与する。
画像形成装置に対して、小型化・省電力化・静音化といった環境性能と、動作パフォーマンスの両立が強く求められている中、本発明がもたらす効果は大きい。
【実施例2】
【0032】
以下、実施例2について、図4〜6を用いて説明する。なお、本実施例に係る画像形成装置は、作像部の冷却構成以外の構成は、実施例1と共通である。このため、これらの個所の説明は省略するとともに、共通する要素に関しては、同一の符号を用いる。
図4は、本実施例に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。図5は、図4において1点鎖線で切断した場合の断面Yにおける概略図を示す。図6は、本実施例の作像部冷却構成における、プロセスカートリッジ42周囲の冷却風の流れ方を示す図である。
【0033】
プリンタ本体1のフレームを構成する前側板44及び後側板45には、中間転写ベルトユニット30を脱着するためのITBガイドレール51が、それぞれ設けられている(本実施例では、図4の右方向へ脱着可能な構成を採用)。
ITBガイドレール51と、前側板44及び後側板45それぞれの間にはダクト51aが形成されている。そして、ダクト51aには、中間転写ベルト34とプロセスカートリッジ42の間の空間(隙間37)に向けた複数の開口部51bが設けられている。プリンタ本体1の左側面には、1つのファン40が設けられており、外気を機内へ取り込むことができる。ファン40による送風は、前後側板44,45にそれぞれ設けられたITBガイドレール51内のダクト51aに向けて、分岐して送られる。
【0034】
冷却風は、複数の開口部51bへと風量を規制されつつ導かれ、複数の開口部51bから、中間転写ベルト34とプロセスカートリッジ42の間の空間へと供給される。冷却風は、このダクト51aを通過する際、前側板44と後側板45を冷却し、両者の温度差を抑制する。これにより、前後側板44,45の熱膨張差に起因するカラー画像の色ズレを抑制することができる。
各プロセスカートリッジ42に対して、どの位置にどの程度の比率で冷却風を供給するかについては、プリンタ本体1内の熱分布特性などに応じて最適化する。
【0035】
本実施例においては、互いに隣接するプロセスカートリッジ42それぞれにおいて、中間転写ベルト34に対向する位置に、相互間の隙間38を所定寸法に規制する為の規制形状(対向部)53a,53bが設けられている。ここで、規制形状53a,53bは、隣り合う2つのプロセスカートリッジ42の間の空間において、隙間38を介して対向している。
そして、隣り合うプロセスカートリッジ42の規制形状53a,53bで規制(形成)された隙間38は、中間転写ベルト34側から排気空間46側へ向けた風路になっており、その流量が規制されている。そして、その隙間形状は実施例1同様、画像形成動作時のプロセスカートリッジ各要素の温度分布が、長手方向でなるべく均等化されるようになっている。
排気空間46へ流出した冷却風は、実施例1同様、プリンタ本体1内部のユニット間や部品間の隙間を経由して機外に排気される。
【0036】
本実施例の作像部冷却構成における、プロセスカートリッジ周囲の冷却風の流れ方については、基本的には実施例1と同様である。また、実施例1と同様に、プロセスカートリッジ42と中間転写ベルト34との間の隙間37が長手方向両端部から長手方向中央部に向かうにつれて広くなるよう、プロセスカートリッジ42の形状を工夫してもよい。
また、2つの隣り合うプロセスカートリッジ42の間の隙間38が、長手方向両端部から長手方向中央部に向かうにつれて広くなるよう、プロセスカートリッジ42の形状を工
夫してもよい。
実施例1では、中間転写ベルト34側から排気空間46へ向かう、プロセスカートリッジ全体を包み込む風の流れを、ステー部材43とプロセスカートリッジ42で規定される隙間を介して生みだしていた。これに対し、本実施例の構成では、プロセスカートリッジ42に設けられた規制形状53a,53bで規定される隙間を介して、上記のようなプロセスカートリッジ全体を包み込む風の流れを生みだしている。
本実施例においても、実施例1で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0037】
[その他の実施例]
本発明を適用可能な構成としては、上記2つの実施例の構成に限定されるものではない。
先述の実施例では、一つのファンの送風を、プロセスカートリッジ42の長手方向両端部へ分岐させて供給する構成を示したが、これに限るものではなく、各端部に対してそれぞれ別々のファンで送風する構成であっても良い。実施例1では、排出トレイ27と中間転写ベルト34の間の空間に送風用のダクト41を設ける構成を示したが、中間転写ベルト34に対して冷却風を隔離して送風する構成に限定されるものではない。例えば、中間転写ベルト34の表面がダクト41の風路壁を兼ねる構成であっても構わない。このような構成によれば、冷却風に対して中間転写ベルト34の表面が露出するので、中間転写ベルト34の冷却が為され、間接的にプリント動作中のプロセスカートリッジ42の温度上昇をより抑制することができる。
【0038】
また、先述の実施例では、中間転写方式の画像形成装置について説明したが、これに限るものではない。すなわち、複数の像担持体上にそれぞれ形成されたトナー像を、記録材搬送ベルトに担持搬送された記録材上に転写させる方式の画像形成装置においても、本発明を好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10…レーザスキャナ 12…感光ドラム 13…帯電器 14…現像器 37,38…隙間 40…ファン 42…プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な像担持体と、前記像担持体上にトナー像を形成するための像形成部と、をそれぞれ備える複数の像形成ユニットと、
前記複数の像形成ユニットを冷却する風を発生させる送風手段と、
を有し、前記複数の像形成ユニットが並んで配置された画像形成装置において、
前記複数の像形成ユニットのうち隣り合う2つの像形成ユニットの間の空間に設けられ、前記送風手段により発生した風が流れる向きを変更する風向き変更部材を有し、
前記風向き変更部材によって、前記送風手段により発生した風が、前記像担持体の回転軸方向において前記空間の両端から中央へ流れることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記風向き変更部材は前記像形成ユニットに対向する像形成ユニット対向部を備え、
前記像形成ユニット対向部と前記像形成ユニットとの間の隙間は、前記回転軸方向の両端から中央に向かうにつれて広くなっていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体上に形成されたトナー像を記録材上に転写するためのベルトを有し、
前記風向き変更部材は前記ベルトに対向するベルト対向部を備え、前記ベルト対向部と前記像形成ユニットとの間の隙間は、前記回転軸方向の両端から中央に向かうにつれて広くなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記回転軸方向において前記複数の像形成ユニットを両端から挟むように配置された2つの側板を有し、
前記風向き変更部材は、前記2つの側板を前記回転軸方向で連結するステー部材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記2つの側板には、夫々像形成ユニットを位置決めする位置決め部が設けられており、
前記送風手段により発生した風が、前記位置決め部に供給されることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像形成ユニットの上方に配置され、前記像担持体上に形成されたトナー像を記録材上に転写するためのベルトを有し、
前記送風手段は、前記像担持体の回転軸方向に関して前記ベルトの略中央に対応する位置に配置され、
前記送風手段により発生した風は、前記回転軸方向において、前記ベルトの両端の外側を通り、前記空間の両端へ流れることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記送風手段により発生した風が通るダクトを有し、
前記空間は複数存在し、前記ダクトには前記複数の空間の前記回転軸方向両端にそれぞれ対向して設けられた開口部が形成されており、
前記ダクトは、前記ベルトの上方で前記送風手段により発生した風を、前記回転軸方向における前記ベルトの両側に向かって分岐させ、前記開口部から前記複数の空間の前記回転軸方向両端に供給することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−108484(P2012−108484A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224974(P2011−224974)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】