説明

画像形成装置

【課題】エンボス紙のエンボス面における濃淡パターンの発生を抑えつつ、非エンボス面における転写チリの発生を抑える。
【解決手段】中間転写ベルト31とニップ形成ローラ36との当接による2次転写ニップに進入させた記録シートに対してベルト上のトナー像を2次転写してから、定着装置90で記録シートにトナー像を定着させた後、その記録シートを反転再搬送装置105で反転再搬送して、記録シートのもう一方の面にもトナー像の2次転写処理と定着処理とを施す構成において、反転再搬送前の1日目における2次転写バイアスと、反転再搬送後の2回目における2次転写バイアスとを異ならせるように、2次転写バイアス電源39を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに当接して転写ニップを形成している像担持体とニップ形成部材との間に、直流成分及び交流成分を含む電位差を発生させながら、転写ニップに挟み込んだ記録シートに対して像担持体の表面上のトナー像を転写する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この画像形成装置は、周知の電子写真プロセスにより、像担持体たる無端状の中間転写ベルトの表面にトナー像を形成する。中間転写ベルトに対しては、ニップ形成部材としての2次転写ローラを当接させて2次転写ニップを形成している。また、中間転写ベルトのループ内には、2次転写対向ローラを配設しており、この2次転写対向ローラと、前述した2次転写ローラとの間に中間転写ベルトを挟み込んでいる。ループ内側の2次転写対向ローラに対してはアースを接続しているのに対し、ループ外の2次転写ローラに対しては転写バイアスを印加している。これにより、2次転写対向ローラと2次転写ローラとの間に、トナー像を前者側から後者側に静電移動させる転写電界を形成している。そして、中間転写ベルト上のトナー像に同期させるタイミングで2次転写ニップ内に送り込んだ記録シートに対して、転写電界の作用により、中間転写ベルト上のトナー像を2次転写する。
【0003】
かかる構成において、記録シートとして、和紙のような表面凹凸に富んだものを用いると、表面凹凸にならった濃淡パターンを画像中に発生させ易くなる。この濃淡パターンは、紙表面における凹部に対して十分量のトナーが転写されずに、凹部の画像濃度が凸部よりも薄くなることによって生ずるものである。そこで、特許文献1に記載の画像形成装置においては、転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものではなく、交流電圧に対して直流電圧を重畳した重畳電圧からなるものを印加するようになっている。これにより、直流電圧だけからなる転写バイアスを印加する場合に比べて、表面凹凸に富んだ記録シート上での濃淡パターンの発生を抑えることができる。但し、転写バイアスとして重畳電圧からなるものを印加すると、直流電圧だけからなるものを印加する場合に比べて、転写チリを発生させ易くなる。転写チリは、転写工程において、トナーを画像部の周囲に飛び散らせてしまう現象である。特許文献1に記載の画像形成装置は、記録シートとして表面凹凸に富んだものが用いられた場合には、重畳電圧からなる転写バイアスを印加して、濃淡パターンの発生を抑える。これに対し、記録シートとして表面凹凸に富んでいないものが用いられた場合には、転写バイアスの条件にかかわらず濃淡パターンが発生しないので、直流バイアスだけからなる転写バイアスを印加する。これにより、転写チリの発生を抑えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この画像形成装置は、記録シートの片面に対してだけ画像を形成するものであるため、両面プリントモードにおいて片面凹凸シートの両面に対してそれぞれ良好な画像を形成することが何ら考慮されていなかった。両面プリントモードは、給紙カセットなどから送り出した記録シートの両面に対してそれぞれ画像を形成するモードである。かかる両面プリントモードを実現する構成としては、転写ニップと定着装置とに通して一方の面だけに画像を形成した記録シートを、上下反転せしめた後に再び転写ニップと定着装置とに通してもう一方の面にも画像を形成するスイッチバック方式が知られている。また、一方の面にトナー像を転写するための転写ニップと、もう一方の面にトナー像を転写するための転写ニップとに記録シートを順次通した後に、定着装置に通すワンパス方式も知られている。これらの方式を採用して両面プリントモードを実現させた場合に、記録シートとして、和紙のような外観を人工的につくりだすために、片面だけに凹凸処理を施した片面凹凸シートを用いたとする。そして、その片面凹凸シートの凹凸面における濃淡パターンの発生を抑える狙いで重畳電圧からなる転写バイアスを凹凸面及び非凹凸面に共通して採用したとする。すると、非凹凸面に転写チリを発生させてしまう。これに対し、非凹凸面における画像抜けの発生を抑える狙いで、直流電圧だけからなる転写バイアスを凹凸面及び非凹凸面に共通して採用したとする。すると、凹凸面における濃淡パターンの発生を抑えることができなくなってしまう。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、片面凹凸シートの凹凸面における濃淡パターンの発生を抑えつつ、非凹凸面における転写チリの発生を抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、表面にトナー像を担持する像担持体と、前記表面にトナー像を形成する像形成手段と、前記表面に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材と、前記像担持体と前記ニップ形成部材との間に、直流成分及び交流成分を含む電位差を発生させながら、前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに対して前記像担持体の表面上のトナー像を転写する転写手段と、前記転写手段を通過した後の記録シートに対してトナー像の定着処理を施す定着手段と、前記転写ニップに送り込む前の記録シートを載置するシート載置手段とを備える画像形成装置において、記録シートの片面だけに画像を形成する片面プリント動作モード、及び記録シートの両面にそれぞれ画像を形成する両面プリント動作モードのうち、何れを実行するのかを示す情報である動作モード情報を取得する動作モード情報取得手段と、前記シート載置手段に載置された記録シートについて、両面のうちの片面だけが凹凸に富んでいる片面凹凸シートであるか否かの情報を取得するシート情報取得手段とを設けるとともに、前記シート情報取得手段によって取得された情報が片面凹凸シートを示す内容のものであり、且つ、前記動作モード情報取得手段によって取得された動作モード情報が両面プリント動作モードの実行を示す内容のものであるという条件を満たした場合に、前記片面凹凸シートの凹凸面に対して転写処理を施すときにおける前記電位差と、非凹凸面に対して転写処理を施すときにおける前記電位差とを異ならせる処理を実施するように、前記転写手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記動作モード情報取得手段によって取得された動作モード情報が前記両面プリント動作モードの実行を示す内容のものであって、且つ、前記定着手段を通過した後の記録シートが一方の面だけに画像を担持するものである場合に、該記録シートの他方の面にもトナー像を転写及び定着させるために、該記録シートの上下を反転せしめながら前記転写手段に再搬送する反転再搬送手段を設けるとともに、前記条件を満たした場合に、前記シート載置手段から送り出された後に前記転写ニップに初めて進入した前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときにおける前記電位差と、前記反転再搬送手段によって反転再搬送された前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときにおける前記電位差とを異ならせることで、前記凹凸面に対する前記電位差と、前記非凹凸面に対する前記電位差とを異ならせる処理を実施するように、前記転写手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、記録シートとして前記片面凹凸シートを使用する場合に、前記シート載置手段に対して前記片面凹凸シートを所定の向きで載置すべき旨の指示をユーザーに行うことで、前記シート載置手段から送り出された後に前記転写ニップに初めて進入する前記片面凹凸シートに対して、前記転写ニップ内で凹凸面を前記像担持体に向ける姿勢をとらせるようにする指示手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の画像形成装置において、前記条件を満たした場合に、前記シート載置手段から送り出された後に前記転写ニップに初めて進入した前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときにおける前記電位差として、直流成分及び交流成分を含むものを発生させる一方で、前記反転再搬送手段によって反転再搬送された前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときにおける前記電位差として、交流成分を含まないもの、あるいは、前記シート載置手段から送り出された後に前記転写ニップに初めて進入した前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときよりもピークツウピーク値の小さな交流成分を含むもの、を発生させる処理を実施するように、前記転写手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項3又は4の画像形成装置において、前記条件を満たした場合に、前記反転再搬送手段によって反転再搬送された前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときにおける前記電位差として、前記シート載置手段から送り出された後に前記転写ニップに初めて進入した前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときよりも大きな直流成分を含むもの、を発生させるように、前記転写手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項3乃至5の何れかの画像形成装置において、直流電圧と、ピークツウピーク値が前記直流成分の絶対値の4倍よりも大きな交流電圧とを電圧出力手段から出力することで、前記シート載置手段から送り出された後に前記転写ニップに初めて進入した前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときにおける前記電位差を発生させるように、前記転写手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項3乃至6の何れかの画像形成装置において、前記シート載置手段から送り出された後に前記転写ニップに初めて進入した前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときにおける前記電位差として、前記交流成分の周波数f[Hz]と、前記転写ニップにおける記録シート移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、前像担持体の表面移動速度v[mm/s]とについて「f>(4/d)×v」という関係を具備するものを発生させるように、前記転写手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項3乃至7の何れかの画像形成装置において、奇数頁に対応する画像と、前記奇数頁に続く偶数頁に対応する画像とを互いに異なるシート面に形成し、且つ、前記シート情報取得手段によって取得された前記シート種類情報が前記片面凹凸シートを示す内容のものである場合に、前記片面凹凸シートの凹凸面に対して奇数頁に対応する画像を形成する旨の情報をユーザーに報知する報知手段とを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項3乃至7の何れかの画像形成装置において、奇数頁に対応する画像と、前記奇数頁に続く偶数頁に対応する画像とを互いに異なるシート面に形成し、且つ、前記シート情報取得手段によって取得された前記シート種類情報が前記片面凹凸シートを示す内容のものでない場合に、前記偶数頁に対応するトナー像を前記像担持体に形成した後、前記奇数頁に対応するトナー像を前記像担持体に形成する処理を実施するように、前記像形成手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9の画像形成装置において、奇数頁に対応する画像と、前記奇数頁に続く偶数頁に対応する画像とを互いに異なるシート面に形成し、且つ、前記シート情報取得手段によって取得された前記シート種類情報が前記片面凹凸シートを示す内容のものである場合に、前記奇数頁に対応するトナー像を前記像担持体に形成した後、前記偶数頁に対応するトナー像を前記像担持体に形成する処理を実施するように、前記像形成手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項1乃至10の何れかの画像形成装置において、前記像担持体として、引っ張り弾性率が2[GPa]以上である無端状の像担持ベルトを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
これらの発明においては、片面凹凸シートの両面のうち、凹凸面に対してトナー像を転写するときに、像担持体とニップ形成部材との間の電位差として、濃淡パターンよりも転写チリの発生を抑えるのに適した条件のものを発生させる一方で、非凹凸面に対してトナー像を転写するときには、電位差として、転写チリよりも濃淡パターンの発生を抑えるのに適した条件のものを発生させることが可能である。よって、片面凹凸シートの凹凸面における濃淡パターンの発生を抑えつつ、非凹凸面における転写チリの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】同プリンタにおけるK用の作像ユニットを拡大して示す拡大構成図。
【図3】同プリンタの電気回路の一部を示すブロック図。
【図4】同プリンタのプリンタドライバソフトがインストールされたパーソナルコンピュータにおけるプリンタドライバのダイアログボックスを示す模式図。
【図5】同プリンタの給紙カセットを上から示す平面図。
【図6】同給紙カセットの指示板を拡大して示す拡大平面図。
【図7】同プリンタの2次転写バイアス電源から出力される重畳バイアスからなる2次転写バイアスの波形を示す波形図。
【図8】重畳バイアスからなる2次転写バイアスの交流成分の周波数fと、プロセス線速vと、ピッチムラとの関係を示すグラフ。
【図9】レザック66(260kg紙(連量))の表面の拡大撮影像。
【図10】レザック66(260kg紙(連量))についての断面曲線の一例を示すグラフ。
【図11】本発明者らが行った第2プリントテストで出力したテスト画像を示す拡大模式図。
【図12】実験に使用された転写実験装置を示す概略構成図。
【図13】2次転写ニップにおける転写初期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図。
【図14】2次転写ニップにおける転写中期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図。
【図15】2次転写ニップにおける転写後期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図。
【図16】第2プリントテストの結果に基づいて作成されたオフセット電圧Voffと、ピークツウピーク電圧Vppと、凹部濃度再現性と、凸部濃度再現性と、白点出現性との関係を示すグラフ。
【図17】変形例に係るプリンタを示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの作像ユニット1Y,M,C,Kと、転写手段としての転写ユニット30と、光書込ユニット80と、定着装置90と、給紙カセット100と、レジストローラ対102とを備えている。
【0010】
4つの作像ユニット1Y,M,C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための作像ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
【0011】
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成された外径60[mm]程度のドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。本実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
【0012】
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に1次転写される。
【0013】
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
【0014】
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0015】
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュウ部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
【0016】
第1スクリュウ部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
【0017】
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
【0018】
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
【0019】
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
【0020】
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
【0021】
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
【0022】
先に示した図1において、Y,M,C用の作像ユニット1Y,M,Cにおいても、K用の作像ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,M,C上にY,M,Cトナー像が形成される。
【0023】
作像ユニット1Y,M,C,Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
【0024】
作像ユニット1Y,M,C,Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写ユニット30が配設されている。転写手段としての転写ユニット31は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの1次転写ローラ35Y,M,C,K、ニップ形成ローラ36、ベルトクリーニング装置37、電位センサ38などを有している。
【0025】
像担持体としての中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト31としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは20[μm]〜200[μm]、好ましくは60[μm]程度である。また、体積抵抗率は1e6[Ωcm]〜1e12[Ωcm]、好ましくは約1e9[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定)。また、材料は、カーボン分散ポリイミド樹脂からなる。
【0026】
4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像と、1次転写ローラ35Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0027】
1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなり、次のような特性を有している。即ち、外形は16[mm]である。また、心金の径は10[mm]である。また、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、1次転写ローラ心金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗Rは、約3E7Ωである。このような1次転写ローラ35Y,M,C,Kに対して、1次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
【0028】
転写ユニット30のニップ形成ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の2次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成ローラ36とが当接する2次転写ニップが形成されている。ニップ形成ローラ36は接地されているのに対し、2次転写裏面ローラ33には、2次転写バイアス電源39によって2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
【0029】
プリンタ筺体の下部には、記録シートたる記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。送り出された記録紙Pは、複数の給送ローラ対101によって鉛直方向下方から上方に向けて搬送された後、給紙路の末端付近に配設されたレジストローラ対102のレジストニップに挟み込まれる。このレジストローラ対102は、給紙カセット100から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを2次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括2次転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
【0030】
2次転写裏面ローラ33は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約16[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1e6[Ω]〜1e12[Ω]、好ましくは約4E7[Ω]である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
【0031】
また、ニップ形成ローラ36は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約14[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1E6Ω以下である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
【0032】
2次転写バイアス電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたものを出力することができる。2次転写バイアス電源39の出力端子は、ニップ形成ローラ36の芯金に接続されている。ニップ形成ローラ36の芯金の電位は、2次転写バイアス電源39からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。また、2次転写裏面ローラ33については、その芯金を接地(アース接続)している。なお、重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33の芯金に印加しつつ、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、重畳バイアスをニップ形成ローラ36の芯金に印加しつつ、2次転写裏面ローラ33の芯金を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用い且つニップ形成ローラ36を接地した条件で、2次転写裏面ローラ33に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、2次転写裏面ローラ33を接地し、且つ重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36に印加する代わりに、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加してもよい。交流電圧としては、正弦波状の波形のものを採用しているが、矩形波状の波形のものを用いてもよい。なお、記録紙Pとして、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いずに、普通紙のような表面凹凸の小さなものを用いる場合には、凹凸パターンにならった濃淡パターンが出現しないので、転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを印加してもよい。但し、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いるときには、転写バイアスを、直流電圧だけからなるものから、重畳バイアスに切り替える必要がある。
【0033】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
【0034】
電位センサ38は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、接地された駆動ローラ32に対する掛け回し箇所に対して、約4[mm]の間隙を介して対向している。そして、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の表面電位を測定する。なお、電位センサ38としては、TDK(株)社製のEFS−22Dを用いている。
【0035】
2次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
【0036】
定着装置90を通過した記録紙Pは、切換爪104による搬送路切換点に至る。この切換爪104は、記録紙Pの搬送路を、排出路と戻し路とで切り替えることができる。図示の状態では、記録紙Pを排出路に向けて案内する。これにより、記録紙Pは、排紙ローラ対103を経て機外へと排出される。
【0037】
プリンタ筺体内において、鉛直方向における給紙カセット100と転写ユニット30との間には、スイッチバック部105aと再送部105bとを具備する反転再搬送装置105が配設されている。切換爪104が搬送路を排出路から戻し路に切り換えている状態では、定着装置90を通過した記録紙Pが戻し路に進入する。そして、大きく湾曲している戻し路に沿って上下を反転せしめられながら、反転再搬送装置105のスイッチバック部105aに進入する。スイッチバック部105aは、自らの内部に記録紙Pの全域を受け入れると、複数のスイッチバックローラ対の駆動を逆転させることで、記録紙Pをスイッチバックさせる。これにより、記録紙Pは後端を前方に向けた状態で、戻し路の湾曲に沿って上下反転しながら、スイッチバック部105aの真下に設けられた再送部105bに進入する。そして、再送部105bから再び給紙路に向けて送られる。その後、レジストローラ対102によるレジストニップと、2次転写ニップとを通過して、第二面にもトナー像が転写された後、定着装置90内でそのトナー像が定着せしめられる。
【0038】
モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット30におけるY,M,C用の1次転写ローラ35Y,M,Cを支持している図示しない支持板を移動せしめて、1次転写ローラ35Y,M,C,Kを、感光体2Y,M,Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2Y,M,Cから引き離して、中間転写ベルト31をK用の感光体2Kだけに当接させる。この状態で、4つの作像ユニット1Y,M,C,Kのうち、K用の作像ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体2K上に形成する。
【0039】
以上の基本的な構成を備える本プリンタにおいては、各色の作図ユニット1Y,M,C,Kと、光書込ユニット80と、転写ユニット30と、それらの駆動を制御する図示しない制御部との組合せにより、像担持体たる中間転写ベルト31の表面にトナー像を形成する像形成手段が構成されている。また、転写ユニット30と、図示しない制御部との組合せにより、転写手段が構成されている。また、反転再搬送装置105と、切換爪104と、図示しない制御部との組合せにより、反転再搬送手段が構成されている。
【0040】
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
図3は、本プリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御部200は、演算手段たるCPU(Central Processing Unit)、データ記憶手段たるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等から構成され、各種の演算処理や、制御プログラムの実行を行うことができる。制御部200には、I/Oインターフェース201を介して、LANポート210、パラレルポート211、USBポート212、転写ユニット30、画像処理部202、切換モータ215、給紙カセット100、反転再搬送装置105、作像ユニット1Y,M,C,Kなどが接続されている。切換モータ215は、図1に示した切換爪(104)を駆動するためのものである。また、画像処理部202は、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてきた画像データを処理するものである。画像処理部202で処理された画像データは、書込制御部203に送られる。書込制御部203は、その画像データに基づいて、光書込ユニット80の駆動を制御して、各色感光体を光走査する。
【0041】
図4は、実施形態に係るプリンタの一部を構成するプリンタドライバソフトがインストールされたパーソナルコンピュータにおけるプリンタドライバのダイアログボックスを示す模式図である。ユーザーは、このダイアログボックスをマウスで操作することで、本プリンタにおける各種の設定を行うことができる。プリンタドライバで設定された各種のパラメータは、パーソナルコンピュータから有線回線を介して、本プリンタにおけるLANポート210、パラレルポート211、又はUSBポート212の何れかに入力される。そして、I/Oインターフェース201を介して制御部200に送られて、制御部200内のパラメータ設定値が変更される。各種のパラメータの1つとして、記録紙Pの片面だけに画像を形成する片面プリント動作モードと、両面にそれぞれ画像を形成する両面プリント動作モードのうち、何れを実行するのかを示す動作モード情報が挙げられる。また、シート載置手段たる給紙カセット100内に載置された記録紙Pについて、両面のうちの片面だけが凹凸に富んでいる片面凹凸シートとしてのエンボス紙であるか否かの情報も例示することができる。かかる構成においては、LANポート210、パラレルポート211、及びUSBポート212の組合せは、動作モード情報を取得する動作モード情報取得手段や、シート情報取得手段として機能している。
【0042】
転写手段の一部を構成している制御部100は、パーソナルコンピュータから送られてきた紙種に関する情報がエンボス紙(片面凹凸シート)を示す内容のものであり、且つ、パーソナルコンピュータから送られてきた動作モード情報が両面プリント動作モードの実行を示す内容のものであるという条件を満たした場合には、エンボス紙の凹凸面に対して転写処理を施すときにおける2次転写バイアスと、非凹凸面に対して転写処理を施すときにおける2次転写バイアスとを異ならせるようにする制御信号を、転写ユニット30に送る。具体的には、給紙カセット100から送り出された後に2次転写ニップに初めて進入したエンボス紙に対して2次転写処理を施すときには、2次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧からなるものを2次転写バイアス電源39から出力させる制御信号を転写ユニット30に送る。これに対し、反転再搬送装置105によって反転再搬送されたエンボス紙に対して2次転写処理を施すときには、2次転写バイアスとして、直流電流だけからなるもの、あるいは、重畳電圧からなり且つ交流のピークツウピーク電圧Vppが凹凸部に対する2次転写のときよりも小さいもの、を2次転写バイアス電源39から出力させる制御信号を転写ユニット30に送る。
【0043】
図5は、給紙カセット100を上から示す平面図である。給紙カセット100の内部には、スライド移動可能な第1サイドガイド板100b、第2サイドガイド板100c、エンドガイド板100dなどが配設されており、それらガイド板の間に記録紙Pの束がセットされている。シート載置台の縁部には、指示板100eがシート載置台に一体的にエンボス加工されているか、あるいは別体の指示板100eがシート載置台に固定されている。この指示板100eには、図6に示すように、「エンボス紙はエンボス面(模様面)を下に向けてセットして下さい」という文言が付されている。先に図1に示したように、記録紙Pは、給紙カセット100内から2次転写ニップに至る過程において、カセット内で下を向けていた面を、2次転写ニップ内でベルト側に向ける。つまり、指示板100eは、記録紙Pとして片面凹凸シートたるエンボス紙を使用する場合に、給紙カセット100に対して所定の向きで載置すべき旨の指示をユーザーに行うことで、給紙カセット100から送り出された後に2次転写ニップに初めて進入するエンボス紙に対して、2次転写ニップ内で凹凸面(エンボス面)を像担持体たる中間転写ベルト31に向ける姿勢をとらせるようにする指示手段として機能している。これにより、記録紙Pとしてのエンボス紙の両面に画像を形成する場合に、それぞれの面にトナー像を2次転写する2回の2次転写工程のうち、初めの2次転写工程において、エンボス紙の凹凸面に2次転写処理を施すことができるようになる。
【0044】
制御部100は、エンボス紙の両面に画像を形成する場合、2回の2次転写工程のうち、初めの2次転写工程のときに、2次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを2次転写バイアス電源39から出力させる。これにより、エンボス紙の凹凸面にトナー像を2次転写するときには、凹凸面の転写に適した重畳電圧を2次転写裏面ローラ33にかけて、凹凸面の凹部に対して十分量のトナーを転移させることで、凹凸面における濃淡パターンの発生を抑えることができる。一方、2回目の2次転写工程のときには、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるもの、あるいは重畳電圧であってピークツウピーク電圧Vppがより小さいもの、を2次転写バイアス電源39から出力させる。これにより、エンボス紙の非凹凸面にトナー像を2次転写するときには、転写チリの原因となる交流成分を無くすか小さくすることで、非凹凸面における転写チリの発生を抑えることができる。
【0045】
図7は、2次転写バイアス電源39から出力される重畳電圧からなる2次転写バイアスの波形を示す波形図である。同図において、2次転写バイアスは、上述した2次転写裏面ローラの芯金に印加される。電圧出力手段たる2次転写バイアス電源39は、転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段として機能している。2次転写裏面ローラの芯金に2次転写バイスが印加されると、2次転写裏面ローラ33の芯金と、ニップ形成ローラ36の芯金との間に、電位差が発生する。よって、2次転写バイアス電源39は、電位差発生手段としても機能している。なお、電位差は、絶対値として取り扱われることが一般的であるが、本稿では、極性付きの値として取り扱うものとする。より詳しくは、2次転写裏面ローラ33の芯金の電位から、ニップ形成ローラ36の芯金の電位を差し引いた値を、電位差として取り扱うことにする。かかる電位差の時間平均値は、本実施形態のように、トナーとしてマイナス極性のものを用いる構成では、その極性がマイナスになった場合に、ニップ形成ローラ36の電位を2次転写裏面ローラ33の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側(本例ではプラス側)に大きくすることになる。よって、トナーを2次転写裏面ローラ側からニップ形成ローラ側に静電移動させることになる。
【0046】
同図において、オフセット電圧Voffは、2次転写バイアスの直流成分であり、且つ実施形態においては電位差の直流成分でもある。また、ピークツウピーク電圧Vppは、2次転写バイアスの交流成分であり、且つ実施形態においては電位差の交流成分でもある。実施形態に係るプリンタにおいては、既に述べたように、2次転写バイアスは、オフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとを重畳したものであり、その時間平均値はオフセット電圧Voffと同じ値になる。また、実施形態に係るプリンタにおいては、既に述べたように、2次転写バイアスを2次転写裏面ローラの芯金に印加し、且つニップ形成ローラの芯金を接地している(0V)。よって、2次転写裏面ローラの芯金の電位は、そのまま両芯金の電位差となる。そして、両芯金の電位差は、オフセット電圧Voffと同じ値の直流成分(Eoff)と、ピークツウピーク電圧Vppと同じ値の交流成分(Epp)とから構成される。
【0047】
同図に示すように、実施形態に係るプリンタでは、オフセット電圧Voffとして、マイナス極性のものを採用している。2次転写裏面ローラ33に印加される2次転写バイアスのオフセット電圧Voffの極性をマイナスにすることで、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に相対的に押し出すことが可能になる。2次転写バイスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト31上のトナーを記録紙P上に転移させる。一方、2次転写バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーをニップ形成ローラ36側から2次転写裏面ローラ33側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録紙Pに転移させたトナーを中間転写ベルト31側に再び引き寄せる。但し、2次転写バイアスの時間平均値(本例ではオフセット電圧Voffと同じ値)がマイナス極性であるので、相対的には、トナーは2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出されるのである。なお、同図において、戻しピーク値Vrは、トナーとは逆極性であるプラス側のピーク値を示している。
【0048】
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意した。そして、このプリント試験機を用いて、種々のプリントテストを実施した。各種のプリントテストにおいては、現像剤としては、平均粒径が6.8[μm]であるポリエステル系の粉砕法によるトナーと、平均粒径が55[μm]である表面に樹脂層を被覆した磁性キャリアとからなるものを使用した。
【0049】
[第1プリントテスト]
オフセット電圧Voffとして、−0.8[kV]を採用した。具体的には、プリントテストでは、ニップ形成ローラ36を接地しているので、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの直流成分を−0.8[kV]に設定した。また、交流成分として、ピークツウピーク電圧Vppが2.5[kV]であるものを採用した。交流成分の周波数f[Hz]や、プロセス線速(中間転写ベルトや感光体の線速)については、適宜変更した。互いに異なる周波数fやプロセス線速の条件下で、普通紙からなる記録紙Pにテスト用の黒ベタ画像を出力した。そして、出力された黒ベタ画像の質を、目視によって2段階で評価した。交流成分の周波数に同期する濃度ムラ(ピッチムラ)が視認されない場合を○、視認される場合を×とした。この結果を次の表1に示す。
【表1】

【0050】
表1に示すように、プロセス線速vを282[mm/s]に設定した場合には、交流成分の周波数fを400[Hz]以上に設定することで、ピッチムラの発生を回避することができた。また、プロセス線速vを141[mm/s]に設定した場合には、交流成分の周波数fを200[Hz]以上に設定することで、ピッチムラの発生を回避することができた。プロセス線速vに応じて、ピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値が異なるのは、プロセス線速vに応じて、2次転写ニップ内でトナーに作用させる交番電界の回数が変化するからである。具体的には、以下、記録紙Pを進入させていない状態における、中間転写ベルト31とニップ形成ローラ36との直接当接による2次転写ニップのローラ表面移動方向の長さであるニップ幅をd[mm]と定義する。2次転写ニップ通過に要する時間であるニップ通過時間[s]は、「ニップ幅d/プロセス線速v」という式で表される。一方、周波数f[Hz]の条件下において、重畳バイアスの交流成分の周期[s]は、「1/周波数f」という式で表される。よって、ニップ通過時間においては、交流成分の1周期分の波形が、「d×f/v」回分だけ印加されることとなる。プリント試験機におけるニップ幅dは3[mm]である。表1に示したように、プロセス線速v=282[mm/s]のとき、ピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値は400[Hz]であることから、必要な波形数を約4.26回分(3×400/282)と計算することができる。これは、2次転写ニップ内において、約4.26回の交番電界をトナーに作用させることで、ピッチムラの発生を回避し得ることを示している。また、プロセス線速v=141[mm/s]のとき、ピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値は200[Hz]であることから、必要な波形数を約4.26回分(3×200/141)と計算することができる。400[Hz]のときと同じ値である。これらのことから、2次転写ニップ通過中に交番電界を約4回作用させることで、ピッチムラのない良好な画像を得ることができると言える。つまり、ピッチムラのない良好な画像を得るためには、「4<d×f/v」という条件が必要になるのである。
【0051】
図8は、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの交流成分の周波数fと、プロセス線速vと、ピッチムラとの関係を示すグラフである。図示のように、周波数fをy軸、プロセス線速vをx軸とする2次元座標において、「f=(4/d)×v」という式で表される直線よりも下側の領域では、ピッチムラが生じてしまう。これに対し、同直線よりも上側の領域では、ピッチムラの発生を回避することができる。
【0052】
[第2プリントテスト]
記録紙Pとして、普通紙の代わりに、エンボス紙であるレザック66 260kg紙(特殊製紙株式会社製)を使用した。エンボス紙は、紙の表面に浮き出しや型押しなどの方法を用いて凹凸をつけた紙であり、レザック66 260kg紙は片面に最大凹凸Dで160[μm]程度の落差のある凹凸を有する。その他のエンボス紙としては、例えば、株式会社NBSリコー社製のFC和紙タイプ さざ波(商品名)などを例示することができる。レザック66の160[μm]という最大凹凸Dについては、次にようにして測定した。即ち、測定装置としては、株式会社東京精密製のSURFCOM 1400Dを用いた。凹凸面における測定点として、特に凹部が深いと思われる5点を選び、評価長さ20[mm]、基準長さ20[mm]の設定で、断面曲線の最大断面高さPtを測定した。そして、測定結果における上位3点の平均値を最大凹凸Dとして求めた。同様の作業を、少なくとも同一種類のエンボス紙3枚以上に対して行い、それらの平均値を最終的な最大凹凸Dとした。エンボス紙の凹凸面ではエンボス加工のパターンが周期的に並んでいるため、測定対象の5点として、同じパターン箇所を選定することができる。直流電圧だけからなる2次転写バイアスでベタ画像の2次転写を行うと、特に凹部の深い部分が非常に薄くなるので、特に凹部の深いパターン箇所を容易に見つけ出すことができる。なお、最大凹凸Dに性質の似たパラメータとして、シート断面曲線の最大断面高さを示す最大断面高さPt(JIS B 0601:2001)がある。これは、評価長さにおける断面曲線の最大山高さと最大谷深さとの和を求めたものである。
【0053】
図9は、レザック66(260kg紙(連量))の表面の拡大撮影像を示すものである。図中点線で示す軌道に沿って断面高さの測定を行った。図示の軌道においては、図10に示すような断面曲線が得られた。この測定により、レザック66 260kg紙とさざ波の、エンボス面と平滑面の最大凹凸Dを測定したレザック66とさざ波のエンボス面の最大凹凸Dは、それぞれ約160μm、70μmであることがわかった。なお、エンボス加工が施されていない非凹凸面の最大凹凸Dは、約40〜50μmであった。
【0054】
プリンタ試験機を用いて、レザック66の両面に対して、図11に示すテスト画像をそれぞれプリントした。このテスト画像は、長さ(紙搬送方向)70[mm]×幅55[mm]の大きさの黒ベタ画像P1と、長さ70[mm]×幅55[mm]の領域に600dpiで8ドットの縦ラインを、16ドット間隔で54本配置したラインパターン画像P2とを具備している。このテスト画像を、表2で示すような4つの条件(テスト番号1〜4)でそれぞれプリントした。そして、プリントされたテスト画像における濃淡パターンと、ライン部転写チリとをそれぞれ官能評価した。それぞれの官能評価において、評価ランクは、○、△及び×の3通りとした。○は問題ないレベル、△は濃淡又はチリが認められるが許容レベル、×は問題となるレベル、という結果をそれぞれ示している。
【表2】

【0055】
テスト番号1、2では、1枚のレザック66に対する合計2回の2次転写工程(おもて面用、裏面用)のうち、1回目の2次転写工程において、−3.0[kV]の直流電圧だけからなる2次転写バイアスを2次転写バイアス電源39から出力した。また、2回目の2次転写工程において、−4.0[kV]の直流電圧だけからなる2次転写バイアスを2次転写バイアス電源39から出力した。一方、テスト番号3、4では、1回目の2次転写工程において、−1.2[kV]のオフセット電圧Voffと7.0[kV]のピークツウピーク電圧Vppとを重畳した重畳電圧からなる2次転写バイアスを2次転写電源39から出力した。また、2回目の2次転写工程において、−1.8[kV]のオフセット電圧Voffと9.0[kV]のピークツウピーク電圧Vppとを重畳した重畳電圧からなる2次転写バイアスを2次転写電源39から出力した。1回目、2回目ともに、ピークツウピーク電圧Vppとしては、正弦波状の形状のものであって、周波数f=500[Hz]のものを採用した。
【0056】
テスト番号1では、凹凸面を下に向けた姿勢でレザック66を給紙カセットにセットした。これにより、1回目の2次転写工程で凹凸面に対してテスト画像を2次転写する一方で、2回目の2次転写工程で非凹凸面に対してテスト画像を2次転写した。凹凸面のテスト画像においては、濃淡パターンが目立ってしまった(×)。これは、2次転写バイアスとして交流成分を含まない直流電圧だけからなるものを印加したからである。また、非凹凸面のテスト画像においては、転写チリが特に発生し易い、ラインパターン画像P2のライン部においても、転写チリは認められず、良好な結果が得られた。これは、2次転写バイアスとして交流成分を含まない直流電圧だけからなるものを印加したからである。
【0057】
テスト番号2では、指示板100eの指示に反して、凹凸面を上に向けた姿勢でレザック66を給紙カセットにセットした。これにより、1回目の2次転写工程で非凹凸面に対してテスト画像を2次転写する一方で、2回目の2次転写工程で凹凸面に対してテスト画像を2次転写した。凹凸面のテスト画像、非凹凸面のテスト画像ともに、テスト番号1と同様の結果となった。
【0058】
テスト番号3では、凹凸面を下に向けた姿勢でレザック66を給紙カセットにセットした。これにより、1回目の2次転写工程で凹凸面に対してテスト画像を2次転写する一方で、2回目の2次転写工程で非凹凸面に対してテスト画像を2次転写した。凹凸面のテスト画像においては、濃淡パターンのない良好な結果が得られた(○)。これは、2次転写バイアスとして交流成分を含む重畳電圧からなるものを印加したからである。また、非凹凸面のテスト画像においては、ライン部において若干の転写チリが認められたが、許容範囲内であった。転写チリが認められたのは、2次転写バイアスとして交流成分を含む重畳電圧からなるものを印加したからである。
【0059】
テスト番号4では、指示板100eの指示に反して、凹凸面を上に向けた姿勢でレザック66を給紙カセットにセットした。これにより、1回目の2次転写工程で凹凸面に対してテスト画像を2次転写する一方で、2回目の2次転写工程で非凹凸面に対してテスト画像を2次転写した。そして、非凹凸面においては、テスト番号1と同様に、若干の転写チリが認められたが、許容範囲内であった。ここで注目すべき点は、凹凸面での画質の結果である。重畳バイアスからなる2次転写バイアスを採用しているにもかかわらず、濃淡パターンの評価結果がテスト番号3よりも悪い△になっている。テスト番号3と比較して異なる条件は、直流成分や交流成分の値や、2次転写回数である。それらのうち、結果を○から△に低下させた原因は、2次転写回数にあるが、その理由については後に詳述する。
【0060】
[転写実験]
本発明者らは、重畳電圧からなる2次転写バイアスを採用することで、凹部で十分な画像濃度を得て紙面凹凸にならった濃淡パターンを従来よりも目立たなくすることができた原因を明らかにするために、特殊な転写実験装置を作製した。
【0061】
図12は、その転写実験装置を示す概略構成図である。この転写実験装置は、透明基板210、現像装置231、Zステージ220、照明241、顕微鏡242、高速度カメラ243、パーソナルコンピュータ244などを備えている。透明基板210は、ガラス板211と、これの下面に形成されたITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極212と、透明電極212の上に被覆された透明材料からなる透明絶縁層213とを具備している。この透明基板210は、図示しない基板支持手段によって所定の高さ位置で支持されている。この基板支持手段は、図示しない移動機構によって図中上下左右方向に移動することが可能である。図示の例では、透明基板210が金属版215を載置したZステージ220の上に位置しているが、基板支持手段の移動により、Zステージ220の側方に配設された現像装置231の真上に移動することも可能である。なお、透明基板212の透明電極212は、基板支持手段に固定された電極に接続され、この電極は接地されている。
【0062】
現像装置231は、実施形態に係るプリンタの現像装置と同様の構成になっており、スクリュウ部材232、現像ロール233、ドクターブレード234などを有している。現像ロール233は、電源235によって現像バイアスが印加された状態で回転駆動される。
【0063】
透明基板210が基板支持手段の移動により、現像装置231の真上で且つ現像ロール233に対して所定のギャップを介して対向する位置まで所定の速度で移動せしめられると、現像ロール233上のトナーが透明基板210の透明電極212上に転移する。これにより、透明基板210の透明電極212上には所定の厚みのトナー層216が形成される。トナー層216に対する単位面積あたりのトナー付着量は、現像剤のトナー濃度、トナーの帯電量、現像バイアス値、基板210と現像ロール233とのギャップ、透明基板210の移動速度、現像ロール233の回転速度などによって調整することができる。
【0064】
トナー層216が形成された透明基板210は、平面状の金属板215上に導電性接着剤で貼り付された記録紙214との対向位置まで平行移動せしめられる。金属板215は、加重センサが設けられた基板221上に設置され、基板221はZステージ220上に設置されている。また、金属板215は、電圧増幅器217に接続されている。電圧増幅器217には、波形発生装置218によって直流電圧及び交番電圧からなる転写バイアスが入力され、金属板215には電圧増幅器217によって増幅された転写バイアスが印加される。Zステージ220を駆動制御して金属板215を上昇させると、記録用紙214がトナー層216と接触し始める。金属板215を更に上昇させると、トナー層216に対する圧力が増加するが、加重センサからの出力が所定の値になるように金属板215の上昇を停止させる。圧力を所定値にした状態で、金属板215に転写バイアスを印加してトナーの挙動を観察する。観察後は、Zステージ220を駆動制御して金属板215を下降させて、記録用紙214を透明基板210から離間させる。すると、トナー層216は記録用紙214上に転写されている。
【0065】
トナーの挙動の観察については、基板210の上方に配設されている顕微鏡242及び高速度カメラ243を用いて行う。基板210は、ガラス板211、透明電極212、及び透明絶縁層213という各層が全て透明材料からなるので、透明電極210の上方から、透明基板210を介して、透明基板210の下側にあるトナーの挙動を観察することができる。
【0066】
顕微鏡242としては、キーエンス社製のズームレンズVH−Z75からなるものを用いた。また、高速度カメラ243としては、フォトロン社製のFASTCAM−MAX 120KCを用いた。フォトロン社FASTCAM−MAX 120KCは、パーソナルコンピュータ244によって駆動制御される。顕微鏡242及び高速度カメラ243は、図示しないカメラ支持手段によって支持されている。このカメラ支持手段は、顕微鏡242の焦点を調整できるように構成されている。
【0067】
トナーの挙動については、次のようにして撮影する。即ち、まず、照明241によってトナーの挙動の観察位置に照明光を照射して、顕微鏡242の焦点を調整する。次に、金属板215に転写バイアスを印加して、透明基板210の下面に付着しているトナー層216のトナーを、記録紙214に向けて移動させる。このときのトナーの挙動を、高速度カメラ243で撮影する。
【0068】
図12に示した転写実験装置と、実施形態に係るプリンタとでは、トナーを記録紙に転写する転写ニップの構造が異なるため、転写バイアスが同じであっても、トナーに作用する転写電界は異なる。適切な観察条件を調べるために、転写実験装置でも、良好な凹部濃度再現性が得られる転写バイアス条件を調べてみた。記録紙214としては、特殊製紙株式会社製のレザック66(商品名) 260kg紙(四六版連量)を使用した。トナーとしては、平均粒径6.8[μm]のYトナーに、Kトナーを少量混入したものを用いた。転写実験装置では、記録紙の裏面に転写バイアスを印加する構成になっているため、トナーを記録紙に転写し得る転写バイアスの極性が、実施形態に係るプリンタとは逆になっている(即ち、プラス極性)。重畳バイアスからなる転写バイアスの交流成分として、波形が正弦波であるものを採用した。交流成分の周波数fを500[Hz]、直流電圧(本例ではオフセット電圧Voffに該当)を200[V]、ピークツウピーク電圧Vppを400[V]から2600[V]まで200[V]単位で変化させていきながら、記録紙214に対して0.4〜0.5[mg/cm]のトナー付着量でトナー層216を転写した。その結果、ピークツウピーク電圧Vppを800[V]以下に設定した条件では、凹部濃度再現性がレベル4未満になったが、Vppを900〜2200[V]の範囲に設定した条件では、凹部濃度再現性がレベル4以上になった。なお、ピークツウピーク電圧Vppを2400[V]に設定した条件では、凹部濃度再現性は許容レベルであるものの、許容レベルを超える白点が発生してしまった。これは、ピークツウピーク電圧Vppを大きくし過ぎると、図7に示した送りピーク値Vtが紙表面の凹部とベルトとの間の放電開始電圧よりも大きくして、凹部内で放電を発生させてしまうからである。
【0069】
次に、顕微鏡242の焦点を透明基板210上のトナー層216に合わせ、直流電圧(本例ではオフセット電圧Voffに該当)を200[V]に設定し、且つピークツウピーク電圧Vppを1000[V]にした条件で、トナーの挙動を撮影した。すると、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子は、転写バイアスの交流成分によって形成される交番電界により、透明基板210と記録紙214との間を往復移動するが、その往復移動回数の増加とともに、往復移動するトナー粒子の量が増加する。具体的には、転写ニップにおいては、転写バイアスの交流成分の1周期(1/f)が到来する毎に、交番電界が1回作用してトナー粒子が1回往復移動する。初めの1周期では、図13に示すように、トナー層216のうち、層の表面に存在しているトナー粒子だけが層から離脱する。そして、記録紙216の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216のトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、次の1周期には、図14に示すように、前の1周期よりも多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。そして、記録紙216の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216中にまだ残っていたトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、更に次の1周期には、図15に示すように、前の1周期よりも更に多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。このように、トナー粒子は往復移動する毎に、その数を徐々に増やしていく。すると、ニップ通過時間が経過したときには(転写実験装置ではニップ通過時間に相当する時間が経過したとき)、記録紙Pの凹部内に十分量のトナーが転移していることがわかった。
【0070】
一方、直流電圧を200[V]に設定し、且つピークツウピーク電圧Vppを800[V]にした条件で、トナーの挙動を撮影したところ、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子のうち、層の表面に存在しているものが、初めの1周期で層から離脱して記録紙Pの凹部内に進入する。ところが、進入したトナー粒子は、その後、トナー層216に向かうことなく、凹部内に留まった。次の1周期が到来したとき、トナー層216から新たに離脱して記録紙Pの凹部内に進入したトナー粒子は、ごく僅かであった。よって、ニップ通過時間が経過した時点で、記録紙Pの凹部内には少量のトナー粒子しか転移していない状態であった。このことから、図7に示した戻しピーク値Vrをある程度大きな値にしないと、凹部内のトナー粒子をトナー層216に引き戻すことができずに、凹部内にトナー粒子を転移させることができなくなることがわかった。
【0071】
本発明者らが、先の第2テストプリントにおけるテスト番号4で、レザック66凹凸面の濃淡パターンの評価結果が△になった原因について検討したところ、次のようなことがわかった。即ち、オフセット電圧Voffは、2次転写ニップ内において、2次転写バイアス交流成分の影響でベルトと紙面との間を往復移動しているトナーを、相対的にベルト側から紙側に移動させるためのものである。この値が不足すると、トナーをベルト側から紙側に良好に移動させることができなくなるので、紙表面の凹部のみならず、凸部においても画像濃度を不足させてしまう。この結果、濃淡パターンは発生しないものの、紙面全体で画像濃度不足を引き起こしてしまう。トナーをベルト側から紙側に相対移動させるために必要となるオフセット電圧Voffの値は、紙の電気抵抗値によって変動する。紙の電気抵抗値が高くなるほど、相対移動のために最小限必要なオフセット電圧Voffの値が大きくなる。そして、オフセット電圧Voffをより大きくした場合、必要な大きさの戻しピーク値Vrを得るためには、ピークツウピーク電圧Vppもより大きくする必要がある。但し、ピークツウピーク電圧Vppを大きくすると、送りピーク値Vtも大きくなるため、紙表面の凹部で白点を発生させ易くなってしまう。このため、オフセット電圧Voffについては、できるだけ、必要最小限の値に留めることが望ましく、そのためには、記録紙の電気抵抗に応じてオフセット電圧Voffを変化させることが望ましい。このような理由から上述した第2テストプリントでは、1回目の2次転写工程よりも、2回目の2次転写工程における直流電圧(テスト番号1、2)やオフセット電圧Voff(テスト番号3,4)の値を大きくしていた。1回目の2次転写工程の後、定着装置90に進入したレザック66は、定着装置90で加熱されることで、水分を蒸発させて電気抵抗値を高めるからである。但し、オフセット電圧Voffを大きくし過ぎると、送りピーク値Vtの増大によって凹部で白点を発生させてしまうため、白点を許容レベルに留め得るぎりぎりのラインで、オフセット電圧Voffを大きくした。すると、戻しピーク値Vrがやや不足したため、濃淡パターンの結果が△になってしまったのである。
【0072】
以上のことから、レザック66のようなエンボス紙の両面に画像を形成する場合には、定着処理によって紙の電気抵抗値を高めてしまう前の1回目の2次転写工程で、凹凸面に2次転写処理を施すことが望ましいことがわかった(テスト番号3)。そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、指示板100eによってエンボス紙のセット姿勢をユーザーに指示することで、1回目の2次転写工程で凹凸面に2次転写処理を施すようにしているのである。
【0073】
[第3テストプリント]
第3テストプリントにおいては、記録紙Pとして、株式会社NBSリコー社製のFC和紙タイプ さざ波(商品名)を使用した。和紙のような表面凹凸を具備する紙である。このような紙を用いると、表面凹凸にならった濃淡パターンを発生させ易くなる。縦70[mm]、横55[mm]の大きさの黒ベタ画像を、出力するテスト画像として採用した。そして、記録紙Pに出力されたテスト画像について、凹部の濃度再現性、凸部(平滑部)の濃度再現性、及び放電に起因する白点の出現性の3項目を評価した。
【0074】
凹部の濃度再現性については、次のようにして評価した。即ち、表面凹凸の凹部内に対して十分量のトナーを進入させていることから、凹部において十分な画像濃度が得られている場合をランク5として評価した。また、凹部内のごく僅かな領域を白く抜けた領域にしているか、あるいは、凹部の画像濃度が平滑部よりも僅かに低い状態になっている場合を、ランク4として評価した。また、ランク4よりも、白抜けの領域が大きい場合、あるいは濃度低下が目立つ場合を、ランク3として評価した。また、ランク3に比べ、さらに白抜けの領域が大きい場合、あるいは濃度低下が目立つ場合をランク2として評価した。また、凹部が全体的に白く、全体的に溝の状態がはっきりと認識できる場合や、さらに悪い場合をランク1として評価した。ユーザーに提供できる画質の許容レベルとしては、ランク4以上である。
【0075】
凸部(平滑部)の濃度再現性については、次のようにして評価した。即ち、平滑部において十分な画像濃度を得られている場合をランク5とした。また、ランク5に比べてやや薄いが、問題のない濃さが得られている場合を、ランク4として評価した。また、ランク4に比べてさらに薄く、ユーザーに提供する画質としては問題となる場合をランク3として評価した。また、ランク3に比べてさらに薄い場合をランク2とし、平滑部が全体的に白っぽい場合やそれよりも薄い場合をランク1として評価した。ユーザーに提供できる画質の許容レベルとしては、ランク4以上である。
【0076】
2次転写バイアスによっては、2次転写ニップ内において、記録紙Pの表面凹部と、中間転写ベルト31との間の微小空隙で放電が発生して、画像に白点を出現させることがある。放電に起因する白点の出現性については、次のようにして評価した。即ち、放電に起因するものと考えられる白点が認められない状態をランク5として評価した。また、白点が僅かに認められるものの、認められる数が少なく且つ大きさも小さいことから、ユーザーに提供する画質として問題ないレベルをランク4として評価した。また、ランク4に比べて白点が多く認められ、問題あるほど目立つ状態をランク3として評価した。また、ランク3に比べてさらに白点が多く認められる場合をランク2として評価した。また、白点が画像全体に認められ、ランク2よりも更に悪い状態をランク1として評価した。なお、放電に起因する白点は点状に発生するのに対し、凹部の濃度が非常に薄い場合は凹部全体が白くなる。ユーザーに提供できる画質の許容レベルとしては、ランク4以上である。
【0077】
第3プリントテストについては、次のようにして行った。即ち、まず、2次転写ニップで交番電界を全く作用させない場合を基準として評価するために、2次転写バイアスとして、直流成分だけからなるものを採用してテスト用の黒ベタ画像を出力して上記3項目を評価した。この結果を次の表3に示す。
【表3】

【0078】
表3に示すように、2次転写バイアスとして直流成分だけからなるものを採用した場合、直流電圧の増加に伴って凸部の画像濃度も増加していくが、凹部においては必要な画像濃度を得ることができない。直流電圧の値にかかわらず、凹部の濃度再現性はランク1である。また、直流電圧が増加するにつれて、放電に起因する白点の発生が目立ってくる。マイナス極性の直流電圧の絶対値を2[kV]よりも大きくすると、白点の出現性が許容レベルであるランク4を下回ってしまう。
【0079】
次に、2次転写バイアスとして、重畳バイアスを採用してテスト用の黒ベタ画像を出力した。重畳バイアスの交流成分の周波数fについては、500[Hz]に固定した。また、プロセス線速vについては、282[mm/s]に固定した。また、直流成分(オフセット電位Voff)については、−0.6[kV]〜−2.0[kV]の範囲内で適宜変更した。また、交流成分のピークツウピーク電圧Vppについては、1.0[kV]〜9.0[kV]の範囲内で適宜変更した。このような条件で出力した黒ベタ画像の凹部濃度再現性を評価した結果を、次の表4に示す。
【表4】

【0080】
表4に示すように、2次転写バイアスとして、重畳バイアスを採用すると、バイアス条件によっては、凹部濃度再現性のランクを4以上にし得ることがわかる。凹部濃度再現性については、交流成分のピークツウピーク電圧Vppを大きくするほど、ランクを向上させ、且つ、オフセット電位Voffの絶対値を大きくするほど、ランクを向上させる傾向にある。
【0081】
上記黒ベタ画像の凸部濃度再現性を評価した結果を、次の表5に示す。
【表5】

【0082】
オフセット電圧Voffの絶対値を大きくするほど、凸部(平滑部)の画像濃度を増加させる傾向にあることがわかる。オフセット電圧Voffの絶対値をある程度まで大きくすることで、凸部濃度再現性を許容レベルのランク4以上にすることができる。ここで注目すべき点は、2次転写バイアスとして重畳バイアスを採用した場合、直流成分だけからなるものを採用する場合に比べて(表2に比べて)、凸部濃度再現性を許容レベルのランク4以上にするオフセット電圧Voffの絶対値を小さくすることができている点である。
【0083】
上記黒ベタ画像の白点出現性を評価した結果を、次の表6に示す。
【表6】

【0084】
交流成分のピークツウピーク電圧Vppを小さくするほど、放電に起因する白点の発生を抑える傾向にあることがわかる。これに対し、オフセット電圧Voffの絶対値を小さくするほど、放電に起因する白点の発生を抑える傾向にあることがわかる。
【0085】
図16は、第2プリントテストの結果に基づいて作成されたオフセット電圧Voffと、ピークツウピーク電圧Vppと、凹部濃度再現性と、凸部濃度再現性と、白点出現性との関係を示すグラフである。このグラフは、図示のように、y軸にオフセット電圧Voffの値をとるとともに、x軸にピークツウピーク電圧Vppの値をとった2次元座標上に作成されたものである。2次元座標上には、実線で示される直線L1、点線で示される直線L2、及び一点鎖線で示される直線L3、という3つの直線が描かれている。図示の2次元座標において、直線L1の線上の領域や、直線L1に比べて同じx座標でy座標が大きくなる領域では、凹部濃度再現性のランクが許容レベルの4を下回る3以下という結果になった(凹部の薄さが目立った)。このため、プロット点を×として示している。また、直線L2の線上の領域や、直線L2に比べて同じy座標が大きくなる領域では、凸部濃度再現性のランクが許容レベルの4を下回る3以下という結果になった(凸部の薄さが目立った)。このため、プロット点を×として示している。また、直線L3の線上の領域や、直線L3に比べて同じx座標でy座標が大きくなる領域では、白点出現性のランクが許容レベルを下回る3以下という結果になった(放電に起因する白点が目立った)。このため、プロット点を×として示している。なお、直線L1よりも図中上側で且つ直線L2よりも図中下側の領域では、凹部濃度再現性のランクが4を下回るとともに、凸部濃度再現性のランクが4を下回った。また、直線L1よりも図中上側で且つ直線L3よりも図中上側の領域では、凹部濃度再現性のランクが4を下回るとともに、白点出現性のランクが4を下回った。また、直線L2よりも図中下側で且つ直線L3よりも図中上側の領域では、凸部濃度再現性が4を下回るとともに、白点出現ランクが4を下回った。
【0086】
同図では、凹部濃度再現性、凸部濃度再現性、及び白点出現性という3つの項目について、全て許容レベルのランク4以上になった実験結果のみ、プロット点を丸で示している。3つの項目ではなく、凹部濃度再現性だけに着目すると、直線L1よりも図中下側の座標となるオフセット電圧Voff及びピークツウピーク電圧の組合せを採用すればよいことになる。直線L1は、「Vpp=−4×Voff」という式で表される。よって、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を満たす2次転写バイアスを採用することで、紙表面の凹部で十分な画像濃度を得ることができる。
【0087】
なお、既に説明しているように、プリンタ試験機においては、2次転写裏面ローラ33の芯金に対して2次転写バイアスを印加するとともに、ニップ形成ローラ36の芯金を接地しているので、両ローラ間における電位差の時間平均値である直流成分電位差Eoffが、2次転写バイアスの直流成分であるオフセット電圧Voffと同じ値になる。ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、ニップ形成ーラ36の芯金に直流電圧を印加した場合、2次転写裏面ローラ33の芯金に印加する直流電圧と、ニップ形成ローラ36の芯金に印加する直流電圧との重畳値を、オフセット電圧Voffとして取り扱うものとする。つまり、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、ニップ形成ーラ36の芯金に直流電圧を印加した場合であっても、Eoffとオフセット電圧Voffとは同じ値になる。
【0088】
ニップ形成ローラ36等のニップ形成部材と、2次転写裏面ローラ33等の裏面当接部材との間に、直流成分と交流成分とを含む電位差を発生させる方法としては、次の6通りを例示することができる。
(1)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材をアース接続する。
(2)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に直流バイアスを印加する。
(3)ニップ形成部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に直流バイアスを印加する。
(4)ニップ形成部材をアース接続し、且つ、裏面当接部材に重畳バイアスを印加する。
(5)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に重畳バイアスを印加する。
(6)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加する。
【0089】
以上のように、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備することで、図13〜図15に示したような現象を生起せしめて、記録紙Pの凹部内に十分量のトナーを転移させ得ることがわかった。なお、図13〜図15に示したような現象を生起せしめるためには、転写ニップ内で最低でもトナー粒子を2往復させる必要がある。このため、ニップ通過時間については、交流成分の周期の2倍以上に設定する必要がある。望ましくは、既に述べたように、転写ニップ内で交番電界を4回以上作用させることが望ましい(f>(4/d)×v)。
【0090】
実施形態に係るプリンタにおいては、2次転写裏面ローラ33の芯金とニップ形成ローラ36の芯金との電位差として、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備し、且つニップ形成ローラ36の芯金の電位を2次転写裏面ローラ33の芯金の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側に大きくしたもの、を生じせしめることが可能な2次転写バイアスを印加するように、電位差発生手段としての2次転写バイアス電源39を構成している。これにより、発明者らが実験で明らかにしたように、記録紙Pの表面凹凸にならった濃淡パターンを、従来よりも目立ち難くすることができる。なお、ここで言う2次転写バイアスは、上述した6通りの電位差の何れかを発生させるためのものであり、2次転写裏面ローラ33あるいはニップ形成ローラ36の何れか一方だけに印加するバイアスの他に、両方にそれぞれ印加するバイアスも含まれる。
【0091】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、「f[Hz]>(4/d)×v」という条件を具備するように、2次転写バイアスの交流成分の周波数f、2次転写ニップのニップ幅d[mm]、及びベルト表面移動速度であるプロセス線速vを設定している。このような設定では、既に説明したように、ピッチムラの発生を回避することができる。
【0092】
なお、中間転写ベルト31、2次転写裏面ローラ33、ニップ形成ローラ36の体積抵抗率や抵抗は、実施形態のものに限定されるものではない。但し、抵抗が高すぎると、放電等によって部材の表面に付与される電荷が蓄積し、電界が経時変化するため好ましくない。その電荷を除電する手段を設けない場合には、中間転写ベルト31、2次転写裏面ローラ33、ニップ形成ローラ36としては、体積抵抗率が1E12Ωcm以下であるものを用いることが望ましい。
【0093】
本プリンタにおいては、上述したように、LANポート210、パラレルポート211、USBポート212等の動作モード情報取得手段によって取得された動作モード情報が両面プリント動作モードの実行を示す内容のものであって、且つ、定着装置90を通過した後の記録シートが一方の面だけに画像を担持するものである場合に、その記録シートの他方の面にもトナー像を転写及び定着させるために、その記録シートの上下を反転せしめながら転写ユニット30に再搬送する反転再搬送装置105や切換爪104等からなる反転再搬送手段を設けている。そして、前記条件を満たした場合に、シート載置手段たる給紙カセット100から送り出された後に2次転写ニップに初めて進入した片面凹凸シートたるエンボス紙に対して2次転写処理を施すときにおける2次転写バイアスと、反転再搬送手段によって反転再搬送されたエンボス紙に対して2次転写処理を施すときにおける2次転写バイアスとを異ならせる。これにより、2次転写ニップに初めて進入したエンボス紙と、反転再搬送後に再び2次転写ニップに進入したエンボス紙とで、ベルトとニップ形成ローラ36との電位差を異ならせることで、エンボス紙の凹凸面たるエンボス面に対する前記電位差と、非凹凸面たる非エンボス面に対する前記電位差とを異ならせる処理を実施するように、転写手段の一部である制御部200を構成している。かかる構成では、両面プリント動作モードにおける初めの2次転写処理と、反転再搬送後の2回目の2次転写処理とで、2次転写バイアスの条件を異ならせるという簡単な処理により、エンボス紙のエンボス面と非エンボス面とでそれぞれ適切な前記電位差を発生させることができる。
【0094】
また、本プリンタにおいては、記録シートとしてエンボス紙を使用する場合に、給紙カセット100に対してエンボス紙を所定の向きで載置すべき旨の指示をユーザーに行うことで、給紙カセット100から送り出された後に2次転写ニップに初めて進入するエンボス紙に対して、2次転写ニップ内でエンボス紙のエンボス面を中間転写ベルト31に向ける姿勢をとらせるようにする指示手段たる指示板100eを設けている。かかる構成では、上述したように、指示板100eによってエンボス紙のセット姿勢を指示することで、定着処理によって乾燥してしまう前というエンボス面に対するトナー像の転写処理に有利となる条件で、エンボス面に対してトナー像を転写することができる。
【0095】
また、本プリンタにおいては、シート情報取得手段によって取得された情報がエンボス紙を示す内容のものであり、且つ、動作モード情報取得手段によって取得された動作モード情報が両面プリント動作モードの実行を示す内容のものであるという条件を満たした場合に、給紙カセット100から送り出された後に2次転写ニップに初めて進入したエンボス紙に対して2次転写処理を施すときにおける2次転写バイアスとして、直流成分及び交流成分を含むものを発生させる。これにより、ベルトとニップ形成ローラ36との間の電位差として、直流成分及び交流成分を含むものを発生させる。一方、反転再搬送後のエンボス紙に対して2次転写処理を施すときにおける2次転写バイアスとして、交流成分を含まないもの、あるいは、初めの2次転写処理のときよりもピークツウピーク値の小さな交流成分を含むもの、を発生させる。これにより、ベルトとニップ形成ローラ36との間の電位差として、交流成分を含まないもの、あるいは、初めの2次転写処理のときよりもピークツウピーク値の小さな交流成分を含むもの、を発生させる。かかる構成では、指示板100eによる指示通りにセットされたエンボス紙に対して反転搬送後の2次転写処理を施すとき、即ち、エンボス紙における表面凹部のない非エンボス面に対して2次転写処理を施すときには、表面凹部に対してトナーを良好に転移させるための交流成分を含まない前記電位差、あるいは、ピークツウピークのより小さな交流成分を含む前記電位差を発生させる。これにより、非エンボス面において、交流成分に起因するトナー散りの発生を回避することができる。
【0096】
また、本プリンタにおいては、シート情報取得手段によって取得された情報がエンボス紙を示す内容のものであり、且つ、動作モード情報取得手段によって取得された動作モード情報が両面プリント動作モードの実行を示す内容のものであるという条件を満たした場合に、反転再搬送後のエンボス紙に対して2次転写処理を施すときにおける2次転写バイアスとして、初めの2次転写処理における2次転写バイアスよりも大きな値の直流成分を含むものを印加する。これにより、初めの2次転写処理よりも大きな値の直流成分を含む前記電位差を発生させる。かかる構成では、初めの2次転写処理の後における定着処理によって乾燥してしまったエンボス紙の非エンボス面に対して、2回目の2次転写処理において十分量のトナーを転移させることができる。
【0097】
また、本プリンタにおいては、直流電圧たるオフセット電圧Voffと、ピークツウピーク値がオフセット電圧Voffの絶対値の4倍よりも大きなたるピークツウピーク電圧Vppとを電圧出力手段たる2次転写バイアス電源39から出力することで、給紙カセット100から送り出された後に2次転写ニップに初めて進入したエンボス紙に対して2次転写処理を施すときにおける前記電位差を発生させるように、転写ユニット30や制御部200を構成している。即ち、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を満たす2次転写バイアスを採用している。かかる構成では、既に説明したように、エンボス紙のエンボス面における凹部で十分な画像濃度を得ることができる。
【0098】
また、本プリンタにおいては、給紙カセット100から送り出された後に2次転写ニップに初めて進入したエンボス紙に対して2次転写処理を施すときにおける前記電位差(実施形態では2次転写バイアスと同意)として、交流成分の周波数f[Hz]と、ニップ幅d[mm]と、プロセス線速v[mm/s]とについて「f>(4/d)×v」という関係を具備するものを発生させるように、転写ユニット30や制御部200を構成している。かかる構成では、既に説明したように、ピッチムラの発生を回避することができる。
【0099】
また、本プリンタにおいては、奇数頁に対応する画像と、その奇数頁に続く偶数頁に対応する画像とを互いに異なるシート面に形成し、且つ、シート情報取得手段によって取得されたシート種類情報がエンボス紙を示す内容のものである場合に、エンボス紙のエンボス面に対して奇数頁に対応する画像を形成する旨の情報をユーザーに報知する報知手段とを設けている。より詳しくは、報知手段たるプリンタドライバにより、図4に示したように、「第1ページ目がエンボス面にプリントされます」という情報をユーザーに報知している。かかる構成では、奇数ページがエンボス面にプリントされることを、ユーザーに確実に認識してもらうことができる。
【0100】
また、本プリンタにおいては、奇数頁に対応する画像と、その奇数頁に続く偶数頁に対応する画像とを互いに異なるシート面に形成し、且つ、シート情報取得手段によって取得されたシート種類情報がエンボス紙を示す内容のものでない場合には、前記偶数頁に対応するトナー像を中間転写ベルト31に形成した後、前記奇数頁に対応するトナー像を中間転写ベルト31に形成する処理を実施するように、各色作像ユニットなどからなる像形成手段を構成している。かかる構成では、反転搬送後に2次転写処理が施される面を上方に向けた姿勢で記録シートを排出する構成であっても、奇数頁を下に向けて排出することで、排紙トレイ上で各記録シートの頁を順に揃えることができる。
【0101】
また、本プリンタにおいては、奇数頁に対応する画像と、その奇数頁に続く偶数頁に対応する画像とを互いに異なるシート面に形成し、且つ、シート情報取得手段によって取得されたシート種類情報がエンボス紙を示す内容のものである場合に、その奇数頁に対応するトナー像を中間転写ベルト31に形成した後、偶数頁に対応するトナー像を中間転写ベルト31に形成する処理を実施するように、各色作像ユニットなどからなる像形成手段を構成している。かかる構成では、両面プリント動作モードであって、且つ記録シートがエンボス紙である場合には、頁を順に揃えることよりも、奇数頁をエンボス紙のエンボス面に印刷することを優先して、奇数頁の画像をエンボス面に形成する。これにより、ユーザーがエンボス面に印刷することを望むことが多い奇数頁をその希望通りにエンボス面に形成することができる。
【0102】
また、本プリンタにおいては、像担持ベルトたる中間転写ベルト31として、引っ張り弾性率が2[GPa]以上であるものを用いている。かかる構成においては、エンボス紙における高画質とベルトの高耐久性とを両立することができる。具体的には、ポリイミドベルトのような引っ張り弾性率の比較的高いベルトは、高い耐久性を発揮する一方で、紙表面に対する凹凸追従性が低いことから、優れた2次転写性を発揮することが困難であった。これに対し、本プリンタにおいては、凹凸面に対する2次転写性を向上させていることから、引っ張り弾性率が2[GPa]以上である中間転写ベルト31を用いても、高画質を実現することが可能であるため、高画質とベルトの高耐久性とを両立することができる。
【0103】
これまで、中間転写ベルト31とニップ形成ローラ36との当接によって2次転写ニップを形成する例について説明したが、中間転写ベルト31と、無端状のニップ形成ベルトとの当接によって2次転写ニップを形成してもよい。この場合、中間転写ベルト31のループ内側に配設された2次転写裏面ローラ33の芯金と、ニップ形成ベルトのループ内側でニップ形成ベルトを中間転写ベルト31に向けて押圧する押圧部材たる押圧ローラの芯金との間に、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備し、且つ押圧ローラの芯金の電位を2次転写裏面ローラ33の芯金の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側に大きくした電位差を発生させればよい。
【0104】
また、像担持体である中間転写ベルト31とニップ形成部材であるニップ形成ローラ36との当接による2次転写ニップにおいて、本発明を適用した例について説明したが、次のような転写ニップにおいて、本発明を適用することも可能である。即ち、像担持体たる無端ベルト状の感光体の裏面に裏面当接部材を当接させて、無端ベルト状の感光体をニップ形成部材に向けて押圧して、感光体とニップ形成部材とを当接させることで形成し、且つ、記録材を通紙して感光体上のトナー像を記録材へと転写する転写ニップである。
【0105】
また、図17に示すような構成のプリンタにおける2次転写ニップにも、本発明を適用することが可能である。このプリンタは、1つの感光体2の周囲に、Y,M,C,Bk用の現像装置8Y,M,C,Kを有している。画像形成を行う場合、まず、感光体2の表面を帯電装置6によって一様に帯電させた後、感光体2の表面に対してY用の画像データに基づいて変調されたレーザ光ーを照射して,感光体2の表面にY用の静電潜像を形成する。そして、このY用の静電潜像を現像装置8Yによって現像してYトナー像を得た後、これを中間転写ベルト31上に1次転写する。その後、感光体2の表面上の転写残トナーをドラムクリーニング装置3によって除去した後、感光体2の表面を帯電装置6によって再び一様に帯電させる。次に、感光体2の表面に対して、M用の画像データに基づいて変調されたレーザー光を照射して、感光体2の表面にM用の静電潜像を形成した後、これを現像装置8Mによって現像してMトナー像を得る。そして、このMトナー像を中間転写べルト31上のYトナー像に重ね合わせて1次転写する。以降、同様にして、感光体2上でCトナー像、Kトナー像を順次現像して、ベルト上のYMトナー像上に順次重ね合わせて1次転写していく。これにより、中間転写ベルト31上に4色重ね合わせトナー像を形成する。
【0106】
その後、中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像を、2次転写ニップで記録紙の表面に一括2次転写して、記録紙上にフルカラー画像を形成する。そして、定着装置90によって記録紙にフルカラー画像を定着せしめた後、記録紙を機外に排出する。このような構成のプリンタにおける2次転写バイアス電源39を、実施形態と同様に構成してもよい。
【符号の説明】
【0107】
1Y,M,C,K:作像ユニット(像形成手段の一部)
2Y,M,C,K:感光体(潜像担持体)
25Y,M,C,K:転写ローラ(押圧部材)
30:転写ユニット(像形成手段の一部、転写手段の一部)
31:中間転写ベルト(像担持体)
33:2次転写裏面ローラ(裏面当接部材)
36:ニップ形成ローラ(ニップ形成部材)
39:2次転写バイアス電源(転写バイアス印加手段、電位差発生手段、電圧出力手段)
80:光書込ユニット(像形成手段の一部)
90:定着装置
100:給紙カセット(シート載置手段)
100e:指示板(指示手段の一部)
104:切換爪(反転再搬送手段の一部)
105:反転再搬送装置(反転再搬送手段の一部)
200:制御部(像形成手段の一部、転写手段の一部、反転再搬送手段の一部)
210:LANポート(動作モード情報取得手段やシート情報取得手段の一部)
211:パラレルポート(動作モード情報取得手段やシート情報取得手段の一部)
212:USBポート(動作モード情報取得手段やシート情報取得手段の一部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0108】
【特許文献1】特開2006−267486号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にトナー像を担持する像担持体と、
前記表面にトナー像を形成する像形成手段と、
前記表面に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材と、
前記像担持体と前記ニップ形成部材との間に、直流成分及び交流成分を含む電位差を発生させながら、前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに対して前記像担持体の表面上のトナー像を転写する転写手段と、
前記転写手段を通過した後の記録シートに対してトナー像の定着処理を施す定着手段と、
前記転写ニップに送り込む前の記録シートを載置するシート載置手段とを備える画像形成装置において、
記録シートの片面だけに画像を形成する片面プリント動作モード、及び記録シートの両面にそれぞれ画像を形成する両面プリント動作モードのうち、何れを実行するのかを示す情報である動作モード情報を取得する動作モード情報取得手段と、
前記シート載置手段に載置された記録シートについて、両面のうちの片面だけが凹凸に富んでいる片面凹凸シートであるか否かの情報を取得するシート情報取得手段とを設けるとともに、
前記シート情報取得手段によって取得された情報が片面凹凸シートを示す内容のものであり、且つ、前記動作モード情報取得手段によって取得された動作モード情報が両面プリント動作モードの実行を示す内容のものであるという条件を満たした場合に、前記片面凹凸シートの凹凸面に対して転写処理を施すときにおける前記電位差と、非凹凸面に対して転写処理を施すときにおける前記電位差とを異ならせる処理を実施するように、前記転写手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記動作モード情報取得手段によって取得された動作モード情報が前記両面プリント動作モードの実行を示す内容のものであって、且つ、前記定着手段を通過した後の記録シートが一方の面だけに画像を担持するものである場合に、該記録シートの他方の面にもトナー像を転写及び定着させるために、該記録シートの上下を反転せしめながら前記転写手段に再搬送する反転再搬送手段を設けるとともに、
前記条件を満たした場合に、前記シート載置手段から送り出された後に前記転写ニップに初めて進入した前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときにおける前記電位差と、前記反転再搬送手段によって反転再搬送された前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときにおける前記電位差とを異ならせることで、前記凹凸面に対する前記電位差と、前記非凹凸面に対する前記電位差とを異ならせる処理を実施するように、前記転写手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
記録シートとして前記片面凹凸シートを使用する場合に、前記シート載置手段に対して前記片面凹凸シートを所定の向きで載置すべき旨の指示をユーザーに行うことで、前記シート載置手段から送り出された後に前記転写ニップに初めて進入する前記片面凹凸シートに対して、前記転写ニップ内で凹凸面を前記像担持体に向ける姿勢をとらせるようにする指示手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3の画像形成装置において、
前記条件を満たした場合に、前記シート載置手段から送り出された後に前記転写ニップに初めて進入した前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときにおける前記電位差として、直流成分及び交流成分を含むものを発生させる一方で、前記反転再搬送手段によって反転再搬送された前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときにおける前記電位差として、交流成分を含まないもの、あるいは、前記シート載置手段から送り出された後に前記転写ニップに初めて進入した前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときよりもピークツウピーク値の小さな交流成分を含むもの、を発生させる処理を実施するように、前記転写手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3又は4の画像形成装置において、
前記条件を満たした場合に、前記反転再搬送手段によって反転再搬送された前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときにおける前記電位差として、前記シート載置手段から送り出された後に前記転写ニップに初めて進入した前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときよりも大きな直流成分を含むもの、を発生させるように、前記転写手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項3乃至5の何れかの画像形成装置において、
直流電圧と、ピークツウピーク値が前記直流成分の絶対値の4倍よりも大きな交流電圧とを電圧出力手段から出力することで、前記シート載置手段から送り出された後に前記転写ニップに初めて進入した前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときにおける前記電位差を発生させるように、前記転写手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項3乃至6の何れかの画像形成装置において、
前記シート載置手段から送り出された後に前記転写ニップに初めて進入した前記片面凹凸シートに対して転写処理を施すときにおける前記電位差として、前記交流成分の周波数f[Hz]と、前記転写ニップにおける記録シート移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、前像担持体の表面移動速度v[mm/s]とについて「f>(4/d)×v」という関係を具備するものを発生させるように、前記転写手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項3乃至7の何れかの画像形成装置において、
奇数頁に対応する画像と、前記奇数頁に続く偶数頁に対応する画像とを互いに異なるシート面に形成し、且つ、前記シート情報取得手段によって取得された前記シート種類情報が前記片面凹凸シートを示す内容のものである場合に、前記片面凹凸シートの凹凸面に対して奇数頁に対応する画像を形成する旨の情報をユーザーに報知する報知手段とを設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項3乃至7の何れかの画像形成装置において、
奇数頁に対応する画像と、前記奇数頁に続く偶数頁に対応する画像とを互いに異なるシート面に形成し、且つ、前記シート情報取得手段によって取得された前記シート種類情報が前記片面凹凸シートを示す内容のものでない場合に、前記偶数頁に対応するトナー像を前記像担持体に形成した後、前記奇数頁に対応するトナー像を前記像担持体に形成する処理を実施するように、前記像形成手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9の画像形成装置において、
奇数頁に対応する画像と、前記奇数頁に続く偶数頁に対応する画像とを互いに異なるシート面に形成し、且つ、前記シート情報取得手段によって取得された前記シート種類情報が前記片面凹凸シートを示す内容のものである場合に、前記奇数頁に対応するトナー像を前記像担持体に形成した後、前記偶数頁に対応するトナー像を前記像担持体に形成する処理を実施するように、前記像形成手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかの画像形成装置において、
前記像担持体として、引っ張り弾性率が2[GPa]以上である無端状の像担持ベルトを用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図4】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−118107(P2012−118107A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265038(P2010−265038)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】