説明

画像形成装置

【課題】本発明は、大型かつ高速駆動を行う中間転写ベルトにおいても、中間転写ベルトの安定した駆動を長期にわたり持続でき、長期にわたり高画質な画像を出力できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】中間転写ベルトを使用した画像形成装置において、(1)前記中間転写ベルトの周長が2000mm以上で、線速が350mm/sec以上でベルトの駆動を行う、(2)前記中間転写ベルトは、少なくとも、基体となる基体層と、ベルト裏面を覆う裏面層を含む2層以上で構成されたベルトであり、かつベルト裏面の表面粗さRaが0.2〜0.4μmである、(3)前記基体層及び裏面層は、特定のポリイミド樹脂成分(S成分)と特定のポリイミド樹脂成分(A成分)の重量比(S/A)が、基体層が0/100〜40/60であり、裏面層が60/40〜100/0である、画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー・プリンター等の画像形成装置、特にフルカラー画像形成に好適な中間転写ベルトを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真装置においては様々な用途でシームレスベルトが部材として用いられている。特に近年のフルカラー電子写真装置においては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像画像を一旦中間転写媒体上に色重ねし、その後一括して紙などの転写媒体に転写する中間転写ベルト方式が用いられている。
【0003】
このような中間転写ベルト方式は、1つの感光体に対して4色の現像器を用いるシステムで用いられていたがプリント速度が遅いという欠点があった。そのため、高速プリントとしては、感光体を4色分並べ、各色を連続して紙に転写する4連タンデム方式が用いられている。しかし、この方式では紙の環境による変動などもあり、各色画像を重ねる位置精度を合わせることが非常に困難であり、色ずれ画像を引き起こしていた。そこで近年では、4連タンデム方式に中間転写方式を採用することが主流になってきている。
【0004】
このような情勢の中で中間転写ベルトにおいても、従来よりも要求特性(高速転写、位置精度)が厳しいものとなっており、これらの要求に対応する特性を満足することが必要となってきている。特に、位置精度に対しては、連続使用によるベルト自体の伸び等の変形による変動を抑えることが求められる。また、中間転写ベルトは、装置の広い領域に渡ってレイアウトされ、転写のために高電圧が印加されることから難燃性であることが求められている。このような要求に対応するため、中間転写ベルト材料として主に、高弾性率で高耐熱樹脂であるポリイミド樹脂が用いられている。特に、最近では、カラー電子写真画像形成装置でも印刷枚数の高速化が進んでいて、極めて高速で、かつ耐久性と安定性の高いカラー画像形成装置が要求されるようになりつつある。
【0005】
このようなカラー画像形成装置は、高速化、高耐久化、安定性に対応するために、大型の装置を高速で駆動させる。そのため、中間転写ベルトに対して、ベルト周長が長く高速駆動を行っても、耐久性、安定性の高いベルトが要求される。
このような、大型化した中間転写ベルトやそれを使用したシステムでは、従来のベルト/システムでは問題とならなかった新たな課題が生まれる。
新たな課題の1つとして、中間転写ベルトの搬送安定性がある。具体的には、「高速回転する事で中間転写ベルトとベルトを駆動させるローラでスリップが発生して色ずれが発生しやすくなる事」、「ベルト寄りが発生した場合にベルトが損傷しやすい事」、また、別な課題としてはベルトサイズ大型化に伴い、1本のベルトの中で特性値のバラツキが大きくなる事が課題である。ポリイミドベルト作製時に、樹脂溶液を塗布した金型を、加熱して乾燥/硬化を行うが、金型が非常に大きいため、温度ムラを抑制できず、ベルトの特性にバラツキが生じている。
【0006】
このような課題は、従来のベルトサイズやベルト線速で使用する場合は、問題とはならなかったが、大型のベルトを高速に駆動する事で発生した新たな課題である。
特許文献1では、ベルト内面の表面粗さ(Ra)が0.15〜0.6μm、最大表面粗さ(Rmax)が3〜15μmである事を特徴とするポリイミドベルトが開示されていて、ベルトの摺動性と摩耗粉の発生を抑えることの両立を目的としている。しかしながら、大型化していない従来サイズのベルトの検討結果であり、大型化したベルトでは十分なベルト搬送性は得られない場合がある。また樹脂処方については詳細な検討がされていないので、耐折性や引き裂き強度など、高速駆動に耐えうる十分な強度が考慮されていない。
【0007】
一方、特許文献2では、温度ムラを少なくする管状物の製造方法/管状物が知られている。熱媒体を循環させる空洞からなるヒートパイプを周壁に配置した円筒状の金型と、金型の中に電磁加熱する電磁誘導コイルを備えた製造装置である。しかしながら、このような装置を使用した場合でも、大型化したベルトの作製では、やはり温度ムラが発生してしまい、十分な効果は得られにくい。
【0008】
特許文献3では、テトラカルボキシル残基である全芳香族骨格とジアミン残基であるp−フェニレン骨格とがイミド結合してなるA成分と、テトラカルボキシル残基である全芳香族骨格とジフェニルエーテル骨格とがイミド結合してなるB成分とを繰り返してなる共重合体、及び/又は前記A成分を繰り返し単位とする重合体と前記B成分を繰り返し単位とする重合体とを混合してなるブレンド体であり、かつA成分のモル%をR、導電性フィラーのポリイミド樹脂に対する重量部数をWとするとRが(65−W)以下である事を特徴とするポリイミド樹脂が知られている。このようなポリイミド樹脂処方にする事で可とう性と剛性のバランスが改善される。しかしながら、高速駆動でのベルト搬送性は全く考慮されておらず、使用する場合は問題が発生する恐れがある。
【0009】
特許文献4では、周方向の1%伸張時の引張荷重が25N以上であって、平面度が0.5mm以下で、吸湿膨張係数が30ppm/%RH以下のポリイミド樹脂製のシームレスベルトが知られている。張力をかけた時にうねりが生じにくく、湿度に影響されない安定した画像形成を行なう事を目的している。湿度変化に対する寸法変化は抑えられるが、高速駆動した場合に、ベルトのスリップやベルト寄りによるベルト端部が損傷する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第一の目的は、高速かつ高耐久な画像形成装置を提供するために、大型の中間転写ベルトを高速駆動を行う場合の、「ベルト大型化」及び「ベルト高速駆動」に伴う新たな課題を解決する事にある。具体的には、大型かつ高速駆動を行う中間転写ベルトにおいても、中間転写ベルトの安定した駆動を長期にわたり持続できる画像形成装置を提供する事にある。
本発明の第二の目的は、長期にわたり高画質な画像を出力できる画像形成装置を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
中間転写ベルトの周長が2000mm以上で、かつベルト線速が350mm/sec以上の、大型かつ高速駆動を行う中間転写ベルトでは、上述のように、従来サイズのベルト、線速では問題にならなかった新たな課題が生じた。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の手段で解決できる事を見出した。
即ち、以下の〔1〕〜〔7〕に記載する発明によって上記課題が解決される。
【0012】
〔1〕:中間転写ベルトを使用してトナー画像を被記録媒体に転写する画像形成装置において、
(1)前記中間転写ベルトの周長が2000mm以上で、線速が350mm/sec以上でベルトの駆動を行う、
(2)前記中間転写ベルトは、少なくとも、基体となる層である基体層と、ベルト裏面を覆う裏面層とを含む2層以上で構成されたベルトであり、かつ前記裏面層の表面粗さRa(JIS B0601:’01)が0.2〜0.4μmである、
(3)前記中間転写ベルトの基体層及び裏面層は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとがイミド結合したポリイミド樹脂成分(S)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとがイミド結合したポリイミド樹脂成分(A)のいずれかの樹脂、または両者をブレンドした樹脂で構成され、S成分とA成分の重量比(S/A)は、基体層が0/100〜40/60であり、裏面層が60/40〜100/0である、
事を特徴とする画像形成装置。
〔2〕:前記中間転写ベルトの裏面層の厚さをt1、中間転写ベルト全体の厚さをt2とすると、(t1/t2)×100が20以下である事を特徴とする前記〔1〕記載の画像形成装置。
〔3〕:前記トナーの円形度が0.95〜0.98である事を特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の画像形成装置。
〔4〕:前記トナーの体積平均粒径が4μm〜8μmである事を特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の画像形成装置。
〔5〕:前記トナーの体積平均粒径が4μm〜5.2μmである事を特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の画像形成装置。
〔6〕:前記中間転写ベルトの表面に潤滑剤を塗布する固形潤滑剤塗布装置を備える事を特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の画像形成装置。
〔7〕:前記潤滑剤がステアリン酸亜鉛である事を特徴とする〔6〕に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
上記〔1〕の発明では、中間転写ベルトの裏面(内側の面)の表面粗さRa(JIS B0601:’01)を0.2μm〜0.4μmにする事により、大型のベルトを高速駆動しても、「べルトのスリップ」や「ベルト寄りよるベルトの損傷」が発生し難く、安定したベルト駆動が可能となる。
また中間転写ベルトの構成を、ベルトの基体となる基体層とベルト裏面を覆う裏面層の、少なくとも2層以上で構成されたベルトとする事で機能分離を図っている。ベルトの基体層は、「3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンがイミド結合したポリイミド樹脂成分(以下S成分と記す)」、「3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルがイミド結合したポリイミド樹脂成分(以下A成分と記す)」とすると、S成分とA成分の重量比(S/A)が0/100〜40/60の樹脂を使用する。高い弾性率、高い耐折性、高い引張り強度を両立され、高速駆動を行っても色ずれが発生し難く、かつ高速駆動に耐えられる高い強度が得られる。
一方、裏面層に関しては、S成分とA成分の重量比が60/40〜100/0の樹脂を使用する。基体層に比べS成分の比率を高い樹脂を使用する事で耐磨耗性を向上させている。
ベルト裏面の表面粗さの変化を抑えて、上述の最適な粗さを維持できて、長期にわたり安定したベルト駆動が可能となる
【0014】
上記〔2〕の発明では、ベルト全体の膜厚に対する裏面層の膜厚を一定量以下に規定する。裏面層と基体層では、種々の機械特性が異なるため、裏面層を厚くした場合は、2層間で割れや剥がれが生じる場合があり、裏面層の割合を一定量以下にする事が好ましい。
上記〔3〕の発明では、使用するトナーの円形度が0.95〜0.98のトナーを使用することで、転写性が向上し良好な画像が得られる。
上記〔4〕の発明では、体積平均粒径が4μm〜8μmのトナーを使用することで、ドット再現性が向上し、より高精細な画像が得られる。
上記〔5〕の発明では、体積平均粒径が4μm〜5.2μmのトナーを使用することで、ドット再現性が向上し、極めて高精細な画像が得られる。
上記〔6〕の発明では、中間転写ベルト上に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置を設置する事で、円形度が高いトナーや小径トナーなどを使用した場合でもクリーニング性が維持できる。
上記〔7〕の発明では、潤滑剤として特に、ステアリン酸亜鉛を使用する事で、安定したクリーニング性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の画像形成装置の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は中間転写を使用した画像形成装置である。高速かつ高耐久な画像形成装置を提供するために、大型の作像モジュールを高速で駆動させる。そのため、本発明に使用する中間転写ベルトは、ベルト周長が2000mm以上であり、ベルト線速が350mm/sec以上で駆動する。
【0017】
本発明に使用する中間転写ベルトは、ベルトの裏面(中間転写ベルトの駆動ローラと接触する面)の表面粗さがRa(JIS B0601:’01)が0.2μm〜0.4μmである。裏面の粗さをこの範囲に設定する事で、高速に駆動しても「中間転写ベルトのスリップ」や「ベルト寄りによるベルトの損傷」が発生しにくい。ベルトの裏面の粗さ0.4μmより大きい場合には、ベルトと駆動ローラの接触面積が減少するため、高速に駆動すると駆動ローラとベルトの間でスリップが発生しやすい。一方、Raが0.2μmより小さい場合は、駆動ローラとベルトの摩擦力が大きいため、ベルト寄りが発生した場合に、ベルト端部が他の部材と擦れる時に加わる力が大きくなる。そのため、ベルト端部は大きな損傷を受けやすく、搬送安定性も悪くなる。
【0018】
表面粗さRaはJIS B0601:’01に準じて測定を行い、東京精密製 SURFCOM 1400D で測を行った。測定条件は測定速度0.6mm/sec、カットオフ値0.8mm、測定長さ2.5mmで行った。ベルト周方向に対して3箇所、ベルト幅方向に3箇所(中央部及び両端部)、(周方向x幅方向で合計9箇所)で、ベルト裏面の計測を行い、その平均値を採用した。
【0019】
本発明に使用する中間転写ベルトは、ベルトの基体となる基体層と、ベルト裏面(内面)を覆う裏面層とを含む、少なくとも2層以上から構成される多層化したベルトである。
基体層には、高速駆動を行ってもベルトの変形が少なく、かつ高速駆動を行ってもベルトの割れなどが発生し難い高強度な樹脂を使用する。そのため、高弾性率、高い耐折性、高い引き裂き強度等を両立できる樹脂として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンがイミド結合したポリイミド樹脂成分(S)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルがイミド結合したポリイミド樹脂成分(A)を、S成分とA成分の重量比(S/A)が0/100〜40/60となる割合で使用する。A成分単独でも問題はないが、吸湿時のベルトの寸法変化や、さらなる高弾性率化を考慮すると、S成分をブレンドする事が望ましい。ただし、S成分の比率が高くなると耐折性の悪化や、大型ベルトを作製した場合に、1つのベルト内で特性値のバラツキが大きくなる場合があるため、基体層に使用する樹脂のA成分とS成分の重量比(S/A)は0/100〜40/60である。
なお、本発明の中間転写ベルトは、上記の基体層及び裏面層以外に、ベルトおもて面(外周面)を覆う表面層を設けた3層以上のベルトでも良い。例えば、中間転写ベルト上転写残トナーのクリーニング性向上を目的として、低摩擦係数の材料を含有する表面層を積層しても良い。
【0020】
また、裏面層にはベルト裏面の耐磨耗性向上を目的として、裏面層を設ける。前述のように、ベルト裏面に適切な粗さを設ける事でベルト駆動が安定する。しかし、経時で摩擦が進行した場合に、粗さが変化してベルト駆動に不具合が生じる場合があった。そこで、基体層に比べ耐磨耗性を向上させた裏面層を設けて、経時でもベルト裏面の粗さの変化を抑えて、長期にわたりベルト駆動を安定させる事が可能となった。
裏面に使用する樹脂としては、前記のS成分とA成分の重量比が60/40〜100/0の樹脂を使用する。基体層に比べ、S成分の比率を上げる事で耐磨耗性の向上を図っている。S成分の比率を高くした樹脂は耐折性等が悪化するが、裏面層として使用する場合は層厚が薄いため、問題はない。
【0021】
また、ベルト全体の膜厚をt2、裏面層の膜厚をt1とすると(t1/t2)×100が20以下である事が望ましい。裏面層と基体層では、機械特性など種々の特性が異なるため、裏面層の層厚が厚い場合は、2層間で剥がれや割れが発生る恐れがある。そのような事を防止するためにも(t1/t2)x100が20以下にする事が望ましい。
好ましくは裏面層の比率(t1/t2)x100が3以上である事が好ましい。3より小さい場合は、裏面層の層厚が薄く、均質な膜が得られない場合がある。
【0022】
<中間転写ベルトの構成材料(抵抗制御材料)>
本発明に使用する中間転写ベルトの構成材料としては、前記のポリイミド樹脂中に電気抵抗を調整する充填材(又は、添加材)、いわゆる電気抵抗調整材を含有することができる。
電気抵抗調整材としては、金属酸化物やカーボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などがある。
金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。また、分散性を良くするため、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものも挙げられる。
カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。
イオン導電剤としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム等が挙げられ、これらを併用して用いてもよい。
なお、本発明における電気抵抗調整材は、上記例示化合物に限定されるものではない。
また、本発明のシームレスベルトの製造方法における少なくとも樹脂成分を含む塗工液には必要に応じて、さらに分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などの添加材を含有してもよい。
【0023】
<中間転写ベルトの電気特性>
前記中間転写ベルトとして好適に装備されるシームレスベルトに含有される電気抵抗調整材は、好ましくは表面抵抗で1×108〜1×1013Ω/□、体積抵抗で1×106〜1×1012Ω・cmとなる量とされるが、機械強度の面から成形膜が脆く割れやすくならない範囲の量を選択して添加することが必要である。
【0024】
本発明における電気抵抗調整材の含有量としては、カーボンブラックの場合には、塗工液中の全固形分の10〜25wt%、好ましくは15〜20wt%である。また、金属酸化物の場合の含有量としては、塗工液中の全固形分の1〜50wt%、好ましくは10〜30wt%である。
さらに好ましくは、10V印加時及び100V印加時の体積抵抗の常用対数値をρv10、ρv100とするとρv10−ρv100が0.2以下である事が好ましい。抵抗の電圧依存性を少なくする事で、経時で安定した画像が得られる。
【0025】
<ポリイミド樹脂>
次に本発明に使用するポリイミド樹脂について説明する。
芳香族系のポリイミドは、芳香族多価カルボン酸無水物(又はその誘導体)と芳香族ジアミンとの反応によって、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を経由して得られる。
本発明に使用するポリイミドは、芳香族多価カルボン酸無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンとしてp−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを使用する。
以下の説明では、特に断りがない限りは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を芳香族多価カルボン酸無水物と記述し、p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルは芳香族ジアミンと記述する。
【0026】
芳香族系のポリイミドは、その剛直な主鎖構造により溶媒等に対して不溶であり、また不融の性質を有する。そのため、先ず、芳香族多価カルボン酸無水物と芳香族ジアミンとの反応により、有機溶媒に可溶なポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を合成し、このポリアミック酸の段階で様々な方法で成形加工が行われ、その後ポリアミック酸を加熱もしくは化学的な方法で脱水反応させて環化(イミド化)しポリイミドとされる。芳香族系のポリイミドを得る反応を例にその概略を下記式(1)に示す。
【0027】
【化1】

式(1)中Ar1及びAr2は以下の基を表す。
【化2】

【0028】
芳香族系のポリイミドを得る場合には、上記芳香族多価カルボン酸無水物成分と芳香族ジアミン成分とを略等モル用いて有機極性溶媒中で重合反応させることにより、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を得、その後ポリアミック酸を脱水反応させて環化し、イミド化する。下記にポリアミック酸の製造方法について具体的に説明する。
【0029】
ここで、ポリアミック酸を得る際の重合反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系、又はヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合溶媒として用いるのが望ましい。
溶媒は、前記ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0030】
ポリイミド前駆体を製造する場合の例として、先ず、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、1種又は複数種のジアミンを上記の有機溶媒に溶解するか、又はスラリー状に分散させる。この溶液に前記した少なくとも1種の芳香族多価カルボン酸無水物(又はその誘導体)を添加(固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい)すると、発熱を伴って開環重付加反応が起こり、急速に溶液の粘度増大が見られ、高分子量のポリアミック酸溶液が得られる。この際の反応温度は、通常−20℃〜100℃、望ましくは60℃以下に制御することが好ましい。反応時間は、30分〜12時間程度である。
【0031】
上記は一例であり、反応における上記添加手順とは逆に、先ず、芳香族テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を有機溶媒に溶解又は分散させておき、この溶液中に前記芳香族ジアミン(略、「ジアミン」)を添加させてもよい。ジアミンの添加は、固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい。すなわち、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分と、ジアミン成分との混合順序は限定されない。さらには、芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを同時に有機極性溶媒中に添加して反応させてもよい。
【0032】
上記のようにして、芳香族多価カルボン酸無水物又はその誘導体と、芳香族ジアミン成分とをおよそ等モル、有機極性溶媒中で重合反応することにより、ポリアミック酸が有機極性溶媒中に均一に溶解した状態でポリイミド前駆体溶液が得られる。
【0033】
本発明におけるポリイミド前駆体溶液(ポリアミック酸溶液:「ポリイミド樹脂前駆体を含む塗工液」)は、上記のようにして合成したものを使用することが可能であるが、簡便には有機溶媒にポリアミック酸組成物が溶解された状態の、いわゆるポリイミドワニスとして上市されているものを入手して使用することもできる。
このような例としては、U−ワニス(宇部興産社製)が代表的なものとして挙げられる。
合成又は入手したポリアミック酸溶液に、必要に応じて充填剤(例えば、電気抵抗調整材、あるいは分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などの添加剤)を混合・分散して塗工液が調製される。塗工液を後述のように支持体(成形用の型)に塗布した後、加熱等の処理することにより、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸からポリイミドへの転化(イミド化)が行われる。
【0034】
ポリアミック酸は、前述のように加熱する方法(1)、又は化学的方法(2)によってイミド化することができる。
加熱する方法(1)は、ポリアミック酸を、例えば、250〜450℃に加熱処理することによってポリイミドに転化する方法であり、ポリイミド(ポリイミド樹脂)を得る簡便かつ実用的な方法である。
一方、化学的方法(2)は、ポリアミック酸を脱水環化試薬(例えば、カルボン酸無水物と第3アミンの混合物など)により反応した後、加熱処理して完全にイミド化する方法であり、(1)の加熱する方法に比べると煩雑でコストのかかる方法であるため、通常(1)の方法が多く用いられている。
なお、ポリイミドの本来的な性能を発揮させるためには、相当するポリイミドのガラス転移温度以上に加熱して、イミド化を完結させることが好ましい。
【0035】
イミド化の進行状況(イミド化の程度)は、通常行われているイミド化率の測定手法により評価することができる。
このようなイミド化率の測定方法としては、例えば、9〜11ppm付近のアミド基に帰属される1Hと、6〜9ppm付近の芳香環に帰属される1Hとの積分比から算出する核磁気共鳴分光法(NMR法)、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)、イミド閉環に伴う水分を定量する方法、カルボン酸中和滴定法など種々の方法が用いられているが、中でもフーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)は最も一般的な方法である。
【0036】
フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)では、イミド化率を、例えば、下記式(a)のように定義する。
すなわち、焼成段階(イミド化処理段階)でのイミド基のモル数を(A)とし、100%イミド化された場合(理論的)のイミド基のモル数を(B)とすると、次により表される。
イミド化率(%)=[(A)/(B)]×100 ・・・ (a)
【0037】
この定義におけるイミド基のモル数は、FT−IR法により測定されるイミド基の特性吸収の吸光度比から求めることができる。例えば、代表的な特性吸収として、以下の吸光度比を用いてイミド化率を評価することができる。
(1)イミドの特性吸収の1つである725cm-1(イミド環C=O基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm-1との吸光度比
(2)イミドの特性吸収の1つである1,380cm-1(イミド環C−N基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm-1との吸光度比
(3)イミドの特性吸収の1つである1,720cm-1(イミド環C=O基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm-1との吸光度比
(4)イミドの特性吸収の1つである1,720cm-1とアミド基の特性吸収1,670cm-1(アミド基N−H変角振動とC−N伸縮振動の間の相互作用)との吸光度比
また、3000〜3300cm-1にかけてのアミド基由来の多重吸収帯が消失していることを確認すればさらにイミド化完結の信頼性は高まる。
【0038】
本発明に使用する樹脂は「3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルがイミド結合したポリイミド樹脂成分」と「3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンがイミド結合したポリイミド樹脂成分」をブレンドして使用するので、例えば、それぞれの樹脂のポリイミド前駆体溶液を、混合攪拌したポリイミド前駆体溶液を使用する事で作製可能である。
【0039】
<ベルトの作製方法>
次に、前記ポリイミド樹脂前駆体を含む塗工液を用いて中間転写ベルトを製造する方法について説明する。
本発明において、前記ポリイミド樹脂前駆体を含む塗工液を用いてシームレスベルトを製造する方法としては、ノズルやディスペンサーによって金型(円筒状の型)の外面に塗布する方法がある。金型外面に接する面が、ベルトの裏面になるので、作製したベルト裏面の表面粗さRaが0.2μm〜0.4μmになるように、金型表面にはサンドブラストなどにより表面を粗くした加工を施す。
金型外面に形成した塗膜を乾燥及び/又は硬化させてシームレスベルト状の成形膜とした後に、脱型することにより、目的のシームレスベルトが得られる。
なお、中間転写ベルトの成型方法として、遠心成形のように塗工液を金型(円筒状の型)の内面に塗布する方法も広く一般的に知られているが、ベルトの裏面側は金型と接しないエアー面であるため、ベルトの裏面は滑らかな表面になり、本発明の粗さのベルトを作製するのは難しい。
【0040】
ベルトの作製に際しては裏面層から塗工する。
円筒状の金属金型をゆっくりと回転させながら、塗工液をノズルやディスペンサーのような液供給装置にて円筒の外面全体に均一になるように塗布・流延(塗膜を形成)する。その後、回転速度を所定速度まで上げ、所定速度に達したら一定速度に維持し、所望の時間回転を継続する。そして、回転させつつ徐々に昇温させながら、約80〜150℃の温度で塗膜中の溶媒を蒸発させていく。この過程では、雰囲気の蒸気(揮発した溶媒等)を効率よく循環して取り除くことが好ましい。自己支持性のある膜が形成されたところで、除冷を行う。
【0041】
次に、裏面層の上に基体層の塗工を行う。上述の裏面層が形成された円筒状の金属金型をゆっくりと回転させながら、塗工液をノズルやディスペンサーのような液供給装置にて円筒の外面全体に均一になるように塗布・流延(塗膜を形成)する。その後、回転速度を所定速度まで上げ、所定速度に達したら一定速度に維持し、所望の時間回転を継続する。そして、回転させつつ徐々に昇温させながら、約80〜150℃の温度で塗膜中の溶媒を蒸発させていく。この過程では、雰囲気の蒸気(揮発した溶媒等)を効率よく循環して取り除くことが好ましい。自己支持性のある膜が形成されたところで金型ごと高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に移し、段階的に昇温し、最終的に250℃〜450℃程度の高温加熱処理(焼成)し、十分にポリイミド樹脂前駆体のイミド化を行う。イミド化が完了後、徐冷して裏面層が形成された円筒状の型を取り出す。
【0042】
<本発明の画像形成装置において使用するトナー>
本発明の画像形成装置において使用するトナーとしては、円形度が0.95以上である事が望ましい。球形に近いトナーを使用する事で、転写率が向上し、高画質化が図れる。ただし円形度が0.98より大きいと、像担持体やベルト上の残留トナーの除去を行うクリーニング工程で、クリーニング不良が発生しやすくなる。そのため使用するトナーの円形度は0.95以上0.98以下である。
トナーの体積平均粒径が4μm以上8μm以下が好ましく、さらに好ましくは4μm以上5.2μm以下である。トナーは小径化する事でドットの再現性が向上し、特に5.2μm以下では、高精細な画像が得られる。ただし、トナーが小さすぎると、クリーニング工程でクリーニング不良が発生しやすくなるので、4μm以上の大きさが必要である。
なおトナーの体積平均粒径及び円形度は Sysmex製FPIA-2100を用いて測定した。
【0043】
本発明に使用するトナーは、例えば、少なくともバインダー用の樹脂材料又は/及びそのプレポリマー、着色剤、離型剤を有機溶媒中に含むトナー材料の有機溶媒液を水系媒体中に微細液滴状に分散させた後、該有機溶媒及び水系媒体を除去することにより得られたのもの、又は/及び該分散している間若しくはその後に該液滴中のプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させた後、該有機溶媒及び水系媒体を除去することにより製造することができる。
好適には、少なくとも有機溶媒中に、活性水素を有する化合物及びこれと反応可能な部位を有する重合体、又は、分子内に活性水素及びこれと反応可能な部位を同時に有する自己重合性材料、着色剤、離型剤を、好ましくはこれらを含有した組成物の形で、溶解又は分散させ、該活性水素と反応可能な部位を反応させた後、もしくは反応させながら、該有機溶媒及び水系媒体を除去し、洗浄、乾燥することができる。前記反応時に攪拌強さを調整したり、乾燥後に強強攪拌する事でトナーの円形度を調整しても良い。樹脂材料又は/及びそのプレポリマーとしては、各種の材料を用いることができ、特にポリエステル樹脂又は/及びポリエステルプレポリマーを好ましく用いることができる。
これらは単なる1例であって、球形状トナーは、このような製法以外の方法で製造しても無論、かまわない。
【0044】
<画像形成装置>
本発明は中間転写ベルトを使用した画像形成装置である。高速かつ高耐久な画像形成装置を提供するために、大型の作像モジュールを高速で駆動させる。そのため、本発明に使用する中間転写ベルトは、ベルト周長が2000mm以上であり、ベルト線速が350mm/sec以上で駆動する。
【0045】
本発明の画像形成装置の一例を図1に記す。
本発明の画像形成装置は、カラー画像印刷時でも高速印刷ができるように、複数の感光体ドラムをシームレスベルトからなる一つの中間転写ベルトに沿って並設した画像形成装置であることが望ましい。図1は、4つの異なる色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のトナー像を形成するための4つの感光体ドラム21BK、21Y、21M、21Cを備えた4ドラム型のデジタルカラープリンタの一構成例を示す。
図1において、プリンタ本体10は電子写真方式によるカラー画像形成を行うための、画像書込部12、画像形成部13、給紙部14、から構成されている。画像信号を元に画像処理部で画像処理して画像形成用の黒(BK)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の各色信号に変換し、画像書込部12に送信する。画像書込部12は、例えば、レーザ光源と、回転多面鏡等の偏向器と、走査結像光学系、及びミラー群、からなるレーザ走査光学系であり、上記の各色信号に対応した4つの書込光路を有し、画像形成部13の各色毎に設けられた像坦持体(感光体)21BK、21M、21Y、21Cに各色信号に応じた画像書込を行う。
【0046】
画像形成部13は黒(BK)用、マゼンタ(M)用、イエロー(Y)用、シアン(C)用の各像坦持体である感光体21BK、21M、21Y、21Cを備えている。この各色用の各感光体としては、通常OPC感光体が用いられる。各感光体21BK、21M、21Y、21Cの周囲には、帯電装置、上記書込部12からのレーザ光の露光部、黒、マゼンタ、イエロー、シアンの各色用の現像装置20BK、20M、20Y、20C、1次転写手段としての1次転写バイアスローラ23BK、23M、23Y、23C、クリーニング装置(表示略)、及び図示しない感光体除電装置等が配設されている。なお、上記現像装置20BK、20M、20Y、20Cには、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。ベルト構成部である中間転写ベルト22は、各感光体21BK、21M、21Y、21Cと、各1次転写バイアスローラ23BK、23M、23Y、23Cとの間に介在し、各感光体上に形成された各色のトナー像が順次重ね合わせて転写される。
【0047】
一方、転写紙Pは、給紙部14から給紙された後、レジストローラ16を介して、ベルト構成部である転写搬送ベルト50に担持される。そして、中間転写ベルト22と転写搬送ベルト50とが接触するところで、上記中間転写ベルト22上に転写されたトナー像が、2次転写手段としての2次転写バイアスローラ60により2次転写(一括転写)される。これにより、転写紙P上にカラー画像が形成される。このカラー画像が形成された転写紙Pは、転写搬送ベルト50により定着装置15に搬送され、この定着装置15により転写された画像が定着された後、プリンタ本体外に排出される。
【0048】
なお、上記2次転写時に転写されずに上記中間転写ベルト22上に残った残留トナーは、ベルトクリーニング部材25によって中間転写ベルト22から除去される。このベルトクリーニング部材25の下流側には、潤滑剤塗布装置27が配設されている。この潤滑剤塗布装置27は、固形潤滑剤と、中間転写ベルト22に摺擦して固形潤滑剤を塗布する導電性ブラシとで構成されている。前記導電性ブラシは、中間転写ベルト22に常時接触して、中間転写ベルト22に固形潤滑剤を塗布している。固形潤滑剤は、中間転写ベルト22のクリーニング性を高め、フィルミィングの発生を防止し耐久性を向上させる作用がある。特に小径トナーや円形度の高いトナーはクリーニング性が悪いので、潤滑剤を塗布する事が望ましい。固形潤滑剤としては、従来公知の潤滑剤を使用できるが、特にステアリン酸亜鉛で良好なクリーニング性が得られる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りこれらの実施例を適宜改変したものも本件の発明の範囲内である。
【0050】
[実施例1]
下記により塗工液を調製し、この塗工液を用いてシームレスベルトを製造した。
○ベルトの作製
<塗工液の調製>
先ず、裏面層用の塗工液として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンを反応させたポリイミド樹脂前駆体を主成分とするポリイミドワニス(U−ワニスS;宇部興産社製)と、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを反応させたポリイミド樹脂前駆体を主成分とするポリイミドワニス(U−ワニスA;宇部興産社製)について、U−ワニスSとU−ワニスAのポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)が60/40になるように計りとり2種のポリイミドワニスの攪拌混合を行なう。予めビーズミルにてN−メチル−2−ピロリドン中に分散させたカーボンブラック(SpecialBlack4;エボニックデグサ社製)の分散液を、カーボンブラック含有率がポリアミック酸固形分の17重量%になるように調合し、よく攪拌混合して、裏面層用の塗工液を調製した。
基体層の塗工液についても、U−ワニスSとU−ワニスAのポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)が10/90に変更した以外は裏面層用の塗工液と全く同様に、塗工液を調整した。
【0051】
<シームレスベルトの製造>
次に、外径700mm、長さ400mmの外面をブラスト処理にて粗面化した円筒状の金型Aを用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記の裏面層用の塗工液を円筒外面に均一に流延するようにディスペンサーにて塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を100rpmに上げ、熱風循環乾燥機に導入して、110℃まで徐々に昇温して60分加熱して、さらに昇温して200℃で20分加熱し、回転を停止、徐冷して裏面層が形成された円筒型を取り出した。
次に、上記の裏面層が形成された金型に、基体層の塗工を行った。裏面層が形成された円筒外面に均一に流延するように、ディスペンサーにて、基体層の塗工を行う。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を100rpmに上げ、熱風循環乾燥機に導入して、110℃まで徐々に昇温して60分加熱した。さらに昇温して200℃で20分加熱し、回転を停止、徐冷して成形膜が形成された円筒型を取り出しこれを高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に導入し、段階的に320℃まで昇温して60分加熱処理(焼成)して、イミド化を行った。除冷した後、脱型を行った。
上記のような作製方法で、ベルト端部の部分は切断して、周長2200mm、幅長376mm、のベルトを得た。ベルトの厚み(t2)は62μmであった。ベルトの断面をSEMで観察したところ、裏面層の厚さは(t1)は12μmであった。
【0052】
[ベルトの特性値評価]
次に得られたベルトの特性値評価を行なった。測定項目及び測定方法を下記に記す。
<ベルト裏面の表面粗さ>
ベルトの裏面(金型外面と接していた方の面)の表面粗さを JIS B0601:’01に準じて測定を行った。東京精密製 SURFCOM 1400D で測定を行った。測定条件は測定速度0.6mm/sec、カットオフ値0.8mm、測定長さ2.5mmで行った。ベルト周方向に対して3箇所、ベルト幅方向に3箇所(中央部及び両端部)、(周方向x幅方向で合計9箇所)で、ベルト裏面の計測を行い、その平均値を採用した。ベルトAの表面粗さRaは測定した結果0.25μmであった。
【0053】
[実機評価試験]
次に、作製したベルトの実機に装着した実機評価を行なった。
<評価画像形成装置>
上記の方法で作製したベルトの内周長2200mm、幅376mm、厚み62μmのベルトAを、図1に示すようなタンデム型の画像形成装置に装着し、中間転写ベルト線速425mm/secで駆動させて、実機試験を行なった。
<評価トナー>
トナーは体積平均粒径が5.2μm、円形度0.95の重合法で作製したトナーAを使用した。
<ランニング試験評価>
23℃、50%の環境で、印字率5%文字画像を100P/Jで750K枚出力する印刷試験を行った。異常画像の発生や機械に異常がないか確認を行い、250K、500K、750K終了時には全べた画像、ハーフトーン画像、細線画像の出力も行った。べた画像の均一性、ハーフトーンの均一性、細線の再現性など、ランク付けによる画質の評価を行った。最高ランクが5であり、ランク2.5以上が実使用で許容できるレベルである。
試験結果は表2にまとめて記す。
【0054】
[実施例2]
<ベルトの作製>
基体層の塗工液として、U−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で40/60に変更を行い、裏面層の塗工液としてU−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で90/10に変更を行い、かつ使用する金型を金型B(金型Aと同じサイズで表面をサンドブラスト処理しているが、金型Aよりも表面が粗くされている金型)に変更した以外は実施例1と全く同様に作製して、周長2200mm、幅長376mm、のベルトBを得た。ベルトの厚み(t2)は68μmであり、ベルトの断面をSEMで観察したところ、裏面層の厚さは(t1)は13μmであった。またベルト裏面の表面粗さRaは、0.38μmであった。
ベルトBの各種特性値を表1に記す。
<実機評価>
装着したベルトをベルトBに変更した以外は、実施例1と同様に評価を行なった。
試験結果は表2にまとめて記す。
【0055】
[実施例3]
<ベルトの作製>
基体層の塗工液として、U−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で35/65に変更を行い、裏面層の塗工液としてU−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で80/20に変更を行った以外は実施例1と全く同様に作製して、周長2200mm、幅長376mm、のベルトCを得た。ベルトの厚み(t2)は65μmであり、ベルトの断面をSEMで観察したところ、裏面層の厚さは(t1)は13μmであった。またベルト裏面の表面粗さは、0.23μmであった。
ベルトCの各種特性値を表1に記す。
<実機評価>
装着したベルトをベルトCに変更した以外は、実施例1と同様に評価を行なった。
試験結果は表2にまとめて記す。
【0056】
[実施例4]
<ベルトの作製>
基体層の塗工液として、U−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で40/60に変更を行い、裏面層の塗工液としてU−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で90/10に変更を行い、かつ使用する金型を金型B(金型Aと同じサイズで表面をサンドブラスト処理しているが、金型Aよりも表面が粗くされている金型)に変更を行い、裏面層の塗工液の塗布量を多くした以外は実施例1と全く同様に作製して、周長2200mm、幅長376mm、のベルトDを得た。ベルトの厚み(t2)は73μmであり、ベルトの断面をSEMで観察したところ、裏面層の厚さは(t1)は16μmであった。またベルト裏面の表面粗さRaは、0.37μmであった。
ベルトDの各種特性値を表1に記す。
<実機評価>
装着したベルトをベルトDに変更した以外は、実施例1と同様に評価を行なった。
試験結果は表2にまとめて記す。
【0057】
[実施例5]
<ベルトの作製>
基体層の塗工液として、U−ワニスSのブレンドを行わないU−ワニスAが100%の塗工液に変更を行い、裏面層の塗工液としてU−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で60/40に変更を行った以外は実施例1と全く同様に作製し、周長2200mm、幅長376mm、のベルトEを得た。ベルトの厚み(t2)は64μmであり、ベルトの断面をSEMで観察したところ、裏面層の厚さは(t1)は11μmであった。またベルト裏面の表面粗さRaは、0.24μmであった。
ベルトEの各種特性値を表1に記す。
<実機評価>
装着したベルトをベルトEに変更した以外は、実施例1と同様に評価を行なった。
試験結果は表2にまとめて記す。
【0058】
[実施例6]
<ベルトの作製>
実施例3のベルトCと全く同様に作製を行って、ベルトFを得た。
<実機評価>
ベルトFを搭載して、重合法で作製したトナーB(体積平均粒径:6.8μm、円形度:0.95)を使用した以外は実施例1と同様に評価を行なった。
試験結果は表2にまとめて記す。
【0059】
[実施例7]
<ベルトの作製>
実施例3のベルトCと全く同様に作製を行って、ベルトGを得た。
<実機評価>
ベルトGを搭載して、重合法で作製したトナーC(体積平均粒径:8.1μm、円形度:0.95)を使用した以外は実施例1と同様に評価を行なった。
試験結果は表2にまとめて記す。
【0060】
[実施例8]
<ベルトの作製>
実施例3のベルトCと全く同様に作製を行って、ベルトHを得た。
<実機評価>
ベルトGを搭載して、粉砕法で作製したトナーD(体積平均粒径:8.4μm、円形度:0.93)を使用した以外は実施例1と同様に評価を行なった。
試験結果は表2にまとめて記す。
【0061】
[比較例1]
<ベルトの作製>
実施例1において、裏面層の塗工を行わなかった以外は、実施例1と全く同様に作製して、周長2200mm、幅長376mm、の単層のベルトIを得た。ベルトの厚み(t2)は52μmであり、裏面の粗さRaは0.24μmであった。
ベルト特性を表1にまとめて記す。
<実機評価>
装着したベルトをベルトIに変更した以外は、実施例1と同様に評価を行なった。
試験結果は表2にまとめて記す。
500Kラン終了時に、「ベルト寄り」によるベルト端部の一部に損傷がある事を確認した。その後もランニングを継続したが、「ベルト寄り」によるベルト端部での損傷がひどいため、途中でランニングを中止した。
【0062】
[比較例2]
<ベルト作製>
裏面層の塗工液としてU−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で50/50に変更を行った以外は実施例1と全く同様に作製して、周長2200mm、幅長376mm、のベルトJを得た。ベルトの厚み(t2)は60μmであり、ベルトの断面をSEMで観察したところ、裏面層の厚さは(t1)は11μmであった。またベルト裏面の表面粗さは、0.25μmであった。
ベルトJの各種特性値を表1に記す。
<実機評価>
装着したベルトをベルトJに変更した以外は、実施例1と同様に評価を行なった。
試験結果は表2にまとめて記す
500K〜750Kのランニング時に、「ベルト寄り」によるベルト端部の損傷がひどいため、試験を中止した。
【0063】
[比較例3]
<ベルトの作製>
実施例1において、裏面層の塗工を行わず、かつ基体層のU−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で50/50に変更を行った以外は、実施例1と全く同様に作製を行い、単層のベルトKを得た。ベルトの厚み(t2)は53μmであり、ベルト裏面の表面粗さは、0.24μmであった。
ベルトKの各種特性値を表1に記す。
<実機評価>
装着したベルトをベルトKに変更した以外は、実施例1と全く同様に評価を行なった。試験結果は表2にまとめて記す
250Kラン終了時に、ベルト端部の一部で損傷が見られた。さらにランニングを継続したが、途中でベルト端部の損傷が激しいため、ランニングを中止した。
【0064】
[比較例4]
<ベルト作製>
基体層の塗工液として、U−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で50/50に変更を行い、裏面層の塗工液としてU−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で90/10に変更を行い、かつ使用する金型を金型B(金型Aと同じサイズで表面をサンドブラスト処理しているが、金型Aよりも表面が粗くされている金型)に変更した以外は実施例1と全く同様に作製して、周長2200mm、幅長376mm、のベルトLを得た。ベルトの厚み(t2)は65μmであり、ベルトの断面をSEMで観察したところ、裏面層の厚さは(t1)は13μmであった。またベルト裏面の表面粗さRaは、0.38μmであった。
ベルトLの各種特性値を表1に記す。
<実機評価>
装着したベルトをベルトLに変更した以外は、実施例1と全く同様に評価を行った。
試験結果を表2に記す。250Kラン終了時に、ベルト端部の一部で損傷が見られた。さらにランニングを継続したが、途中でベルト端部の損傷が激しいため、ランニングを中止した。
【0065】
[比較例5]
<ベルトの作製>
基体層の塗工液として、U−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で35/65に変更を行い、裏面層の塗工液としてU−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で80/20に変更を行い、かつ使用する金型を金型C(金型Aと同じサイズで表面をサンドブラスト処理しているが、金型Aよりも表面が滑らかな金型)に変更した以外は実施例1と全く同様に作製して、周長2200mm、幅長376mm、のベルトMを得た。ベルトの厚み(t2)は64μmであり、ベルトの断面をSEMで観察したところ、裏面層の厚さは(t1)は12μmであった。またベルト裏面の表面粗さRaは、0.18μmであった。
ベルトMの各種特性値を表1に記す。
<実機評価>
装着したベルトをベルトMに変更した以外は、実施例1と全く同様に評価を行なった。
試験結果を表2記す。
250Kまでのランニングの間にベルト寄りがひどく、ベルト端部の損傷がひどいため、ランニングを中止した。
【0066】
[比較例6]
<ベルトの作製>
基体層の塗工液として、U−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で35/65に変更を行い、裏面層の塗工液としてU−ワニスSとU−ワニスAの混合比を、ポリアミック酸固形分換算の重量比(S/A)で90/10に変更を行い、かつ使用する金型を金型D(金型Aと同じサイズで表面をサンドブラスト処理しているが、金型A、金型Bよりも表面が粗くされている金型)に変更した以外は実施例1と全く同様に作製して、周長2200mm、幅長376mm、のベルトNを得た。ベルトの厚み(t2)は61μmであり、ベルトの断面をSEMで観察したところ、裏面層の厚さは(t1)は14μmであった。またベルト裏面の表面粗さRaは、0.43μmであった。
ベルトNの各種特性値を表1に記す。
<実機評価>
装着したベルトをベルトMに変更した以外は、実施例1と全く同様に評価を行なった。 試験結果を表2記す。
250Kまでのランニングの間に、ベルトスリップによる色ずれが頻発したため試験を中止した。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【符号の説明】
【0069】
10 プリンタ本体
12 画像書込部
13 画像形成部
14 給紙部
15 定着装置
16 レジストローラ
20BK、20Y、20M、20C 現像装置
21BK、21Y、21M、21C 感光体ドラム
22 中間転写ベルト
23BK、23Y、23M、23C 1次転写バイヤスローラ
25 ベルトクリーニング部材
27 潤滑剤塗布装置
50 転写搬送ベルト
60 2次転写バイヤスローラ
P 転写紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【特許文献1】特開2008−225182号公報
【特許文献2】特開2005−74914号公報
【特許文献3】特開2001−142313号公報
【特許文献4】特開2004−77576号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写ベルトを使用してトナー画像を被記録媒体に転写する画像形成装置において、
(1)前記中間転写ベルトの周長が2000mm以上で、線速が350mm/sec以上でベルトの駆動を行う、
(2)前記中間転写ベルトは、少なくとも、基体となる層である基体層と、ベルト裏面を覆う裏面層とを含む2層以上で構成されたベルトであり、かつ前記裏面層の表面粗さRa(JIS B0601:’01)が0.2〜0.4μmである、
(3)前記中間転写ベルトの基体層及び裏面層は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとがイミド結合したポリイミド樹脂成分(S)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとがイミド結合したポリイミド樹脂成分(A)のいずれかの樹脂、または両者をブレンドした樹脂で構成され、S成分とA成分の重量比(S/A)は、基体層が0/100〜40/60であり、裏面層が60/40〜100/0である、
事を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記中間転写ベルトの裏面層の厚さをt1、前記中間転写ベルト全体の厚さをt2とすると、(t1/t2)×100が20以下である事を特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナーの円形度が0.95〜0.98である事を特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナーの体積平均粒径が4μm〜8μmである事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記トナーの体積平均粒径が4μm〜5.2μmである事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記中間転写ベルトの表面に潤滑剤を塗布する固形潤滑剤塗布装置を備える事を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記潤滑剤がステアリン酸亜鉛である事を特徴とする請求項6記載の画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−118446(P2012−118446A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270261(P2010−270261)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】