説明

画像形成装置

【課題】画像データが取得されてから画像が形成されるまでの時間差にばらつきが生じ得る場合において、画像形成手段の実際の状態と異なる状態を反映した画像処理が実行されないようにする。
【解決手段】画像形成装置は、画像形成条件を補正する補正手段を有する。また、画像形成装置が実行する画像処理には、ルックアップテーブル(LUT)を用いたトーン調整処理が含まれる。画像形成装置は、画像データを蓄積する場合としない場合とで、画像処理の態様を異ならせる。画像形成装置は、画像データを蓄積する場合には、第1のLUTを用いたトーン調整処理を含む画像処理を実行し(Sb3)、画像データを蓄積しない場合には、第2のLUTを用いたトーン調整処理を含む画像処理を実行する(Sb7)。第2のLUTは、補正手段による補正と相関を有し、当該補正に応じて更新される。一方、第1のLUTは、補正手段による補正と相関を有しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、装置やその環境の変化によって画質が変化することが知られており、このような画質の変化を抑制するための対策が講じられている。例えば、特許文献1には、キャリブレーションを行った際の測定値や日時を記録しておくことにより、出力装置の安定性を算出し、キャリブレーション間隔を自動的に決定するための技術が記載されている。また、特許文献2には、印字時の画像形成条件との相関関係がある画像処理が施された状態の画像データを画像メモリに記憶する画像形成装置において、濃度補正実施条件が満たされた時点で画像メモリに記憶されているジョブに対しては、濃度補正処理前の画像形成条件によって印字を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−168200号公報
【特許文献2】特許第4343123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、画像データが取得されてから画像が形成されるまでの時間差にばらつきが生じ得る場合において、画像形成手段の実際の状態と異なる状態を反映した画像処理が実行されないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る画像形成装置は、画像データを取得する取得手段と、画像処理の態様として第1の態様又は第2の態様を選択する選択手段と、前記取得手段により取得された画像データを指定した指示を受け付ける受付手段と、前記取得手段により取得された画像データに対して、前記選択手段により選択された態様で画像処理を実行する画像処理手段と、画像形成に係る条件を適用し、前記画像処理手段により画像処理が実行された画像データに応じた画像を媒体に形成する画像形成手段と、前記画像形成手段の状態の変化に応じて前記条件を補正する補正手段とを備え、前記画像処理手段は、前記選択手段により選択された態様が第2の態様である場合には、前記画像データに対して前記補正手段による前記条件の補正に応じて変化する第1の処理を含む画像処理を実行し、前記選択手段により選択された態様が第1の態様である場合には、前記画像データに対して当該第1の処理を含まない画像処理を実行し、前記画像形成手段は、前記選択手段により選択された態様が第1の態様である場合に、前記受付手段により前記指示が受け付けられると、当該指示で指定された前記画像データに応じた画像を形成する構成を有する。
本発明の請求項2に係る画像形成装置は、請求項1に記載の構成において、前記選択手段により前記第1の態様が選択された場合に、前記取得手段により取得された画像データを記憶手段に蓄積する蓄積手段を備える構成を有する。
本発明の請求項3に係る画像形成装置は、請求項2に記載の構成において、前記画像処理手段は、前記選択手段により前記第1の態様が選択された場合に、前記画像データに対して、前記第1の処理と異なる処理であって当該第1の処理に代替する第2の処理を、前記記憶手段に記憶される前に実行する構成を有する。
【0006】
本発明の請求項4に係る画像形成装置は、画像データを記憶手段に蓄積する蓄積手段と、前記記憶手段に記憶される第1の画像データと、前記記憶手段に記憶されない第2の画像データとを取得する取得手段と、前記取得手段により取得され、又は前記蓄積手段により蓄積された第1の画像データ及び第2の画像データに対して、互いに異なる態様で画像処理を実行する画像処理手段と、前記第1の画像データを指定した指示を受け付ける受付手段と、画像形成に係る条件を適用し、前記画像処理手段により画像処理が実行された第1の画像データ及び第2の画像データのそれぞれに応じた画像を媒体に形成する画像形成手段と、前記画像形成手段の状態の変化に応じて前記条件を補正する補正手段とを備え、前記画像処理手段は、前記第1の画像データに対しては、前記受付手段により当該第1の画像データを指定した前記指示が受け付けられてから、前記補正手段による前記条件の補正に応じて変化する第1の処理を含む画像処理を実行し、前記第2の画像データに対しては前記指示によらずに当該第1の処理を含む画像処理を実行する構成を備える。
本発明の請求項5に係る画像形成装置は、請求項4に記載の構成において、前記画像処理手段は、前記第1の処理と、当該第1の処理よりも前に実行される第2の処理とを前記第1の画像データ及び前記第2の画像データに対して実行し、前記第1の画像データに対しては、前記記憶手段に記憶される前に前記第2の処理を実行し、前記受付手段により当該第1の画像データを指定した前記指示が受け付けられてから前記第1の処理を実行する構成を有する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1、2の構成によれば、画像データが取得されてから画像が形成されるまでの時間差にばらつきが生じ得る場合において、画像形成手段の実際の状態と異なる状態が反映される可能性がある画像処理を実行しないようにすることが可能である。
請求項3の構成によれば、蓄積手段に蓄積された後に第2の処理を実行する場合に比べ、画像を形成する指示が受け付けられてから画像が形成されるまでに要する処理を少なくすることが可能である。
請求項4の構成によれば、画像データが取得されてから画像が形成されるまでの時間差にばらつきが生じ得る場合において、画像形成手段の実際の状態と異なる状態が反映されないタイミングで画像処理を実行することが可能である。
請求項5の構成によれば、蓄積手段に蓄積された後に第1の処理と第2の処理とを実行する場合に比べ、画像を形成する指示が受け付けられてから画像が形成されるまでに要する処理を少なくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】画像形成装置の全体構成を示すブロック図
【図2】制御部の機能的構成を示す機能ブロック図
【図3】画像出力装置の構成の一例を示す図
【図4】制御装置の動作を示すフローチャート
【図5】制御装置の動作を示すフローチャート
【図6】制御装置の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置10の全体構成を示すブロック図である。画像形成装置10は、ここでは電子写真方式のプリンタである。画像形成装置10の構成は、制御装置100と、記憶装置200と、画像出力装置300とに大別される。制御装置100、記憶装置200及び画像出力装置300は、情報の授受が行えるように互いに電気的に接続されている。
【0010】
制御装置100は、画像形成装置10の全体的な動作を管理及び制御する手段である。制御装置100は、より詳細には、制御部110と、通信部120と、画像処理部130と、UI(User Interface)部140とを少なくとも備える。
【0011】
制御部110は、他の構成間における情報の授受を制御する手段である。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置やメモリによって構成される。通信部120は、外部装置とデータを送受信する手段である。ここでいう外部装置は、画像データを画像形成装置10に送信したり、画像形成装置10に画像形成を指示したりするための装置であり、画像を読み取る画像読取装置(フラットベッドスキャナ等)や、通信手段を介して接続されたクライアント装置(パーソナルコンピュータ等)である。画像処理部130は、画像データに対して画像処理を実行する手段であり、本発明に係る画像処理手段の一例に相当するものである。画像処理部130は、制御部110とは独立したASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路によって構成されてもよいが、制御部110の一機能であってもよい。
【0012】
画像処理部130が実行する画像処理は、ルックアップテーブルを用いて画像の階調特性を調整する処理(以下「トーン調整処理」という。)を少なくとも含む。このルックアップテーブルは、画像データの階調値を入力値及び出力値とし、特定の入力値に対して特定の出力値を対応付けたデータの集合である。ルックアップテーブルの入力値と出力値の対応関係は、画像出力装置300の特性(個体差、画像形成条件等)によって定まる。ルックアップテーブルが変化すると、トーン調整処理後の画像の色調(トーン)も変化する。トーン調整処理は、本発明に係る第1の処理の一例に相当するものである。
【0013】
また、画像処理部130が実行する画像処理は、さまざまな形式で入力された画像データをビットマップ形式の画像データに変換するデータ変換処理、画像データの濃淡をユーザの好みに応じて調整する濃度調整処理、画像出力装置300に応じたスクリーンを適用して画像データを網点で表される情報に変換するスクリーン処理などを含み得る。このうち、データ変換処理や濃度調整処理は、トーン調整処理よりも前に実行され得る処理であり、本発明に係る第2の処理の一例に該当し得る。一方、スクリーン処理は、トーン調整処理よりも後に実行され得る処理である。このように、画像処理部130が実行する画像処理は、決められた順序に従って複数の処理を実行するものである。
【0014】
UI部140は、ユーザに情報を提示するとともに、ユーザの操作を受け付ける手段である。UI部140は、例えば、タッチスクリーンを備えた表示装置や各種のボタンを含んで構成される。UI部140は、ユーザの認証が必要な場合に、認証情報を入力する手段としても機能する。認証情報は、ユーザに設定されたパスワードであってもよいが、ユーザの指紋や静脈のパターンであってもよい。なお、UI部140は、スピーカを備えることにより、情報を視覚的にだけでなく聴覚的に提示してもよいし、情報を提示する手段又は操作を受け付ける手段の一方のみを備える構成であってもよい。
【0015】
図2は、制御部110の機能的構成を示す機能ブロック図である。本実施形態の制御部110は、図2に示す取得部111、蓄積部112、受付部113及び選択部114に相当する機能を実現する。取得部111は、通信部120を介して外部装置から画像データを取得する手段であり、本発明に係る取得手段の一例に相当する。蓄積部112は、取得部111により取得された画像データを必要に応じて記憶装置200に一時的に記憶させる手段であり、本発明に係る蓄積手段の一例に相当する。受付部113は、ユーザから指示を受け付ける手段であり、本発明に係る受付手段の一例に相当する。なお、ユーザからの指示は、UI部140のほか、通信部120を介してクライアント装置からも供給され得る。ゆえに、受付部113は、通信部120又はUI部140を介して指示を受け付ける。選択部114は、画像処理の態様を選択する手段であり、本発明に係る選択手段の一例に相当するものである。画像処理を第1の態様と第2の態様のいずれで実行するかは、例えば、センサによって検知された環境変化によって定まる。選択部114は、温度や湿度が急激に上下するなど、有意な環境変化が認められる場合に、第1の態様を選択する。なぜならば、このような場合には、補正部320によって画像形成条件が補正される可能性が高いからである。なお、選択部114は、ユーザの指示に基づいて画像処理の態様を選択してもよい。
【0016】
記憶装置200は、画像形成が直ちに行われない画像データを一時的に記憶する手段である。記憶装置200は、ハードディスク等により構成される記憶部210を備える。記憶部210は、いわゆるUSB(Universal Serial Bus)メモリのように、画像形成装置10に対して着脱可能な構成であってもよい。また、記憶部210に記憶される画像データは、画像形成の際に指定されるモード(以下「画像形成モード」という。)が特定の画像形成モードにおいて用いられる画像データである。記憶部210は、本発明に係る記憶手段の一例に相当するものである。画像データは、不要になった場合には、記憶装置200から削除される。
【0017】
画像出力装置300は、制御装置100を介して供給された画像データに応じた画像を出力する手段である。ここでいう出力は、画像をユーザが視認できるように可視化することであり、画像を用紙に形成することに相当する。ここにおいて、用紙は、画像が転写及び形成される媒体の一例である。画像出力装置300は、より詳細には、画像形成部310と、補正部320とを備える。
【0018】
画像形成部310は、帯電、露光、現像、転写、定着といった電子写真方式の各工程を経て画像を形成する手段である。画像形成部310は、これらの各工程に応じた条件を適用し、画像データが表す画像を用紙に形成する。ここでいう条件は、画像形成に係る条件であり、以下においては「画像形成条件」という。なお、画像形成部310は、本実施形態においてはカラーの画像を形成する手段であるとするが、モノクロの画像を形成する手段であってもよい。画像形成部310は、本発明に係る画像形成手段の一例に相当するものである。
【0019】
補正部320は、画像形成部310の状態の変化に応じて画像形成条件を補正する手段である。画像形成条件は、その好適な条件が複数の要因によって変化する。画像形成条件を変化させる要因は、例えば、画像形成部310の経時変化や、画像形成装置10が設置されている環境(温度、湿度等)の変化が代表的である。画像形成装置10の環境変化は、朝晩と昼の気温差や、季節の変化などによってもたらされる。補正部320は、これらの変化を検知するためのセンサの検知結果に基づき、画像形成条件が好適なものになるようにこれを補正する。ここでいう「好適」とは、画像出力装置300に供給される画像データが表す画像の色と、実際に用紙に形成される画像の色との相違が可能な限り小さくなる状態のこと(すなわち、制御装置100において想定されている色にできるだけ近い色で出力されること)をいい、理想的には、これらの色に相違がない状態のことである。補正部320は、本発明に係る補正手段の一例に相当するものである。
【0020】
また、補正部320は、画像形成条件の補正に応じてルックアップテーブルを生成する機能を有する。補正部320は、画像形成条件を補正すると、その補正結果と整合するようなルックアップテーブルを生成する。制御装置100は、補正部320からルックアップテーブルを取得すると、これを画像処理部130に供給する。
あるいは、ルックアップテーブルを生成する機能は、制御装置100の制御部110が有してもよい。この場合、補正部320は、センサの検知結果や画像形成条件の補正結果を示す情報を制御部110に供給し、制御部110は、かかる情報に基づいてルックアップテーブルを生成し、画像処理部130に供給する。
【0021】
図3は、画像出力装置300の構成の一例を示す図である。図3に例示する画像出力装置300は、いわゆる中間転写方式によって、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーを用いて画像を形成するものである。画像出力装置300は、トナーカートリッジ311Y、311M、311C、311Kと、転写ユニット312Y、312M、312C、312Kと、露光装置313と、中間転写ベルト314と、複数の支持ロール315と、二次転写ロール316と、複数の搬送ロール317と、定着装置318と、濃度センサ321とを備える。
【0022】
なお、図3に示す構成要素のうち、符号の末尾にアルファベット(Y、M、C又はK)を付したものは、当該構成要素が上記4色のいずれかに対応するものであることを示している。これらの構成要素は、使用するトナーの色が異なるものの、主要な構成や機能は共通している。そこで、以下においては、これらの構成要素の説明において、互いを区別する必要がない場合には、「トナーカートリッジ311」や「転写ユニット312」というように、符号の末尾を省略してこれらを総称するものとする。
【0023】
トナーカートリッジ311は、各色のトナーを収容し、これを必要に応じて転写ユニット312の現像器に供給する手段である。転写ユニット312は、感光体ドラム、帯電器、現像器、一次転写ロールなどを備え、各色のトナー像を中間転写ベルト314に転写する手段である。露光装置313は、感光体ドラムを露光して静電潜像を形成する手段である。
【0024】
中間転写ベルト314は、転写ユニット312によって転写されたトナー像を保持する手段である。すなわち、中間転写ベルト314は、トナー像が転写及び保持される媒体の一例である。中間転写ベルト314は、複数の支持ロール315により支持されて図中の矢印A1が示す方向に周回しながら移動する。二次転写ロール316は、中間転写ベルト314に転写されたトナー像を用紙に転写する手段である。搬送ロール317は、用紙を図中の破線の矢印A2に沿った経路で搬送する手段である。定着装置318は、二次転写ロール316によりトナー像が転写された用紙を加熱及び加圧することによって、トナー像を用紙に定着させる手段である。
【0025】
濃度センサ321は、中間転写ベルト314に形成されているトナー像を光学的に読み取る手段である。濃度センサ321は、読み取ったトナー像の濃度を示す濃度情報を補正部320に供給する。補正部320は、この濃度情報に基づいて画像形成条件を補正する。ここでいう濃度は、トナー像の色の濃さを表す数値であり、例えば、トナー像に対して照射した光とその反射光の比率によって定まる。ここでは、トナー像の濃度を、トナーが転写されていない状態を0%とし、トナーが中間転写ベルト314を完全に覆うように(いわゆるベタ状態で)転写された状態を100%とする百分率によって表現する。
なお、画像形成装置10は、中間転写ベルト314に形成されたトナー像を濃度センサ321によって読み取ることに代えて、画像読取装置によって用紙に形成された画像を読み取る構成を有し、その読取結果に基づいて画像形成条件を補正してもよい。
【0026】
画像形成装置10の構成は、以上のとおりである。この構成のもと、画像形成装置10は、外部装置から供給された画像データに対して画像処理を実行し、用紙に画像を形成する。また、画像形成装置10は、時間の経過に伴い、画像形成装置10を好適な状態で使用可能にするためのセットアップ処理を適当なタイミングで実行する。このセットアップ処理には、補正部320による画像形成条件の補正が少なくとも含まれる。セットアップ処理は、画像出力装置300によって実行される。画像出力装置300は、セットアップ処理が終了すると、セットアップ処理が終了したことを制御装置100に通知するとともに、補正部320による補正を反映したルックアップテーブルを制御装置100に供給する。ルックアップテーブルは、補正部320による補正を反映する前と後とでは、入力値と出力値の対応関係が変化する。
【0027】
なお、セットアップ処理は、画像形成装置10の起動時、あらかじめ決められた時間間隔、あらかじめ決められた枚数の用紙が使用される毎、あらかじめ決められた量のトナーが使用される毎、温度や湿度があらかじめ決められた程度以上に変化した毎などに行われる。また、セットアップ処理は、これらの条件を複数組み合わせて考慮したタイミングで実行されてもよい。さらに、セットアップ処理は、このような事前に決められた条件を満たした場合に限らず、ユーザが指示したタイミングで随時実行されてもよい。
【0028】
また、補正部320による補正は、例えば、補正用の画像(以下「テスト画像」という。)を中間転写ベルト314や用紙に形成することで行われる。テスト画像は、例えば、10%から100%まで10%刻み(すなわち10段階)で濃度を変えた各色の小片状のトナー像をあらかじめ決められた位置に配置した画像である。補正部320は、テスト画像の本来の濃度と実際に形成されたテスト画像を読み取って得られた濃度情報とを比較し、その相違に応じて画像形成条件を補正する。補正部320が補正する画像形成条件は、例えば、感光体ドラムを帯電するときの帯電電位、感光体ドラムを露光するときの露光電位、静電潜像を現像するときの現像バイアス、現像器におけるトナーとキャリアの混合比(トナー濃度)、トナー像を転写するときの転写バイアスなどである。補正部320は、これらの画像形成条件をいずれかを補正してもよいし、複数の画像形成条件を補正してもよい。
【0029】
画像形成装置10は、画像形成条件とトーン調整処理に用いられるルックアップテーブルとに整合性が得られることにより、これらが整合しない場合よりも望ましい画質を実現する。すなわち、画像形成装置10は、画像形成条件の補正結果とトーン調整処理の結果とを掛け合わせることで所望の色調を再現する。つまり、画像形成装置10の画質には、これらの結果が相補的に作用する。
【0030】
例えば、画像形成装置10は、テスト画像のうちの高濃度領域(色が濃い領域)の検知結果に基づいて画像形成条件を補正し、テスト画像のうちの中・低濃度領域(高濃度領域以外の領域)の検知結果に基づいて新たなルックアップテーブルを生成して更新する、といった態様で画質制御を行う場合がある。かかる場合に、画像形成部310が補正後の画像形成条件で画像を形成する一方で、画像処理部130が更新前のルックアップテーブルを用いてトーン調整処理を実行すると、画像形成装置10において想定されている色調と異なる色調によって用紙に画像が形成される可能性がある。また、補正部320による補正が画像を濃くするように作用する一方で、トーン調整処理による調整が画像を薄くするように作用する、というように、互いの作用が相反的になって相殺されてしまったり、あるいは逆に作用が過剰になってしまったりするといった齟齬が生じ得る。
【0031】
それゆえ、画像形成装置10は、セットアップ処理の実行中には、ユーザによって画像の形成が指示されても、セットアップ処理が終了し、画像形成条件の補正が反映されたルックアップテーブルが使用可能になるまでは、トーン調整処理以降の処理を実行しない。すなわち、画像形成装置10は、セットアップ処理が実行されたときには、画像形成条件の補正が反映されずに画像処理や画像形成が行われることがないように、その動作の一部の進行を制限する。
【0032】
また、本実施形態において、画像形成装置10は、「サーバモード」、「セキュリティプリントモード」、「通常モード」という3種類の画像形成モードを有する。サーバモードは、画像データをいったん記憶装置200に蓄積し、これをユーザの指示に応じて読み出して画像を形成するモードである。サーバモードは、画像を繰り返し形成する画像データを蓄積しておき、必要に応じて(何度も)画像を形成する場合に用いられてもよい。サーバモードにおいて、ユーザの指示は、外部装置とUI部140のいずれで行われてもよい。
【0033】
セキュリティプリントモードは、画像を形成するためにユーザの認証を要するモードである。このモードにおいて、画像形成装置10は、ユーザ本人が画像形成装置10の前にいることが認証情報によって確認された場合に画像を形成する。具体的には、画像形成装置10は、画像データをいったん記憶装置200に蓄積し、UI部140によってユーザの認証情報が入力されたらこれを読み出して画像を形成する。ユーザは、他人に盗み見られたくない文書を出力する場合などに、このモードを利用する。
【0034】
サーバモード及びセキュリティプリントモードは、いずれも、画像データがいったん記憶装置200に記憶されることを要し、ユーザの明示的な指示に応じてこれを読み出して画像を形成するモードである。これらのモードは、換言すれば画像形成を待機するモードであり、以下においては「第1のモード」と総称される。一方、通常モードは、画像データの記憶装置200への記憶を要しないモードであり、画像データが取得されると、準備ができ次第画像処理や画像形成が実行されるモードである。以下においては、この通常モードを第1のモードと対比して示すために、「第2のモード」という。第1のモードは、第2のモードに比べ、画像データを取得してから画像が形成されるまでの時間差が生じやすいモードであり、かつ、その時間差も一定でなくばらつきを生じやすいモードであるといえる。
【0035】
なお、画像形成装置10は、通常モードで動作する場合であっても、セットアップ処理の実行中には、セットアップ処理が終了するまでは動作の一部を制限し、画像形成を待機する。ただし、この場合においても、画像形成装置10は、ユーザの明示的な指示を要することなく、セットアップ処理が終了し、画像を形成する準備ができ次第画像を形成するように構成されている。
【0036】
また、画像データを取得してから画像が形成されるまでの時間差が長くなると、画像形成条件とトーン調整処理に用いられるルックアップテーブルの整合性が失われ、画像形成装置10において想定されている色調と実際に用紙に形成される画像の色調とに齟齬が生じる可能性が増大する。これらの色調に齟齬が生じる可能性は、画像形成モードによっても異なる。そこで、画像形成装置10は、以下に示すように、画像処理の態様を画像形成モードに応じて異ならせ、かかる齟齬が生じる可能性を少なくする。
【0037】
図4は、本実施形態における制御装置100の動作を示すフローチャートである。なお、制御装置100がこの処理を実行する場合において、画像出力装置300は、制御装置100の動作とは無関係に画像形成条件の補正を実行し得る。よって、制御装置100においてトーン調整処理に用いられるルックアップテーブルは、図4に示す動作に対して並行的に、随時更新され得る。
【0038】
まず、制御装置100は、外部装置から画像データを取得することによって図4に示す動作を開始する(ステップSa1)。制御装置100は、画像データを取得すると、そのときの画像形成モードを判断し、画像データを記憶装置200に蓄積するか否かを判断する(ステップSa2)。なお、画像形成モードは、これを指示する情報が画像データとともに送られてきてもよいし、画像形成装置10にあらかじめ設定されていてもよい。ここにおいて、画像形成モードがサーバモード又はセキュリティプリントモードである場合に取得される画像データは、本発明に係る第1の画像データに相当し、画像形成モードが通常モードである場合に取得される画像データは、本発明に係る第2の画像データに相当する。
【0039】
制御装置100は、画像形成モードがサーバモード又はセキュリティプリントモードである場合には、画像データを蓄積する必要があると判断する。ゆえに、制御装置100は、この場合には画像データを記憶装置200に蓄積する(ステップSa3)。続いて、制御装置100は、画像を形成する指示がユーザによって行われたか否かを判断することにより、画像形成を待機する(ステップSa4)。なお、記憶装置200に複数の画像データが蓄積されている場合、ユーザは、いずれの画像データに基づいて画像を形成するのかを特定するために、所望する画像データを指定して指示を行う。制御装置100は、ユーザの指示を受け付けると、記憶装置200から画像データを読み出して取得し(ステップSa5)、トーン調整処理を含む画像処理を実行する(ステップSa6)。制御装置100は、画像データに対して画像処理を実行したら、これを画像出力装置300に供給する(ステップSa7)。
【0040】
一方、画像形成モードが通常モードである場合、制御装置100は、画像データを記憶装置200に蓄積する必要がないと判断する。このとき、制御装置100は、画像データを蓄積せずにそのまま画像処理を実行し(ステップSa6)、画像出力装置300に供給する(ステップSa7)。この場合、制御装置100は、ユーザからの指示を要することなく、すなわち当該指示によらずに、画像処理を実行する。
【0041】
制御装置100が以上のように動作することにより、画像形成装置10においては、画像出力装置300が制御装置100と独立に動作する場合においても、補正部320による補正の内容が反映された画像処理が実行される。例えば、画像形成装置10は、画像形成モードがサーバモード又はセキュリティプリントモードであり、画像データを記憶装置200に蓄積する場合においても、ユーザからの指示を受け付けてから画像処理を実行することにより、仮にルックアップテーブルが画像データの蓄積中に更新されたとしても、補正部320による補正の内容が反映される前のルックアップテーブルが適用されないように構成されている。また、画像形成装置10は、ユーザからの指示を受け付けてから画像処理を実行することにより、画像形成を待機する時間が長時間にわたるような、画像処理部130において想定されている画像形成部310の状態とその実態とに齟齬が生じやすい状況においても、補正部320による補正があれば当該補正が反映されたルックアップテーブルが適用されるようになっている。
【0042】
[第2実施形態]
本実施形態は、上述した第1実施形態の一部を変更した実施の形態である。本実施形態の第1実施形態との主たる相違点は、画像形成モードが通常モードである場合に実行される画像処理の内容と手順にある。
なお、本実施形態において、その構成や動作が第1実施形態と共通するものについては、重複する説明を省略するものとする。
【0043】
本実施形態において、画像処理部130は、画像データを記憶装置200に蓄積する場合としない場合とで実行する処理自体を異ならせる。具体的には、画像処理部130は、画像データを記憶装置200に蓄積する場合に、画像データを記憶装置200に蓄積しない場合に実行する処理の一部を含まない画像処理を実行する。また、画像処理部130は、画像データを記憶装置200に蓄積する場合(すなわち、画像データが第1の画像データに相当する場合)に、記憶装置200に記憶される前の画像データに対して画像処理を実行する。なお、本実施形態において、画像データを記憶装置200に蓄積しない場合(すなわち、画像データが第2の画像データに相当する場合)の動作は、第1実施形態と同様である。画像処理部130が第1の画像データに対して実行する画像処理の態様は、本発明に係る第1の態様の一例であり、画像処理部130が第2の画像データに対して実行する画像処理の態様は、本発明に係る第2の態様の一例である。
【0044】
画像処理部130が第1の画像データに対して実行する画像処理は、少なくともトーン調整処理に用いるルックアップテーブルが第2の画像データのそれと異なる。第1の画像データに対して適用されるルックアップテーブルは、補正部320による補正と相関を有しないものであり、補正部320による補正に応じて更新されないものである。かかるルックアップテーブルは、ここではあらかじめ決められたルックアップテーブルであるとするが、補正部320による補正以外の要因によって更新されるものであってもよい。つまり、第1の画像データに対して適用されるルックアップテーブルは、補正部320による補正の影響を受けないものであれば、更新されるか否かを問わないものである。以下においては、説明の便宜上、第1の画像データに対して適用されるルックアップテーブルを「第1のルックアップテーブル」といい、第2の画像データに対して適用されるルックアップテーブルを「第2のルックアップテーブル」という。第1のルックアップテーブルを用いたトーン調整処理は、第2のルックアップテーブルを用いたトーン調整処理に代替する処理であり、本発明に係る第2の処理の一例に相当するものである。
【0045】
第1のルックアップテーブルは、例えば、画像出力装置300が安定状態であるときにテスト画像を形成し、そのテスト画像の検知結果に基づいて生成されるものである。ここにおいて、安定状態とは、画像出力装置300により形成される画像の色調が安定しているとみなせる状態をいい、ある程度の枚数の用紙に画像が形成された後や、温湿度の変化が少ない時間帯(例えば日中)である。また、第1のルックアップテーブルは、安定状態において複数のルックアップテーブルを生成し、それらの平均的な階調特性を算出して設定されてもよい。第1のルックアップテーブルは、画像形成装置10の製造時や出荷時にあらかじめ設定されてもよいが、画像形成装置10の使用を開始した後に、画像形成装置10のユーザやこれを保守する者によって更新されてもよい。かかる意味においては、第1のルックアップテーブルは、補正部320による補正に応じて更新されないものではなく、その更新の頻度が第2のルックアップテーブルよりも低いものであるともいえる。
【0046】
また、第1のルックアップテーブルは、テスト画像の検知結果によらずに生成されるものであってもよい。ルックアップテーブルを用いたトーン調整処理においては、階調特性を決定付ける要因が複数存在する場合がある。階調特性を決定付ける要因としては、画像形成装置10の経時変化や環境変化のほか、画像形成装置10の個体差も考えられる。このような場合、ルックアップテーブルは、経時変化、環境変化及び個体差の3つの要因を複合的に考慮して生成される。ここにおいて、経時変化と環境変化は、そのときどきで変化するものであるため、画像形成部310を実際に動作させ、テスト画像を形成することで推測される。これに対し、画像形成装置10の個体差は、その装置に固有な不変のものであるため、画像形成部310を実際に動作させることなく、事前に推測可能なものである。それゆえ、画像形成装置10は、第1のルックアップテーブルとして、時間的に変動する要因を考慮せずに、(画像形成装置10の個体差のような)時間的に不変の要因を考慮して設定されたルックアップテーブルを用いれば、テスト画像の検知結果を考慮する必要がなくなる。
【0047】
図5は、本実施形態における制御装置100の動作を示すフローチャートである。なお、ルックアップテーブルは、本実施形態においても、同図に示す処理と並行的に随時更新され得る。
図5に示す処理は、ステップSb3及びSb7の画像処理を除き、第1実施形態の処理(図4参照)と共通の手順で実行される。すなわち、ステップSb1、Sb2、Sb4〜Sb6、Sb8の各処理は、第1実施形態におけるステップSa1、Sa2、Sa3〜5、Sa7の各処理にそれぞれ相当する。
【0048】
制御装置100は、ステップSb2において画像データを記憶装置200に蓄積すると判断すると、画像データを蓄積(ステップSb4)する前に、画像処理を実行する(ステップSb3)。ステップSb3の画像処理は、第1のルックアップテーブル(図中では「LUT」と表記する。)を用いたトーン調整処理を含む。一方、制御装置100は、ステップSb2において画像データを記憶装置200に蓄積しないと判断すると、画像データを蓄積したり、ユーザからの指示を待機したりすることなく、画像データに対して画像処理を実行して画像出力装置300に供給する(ステップSb7、Sb8)。ステップSb7の画像処理は、ステップSb3の画像処理と異なり、第2のルックアップテーブルを用いたトーン調整処理を含む。
【0049】
本実施形態のように動作が行われた場合、記憶装置200に画像データを蓄積する前に画像処理が実行されることにより、記憶装置200から画像データを読み出した後に画像処理を実行する必要がなくなる。その結果、本実施形態の動作を第1実施形態の動作と比較すると、画像形成モードがサーバモード又はセキュリティプリントモードである場合に、ユーザによる指示が受け付けられてから画像データが画像出力装置300に供給されるまでに要する時間(又は処理のステップ数)が少なくなる。
【0050】
なお、トーン調整処理は、第1のルックアップテーブルが時間的に変動する要因を考慮せずに設定されたものである場合には、どのタイミングで実行されても結果が変わらないものである。よって、かかる第1のルックアップテーブルを用いてトーン調整処理を実行する場合には、その実行タイミングを記憶装置200から画像データを読み出した後としてもよい。
【0051】
[変形例]
本発明の実施の態様は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形例の形態であってもよい。また、これらの形態は、必要に応じて適宜組み合わされてもよい。
【0052】
(変形例1)
本発明に係る画像形成装置に相当する構成は、上述した制御装置100、記憶装置200及び画像出力装置300を一体に備えた装置である必要はない。例えば、本発明は、電子写真方式のプリンタと、当該プリンタと通信手段(ネットワーク等)を介して接続するサーバとを備えるシステムの形態によって実施されてもよい。この場合、記憶装置200に相当する構成は、サーバ側にある。また、制御装置100に相当する構成も、サーバ側にあってもよい。あるいは、制御装置100に相当する構成は、プリンタ側の制御手段(CPU等)とサーバ側の制御手段とが協働することによって実現されてもよい。
【0053】
(変形例2)
本発明において、画像処理は、複数の処理の組み合わせによって構成され得る。画像処理が複数の処理を決められた順序で実行するものである場合において、画像出力装置300の状態の変化の影響を受ける処理がその途中にあるとき、画像形成装置10は、当該処理よりも前に実行される処理(以下「前処理」という。)と当該処理以降に実行される処理(以下「後処理」という。)とに画像処理を分割してもよい。前処理は、同一の画像データに対する処理結果が経時的に変化しない画像処理と言い換えてもよい。
【0054】
図6は、画像処理を分割した場合の動作例を示すフローチャートであり、第1実施形態の動作(図4参照)における画像処理を分割した動作を示すものである。この動作において、第1実施形態の動作と異なる点は、ステップSc3の判断の前に前処理を実行する点と、ステップSa6の画像処理に代えて後処理を実行する点の2点である。前処理は、その結果が画像出力装置300の状態の変化によって変化しないため、画像データを記憶装置200に蓄積する前後のいずれに実行してもよいものである。
【0055】
本変形例の動作は、このような前処理を事前に、すなわち記憶装置200に蓄積する前に実行しておくものである。本変形例の動作を第1実施形態の動作と比較した場合、ユーザによる指示が受け付けられてから画像データが画像出力装置300に供給されるまでに要する時間は、前処理の実行時間に相当する分が少なくなる。
【0056】
(変形例3)
ルックアップテーブルを用いたトーン調整処理においては、階調特性を決定付ける要因が複数存在する場合がある。階調特性を決定付ける要因としては、画像形成装置10の経時変化や環境変化のほか、画像形成装置10の個体差も考えられる。このような場合、ルックアップテーブルは、経時変化、環境変化及び個体差の3つの要因を複合的に考慮して生成される。ここにおいて、経時変化と環境変化は、そのときどきで変化するものであるため、画像形成部310を実際に動作させ、テスト画像を形成することで推測される。一方、画像形成装置10の個体差は、その装置に固有な不変のものであるため、画像形成部310を実際に動作させることなく、事前に推測可能なものである。
【0057】
ゆえに、トーン調整処理は、事前に推測可能な要因(個体差等)に起因する階調特性を調整するためのルックアップテーブルと、事前に推測不可能な要因(経時変化、環境変化等)に起因する階調特性を調整するためのルックアップテーブルとを用いて、画像データに対してこれらの2つのルックアップテーブルを順番に適用する処理であってもよい。なお、これらのルックアップテーブルは、演算によって合成されて1つのルックアップテーブルとして表現されてもよい。
【0058】
また、上述した2つのルックアップテーブルを用いたトーン調整処理の間には、別の処理が実行されてもよい。例えば、前者のルックアップテーブル(経時的に変化しないルックアップテーブル)を用いたトーン調整処理が上述した前処理に含まれて、後者のルックアップテーブル(経時的に変化し得るルックアップテーブル)を用いたトーン調整処理が上述した後処理に含まれるように画像処理が実行されてもよい。
【0059】
(変形例4)
選択部114は、画像データのデータ形式やデータ量によって画像処理の態様を選択してもよい。ここにおいて、画像データのデータ形式とは、当該画像データを作成したアプリケーションプログラムによって識別されるものである。例えば、選択部114は、一連の画像処理の実行に要する時間が比較的短い画像データに画像処理を実行する場合には、第2の態様を選択し、一連の画像処理の実行に要する時間が比較的長くなる画像データに画像処理を実行する場合には、第1の態様を選択する。なお、ここでいうデータ量は、データの容量(バイト数)のことであってもよいが、画像データが複数ページ分の画像を表す場合であれば、ページ数のことであってもよい。
【0060】
また、画像形成装置10は、画像データのデータ形式やデータ量に応じて第1実施形態の動作(図4参照)と第2実施形態の動作(図5参照)のいずれかを選択的に実行してもよい。例えば、画像形成装置10は、画像処理に要する時間が比較的短い場合には、第1実施形態の動作を実行し、画像処理に要する時間が比較的長い場合には、第2実施形態の動作を実行する。
【0061】
(変形例5)
本発明は、記憶手段及び蓄積手段を必ずしも要するものではない。本発明は、画像形成条件の補正に応じて変化する処理(第1の処理)を含む態様(第2の態様)の画像処理とこれを含まない態様(第1の態様)の画像処理とを選択することが可能であれば、画像データが記憶手段に蓄積されるか否かではなく、第1の態様と第2の態様のいずれが選択されたかに応じて画像処理手段が動作し得る。
【0062】
(変形例6)
第2実施形態の第1のモードにおける画像処理は、第1のルックアップテーブルに代えて、入力値に等しい出力値を出力するルックアップテーブル(すなわち、画像データを変化させることなく素通りさせるルックアップテーブル)を用いるものであってもよい。このようなルックアップテーブルを適用した場合には、画像の色調が適用前後で変化しない。これはつまり、第2実施形態の第1のモードにおける画像処理は、トーン調整処理を含まずに省略したものであってもよいということである。
【0063】
(変形例7)
上述したように、第1のルックアップテーブルとして用いられるルックアップテーブルは、安定状態で形成されたテスト画像の検知結果に基づいて生成されるもの、その平均的な階調特性を算出したもの、テスト画像の検知結果によらずに生成されるもの、画像データを素通りさせるもの、というように複数ある。そこで、画像形成装置10は、これらのいずれを用いるかを選択するための選択手段を備え、その選択結果に応じたルックアップテーブルを適用するように構成されてもよい。かかる選択手段は、例えば、UI部140によって実現される。
【符号の説明】
【0064】
10…画像形成装置、100…制御装置、110…制御部、111…取得部、112…蓄積部、113…受付部、114…選択部、120…通信部、130…画像処理部、140…UI部、200…記憶装置、210…記憶部、300…画像出力装置、310…画像形成部、320…補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを取得する取得手段と、
画像処理の態様として第1の態様又は第2の態様を選択する選択手段と、
前記取得手段により取得された画像データを指定した指示を受け付ける受付手段と、
前記取得手段により取得された画像データに対して、前記選択手段により選択された態様で画像処理を実行する画像処理手段と、
画像形成に係る条件を適用し、前記画像処理手段により画像処理が実行された画像データに応じた画像を媒体に形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段の状態の変化に応じて前記条件を補正する補正手段と
を備え、
前記画像処理手段は、前記選択手段により選択された態様が第2の態様である場合には、前記画像データに対して前記補正手段による前記条件の補正に応じて変化する第1の処理を含む画像処理を実行し、前記選択手段により選択された態様が第1の態様である場合には、前記画像データに対して当該第1の処理を含まない画像処理を実行し、
前記画像形成手段は、前記選択手段により選択された態様が第1の態様である場合に、前記受付手段により前記指示が受け付けられると、当該指示で指定された前記画像データに応じた画像を形成する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記選択手段により前記第1の態様が選択された場合に、前記取得手段により取得された画像データを記憶手段に蓄積する蓄積手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、
前記選択手段により前記第1の態様が選択された場合に、前記画像データに対して、前記第1の処理と異なる処理であって当該第1の処理に代替する第2の処理を、前記記憶手段に記憶される前に実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
画像データを記憶手段に蓄積する蓄積手段と、
前記記憶手段に記憶される第1の画像データと、前記記憶手段に記憶されない第2の画像データとを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得され、又は前記蓄積手段により蓄積された第1の画像データ及び第2の画像データに対して、互いに異なる態様で画像処理を実行する画像処理手段と、
前記第1の画像データを指定した指示を受け付ける受付手段と、
画像形成に係る条件を適用し、前記画像処理手段により画像処理が実行された第1の画像データ及び第2の画像データのそれぞれに応じた画像を媒体に形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段の状態の変化に応じて前記条件を補正する補正手段と
を備え、
前記画像処理手段は、前記第1の画像データに対しては、前記受付手段により当該第1の画像データを指定した前記指示が受け付けられてから、前記補正手段による前記条件の補正に応じて変化する第1の処理を含む画像処理を実行し、前記第2の画像データに対しては前記指示によらずに当該第1の処理を含む画像処理を実行する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記画像処理手段は、前記第1の処理と、当該第1の処理よりも前に実行される第2の処理とを前記第1の画像データ及び前記第2の画像データに対して実行し、
前記第1の画像データに対しては、前記記憶手段に記憶される前に前記第2の処理を実行し、前記受付手段により当該第1の画像データを指定した前記指示が受け付けられてから前記第1の処理を実行する
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−203336(P2012−203336A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70255(P2011−70255)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】