画像形成装置
【課題】多段現像方式の画像形成装置において、像担持体の回転振れによる濃度むらを高精度に低減することができ、多段現像方式の利点を十分に活かせるようにする。
【解決手段】電圧制御手段72は、CPU、DA変換器、現像バイアス高圧電源70、遅延回路74から構成されており、濃度センサ検出信号および感光体回転位置検出信号のデータから濃度むら補正用信号を作成し、感光体回転位置検出信号に基づいて、多段現像方式の現像ローラに印加する現像バイアスを制御する。第二現像ローラ56に印加される補正用現像バイアスは、第一現像ローラ54に印加される補正用現像バイアスよりも位相を遅らせている。
【解決手段】電圧制御手段72は、CPU、DA変換器、現像バイアス高圧電源70、遅延回路74から構成されており、濃度センサ検出信号および感光体回転位置検出信号のデータから濃度むら補正用信号を作成し、感光体回転位置検出信号に基づいて、多段現像方式の現像ローラに印加する現像バイアスを制御する。第二現像ローラ56に印加される補正用現像バイアスは、第一現像ローラ54に印加される補正用現像バイアスよりも位相を遅らせている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等の画像形成装置に関し、詳しくは、複数の現像ローラを備えた多段現像方式の現像手段により潜像を可視像化する方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、帯電装置によって像担持体を一様に帯電させ、入力したデータに基づいて露光装置によって像担持体に潜像を形成し、現像装置によって潜像にトナーを付着させて画像を形成している。
近年、電子写真方式の画像形成装置は印刷業界にも普及し始めており、高速出力かつ高画質化への要求が急速に高まっている。このような要求に対応するため、高速出力対応の画像形成装置には様々な技術が搭載されている。たとえば現像能力の向上を狙って複数の現像ローラで像担持体にトナーを現像する多段現像方式などがある。像担持体上に形成された潜像に対して複数回現像を行うことで、良質な画像を形成することができる。この多段現像装置によれば、ライン画像及びベタ画像の双方を良好に現像させることができる。
【0003】
高画質化への要求項目のなかでは、頁内濃度均一性への要望が強く、ユーザーが画像形成装置を選定する際の判断基準になっている。頁内の濃度むらは、帯電の不均一性による帯電むら、露光装置の露光むら、像担持体の感度むら、現像ローラの抵抗むら、トナーの帯電むら、転写ローラの転写むらなど、様々な要因によって発生するものであり、様々な補正技術が提案されている。
電子写真方式を用いた画像形成装置では、現像ローラと感光体間の電位差による電界を利用して感光体上にトナーを付着させている。この電界は、現像ギャップによって変化することが一般に知られている。すなわち、現像ギャップが変動するということは濃度変動が生ずることを意味する。このような像担持体の回転振れ起因による濃度むらは周期的に発生するため視認が容易であり、クレーム対象となる場合が多い。
【0004】
特許文献1には、電子写真方式または静電記録方式の画像形成装置について、画像に周期的に発生する縞状の濃度ムラを包括的に減少させる方法が開示されている。
この画像形成装置は、画像濃度の周期的な濃度変動データを予め格納する第一の変動データ格納手段と、上記濃度変動データに基づいて画像形成条件を制御する第一の制御手段とを有し、第一の変動データ格納手段は、少なくとも現像剤担持体の1周期に対応する濃度変動データを格納し、第一の制御手段は、帯電電圧、露光光量、現像電圧及び転写電圧のうち少なくとも1つを制御することを特徴としており、像担持体の回転周期に合わせて上記制御手段で濃度補正を行う補正方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来における像担持体の回転振れ起因による濃度むらの補正技術は、単一の現像ローラから構成される現像器をもつ画像形成装置に対しては有効であったが、多段現像方式に対しては狙いの補正効果が得られないことが多い。
具体的に説明すると、たとえば従来の回転振れによる濃度むらの補正方法は、帯電バイアス、現像バイアス、露光などのプロセス条件を像担持体の回転周期に基づいて変化させる方法などがある。
多段現像方式から構成される現像装置において、現像バイアスを像担持体の回転周期に合わせて変化させた場合、像担持体の回転振れと各現像ローラを通過する際のバイアスの位相が異なるため、狙いの補正効果が得られないといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたものであり、多段現像方式の画像形成装置において、像担持体の回転振れによる濃度むらを高精度に低減することができ、多段現像方式の利点を十分に活かせる画像形成装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、濃度センサで検出した濃度むらデータに基づいて、像担持体の回転周期で現像バイアスを変化させて濃度むらを補正する技術に関して、各現像ローラに印加する濃度むら補正用現像バイアスの位相を、像担持体の回転速度・回転位置に基づいて異ならせることとした。
【0008】
具体的には、請求項1に記載の発明は、像担持体と、前記像担持体に潜像を形成する露光手段と、前記像担持体の回転位置を検出する回転位置検出手段と、複数の現像ローラを備え、前記像担持体上の潜像を可視像化する現像手段と、少なくとも前記像担持体1周分の周期的な濃度むらを検出する濃度むら検出手段と、前記濃度むら検出手段により検出された濃度むらを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された濃度むらの検出データに基づいて、前記現像手段における各現像ローラに印加する電圧を制御する電圧制御手段と、を有していることを特徴とする画像形成装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記電圧制御手段は、前記現像手段の各現像ローラに印加する電圧の位相をそれぞれ異ならせることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像形成装置において、前記電圧制御手段は、前記像担持体の回転周期と前記各現像ローラに印加する電圧の周期とが、前記各現像ローラにおいて一致するように各現像ローラに印加する電圧の位相を制御することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記電圧制御手段は、前記各現像ローラのうち前記像担持体の回転方向下流側に位置する現像ローラほど、印加する電圧の位相が遅れるように制御することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記電圧制御手段は、遅延回路を備え、前記各現像ローラのうち前記像担持体の回転方向上流側に位置する現像ローラに印加する電圧に比べて下流側の現像ローラに印加する電圧の位相を、前記遅延回路を介して遅らせることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像形成装置において、前記遅延回路は、電圧を印加するための高圧電源と、前記像担持体の回転方向下流側に位置する現像ローラとの間に配置したことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記電圧制御手段は、前記回転位置検出手段の検出結果に同期して制御することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記現像手段における複数の現像ローラは互いに導通していないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多段現像方式の画像形成装置において、像担持体の回転振れによる濃度むらを高精度に低減することができ、多段現像方式の利点(良質な画像形成)を十分に活かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概要構成図である。
【図2】同画像形成装置の画像形成部拡大図である。
【図3】濃度むら検出手段の構成を示す図である。
【図4】現像手段の概要断面図である。
【図5】感光体の回転振れによる濃度むらを説明するための図である。
【図6】ベタ帯パターンの説明図である。
【図7】従来の濃度むらの補正方法を説明するためのフローチャートである。
【図8】従来の補正方法のブロック図である。
【図9】従来の補正方法による補正結果を示すグラフである。
【図10】現像バイアスの印加構成を示す図である。
【図11】二段現像方式に従来の補正方法を適用した場合の濃度むらの発生状態を示すグラフである。
【図12】本実施形態に係る濃度むら補正方法を示すブロック図である。
【図13】本実施形態に係る濃度むらの補正効果を示すグラフである。
【図14】第2の実施形態に係る濃度むら補正方法を示すブロック図である。
【図15】第3の実施形態に係る濃度むら補正方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、図1乃至図13に基づいて第1の実施形態を説明する。図1は本実施形態に係る画像形成装置の概略図を、図2は画像形成部の概略構成図を示している。
図1に示すように、画像形成装置10は、記録紙12に画像を形成する画像形成部14と、画像形成部14に対して記録紙を供給する給紙装置16と、原稿画像を読み取るスキャナ18と、スキャナ18に原稿を自動給紙する原稿自動搬送装置20等を備えている。図1において、符号16aは給紙トレイ1を、16bは給紙トレイ2を示している。
装置本体22内には、転写体たる無端状の中間転写ベルト24を複数の張架ローラによって張架している転写手段たる転写ユニット26が配設されている。
中間転写ベルト24は、伸びの少ないポリイミド樹脂に、電気抵抗を調整するためのカーボン粉末を分散せしめた材料からなっている。中間転写ベルト24は、図示しない駆動手段によって回転駆動される駆動ローラ28、2次転写バックアップローラ30、従動ローラ32、4つの1次転写ローラ34Y(イエロー)、34C(シアン)、34M(マゼンタ)、34K(黒)によって張架されながら、駆動ローラ28の回転によって無端移動せしめられる。
【0014】
4つのプロセスユニット36Y、36C、36M、36Kの上方には、露光手段としての光書込ユニット38が配設されている。光書込ユニット38は、画像情報に基づいて、図示しないレーザー制御部によって4つの半導体レーザー(図示せず)を駆動して4つの書込光を出射する。
プロセスユニット36Y、36C、36M、36Kの像担持体たるドラム状の感光体40Y、40C、40M、40Kをそれぞれ書込光によって暗中にて走査して、感光体40Y、40C、40M、40Kの表面にY、C、M、K用の静電潜像を書き込む。
図示しないが、画像形成装置内には感光体40の回転位置を検出する回転位置検出手段としてのフォトインタラプタが配置されている。
フォトインタラプタ及びその配置位置は、例えば特許文献2の図4に開示される構成を採用することができる。本実施形態においてはフォトインタラプタを用いて感光体の回転位置を検出しているが、ロータリエンコーダなど、回転位置を検出できるものであればこの構成に限らない。
【0015】
本実施形態では光書込ユニット38として、半導体レーザーから出射したレーザー光を図示しないポリゴンミラーによって偏向せしめながら、図示しない反射ミラーで反射させたり光学レンズに通したりすることで光走査を行うものを用いている。かかる構成のものに代えて、LEDアレイによって光走査を行うものを用いてもよい。
感光体40Y、40M、40C、40K上に書き込まれた静電潜像は現像装置内に存在するトナーが静電的付着力によって感光体上に付着し、現像される。その後中間転写ベルト上に順次トナー像を重ね合わせ、所望の画像を形成する。
記録紙は、レジストローラ対44によって所定のタイミングで二次転写器を構成するローラとローラのニップ部(二次転写位置)Nへ送られ、中間転写ベルト上で重ね合された各色成分画像(4色成分のトナー像)が一括して転写されながら、搬送ベルト46によって搬送される。その後定着ユニット48を通過し、トナー画像が定着されてカラー印刷画像となり、排紙ローラ対50により機外へと排出される。
また、画像形成装置には図示しない不揮発性メモリおよび揮発性メモリが搭載されており、これには各センサからの出力や補正制御結果などの様々な情報が記憶されている。
【0016】
図1に示すように、中間転写ベルト24の回転方向における二次転写位置の手前側には、中間転写ベルト24上のトナーの付着量、すなわち画像の濃度むらを検出する濃度むら検出手段としてのトナー付着量検知センサ52が配置されている。
図3に、トナー付着量検知センサ52の概略図を示す。図3(a)はは黒トナー付着量検知センサ52Aの構成を、図3(b)は、カラートナー付着量検知センサ52Bの構成を示している。実質的に黒トナー付着量検知センサ52Aは位置ずれ検知センサとして機能し、カラートナー付着量検知センサ52Bはトナー付着量検知センサとして機能する。
図3(a)に示すように、黒トナー付着量検知センサ52Aは、発光ダイオード(LED)等からなる発光素子52A−1と、正反射光を受光する受光素子52A−2とから構成されている。発光素子52A−1は中間転写ベルト上に光を照射し、この照射光は中間転写ベルトによって反射される。受光素子52A−2は、この反射光のうちの正反射光を受光する。
【0017】
一方、図3(b)に示すように、カラートナー付着量検知センサ52Bは、発光ダイオード(LED)等からなる発光素子52B−1と、正反射光を受光する受光素子52B−2と、拡散反射光を受光する受光素子52B−3とから構成されている。発光素子52B−1は、黒トナー付着量検知センサの場合と同様、中間転写ベルト上に光を照射し、この照射光は、中間転写ベルト表面によって反射される。
正反射受光素子52B−2は、この反射光のうちの正反射光を受光し、拡散反射光受光素子52B−3は、反射光のうち拡散反射光を受光する。本実施形態では、発光素子として、発光される光のピーク波長が950nmであるGaAs赤外発光ダイオードを用いており、受光素子としては、ピーク受光感度が800nmであるSiフォトトランジスタなどを用いているが、ピーク波長およびピーク受光感度がこれと異なるものでも構わない。
また、黒トナー付着量検知センサ及びカラートナー付着量検知センサと、検知対象物である中間転写ベルトのベルト表面との間には、5mm程度の距離(検出距離)を設けて配設されている。本実施形態では、トナー付着量検知センサを中間転写ベルト近傍に設け、中間転写ベルト上のトナー付着量に基づいて作像条件を決定するが、感光体上や転写搬送ベルト上に配設されていても構わない。
トナー付着量センサからの出力は付着量変換アルゴリズムによって付着量に変換される。付着量変換アルゴリズムについては従来技術と同様であるため省略する。
【0018】
図4に現像装置42の概略図を示す。
現像装置42は、二本の現像ローラ54、56と、三本のスクリュ60、62、64とから構成されており、各現像ローラは像担持体とある一定の距離をとって対向配置されている。
現像装置は像担持体の一例であるドラム状の感光体に対向配置され、前記感光体は、図2に矢印で示したように図における反時計回り方向に回転駆動される。
現像装置の現像容器58内には磁性キャリアと磁性又は非磁性のトナーを有する粉体状の二成分系現像剤66が収容されている。また、現像容器内には各々現像剤撹拌手段である撹拌スクリュ60、供給スクリュ62、回収スクリュ64が現像ローラに対して平行に設けられている。
撹拌スクリュ60では、現像剤66は撹拌されながら図手前方向の端部まで移動し、図示しない開口部を通して供給スクリュ62へと搬送される。現像剤は供給スクリュ62により撹拌搬送されながら感光体40の回転方向における上流側の第一現像ローラ54と、下流側の第二現像ローラ56へ供給される。
【0019】
第一、第二現像ローラに供給された現像剤は、図示しないドクタブレードによってその高さを規制され、矢印D方向に回転している感光体40に接触し、潜像部分にトナーを付着させ、現像を行う。この現像剤中のトナー濃度が低下すると、図示しないトナー補給部からトナーが攪拌スクリュ上部にある図示しない開口部より現像容器内に補給され、撹拌スクリュによって撹拌される。
多段現像方式の現像装置における各現像ローラは図示しない導電性の部材によって導通がとられており、各現像ローラに印加する現像バイアスを等しくしている構成が多い(例えば、特許文献3)が、本実施形態においてはそれぞれの現像ローラは互いに導通がとられておらず、それぞれに異なる電圧を印加できる構成としている。
なお、本実施形態では二本の現像ローラが感光体と同方向に回転する順二段現像方式を用いているが、本発明はこの方式に限らない。また、現像剤に二成分系現像剤を用いているが、これに限らない。
【0020】
図5に、感光体の回転振れによる濃度むらの一例を示す。
本発明者らは、副走査方向の濃度むらが感光体回転に起因していることを確認するために、図1に示す画像形成装置を用いて、図6に示すような副走査方向に細長く一様な濃度である帯状パターンを作像し、濃度センサとしてのトナー付着量検知センサ52で帯状パターンを測定した。
帯状パターンの副走査方向長さは、感光体周長よりも十分長くしている。本実験で用いた感光体径はφ100mm、プロセス線速は440mm/s、帯電、現像、LDパワーをそれぞれ-700V、-500V、70%とし、シアン100%の帯状パターンを作像している。
図5(a)は、濃度センサの拡散反射出力を示している。図5(a)より、パターン部に濃度変動が発生していることが確認できる。図5(b)は図5(a)のパターン部の濃度センサ出力を感光体回転位置検出信号を基準として感光体周期で切り出し、感光体5周分を平均化したグラフである。
図5(b)をみると、感光体周期で周期的な変動が発生していることが確認できる。濃度センサ出力の変動は、トナー付着量の変動を意味するため、感光体周期で画像濃度の変動が発生していることがよくわかる。
【0021】
図7は従来の感光体の回転振れによる濃度むら補正方法を説明する図である。まず、濃度むら補正の必要があるかを判断する。これは、感光体交換や、何らかの理由で感光体検出位置がずれたりした場合や、ユーザーモードによって選択できるようになっている。
濃度むら補正の必要があると判断された場合、帯状のパターンを作成し、濃度むらを検出する。この場合の検出手段は、濃度センサでも良いし、紙上の濃度でも構わない。検出した濃度むらデータは感光体周期で平均処理され、この濃度むらを除去するように位相と振幅が調整され、現像バイアスにフィードバックされる。フィードバックされる現像バイアスは、感光体の位置を基準として現像ローラとの位相関係を考慮して周期的に印加される。
以上のように、感光体周期で現像バイアスを補正することで感光体の回転振れによる濃度偏差を低減することができる。しかしながら、この方法を多段現像装置に適用した場合、狙った補正効果が得られない。
【0022】
図8は従来の濃度むら補正技術の構成図である。
濃度むらデータ記憶手段には、特定の画像形成条件下における基準となる濃度むらデータが記憶されている。本実施形態における濃度むらデータは、予め本発明の画像形成装置により形成された画像を、濃度センサで検出したデータである。
具体的には、感光体5周分を含むパッチを濃度センサで読取ったデータが保存されている。なお、上記濃度むらデータ記憶手段の濃度むらデータとして、出力された紙上の濃度を光学的に測定する構成であっても構わない。
CPUは、上記記憶手段の濃度むらデータを現像バイアス用に対応させて補正データに変換する。補正データは、感光体回転位置検出信号に同期して、D/A変換器によりアナログ信号に変換され、現像バイアス高圧電源により、第一、第二現像ローラに補正バイアスが印加され、出力画像の制御を行う。
このとき、第一、第二現像ローラには同じ位相の電圧が印加される。
【0023】
図9は、図7および図8に示した従来の濃度むら補正方法を、図1に示す画像形成装置に適用した結果である。濃度むら補正を行うことによって感光体周期の変動は多少低減できてはいるが、図中楕円で囲った部分をみると、本来濃度むらが無かった場所に濃度むらが発生していることが確認できる。
この濃度むらは、図中円で囲った山を補正するために現像バイアスを変化させた影響と考えられる。図中円と楕円の位置間の時間を測定した結果、二段ローラ間の通過時間と一致した。
【0024】
この現象を、図10、図11を用いて説明する。
図11は、図9において発生した濃度むらの発生過程を説明する図である。
まず、図11中に線L1で示した感光体振れによる濃度むらデータに基づいて、濃度むら補正用現像バイアス信号を作成する。作成した補正用現像バイアスは、図10に示すように、現像バイアス高圧電源70により各現像ローラに等しく印加される(図11中の線L2)。この補正用現像バイアスは、基本的には感光体の回転振れと逆位相である。
感光体の回転振れと補正開始位置を第一現像ローラ(X部)に合わせた場合、X通過後の付着量は補正用現像バイアスによってほぼ均一な状態となる。しかしながら、第二現像ローラ通過時(Y部)においては、感光体の振れの位相と第二現像ローラの位相が異なるため、逆に第二現像ローラによって濃度むらを作り出してしまう(図11中の線L3)。
これは、感光体の回転振れと補正開始位置を第二現像ローラに合わせた場合も、同様の問題が発生する。
以上のように、本発明者らの実験によると、多段現像装置に従来の濃度むら補正方法を適用した場合、狙いの補正効果が得られないことが明らかになった。
【0025】
図12に、本実施形態における電圧制御手段および濃度むら補正方法の構成を示す。
電圧制御手段72は、CPU、DA変換器、現像バイアス高圧電源70、遅延回路74から構成されており、濃度センサ検出信号および感光体回転位置検出信号のデータから濃度むら補正用信号を作成し、感光体回転位置検出信号に基づいて、多段現像方式の現像ローラに印加する現像バイアスを制御する。
濃度むらデータおよび濃度むら補正用データは、記憶手段としての濃度むらデータ記憶手段76に逐次保存される。
本実施形態においては、現像バイアス高圧電源70と下流側の現像ローラ56との間に遅延回路74を設けている。すなわち、CPUで生成した補正用データはDA変換器、現像バイアス高圧電源を介して各現像ローラに同一タイミングで印加されるが、第二現像ローラに印加される補正用現像バイアスは、第一現像ローラに印加される補正用現像バイアスよりも位相を遅らせている。
本実施形態における遅延回路74は簡単なRC回路によって実現しており、感光体上のある一点が各現像ローラ間を通過する時間だけ、位相が遅れるように調整しているが、本発明はこれに限らず、位相を遅らせることができればどんな構成でも構わない。
【0026】
図13は図12に示した濃度むら補正方法を、図1の画像形成装置に適用した場合の実験結果である。補正後の結果をみると、図9で確認された二段現像ローラの影響は無くなり、感光体振れによる濃度むらもほぼ濃度が均一となっていることが確認できる。
以上のように、本発明における濃度むら補正方法は、多段現像方式における現像装置で構成される画像形成装置に対しても効果的に補正できることが証明された。
【0027】
図14に基づいて第2の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する(以下の他の実施形態において同じ)。
本実施形態においては、現像バイアス高圧電源70を、第一現像ローラに対応した現像バイアス高圧電源70Aと、第二現像ローラに対応した現像バイアス高圧電源70Bとに分け、遅延回路74をDA変換器と現像バイアス高圧電源70Aとの間に設けたことが特徴となっている。
この構成にすることで、遅延回路内の各部品を高圧対応にすることなく、本発明の効果を得ることが可能となる。また、遅延回路74を現像バイアス高圧電源70と同一の基板上に配置することが可能となるため、スペース面でも有利となる。
本実施形態における補正効果は、第1の実施形態による補正効果と同等である。
【0028】
図15に基づいて第3の実施形態を説明する。
本実施形態においては、CPU内で補正データ1と補正データ2の2種類の補正データを生成し、各現像ローラに対して位相の異なる現像バイアスを印加させることが特徴となっている。
補正データ1と、補正データ2の位相差は、第一現像ローラと第二現像ローラ間の感光体移動時間と等しい。
このような構成にすることによって、第1の実施形態において懸念される各部品のばらつきによる位相ばらつきの影響を吸収することができる。
本実施形態における補正効果についても、第1の実施形態による補正効果と同等である。
【符号の説明】
【0029】
38 露光手段としての光書込ユニット
40 像担持体としての感光体
42 現像手段と現像装置
52 濃度むら検出手段としてのトナー付着量検知センサ
54、56 現像ローラ
70 高圧電源
72 電圧制御手段
74 遅延回路
76 記憶手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開平9−62042号公報
【特許文献2】特開2000−098675号公報
【特許文献3】特許第2790988号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等の画像形成装置に関し、詳しくは、複数の現像ローラを備えた多段現像方式の現像手段により潜像を可視像化する方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、帯電装置によって像担持体を一様に帯電させ、入力したデータに基づいて露光装置によって像担持体に潜像を形成し、現像装置によって潜像にトナーを付着させて画像を形成している。
近年、電子写真方式の画像形成装置は印刷業界にも普及し始めており、高速出力かつ高画質化への要求が急速に高まっている。このような要求に対応するため、高速出力対応の画像形成装置には様々な技術が搭載されている。たとえば現像能力の向上を狙って複数の現像ローラで像担持体にトナーを現像する多段現像方式などがある。像担持体上に形成された潜像に対して複数回現像を行うことで、良質な画像を形成することができる。この多段現像装置によれば、ライン画像及びベタ画像の双方を良好に現像させることができる。
【0003】
高画質化への要求項目のなかでは、頁内濃度均一性への要望が強く、ユーザーが画像形成装置を選定する際の判断基準になっている。頁内の濃度むらは、帯電の不均一性による帯電むら、露光装置の露光むら、像担持体の感度むら、現像ローラの抵抗むら、トナーの帯電むら、転写ローラの転写むらなど、様々な要因によって発生するものであり、様々な補正技術が提案されている。
電子写真方式を用いた画像形成装置では、現像ローラと感光体間の電位差による電界を利用して感光体上にトナーを付着させている。この電界は、現像ギャップによって変化することが一般に知られている。すなわち、現像ギャップが変動するということは濃度変動が生ずることを意味する。このような像担持体の回転振れ起因による濃度むらは周期的に発生するため視認が容易であり、クレーム対象となる場合が多い。
【0004】
特許文献1には、電子写真方式または静電記録方式の画像形成装置について、画像に周期的に発生する縞状の濃度ムラを包括的に減少させる方法が開示されている。
この画像形成装置は、画像濃度の周期的な濃度変動データを予め格納する第一の変動データ格納手段と、上記濃度変動データに基づいて画像形成条件を制御する第一の制御手段とを有し、第一の変動データ格納手段は、少なくとも現像剤担持体の1周期に対応する濃度変動データを格納し、第一の制御手段は、帯電電圧、露光光量、現像電圧及び転写電圧のうち少なくとも1つを制御することを特徴としており、像担持体の回転周期に合わせて上記制御手段で濃度補正を行う補正方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来における像担持体の回転振れ起因による濃度むらの補正技術は、単一の現像ローラから構成される現像器をもつ画像形成装置に対しては有効であったが、多段現像方式に対しては狙いの補正効果が得られないことが多い。
具体的に説明すると、たとえば従来の回転振れによる濃度むらの補正方法は、帯電バイアス、現像バイアス、露光などのプロセス条件を像担持体の回転周期に基づいて変化させる方法などがある。
多段現像方式から構成される現像装置において、現像バイアスを像担持体の回転周期に合わせて変化させた場合、像担持体の回転振れと各現像ローラを通過する際のバイアスの位相が異なるため、狙いの補正効果が得られないといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたものであり、多段現像方式の画像形成装置において、像担持体の回転振れによる濃度むらを高精度に低減することができ、多段現像方式の利点を十分に活かせる画像形成装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、濃度センサで検出した濃度むらデータに基づいて、像担持体の回転周期で現像バイアスを変化させて濃度むらを補正する技術に関して、各現像ローラに印加する濃度むら補正用現像バイアスの位相を、像担持体の回転速度・回転位置に基づいて異ならせることとした。
【0008】
具体的には、請求項1に記載の発明は、像担持体と、前記像担持体に潜像を形成する露光手段と、前記像担持体の回転位置を検出する回転位置検出手段と、複数の現像ローラを備え、前記像担持体上の潜像を可視像化する現像手段と、少なくとも前記像担持体1周分の周期的な濃度むらを検出する濃度むら検出手段と、前記濃度むら検出手段により検出された濃度むらを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された濃度むらの検出データに基づいて、前記現像手段における各現像ローラに印加する電圧を制御する電圧制御手段と、を有していることを特徴とする画像形成装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記電圧制御手段は、前記現像手段の各現像ローラに印加する電圧の位相をそれぞれ異ならせることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像形成装置において、前記電圧制御手段は、前記像担持体の回転周期と前記各現像ローラに印加する電圧の周期とが、前記各現像ローラにおいて一致するように各現像ローラに印加する電圧の位相を制御することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記電圧制御手段は、前記各現像ローラのうち前記像担持体の回転方向下流側に位置する現像ローラほど、印加する電圧の位相が遅れるように制御することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記電圧制御手段は、遅延回路を備え、前記各現像ローラのうち前記像担持体の回転方向上流側に位置する現像ローラに印加する電圧に比べて下流側の現像ローラに印加する電圧の位相を、前記遅延回路を介して遅らせることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像形成装置において、前記遅延回路は、電圧を印加するための高圧電源と、前記像担持体の回転方向下流側に位置する現像ローラとの間に配置したことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記電圧制御手段は、前記回転位置検出手段の検出結果に同期して制御することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記現像手段における複数の現像ローラは互いに導通していないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多段現像方式の画像形成装置において、像担持体の回転振れによる濃度むらを高精度に低減することができ、多段現像方式の利点(良質な画像形成)を十分に活かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概要構成図である。
【図2】同画像形成装置の画像形成部拡大図である。
【図3】濃度むら検出手段の構成を示す図である。
【図4】現像手段の概要断面図である。
【図5】感光体の回転振れによる濃度むらを説明するための図である。
【図6】ベタ帯パターンの説明図である。
【図7】従来の濃度むらの補正方法を説明するためのフローチャートである。
【図8】従来の補正方法のブロック図である。
【図9】従来の補正方法による補正結果を示すグラフである。
【図10】現像バイアスの印加構成を示す図である。
【図11】二段現像方式に従来の補正方法を適用した場合の濃度むらの発生状態を示すグラフである。
【図12】本実施形態に係る濃度むら補正方法を示すブロック図である。
【図13】本実施形態に係る濃度むらの補正効果を示すグラフである。
【図14】第2の実施形態に係る濃度むら補正方法を示すブロック図である。
【図15】第3の実施形態に係る濃度むら補正方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、図1乃至図13に基づいて第1の実施形態を説明する。図1は本実施形態に係る画像形成装置の概略図を、図2は画像形成部の概略構成図を示している。
図1に示すように、画像形成装置10は、記録紙12に画像を形成する画像形成部14と、画像形成部14に対して記録紙を供給する給紙装置16と、原稿画像を読み取るスキャナ18と、スキャナ18に原稿を自動給紙する原稿自動搬送装置20等を備えている。図1において、符号16aは給紙トレイ1を、16bは給紙トレイ2を示している。
装置本体22内には、転写体たる無端状の中間転写ベルト24を複数の張架ローラによって張架している転写手段たる転写ユニット26が配設されている。
中間転写ベルト24は、伸びの少ないポリイミド樹脂に、電気抵抗を調整するためのカーボン粉末を分散せしめた材料からなっている。中間転写ベルト24は、図示しない駆動手段によって回転駆動される駆動ローラ28、2次転写バックアップローラ30、従動ローラ32、4つの1次転写ローラ34Y(イエロー)、34C(シアン)、34M(マゼンタ)、34K(黒)によって張架されながら、駆動ローラ28の回転によって無端移動せしめられる。
【0014】
4つのプロセスユニット36Y、36C、36M、36Kの上方には、露光手段としての光書込ユニット38が配設されている。光書込ユニット38は、画像情報に基づいて、図示しないレーザー制御部によって4つの半導体レーザー(図示せず)を駆動して4つの書込光を出射する。
プロセスユニット36Y、36C、36M、36Kの像担持体たるドラム状の感光体40Y、40C、40M、40Kをそれぞれ書込光によって暗中にて走査して、感光体40Y、40C、40M、40Kの表面にY、C、M、K用の静電潜像を書き込む。
図示しないが、画像形成装置内には感光体40の回転位置を検出する回転位置検出手段としてのフォトインタラプタが配置されている。
フォトインタラプタ及びその配置位置は、例えば特許文献2の図4に開示される構成を採用することができる。本実施形態においてはフォトインタラプタを用いて感光体の回転位置を検出しているが、ロータリエンコーダなど、回転位置を検出できるものであればこの構成に限らない。
【0015】
本実施形態では光書込ユニット38として、半導体レーザーから出射したレーザー光を図示しないポリゴンミラーによって偏向せしめながら、図示しない反射ミラーで反射させたり光学レンズに通したりすることで光走査を行うものを用いている。かかる構成のものに代えて、LEDアレイによって光走査を行うものを用いてもよい。
感光体40Y、40M、40C、40K上に書き込まれた静電潜像は現像装置内に存在するトナーが静電的付着力によって感光体上に付着し、現像される。その後中間転写ベルト上に順次トナー像を重ね合わせ、所望の画像を形成する。
記録紙は、レジストローラ対44によって所定のタイミングで二次転写器を構成するローラとローラのニップ部(二次転写位置)Nへ送られ、中間転写ベルト上で重ね合された各色成分画像(4色成分のトナー像)が一括して転写されながら、搬送ベルト46によって搬送される。その後定着ユニット48を通過し、トナー画像が定着されてカラー印刷画像となり、排紙ローラ対50により機外へと排出される。
また、画像形成装置には図示しない不揮発性メモリおよび揮発性メモリが搭載されており、これには各センサからの出力や補正制御結果などの様々な情報が記憶されている。
【0016】
図1に示すように、中間転写ベルト24の回転方向における二次転写位置の手前側には、中間転写ベルト24上のトナーの付着量、すなわち画像の濃度むらを検出する濃度むら検出手段としてのトナー付着量検知センサ52が配置されている。
図3に、トナー付着量検知センサ52の概略図を示す。図3(a)はは黒トナー付着量検知センサ52Aの構成を、図3(b)は、カラートナー付着量検知センサ52Bの構成を示している。実質的に黒トナー付着量検知センサ52Aは位置ずれ検知センサとして機能し、カラートナー付着量検知センサ52Bはトナー付着量検知センサとして機能する。
図3(a)に示すように、黒トナー付着量検知センサ52Aは、発光ダイオード(LED)等からなる発光素子52A−1と、正反射光を受光する受光素子52A−2とから構成されている。発光素子52A−1は中間転写ベルト上に光を照射し、この照射光は中間転写ベルトによって反射される。受光素子52A−2は、この反射光のうちの正反射光を受光する。
【0017】
一方、図3(b)に示すように、カラートナー付着量検知センサ52Bは、発光ダイオード(LED)等からなる発光素子52B−1と、正反射光を受光する受光素子52B−2と、拡散反射光を受光する受光素子52B−3とから構成されている。発光素子52B−1は、黒トナー付着量検知センサの場合と同様、中間転写ベルト上に光を照射し、この照射光は、中間転写ベルト表面によって反射される。
正反射受光素子52B−2は、この反射光のうちの正反射光を受光し、拡散反射光受光素子52B−3は、反射光のうち拡散反射光を受光する。本実施形態では、発光素子として、発光される光のピーク波長が950nmであるGaAs赤外発光ダイオードを用いており、受光素子としては、ピーク受光感度が800nmであるSiフォトトランジスタなどを用いているが、ピーク波長およびピーク受光感度がこれと異なるものでも構わない。
また、黒トナー付着量検知センサ及びカラートナー付着量検知センサと、検知対象物である中間転写ベルトのベルト表面との間には、5mm程度の距離(検出距離)を設けて配設されている。本実施形態では、トナー付着量検知センサを中間転写ベルト近傍に設け、中間転写ベルト上のトナー付着量に基づいて作像条件を決定するが、感光体上や転写搬送ベルト上に配設されていても構わない。
トナー付着量センサからの出力は付着量変換アルゴリズムによって付着量に変換される。付着量変換アルゴリズムについては従来技術と同様であるため省略する。
【0018】
図4に現像装置42の概略図を示す。
現像装置42は、二本の現像ローラ54、56と、三本のスクリュ60、62、64とから構成されており、各現像ローラは像担持体とある一定の距離をとって対向配置されている。
現像装置は像担持体の一例であるドラム状の感光体に対向配置され、前記感光体は、図2に矢印で示したように図における反時計回り方向に回転駆動される。
現像装置の現像容器58内には磁性キャリアと磁性又は非磁性のトナーを有する粉体状の二成分系現像剤66が収容されている。また、現像容器内には各々現像剤撹拌手段である撹拌スクリュ60、供給スクリュ62、回収スクリュ64が現像ローラに対して平行に設けられている。
撹拌スクリュ60では、現像剤66は撹拌されながら図手前方向の端部まで移動し、図示しない開口部を通して供給スクリュ62へと搬送される。現像剤は供給スクリュ62により撹拌搬送されながら感光体40の回転方向における上流側の第一現像ローラ54と、下流側の第二現像ローラ56へ供給される。
【0019】
第一、第二現像ローラに供給された現像剤は、図示しないドクタブレードによってその高さを規制され、矢印D方向に回転している感光体40に接触し、潜像部分にトナーを付着させ、現像を行う。この現像剤中のトナー濃度が低下すると、図示しないトナー補給部からトナーが攪拌スクリュ上部にある図示しない開口部より現像容器内に補給され、撹拌スクリュによって撹拌される。
多段現像方式の現像装置における各現像ローラは図示しない導電性の部材によって導通がとられており、各現像ローラに印加する現像バイアスを等しくしている構成が多い(例えば、特許文献3)が、本実施形態においてはそれぞれの現像ローラは互いに導通がとられておらず、それぞれに異なる電圧を印加できる構成としている。
なお、本実施形態では二本の現像ローラが感光体と同方向に回転する順二段現像方式を用いているが、本発明はこの方式に限らない。また、現像剤に二成分系現像剤を用いているが、これに限らない。
【0020】
図5に、感光体の回転振れによる濃度むらの一例を示す。
本発明者らは、副走査方向の濃度むらが感光体回転に起因していることを確認するために、図1に示す画像形成装置を用いて、図6に示すような副走査方向に細長く一様な濃度である帯状パターンを作像し、濃度センサとしてのトナー付着量検知センサ52で帯状パターンを測定した。
帯状パターンの副走査方向長さは、感光体周長よりも十分長くしている。本実験で用いた感光体径はφ100mm、プロセス線速は440mm/s、帯電、現像、LDパワーをそれぞれ-700V、-500V、70%とし、シアン100%の帯状パターンを作像している。
図5(a)は、濃度センサの拡散反射出力を示している。図5(a)より、パターン部に濃度変動が発生していることが確認できる。図5(b)は図5(a)のパターン部の濃度センサ出力を感光体回転位置検出信号を基準として感光体周期で切り出し、感光体5周分を平均化したグラフである。
図5(b)をみると、感光体周期で周期的な変動が発生していることが確認できる。濃度センサ出力の変動は、トナー付着量の変動を意味するため、感光体周期で画像濃度の変動が発生していることがよくわかる。
【0021】
図7は従来の感光体の回転振れによる濃度むら補正方法を説明する図である。まず、濃度むら補正の必要があるかを判断する。これは、感光体交換や、何らかの理由で感光体検出位置がずれたりした場合や、ユーザーモードによって選択できるようになっている。
濃度むら補正の必要があると判断された場合、帯状のパターンを作成し、濃度むらを検出する。この場合の検出手段は、濃度センサでも良いし、紙上の濃度でも構わない。検出した濃度むらデータは感光体周期で平均処理され、この濃度むらを除去するように位相と振幅が調整され、現像バイアスにフィードバックされる。フィードバックされる現像バイアスは、感光体の位置を基準として現像ローラとの位相関係を考慮して周期的に印加される。
以上のように、感光体周期で現像バイアスを補正することで感光体の回転振れによる濃度偏差を低減することができる。しかしながら、この方法を多段現像装置に適用した場合、狙った補正効果が得られない。
【0022】
図8は従来の濃度むら補正技術の構成図である。
濃度むらデータ記憶手段には、特定の画像形成条件下における基準となる濃度むらデータが記憶されている。本実施形態における濃度むらデータは、予め本発明の画像形成装置により形成された画像を、濃度センサで検出したデータである。
具体的には、感光体5周分を含むパッチを濃度センサで読取ったデータが保存されている。なお、上記濃度むらデータ記憶手段の濃度むらデータとして、出力された紙上の濃度を光学的に測定する構成であっても構わない。
CPUは、上記記憶手段の濃度むらデータを現像バイアス用に対応させて補正データに変換する。補正データは、感光体回転位置検出信号に同期して、D/A変換器によりアナログ信号に変換され、現像バイアス高圧電源により、第一、第二現像ローラに補正バイアスが印加され、出力画像の制御を行う。
このとき、第一、第二現像ローラには同じ位相の電圧が印加される。
【0023】
図9は、図7および図8に示した従来の濃度むら補正方法を、図1に示す画像形成装置に適用した結果である。濃度むら補正を行うことによって感光体周期の変動は多少低減できてはいるが、図中楕円で囲った部分をみると、本来濃度むらが無かった場所に濃度むらが発生していることが確認できる。
この濃度むらは、図中円で囲った山を補正するために現像バイアスを変化させた影響と考えられる。図中円と楕円の位置間の時間を測定した結果、二段ローラ間の通過時間と一致した。
【0024】
この現象を、図10、図11を用いて説明する。
図11は、図9において発生した濃度むらの発生過程を説明する図である。
まず、図11中に線L1で示した感光体振れによる濃度むらデータに基づいて、濃度むら補正用現像バイアス信号を作成する。作成した補正用現像バイアスは、図10に示すように、現像バイアス高圧電源70により各現像ローラに等しく印加される(図11中の線L2)。この補正用現像バイアスは、基本的には感光体の回転振れと逆位相である。
感光体の回転振れと補正開始位置を第一現像ローラ(X部)に合わせた場合、X通過後の付着量は補正用現像バイアスによってほぼ均一な状態となる。しかしながら、第二現像ローラ通過時(Y部)においては、感光体の振れの位相と第二現像ローラの位相が異なるため、逆に第二現像ローラによって濃度むらを作り出してしまう(図11中の線L3)。
これは、感光体の回転振れと補正開始位置を第二現像ローラに合わせた場合も、同様の問題が発生する。
以上のように、本発明者らの実験によると、多段現像装置に従来の濃度むら補正方法を適用した場合、狙いの補正効果が得られないことが明らかになった。
【0025】
図12に、本実施形態における電圧制御手段および濃度むら補正方法の構成を示す。
電圧制御手段72は、CPU、DA変換器、現像バイアス高圧電源70、遅延回路74から構成されており、濃度センサ検出信号および感光体回転位置検出信号のデータから濃度むら補正用信号を作成し、感光体回転位置検出信号に基づいて、多段現像方式の現像ローラに印加する現像バイアスを制御する。
濃度むらデータおよび濃度むら補正用データは、記憶手段としての濃度むらデータ記憶手段76に逐次保存される。
本実施形態においては、現像バイアス高圧電源70と下流側の現像ローラ56との間に遅延回路74を設けている。すなわち、CPUで生成した補正用データはDA変換器、現像バイアス高圧電源を介して各現像ローラに同一タイミングで印加されるが、第二現像ローラに印加される補正用現像バイアスは、第一現像ローラに印加される補正用現像バイアスよりも位相を遅らせている。
本実施形態における遅延回路74は簡単なRC回路によって実現しており、感光体上のある一点が各現像ローラ間を通過する時間だけ、位相が遅れるように調整しているが、本発明はこれに限らず、位相を遅らせることができればどんな構成でも構わない。
【0026】
図13は図12に示した濃度むら補正方法を、図1の画像形成装置に適用した場合の実験結果である。補正後の結果をみると、図9で確認された二段現像ローラの影響は無くなり、感光体振れによる濃度むらもほぼ濃度が均一となっていることが確認できる。
以上のように、本発明における濃度むら補正方法は、多段現像方式における現像装置で構成される画像形成装置に対しても効果的に補正できることが証明された。
【0027】
図14に基づいて第2の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する(以下の他の実施形態において同じ)。
本実施形態においては、現像バイアス高圧電源70を、第一現像ローラに対応した現像バイアス高圧電源70Aと、第二現像ローラに対応した現像バイアス高圧電源70Bとに分け、遅延回路74をDA変換器と現像バイアス高圧電源70Aとの間に設けたことが特徴となっている。
この構成にすることで、遅延回路内の各部品を高圧対応にすることなく、本発明の効果を得ることが可能となる。また、遅延回路74を現像バイアス高圧電源70と同一の基板上に配置することが可能となるため、スペース面でも有利となる。
本実施形態における補正効果は、第1の実施形態による補正効果と同等である。
【0028】
図15に基づいて第3の実施形態を説明する。
本実施形態においては、CPU内で補正データ1と補正データ2の2種類の補正データを生成し、各現像ローラに対して位相の異なる現像バイアスを印加させることが特徴となっている。
補正データ1と、補正データ2の位相差は、第一現像ローラと第二現像ローラ間の感光体移動時間と等しい。
このような構成にすることによって、第1の実施形態において懸念される各部品のばらつきによる位相ばらつきの影響を吸収することができる。
本実施形態における補正効果についても、第1の実施形態による補正効果と同等である。
【符号の説明】
【0029】
38 露光手段としての光書込ユニット
40 像担持体としての感光体
42 現像手段と現像装置
52 濃度むら検出手段としてのトナー付着量検知センサ
54、56 現像ローラ
70 高圧電源
72 電圧制御手段
74 遅延回路
76 記憶手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開平9−62042号公報
【特許文献2】特開2000−098675号公報
【特許文献3】特許第2790988号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体に潜像を形成する露光手段と、
前記像担持体の回転位置を検出する回転位置検出手段と、
複数の現像ローラを備え、前記像担持体上の潜像を可視像化する現像手段と、
少なくとも前記像担持体1周分の周期的な濃度むらを検出する濃度むら検出手段と、
前記濃度むら検出手段により検出された濃度むらを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された濃度むらの検出データに基づいて、前記現像手段における各現像ローラに印加する電圧を制御する電圧制御手段と、を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記電圧制御手段は、前記現像手段の各現像ローラに印加する電圧の位相をそれぞれ異ならせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置において、
前記電圧制御手段は、前記像担持体の回転周期と前記各現像ローラに印加する電圧の周期とが、前記各現像ローラにおいて一致するように各現像ローラに印加する電圧の位相を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記電圧制御手段は、前記各現像ローラのうち前記像担持体の回転方向下流側に位置する現像ローラほど、印加する電圧の位相が遅れるように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記電圧制御手段は、遅延回路を備え、前記各現像ローラのうち前記像担持体の回転方向上流側に位置する現像ローラに印加する電圧に比べて下流側の現像ローラに印加する電圧の位相を、前記遅延回路を介して遅らせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記遅延回路は、電圧を印加するための高圧電源と、前記像担持体の回転方向下流側に位置する現像ローラとの間に配置したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記電圧制御手段は、前記回転位置検出手段の検出結果に同期して制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記現像手段における複数の現像ローラは互いに導通していないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体に潜像を形成する露光手段と、
前記像担持体の回転位置を検出する回転位置検出手段と、
複数の現像ローラを備え、前記像担持体上の潜像を可視像化する現像手段と、
少なくとも前記像担持体1周分の周期的な濃度むらを検出する濃度むら検出手段と、
前記濃度むら検出手段により検出された濃度むらを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された濃度むらの検出データに基づいて、前記現像手段における各現像ローラに印加する電圧を制御する電圧制御手段と、を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記電圧制御手段は、前記現像手段の各現像ローラに印加する電圧の位相をそれぞれ異ならせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置において、
前記電圧制御手段は、前記像担持体の回転周期と前記各現像ローラに印加する電圧の周期とが、前記各現像ローラにおいて一致するように各現像ローラに印加する電圧の位相を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記電圧制御手段は、前記各現像ローラのうち前記像担持体の回転方向下流側に位置する現像ローラほど、印加する電圧の位相が遅れるように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記電圧制御手段は、遅延回路を備え、前記各現像ローラのうち前記像担持体の回転方向上流側に位置する現像ローラに印加する電圧に比べて下流側の現像ローラに印加する電圧の位相を、前記遅延回路を介して遅らせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記遅延回路は、電圧を印加するための高圧電源と、前記像担持体の回転方向下流側に位置する現像ローラとの間に配置したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記電圧制御手段は、前記回転位置検出手段の検出結果に同期して制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記現像手段における複数の現像ローラは互いに導通していないことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−211937(P2012−211937A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76200(P2011−76200)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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