説明

画像形成装置

【課題】ドラムと中間転写体のクリーニングブレードの両方に、端部を高硬度処理したブレードを使用する画像形成装置において、ドラムブレードの未処理領域の幅P<中間転写体ブレードの未処理領域の幅Qとする。
【解決手段】ブレードのめくれを確実に防止するために、ブレード両端部にイソシアネート処理を施して硬度が高くした場合に、感光ドラムへの当接時に処理部と未処理部の境界部の段差により、その部分から微量のトナーすり抜けが生じる。これが、紙間や空回転時などに感光体上のブレードから少量ずつすり抜けたトナーが中間転写体上に蓄積し、その後記録材上に転移することで、画像不良として顕在化することがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、FAX等の画像形成装置であって、特に、クリーニングブレードを用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、残留トナー等を清掃するクリーニング手段として、ウレタンゴムなどの弾性材料からなるクリーニングブレードが広く実用化されている。
【0003】
クリーニングブレードのゴム材料としては、高硬度でしかも弾性に富み、耐磨耗性、機械的強度、耐油性、耐オゾン性、に卓越しているウレタンゴム等のゴム材料が一般的に使われている。
【0004】
像担持体とブレードの間の滑り性は主にトナーやトナーに含まれる外添剤によって維持されているが、像担持体両端部に到達するトナー量は中央部に比べて著しく少ない。そのため、クリーニングブレードの滑り性が維持されず、長手方向端部を起点としてクリーニングブレードがめくれてしまう現象(以下、ブレードめくれ)が発生しやすい。
【0005】
近年、そのブレードめくれを防止する方法として、クリーニングブレードを形成するゴム材料の長手全域にイソシアネート化合物を含浸させて処理したクリーニングブレードや、クリーニングブレードの長手方向端部にイソシアネートを塗布して、長手方向端部のゴム硬度を高めて、像担持体との摩擦係数を下げ、端部からのブレードめくれを低減する発明が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−63993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、クリーニングブレードの長手方向の両端部に硬度を高める処理を施した部分を形成すると、処理した部分(以下、硬度処理部)の膨潤により、クリーニングブレードの像担持体への当接時に硬度処理部と処理していない未処理部との境界である、硬度処理部の内側端部で段差が生じ、その段差からトナーすり抜けが起こることがある。
【0008】
さらに、中間転写体を用いる画像形成装置では、像担持体上のクリーニングブレードからすり抜けたトナーが中間転写体上に転移して堆積し、その後、記録材上に転移して、画像不良を引き起こす恐れがある。
【0009】
そこで、本発明は、長手方向端部を起点としてブレードめくれが発生するのを抑制すると共に、像担持体上のクリーニングブレードをすり抜けたトナーが、中間転写体上に堆積し記録材に転移して画像不良となるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の構成を特徴とし、これにより上記の課題を解決する。即ち、静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体上の静電潜像をトナー像とする現像手段と、前記像担持体に当接して前記像担持体上に残留する残留トナーを除去する第一のブレード部材であって硬度が高くなるように処理された第一硬度処理部を前記像担持体に当接する側の長手方向の端部に備える第一のブレード部材と、前記像担持体からトナー像を転写されて担持する中間転写体と、前記像担持体上のトナー像を前記中間転写体に一次転写領域で一次転写する一次転写手段と、前記中間転写体に当接して前記中間転写体上に残留する残留トナーを除去する第二のブレード部材であって硬度が高くなるように処理された第二硬度処理部を前記中間転写体に当接する側の長手方向の端部に備える第二のブレード部材と、を有する画像形成装置であって、長手方向において、前記第一、第二硬度処理部の内側端部は重ならずに、前記第一硬度処理部の内側端部よりも前記第二硬度処理部の内側端部が外側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
クリーニングブレードにおける長手方向端部のブレードめくれが発生するのを抑制すると共に、像担持体上の高硬度化処理されたブレードをすり抜けたトナーが、中間転写体上に堆積し、さらに記録材に転移して画像不良となるのを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1に係るドラムブレードと中間転写体ブレードの硬度処理部の長手幅の関係を示した図である。
【図2】実施例1に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図3】実施例1に係る硬度処理されたブレードの図である。
【図4】実施例1に係るブレードを図3のZ方向から見た図である。
【図5】実施例1に係るブレードを図3のX方向から見た図である。
【図6】実施例1に係るブレードと他の構成要素との長手幅の関係を示した図である。
【図7】中間転写体ブレードとドラムブレードからのすり抜けトナーを説明する図である。
【図8】実施例2に係る各画像形成ユニットにおけるクリーニングブレードと中間転写体ブレードの長手方向の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る構成を図面に基づき説明する。
【実施例1】
【0014】
図2は本実施例の画像形成装置の概略構成を示した図である。
【0015】
画像形成が開始されると、移動光学系が動作して記録材の原稿面が光学走査(スキャン)される。これにより、原稿面の画像情報が撮像素子(CCD)により電気的画像信号として光電読み取りされ、コントローラ100に入力される。制御手段であるコントローラ(CPU)100は、入力された画像情報の信号をイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの色成分に分解し、その入力された各色の画像情報の信号に基づいて、各色の画像形成プロセス手段を備える画像形成ユニット(PY、PM、PC、PBk)の画像形成動作を制御プログラムや参照テーブルに従って制御する。
【0016】
各色の画像形成ユニットにおける、像担持体である感光ドラム(1Y、1M、1C、1Bk)への画像形成動作について、イエローの画像形成ユニットPYを用いて説明する。以下、各色の構成は略同じであるので、イエローの画像形成ユニットPYは画像形成ユニットP、イエローの感光ドラム1Yは感光ドラム1と総称することとする。
【0017】
トナー像を形成され、回転可能な像担持体である感光ドラム1は、矢印の方向に所定の回転速度(プロセススピード)にて回転駆動される。
【0018】
感光ドラム1は、表面が帯電手段としての一次帯電手段である一次帯電ローラ2により所定の極性・電位に一様に帯電される。この一次帯電ローラ2は感光ドラム1の回転に従動して回転する接触型の帯電ローラである。
【0019】
この一次帯電ローラ2に対して帯電バイアス印加電源(不図示)から所定の一次帯電バイアスが印加される。本実施例においては、帯電バイアスはACバイアスとDCバイアスとの重畳バイアスである。
【0020】
感光ドラム1の帯電された表面に、露光手段としてのレーザースキャナ3による画像露光がされ、静電潜像が形成される。レーザースキャナ3はコントローラ100から入力された画像情報の信号に対応して変調したレーザー光を出力して感光ドラムの表面を走査露光する。
【0021】
感光ドラム1の回転方向(副走査方向)に直交する方向(ドラム長手方向)が主走査方向であり、感光ドラム1の回転方向が副走査方向である。この走査露光により、感光ドラム面に、読み取りされた原稿画像に対応した静電潜像(潜像パターン)が形成される。
【0022】
その静電潜像は現像手段としての現像器4によりトナー像として現像される。現像器4はトナー(現像剤)を担持して感光ドラム1の静電潜像へとトナーを供給し現像する現像剤担持体としての現像ローラ5(現像スリーブ)であり、駆動手段(モータ:不図示)により矢印の反時計方向に回転駆動される。また、現像バイアス印加電源(不図示)から所定の現像バイアスが印加される。
【0023】
そして、感光ドラム1に形成されたトナー像が、感光ドラム1と一次転写手段としての一次転写ローラ52との対向部である一次転写部T1において、一次転写バイアスを印加され、中間転写体54へと転写される。中間転写体54に転写されたトナー像は2次転写部T2に向かって搬送される。
【0024】
一方、一次転写部T1を通過した後に転写されずに感光ドラム1に残留した残留トナーは、ドラムクリーニング手段7に設けられたドラムブレード8で感光ドラム表面上から掻き取られる。掻き取られた残留トナーは、トナー収容容器に回収される。
【0025】
以上の画像形成動作が、マゼンタの画像形成ユニットPM、シアンの画像形成ユニットPC、ブラックの画像形成ユニットについてもおこなわれ、各色の色成分トナー像が順次中間転写体54上に重ねられていく。
【0026】
中間転写体上に重ねられたトナー像は、ポスト帯電器55から所定の電荷を付与された後、二次転写部T2に搬送される。
【0027】
この二次転写部T2において、給紙部9から給送された記録媒体である記録材に中間転写体上のトナー像が転写される。本実施例において、中間転写体54と二次転写ローラ53とのニップ部が二次転写部T2である。二次転写ローラ53に対して転写バイアス印加電源(不図示)からトナーの帯電極性とは逆極性で所定電位の転写バイアスが印加される。これにより、二次転写部T2を挟持搬送される記録材の面に対して中間転写体上のトナー像が転写される。
【0028】
記録材は給紙カセット9に積載されて収容されており、所定の制御タイミングで駆動される給紙ローラ61により1枚分離給送され、記録材搬送路を通ってレジストローラ62に至る。
【0029】
二次転写部T2を通過した記録材は、その後記録材搬送路63を通って定着手段である定着器70の定着ニップ部で挟持搬送される。これにより、記録材上の未定着トナー像が記録材面に固着画像として定着される。そして、記録材は定着器70を出て排紙ローラ64により排紙トレイ10に排出される。
【0030】
また、中間転写体クリーニング装置56により、中間転写体上の残留トナーや紙粉等がクリーニングされる。中間転写体クリーニング装置56は中間転写体54に当接し中間転写体上の残留トナーや紙粉等を除去する中間転写体ブレード57を備えている。
【0031】
ここで、第一のブレード部材であるドラムブレード8、第二のブレード部材である中間転写体ブレード57はウレタンゴム等のゴム材料から成る弾性ブレードである。中間転写体ブレード57を例にして説明する。中間転写体ブレード57は中間転写体54の長手方向に沿って、かつ中間転写体54の回転方向に対してカウンター方向に設けられ、中間転写体ブレード57の中間転写体へと当接する側のエッジ部分で、中間転写体54と所定領域で当接したニップ部(クリーニング部)を形成している。中間転写体表面は、中間転写体ブレード57によりクリーニングされて残留トナーや紙粉等の残留物が除去される。除去された残留トナー等はその後クリーニング容器56へと回収される。
【0032】
(ブレードの成型)
ここで本実施形の第一のブレード部材であるドラムブレード8、第二のブレード部材である中間転写体ブレード57を構成するブレードの製造方法について、ドラムブレード8を例にして説明する。本実施例におけるドラムブレード8は、ゴム部材からなり、ポリイソシアネート化合物と多官能性の活性水素化合物から製造される。
【0033】
本実施例で用いるポリイソシアネート化合物としては、通常のポリイソシアネートと多官能の活性水素化合物である高分子ポリオールとを反応して得られるプレポリマーやセミプレポリマーを用いることが好ましい。
【0034】
プレポリマーやセミプレポリマーのイソシアネート基含有量(NCO%)としては、良好な弾性特性を実現するために、5〜20質量%が好ましい。なお、イソシアネート基含有量(NCO%)とは、ポリウレタン樹脂の原料であるプレポリマー又はセミプレポリマー中に含まれるイソシアネート官能基(NCO、分子量は42として計算する)の質量%である。
【0035】
プレポリマーやセミプレポリマー等を調製するために通常用いるポリイソシアネートの具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等を挙げることができる。また、プレポリマーやセミプレポリマー等を調製するための活性水素化合物である高分子ポリオールの具体例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、カプロラクトンエステルポリオール、ポリカーボネートエステルポリオール、シリコーンポリオール等を挙げることができる。そして、これらの重量平均分子量は通常500〜5000が好ましい。
【0036】
また、架橋剤の具体例としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。
【0037】
なお、前記ポリイソシアネート化合物と高分子ポリオール、ポリイソシアネート及び架橋剤を反応させる際には、ポリウレタン樹脂の形成に用いられる通常の触媒を添加する場合もある。このような触媒の具体例としては、トリエチレンジアミン等が挙げられる。
【0038】
本実施形におけるポリウレタン樹脂で形成されたドラムブレード88の成形方法としては、高分子ポリオール、ポリイソシアネート、架橋剤及び触媒等を一度に混合して、金型に注型して成形する。その際に、支持部材20に直接ポリウレタン樹脂からなるドラムブレード8を成形し、感光ドラム1との当接部を精度よく作製する為、ポリウレタン樹脂で形成したドラムブレード8は先端部を切断して作製される。
【0039】
尚、別のドラムブレード8成型方法として、シート状のゴム材を成型した後、使用するサイズに切り取り、ゴム材の一部を支持部材20に接着剤で貼り付ける方法を使用しても良い。
【0040】
(硬度処理部の形成)
次に、上記で説明したようにして得られたポリウレタン樹脂で形成されたドラムブレード8に第一硬度処理部を形成する方法について説明する。尚、中間転写体ブレードの第二硬度処理部も同様の方法で形成される。
【0041】
第一硬度処理部の形成方法として、例えば、下記工程を有する方法を挙げることができる。
(1)ポリウレタン樹脂で形成されたドラムブレード8の感光ドラム当接部の長手方向両端部にイソシアネート化合物を接触させる工程、
(2)次に、イソシアネート化合物をドラムブレード表面に接触させた状態で、放置することによりイソシアネート化合物をドラムブレード8に含浸させる工程、
(3)含浸後、ドラムブレード8の表面に残留しているイソシアネート化合物を除去する工程、及び、
(4)ドラムブレード中に含浸したイソシアネート化合物を反応させることにより硬度処理部を形成する工程。
【0042】
すなわち、工程(1)及び(2)において、ポリウレタン樹脂で形成されたドラムブレードの感光ドラムへと当接する先端の長手方向の両端部にイソシアネート化合物を含浸させる。その後、工程(3)において余分なイソシアネート化合物をブレードの表面から取り除き、工程(4)において、イソシアネート化合物を反応させて硬度処理部を形成する。
【0043】
工程(4)においては、ブレード8を形成するポリウレタン樹脂とイソシアネート化合物とが反応してアロファネート結合を形成し、高硬度の硬度処理部が形成されると考えられる。硬度処理部は、ブレード8の長手方向の一端部と他端部にそれぞれ設けられる。
【0044】
ブレード8を形成するポリウレタン樹脂中には活性水素を有するウレタン結合が存在している。そして、工程(4)でこのウレタン結合と含浸されたイソシアネート化合物とが反応しアロファネート結合を形成することにより高硬度の硬度処理部が形成されると考えられる。
【0045】
また、イソシアネート化合物同士での反応による多量化反応(例えば、カルボジイミド化反応、イソシアヌレート化反応など)も同時に進行し、硬度処理部の形成に寄与するものと考えられる。この結果、硬度処理部の硬さは向上し、感光ドラムとの摩擦係数が低下し、ドラムブレード8の耐久性を向上させ、ブレードめくれを低減することができるものと考えられる。特に、像担持体とブレードの間の滑り性は主にトナーやトナーに含まれる外添剤によって維持されているが、像担持体両端部に到達するトナー量は中央部に比べて著しく少ない。そのため、クリーニングブレードの滑り性が維持されず、長手方向端部を起点としてクリーニングブレードがめくれてしまう現象(以下、ブレードめくれ)が発生しやすい。
【0046】
ドラムブレード8に含浸させるイソシアネート化合物としては、分子中に1個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を用いることができる。分子中に1個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、オクタデシルイソシアネート(ODI)等の脂肪族モノイソシアネート、芳香族モノイソシアネート等を挙げることができる。
【0047】
また、ブレード8に含浸させる分子中に2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物として、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を用いることができる。
【0048】
本実施例においては、イソシアネート化合物の反応を促進するために、イソシアネート化合物に加え、触媒もポリウレタン樹脂に含浸させても良い。
【0049】
イソシアネート化合物のブレードへの含浸は、例えば、繊維質状の部材や多孔質の部材にイソシアネート化合物を含浸させ、ブレードに塗布する方法や、スプレーにより塗布する方法などによって行なうこともできる。
【0050】
以上のようにして、所定時間イソシアネート化合物をブレードに含浸させる。処理時間は画像形成装置や当接する部材により変更可能であるし、ドラムブレードと中間転写体ブレードで別々に最適な処理時間、処理幅としても良い。
【0051】
本実施例におけるブレードの処理領域の範囲とするためには、イソシアネート化合物とポリウレタン樹脂で形成されたブレードとの接触時間は5分以上とすることが好ましく、10分以上とすることが更に好ましい。
【0052】
ついで、工程(3)において、ブレード表面に残存するイソシアネート化合物を、イソシアネート化合物を溶解できる溶剤を用いて拭き取る。
【0053】
以上の工程を経た後、工程(4)において、含浸させたイソシアネート化合物は、反応してアロファネート結合を形成し、あるいは空気中の水分との反応によって殆どが消費されて白色不透明な高硬度な処理層が形成される。
【0054】
そして、図3に示す両端部の所定の領域が硬度処理されたドラムブレード8を得ることができる。ドラムブレードは、図4に示すようにイソシアネート化合物を含浸処理した部分がブレードの厚み方向であるY方向へ膨潤する。
【0055】
図4は本実施例のドラムブレード8の端部を拡大して長手方向に垂直上向き(図3に示すZ方向)から見た模式図である。図5は本実施例のドラムブレード8の端部を拡大して長手方向(図3に示すX方向)から見た模式図である。
【0056】
ポリウレタン樹脂から形成されたドラムブレードにイソシアネート化合物が含浸されることにより、ブレードの幅方向(Y方向)に膨潤が生じる。この膨潤幅Hは、ドラムブレードの未処理部のドラムに当接するエッジ部Eと、硬度処理部の感光ドラムに当接するエッジ部Eとの、ブレードの幅方向(Y方向)の距離である。
【0057】
ドラムブレード8の処理幅Lは、ドラムブレードの長手方向の一端からドラムに当接するエッジEの硬度処理部と硬度処理されていない未処理部との境界までの距離である。
【0058】
また、イソシアネート化合物を含浸させて硬度処理部を形成すると、硬度処理部の内側端部100は図4のようになる。即ち、膨潤幅が最大となる領域から、長手方向の内側に向かって膨潤幅が徐々に小さくなる領域が存在する。ここで、特に膨潤幅が最大となる領域の膨潤幅に対して90%から10%に膨潤幅が変化する領域を、硬度処理部と未処理部との境界とし、硬度処理部の長手方向における内側端部100とする。トナーのすり抜けは主にこの内側端部100の領域から発生する。
【0059】
(硬度処理部の位置関係)
次に、ドラムブレード8と中間転写体ブレード57のイソシアネート化合物を含浸させたそれぞれ第一、第二硬度処理部の内側端部100、101の位置関係について説明する。図1は、ドラムブレード8および中間転写体ブレード57の第一、第二硬度処理部の内側端部100、101の位置関係について示した図である。また、図6は、ドラムブレード8および中間転写体ブレード57、一次転写ローラ52等の構成要素の長手方向の関係を示した図である。
【0060】
まず、感光ドラム表面に画像形成可能な領域である画像形成領域Aがある。また、長手方向において画像形成領域Aを現像可能にするために、画像形成領域Aを覆う領域において、現像スリーブ5Yの表面に現像剤(トナー)を担持することができる現像剤担持領域(以下、トナーコート領域)Bがある。そして、トナーコート領域Bより長手方向の外側において、感光ドラム1にトナーが付着するのを防止するため、トナーコート領域Bよりも広い、帯電手段2によって帯電可能な帯電領域Cがある。
【0061】
しかし、トナーコート領域Bよりも広い帯電領域Cにも、トナーが僅かであるが付着する可能性があるので、帯電領域Cよりも広い範囲で長手方向の外側までドラムブレード8が設けられている。ここで、画像形成領域A、トナーコート領域B、帯電領域C、のそれぞれの端部を端部a、端部b、端部cとする。
【0062】
そして、ドラムブレード8の長手方向の両端部にはイソシアネート化合物を用いて含浸処理された硬度処理部Mが形成されている。また、画像を中間転写体表面へ転写するための一次転写ローラ5は、現像材コート幅を覆う長さで設けられている。一次転写ローラにより形成される一次転写領域は第一硬度処理部の内側端部よりも外側まで形成されており、ドラムブレードをすり抜けたトナーを中間転写ベルトへと転写できるようにしている。中間転写体上の画像を記録材に転写する二次転写ローラ53は記録材の最大通紙幅を覆う長さで設けられている。
【0063】
中間転写体上に残留した残留トナーを除去する中間転写体ブレード57は、二次転写ローラ53の幅を覆う長さを設けられている。ブレード57の長手方向の両端部にはイソシアネート化合物を用いた含浸した硬度処理部Mが施されている。また、一次転写領域、最大通紙領域、二次転写領域、ブレード57のそれぞれの端部を端部e、端部f、端部g、端部hとする。
【0064】
尚、ドラムブレード8および中間転写体ブレード57の使用時初期において、ブレードの未処理部と像担持体の間の摩擦力が増大することにより、ブレードがめくれる可能性がある。それを防止するために、ブレードの長手全域に予め潤滑剤を塗布している。
【0065】
また、本実施例ではイソシアネート処理をブレード端部に処理したが、高硬度処理部としてフッ素化合物等をブレード端部にコーティングさせても良い。ただし、イソシアネート処理に比べてコーティングの場合には剥れ易いために、イソシアネート処理のような含浸処理がより望ましい。
(クリーニングブレードの評価)
このブレードの評価には、キヤノン製の複合機を用いた。評価は比較的厳しい環境で行うために、ブレードめくれの評価を高温高湿環境(32.5℃、80%)、クリーニング性の評価を低温低湿環境(15℃、10%)でおこなった。今回の実施例および比較例の結果を表1に示す。
【0066】
本実施例では、中間転写体ブレード57もドラムブレード8と同様の方法で作成をおこない、ブレードの端部からのめくれを防止するために必要な硬度を確保するために、イソシアネート処理時間40分、膨潤幅Hが35μm、処理幅Lが8mmのクリーニングブレードを用いた。また、中間転写体ブレード57のイソシアネート処理をしていない未処理領域の幅をドラムブレード8の未処理領域の幅よりも長くして、ドラムブレードの第一硬度処理部の内側端部よりも中間転写体ブレードの第二硬度処理部の内側端部がより長手方向外側に形成されるようにしている。
【0067】
この条件の本実施例のブレードにおいては、ドラムブレード8、および中間転写体ブレード57で軽微なトナーすり抜けが発生していたが、図7に示すようにドラムブレード8からすり抜けたトナーは中間転写体ブレード57の未処理領域ですり抜ける度に除去されるため、耐久15万枚においても記録材上の画像不良として顕在化することはなかった。また、ドラムブレード8、中間転写体ブレード57、共に端部からのブレードめくれも発生せず、良好な結果を示した。
【0068】
さらに中間転写体は回転しながら長手方向にも往復移動をするため、中間転写体ブレード57の処理境界部からすり抜けた微少量のトナーは、何回か回転して中間転写体ブレードを通過する際、中間転写体ブレード57の処理境界部以外の領域によりほとんどの場合除去される。そのため、中間転写体上のトナースジも見られなかった。同様の実験を第一、第二硬度処理部の処理幅や処理時間を変えて、以下の3つの条件の比較例でも行った。その結果を以下の表1に示す。このことからもブレード端部の膨潤幅として35μm以上であることが望ましいことが分かる。
【0069】
[比較例1]
比較例1ではドラムブレード8と中間転写体ブレード57の未処理領域の幅を同じにした。即ち、ドラムブレード8、中間転写体ブレード57の第一、第二硬度処理部の内側端部100、101が長手方向で重なる位置にしてある。その他のイソシアネート処理時間、膨潤幅H、処理幅Lは実施例1と同じであり、実験条件についても同様の実験を行った。
【0070】
この条件において、ドラムブレード8、中間転写体ブレード57共にブレードめくれは発生しなかったが、ドラムブレード8から軽微にすり抜けたトナーが中間転写体上に堆積して、トナースジが形成されてしまい、記録材上に転写されて画像不良が起こった。
【0071】
[比較例2]
比較例2では、ドラムブレード8の未処理領域の幅を中間転写体ブレード57の未処理領域の幅よりも長くした。即ち、ドラムブレード8の第一硬度処理部の内側端部100を、中間転写体ブレード57の第二硬度処理部の内側端部101よりも、長手方向の外側に形成した。その他のイソシアネート処理時間、膨潤幅H、処理幅Lは実施例1と同じであり、実験条件についても同様の実験を行った。
【0072】
この条件において、ドラムブレード8、中間転写体ブレード57共にブレードめくれは発生しなかったが、ブレードめくれの前兆であるブレードの振動によるびびり音が発生した。おそらく、第二硬度処理部の領域に回収能力を超える量のドラムブレード8をすり抜けたトナーがきたためと考えられる。
【0073】
また、耐久後期において、ドラムブレード8から軽微にすり抜けたトナーが中間転写体ブレード57の第二硬度処理部の領域では回収しきれずに、中間転写体上にトナースジが形成されて、記録材上に転写されて画像不良が起こった。
【0074】
[比較例3]
比較例3では、中間転写体ブレード57の未処理領域の幅をドラムブレード8の未処理領域の幅と同じとし、さらに中間転写体ブレードのイソシアネート化合物による含浸処理度合いを弱めて膨潤幅を小さくした。その他は実施例1と同じであり、実験条件についても同様の実験を行った。
【0075】
この条件において、ドラムブレード8から軽微なトナーすり抜けが発生したが、ドラムブレード8からすり抜けたトナーは中間転写体ブレード57で除去され、すり抜けトナーによる画像不良は発生しなかった。これは中間転写体ブレードの含浸処理を弱めたために第二硬度処理部ではトナーすり抜けがほとんど起こらなかったためと考えられる。ただし、耐久初期の段階で中間転写体ブレード57のめくれが発生したため、そこで実験は終了した。
【0076】
【表1】

【実施例2】
【0077】
本実施例では、画像形成ユニットを複数有し、画像形成ユニットが中間転写体に複数並んで配置される画像形成装置において、各色の感光ドラムのクリーニングブレードのイソシアネート処理幅が異なり、結果としてクリーニングブレードの未処理領域の幅が異なることを特徴としている。即ち、それぞれの画像形成ユニットの第一硬度処理部の内側端部は、中間転写体の回転方向下流側にいくに従い長手方向の外側に形成されている。
【0078】
ここで、画像形成ユニットとしては、少なくとも像担持体である感光ドラムと、その感光ドラムに当接するクリーニングブレードとを備えて、トナー像を形成することができるユニットとする。
【0079】
本実施例における、画像形成ユニットであるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像形成ユニットのドラムブレード8Y、8M、8C、8K、および中間転写体ブレード57の未処理領域の幅の長手方向の関係を示した図である。図を見ても分かるとおり、本実施例では各色のドラムブレードの境界部をずらしており、こうすることで、ドラムブレードの境界部からすり抜けたトナーが中間転写体上で重ならないようにしている。
【0080】
らに、本実施例では下流の画像形成ユニットになる程ブレードの未処理領域の幅を長くしている。これは、上流の画像形成ユニットからすり抜けたトナーが、さらに下流において中間転写体上から画像形成ユニットの感光ドラムへと転写した場合に、中間転写体ブレードの未処理領域で除去できるようにしてクリーニング効果をより向上させるためである。
【0081】
各画像形成ユニット間の未処理領域の幅の長さをずらす場合、0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上ずらすと本発明の効果が得られやすい。
【0082】
本実施例を用いれば、各画像形成ユニットで微量なトナーのすり抜けが発生しても、そのすり抜け位置がずれるため、下流において中間転写体上から画像形成ユニットの感光ドラムへと転写した場合に、中間転写体ブレードの未処理領域で除去できる。
【符号の説明】
【0083】
1 感光ドラム
2 一次帯電器
4 現像器
5 現像スリーブ
8 ドラムブレード
20 支持部材
52 一次転写ローラ
53 二次転写ローラ
54 中間転写体
56 中間転写体クリーニング装置
57 中間転写体ブレード
T1 一次転写部
T2 二次転写部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体上の静電潜像をトナー像とする現像手段と、前記像担持体に当接して前記像担持体上に残留する残留トナーを除去する第一のブレード部材であって硬度が高くなるように処理された第一硬度処理部を前記像担持体に当接する側の長手方向の端部に備える第一のブレード部材と、前記像担持体からトナー像を転写されて担持する中間転写体と、前記像担持体上のトナー像を前記中間転写体に一次転写領域で一次転写する一次転写手段と、前記中間転写体に当接して前記中間転写体上に残留する残留トナーを除去する第二のブレード部材であって硬度が高くなるように処理された第二硬度処理部を前記中間転写体に当接する側の長手方向の端部に備える第二のブレード部材と、を有する画像形成装置であって、
長手方向において、前記第一、第二硬度処理部の内側端部は重ならずに、前記第一硬度処理部の内側端部よりも前記第二硬度処理部の内側端部が外側に位置することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
長手方向において、前記第一硬度処理部の内側端部は前記一次転写領域よりも内側で、かつ画像形成領域よりも外側に位置することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ブレード部材はゴム部材から成り、前記第一、第二硬度処理部は、前記ゴム部材にイソシアネート化合物を含浸して処理されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体と、前記像担持体に当接する前記第一のブレード部材と、を少なくとも備える画像形成ユニットを複数有し、長手方向において、複数の前記第一のブレード部材におけるそれぞれの前記第一硬度処理部の内側端部は重ならないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成ユニットが前記中間転写体に複数並んで配置され、複数の前記第一のブレード部材におけるそれぞれの前記第一硬度処理部の内側端部は、前記中間転写体の回転方向下流側にいくに従い長手方向の外側に形成されることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−252157(P2012−252157A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124583(P2011−124583)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】