説明

画像形成装置

【課題】既存の画像形成装置をその主要部を流用しつつ画像形成速度を高速化しようとする際に、装置に使用されるギアの噛み合い周波数が装置固有の共振周波数に近づくことによる振動を抑制しつつ部品管理上のコストと手間をなくすこと。
【解決手段】駆動軸61に取着される駆動ギア62は、ギア1とギア2からなり、従動軸63に支持される従動ギア64は、ギア3とギア4からなり、軸方向にスライド自在である。ギア1〜ギア4はピッチ円直径が同じであり、ギア1とギア3の歯数が同じ、ギア2とギア4の歯数が同じ、ギア1とギア2の歯数が異なる。従動ギア64の軸方向の位置を変えることにより、ギア1とギア3だけが噛合する第1状態と、ギア2とギア4だけが噛合する第2状態に切り替え可能である。高速化する際に、第1状態でギア噛み合い周波数が共振周波数に近づく場合には、第2状態への切り替えが実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源からの回転駆動力を駆動ギアから従動ギアを介して、画像形成に関与する被駆動回転体に伝達する駆動伝達機構を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置の分野では、例えばプリンタにおいてプリント速度をより高速化したものを開発する場合、既存のプリンタに備えられる感光体ドラムなどの主要部をそのまま流用して、感光体ドラムの回転速度を上げるなどの方法が実用化されている。この方法をとれば、部品の共用化と開発の容易化を図ることができる。
ところが、駆動モータからの回転駆動力を歯車伝達機構を介して感光体ドラムなどの被駆動回転体に伝達する駆動伝達機構もそのまま流用されることになるので、例えば歯車伝達機構の駆動ギアと従動ギアの噛み合い周波数がプリント速度の高速化に伴って高くなり、装置本体の共振周波数に近づく場合がある。
【0003】
ギアの噛み合い周波数が装置本体の共振周波数に近づくと、共振現象により、駆動伝達系を介して感光体ドラムなどに振動が伝わり、感光体ドラム上の形成画像の画質を低下させるおそれがある。
特許文献1には、駆動ギアに剛性部材や制振部材をネジで取り付け可能に構成し、プリント速度を高速化する場合には、駆動ギアに剛性部材や制振部材を取り付けて、ギアの固有振動数をずらして共振現象をなくそうとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−131457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、剛性部材や制振部材を駆動ギアとは別に製造して管理しなければならず、部品点数が増えて管理上のコストと手間が増えることになってしまう。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、共振による振動を抑制しつつ部品管理上のコストと手間をなくして、一定以上の形成画像の画質を維持できる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、駆動源からの回転駆動力を駆動ギアから従動ギアを介して、画像形成に関与する被駆動回転体に伝達する駆動伝達機構を有する画像形成装置であって、前記駆動ギアは、駆動軸の軸方向に並設された第1ギアと第2ギアが一体形成されてなり、前記従動ギアは、従動軸の軸方向に並設された第3ギアと第4ギアが一体形成されてなり、前記駆動ギアと前記従動ギアの少なくとも一方を軸方向への移動を伴う動作を行うことにより、第1ギアと第3ギアが噛合して第2ギアと第4ギアが噛合しない第1状態と、第2ギアと第4ギアが噛合して第1ギアと第3ギアが噛合しない第2状態を切り替え可能なように、第1ギア、第2ギア、第3ギア、第4ギアのピッチ円直径が設定され、駆動側である第1ギアの歯数Z1と第2ギアの歯数Z2とが異なっていることを特徴とする。
【0007】
また、第1ギアのピッチ円直径d1と第3ギアのピッチ円直径d3を加算した値αと、第2ギアのピッチ円直径d2と第4ギアのピッチ円直径d4を加算した値βとが同じであることを特徴とする。
また、第1ギアのピッチ円直径d1と第2ギアのピッチ円直径d2が同じであり、第3ギアのピッチ円直径d3と第4ギアのピッチ円直径d4が同じであることを特徴とする。
【0008】
ここで、第1ギアの歯数Z1と第3ギアの歯数Z3が同じであり、第2ギアの歯数Z2と第4ギアの歯数Z4が同じであり、かつ、第1ギアのピッチ円直径d1と第3ギアのピッチ円直径d3が同じであり、第2ギアのピッチ円直径d2と第4ギアのピッチ円直径d4が同じであることを特徴とする。
また、前記駆動ギアと従動ギアとして、同じ部材が兼用されていることを特徴とする。
【0009】
さらに、前記駆動ギアは、第1ギアが第2ギアに対して軸方向に一方の側に位置し、第2ギアが第1ギアに対して他方の側に位置するように前記駆動軸に支持され、前記従動ギアは、第4ギアが第3ギアに対して軸方向に前記一方の側と同じ側に位置し、第3ギアが第4ギアに対して前記他方の側と同じ側に位置するように前記従動軸に支持され、前記駆動ギアと従動ギアのうち、一方のギアが軸方向に固定され、他方のギアが軸方向に移動自在に支持され、前記移動自在に支持される方のギアが前記軸方向に移動されることにより、第1ギアと第3ギアが噛合し、第2ギアと第4ギアが噛合しない第1状態と、第2ギアと第4ギアが噛合し、第3ギアと第4ギアが噛合しない第2状態とが切り替え可能になっていることを特徴とする。
【0010】
また、前記駆動ギアと従動ギアが駆動軸と従動軸に対して挿抜可能であり、駆動軸から取り外された駆動ギアが、取り外される前の姿勢に対して軸方向に反転した姿勢で駆動軸に軸着可能であり、従動軸から取り外された従動ギアが、取り外される前の姿勢に対して軸方向に反転した姿勢で従動軸に軸着可能であることを特徴とする。
また、第1ギアのピッチ円直径d1と第4ギアのピッチ円直径d4が同じであり、第2ギアのピッチ円直径d2と第3ギアのピッチ円直径d3が同じであり、ピッチ円直径d1とd2が異なることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記駆動ギアと前記従動ギアは、一方のギアが軸方向に沿って移動自在であり、他方のギアが軸方向に固定されており、前記画像形成装置は、前記移動自在に支持されている一方のギアに対して軸方向への力を与えて当該一方のギアを移動させるアクチュエータと、前記アクチュエータを制御して、噛合するギアの組み合わせを第1状態から第2状態に遷移させる場合には、第2ギアと第4ギアが噛合する位置まで前記移動自在に支持されている一方のギアを移動させ、第2状態から第1状態に遷移させる場合には、第1ギアと第3ギアが噛合する位置まで前記一方のギアを移動させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、像担持回転体上に作像された静電潜像を、現像剤担持回転体上に担持された現像剤で現像して、前記像担持回転体上に現像剤像を形成する構成であり、前記被駆動回転体は、前記像担持回転体および前記現像剤担持回転体の少なくとも一方であることを特徴とする。
さらに、像担持回転体上に形成された現像剤像を、駆動ローラと従動ローラを含む複数のローラにより張架されたベルト上に転写する構成であり、前記被駆動回転体は、前記駆動ローラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように駆動ギアには、歯数の異なる第1ギアと第2ギアを設け、従動ギアには、第1ギアと噛み合う第3ギアと、第2ギアと噛み合う第4ギアを設けて、噛合させるギアの組み合わせを第1ギアと第3ギアが噛み合う第1状態と、第2ギアと第4ギアが噛み合う第2状態とに切り替え可能に構成することにより、装置を高速化しようとすると、例えば第1状態のときにギアの噛み合い周波数が装置本体の共振周波数に近くなるのであれば、第1状態から第2状態に切り替えることにより、第1ギアと第2ギアの歯数が異なるので、ギアの噛み合い周波数を第1状態のときよりも装置本体の共振周波数から遠ざけることが可能になり、従来のような剛性部材や制振部材などの他の部材を用いるといったことが不要になって、部品管理上のコストと手間を省きつつ、共振による振動を抑制して、形成画像の画質を一定以上に維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係るプリンタの全体の構成を示す図である。
【図2】駆動伝達機構の一部を示す図である。
【図3】装置固有の共振周波数とギアの噛み合い周波数の大小関係の例を示す図である。
【図4】駆動ギアと従動ギアのうち、噛合するギアの組み合わせを第1状態から第2状態に切り替えた後の様子を示す図である。
【図5】実施の形態2に係る駆動ギアと従動ギアの構成の例を示す図である。
【図6】実施の形態3に係る駆動ギアと従動ギアの駆動軸と従動軸への取り付け構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例にして説明する。
<実施の形態1>
〔1〕プリンタの全体構成
図1は、プリンタ100の全体の構成を示す図である。
【0016】
同図に示すように、プリンタ100は、周知の電子写真方式により画像を形成するものであり、画像プロセス部10と、中間転写部20と、給送部30と、定着部40と、制御部50を備え、ネットワーク(例えばLAN)に接続されて、外部の端末装置(不図示)からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)色からなるカラーの画像形成を実行する。
【0017】
画像プロセス部10は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部10Y、10M、10C、10Kを備えている。
作像部10Yは、感光体ドラム11と、その周囲に配設された帯電器12、露光部13、現像部14、一次転写ローラ15、感光体ドラム11を清掃するためのクリーナ16などを備えており、感光体ドラム11上にY色のトナー像を作像する。この構成は、他の作像部10M、10C、10Kについて同様であり、同図では符号を省略している。各感光体ドラム11上にその対応する色のトナー像が作像される。
【0018】
中間転写部20は、無端状の中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ22と従動ローラ23を備え、中間転写ベルト21は、駆動ローラ22の回転により同図の矢印方向に周回走行される。
給送部30は、給紙カセットから記録用のシートSを搬送路31に1枚ずつ繰り出す。
定着部40は、定着ローラと加圧ローラを備え、所定の定着温度でシートSを加熱、加圧してトナー像を定着させる。
【0019】
制御部50は、外部の端末装置からの画像信号をY〜K色用のデジタル信号に変換し、作像部10Y〜10K毎に、その露光部13を駆動させるための駆動信号を生成して、その駆動信号により露光部13を駆動させる。これにより各露光部13からレーザビームが出射され、感光体ドラム11が露光走査される。
この露光走査を受ける前に作像部10Y〜10K毎に、その感光体ドラム11が帯電器12により一様に帯電されており、レーザビームの露光により感光体ドラム11上に静電潜像が形成され、その静電潜像が現像部14に設けられた現像ローラ19に担持されている現像剤により現像されて、感光体ドラム11上にトナー像が形成される。
【0020】
各感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ15により中間転写ベルト21上に一次転写される。この際、各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト21上の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにタイミングをずらして実行される。
上記の作像動作のタイミングに合わせて、給送部30からは、タイミングローラ対34を介してシートSが給送されて来ており、そのシートSは、周回走行する中間転写ベルト21と二次転写ローラ35の間に挟まれて搬送され、中間転写ベルト21上の各色トナー像が二次転写ローラ35によりシートS上に二次転写される。
【0021】
二次転写が終了したシートSは、定着部40に搬送され、ここでトナー像が加熱、加圧されてシートSに定着された後、排出ローラ対38を介して排出され、収容トレイ39に収容される。
作像部10Y〜10Kの感光体ドラム11や現像ローラ19、中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ22などの各回転体は、駆動モータ32の回転駆動力が駆動ギアと従動ギアを含む駆動伝達機構を介して付与されることにより回転駆動される。
【0022】
〔2〕駆動伝達機構について
図2は、駆動伝達機構の一部を示す図であり、駆動モータ32からの回転駆動力が感光体ドラム11に至るまでの間の一部経路を示している。
同図に示すように、駆動伝達機構60は、駆動モータ32に連結される駆動軸61と、駆動軸61に支持される駆動ギア62と、駆動軸61と平行であり、感光体ドラム11に連結される従動軸63と、従動軸63に支持され、駆動ギア62と噛合する従動ギア64と、ギア変位機構65を備え、駆動モータ32の回転駆動力を駆動軸61、駆動ギア62、従動ギア64、従動軸63を介して感光体ドラム11に伝達する。
【0023】
なお、同図では歯車伝達機構における伝達経路の一部を示し、駆動軸61に駆動ギア62だけが取り付けられていることを示しているが、本実施の形態では別の駆動ギア(不図示)も取着されており、その別の駆動ギアから従動ギア(不図示)を介して感光体ドラム11以外の回転体に駆動力が伝達される構成になっている。なお、別の駆動ギアが取着されていない構成であっても構わない。以下、駆動軸61に平行な方向(従動軸63に平行な方向)を軸方向またはX方向、X´方向という場合がある。
【0024】
〔3〕駆動ギア62について
駆動ギア62は、樹脂製であり、軸方向に並設されるギア1と、ギア2と、これらを仕切る仕切り部8とが一体成形により形成されたものである。ここで、ギア1の歯数Z1は、ギア2の歯数Z2とは異なり、ギア1のピッチ円直径d1とギア2のピッチ円直径d2とは同じになっている。ギア1とギア2の軸方向における幅Wは、同じである。仕切り部8は、ギア1(ギア2)の歯先円直径よりもやや大きな径を有する円板状になっている。本実施の形態では、例えば歯数Z1=56、Z2=42、ギア1のモジュールm1=0.6、ギア2のモジュールm2=0.8になっている。
【0025】
駆動ギア62は、駆動軸61に軸方向に間隔をおいて取着された2つのストップリング68に軸方向両側から挟まれるようになっており、軸方向への自由な移動が制限される。なお、ストップリング68は、ここでは、駆動軸61に設けられた溝(不図示)に嵌め込まれることにより、駆動軸61に取着される構成になっている。以下、ストップリングを取り付けるという場合は、これと同じ意味で用いられる。
【0026】
〔4〕従動ギア64について
従動ギア64は、樹脂製であり、軸方向に並設されるギア3と、ギア4と、これらを連結する連結部9とが一体成形により形成されたものである。ここで、ギア3の歯数Z3は、ギア1の歯数Z1と同じであり、ギア4の歯数Z4は、ギア2の歯数Z2と同じであり、ギア3のピッチ円直径d3とギア4のピッチ円直径d4とは同じになっている。
【0027】
ギア3のピッチ円直径d3は、ギア1のピッチ円直径d1と同じであり、従って、ピッチ円直径d1=d2=d3=d4の関係を有している。また、ギア3とギア4の幅はWであり、ギア1とギア2の幅Wと同じである。さらに、連結部9の軸方向長さ(ギア3とギア4の軸方向間隔)W1は、駆動ギア62のギア2の幅Wと仕切り部8の幅を加算した値よりも大きく、ここでは(2×W)の大きさになっている。
【0028】
連結部9は、断面が円形であり、その径がピッチ円直径d3の約半分程度の大きさであり、仕切り部8の外周面に接触することがないように縮径されている。
本実施の形態では、例えば歯数Z3=56、Z4=42、ギア3のモジュールm3=0.6、ギア4のモジュールm4=0.8になっている。
従動ギア64は、その軸方向における幅の約1.5倍程度の大きさに相当する間隔をおいて従動軸63に取着された2つのストップリング69に軸方向両側から挟まれるようになっており、一方のストップリング69と他方のストップリング69の間を軸方向に沿って摺動自在に支持されている。
【0029】
〔5〕噛合するギアの組み合わせについて
このように駆動ギア62を軸方向への移動を制限しつつ、従動ギア64を軸方向への移動を自在に支持する構成をとることにより、駆動ギア62と従動ギア64における噛合するギアの組み合わせを切り替えることができる。
具体的には、駆動ギア62のギア1と従動ギア64のギア3が噛合するが、駆動ギア62のギア2と従動ギア64のギア4が噛合しない第1状態(図2に示す状態)と、駆動ギア62のギア2と従動ギア64のギア4が噛合するが、駆動ギア62のギア1と従動ギア64のギア3が噛合しない第2状態(後述の図4に示す状態)とを切り替えることが可能になる。
【0030】
第1状態と第2状態を切り替え可能に構成するのは、既存の装置の主要な部品を流用しつつ高速機を開発するに際して、駆動ギアと従動ギアの噛み合い周波数が装置固有の共振周波数に近づくことによる振動に起因する画質劣化を防止するためである。
具体的に図3を用いて説明する。図3は、装置固有の共振周波数とギアの噛み合い周波数の大小関係の例を示すグラフである。同図では、装置本体の固有の共振周波数をf1、f2、既存の装置(低速機)において駆動軸の回転数を低速V1として、ギア1とギア3が噛合する第1状態にした場合の噛み合い周波数をf56L、ギア2とギア4が噛合する第2状態にした場合の噛み合い周波数をf42Lで示している。また、当該装置は、共振周波数f2の方がf1よりも振幅が大きくなる装置の例になっている。
【0031】
同図に示すように、噛み合い周波数f42Lとf56Lの両方が共振周波数f1よりも大きく、共振周波数f2よりも小さい範囲内に入っているが、噛み合い周波数f42Lが共振周波数f1に接近しているのに対し、噛み合い周波数f56Lは、共振周波数f1、f2の両方から離れていることが判る。
噛み合い周波数が共振周波数に近づくと、それだけ共振による振動の影響を受け易く、画質劣化に繋がり易いので、既存の装置(低速機)では、噛み合い周波数がf56Lになる第1状態(図2)が選択される。
【0032】
この既存の装置を高速化するに当たり、ギア伝達機構を含む主要部品をそのまま流用して、駆動モータの回転数をV1からV2(>V1)に上げる構成をとると、低速時における噛み合い周波数f42L、56Lが駆動モータの回転数が上がった分、周波数が高くなる方向にシフトし、同図の破線で示す噛み合い周波数f42H、f56Hに変わる。
このとき、噛み合い周波数f56Hは、共振周波数f2にかなり接近するが、噛み合い周波数f42Hは、噛み合い周波数f56Hよりも共振周波数f2から離れており、かつ共振周波数f1からの離れるようになる。
【0033】
従って、高速化した後の装置については、噛み合い周波数がf42Hになる第2状態に切り替えると、第1状態のままにするよりも共振による振動の影響を受け難くなり、画質劣化を抑制することが可能になる。
図4は、駆動ギア62と従動ギア64のうち、噛合するギアの組み合わせを第1状態から第2状態に切り替えた後の様子を示す図である。
【0034】
同図に示すように、駆動ギア62のギア2と従動ギア64のギア4が噛合して、駆動ギア62のギア1と従動ギア64のギア3が噛合しない第2状態になっており、歯数Zが共に42であるギア2とギア4が噛合している。従って、高速化により駆動モータの回転速度がV1からV2に切り替わった場合に、ギアの噛み合い周波数は、図3に示すf42Hになり、装置の共振周波数から離すことができることになる。
【0035】
〔6〕ギア変位機構65について
図2に戻り、ギア変位機構65は、ネジ送り機構からなり、従動ギア64を軸方向に移動(シフト)させて、噛合するギアの組み合わせを切り替えるものであり、変位モータ71と、変位モータ71の回転軸に連結される送りネジ72と、送りネジ72に螺合するナット部73と、ナット部73に設けられ、従動ギア64に当接するアーム74と、アーム74の軸方向における位置を検出するためのセンサー75、76を備える。
【0036】
変位モータ71は、制御部50からの変位信号により回転駆動し、送りネジ72は、軸方向に平行に配されており、変位モータ71の回転駆動により回転する。送りネジ72が回転すると、その回転方向と回転量に応じた分、ナット部73が軸方向に沿って直進移動する。ナット部73に一体的に設けられるアーム74は、軸方向に、従動ギア64のギア3とギア4の間に位置しており、ナット部73の軸方向の移動に伴って一緒に移動する。
【0037】
アーム74が矢印X方向に移動すると、アーム74の先端部がギア4の内側の側面に当接した状態で従動ギア64をX方向に移動させる。その逆の矢印X´方向にアーム74が移動すると、アーム74の先端部がギア3の内側の側面に当接した状態で従動ギア64をX´方向に移動させる。
〔7〕制御部50の制御について
制御部50は、噛み合うギアの組み合わせの状態を第1状態にする場合には、図2に示すように変位モータ71に、従動ギア64をX方向に移動させるための変位信号Aを送り、変位モータ71を回転させる。これにより、ナット部73がX方向に移動して、この移動に伴って従動ギア64がX方向に移動される。ナット部73がセンサー75に対向する位置まで移動すると、その対向位置においてセンサー75により検出され、センサー75から位置信号Aが制御部50に送られる。
【0038】
制御部50は、センサー75からの位置信号Aを受信すると、変位信号Aの送信を停止して、変位モータ71を停止させる。
一方、噛み合うギアの組み合わせの状態を第1状態から第2状態に切り替える場合には、図4に示すように変位モータ71に、従動ギア64をX´方向に移動させるための変位信号Bを送り、変位モータ71を回転させる。これにより、ナット部73がX´方向に移動して、この移動に伴って従動ギア64がX´方向に移動される。
【0039】
ナット部73がセンサー76に対向する位置まで移動すると、その対向位置においてセンサー76により検出され、センサー76から位置信号Bが制御部50に送られる。制御部50は、センサー76からの位置信号Bを受信すると、変位信号Bの送信を停止して、変位モータ71を停止させる。
なお、第1状態でも第2状態でも従動ギア64は、従動軸63に取着されているストップリング69とアーム74に挟まれることにより軸方向への自由な移動が制限される(噛合されているギア同士の噛合が解除されることがない)ようになっている。このような移動の制限を課させられるように、2つのストップリング69と69間における軸方向の間隔が設定されている。
【0040】
制御部50は、第1状態と第2状態の切り替えを操作者の指示により実行する。例えば、操作パネル(不図示)などの入力手段を介して切り替えの指示を受け付けると、その指示に対応する変位信号を変位モータ71に出力することにより切り替えを実行する。
例えば、プリンタ100を高速化する場合に、操作者が第1状態から第2状態への切り替えを入力手段から指示すると、制御部50がその指示を受け付けて、変位モータ71に変位信号Bを送信することにより、従動ギア64がX´方向に移動して(軸方向への移動を伴う動作が行われて)、ギア2とギア4が噛合し、ギア1とギア3が噛合しない第2状態に切り替わる。
【0041】
また、操作者の指示に限られず、例えば制御部50内のCPUやROM(不図示)が低速用のものから高速化用のプログラムが入ったものに取り替えられた場合や、制御部50内のCPUに高速化用のファームウエアが新たにインストールされた場合などに、装置の起動時にそのプログラムやファームウエアを読み出す際に高速化対応を示すフラグなどを読み出することにより高速化対応にアップする旨を判断して、ギア噛合の組み合わせを第1状態から第2状態に切り替えるとしても良い。
【0042】
なお、装置の高速化を行うには、実際には噛み合うギアの組み合わせを切り替える処理を行えば良いだけではなく、これ以外に、例えば駆動モータ32の回転を低速から高速駆動に切り替えるなどの他の処理も必要になるが、高速化を行うのに必要な処理自体は公知であるので、ここでは説明を省略する。
以上、説明したように本実施の形態では、ギア1とギア2からなる駆動ギア62と、ギア3とギア4からなる従動ギア64における噛合するギアの組み合わせを第1状態と第2状態に切り替え可能に構成しているので、既存の低速機を高速化するのに際し、第1状態のままであればギアの噛み合い周波数が装置固有の共振周波数に接近するような場合には、第2状態に切り替えることにより装置固有の共振周波数から遠ざけることができ、従来のように剛性部材や制振部材などの他の部材を用いなくても良くなって、部品管理上におけるコストと手間を不要としつつ、共振による振動に起因する画質劣化を防止して、一定以上の画質を維持することができる。
【0043】
また、第1状態でも第2状態でもギア比が1対1で同じになっているので、駆動軸61と従動軸63の回転速度が同じになる。駆動軸61には、感光体ドラム11とは別に、ギアの組み合わせを変更できない回転体(搬送ローラなど)も駆動ギア、従動ギアを介して連結されており、これら回転体は、駆動軸61の回転速度が低速から高速に切り替わった場合に、その速度差の分、速度が上がることになるが、感光体ドラム11も、これら回転体と同じ速度差の分だけ速度が上がることになる。
【0044】
従って、感光体ドラム11だけギア組み合わせを切り替えることにより、高速時に他の回転体と速度差が生じるといったことを防止することができる。
さらに、第1状態(低速時)において噛み合うギア1とギア3のモジュールが共に0.6で、第2状態(高速時)において噛み合うギア2とギア4のモジュールが共に0.8になっており、高速時の方が低速時よりもモジュールの値が大きくなるようにしている。
【0045】
一般に、モジュールの値が大きいとギアの歯元の厚みが厚くなって強度が増し、高速時の方が低速時よりもギア回転時にギアの歯にかかる負荷が大きくなることから、高速時に噛み合うギアであるギア2とギア4のモジュールを大きくとって強度を増すことにより、駆動力のギア伝達をより長期に亘って良好に行うことができる。
そして、歯数Zを低速側(ギア1とギア3)のモジュール(0.6)と高速側(ギア2とギア4)のモジュール(0.8)の倍数、ここでは70をとり、低速側では高速側のモジュール0.8に70を乗算した値の56歯、高速側では低速側のモジュール0.6に70を乗算した値の42歯としており、低速側と高速側のピッチ円直径d1〜d4が同じになるように設定することにより、低速から高速への切り替えに際し、駆動軸61と従動軸63の軸間距離を変える必要も生じない。
【0046】
なお、上記では低速から高速に切り替える場合の例を説明したが、例えば高速から低速機に変更する場合でも同様に、噛合するギアの組み合わせを第1状態から第2状態または第2状態から第1状態に切り替えることにより、プリント速度を変更するに際し、ギア噛み合い周波数を共振周波数から遠ざけることができるという効果を得られる。
なお、上記の図3では、装置本体の共振周波数が複数、ここでは2つのf1、f2を有する旨を説明したが、例えば1つの共振周波数f1を有する構成でもギアの噛み合いの組みを切り替えることにより上記と同様の効果を得られる。
【0047】
具体的には、ギア噛み合い周波数をより大きくした方がギアの噛み合い振動により画像に現れるピッチムラが小さくなるような装置構成の場合には、低速時において歯数の多い方のギア2と4の組み合わせが選択され、ギア2と4を噛合させたときに共振周波数f1と離れるように歯数が設定される。
高速化に伴い、ギア2と4を噛合させたままにすればギアの噛み合い周波数が共振周波数f1に接近する場合には、ギア2と4に代えて、ギア1と3を噛合させることにより、ギア2と4の組みよりもギアの噛み合い周波数を共振周波数f1から遠ざけることができる。なお、ギア1と3は、ギア2と4よりも歯数が少ないが、高速化により駆動軸61の回転数が上がっているため、その回転数の上昇分、ギア1と3の噛み合い周波数も低速時よりも上がっていることになり、ギア1と3を噛合させる場合でも低速時に比べると、ピッチムラの発生を抑制することができる。
【0048】
<実施の形態2>
上記実施の形態では、従動ギア64をネジ送り機構であるギア変位機構65を用いて自動的に軸方向における位置を変位させるとしたが、本実施の形態では、このようなギア変位機構が採用されておらず、この点が実施の形態1と異なっている。以下、説明の重複を避けるため、第1の実施の形態と同じ内容についてはその説明を省略し、同じ構成要素については、同符号を付すものとする。
【0049】
図5は、本実施の形態における駆動ギア80aと従動ギア80bの構成を示す図であり、(a)は低速時を、(b)は高速時をそれぞれ示している。
両図に示すように、駆動ギア80aは、軸方向に並設されるギア81と、ギア82と、これらを仕切る仕切り部88とが一体成形により形成されたものであり、実施の形態1における駆動ギア62と実質、同じものである。
【0050】
従動ギア80bは、軸方向に並設されるギア83と、ギア84と、これらを仕切る仕切り部89とが一体成形により形成されたものであり、駆動ギア80aと同じ部品であり、駆動ギア80aに対して軸方向に左右が反転したような状態で取着されている。
駆動ギア80aは、駆動軸61に軸方向に間隔をおいて取着された2つのストップリング68に軸方向両側から挟まれるようになっており、同様に従動ギア80bは、従動軸63に軸方向に間隔をおいて取着された2つのストップリング69に軸方向両側から挟まれるようになっており、それぞれが軸方向への自由な移動が制限される。
【0051】
なお、ギア81〜ギア84のそれぞれの歯数Z、ピッチ円直径d、モジュールmは、基本的に実施の形態1のものと同じである。
低速時では図5(a)に示すように、ギア81とギア83が噛合し、ギア82とギア84が噛合しない第1状態になる。第1状態から第2状態への切り替えは、本実施の形態では操作者の手動により実行される。
【0052】
すなわち、図5(a)に示す第1状態において、操作者がストップリング68、69を駆動軸61、従動軸63から取り外し、駆動ギア80aと従動ギア80bの一方と他方を順次、軸方向にずらすことにより、駆動ギア80aと従動ギア80bを駆動軸61と従動軸63から引き抜く。そして、駆動ギア80aと従動ギア80bのそれぞれを、引き抜いたときの姿勢に対して軸方向に反転させた姿勢に代えて、再度、駆動軸61と従動軸63に挿入した後、ストップリング68、69を駆動軸61、従動軸63に取り付ける操作を行うことにより、第2状態に切り替えることができる。
【0053】
図5(b)は、第2状態に切り替えた後の駆動ギア80aと従動ギア80bの姿勢を示しており、ギア82とギア84が噛合し、ギア81とギア83が噛合しない状態になっていることが判る。第1状態と第2状態において噛合すべきギアが噛合されるように、ストップリング68、69による駆動ギア80aと従動ギア80bの軸方向における位置が設定される。
【0054】
このように駆動ギア80aと従動ギア80bを軸方向への移動を伴う操作を行うことにより、噛合するギアの組み合わせを第1の状態と第2の状態を切り替えることができると共に、駆動ギア80aと従動ギア80bを同じ部品として製造することにより、部品を共用化して同じ部品(部材)を兼用すると共に、モータや送りネジ機構等が不要になって、歯車伝達機構の簡素化と共に低コスト化を図ることができる。
【0055】
また、駆動ギア80aと従動ギア80bを駆動軸61と従動軸63に対して挿抜可能にして、第1と第2の状態を切り替える際には、軸から取り外す前の姿勢に対して駆動ギア80aと従動ギア80bを、軸方向に左右反転した姿勢で軸着可能にすることにより、図5に示すように、低速時でも高速時でも駆動ギア80aと従動ギア80bの軸に対する位置が変わらず、ギア組み合わせの切り替えのために軸長を延長することが不要になる。
【0056】
<実施の形態3>
上記実施の形態2では、駆動ギア80aと従動ギア80bを駆動軸61と従動軸63から取り外すことにより第1状態と第2状態の切り替えを行うとしたが、本実施の形態では、駆動ギア80aだけを取り外し従動ギア80bを取り外さずに軸方向にスライドさせることにより切り替えを行うとしており、この点が実施の形態2と異なっている。
【0057】
図6は、本実施の形態における駆動ギア80aと従動ギア80bの駆動軸61と従動軸63への取り付け構成を示す図であり、(a)は低速時を、(b)は高速時をそれぞれ示している。
両図に示すように、駆動ギア80aと従動ギア80bは、実施の形態2における駆動ギアと従動ギアと同じものであり、駆動軸61も実施の形態2における駆動軸と同じものである。従動軸63には、ストップリング69を嵌め込むための3つの溝96a、96b、96cが軸方向に間隔をおいて設けられている。なお、図6(a)では、溝96a、96cにストップリング69が嵌め込まれているので、溝96a、96cが見えず、溝96bだけが示され、図6(b)では、溝96b、96cにストップリング69が嵌め込まれているので、溝96b、96cが見えず、溝96aだけが示されている。
【0058】
図6(a)に示すように、低速時では、溝96aと96cに嵌め込まれている2つのストップリング69に従動ギア80bが挟まれて軸方向への自由な移動が制限されるようになっており、ギア81とギア83が噛合し、ギア82とギア84が噛合しない第1状態になっている。
この第1状態において、操作者がストップリング68、69を駆動軸61、従動軸63から取り外し、駆動ギア80aと従動ギア80bをX´方向にずらすように移動させて、駆動ギア80aを駆動軸61から引き抜く。そして、1つのストップリング69を従動軸63の溝96bに嵌め込んで取着した後、従動ギア80bを手動でX方向に移動させて、溝96bに嵌め込まれたストップリング69に当たる位置で停止させる。
【0059】
そして、従動軸63の溝96cに残りのストップリング69を嵌め込んで取り着け、それから駆動ギア80aを駆動軸61から引き抜いたときと同じ姿勢のまま、再度、駆動軸61に挿入した後、2つのストップリング68を駆動軸61に取り着ける操作を行うことにより、第2状態に切り替えることができる。
図6(b)は、第2状態に切り替えた後の駆動ギア80aと従動ギア80bの姿勢を示しており、従動軸63の溝96b、96cに嵌め込まれた2つのストップリング69の間に従動ギア80bが挟まれるように配置され、ギア82とギア84が噛合し、ギア81とギア83が噛合しない状態になっていることが判る。
【0060】
第1状態と第2状態において噛合すべきギアが噛合されるように、ストップリング68、69による駆動ギア80aと従動ギア80bの軸方向における位置が設定される。
このように構成すれば、従動ギア80bを従動軸63から取り外さなくて済む分、操作者にとって第1状態と第2状態の切り替え操作を簡略化することが可能になる。
なお、上記では駆動ギア80aと従動ギア80bに、ギア81〜ギア84よりも大径の仕切り部88、89を設けているために、駆動ギア80aに対して従動ギア80bを軸方向に沿ってスライドさせようとすると歯先と仕切り部の周縁部とが当たってしまい、このため従動ギア80bをスライドさせることができないことから、駆動ギア80aを駆動軸61から取り外す必要が生じた。
【0061】
これに対して、例えば仕切り部88、89の径をギア81等と同じまで縮径する構成、または仕切り部88、89を設けない構成をとれば、駆動ギア80aに対して従動ギア80bを軸方向に従動軸63に沿ってスライド自在にすることができるので、駆動ギア80aを駆動軸61から取り外す必要がなくなり、より操作を簡略化することができる。
この構成をとれば、駆動ギア80aと従動ギア80bのうち、一方のギアを軸に固定し、他方のギアを軸に移動自在に支持して、移動自在に支持されている方のギアを軸方向に移動させることにより、噛合するギアの組み合わせを切り替える構成をとることもできる。また、図6の構成において実施の形態1のようにネジ送り機構を用いて従動ギア80bを軸方向にスライドさせることにより噛合するギアの組み合わせを第1状態と第2状態を切り替えることもできる。
【0062】
<変形例>
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態1では、駆動ギア62のギア1のピッチ円直径d1とギア2のピッチ円直径d2、従動ギア64のギア3のピッチ円直径d3とギア4のピッチ円直径d4が、d1=d2=d3=d4の関係を満たし、ギア1の歯数Z1とギア3の歯数Z3が、Z1=Z3(=56歯)、ギア2の歯数Z2とギア4の歯数Z4が、Z2=Z4(=42歯)の関係を満たし、ギア1のモジュールm1、ギア3のモジュールm3が、m1=m3(=0.6)、ギア2のモジュールm2、ギア4のモジュールm4が、m2=m4(=0.8)の関係を満たすとしたが、これらに限られることはない。
【0063】
ギア1とギア3が噛合し、ギア2とギア4が噛合しない第1状態において、駆動軸61の回転速度がVのときにおけるギア1とギア3の噛み合い周波数H1と、ギア2とギア4が噛合し、ギア1とギア3が噛合しない第2状態において、駆動軸61の回転速度が上記と同じ速度Vのときにおけるギア2とギア4の噛み合い周波数H2が異なるようにすれば、第1状態と第2状態のうち、低速時に一方の状態であり、高速に切り替える際にその一方の状態のままでは装置の共振周波数に近づく場合には、噛合するギアの組み合わせを他方の状態に切り替えることにより、装置の共振周波数から遠ざけることが可能になる。
【0064】
具体的な構成としては、歯数Z1とZ2が異なることを条件に、例えばピッチ円直径をd1=d2でありd3=d4かつd1<d3とする構成や、d1=d2でありd3=d4かつd1>d3とする構成をとることができる。この場合、噛合する同士のギアのモジュールを同じ値にすると、m=d/Zの関係から、歯数Z1と歯数Z3が異なり、歯数Z2と歯数Z4が異なり、ギア比が1にならないことになる。
【0065】
これとは別に、例えばd1=d4でありd2=d3かつd1<d2とする構成や、d1=d4でありd2=d3かつd1>d2とする構成をとることもできる。この場合、歯数Z1とZ4が同じであり、Z2とZ3を同じ構成とすることができる。
駆動ギア62と従動ギア64の少なくとも一方を、軸方向への移動を伴う動作により第1状態と第2状態を切り替え可能なように、ギア1〜ギア4のそれぞれのピッチ円直径d1〜d4と、ギア1とギア2の軸方向間隔と、ギア3とギア4の軸方向間隔が設定され、かつ、ギア1の歯数Z1がギア2の歯数Z2とは異なるようになっている。
【0066】
具体的には、歯数Z1とZ2が異なり、かつピッチ円直径d1とd3を加算した値αと、ピッチ円直径d2とd4を加算した値βとが同じであれば、駆動軸61と従動軸63の軸間距離を変えることなく、噛合するギアの組み合わせを第1状態と第2状態に切り替えることができる。なお、噛合するギア同士であるギア1とギア3の組、ギア2とギア4の組のそれぞれについて、ギアによる駆動力の伝達に支障のない範囲で装置構成に応じて、ピッチ円直径d、歯数Z、モジュールmの適した値が決められる。従って、仮に軸間距離が可変可能な構成の場合には、上記値αとβとが一致しない構成もあり得る。これらのことは、実施の形態2、3について同様である。
【0067】
また、モジュールは、高速側の方が低速側よりも大きくなる関係に設定されることが望ましいが、逆の関係になっても良い。
(2)上記実施の形態では、駆動モータ32の回転駆動力を、歯車を含む駆動伝達機構60を介して、画像形成に関与する被駆動回転体に伝える構成において、被駆動回転体を感光体ドラム11に適用した例を説明したが、これに限られることはない。被駆動回転体としては、共振に起因する振動により画質に影響を及ぼし易い回転体、例えば現像剤を担持して感光体ドラム11上の静電潜像をトナーで現像する現像ローラ19や、中間転写ベルト21を周回駆動させるための駆動ローラ22などに適用することができる。
【0068】
また、中間転写ベルト21を用いる構成ではなく、感光体ドラムに転写ローラを接触させて、両者間を記録シートが通過する際に、感光体ドラム上に形成されたトナー像を記録シートに転写する構成において、転写ローラが回転駆動される場合に当該転写ローラを被駆動回転体として適用することもできる。画像形成に関与する感光体ドラム、現像ローラ、駆動ローラ、転写ローラなどの複数の被駆動回転体がある場合に、これら複数の被駆動回転体の少なくとも1つに対して、上記の駆動ギアと従動ギアを適用することができる。
【0069】
(3)上記実施の形態1では、従動ギア64を軸方向にスライド可変可能な変位機構として、ネジ送り機構を用いた例を説明したが、これに限られない。移動可能に支持される従動ギア64に軸方向の力を与えて従動ギア64を軸方向に移動させるアクチュエータを有する変位機構であれば良い。例えば、ソレノイドのプランジャーや直動モータの軸を進退させることにより従動ギア64を変位させる機構などを用いることもできる。
【0070】
また、上記実施の形態1では、駆動ギア62を駆動軸61に軸方向に移動しないように取着(固定)し、従動ギア64を従動軸63に対して軸方向に沿って摺動自在に支持するとしたが、これに限られない。噛合するギアの組み合わせを第1状態と第2状態に切り替えることができるように、駆動ギア62と従動ギア64を軸方向に沿って相対移動可能(少なくとも一方のギアを移動可能)に構成すれば良い。例えば、上記の固定側と移動側の関係を逆にする構成、すなわち駆動ギア62を移動側、従動ギア64を固定側にする構成をとるとしても良い。
【0071】
(4)上記実施の形態では、本発明に係る画像形成装置をタンデム型カラーデジタルプリンタに適用した場合の例を説明したが、これに限られない。カラーやモノクロの画像形成に関わらず、モータなどの駆動源からの回転駆動力を駆動ギアからこれに噛合する従動ギアを介して、感光体ドラムや中間転写ベルトなどの像担持回転体、現像ローラなどの現像剤担持回転体などの被駆動回転体に伝えて、被駆動回転体を回転駆動させる構成の画像形成装置であれば、例えば複写機、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等に適用できる。
【0072】
上記では、駆動ギア62と従動ギア64が樹脂成形によるものとしたが、これに限られず、例えば金属製のものであっても良い。なお、駆動ギア62、従動ギア64の歯数Z、モジュールmの値が上記の数値に限られないことはいうまでもなく、また、ギア1〜4の幅Wを同じとしたが、これに限られず、異なるものであっても良い。さらに、駆動軸や従動軸にストップリングを嵌めることにより駆動ギア62を軸方向への移動を規制(駆動軸61に固定)するとしたが、固定する方法がストップリングを用いる構成に限られないことはいうまでもなく、他の部材や方法を用いるとしても構わない。
【0073】
また、静電潜像が形成される像担持回転体の例として感光体ドラムを用いる構成を説明したが、ドラム状に限られず、例えばベルト状のものを用いるとしても良い。また、現像剤を担持する現像剤担持回転体の例として、現像ローラを用いる構成を説明したが、現像剤担持回転体は、像担持回転体上に作像された静電潜像を現像剤で現像して像担持回転体上に現像剤像を形成するものであれば良く、例えばベルト状のものでも良い。
【0074】
さらに、中間転写ベルト21が駆動ローラ22と従動ローラ23により張架されるとしたが、これらを含む複数のローラにより張架される構成であっても良い。また、駆動源として駆動モータ32を用いるとしたが、回転駆動力を出力するものであれば、モータに限られることもない。
また、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、駆動源からの回転駆動力を駆動ギアから従動ギアを介して、画像形成に関与する被駆動回転体に伝達する画像形成装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1、2、3、4、81、82、83、84 ギア
11 感光体ドラム(像担持回転体)
19 現像ローラ(現像剤担持回転体)
21 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
32 駆動モータ
50 制御部
61 駆動軸
62、80a 駆動ギア
63 従動軸
64、80b 従動ギア
65 ギア変位機構
100 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの回転駆動力を駆動ギアから従動ギアを介して、画像形成に関与する被駆動回転体に伝達する駆動伝達機構を有する画像形成装置であって、
前記駆動ギアは、
駆動軸の軸方向に並設された第1ギアと第2ギアが一体形成されてなり、
前記従動ギアは、
従動軸の軸方向に並設された第3ギアと第4ギアが一体形成されてなり、
前記駆動ギアと前記従動ギアの少なくとも一方を軸方向への移動を伴う動作を行うことにより、第1ギアと第3ギアが噛合して第2ギアと第4ギアが噛合しない第1状態と、第2ギアと第4ギアが噛合して第1ギアと第3ギアが噛合しない第2状態を切り替え可能なように、第1ギア、第2ギア、第3ギア、第4ギアのピッチ円直径が設定され、
駆動側である第1ギアの歯数Z1と第2ギアの歯数Z2とが異なっていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
第1ギアのピッチ円直径d1と第3ギアのピッチ円直径d3を加算した値αと、第2ギアのピッチ円直径d2と第4ギアのピッチ円直径d4を加算した値βとが同じであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
第1ギアのピッチ円直径d1と第2ギアのピッチ円直径d2が同じであり、第3ギアのピッチ円直径d3と第4ギアのピッチ円直径d4が同じであることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
第1ギアの歯数Z1と第3ギアの歯数Z3が同じであり、第2ギアの歯数Z2と第4ギアの歯数Z4が同じであり、かつ、第1ギアのピッチ円直径d1と第3ギアのピッチ円直径d3が同じであり、第2ギアのピッチ円直径d2と第4ギアのピッチ円直径d4が同じであることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記駆動ギアと従動ギアとして、同じ部材が兼用されていることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記駆動ギアは、
第1ギアが第2ギアに対して軸方向に一方の側に位置し、第2ギアが第1ギアに対して他方の側に位置するように前記駆動軸に支持され、
前記従動ギアは、
第4ギアが第3ギアに対して軸方向に前記一方の側と同じ側に位置し、第3ギアが第4ギアに対して前記他方の側と同じ側に位置するように前記従動軸に支持され、
前記駆動ギアと従動ギアのうち、一方のギアが軸方向に固定され、他方のギアが軸方向に移動自在に支持され、
前記移動自在に支持される方のギアが前記軸方向に移動されることにより、第1ギアと第3ギアが噛合し、第2ギアと第4ギアが噛合しない第1状態と、第2ギアと第4ギアが噛合し、第3ギアと第4ギアが噛合しない第2状態とが切り替え可能になっていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記駆動ギアと従動ギアが駆動軸と従動軸に対して挿抜可能であり、
駆動軸から取り外された駆動ギアが、取り外される前の姿勢に対して軸方向に反転した姿勢で駆動軸に軸着可能であり、
従動軸から取り外された従動ギアが、取り外される前の姿勢に対して軸方向に反転した姿勢で従動軸に軸着可能であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
第1ギアのピッチ円直径d1と第4ギアのピッチ円直径d4が同じであり、第2ギアのピッチ円直径d2と第3ギアのピッチ円直径d3が同じであり、ピッチ円直径d1とd2が異なることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記駆動ギアと前記従動ギアは、
一方のギアが軸方向に沿って移動自在であり、他方のギアが軸方向に固定されており、
前記画像形成装置は、
前記移動自在に支持されている一方のギアに対して軸方向への力を与えて当該一方のギアを移動させるアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御して、噛合するギアの組み合わせを第1状態から第2状態に遷移させる場合には、第2ギアと第4ギアが噛合する位置まで前記移動自在に支持されている一方のギアを移動させ、第2状態から第1状態に遷移させる場合には、第1ギアと第3ギアが噛合する位置まで前記一方のギアを移動させる制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜6、8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
像担持回転体上に作像された静電潜像を、現像剤担持回転体上に担持された現像剤で現像して、前記像担持回転体上に現像剤像を形成する構成であり、
前記被駆動回転体は、前記像担持回転体および前記現像剤担持回転体の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
像担持回転体上に形成された現像剤像を、駆動ローラと従動ローラを含む複数のローラにより張架されたベルト上に転写する構成であり、
前記被駆動回転体は、前記駆動ローラであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−3019(P2012−3019A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137645(P2010−137645)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】