説明

画像形成装置

【課題】 複合トナーパターンを形成する画像形成装置において、イエロー、シアン、マゼンタのトナーパターンの形成位置を、それぞれを検出することによって得られるアナログ信号の1つの出力波形から特定していた。一方、ブラックのトナーパターンの形成位置は複合トナーパターンを検出することによって得られるアナログ信号に含まれる2つの波形に基づいて特定していた。そのため、トナーパターンに濃度変動等が生じるとブラックの検出精度が他の色の検出精度よりも低下するおそれがあった。
【解決手段】 複合トナーパターンとして、第2のトナー像802を中間転写ベルト109の搬送方向下流側において、第3のトナー像803を中間転写ベルト109の搬送方向上流側において、それぞれが第1のトナー像801に少なくともその一部が重なるように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等のカラー画像を形成する画像形成装置において、各色のトナー像の色ずれを抑制するために検出用トナーパターンを形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザビームプリンタなどの電子写真方式の画像形成装置では、次のようなプロセスで画像が形成される。まず、帯電装置によって感光体表面を帯電する。帯電された感光体を光ビームによって露光し、感光体表面の電位を帯電電位から変化させることによって感光体上に静電潜像を形成する。形成された静電潜像は、所定の電荷に帯電されたトナーによって現像される。現像されたトナー像は紙などの記録媒体に転写され、記録媒体に転写されたトナー像は定着装置によって記録媒体に定着される。
【0003】
このような電子写真方式の画像形成装置のうち複数色のトナー剤によってカラー画像を形成する装置として、タンデム方式のカラー画像形成装置が知られている。タンデム方式とは、トナー像を形成するための感光体を複数色のトナー剤それぞれに対応して設け、各々の感光体に形成される各色のトナー像を記録媒体に転写することでカラー画像を形成する方式である。一般的に、中間転写ベルトなどの中間転写体に各感光体上に形成されたトナー像を一旦転写することによって各色のトナー像を中間転写体上で重ね合わせ、その後中間転写体上に担持されたトナー像を記録媒体に転写する方式が用いられている。
【0004】
このようなカラー画像形成装置では、記録媒体上において各感光体上から中間転写体上に転写された各色のトナー像間に位置ずれがあると色ずれが生じ、画質劣化の原因となる。
【0005】
このような色ずれを抑制するために、色ずれ検出用トナーパターンを用いた色ずれ補正制御が行われている。色ずれ補正制御では、各色の色ずれ検出用トナーパターンをそれぞれ中間転写体上に形成し、各色のトナーパターンの検出タイミング差から相対的なずれ量を算出し、ずれが低減されるように露光タイミングの制御や光学系の位置決め制御がなされる。
【0006】
色ずれ検出用トナーパターンの検出は、中間転写体近傍に配置された光学式センサにより行われる。色ずれ補正制御は、光学式センサからの出力に基づいて色ずれを補正する。
【0007】
光学式センサには乱反射光(拡散反射光)を検出するセンサがある。乱反射光を検出するセンサによって色ずれ検出用トナーパターンを検出する場合、イエロー、マゼンタ、シアンなどの有彩色のトナーパターンからの乱反射光を検出することによって得られる出力と、中間転写体からの乱反射光を検出することによって得られる出力とは、出力レベルが大きく異なる。そのため、乱反射光を受光することによって有彩色のトナーパターンそれぞれの相対的位置関係を特定することが可能である。
【0008】
それに対して、ブラック等の無彩色のトナーは光を吸収するため、有彩色のトナーパターンに比べて反射光量が少ない。そのため、照射光量を上げる等の処理を行わなければ、中間転写体からの乱反射光を検出することによって得られる出力の出力レベルとブラック等の無彩色のトナーパターンの検出することによって得られる出力の出力レベルとの出力レベル差は検出可能な差にならない。
【0009】
それに対して、特許文献1は、ブラック等の乱反射光量の少ないトナーパターンの形成位置を検出するために、有彩色のトナーパターン及び無彩色のトナーパターンによって複合トナーパターンを形成する方法を開示している。特許文献1に記載の画像形成装置は、複合トナーパターンによって得られる出力波形から無彩色のトナーパターンの形成位置を特定する。
【0010】
図13(a)は特許文献1に記載の色ずれ検出用トナーパターンをモデル化した図である。検出用トナーパターンとして、中間転写体1301上には、イエローのトナーパターン1302a、マゼンタのトナーパターン1303a、シアンのトナーパターン1304a、マゼンタのトナー像の一部にブラックのトナー像を重ねた複合トナーパターン1305aが形成される。これらの色ずれ検出用トナーパターンからの反射光を受光する受光部からはそれぞれのトナーパターンに対応した出力1302b、1303b、1304b、1305b1、1305b2を含むアナログ信号が出力される(図13(b)参照)。それぞれの出力は所定の閾値(図13(b)中の点線)基づいて2値のデジタル信号に変換される。デジタル信号には、出力1302b、1303b、1304b、1305b1、1305b2それぞれに対応する出力1302c、1303c、1304c、1305c1、1305c2が含まれる(図13(c)参照)。
【0011】
画像形成装置に備えられるCPUは、例えば、有彩色のトナーパターンから得られるデジタル信号に含まれる出力1302c、1303c、1304cそれぞれの重心位置から有彩色のトナーパターンそれぞれの形成位置を特定する。また、CPUは、複合トナーパターンに関して、デジタル信号に含まれる出力1305c1の重心位置と出力1305c2の重心位置を求め、さらにこれらの2つの重心位置の中点をブラックのトナーパターンの形成位置とみなす。
【0012】
また、ブラックのトナーパターンの形成位置を特定する別の方法として、アナログ信号の出力1305b1の立ち下がりと閾値の交点及び出力1305b2の立ち上がりと閾値との交点との中点をブラックのトナーパターンとする方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−156159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、に記載されているような複合トナーパターンを用いた場合、次のような課題が生じる。有彩色のトナーパターンの形成位置はデジタル信号に含まれる出力1302b、1303b、1304bから特定されるのに対して、無彩色のトナーパターンの形成位置はデジタル信号に含まれる2つの出力1305C1と1305C2の重心位置を求め、さらに2つの重心位置の中点をブラックのトナーパターンの形成位置とする。そのため、有彩色のトナーパターンの形成位置を特定する処理とは別に、無彩色のトナーパターンの形成位置を特定する処理を装置に組み込まなければならず、装置の設計が複雑化する。
【0015】
また、ブラックのトナーパターンの形成位置を特定する別の方法では、アナログ信号の出力1305b1の立ち上がりと閾値との交点、及び出力1305b2の立ち下がりと閾値との交点を検出結果として採用しない構成を組む必要があり、装置の設計が複雑化する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、回転駆動される像担持体と、前記像担持体上に有彩色のトナー像を形成する第1の画像形成手段と、前記像担持体上の無彩色のトナー像を形成する第2の画像形成手段と、前記有彩色のトナー像に所定の間隔を空けて形成された前記無彩色のトナー像が重畳し、前記所定の間隔から前記有彩色のトナー像が露出するように、前記第1及び第2の画像形成手段に第1の検出用トナーパターンを形成させ、前記第1の画像形成手段に有彩色のトナー像の第2の検出用トナーパターンを形成させる制御手段と、前記第1の検出用トナーパターン、第2の検出用トナーパターンまたは前記像担持体に光を照射する照射手段と、前記第1の検出用トナーパターン、第2の検出用トナーパターンまたは前記像担持体からの反射光を受光する受光手段と、前記受光手段からの出力に基づいて前記第1、第2の検出用トナーパターンそれぞれに含まれる有彩色のトナー像の相対位置関係を検出することにより前記像担持体上における前記有彩色のトナー像と前記無彩色のトナー像との相対位置関係を特定する検出手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の画像形成装置によれば、回転駆動される像担持体と、前記像担持体上に有彩色のトナー像を形成する第1の画像形成手段と、前記像担持体上の無彩色のトナー像を形成する第2の画像形成手段と、前記有彩色のトナー像に所定の間隔を空けて形成された前記無彩色のトナー像が重畳し、前記所定の間隔から前記有彩色のトナー像が露出するように、前記第1及び第2の画像形成手段に検出用トナーパターンを形成させる制御手段と、前記検出用トナーパターンに光を照射する照射手段と、前記検出用トナーパターンからの反射光を受光する受光手段と、前記受光手段からの出力に基づいて前記検出用トナーパターンに含まれる有彩色のトナー像を検出することにより前記像担持体上における前記無彩色のトナー像の位置を特定する検出手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、有彩色のトナー像に無彩色のトナー像を重畳させた検出用トナーパターンの有彩色のトナー像を検出することにより像担持体上での無彩色のトナー像を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例に係る画像形成装置の断面図。
【図2】本実施例に係る光走査装置及び感光ドラムを示す模式図。
【図3】中間転写ベルト上に形成される色ずれ検出用トナーパターンの概略図。
【図4】本実施例に係る画像形成装置における制御ブロック図。
【図5】本実施例に係る画像形成装置において実行される色ずれ補正制御の制御フローチャート。
【図6】本実施例に係る画像形成装置に用いられる光学式センサの概略図。
【図7】光学式センサから出力されるアナログ信号及びアナログ信号から生成されるデジタル信号の波形を示す図。
【図8】複合トナーパターンをモデル化した図。
【図9】複合トナーパターンを検出することによって得られるアナログ信号及びアナログ信号から生成されるデジタル信号の波形を示す図。
【図10】色ずれ検出用トナーパターンを形成するためにCPUが各色の画像形成ステーションに出力する画像信号の出力タイミングチャート。
【図11】濃度低下領域を説明するための現像スリーブ及び感光ドラムの概略断面図。
【図12】複合トナーパターンの断面図。
【図13】従来の複合トナーパターン及び複合トナーパターンを検出することによって得られるアナログ信号及びアナログ信号から生成されるデジタル信号の波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この実施の形態に記載される構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などに関して、特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0021】
図1は本実施例に係るカラー画像形成装置100(以下、画像形成装置100)の全体構成を示す断面図であり、電子写真方式のフルカラープリンタの概略構成を示している。図1に示す画像形成装置100は原稿読取部101と画像形成部102を有する。原稿読取部101で原稿画像を読み取り、読み取られた画像データに基づいて画像形成部102は記録媒体に画像を形成する。
【0022】
画像形成部102には、イエロー(Y)のトナー像を形成するための画像形成ステーションY、マゼンタ(M)のトナー像を形成するための画像形成ステーションM、シアンのトナー像を形成するための画像形成ステーションC、ブラック(Bk)のトナー像を形成するための画像形成ステーションBkが備えられている。画像形成ステーションYには感光体であるところの感光ドラム103a、感光ドラム103aを帯電するための帯電装置104a、帯電された感光ドラム103aに静電潜像を形成するための光ビーム(レーザ光)を出射する光走査装置105aが備えられている。また、静電潜像をトナーによって現像する現像装置106a、感光ドラム103a上の残留トナーを清掃するためのクリーニング装置107aが設けられている。同様に、その他の画像形成ステーションMも画像形成ステーションYと同様の構成を備えており、マゼンタのトナー像を形成するための画像形成ステーションMは、感光体であるところの感光ドラム103b、帯電装置104b、光走査装置105b、現像装置106b、クリーニング装置107bが備えられている。また、シアンのトナー像を形成するための画像形成ステーションCは、感光体であるところの感光ドラム103c、帯電装置104c、光走査装置105c、現像装置106c、クリーニング装置107cが備えられている。さらに、ブラックのトナー像を形成するための画像形成ステーションBkは、感光体であるところの感光ドラム103d、帯電装置104d、光走査装置105d、現像装置106d、クリーニング装置107dが備えられている。
【0023】
各画像形成ステーションで行われる画像形成プロセスについて説明する。各画像形成ステーションY、M、C、Bkで行われる画像形成プロセスは同様のプロセスであるので、イエローの画像形成ステーションYを例に説明する。感光ドラム103aは帯電装置104aによって帯電される。帯電された感光ドラム103a上には光源であるレーザ発光部を有する光走査装置105aから出射されるレーザ光(光ビーム)により静電潜像が形成され、この静電潜像は現像装置106aによりイエローのトナーを用いて現像される。
【0024】
そして、この感光ドラム103a上に現像されたイエローのトナー像は、転写ブレード108aに印加される転写バイアスによって中間転写体(像担持体)であるところの中間転写ベルト109に転写される。
【0025】
同様に、感光ドラム103b上のマゼンタのトナー像は転写ブレード108bによって、感光ドラム103c上のシアンのトナー像は転写ブレード108cによって、感光ドラム103d上のブラックのトナー像は転写ブレード108dによって、中間転写ベルト109上(像担持体上)に転写される。中間転写ベルト109に転写された各色のトナー像は、二次転写部Tにおいて二次転写ローラ110で記録紙に4色が一括転写される。その後、トナー像を担持した記録媒体Sは定着装置111を通過して定着処理が施された後、排紙ローラ112等によって装置外に排出される。
【0026】
なお、ブラックの画像形成ステーションBkは、中間転写ベルト109の回転方向においてその他の有彩色の画像形成ステーションY、M、Cよりも二次転写部側に設けられている。このように配置することによってモノクロ画像を形成する場合にユーザによって画像形成の指示がなされてから画像が出力されるまでの時間を抑えることができる。
【0027】
中間転写ベルト109の近傍には後述する色ずれ検出用トナーパターンを検出するための光学式センサ113が設けられている。光学式センサ113は、図1に示すようにブラックとのトナー像を形成するための画像形成ステーションBkと二次転写ローラ110との間に設けられている。
【0028】
図2は、光走査装置105aの内部構成の概略図及び感光ドラム103aを模式的に示す概略図である。光走査装置105a〜dの構成はそれぞれ同一のものであるので、光走査装置105aを例に説明する。光走査装置105aは、光源であるところの半導体レーザ201、コリメータレンズ202、開口絞り203、シリンドリカルレンズ204、ポリゴンミラー205、ポリゴンミラー駆動部206、トーリックレンズ207、回折光学素子208を備える。
【0029】
コリメータレンズ202は、半導体レーザ201から出射された光ビームを平行光束に変換している。開口絞り203は、通過するレーザ光の光束を制限している。シリンドリカルレンズ204は、副走査方向にのみ所定の屈折力を有しており、開口絞り203を通過した光束をポリゴンミラー205の反射面に主走査方向に長い楕円像として結像させている。回転多面鏡であるところのポリゴンミラー205は、ポリゴンミラー駆動部206により図中矢印C方向に一定速度で回転しており、反射面上に結像したレーザ光を偏向走査する。トーリックレンズ207は、fθ特性を有する光学素子であり主走査方向と副走査方向とで互いに異なる屈折率を有する。トーリックレンズ207の主走査方向の表裏の両レンズ面は非球面形状より成っている。回折光学素子208は、fθ特性を有する光学素子であり主走査方向と副走査方向とで互いに異なる倍率を有する。レーザ光検出手段であるところのBeam Detector209(以下BD209とする。)は、画像形成装置100が備える感光ドラム103aの画像形成領域外に相当する位置に設置され、反射ミラー210によって反射されたレーザ光を検出することで、走査タイミング信号(BD信号)を生成する。
【0030】
感光ドラム103aには、回転駆動されるポリゴンミラー205に偏向された半導体レーザ201から放射されるレーザ光のスポットが感光ドラム軸に平行に直線状に移動(走査)する。本実施例における光走査装置105aは、半導体レーザ201として複数ビームを発するマルチビームレーザーを使用しており、1回の走査により複数本のライン状の静電潜像を形成することができる。感光ドラム103aはドラム駆動部211によって回転駆動され、これによって前記主走査を折り返すことで、副走査方向(感光ドラムの回転方向)に画像書き込みが行われる。
【0031】
回折光学素子208はその光軸と平行な軸を中心に回動可能な構成となっている。この軸を中心に回折光学素子208を回動させることによって、感光ドラム103a上における走査線の向き(感光ドラム103aの回転軸に対する走査線の傾き)を補正することができる。また、回折光学素子208は、回折光学素子208の長手方向と平行な軸を中心に回動可能な構成となっている。この軸を中心に回折光学素子208を回動させることによって感光ドラム103a上における走査線の湾曲を補正することができる。回折光学素子208は回折光学素子駆動部212によって回動される。
【0032】
半導体レーザ201、ポリゴンミラー駆動部206、ドラム駆動部211、及び回折光学素子駆動部212は、後述するCPUによって制御されているものとする。
【0033】
感光ドラム103aは帯電装置104aにより表面が帯電された後、レーザ光は帯電された感光ドラム103a表面を露光査する。感光ドラム103a表面の電位は照射されたレーザ光の強度に応じて電位が変位する。
【0034】
ここで、各画像形成ステーションによって中間転写ベルト109に転写される各色のトナー像間に生じる相対的なずれ(色ずれ)について説明する。上述したように、感光ドラム103a〜d上には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像がそれぞれ形成される。各感光ドラム上に形成されたトナー像を記録媒体に転写することによって記録媒体上にカラー画像が形成される。このとき、各感光ドラム上に形成されるトナー像の重なり方にずれが生じると、原稿画像と出力画像との色味が異なるようになるため画質が低下する。
【0035】
そこで、画像形成装置100では、電源がONされた場合、待機状態から復帰する場合、所定枚数(累積枚数)の記録媒体に画像形成した場合等の所定のタイミングで各色のトナーによって色ずれ検出用トナーパターンを中間転写ベルト109上に形成し、色ずれ検出用トナーパターンの検出結果に基づいて各色のトナー像の相対的なずれを補正するための制御が行われる。
【0036】
図3は、中間転写ベルト109が形成する色ずれ検出用トナーパターンの概略図である。図3は、各色に対応する感光ドラムから中間転写ベルト109上に転写された第2の検出用トナーパターンである、イエローのトナーパターン301、マゼンタのトナーパターン302、シアンのトナーパターン303を示している。また、本実施例の画像形成装置100では上記の有彩色の単独トナーパターンの他にブラックのトナー像の形成位置を特定するための複合トナーパターン304(第1の検出用トナーパターン)が形成される。複合トナーパターン304は、マゼンタのトナー像の上にブラックのトナーの少なくとも一部が重畳されるように形成される。複合トナーパターン304についての詳細は後述する。
【0037】
なお、以下では、イエローのトナーパターン301、マゼンタのトナーパターン302、シアンのトナーパターン303、及び複合トナーパターン304の集合体を指すときには、その集合体を色ずれ検出用トナーパターンと称する。
【0038】
図3中のX軸方向は感光ドラムの回転軸方向(以下、主走査方向とする。)である。中間転写ベルト109はX軸方向に垂直なY軸方向(副走査方向)の矢印方向に搬送される。例えば、色ずれ検出用トナーパターンは主走査方向において2箇所に形成される。光学式センサ113は、図3に示す主走査方向において異なる位置に形成される色ずれ検出用トナーパターンをそれぞれ検出できるような位置(光学式センサ113a、113b)に複数個設けられている。
【0039】
本実施例の画像形成装置100では、基準色としてのマゼンタのトナーパターン302に対するブラックを含む他の色のトナーパターンの形成位置の相対位置関係を求め、その相対位置関係から相対的なずれ量を算出し、入力画像データに基づく画像形成を行う際に各色のトナー像間にずれが生じないように補正制御を行う。
【0040】
図4は本実施例の画像形成装置における色ずれ補正制御を実行するための構成を示す制御ブロック図である。色ずれ補正制御はCPU401が実行する。メモリ402には色ずれ補正制御を実行するための制御フローが記憶されている。光学式センサ113aから出力されるアナログ信号はコンパレータ403aに入力されてデジタル信号に変換される(詳しくは後述する)。光学式センサ113bから出力されるアナログ信号はコンパレータ403bに入力されてデジタル信号に変換される。以下、説明を簡易にするために、光学式センサ113a、113bに関しては光学式センサ113として説明を進め、コンパレータ403a、403bについてもコンパレータ403として説明を進める。
【0041】
コンパレータ403から出力されるデジタル信号はCPU401に入力される。CPU401は入力されたデジタル信号に基づいて、それぞれの色のトナーパターンの相対位置関係を検出し、その検出結果から各色のトナーパターンの相対的なずれ量を算出し、そのずれ量に基づいて色ずれ補正制御を行う。CPU401から画像形成ステーションY、M、C、Bkには色ずれを補正するための信号が送信される。
【0042】
図5は、CPU401が実行する色ずれ補正制御の制御フローを示す図である。色ずれ検出用トナーパターンは、画像形成装置の電源がONにされた場合、待機状態のときに読取部や外部情報装置から画像データが入力された場合、連続画像形成中に記録媒体への画像形成累積枚数が所定枚数に到達した場合などに実行される。図5では、待機状態のときに画像データが入力されてから画像形成が終了するまでにCPU401が実行する制御フローを例に説明する。
【0043】
まず、CPU401は、読取部または外部情報装置から画像データが入力されると各画像形成ステーションに色ずれ検出用トナーパターンを形成させる(ステップS501)。次に、色ずれ検出用トナーパターンを検出した光学式センサ113からの出力に基づいて補正量を算出する(ステップS502)。そして、CPU401は、光走査装置に備えられるレンズや反射ミラーなどの光学系(本実施例では回折光学素子208)の位置を制御(変更)する必要があるか否かを判定し(ステップS503)、ステップS503において光学系の位置の変更が必要であると判定された場合、ステップS504において光学系の位置制御を実行する。位置制御が終了すると、CPU401は、ステップS502において算出した補正量に基づいて各画像形成ステーションに画像を形成させる(ステップS505)。ステップS503において光学系の位置の変更が必要でないと判定された場合、CPU401は制御をステップS505に進める。 続いて、CPU401は、1枚の記録媒体に画像形成される毎にすべての画像データに基づく画像形成が行われたか否かを判定し(ステップS506)、すべての画像データに基づく画像形成が終了していれば制御を終了させる。ステップS506においてすべての画像データに基づく画像形成が済まされていないと判定された場合、CPU401は画像形成累積枚数が所定枚数に到達したか否かを判定する(ステップS507)。ステップS507において画像形成累積枚数が所定枚数に到達したと判定された場合、CPU401は制御をステップS501に戻す。一方、ステップS507において画像形成累積枚数が所定枚数に到達していないと判定された場合、CPU401は制御をステップS505に戻す。
【0044】
色ずれ検出用トナーパターンを検出するための光学式センサ113には、反射光を検出する方式として正反射光を検出する方式と乱反射光(拡散反射光)を検出する方式がある。本実施例の画像形成装置では、乱反射光を検出する方式を採用している。
【0045】
中間転写ベルト109の表面は、画像形成装置の使用が進むにつれてトナーやクリーニング装置の影響により光沢が低下する。光学式センサ113として正反射光を検出する方式を用いると、検出結果は中間転写ベルト109の表面状態の変化を受け易い。そのため、表面状態の変化によって検出精度を確保するために照射光量の制御やトナーパターンの濃度の調整といった補正制御が必要となる。乱反射光を検出する方式を用いるとこの補正制御の頻度を抑えることができる。
【0046】
図6に光学式センサ113の概略図を示す。光学式センサ113には、中間転写ベルト109または色ずれ検出用トナーパターンに対して光を照射(投射)する発光部601と中間転写ベルト109または色ずれ検出用トナーパターンからの反射光を受光する受光部602を備える。受光部602は、発光部601から中間転写ベルト109へ照射した光の乱反射光が受光できるように入射角と反射角が等しくならない位置に配置されている。受光部602は受光光量に応じたレベルの信号を出力する。
【0047】
図7は、色ずれ検出用トナーパターンを光学式センサ113によって検出することによって得られるアナログ信号701(検出信号)及びアナログ信号701から生成されるデジタル信号702を示している。中間転写ベルト109の表面は光沢があるため、中間転写ベルト109表面によって反射される正反射光の光量は有彩色のトナーパターンによって反射される正反射光の光量よりも多い。発光部601から出射される光量は一定であるため、中間転写ベルト109表面によって反射される乱反射光の光量は有彩色のトナーパターンによって反射される乱反射光の光量よりも少ない。そのため、有彩色のトナーパターンを検出することによって得られるアナログ信号701の波形は図7に示すように上に凸の形状になる。なお、図7上ではアナログ信号701は三角波のように示しているが、必ずしも三角波になるわけではない。波形は中間転写ベルト109の回転方向(駆動方向)におけるトナーパターンの幅と光学式センサ113の受光部602の幅と依存するため、これらの幅の関係によっては、台形に近い波形が検出される。
【0048】
デジタル信号702は、受光部602から出力されるアナログ信号701を2値化した信号である。コンパレータ403は、閾値703以上の出力レベルのアナログ信号が入力されるとHiレベルのデジタル信号を出力し、閾値703未満の出力レベルのアナログ信号が入力されるとLowレベルのデジタル信号を出力する。
【0049】
乱反射検知方式で色ずれ検出用トナーパターンを検出する構成とした場合、ブラックのトナーは光を吸収するため乱反射光量が少ない。そのため、光学式センサ113によってブラックのトナーパターンを検出しようとした場合、ブラックのトナーパターンからの乱反射光による出力信号レベルと中間転写ベルト109からの乱反射光による出力信号レベルとの間の差が小さくなる。そのため、乱反射光検知方式はブラックのトナーパターンを検出し難いという課題がある。
【0050】
そこで、本実施例の画像形成装置は、ブラックとトナーパターンと有彩色のトナーパターンとによって図3に示すような複合トナーパターン304を形成する。CPU401は、その複合トナーパターンから得られる出力信号の波形を以ってブラックのトナー像の形成位置の検出結果とする。
【0051】
図8を用いて複合トナーパターン304について詳しく説明する。図8は複合トナーパターン304の説明を簡略化するために、図3に示す複合トナーパターン304をモデル化した図である。複合トナーパターン304は、マゼンタのトナー像を形成する画像形成ステーションM(第1の画像形成手段)及びブラックのトナー像を形成する画像形成ステーションBk(第2の画像形成手段)によって形成される。図8に示すように、複合トナーパターン304は、中間転写ベルト109の駆動方向(回転方向、または固定された感光ドラムに対する移動方向)において、ブラックのトナー像である第2のトナー像と第3のトナー像とが所定の間隔を空けて形成され、その間隔からマゼンタのトナー像(第1のトナー像)が露出する。さらに具体的に説明すると、ブラックの第2のトナー像802は中間転写ベルト109搬送方向に関してその一部がマゼンタの第1のトナー像801の一部(先端部)の上に重なるように形成される。ブラックの第3のトナー像803は中間転写ベルト109搬送方向に関してその一部が第1のトナー像801の一部(後端部)の上に重なるように形成される。第2のトナー像802と第3のトナー像803とが中間転写ベルト109の搬送方向において少なくとも第1のトナー像801上ではそれぞれが繋がらないように、第2のトナー像802及び第3のトナー像803は所定距離離されて形成される。第1のトナー像801の中間転写ベルト109の搬送方向前後(像担持体移動方向前後)に第2のトナー像802及び第3のトナー像803が形成される。
【0052】
図9(a)は、色ずれ検出用トナーパターンから得られる出力信号(アナログ信号)の波形である。光学式センサ113の受光部602が中間転写ベルト109からの乱反射光を受光すると、受光部602からはAレベルの信号が出力される。また、受光部602にイエローのトナーパターン、マゼンタのトナーパターン、シアンのトナーパターンからの乱反射光を受光すると、受光部602から出力される信号レベルはBまで上昇する(図9(a)中においてそれぞれ出力901a、902a、903a)。なお、各色のトナーパターンを検出することによって受光部602から出力される信号レベルがBまで上昇するように各色のトナーパターンの濃度が調整される。CPU401は、この濃度調整を行う際に、各色の濃度調整用トナーパターンを形成し、その各色の濃度調整用トナーパターンの濃度検出結果に基づいて検出用トナーパターンに含まれる各色のトナーパターンの濃度が所定の濃度になるように各画像形成ステーションする制御する。
【0053】
複合トナーパターン304によって得られるアナログ信号の出力904aについてさらに詳しく説明する。まず、受光部602は中間転写ベルト109からの乱反射光を受光するため、Aレベルの信号が出力される。次に、検知位置に第2のトナー像802が搬送されてくる。それに伴ない、受光部602に入射する乱反射光の光量が変化するため出力信号のレベルが変化する。ここでは、第2のトナー像802からの乱反射光の光量が中間転写ベルト109からの乱反射光の光量よりも少なくなる状態を例に説明する。即ち、ブラックの第2のトナー像802が検知されることによって出力信号のレベルが徐々に低下し、マゼンタの第1のトナー像801が検知位置に差しかかる直前にCレベルまで低下する。
【0054】
次に、マゼンタの第1のトナー像801が検知位置に入り、ブラックの第2のトナー像802が搬送方向下流側から検知位置を抜けていくので、受光部602に入射する乱反射光の光量が徐々に増加していき、最終的に反射光Bレベルまで上昇する。その後、ブラックの第3のトナー像803が検知位置に入り、マゼンタの第1のトナー像801が搬送方向下流側から検知位置を抜けていくので、受光部602に入射する乱反射光の光量が徐々に減少していき、反射光Cレベルまで減少する。そして、第3のトナー像803が搬送方向下流側から検知位置を抜けていくので、受光部602に入射する乱反射光の光量が徐々に増加していき、中間転写ベルト109のみからの乱反射光が受光部602に入射する状態になると、出力レベルはAレベルに戻る。
【0055】
このように、マゼンタのトナー像である第1のトナー像によって生成される出力波形によってブラックのトナー像の形成位置を特定するために、ブラックのトナー像である第2のトナー像と第3のトナー像とが所定間隔離されて形成される。そして、その間隔からマゼンタのトナー像である第1のトナー像が露出するように複合トナーパターン304が形成される。この複合トナーパターン304に含まれるマゼンタのトナー像(第1のトナー像)からの反射光によって生成される出力波形からブラックの形成位置を間接的に特定することができる。
【0056】
上記のような信号レベルの変動によって図9(a)に示すようなアナログ信号の出力波形が得られる。受光部602から出力されるアナログ信号はコンパレータ403に入力され、Bレベルよりも低くAレベルよりも高いレベルD(C>Aの場合、Cよりも高いレベルD)に設定された閾値に基づいてデジタル信号に変換される(図9(b)参照)。デジタル信号には、アナログ信号に含まれる出力901a、902a、903a、904aに対応する出力901b、902b、903b、904bが含まれる。CPU401は、このデジタル信号の重心位置と基準色(本実施例ではマゼンタ)のトナーパターンを検出することによって得られるデジタル信号の重心位置との差分とメモリ402に記憶された参照値とを比較する。この参照値は色ずれが生じていない場合において、基準色のトナーパターンを検出することによって生成される出力と非基準色のトナーパターンを検出することによって生成される出力との出力タイミング差である。CPU401は比較結果から基準色のマゼンタのみで形成された単独トナーパターンから得られるデジタル信号と複合トナーパターン304から得られるデジタル信号との出力タイミングの差分を算出し、その差分と所定の値との比較結果に基づいてずれ量がなくなるように画像形成前に光学レンズの位置を制御する、あるいは画像形成時のレーザ光の出射タイミングを制御するといった色ずれ補正制御を実行する。
【0057】
図10は各色のパターンを形成する時の画像信号を各画像形成ステーションY、M、C、及びBkに送るタイミングを示すタイミングチャートである。本実施例の画像形成装置は、各色のパターンは図1に示すように中間転写ベルト109の搬送方向下流側から、イエロー、マゼンタ、シアン、マゼンタ及びブラックトナーパターンによって構成される複合トナーパターンの順に各トナーパターンを形成する。
【0058】
CPU401から各画像形成ステーションには中間転写ベルト109の搬送速度を考慮して設定されるタイミングで各トナーパターンを形成するための画像信号が送信される。まず、CPU401は、イエローのトナーパターンを形成するための画像信号Yをイエローの画像形成ステーションYに送信する。その後、CPU401は、マゼンタのトナーパターンがイエローのトナーパターンの中間転写ベルト109搬送方向上流側に形成されるように、画像信号Yに対して時間αだけ遅延させたタイミングでマゼンタの画像形成ステーションに画像信号M1を送信する。同様に、CPU401は、シアンのトナーパターンがマゼンタのトナーパターンの中間転写ベルト109搬送方向上流側に形成されるように、画像信号Mに対して時間αだけ遅延させたタイミングでシアンの画像形成ステーションCに画像信号Cを送信する。画像信号Y、画像信号M1、及び画像信号Cによって形成されるトナーパターンの幅が所定の幅(例えば、β´)になるように、画像信号Y、画像信号M1、画像信号Cの出力期間がβになるように設定されているため、それぞれの信号によって形成されるトナーパターンの中間転写ベルト109搬送方向の幅は同一となる。また、各画像形成ステーションの半導体レーザは、有彩色のトナーパターンを検出することによって得られるアナログ信号の出力レベルが等しくなるように、単位面積辺りの露光面積、あるいは光量(光の強度)が制御される。これによって、有彩色のトナーパターンの形成位置の検出精度を一致させることができる。
【0059】
その後、CPU401は、複合トナーパターン304がシアンのトナーパターンの中間転写ベルト109搬送方向上流側に形成されるようなタイミングでマゼンタの画像形成ステーションMに画像信号M2を送信し、ブラックの画像形成ステーションBkに画像信号Bk1及びBk2を送信する。なお、画像信号Bk2は、画像信号Bk1の立ち下がりタイミングと画像信号Bk2の立ち上がりタイミングとの差分がβ(第2のトナー像802と第3のトナー像との間隔がβ´)となるように、画像信号Bk1から所定タイミング遅延してCPU401からブラックの画像形成ステーションBkに送信される。画像信号M2の出力期間については後述する。
【0060】
画像信号M2によって形成されるマゼンタのトナーパターンの上に画像信号Bk1によって形成されるブラックのトナーパターンが中間転写ベルト109の回転方向上流側に、画像信号Bk2によって形成されるブラックのトナーパターンが下流側に重なるように、画像信号M2の出力タイミングに対する画像信号Bk1及び画像信号Bk2の出力タイミングが設定されている。つまり、画像信号Bk1の出力タイミングは画像信号M2の出力タイミングに対して所定時間遅延させて出力されるように設定されている。また、画像信号Bk1の立ち下がりタイミングと画像信号Bk2の立ち上がりタイミングとの差分βが画像信号M2の出力期間γよりも小さくなるように、画像信号Bk1に対する画像信号Bk2の出力タイミングが設定されている。これによって、マゼンタの第1のトナー像801の上流側及び下流側においてブラックの第2のトナー像802、第3のトナー像803それぞれが重なった複合トナーパターン304を形成することができる。
【0061】
ところで、複合トナーパターン304を用いて色ずれを補正するような画像形成装置の場合、次のような課題が生じる。トナーとトナーを帯電させるキャリアを含む現像剤によってトナー像を形成する2成分現像の画像形成装置では、感光ドラム上に形成される静電潜像を現像するときのトナーの現像性を高めるため、トナーを担持する現像スリーブと感光体と間に周速差を設けている。その際、感光ドラムの回転方向後端部において感光ドラム上において現像されるトナー像の濃度が上流側、中央部の濃度より低下するという現象が発生する。
【0062】
この現象についてさらに詳しく説明する。現像スリーブ上では図11に示すように、キャリアが穂状になった磁気穂が形成される。磁気穂にはキャリアと逆極性のトナーが付着している。感光ドラムの回転速度と現像スリーブの回転速度が等速の場合、磁気穂に付着しているトナー量が、静電潜像を現像するために必要なトナー量に対して少なくなることがある。感光ドラムの回転速度と現像スリーブの回転速度とが等速である場合に対して、現像スリーブの回転速度が感光ドラムの回転速度よりも速い場合、感光ドラムと現像スリーブとのギャップに供給されるトナー量が増加する。このように、感光ドラムの回転速度より現像スリーブの回転速度を速くすることによってトナーが不足することがないので、高濃度の画像を形成する場合であっても画像濃度が低下しない。
【0063】
図11(a)(b)を用いて濃度低下領域について説明する。ここでは、説明を簡易にするために、キャリアは静電電荷に、トナーは負電荷に、静電潜像は光ビームによって露光されることによって正に帯電された領域であるとする。磁気穂が感光ドラムに近づくと磁気穂に付着しているトナーが感光ドラムの静電潜像に引き寄せられ、静電潜像がトナーによって現像される(図11(a))。
【0064】
感光ドラムと現像スリーブとのギャップを感光体上の正に帯電した領域が継続して通過する場合、負電荷のトナーは静電潜像に引き寄せられるためトナーは磁気穂の先端部側に付着する(図11(a)参照)。そのため、磁気穂の先端部側のキャリアが露出することはない。
【0065】
一方、感光体の移動方向において静電潜像の後端側は正に帯電した露光電位領域と負に帯電した帯電電位領域との境界部が存在する。帯電領域は負に帯電しているため、露光電位領域に後続する帯電電位領域が磁気穂に近づくことによって磁気穂に付着したトナーが感光ドラムから離れる方向に移動する(図11(b)参照)。それによって画像後端部に近い位置にある磁気穂の先端部のキャリアが露出する。現像スリーブの回転速度は感光ドラムの回転速度よりも速いため、先端のキャリアが露出した磁気穂が次々に静電潜像の後端部に近づく。そのため、感光ドラム上の画像後端部のトナーが露出したキャリアに引き戻され、画像後端部の濃度が所定の濃度よりも低下する(図11(b))。
【0066】
この現象は色ずれ検出用トナーパターンを形成する際にも同様に発生する。この濃度低下領域(所定の濃度以下の濃度領域)は視認できない程度の幅であり、低下量も小さいものであるので、記録媒体上に形成される画像に対して画質を劣化させるものではない。なお、上記の所定の濃度とは色ずれ検出用トナーパターンの検出精度を低下させる濃度を指す。例えば、画像形成装置が形成可能な最大濃度を100%で、色ずれ検出用トナーパターンを90%で形成する装置の場合、上記所定の濃度は例えば80%に設定される。80%以下の色ずれ検出用トナーパターンの濃度が80%になると、検出波形に色ずれ検出精度を低下させる程度の乱れを生じさせるためである。
【0067】
しかしながら、色ずれ検出用トナーパターンの後端部においてこのような濃度低下領域が生じると、出力波形の立ち下がりが早まるため出力波形の重心位置の検出精度が低下する。図12(a)は第3のトナー像803が第1のトナー像801(下地のトナー像)の濃度低下領域1201に重なっていない場合を示す図である。矢印方向が中間転写ベルトの搬送方向である。パターンの濃度が低下すると乱反射光量は減少するため、乱反射光受光部602でのセンサ出力が低下する。よって、第1のトナー像801の検出の際に第1のトナー像801の濃度低下領域1201において乱反射光量が低下することにより、図12に示すようにパターン検出の立ち下がりの波形が第1のトナー像801の濃度が一定の場合の所望の波形(点線で表示)と異なった波形となる。この出力波形から前記のように閾値による2値化出力を行った際、ブラックのトナーパターンの形成位置を正確に検出できなくなる。その結果、検出精度が低下するため、色ずれ補正を精度良く行うことができなくなる。
【0068】
有彩色のトナーパターンは単色でパターンが形成されているため、トナーパターンの濃度を上げることによって上記濃度低下領域1201の発生を抑制することができる。一方、複合トナーパターン304の場合、濃度低下領域1201の発生を抑制するために色ずれ検出用トナーパターンの濃度を上げると、有彩色と無彩色のトナーパターンを重ねた箇所のトナー量が増大するため、クリーニング装置に負荷をかけることになる。クリーニング装置の負荷を上げることによってクリーニング性能の低下を早めると、画質の低下を招く。
【0069】
そこで、本実施例の画像形成装置では、複合トナーパターン304を形成するにあたってマゼンタの第1のトナー像801の濃度低下領域1201にブラックの第3のトナーパターントナー像803が重なるような期間、画像信号M2が供給される。中間転写ベルト109の搬送方向における濃度低下領域1201の幅は画像形成装置を組み立てる際に測定されている。第1のトナー像801の濃度低下領域1201が第3のトナー像803によって覆われた複合トナーパターンが形成されるように、測定結果に基づいてCPU401からマゼンタの画像形成ステーションMに送信される画像信号M2の出力期間が設定される。
【0070】
図12(b)は第3のトナー像803が第1のトナー像801の濃度低下領域に重なっている場合を示す図である。この場合、第1のトナー像801が検出される際にパターンの乱反射光量は一定のため、図示するように第1のトナー像801の濃度低下領域1201の影響を受けることなく、所望の通りのセンサ出力波形となる。この出力波形から前記のように閾値による2値化出力を行った際、ブラックのトナーパターンの正確な位置を検出することが可能となる。結果、色ずれ補正制御を精度良く行うことができる。
【0071】
以上で説明したような複合トナーパターンを形成することによって、ブラックのトナーパターンの形成位置をアナログ信号の1つの出力波形から特定することができる。
【実施例2】
【0072】
クリーニング装置にはクリーニング性能の限界(クリーニングできるトナー載り量の限界)がある。そのため、そのクリーニング限界よりも低いトナーの載り量でトナーパターンを形成する必要がある。実施例1において、マゼンタの第1のトナー像801の上にブラックの第2のトナー像及び第3のトナー像を重ねる複合トナーパターン304について述べた。複合トナーパターン304aにはマゼンタのトナーとブラックのトナーとが重なる領域がある。そのため、複合トナーパターン304のトナー量はできる限りトナー載り量少なくなるように設定されている。
【0073】
マゼンタの第1のトナー像801の後端は第3のトナー像803の下に形成されるため、濃度低下領域が生じない。そのため、第1のトナー像の検出結果が閾値レベルDを超える程度のトナー量であれば良い。それに対して、ブラックの第2のトナー像802及び第3のトナー像803は第1のトナー像801の上に形成されるため、濃度低下領域が生じないような濃度で形成する必要がある。
【0074】
そこで、本実施例の画像形成装置では、第1のトナー像801(マゼンタ)が第2のトナー像802及び第3のトナー像803のトナー量(ブラック)よりも少なくなるように設定されている。また、第1のトナー像の載り量は、第1のトナー像を検出した際の出力レベルが図9(a)に示される閾値Dを上回る程度に設定される。また、第1のトナー像801、第2のトナー像802、及び第3のトナー像803のトナー量(濃度)は上記を考量した上で、されにクリーニング装置のクリーニング限界を考量して設定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される像担持体と、
前記像担持体上に有彩色のトナー像を形成する第1の画像形成手段と、
前記像担持体上の無彩色のトナー像を形成する第2の画像形成手段と、
前記有彩色のトナー像に所定の間隔を空けて形成された前記無彩色のトナー像が重畳し、前記所定の間隔から前記有彩色のトナー像が露出するように、前記第1及び第2の画像形成手段に第1の検出用トナーパターンを形成させ、前記第1の画像形成手段に有彩色のトナー像の第2の検出用トナーパターンを形成させる制御手段と、
前記第1の検出用トナーパターン、第2の検出用トナーパターンまたは前記像担持体に光を照射する照射手段と、
前記第1の検出用トナーパターン、第2の検出用トナーパターンまたは前記像担持体からの反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段からの出力に基づいて前記第1、第2の検出用トナーパターンそれぞれに含まれる有彩色のトナー像の相対位置関係を検出することにより前記像担持体上における前記有彩色のトナー像と前記無彩色のトナー像との相対位置関係を特定する検出手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記受光手段は、前記第1の検出用トナーパターン、第2の検出用トナーパターンまたは前記像担持体からの乱反射光を受光することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の画像形成手段は、前記第1の検出用トナーパターンに含まれる前記有彩色の第1のトナー像に重畳する前記無彩色の第2のトナー像と前記無彩色の第3のトナー像とを前記像担持体の回転方向において前記所定の間隔空けて形成し、前記第3のトナー像は前記第2のトナー像よりも前記像担持体の回転方向において上流側に形成され、前記第3のトナー像は前記第1のトナー像の前記像担持体の回転方向の上流側に生じる所定の濃度以下の濃度領域を覆うように前記第1のトナー像に重畳されることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の画像形成手段は、トナーと前記トナーを帯電させるキャリアとを含む現像剤によって像担持体上にトナー像を形成する現像手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
回転駆動される像担持体と、
前記像担持体上に有彩色のトナー像を形成する第1の画像形成手段と、
前記像担持体上の無彩色のトナー像を形成する第2の画像形成手段と、
前記有彩色のトナー像に所定の間隔を空けて形成された前記無彩色のトナー像が重畳し、前記所定の間隔から前記有彩色のトナー像が露出するように、前記第1及び第2の画像形成手段に検出用トナーパターンを形成させる制御手段と、
前記検出用トナーパターンに光を照射する照射手段と、
前記検出用トナーパターンからの反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段からの出力に基づいて前記検出用トナーパターンに含まれる有彩色のトナー像を検出することにより前記像担持体上における前記無彩色のトナー像の位置を特定する検出手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記受光手段は、前記検出用トナーパターン、または前記像担持体からの乱反射光を受光することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記2の画像形成手段は、前記検出用トナーパターンに含まれる前記有彩色の第1のトナー像に重畳する前記無彩色の第2のトナー像と前記無彩色の第3のトナー像とを前記像担持体の回転方向において前記所定の間隔空けて形成し、前記第3のトナー像は前記第2のトナー像よりも前記像担持体の回転方向において上流側に形成され、前記第3のトナー像は前記第1のトナー像の前記像担持体の回転方向の上流側に生じる所定の濃度以下の濃度領域を覆うように前記第1のトナー像に重畳されることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の画像形成手段は、トナーと前記トナーを帯電させるキャリアとを含む現像剤によって像担持体上にトナー像を形成する現像手段を備えることを特徴とする請求項5乃至7いずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−3234(P2012−3234A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82981(P2011−82981)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】