説明

画像形成装置

【課題】周期タイマを用いて給紙開始タイミングを制御する動作において、連続して搬送される前後の用紙の間隔を適正に制御することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、画像形成部により形成されたトナー像を担持する像担持体と、像担持体上のトナー像を用紙に転写する転写部と、用紙を転写部に向けて搬送する搬送ローラを駆動する給紙モータと、給紙モータの駆動を制御する制御部とを備える。制御部は、周期タイマによって所定周期TM1で周期的に通知される複数の時刻T0,T1,T2,T3,...のうち、正規の給紙開始タイミングTSの直前の時刻T0(あるいは直後の時刻T1)において、給紙モータによる給紙を開始し、正規の速度パターンPA0を修正した修正速度パターンPA11に基づいて給紙モータを駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザプリンタなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成部により形成されたトナー像を用紙に転写して、用紙上に画像を印刷する画像形成装置が存在する。このような画像形成装置としては、例えば、イメージングユニット(画像形成部)により形成されたトナー像を中間転写ベルト上に一旦担持し、さらに当該中間転写ベルト上のトナー像を転写部(2次転写部)によって用紙に転写するものが知られている。
【0003】
このような装置においては、複数の用紙が給紙ローラによって所定時間間隔(例えば3秒間隔)で順次に搬送経路に供給され、トナー画像の転写位置(2次転写部)へ向けて順次に搬送される。各用紙の給紙開始タイミングは、供給対象用紙の転写位置到達時刻が中間転写ベルト上のトナー像の転写位置到達時刻に一致するように、定められる。当該正規の給紙開始タイミングで駆動を開始することによれば、中間転写ベルト上のトナー像は用紙PEの正規の位置に転写される。
【0004】
このような給紙開始タイミングを制御する手法として、所定周期を繰り返し計時する制御タイマ(周期タイマ)を用いるものが存在する。当該手法においては、所定周期(例えば10ミリ秒)間隔で周期的に通知される複数の時刻のいずれかにおいて給紙が開始される。
【0005】
また、複数の用紙の搬送に際しては、各用紙が1枚ずつ分離された状態で搬送経路を転写位置に向けて順次に進行する。このとき、順次に搬送される前後の用紙間の間隔(幅)は、印刷出力の高速化に伴って小さくなっており、例えば20ミリメートル程度あるいはそれ以下であることもある。
【0006】
なお、上述のような周期タイマによる制御を行う技術としては、先行技術文献1に記載されているものが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−104589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、周期タイマによる制御動作は、所定の周期間隔で行われるため、実際の給紙開始タイミングが理論上の給紙開始タイミングに対して微小時間ずれることがある。具体的には、当該周期タイマによる制御動作が、所定の周期間隔(例えば10ミリ秒間隔)で行われる場合には、給紙開始タイミングには当該周期間隔(10ミリ秒)以下の誤差が生じ得る。換言すれば、周期タイマによる制御動作においては、周期タイマの分解能に伴う誤差が生じる。そして、当該誤差に起因して、所定位置への用紙の到達時刻は正規時刻からずれてしまう。
【0009】
例えば、或る用紙(前の用紙)に続いて次の用紙を搬送する際に、その給紙が正規の給紙開始タイミングよりも早く開始されると、当該前の用紙の後端と当該次の用紙の前端との間隔が小さくなり過ぎる状況(さらには前後の2枚の用紙が一部において重なってしまう状況)が発生する。あるいは逆に、給紙が正規の給紙開始タイミングよりも遅く開始されると、当該或る用紙の後端と当該次の用紙の前端との間隔(紙間)が大きくなり過ぎる状況が発生する。
【0010】
なお、周期タイマの周期を短くすれば、上記の誤差は小さくなる。しかしながら、ハードウエア上の制約等が存在するため、タイマ周期の短縮には限界が存在する。
【0011】
そこで、この発明は、周期タイマを用いて給紙開始タイミングを制御する動作において、連続して搬送される前後の用紙の間隔(紙間)を適正に制御することが可能な画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決すべく、請求項1の発明は、画像形成装置であって、トナー像を形成する画像形成部と、前記画像形成部により形成されたトナー像を担持する像担持体と、前記像担持体上のトナー像を用紙に転写する転写部と、前記用紙を前記転写部に向けて搬送する搬送ローラを駆動する給紙モータと、前記給紙モータの駆動を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、周期タイマによって所定の周期で周期的に通知される複数の時刻のうち正規の給紙開始タイミングの直前あるいは直後の時刻において、前記給紙モータによる給紙を開始し、正規の速度パターンを修正した修正速度パターンに基づいて前記給紙モータを駆動することを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明に係る画像形成装置において、前記制御手段は、前記複数の時刻のうち前記正規の給紙開始タイミングの直前の時刻において前記給紙モータによる給紙を開始し、前記正規の速度パターンにおける加速度を低減した前記修正速度パターンに基づいて前記給紙モータを駆動することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1の発明に係る画像形成装置において、前記制御手段は、前記複数の時刻のうち前記正規の給紙開始タイミングの直後の時刻において前記給紙モータによる給紙を開始し、前記正規の速度パターンにおける加速度を増大した前記修正速度パターンに基づいて前記給紙モータを駆動することを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1の発明に係る画像形成装置において、前記制御手段は、前記複数の時刻のうち前記正規の給紙開始タイミングの直前の時刻において前記給紙モータによる給紙を開始し、前記正規の速度パターンにおける一定速度域において減速部分を設けた前記修正速度パターンに基づいて前記給紙モータを駆動することを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1の発明に係る画像形成装置において、前記制御手段は、前記複数の時刻のうち前記正規の給紙開始タイミングの直後の時刻において前記給紙モータによる給紙を開始し、前記正規の速度パターンにおける一定速度域において増速部分を設けた前記修正速度パターンに基づいて前記給紙モータを駆動することを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、画像形成装置であって、トナー像を形成する画像形成部と、前記画像形成部により形成されたトナー像を担持する像担持体と、前記像担持体上のトナー像を用紙に転写する転写部と、前記用紙を前記転写部に向けて搬送する搬送ローラを駆動する給紙モータと、前記搬送ローラと前記転写部との間に設けられ、前記用紙の到達を判定するセンサと、前記給紙モータの駆動を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、第1の周期タイマにより第1の周期で周期的に通知される複数の時刻のうち正規の給紙開始タイミングの直前あるいは直後の時刻において前記給紙モータによる給紙を開始し、前記正規の給紙開始タイミングから前記用紙の前記センサへの到達時点までの搬送時間に関する測定値を取得し、前記搬送時間に関する前記測定値と前記搬送時間に関する正規の値との比較結果に基づいて前記正規の速度パターンを修正し前記給紙モータを駆動することを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明は、請求項6の発明に係る画像形成装置において、前記搬送時間に関する測定値は、前記第1の周期よりも短い第2の周期による第2の周期タイマの計時動作によって測定されることを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、請求項6または請求項7の発明に係る画像形成装置において、前記制御手段は、前記搬送時間に関する前記測定値が前記搬送時間に関する正規の値よりも小さい場合には、前記正規の速度パターンにおける一定速度域において減速部分を設けた前記修正速度パターンに基づいて前記給紙モータを駆動することを特徴とする。
【0020】
請求項9の発明は、請求項6または請求項7の発明に係る画像形成装置において、前記制御手段は、前記搬送時間に関する前記測定値が前記搬送時間に関する正規の値よりも大きい場合には、前記正規の速度パターンにおける一定速度域において増速部分を設けた前記修正速度パターンに基づいて前記給紙モータを駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1ないし請求項5に記載の発明によれば、周期タイマによって所定の周期で周期的に通知される複数の時刻のうち正規の給紙開始タイミングの直前あるいは直後の時刻において、給紙モータによる給紙が開始され、正規の速度パターンを修正した修正速度パターンに基づいて給紙モータが駆動される。したがって、周期タイマを用いて給紙開始タイミングを制御する動作において、連続して搬送される前後の用紙の間隔を適正に制御することが可能である。
【0022】
特に、請求項2に記載の発明によれば、正規の給紙開始タイミングの直前の時刻において給紙モータによる給紙が開始され、正規の速度パターンにおける加速度を低減した修正速度パターンに基づいて給紙モータが駆動されるので、或る用紙の後端と次の用紙の前端との間隔(紙間)が小さくなり過ぎることを抑制することができる。
【0023】
また特に、請求項3に記載の発明によれば、正規の給紙開始タイミングの直後の時刻において給紙モータによる給紙が開始され、正規の速度パターンにおける加速度を増大した修正速度パターンに基づいて給紙モータが駆動されるので、或る用紙の後端と次の用紙の前端との間隔(紙間)が大きくなり過ぎることを抑制することができる。
【0024】
また特に、請求項4に記載の発明によれば、正規の給紙開始タイミングの直前の時刻において給紙モータによる給紙が開始され、正規の速度パターンにおける一定速度域において減速部分を設けた修正速度パターンに基づいて給紙モータが駆動されるので、或る用紙の後端と次の用紙の前端との間隔(紙間)が小さくなり過ぎることを抑制することができる。
【0025】
また特に、請求項5に記載の発明によれば、正規の給紙開始タイミングの直後の時刻において給紙モータによる給紙が開始され、正規の速度パターンにおける一定速度域において増速部分を設けた修正速度パターンに基づいて給紙モータが駆動されるので、或る用紙の後端と次の用紙の前端との間隔(紙間)が大きくなり過ぎることを抑制することができる。
【0026】
また、請求項6ないし請求項9に記載の発明によれば、第1の周期タイマにより第1の周期で周期的に通知される複数の時刻のうち正規の給紙開始タイミングの直前あるいは直後の時刻において給紙モータによる給紙が開始され、正規の給紙開始タイミングから用紙のセンサへの到達時点までの搬送時間に関する測定値と当該搬送時間に関する正規の値との比較結果に基づいて正規の速度パターンが修正されて給紙モータが駆動される。したがって、第1の周期タイマを用いて給紙開始タイミングを制御する動作において、連続して搬送される前後の用紙の間隔を適正に制御することが可能である。
【0027】
また特に、請求項8に記載の発明によれば、搬送時間に関する測定値が搬送時間に関する正規の値よりも小さい場合には、正規の速度パターンにおける一定速度域において減速部分を設けた修正速度パターンに基づいて給紙モータが駆動されるので、或る用紙の後端と次の用紙の前端との間隔(紙間)が小さくなり過ぎることを抑制することができる。
【0028】
また特に、請求項9に記載の発明によれば、搬送時間に関する測定値が搬送時間に関する正規の値よりも大きい場合には、正規の速度パターンにおける一定速度域において増速部分を設けた修正速度パターンに基づいて給紙モータが駆動されるので、或る用紙の後端と次の用紙の前端との間隔(紙間)が大きくなり過ぎることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】画像形成装置の制御部周辺に関する機能ブロック図である。
【図3】理論上の速度パターン(正規の速度パターン)を示すタイミングチャートである。
【図4】比較例に係る動作を示すタイミングチャートである。
【図5】第1実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。
【図6】第1実施形態に係る動作を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。
【図8】第3実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。
【図9】第3実施形態に係る動作を示すフローチャートである。
【図10】第4実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。
【図11】第5実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。
【図12】第5実施形態に係る動作を示すフローチャートである。
【図13】第5実施形態に係る動作を示すフローチャートである。
【図14】第6実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
<1.第1実施形態>
<1−1.装置概要>
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す図である。画像形成装置1は、像担持体上の静電潜像を現像して画像を形成する装置である。ここでは、画像形成装置として、電子写真方式の印刷出力装置、より詳細にはタンデム方式のフルカラー印刷出力装置を例示する。
【0032】
画像形成装置1は、ネットワーク等を介して接続された他の情報処理装置(パーソナルコンピュータ等)から伝送されてきた画像データに基づく画像を、後述の印刷機構を用いて印刷出力することによって、カラーページプリンタとして機能する。
【0033】
図1に示すように、画像形成装置1は、複数のイメージングユニット10(詳細には、10Y,10M,10C,10K)を備えている。具体的には、画像形成装置1は、イエローのイメージングユニット10Yと、マゼンタのイメージングユニット10Mと、シアンのイメージングユニット10Cと、ブラックのイメージングユニット10Kとを備えている。各イメージングユニット(画像形成部とも称する)10は、それぞれ、最終出力画像のうちの各色成分(具体的には、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の各成分)の画像を電子写真方式によって形成し、中間転写ベルト(中間転写体とも称される)21に転写する。そして、中間転写ベルト21上に重畳された各色成分の画像が、用紙搬送経路(単に搬送経路とも称する)を通過するシート状の用紙PEにさらに転写されることによって、用紙PEにフルカラー画像が形成される。なお、中間転写ベルト21は、各感光体11(後述)から転写されたトナー画像を一時的に担持する像担持体であるとも表現される。
【0034】
4つのイメージングユニット10(10Y,10M,10C,10K)は、駆動ローラ23と巻き掛けローラ24とに巻き掛けられた中間転写ベルト21の下側直線部分の主に下部において、当該下側直線部分に沿って直列に配置されている。各イメージングユニット10は、それぞれ、感光体11と帯電器12と露光器13と現像器14と第1転写器(1次転写器)15とイレーサ(除電器)16とクリーナ17とを有している。詳細には、各イメージングユニット10において、略円柱状の感光体11の外周を囲むように、帯電器12と露光器13と現像器14と第1転写器15とイレーサ16とクリーナ17とがこの順序で時計回りに配置されている。このうち、第1転写器(詳細には転写ローラ(1次転写ローラ))15は、中間転写ベルト21を隔てて、感光体11と対向する位置に配置されている。
【0035】
中間転写ベルト21は、駆動ローラ23の駆動によって矢印AR1の向きに移動する。また、駆動ローラ23に対向する位置には、中間転写ベルト21を隔てて、転写部20の第2転写器(転写ローラ(2次転写ローラ))22が設けられている。転写ローラ22による電圧印加に応じて、中間転写ベルト21上のトナー画像(フルカラートナー画像等)が、駆動ローラ23と転写ローラ22との対向位置PG20において、搬送経路上流側から搬送されてきた用紙PEに転写される。
【0036】
用紙PEは、給紙部30から供給され、搬送経路上において、レジストローラ(タイミングローラとも称する)41の位置を通過して転写部20へ搬送される。給紙部30は、各イメージングユニット10および転写ローラ22の下側(搬送経路上において上流側)に設けられている。給紙部30は、給紙トレイ31とピックアップローラ32と給紙ローラ33とサバキローラ34とを備えており、レジストローラ(タイミングローラとも称する)41および転写部20等に向けて、用紙PEを供給する。給紙部30(給紙ローラ33等)によって給紙トレイ31から搬送されてきた用紙PEは、互いに対向する2つのレジストローラ41の対向部分(ニップ部分)PG10に突き当てられ、所定の微小期間にわたって一旦停止する。その後、用紙PEは、当該2つのレジストローラ41のニップ部分PG10に挟持された状態で、レジストローラ41および給紙ローラ33等の回転駆動力によって転写部20に向けてさらに搬送される。
【0037】
また、用紙搬送経路においてレジストローラ41よりも上流側には、給紙センサ42が設けられている。給紙センサ42は、用紙搬送経路において給紙ローラ33とレジストローラ41との間に設けられ、用紙の先端位置等を検出する。この給紙センサ42は、用紙PEの先端の到達タイミングを検出することが可能である。
【0038】
上述のように対向位置PG20にて転写部20によりトナー像が転写された用紙PEは、さらに定着部45に向けて搬送される。定着部45は、用紙PEに熱を加えることによって、用紙PE上に形成されたトナー像を用紙PEに定着する。
【0039】
さらに、定着部45の搬送方向下流側には、排出ローラ51が設けられている。排出ローラ51は、定着部45を通過した用紙PEを排出トレイ53に排出する。
【0040】
図2は、画像形成装置1の制御部(コントローラ)100周辺の機能ブロックを示す図である。制御部100は、CPUおよび半導体メモリなどを備えて構成される。当該CPU等において所定のプログラムが実行されることなどによって、後述する各処理が実現される。例えば、制御部100は、給紙モータ駆動回路(ドライバ回路)30Dを用いて、給紙モータ30Mの回転動作を制御することなどによって、ピックアップローラ32、給紙ローラ33およびサバキローラ34の駆動動作等を制御する。また、制御部100は、レジストモータ駆動回路(ドライバ回路)41Dを用いて、レジストモータ41Mの回転動作を制御することなどによって、レジストローラ41の駆動動作等を制御する。同様に、制御部100は、転写ベルト駆動モータ21Mおよび定着モータ45M、ならびにそれぞれの駆動回路21D、45D等を用いて、中間転写ベルト21および定着部45の駆動動作等を制御する。また、制御部100は、給紙センサ42の検出信号値に応じて用紙PEの位置(ないし到達タイミング)を検出し、当該検出結果に基づいてレジストローラ41の駆動動作を制御する。
【0041】
<1−2.動作>
つぎに、画像形成動作について、図3〜図5を参照しながら、給紙モータ30Mの駆動タイミングを中心に説明する。
【0042】
図3は、理論上の速度パターン(正規の速度パターン)PA0を示すタイミングチャートである。図3において太い点線で示すように、制御部100は、理想的には、時刻TSにおいて給紙モータ30Mの駆動を開始する。そして、制御部100は、図3に示す速度パターンPA0に従って、給紙モータ30M(ひいてはピックアップローラ32、給紙ローラ33およびサバキローラ34)を駆動する。この速度パターンPA0は、所定の加速度α0による加速期間、および速度V0による等速期間等をこの順に有する。換言すれば、制御部100は、所定の加速度α0で給紙モータ30Mを加速した後に、給紙モータ30Mを所定の一定速度V0で等速回転させることなどによって、用紙PEを下流側に向けて搬送する。
【0043】
また、上記の正規の給紙開始タイミング(理論上の給紙開始タイミングなどとも称される)TSは、次の条件C1を充足するように予め決定されているものとする。当該条件C1は、上記の速度パターンPA0等に従って給紙モータ30Mが駆動されるときに、中間転写ベルト21上に形成されたトナー像が転写位置PG20に到達する時刻TGにおいて、用紙PEの印字開始部分も当該転写位置PG20に到達すること、である。これにより、速度パターンPA0の駆動動作等によって中間転写ベルト21上のトナー像が用紙PE内の正規の位置に転写される。
【0044】
ところで、上述したように、所定周期を繰り返し計時する周期タイマ(制御タイマ)による制御動作は、ハードウエア等の制約等に起因して、比較的大きな時間間隔(低周期時間間隔TM1)(たとえば、10ミリ秒)で行われることが多い。そして、実際の給紙開始タイミングは、周期タイマの割込処理等によって周期TM1で周期的に通知される複数の時刻T0,T1,T2,T3,...のうちのいずれかのタイミング(離散的なタイミング)である。そのため、実際の給紙開始タイミングTPが理論上の給紙開始タイミングTSに対して微小時間ずれることがある。
【0045】
具体的には、周期タイマによる制御動作が所定の周期間隔(例えば10ミリ秒間隔)TM1で行われる場合には、給紙開始タイミングには当該周期間隔(10ミリ秒)TM1以下の誤差が生じ得る。換言すれば、最大で当該周期間隔TM1に相当する誤差が生じ得る。このように、周期タイマによる制御動作においては、当該周期タイマの分解能(周期隔TM1の大きさ等)に起因する誤差(量子化に伴う誤差)が生じる。
【0046】
図4は、比較例に係る動作を示すタイミングチャートである。図4においては、周期タイマの分解能に起因して、用紙の給紙が微小時間Δtずれて開始される場合が示されている。詳細には、用紙の給紙が正規の時刻TSよりも早い時刻T0に開始される場合が示されている。なお、図4においては、比較例に係る速度パターンが細い点線で示されており、理論上の速度パターンPA0が太い点線で示されている。
【0047】
また、図4に示すように、正規の時刻(理論上の時刻)TSよりも微小時間Δt早く給紙が開始されると、当該誤差Δtに起因して、所定位置への用紙の到達時刻は正規時刻よりも前の時刻になる。換言すれば、或る時刻においては、用紙の先端は正規の位置よりも更に下流側の位置へ到達している。
【0048】
そして、上述したように複数の用紙を搬送する際に上記のような誤差を伴った搬送動作が行われると、給紙が正規の給紙開始タイミングよりも早く開始され、或る用紙の後端(上流側端)と次の用紙の前端(下流側端)との間隔が小さく(狭く)なり過ぎること(さらには、前後の2枚の用紙が一部において重なってしまうこと)が発生する。
【0049】
そこで、この実施形態においては、制御部100は、時刻TSではなく時刻T0において用紙の給紙を開始させるとともに、速度パターンを修正して給紙モータ30Mを駆動する。これにより、用紙の搬送タイミングが調整される。
【0050】
図5は、この実施形態に係る動作を示すタイミングチャートであり、図6は当該動作を示すフローチャートである。なお、図5においては、この実施形態に係る速度パターンPA11が太い実線で示されており、上記の理論上の速度パターンPA0が太い点線で示されている。
【0051】
詳細には、図6に示すように、ステップSP11において、制御部100は、周期タイマによって周期TM1で周期的に通知される複数の時刻T0,T1,T2,T3,...のうち、給紙開始タイミングの理論値TSよりも前の時刻であり且つ値TSに最も近い時刻(例えば時刻T0)を、実際上の給紙開始タイミングTPとして決定する。そして、制御部100は、ステップSP11で時刻TPの到来を検出すると、ステップSP12に進む。ステップSP12において、制御部100は、加速度α11(次述)を算出するとともに、当該加速度α11に基づき速度パターンPA0を修正した速度パターンPA11を作成する。そして、制御部100は、修正後の速度パターンPA11に基づく制御指令を給紙モータ駆動回路30Dに付与し、給紙モータ30Mを駆動させる。
【0052】
たとえば、図5(太線参照)に示すように、制御部100は、周期タイマによって周期TM1で周期的に通知される複数の時刻T0,T1,T2,T3,...のうち、正規の給紙開始タイミングTSの直前の時刻T0において、給紙モータ30Mによる給紙動作を開始する(図6のステップSP11)。そして、制御部100は、正規の速度パターンPA0を修正した修正速度パターンPA11に基づいて給紙モータ30Mを駆動する(ステップSP12,SP13)。詳細には、制御部100は、正規の速度パターンPA0における加速度を値α0から値α11へと低減した修正速度パターンPA11に基づいて給紙モータ30Mを駆動する。なお、ここでは、上述の給紙開始タイミングの決定等の比較的上位階層の制御は、比較的低周期の周期タイマ(周期TM1)を用いて実行されるとともに、給紙開始後の細かな速度追従動作(下位階層の制御動作)は、比較的高周期の周期タイマ(周期TM1よりも短い周期TM2で作動する周期タイマ)等を用いて制御されるものとする。
【0053】
上述の修正速度パターンPA11における加速度α11は、次の式(1)に基づいて算出される。加速度α11は、元の加速度α0よりも小さな値である。
【0054】
【数1】

【0055】
ここにおいて、加速度α11は、次述する値L1と値L2とが等しくなるように定められる。
【0056】
値L1は、図5の部分SA11の面積である。値L1は、正規の時刻TSよりも微小時間Δt(=TS−T0)早く給紙が開始され或る時刻TCまで加速度α11による搬送動作が行われる際に、正規の速度パターンPA0による搬送駆動時に比べて、余分に搬送される搬送距離に相当する。
【0057】
値L2は、図5の部分SB11の面積である。値L2は、正規の時刻TSよりも微小時間Δt早く給紙が開始され或る時刻TC以降において加速度α11による搬送動作が行われる際に、正規の速度パターンPA0による搬送駆動時に比べて、遅延する距離に相当する。
【0058】
ここでは、部分SA11の面積L1と部分SB11の面積L2とが等しくなる旨の条件を用い、幾何学的な解法によって式(1)を導出する。
【0059】
値L1は、底辺長Δt且つ高さV2の三角形領域の面積に相当し、次の式(2)で表現される。ただし、値V2は、時刻TCにおける速度Vである。
【0060】
【数2】

【0061】
また、値L1は、底辺長(V2/α11)且つ高さV2の三角形領域の面積から、底辺長(V2/α0)且つ高さV2の三角形領域の面積を差し引いた値でもある。そのため、値L1は式(3)のようにも表現される。
【0062】
【数3】

【0063】
さらに、値L1と値L2とが等しいため、「V2=V0/2」、である旨の条件C2が成立する。
【0064】
したがって、条件C2と式(2)と式(3)とに基づいて、上記の式(1)が導出される。
【0065】
このような動作によって、複数の用紙のうちの或る用紙が搬送される。また、同様の動作が繰り返されることによって、その他の用紙もそれぞれ搬送される。このようにして、複数の用紙は、所定の搬送時間間隔(例えば、3秒間隔)で給紙トレイ31から転写部20に向けて給紙ローラ等によって順次に供給される。
【0066】
以上のような動作によれば、周期タイマによって周期TM1で周期的に通知される複数の時刻T0,T1,T2,...のうち、正規の給紙開始タイミングの直前の時刻T0において、給紙モータ30Mによる給紙が開始される。そして、正規の速度パターンPA0を修正した修正速度パターンPA11に基づいて給紙モータ30Mが駆動され、用紙の搬送方向における位置が調整される。換言すれば、正規の時刻TSよりも微小時間Δt(=TS−T0)早く給紙が開始される場合においても、正規の速度パターンPA0を修正した速度パターンPA11を用いることによって、時刻TEにおいては用紙の位置が正規の位置に調整される(戻される)。また、その後は、正規のパターンPA0による動作と同様の動作が行われる。
【0067】
すなわち、周期タイマの分解能に起因して理論上の給紙開始時刻TSと実際の給紙開始時刻TPとのずれ(Δt)が存在する場合においても、そのずれ量Δtに基づいて正規の速度パターンが修正されて修正速度パターンが生成される。そのため、給紙開始タイミングの誤差Δtによる影響を低減して、用紙の位置を適切に調整することが可能である。
【0068】
したがって、周期タイマを用いて給紙開始タイミングを制御する動作によって複数の用紙が転写部20に向けて連続的に給紙される場合において、搬送経路にて連続して搬送される前後の用紙の間隔(紙間)を適正に制御することが可能である。より詳細には、或る用紙の後端と次の用紙の前端との間隔(紙間)が小さくなり過ぎること(および前後の2枚の用紙が一部において重なってしまうこと)を抑制することができる。
【0069】
<2.第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態の変形例である。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0070】
上記第1実施形態においては、正規の給紙開始タイミングTSの直前の時刻T0において給紙モータ30Mによる給紙を開始し、正規の速度パターンPA0における加速度を低減した修正速度パターンPA11に基づいて給紙モータ30Mを駆動する技術について説明した。
【0071】
この第2実施形態においては、正規の給紙開始タイミングTSの「直後」の時刻T1において給紙モータ30Mによる給紙を開始し、正規の速度パターンPA0における加速度を「増大」した修正速度パターンPA12に基づいて、給紙モータ30Mを駆動する技術について説明する。
【0072】
図7は、第2実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。
【0073】
図7に示すように、第1実施形態とは異なり、制御部100は、周期タイマによって周期TM1で周期的に通知される複数の時刻T0,T1,T2,T3,...のうち、給紙開始タイミングの理論値TSよりも後の時刻であり且つ値TSに最も近い時刻(正規の給紙開始タイミングTSの直後の時刻T1)を、実際の給紙開始タイミングTPとして決定する。そして、給紙モータ30Mによる給紙動作を開始する。これにより、正規の時刻TSよりも微小時間Δt(=TS−T0)遅く給紙が開始される。
【0074】
そして、制御部100は、正規の速度パターンPA0を修正した修正速度パターンPA12に基づいて給紙モータ30Mを駆動する。詳細には、正規の速度パターンPA0における加速度を値α0から値α12へと増大した修正速度パターンPA12に基づいて給紙モータ30Mを駆動する。
【0075】
修正速度パターンPA12における加速度α12は、次の式(4)に基づいて算出される。加速度α12は、元の加速度α0よりも大きな値である。
【0076】
【数4】

【0077】
このような動作によれば、周期タイマによって周期TM1で周期的に通知される複数の時刻T0,T1,T2,...のうち、正規の給紙開始タイミングの直後の時刻T1において、給紙モータ30Mによる給紙が開始される。そして、正規の速度パターンPA0を修正した修正速度パターンPA12に基づいて給紙モータ30Mが駆動され、用紙の搬送方向における位置が調整される。換言すれば、正規の時刻TSよりも微小時間Δt(=TS−T0)遅く給紙が開始される場合においても、修正速度パターンPA12を用いることによって、所定時間経過後の或る時刻においては用紙の位置が正規の位置に調整される。また、その後は、正規の速度パターンPA0による動作と同様が行われる。このようにして、用紙の搬送位置が適切に調整される。
【0078】
したがって、周期タイマを用いて給紙開始タイミングを制御する動作によって複数の用紙が転写部20に向けて連続的に給紙される場合において、搬送経路にて連続して搬送される前後の用紙の間隔(紙間)を適正に制御することが可能である。より詳細には、或る用紙の後端と次の用紙の前端との間隔(紙間)が大きく(広く)なり過ぎることを抑制することができる。ひいては、単位時間あたりの印刷出力枚数の低下を防止することができる。
【0079】
<3.第3実施形態>
第3実施形態は、第1実施形態の変形例である。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0080】
この第3実施形態においては、第1実施形態と同様に正規の給紙開始タイミングTSの直前の時刻T0において給紙モータ30Mによる給紙が開始される。ただし、その後、第1実施形態とは異なり、正規の速度パターンPA0の一定速度域CV(図8参照)の一部に減速部分(減速域)BPを設けた修正速度パターンPA13に基づいて、給紙モータ30Mが駆動される。
【0081】
図8は、第3実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。
【0082】
図8に示すように、まず、第1実施形態と同様に、制御部100は、周期タイマによって周期TM1で周期的に通知される複数の時刻T0,T1,T2,T3,...のうち、正規の給紙開始タイミングTSの直前の時刻T0において、給紙モータ30Mによる給紙動作を開始する。すなわち、正規の時刻TSよりも微小時間Δt(=TS−T0)早く給紙が開始される。
【0083】
ただし、この第3実施形態においては、制御部100は、正規の速度パターンPA0を修正した修正速度パターンPA13に基づいて給紙モータ30Mを駆動する。修正速度パターンPA13においては、正規の速度パターンPA0の一定速度域CVの一部において減速部分BPが設けられている。この減速部分BPにおいては、加速度(減速度)αdによる減速期間と所定時間TD1に亘る等速期間(速度V3=V0−ΔV)と加速度αuによる加速期間とがこの順序で設けられる。そして、減速部分BPの期間長を調整することによって、用紙の搬送動作が調整される。
【0084】
たとえば、減速量ΔV(>0)が固定値であるとともに減速時の加速度(減速度)αdと加速時の加速度αuとがそれぞれ予め定められている場合には、減速された速度V3の継続時間TD1が次の式(5)に従って決定されればよい。
【0085】
【数5】

【0086】
ここにおいて、式(5)は、次の式(6)および式(7)に基づいて導出される。式(6)は、図8における左側の斜線部分SA13の面積S1を表しており、式(7)は、図8における右側の斜線部分SB13の面積S2を表している。
【0087】
【数6】

【0088】
【数7】

【0089】
そして、これらの値S1と値S2とが互いに同じである旨の条件を用いると、式(5)が導出される。
【0090】
また、図9は、この第3実施形態に係る動作を示すフローチャートである。
【0091】
ステップSP31において時刻TP(ここでは時刻TSよりも前の時刻T0)の到来が検出されない場合には、時間TM1経過後に再びステップSP31が実行される。
【0092】
一方、ステップSP31において時刻TPの到来が検出されると、給紙モータ30Mの駆動が開始される(ステップSP32)。具体的には、制御部100は、加速度α0による加速期間と速度V0による等速期間とをこの順序で有する速度パターンPA13によって給紙モータ30Mを駆動する。
【0093】
そして、ステップSP33では、現在の時刻が一定速度域CVに到達したか否かが判定される。
【0094】
現在時刻が一定速度域CVに未だ到達していないときには、再び周期タイマによる計時時間TM1後に同様の判定動作(ステップSP33)が実行される。
【0095】
一方、現在時刻が一定速度域CVに到達したと判定されるときには、給紙モータ30Mの駆動変更動作が実行される(ステップSP34)。たとえば、一定速度域CVに到達した後において周期タイマによる最初のタイミング信号が検出された時刻T3において、給紙モータ30Mの速度低減動作が開始される。さらに、所定の加速度(減速度)αdで減速され、速度が値ΔV低減して値V3に到達すると、所定期間TD1に亘って等速運動が行われる。そして、この期間TD1(上記の式(5)参照)が経過すると、今度は加速度αuによる加速動作が実行され、元の速度V0にまで加速される。そして、速度が元の速度V0に到達すると、当該速度V0での再び等速運動が実行され、給紙モータ30Mの駆動動作が継続される(ステップSP35)。
【0096】
なお、ここでは、減速開始後の細かな速度追従動作(下位階層の制御動作)は、比較的高周期の周期タイマ(周期TM1よりも短い周期TM2で作動する制御タイマ)等を用いて制御されるものとする。ただし、これに限定されず、減速開始後の細かな速度追従動作の少なくとも一部が比較的低周期(例えば周期TM1)の周期タイマを用いて制御されるようにしてもよい。例えば、比較的低周期の周期タイマに基づく制御動作において、減速完了時点からの時間TD1の経過を検出し、当該検出に応じて再加速する指示(元の速度V0にまで加速度αuで加速する指示)を与えるようにしてもよい。
【0097】
以上のような動作によれば、周期タイマによって周期TM1で周期的に通知される複数の時刻T0,T1,T2,...のうち、正規の給紙開始タイミングの直前の時刻T0において、給紙モータ30Mによる給紙が開始される。そして、正規の速度パターンPA0を修正した修正速度パターンPA13に基づいて給紙モータ30Mが駆動され、用紙の搬送方向における位置が調整される。換言すれば、正規の時刻TSよりも微小時間Δt(=TS−T0)早く給紙が開始される場合においても、修正速度パターンPA13を用いることによって、減速部分BPの終了後の時刻TFにおいては用紙の位置が正規の位置に調整される。また、その後は、正規のパターンPA0による動作と同様が行われる。このようにして、用紙の位置を適切に調整することが可能である。
【0098】
したがって、周期タイマを用いて給紙開始タイミングを制御する動作によって複数の用紙が転写部20に向けて連続的に給紙される場合において、搬送経路にて連続して搬送される前後の用紙の間隔(紙間)を適正に制御することが可能である。より詳細には、或る用紙の後端と次の用紙の前端との間隔(紙間)が小さくなり過ぎること(および前後の2枚の用紙が一部において重なってしまうこと)を抑制することができる。
【0099】
<4.第4実施形態>
第4実施形態は、第3実施形態の変形例である。以下では、第3実施形態との相違点を中心に説明する。
【0100】
この第4実施形態においては、正規の給紙開始タイミングTSの「直後」の時刻T1において給紙モータ30Mによる給紙が開始され、正規の速度パターンにおける一定速度域CVにおいて「増速部分AP」を設けた修正速度パターンPA14に基づいて給紙モータ30Mが駆動される。
【0101】
図10は、第4実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。
【0102】
図10に示すように、第3実施形態とは異なり、制御部100は、周期タイマによって周期TM1で周期的に通知される複数の時刻T0,T1,T2,T3,...のうち、正規の給紙開始タイミングTSの直後の時刻T1において、給紙モータ30Mによる給紙動作を開始する。すなわち、正規の時刻TSよりも微小時間Δt(=TS−T0)遅く給紙が開始される。
【0103】
ただし、この第4実施形態においては、制御部100は、正規の速度パターンPA0を修正した修正速度パターンPA14に基づいて給紙モータ30Mを駆動する。詳細には、正規の速度パターンPA0における一定速度域CVにおいて増速部分APを設けた修正速度パターンPA14に基づいて給紙モータ30Mを駆動する。
【0104】
たとえば、増速後の速度が固定値V4(=V0+ΔV)であるとともに、速度増大時の加速度αuと減速時の加速度(減速度)αdとがそれぞれ予め定められている場合には、増速後の速度V4の継続時間TD2は次の式(8)に従って決定されればよい。
【0105】
【数8】

【0106】
このような動作によれば、周期タイマによって周期TM1で周期的に通知される複数の時刻T0,T1,T2,...のうち、正規の給紙開始タイミングの直後の時刻T1において、給紙モータ30Mによる給紙が開始される。そして、正規の速度パターンPA0を修正した修正速度パターンPA14に基づいて給紙モータ30Mが駆動され、用紙の搬送方向における位置が調整される。換言すれば、正規の時刻TSよりも微小時間Δt(=TS−T0)遅く給紙が開始される場合においても、修正速度パターンPA14を用いることによって、増速部分APの終了の時刻においては用紙の位置が正規の位置に調整される。
【0107】
したがって、周期タイマを用いて給紙開始タイミングを制御する動作によって複数の用紙が転写部20に向けて連続的に給紙される場合において、搬送経路にて連続して搬送される前後の用紙の間隔(紙間)を適正に制御することが可能である。より詳細には、或る用紙の後端と次の用紙の前端との間隔(紙間)が大きくなり過ぎることを抑制することができる。ひいては、単位時間あたりの印刷出力枚数の低下を防止することができる。
【0108】
<5.第5実施形態>
上記第1実施形態から第4実施形態においては、正規の給紙開始タイミング(理論上の給紙開始タイミング)TSと実際の給紙開始タイミングTPとのずれ量Δtに基づいて正規の速度パターンが修正されて、修正速度パターンが生成される場合を例示した。
【0109】
この第5実施形態においては、理論上の給紙開始時点(正規の給紙開始タイミング)TSから給紙センサへの用紙の実際の到達時点TBまでの搬送時間TLを測定し、当該搬送時間に関する測定値TLmと搬送時間に関する正規の値(理論値)TLdとの比較結果に基づいて正規の速度パターンが修正されて修正速度パターンが生成される場合を例示する。
【0110】
図11は、第5実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。また、図12および図13は、第5実施形態に係る動作を示すフローチャートである。図12は、給紙モータ30Mの制御動作を示すフローチャートであり、図13は、給紙センサ42位置への到達時間の測定動作を示すフローチャートである。図12の動作においては、比較的低周期の周期TM1(例えば10ミリ秒)の第1の周期タイマが用いられ、図13の測定動作においては、比較的高周期の周期TM2(例えば1ミリ秒)(TM2<TM1)の第2の周期タイマが用いられる。
【0111】
図11に示すように、この実施形態においては、第2の周期タイマ(周期TM2)の計時動作(時間測定動作)によって、用紙の正規の給紙開始時点TSから用紙の給紙センサへの到達時点TBまでの搬送時間TLが測定される。この第2の周期タイマの計時動作は、上記の周期TM1よりも短い周期TM2(TM2<TM1)で繰り返される判定動作等によって実現される。
【0112】
具体的には、図13に示すように、制御部100(詳細には、高周期処理部)は、理論上の給紙開始タイミングTSの到来を検出する(ステップSP61でYES)とステップSP62に進む。ステップSP62では、値TLmに関するカウント値をカウントアップして値TLmを更新し、ステップSP63では、給紙センサ42の用紙検出信号(オン(ON)信号)の有無が判定される。ステップSP62,SP63でのカウントアップ動作および判定動作等は、時間TM2毎に繰り返され、ステップSP63で給紙センサ42の用紙検出信号(オン(ON)信号)が検出されたと判定されるまで継続される。これにより、搬送時間に関する測定値TLmが取得される。なお、測定値TLmは、ステップSP62でのカウント値に周期TM2を乗じることによって算出される。
【0113】
また、制御部100(詳細には低周期処理部)は、給紙開始タイミングの決定等の比較的上位階層の制御を、第3実施形態と同様、比較的低周期の周期タイマ(周期TM1)を用いて行う。ただし、この第5実施形態においては、ずれ量Δtではなく、給紙センサ42による搬送期間TLの測定値TLmを用いて、搬送動作が実行される点で第3実施形態と相違する。
【0114】
具体的には、図12に示すように、まず、ステップSP51,SP52の処理が実行される。ステップSP51,SP52の処理は、第3実施形態におけるステップSP31,SP32の処理と同様の処理である。
【0115】
その後、ステップSP53において、給紙センサ42位置への用紙到来検出動作(換言すれば搬送時間TLの測定動作)(図13参照)が終了したか否かが判定される。当該測定動作が未完了の場合には、時間TM1経過後に再びステップSP53が実行される。一方、当該測定動作が既に完了している場合には、ステップSP54に進む。
【0116】
ステップSP54においては、搬送時間TLに関する正規の値(理論上の値)TLdと搬送時間TLに関する測定値TLmとが比較される。値TLmが値TLd以上である場合(時刻TBmが時刻TBd以降の時刻である場合)には、ステップSP55の動作を伴うことなく、ステップSP56に進む。一方、値TLmが値TLdよりも小さい場合(時刻TBmが時刻TBdよりも前の時刻である場合)、すなわち、用紙の前端が理論値よりも早く給紙センサ42の位置に到達している、と判定される場合には、ステップSP55に進む。
【0117】
ステップSP55においては、給紙モータ30Mの駆動変更動作が実行される。たとえば、第3実施形態のステップSP34と同様の動作が実行される。ただし、式(5)の値Δt(値TSと値TPとのずれ量)の代わりに、値TLdと値TLmとの差Δt2(=|TLd−TLm|)が用いられて、値TD1が算出される。そして、算出された値TD1を用いて修正速度パターンPA13における減速部分(減速域)BPが実現され、給紙モータ30Mが駆動される。
【0118】
そして、速度が元の速度V0に到達すると、当該速度V0での再び等速運動が実行され、給紙モータ30Mの駆動動作が継続される(ステップSP56)。
【0119】
以上のような動作によれば、周期タイマによって周期TM1で周期的に通知される複数の時刻T0,T1,T2,...のうち、正規の給紙開始タイミングの直前の時刻T0において、給紙モータ30Mによる給紙が開始される。また、搬送時間TLに関する測定値TLmと搬送時間TLに関する正規の値TLdとの比較結果に基づいて、正規の速度パターンPA0を修正した修正速度パターンPA13が生成される。そして、当該修正速度パターンPA13に基づいて給紙モータ30Mが駆動される。
【0120】
このように、正規の時刻TBdよりも微小時間Δt2(=|TLd−TLm|=|TBd−TBm|)早い時刻TBmにおいて用紙が給紙センサ42の位置に到達した場合においても、修正速度パターンPA13を用いることによって、その減速部分BP実行後の所定時刻においては用紙の位置が正規の位置に調整される。
【0121】
したがって、周期タイマを用いて給紙開始タイミングを制御する動作によって複数の用紙が転写部20に向けて連続的に給紙される場合において、搬送経路にて連続して搬送される前後の用紙の間隔(紙間)を適正に制御することが可能である。より詳細には、或る用紙の後端と次の用紙の前端との間隔(紙間)が小さくなり過ぎること(および前後の2枚の用紙が一部において重なってしまうこと)を抑制することができる。
【0122】
特に、この第5実施形態においては、用紙の正規の給紙開始時点TSから用紙の給紙センサ42への実際の到達時点TBmまでの実際の搬送時間TLmに基づいて、正規の速度パターンが修正されて修正速度パターンが生成されている。
【0123】
したがって、給紙初期段階における様々な要因に基づく誤差が生じる場合においても、当該誤差に起因する影響を低減して、用紙の位置を適切に調整することが可能である。たとえば、まず、上記各実施形態と同様に、給紙開始タイミングのずれ量(TP−TS)に起因する誤差に起因する影響を低減することが可能である。さらには、当該給紙開始タイミングのずれ量(TP−TS)に起因する誤差のみならず、給紙開始後における他の要因、たとえば、搬送速度のばらつき等の要因に基づく搬送時間誤差による影響をも低減することも可能である。
【0124】
<6.第6実施形態>
第6実施形態は、第5実施形態の変形例である。以下では、第5実施形態との相違点を中心に説明する。
【0125】
図14は、第6実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。
【0126】
図14に示すように、この第6実施形態においては、第5実施形態とは異なり、値TLmが値TLdより大きい(時刻TBmが時刻TBdよりも後の時刻である)、すなわち用紙の前端が理論値よりも遅く給紙センサ42の位置に到達している、と判定される場合に、第4実施形態と同様の速度調整動作が実行される。図14は、このような態様に係る動作を示すタイミングチャートである。図14に示すように、給紙センサ42による用紙前端の検出時刻TBm以後において、「増速部分AP」を設けた修正速度パターンPA14に基づく給紙モータ30Mの駆動動作が実行される。
【0127】
このような動作によれば、用紙が正規の時刻TBdよりも微小時間Δt2早く給紙センサ42の位置に到達した場合においても、修正速度パターンPA14を用いることによって、その減増速分AP実行後の所定の時刻においては用紙の位置が正規の位置に調整される。
【0128】
したがって、周期タイマを用いて給紙開始タイミングを制御する動作によって複数の用紙が転写部20に向けて連続的に給紙される場合において、搬送経路にて連続して搬送される前後の用紙の間隔(紙間)を適正に制御することが可能である。より詳細には、或る用紙の後端と次の用紙の前端との間隔(紙間)が大きくなり過ぎることを抑制することができる。ひいては、単位時間あたりの印刷出力枚数の低下を防止することができる。
【0129】
特に、この第6実施形態においては、用紙の給紙開始時点から用紙の給紙センサへの到達時点までの実際の搬送時間TLmに基づいて、修正速度パターンが生成されている。
【0130】
したがって、給紙初期段階における様々な要因に基づく誤差が生じる場合においても、当該誤差に起因する影響を低減して、用紙の位置を適切に調整することが可能である。たとえば、まず、上記各実施形態と同様に、給紙開始タイミングのずれ量(TP−TS)に起因する誤差に起因する影響を低減することが可能である。さらには、当該給紙開始タイミングのずれ量(TP−TS)に起因する誤差のみならず、給紙開始後におけるその他の要因、たとえば、搬送速度のばらつき及び/又はローラスリップ等の要因に基づく搬送時間誤差による影響をも低減することも可能である。
【0131】
<7.その他>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0132】
たとえば、上記実施形態においては、第1実施形態に係る速度調整動作と第2実施形態に係る速度調整動作とを別々の装置で実行する場合を例示したが、これに限定されず、1つの装置において双方の態様に係る速度調整動作を実行するようにしてもよい。詳細には、制御部100は、周期タイマによって周期TM1で周期的に通知される複数の時刻T0,T1,T2,T3,...のうち、給紙開始タイミングの理論値TSに最も近い値TP(時刻TSの直前の時刻T0、あるいは時刻TSの直後の時刻T1)を、実際の給紙開始タイミングTPとして決定するようにしてもよい。そして、時刻T0が実際の給紙開始タイミングTPとして決定された場合には速度パターンPA11に基づく動作が実行され、時刻T1が実際の給紙開始タイミングTPとして決定された場合には速度パターンPA12に基づく動作が実行されるようにしてもよい。
【0133】
同様に、1つの装置において、第3実施形態に係る速度調整動作と第4実施形態に係る速度調整動作とが実行されるようにしてもよい。たとえば、時刻T0が実際の給紙開始タイミングTPとして決定された場合には速度パターンPA13に基づく動作が実行され、時刻T1が実際の給紙開始タイミングTPとして決定された場合には速度パターンPA14に基づく動作が実行されるようにしてもよい。
【0134】
さらに、同様に、1つの装置において、第5実施形態に係る速度調整動作と第6実施形態に係る速度調整動作とが実行されるようにしてもよい。詳細には、値TLmが値TLdより小さい場合には第5実施形態と同様の速度調整動作が実行され、値TLmが値TLdより大きい場合には第6実施形態と同様の速度調整動作が実行されるようにしてもよい。
【0135】
また、上記各実施形態等においては、中間転写ベルト21を介してトナー像を用紙に転写する際に本発明の思想を適用する技術が例示されているが、これに限定されず、感光体ドラムから直接的にトナー像を用紙に転写する際に上記の思想を適用するようにしてもよい。換言すれば、感光体ドラムを像担持体として用い、当該感光体ドラム上のトナー像を用紙に転写する際に上記の思想を適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0136】
1 画像形成装置
10 イメージングユニット
20 転写部
21 中間転写ベルト
30 給紙部
30M 給紙モータ
32 ピックアップローラ
33 給紙ローラ
34 サバキローラ
41 レジストローラ
TP 実際の給紙開始タイミング
TS 正規の(理論上の)給紙開始タイミング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置であって、
トナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部により形成されたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を用紙に転写する転写部と、
前記用紙を前記転写部に向けて搬送する搬送ローラを駆動する給紙モータと、
前記給紙モータの駆動を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、周期タイマによって所定の周期で周期的に通知される複数の時刻のうち正規の給紙開始タイミングの直前あるいは直後の時刻において、前記給紙モータによる給紙を開始し、正規の速度パターンを修正した修正速度パターンに基づいて前記給紙モータを駆動することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記複数の時刻のうち前記正規の給紙開始タイミングの直前の時刻において前記給紙モータによる給紙を開始し、前記正規の速度パターンにおける加速度を低減した前記修正速度パターンに基づいて前記給紙モータを駆動することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記複数の時刻のうち前記正規の給紙開始タイミングの直後の時刻において前記給紙モータによる給紙を開始し、前記正規の速度パターンにおける加速度を増大した前記修正速度パターンに基づいて前記給紙モータを駆動することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記複数の時刻のうち前記正規の給紙開始タイミングの直前の時刻において前記給紙モータによる給紙を開始し、前記正規の速度パターンにおける一定速度域において減速部分を設けた前記修正速度パターンに基づいて前記給紙モータを駆動することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記複数の時刻のうち前記正規の給紙開始タイミングの直後の時刻において前記給紙モータによる給紙を開始し、前記正規の速度パターンにおける一定速度域において増速部分を設けた前記修正速度パターンに基づいて前記給紙モータを駆動することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置であって、
トナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部により形成されたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を用紙に転写する転写部と、
前記用紙を前記転写部に向けて搬送する搬送ローラを駆動する給紙モータと、
前記搬送ローラと前記転写部との間に設けられ、前記用紙の到達を判定するセンサと、
前記給紙モータの駆動を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
第1の周期タイマにより第1の周期で周期的に通知される複数の時刻のうち、正規の給紙開始タイミングの直前あるいは直後の時刻において、前記給紙モータによる給紙を開始し、
前記正規の給紙開始タイミングから前記用紙の前記センサへの到達時点までの搬送時間に関する測定値を取得し、
前記搬送時間に関する前記測定値と前記搬送時間に関する正規の値との比較結果に基づいて前記正規の速度パターンを修正し、前記給紙モータを駆動することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置において、
前記搬送時間に関する測定値は、前記第1の周期よりも短い第2の周期による第2の周期タイマの計時動作によって測定されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記搬送時間に関する前記測定値が前記搬送時間に関する正規の値よりも小さい場合には、前記正規の速度パターンにおける一定速度域において減速部分を設けた前記修正速度パターンに基づいて前記給紙モータを駆動することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項6または請求項7に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記搬送時間に関する前記測定値が前記搬送時間に関する正規の値よりも大きい場合には、前記正規の速度パターンにおける一定速度域において増速部分を設けた前記修正速度パターンに基づいて前記給紙モータを駆動することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−62161(P2012−62161A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207666(P2010−207666)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】