説明

画像形成装置

【課題】ダイレクトタンデム方式の画像形成装置において、モノクロモードにおける逆転写ゴーストの発生を抑制することができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】
用紙Pを搬送する搬送ベルト18と、用紙Pに転写されるトナー像を担持する各色の感光ドラム12と、搬送ベルト18を挟んで各感光ドラム12に対向される各転写ローラ19とを備えるカラーレーザプリンタ1において、カラー(イエロー、マゼンタ、シアン)の転写ローラ19を対応する感光ドラム12に向かって付勢する圧縮ばね31の付勢力を、直動カム機構30により、カラーモードにおいて設定される第1の付勢力と、モノクロモードにおいて第1の付勢力よりも小さく設定される第2の付勢力とに変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザプリンタなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のカラープリンタとして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーに対応して並列配置される複数の感光体と、各感光体に対向される搬送ベルトとを備えるタンデム型カラーレーザプリンタが知られている。
【0003】
例えば、前後方向に並列配置される4つ(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の感光体ドラムと、各感光体ドラムに接触され、前方から後方へ用紙を搬送する転写ベルトと、転写ベルトを挟んで各感光体ドラムに対向される転写ローラとを備えるレーザプリンタが提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−98772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、上記した特許文献1では、モノクロ画像を形成するときには、ブラックのトナーのみを使用するため、カラー(イエロー、マゼンタ、シアン)の各感光体ドラムは、トナー像が担持されていない状態で、転写ベルトに接触されている。
【0006】
そのため、ブラックの感光体ドラムに担持されたトナー像が、一旦、用紙に転写された後、ブラックの感光体ドラムよりも後方(用紙の搬送方向下流側)に配置されるカラーの感光体ドラムに対向されたときに、用紙から、カラーの感光体ドラムに逆転写される場合がある。
【0007】
この場合、逆転写されたトナー像は、感光体ドラムが1周した後、本来の画像に対してずれた位置において、再度、用紙に転写される(逆転写ゴースト)。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ダイレクトタンデム方式の画像形成装置において、モノクロモードにおける逆転写ゴーストの発生を抑制することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明は、被転写部材を搬送する搬送ベルトと、被転写部材に転写される現像剤像を担持する複数の感光体とを備え、モノクロ画像を形成するモノクロモードと、カラー画像を形成するカラーモードとに切り替えられる画像形成装置であって、複数の前記感光体は、ブラックの現像剤像を担持する第1感光体と、ブラック以外の現像剤像を担持する複数の第2感光体とを備え、前記搬送ベルトを挟んで前記第1感光体に対向される第1転写部材と、前記搬送ベルトを挟んで各前記第2感光体に対向される第2転写部材と、前記第1転写部材に対応して設けられ、前記第1転写部材を前記第1感光体に向かって付勢する第1付勢部材と、各前記第2転写部材に対応して設けられ、各前記第2転写部材を、対応する前記第2感光体に向かって付勢する複数の第2付勢部材と、各前記第2付勢部材の付勢力を、前記カラーモードにおいて設定される第1の付勢力と、前記モノクロモードにおいて前記第1の付勢力よりも小さく設定される第2の付勢力とに変更する変更手段とを備え、前記第1感光体は、被転写部材の搬送方向において、少なくとも1つの前記第2感光体よりも上流側に配置されており、前記変更手段は、少なくとも、前記第1感光体の前記搬送方向下流側に隣接配置されている前記第2感光体に対応する前記第2転写部材の付勢力を、変更することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モノクロモードにおいて、少なくとも、第1感光体の搬送方向下流側に隣接配置されている第2感光体に対応する第2付勢部材の付勢力を、カラーモードにおいて設定される第1の付勢力よりも小さな第2の付勢力に変更することができる。
【0011】
そのため、モノクロモードにおいて、第1感光体の搬送方向下流側に隣接配置されている第2感光体に対応する第2転写部材の、第2感光体への押圧力を低減させることができる。
【0012】
これにより、第1感光体から被転写部材に転写された現像剤像が第2感光体に逆転写されることを抑制することができる。
【0013】
その結果、ダイレクトタンデム方式の画像形成装置において、モノクロモードにおける逆転写ゴーストの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の画像形成装置の一例としてのカラーレーザプリンタを示す側断面図である。
【図2】第1実施形態における転写ユニットの動作を説明するための側面図であって、(a)は、カラーモード時を示し、(b)は、モノクロモード時を示す。
【図3】第2実施形態における転写ユニットの動作を説明するための側面図であって、(a)は、カラーモード時を示し、(b)は、モノクロモード時を示す。
【図4】第2実施形態における転写ユニットの動作を説明するための正面図であって、(a)は、カラーモード時を示し、(b)は、モノクロモード時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.カラーレーザプリンタの全体構成
図1に示すように、画像形成装置の一例としてのカラーレーザプリンタ1は、横置きタイプのダイレクトタンデム型カラーレーザプリンタである。カラーレーザプリンタ1は、本体ケーシング2内に、被転写部材の一例としての用紙Pを給紙するための給紙部3と、給紙された用紙Pに画像を形成するための画像形成部4とを備えている。
(1)本体ケーシング
本体ケーシング2は、給紙部3および画像形成部4を収容する側面視略矩形状のボックス状に形成されており、その一方側壁には、後述するプロセスユニット9を着脱させるためのフロントカバー5が形成されている。フロントカバー5は、本体ケーシング2に対して下端部を支点として揺動自在に設けられている。
【0016】
なお、以下の説明において、フロントカバー5が設けられる側(図1における紙面左側)を前側とし、その反対側(図1における紙面右側)を後側とする。また、カラーレーザプリンタ1を前側から見たときを左右の基準とする。すなわち、図1の紙面手前側が右側であり、紙面奥側が左側である。
(2)給紙部
給紙部3は、用紙Pを収容する給紙トレイ6を備えている。給紙トレイ6は、本体ケーシング2内の底部に着脱自在に装着されている。
【0017】
給紙トレイ6に収容されている用紙Pは、給紙トレイ6の前端部上側に配置される1対のレジストローラ7間に向けて1枚ずつ給紙され、所定のタイミングで、画像形成部4(感光ドラム12(後述)と搬送ベルト18(後述)との間)に向けて搬送される。
(3)画像形成部
画像形成部4は、スキャナユニット8、プロセスユニット9、転写ユニット10、および定着ユニット11を備えている。
(3−1)スキャナユニット
スキャナユニット8は、本体ケーシング2の上部に配置されている。スキャナユニット8は、実線で示すように、4つの感光ドラム12(後述)に向けて、画像データに基づいて、レーザービームをそれぞれ出射し、感光ドラム12(後述)を露光する。
(3−2)プロセスユニット
(3−2−1)プロセスユニットの構成
プロセスユニット9は、スキャナユニット8の下側であって、転写ユニット10の上側に配置されており、感光体の一例としての感光ドラム12、スコロトロン型帯電器13および現像ユニット14を備えている。
【0018】
感光ドラム12は、左右に延びる略円筒形状に形成されており、左右に沿って設けられ、前後方向に互いに間隔を隔てて、4つ並列配置されている。具体的には、前側から後側に向かって、第1感光体の一例としてのブラック感光ドラム12Kと、3つの第2感光体の一例としての、イエロー感光ドラム12Y、マゼンタ感光ドラム12Mおよびシアン感光ドラム12Cとが、順次配置されている。
【0019】
スコロトロン型帯電器13は、感光ドラム12の後上側に、感光ドラム12と間隔を隔てて対向配置されている。
【0020】
現像ユニット14は、各感光ドラム12に対応するように、感光ドラム12の上側に配置されている。具体的には、前側から後側に向かって、ブラック現像ユニット14K、イエロー現像ユニット14Y、マゼンタ現像ユニット14Mおよびシアン現像ユニット14Cが、順次配置されている。
【0021】
また、各現像ユニット14は、それぞれ、現像ローラ15を備えている。
【0022】
現像ローラ15は、現像ユニット14の下端において、後側から露出されるように回転可能に支持されており、感光ドラム12に対して前上側から対向し、接触されている。
【0023】
現像ユニット14には、現像ローラ15の上側の空間において、各色に対応する現像剤の一例としてのトナーが収容されている。
(3−2−2)プロセスユニットでの現像動作
現像ユニット14内のトナーは、現像ローラ15の回転に伴って、現像ローラ15の表面に担持される。
【0024】
一方、感光ドラム12の表面は、感光ドラム12の回転に伴って、スコロトロン型帯電器13により一様に帯電された後、スキャナユニット8からのレーザービーム(図1破線参照。)の高速走査により露光される。これにより、用紙Pに形成すべき画像に対応した静電潜像が感光ドラム12の表面に形成される。
【0025】
感光ドラム12がさらに回転すると、現像ローラ15の表面に担持されているトナーが、感光ドラム12の表面に形成されている静電潜像に供給される。これにより、感光ドラム12の静電潜像は可視像化され、感光ドラム12の表面には、反転現像によるトナー像が担持される。
(3−3)転写ユニット
転写ユニット10は、本体ケーシング2内において、給紙部3の上側であって、プロセスユニット9の下側において、前後方向に沿って配置されている。この転写ユニット10は、駆動ローラ16、従動ローラ17、搬送ベルト18、および4つの転写ローラ19を備えている。
【0026】
駆動ローラ16および従動ローラ17は、互いに前後方向に間隔を隔てて対向配置されている。
【0027】
搬送ベルト18は、各感光ドラム12に対して下側から対向され、その上側部分が各感光ドラム12と接触するように、駆動ローラ16および従動ローラ17の周りに巻回されている。また、搬送ベルト18は、駆動ローラ16の駆動により、各感光ドラム12と接触する搬送ベルト18の上側部分が前側から後側に向かって移動するように、周回移動されている。
【0028】
各転写ローラ19は、搬送ベルト18の上側部分を挟んで各感光ドラム12に対向するように設けられている。具体的には、前側から後側に向かって、ブラック感光ドラム12Kに対向される第1転写部材の一例としてのブラック転写ローラ19Kと、イエロー感光ドラム12Y、マゼンタ感光ドラム12Mおよびシアン感光ドラム12Cにそれぞれ対向される3つの第2転写部材の一例としての、イエロー転写ローラ19Y、マゼンタ転写ローラ19Mおよびシアン転写ローラ19Cとが、順次配置されている。
【0029】
そして、給紙部3から給紙された用紙Pは、搬送ベルト18によって、前側から後側に向かって、各感光ドラム12と各転写ローラ19とが対向する転写位置を順次通過するように搬送される。その搬送中に、各感光ドラム12に担持されている各色のトナー像が、用紙Pに順次転写され、カラー画像が形成される。
(3−4)定着ユニット
定着ユニット11は、転写ユニット10の後側に配置され、加熱ローラ20、および加熱ローラ20に対向する加圧ローラ21を備えている。転写ユニット10において、用紙Pに転写されたカラー画像は、用紙Pが加熱ローラ20と加圧ローラ21との間を通過する間に、加熱および加圧されることによって用紙Pに熱定着される。
(4)排紙
トナー像が定着した用紙Pは、各排紙ローラ22によって、図示しないUターンパスを通過するように搬送され、スキャナユニット8の上側に形成される排紙トレイ23上に排紙される。
2.転写ユニットの詳細
(1)転写ユニットの構成
第1実施形態における転写ユニット10は、上記し、図2に示すように、各感光ドラム12に下側から接触される搬送ベルト18と、搬送ベルト18を挟んで各感光ドラム12に対向される各転写ローラ19とを備えている。
【0030】
搬送ベルト18は、導電性を有する弾性材料などから無端状に形成されている。
【0031】
各転写ローラ19は、それぞれ、転写ローラ軸34とローラ部分35とを備えている。
【0032】
転写ローラ軸34は、金属などの導電性材料から左右に延びる棒状に形成されている。
【0033】
ローラ部分35は、導電性を有する弾性材料などから、転写ローラ軸34の表面を被覆するように、略円筒形状に形成されている。
【0034】
また、転写ユニット10は、圧縮ばね31と、変更手段の一例としての直動カム機構30を備えている。
【0035】
圧縮ばね31は、各転写ローラ19の転写ローラ軸34と、対応する各支持部材32(後述)との間に1つずつ設けられている。詳しくは、ブラック転写ローラ19Kに対応して設けられる第1付勢部材の一例としてのブラック側圧縮ばね31Aと、カラーの各転写ローラ19に対応して設けられる第2付勢部材の一例としての各カラー側圧縮ばね31Bとが設けられている。
【0036】
各圧縮ばね31は、一端が、対応する転写ローラ軸34の左右方向両端部に接続され、他端が、対応する支持部材32(後述)の上端に接続されている。また、各圧縮ばね31のばね定数は、すべて同一に設定されている。
【0037】
これにより、各圧縮ばね31は、対応する転写ローラ19を、対応する感光ドラム12に向かって弾性的に押圧している。
【0038】
直動カム機構30は、支持部材32と直動カム33とを備えている。
【0039】
支持部材32は、下側が開放された側面視略U字形状に形成され、各転写ローラ19に対応して、転写ローラ軸34の左右両端の下側に間隔を隔てて1つずつ配置されている。詳しくは、ブラック転写ローラ19Kに対応して設けられるブラック側支持部材32Aと、カラーの各転写ローラ19(イエロー転写ローラ19Y、マゼンタ転写ローラ19Mおよびシアン転写ローラ19C)に対応して設けられる各カラー側支持部材32Bとが設けられている。また、支持部材32の後側上端部には、前方に向かうに従って上側へ傾斜する支持部材側傾斜面36が形成されている。
【0040】
また、カラー側支持部材32Bは、転写ユニット10のフレーム(図示せず)に、転写ローラ軸34に近接する近接位置(図2(a)参照)と、転写ローラ軸34から離間される離間位置(図2(b)参照)とに、上下にスライド自在に支持されている。また、カラー側支持部材32Bは、常には、近接位置に配置されるように、図示しない付勢手段により付勢されている。
【0041】
なお、ブラック側支持部材32Aは、転写ユニット10のフレーム(図示せず)に位置固定されている。
【0042】
直動カム33は、カラーの各転写ローラ19と、各カラー側支持部材32Bとの間において、前後に延びる略杆状に形成されている。また、直動カム33は、3つの変位部37を備えている。
【0043】
各変位部37は、各カラー側支持部材32Bに対応するように、前後方向に間隔を隔てて並列配置されている。また、各変位部37は、直動カム33の下面から下側に向かって膨出する側面視略台形状に形成されている。また、各変位部37には、その前端部において、前方に向かうに従って上方に傾斜するカム側傾斜面38が形成され、その下面は、カム側傾斜面38の後端部から連続して後方に向かって延びる平坦面39として形成されている。
【0044】
そして、直動カム33は、各変位部37が対応するカラー側支持部材32Bの後側に配置されるように、転写ユニット10のフレーム(図示せず)に前後にスライド自在に支持されている(図2(a)参照)。
【0045】
このとき、各変位部37のカム側傾斜面38は、対応するカラー側支持部材32Bの支持部材側傾斜面36に後方から対向されている。
(2)圧縮ばねの付勢力変更動作
直動カム33の各変位部37が、対応するカラー側支持部材32Bの後方に配置されているときには、図2(a)に示すように、直動カム33は、カラー側支持部材32Bを押圧しておらず、カラー側支持部材32Bは、付勢手段(図示せず)の付勢力により、近接位置に配置されている。
【0046】
このとき、カラー側圧縮ばね31Bは、対応するカラー側支持部材32Bによって圧縮され、第1の圧縮状態となっている。これにより、カラー側圧縮ばね31Bは、対応する転写ローラ19を、感光ドラム12に向かって第1の付勢力で付勢する。
【0047】
そして、本体ケーシング2内の図示しない駆動手段により、直動カム33が前側に向かってスライドされると、各変位部37のカム側傾斜面38が、対応するカラー側支持部材32Bの支持部材側傾斜面36に後側から当接される。
【0048】
そして、直動カム33がさらに前側へ移動されると、各カラー側支持部材32Bの支持部材側傾斜面36が、対応する変位部37のカム側傾斜面38に対して相対的に後下側へスライドされるように、対応する変位部37のカム側傾斜面38によって下側へ押圧される。これにより、カラー側支持部材32Bが近接位置から離間位置へ向かって下側へ移動される。
【0049】
すると、カラー側圧縮ばね31Bは、図2(b)に示すように、第1の圧縮状態よりも復元された第2の圧縮状態となり、第1の付勢力よりも小さな第2の付勢力で、対応する転写ローラ19を感光ドラム12に向かって付勢する。なお、第2の付勢力は、すべてのカラー側圧縮ばね31Bにおいて、同一に設定されている。
(3)転写ローラへの電力供給
各転写ローラ19の転写ローラ軸34は、本体ケーシング2内に設けられる電源41に、転写バイアスライン42を介して電気的に接続されている。
【0050】
そして、各転写ローラ19には、カラーレーザプリンタ1がカラーモード(図2(a)参照)またはモノクロモード(図2(b)参照)のいずれの場合においても、各転写バイアスライン42を介して、電源から転写バイアスが印加されている。
3.画像形成動作
(1)カラーモードにおける画像形成動作
カラーレーザプリンタ1がカラーモードのときには、上記し、図2(a)に示すように、直動カム33は、後側に退避されている。
【0051】
このとき、カラー側支持部材32Bは、近接位置に配置されている。
【0052】
そして、上記したように、用紙Pは、各感光ドラム12と各転写ローラ19とが対向する転写位置を順次通過するように、搬送ベルト18によって前側から後側に向かって搬送される。その搬送中に、各感光ドラム12に担持されている各色のトナー像が、転写バイアスによって用紙Pに順次転写され、カラー画像が形成される。
(2)モノクロモードにおける画像形成動作
カラーレーザプリンタ1がカラーモードからモノクロモードに切り替えられるときには、本体ケーシング2内の駆動手段(図示せず)により、直動カム33が前側に向かってスライドされる。
【0053】
すると、上記したように、カラー側支持部材32Bが、直動カム33によって下側に向かって押圧され、近接位置から離間位置へ向かって移動される。
【0054】
これにより、カラー側圧縮ばね31Bは、第1の付勢力よりも小さな第2の付勢力で、対応する転写ローラ19を感光ドラム12に向かって付勢する。
【0055】
つまり、カラーレーザプリンタ1がモノクロモードに切り替えられたときには、カラーの転写ローラ19の感光ドラム12への押圧力が低減される。
【0056】
そして、上記したように、用紙Pは、各感光ドラム12と各転写ローラ19とが対向する転写位置を順次通過するように、搬送ベルト18によって前側から後側に向かって搬送される。
【0057】
すると、用紙Pがブラック感光ドラム12Kに対向されたときに、ブラック感光ドラム12Kに担持されているブラックのトナー像が、用紙Pに転写される。
【0058】
その後、用紙Pは、トナー像が担持されていないカラーの各感光ドラム12と、対応する各転写ローラ19との間を順次通過される。
【0059】
このとき、上記したように、カラーの各転写ローラ19は、感光ドラム12への押圧力が低減されている。また、カラーの各転写ローラ19には、転写バイアスが印加されている。
【0060】
そのため、用紙Pに転写されたブラックのトナー像は、転写ローラ19の感光ドラム12への相対的に低減された押圧力によって感光ドラム12の表面に付着されにくくなり、転写バイアスによって、用紙Pの表面に担持される。
【0061】
つまり、用紙Pに転写されたブラックのトナー像がカラーの各感光ドラム12に逆転写されることが、抑制される。
【0062】
これにより、モノクロモードにおいて、逆転写ゴーストを発生させることなく、用紙Pにモノクロ画像が形成される。
【0063】
なお、カラーモードに切り替えられると、直動カム33は、本体ケーシング2内の駆動手段(図示せず)により、再び、後側に向かってスライドされる。
4.作用効果
(1)このカラーレーザプリンタ1によれば、図2に示すように、モノクロモードにおいて、カラー側圧縮ばね31Bの付勢力を、カラーモードにおいて設定される第1の付勢力よりも小さな第2の付勢力に変更することができる。
【0064】
そのため、モノクロモードにおいて、カラーの各転写ローラ19(イエロー転写ローラ19Y、マゼンタ転写ローラ19Mおよびシアン転写ローラ19C)の、感光ドラム12への押圧力を低減させることができる。
【0065】
これにより、ブラック感光ドラム12Kから用紙Pに転写されたトナー像が、カラーの各感光ドラム12に転写されることを、抑制することができる。
【0066】
その結果、ダイレクトタンデム方式のカラーレーザプリンタ1において、モノクロモードにおける逆転写ゴーストの発生を抑制することができる。
(2)また、このカラーレーザプリンタ1によれば、図2に示すように、ブラック感光ドラム12Kは、すべてのカラーの感光ドラム12よりも、前側に配置されている。
【0067】
そのため、カラーモードにおいて、ブラックのトナー像の上に、順次、カラーのトナー像を重ね合わせて、より多くの色を発色させることができる(例えば、ブラックの下地にイエローを重ねて、茶色を発色させるなど。)。
【0068】
その結果、カラーモードにおいて、多様な発色を実現することができる。
(3)また、このカラーレーザプリンタ1によれば、図2に示すように、支持部材32および直動カム33は、すべてのカラーの転写ローラ19の付勢力を変更する。
【0069】
そのため、すべてのカラーの転写ローラ19の、感光ドラム12への押圧力を画一的に低減させることができる。
【0070】
その結果、モノクロモードにおける逆転写ゴーストの発生を、より確実に抑制することができる。
(4)また、このカラーレーザプリンタ1によれば、カラー側圧縮ばね31Bの付勢力は、モノクロモードにおいて、すべて同一に設定されている。
【0071】
そのため、カラー側圧縮ばね31B毎に変更手段を設けることなく、直動カム33の移動によって、カラー側圧縮ばね31Bの付勢力を、一度に同一の付勢力に変更することができる。
【0072】
その結果、カラー側圧縮ばね31B毎に変更手段を設ける構成と比べて、簡易な構成で、カラーの側圧縮ばね31Bの付勢力を一律に変更することができる。
(5)また、このカラーレーザプリンタ1によれば、図2に示すように、モノクロモードおよびカラーモードにおいて、すべての転写ローラ19には、転写バイアスが印加されている。
【0073】
そのため、カラーモードだけでなくモノクロモードにおいても、用紙Pがカラーの各感光ドラム12に対向するときに、各転写ローラ19の転写バイアスによって、トナー像を用紙Pに担持させることができる。
【0074】
その結果、用紙Pに転写されたトナー像がカラーの感光ドラム12に転写されることを、より抑制することができる。
5.第2実施形態
上記した第1実施形態では、直動カム機構30によって各圧縮ばね31の圧縮状態を変更することにより、各圧縮ばね31の転写ローラ19に対する付勢力を変更している。
【0075】
一方、第2実施形態では、図3および図4に示すように、1対の圧縮ばね51を有する付勢ユニット53と、偏心カム機構50とを備え、偏心カム機構50によって、付勢ユニット53の圧縮ばね51を転写ローラ軸34に対して接触または離間させることにより、転写ローラ19に対する付勢力を変更する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の部材には同じ符号を付し、その説明を省略する。
(1)転写ユニットの構成
第2実施形態の転写ユニット10は、付勢ユニット53と、変更手段の一例としての偏心カム機構50とを備えている。
【0076】
付勢ユニット53は、各転写ローラ19に対応して、転写ローラ軸34の左右両端の下側に1つずつ配置されている。詳しくは、ブラック転写ローラ19Kに対応して設けられる第1付勢部材の一例としてのブラック側付勢ユニット53Aと、カラーの転写ローラ19に対応して設けられる第2付勢部材の一例としてのカラー側付勢ユニット53Bとが設けられている。
【0077】
各付勢ユニット53は、それぞれ、支持部材55と、1対の圧縮ばね51とを備えている。
【0078】
支持部材55は、下側が開放された側面視略U字形状に形成され、転写ローラ軸34の下側に間隔を隔てて配置されている。
【0079】
両圧縮ばね51は、互いに左右に隣接配置されている。すなわち、圧縮ばね51は、転写ローラ軸34の左右方向両端部において、それぞれ2つずつ配置されている(図4参照)。
【0080】
左右方向内側の圧縮ばね51は、一端が、転写ローラ軸34の左右方向端部に接続され、他端が、支持部材55の上端に接続されている。
【0081】
また、カラー側付勢ユニット53Bの左右方向外側の圧縮ばね51は、一端が、押圧部材54(後述)の下面に接続され、他端が、支持部材55の上端に接続されている。なお、ブラック側付勢ユニット53Aの左右方向外側の圧縮ばね51は、一端が、ブラック転写ローラ19Kの転写ローラ軸34の左右方向端部に接続され、他端が、対応する支持部材55の上端に接続されている。
【0082】
各付勢ユニット53において、左右方向内側の各圧縮ばね51のばね定数は、すべて同一に設定され、左右方向外側の各圧縮ばね51のばね定数も、すべて同一に設定されている。すなわち、各付勢ユニット53の付勢力は、すべて同一に設定されている。
【0083】
偏心カム機構50は、カラーの各転写ローラ19の左右両端に1つずつ設けられ、それぞれ、押圧部材54と偏心カム52とを備えている。
【0084】
押圧部材54は、支持部材55と転写ローラ軸34との間において、左右方向外側の圧縮ばね51の上側に設けられ、前後に延びる略杆状に形成されている。押圧部材54は、前端部において、転写ユニット10のフレーム(図示せず)に回転自在に支持されている。また、押圧部材54は、左右方向外側の圧縮ばね51の付勢力により、常には、右側面視反時計回りに付勢されており、転写ローラ軸34に下側から当接されている。
【0085】
偏心カム52は、押圧部材54の後端部の上側に配置され、側面視略楕円形状に形成されている。偏心カム52は、常には、前後方向に延びるように配置され(図3(a)参照)、前端部において、転写ユニット10のフレーム(図示せず)に回転自在に支持されている。
【0086】
また、偏心カム52は、前後方向に沿って配置されているときには、押圧部材54の後端部に対して、上下に間隔を隔てて離間され(図3(a)参照)、上下方向に沿って垂下するように回動されたときには、押圧部材54の後端部に当接されるように(図3(b)参照)、配置されている。
(2)付勢ユニットの付勢力変更動作
偏心カム52は、上記し、図3(a)および図4(a)に示すように、前後方向に沿って配置されているときには、押圧部材54の後端部の上側から離間されている。そして、押圧部材54は、左右方向外側の圧縮ばね51の付勢力により、転写ローラ軸34に下側から当接されている。
【0087】
このとき、カラー側付勢ユニット53Bは、両圧縮ばね51の付勢力(すなわち、左右方向外側の圧縮ばね51の付勢力と、左右方向内側の圧縮ばね51の付勢力との合力)により、転写ローラ19を感光ドラム12に向かって付勢する。なお、このときのカラー側付勢ユニット53Bの付勢力を第1の付勢力とする。また、ブラック側付勢ユニット53Aも、カラー側付勢ユニット53Bと同様に、第1の付勢力により、転写ローラ19を感光ドラム12に向かって付勢する。
【0088】
そして、偏心カム52は、本体ケーシング2内の図示しない駆動手段により、右側面視時計回りに回動される。すると、偏心カム52は、押圧部材54の後端部に上側から当接され、左右方向外側の圧縮ばね51の付勢力に抗して、押圧部材54の後端部を下側に向かって押圧する。
【0089】
すると、押圧部材54は、左右方向外側の圧縮ばね51の付勢力に抗して、右側面視時計回りに回動され、転写ローラ軸34から下側へ離間される。
【0090】
これにより、図3(b)および図4(b)に示すように、左右方向外側の圧縮ばね51の転写ローラ軸34に対する付勢が解除され、カラー側付勢ユニット53Bは、左右方向内側の圧縮ばね51の付勢力のみにより、転写ローラ19を感光ドラム12に向かって付勢する。すなわち、カラー側付勢ユニット53Bは、第1の付勢力よりも小さな第2の付勢力で、対応する転写ローラ19を感光ドラム12に向かって付勢する。
【0091】
第2実施形態のカラーレーザプリンタ1においても、上記した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
6.第3実施形態
上記した各実施形態では、ブラック側圧縮ばね31Aまたはブラック側付勢ユニット53Aの付勢力は、カラーモードとモノクロモードとにおいて変更されなかったが、第3実施形態では、モノクロモードにおいて、ブラック側圧縮ばね31Aまたはブラック側付勢ユニット53Aの付勢力を、カラーモードにおける付勢力よりも小さくなるように変更する。なお、第3実施形態において、上記した各実施形態と同様の部材には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0092】
例えば、直動カム機構30または偏心カム機構50を、すべての転写ローラ19に対応するように構成し、モノクロモードにおいて、すべての圧縮ばね31または付勢ユニット53の付勢力を、カラーモードにおける付勢力よりも小さくなるように変更する。
【0093】
第3実施形態のカラーレーザプリンタ1によれば、モノクロモードにおいて、カラーの感光ドラム12に対するカラーの各転写ローラ19の押圧力だけでなく、ブラック感光ドラム12Kに対するブラック転写ローラ19Kの押圧力も低減される。
【0094】
そのため、ブラック転写ローラ19Kの押圧力によって、ブラック感光ドラム12Kから用紙Pに、トナーが過剰に転写されることを抑制することができる。
【0095】
これにより、ブラックのトナー像が転写された用紙Pがカラーの感光ドラム12に対向されたときに、用紙Pのトナー像がカラーの各感光ドラム12に逆転写されることを、より抑制することができる。
【0096】
その結果、モノクロモードにおける逆転写ゴーストの発生を、より抑制することができる。
【0097】
また、第3実施形態のカラーレーザプリンタ1においても、上記した各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
7.その他の実施形態
また、上記した各実施形態では、すべてのカラー側圧縮ばね31Bまたはカラー側付勢ユニット53Bの付勢力を変更したが、イエロー転写ローラ19Yに対する圧縮ばね31または付勢ユニット53の付勢力のみを変更することもできる。
【0098】
モノクロモードにおける逆転写ゴーストは、主として、ブラック感光ドラム12Kの後側の直後に隣接するイエロー感光ドラム12Yにおいて発生しやすく、イエロー感光ドラム12Yよりも後側に配置されるマゼンタ感光ドラム12Mやシアン感光ドラム12Cでは、発生頻度が低い。
【0099】
そのため、イエロー転写ローラ19Yのイエロー感光ドラム12Yへの押圧力を低減させて、イエロー感光ドラム12Yにおける逆転写ゴーストの発生を抑制することにより、モノクロモードにおける逆転写ゴーストの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 カラーレーザプリンタ
12 感光ドラム
18 搬送ベルト
19 転写ローラ
30 直動カム機構
31A ブラック側圧縮ばね
31B カラー側圧縮ばね
50 偏心カム機構
53A ブラック側付勢ユニット
53B カラー側付勢ユニット
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写部材を搬送する搬送ベルトと、被転写部材に転写される現像剤像を担持する複数の感光体とを備え、モノクロ画像を形成するモノクロモードと、カラー画像を形成するカラーモードとに切り替えられる画像形成装置であって、
複数の前記感光体は、ブラックの現像剤像を担持する第1感光体と、ブラック以外の現像剤像を担持する複数の第2感光体と
を備え、
前記搬送ベルトを挟んで前記第1感光体に対向される第1転写部材と、
前記搬送ベルトを挟んで各前記第2感光体に対向される第2転写部材と、
前記第1転写部材に対応して設けられ、前記第1転写部材を前記第1感光体に向かって付勢する第1付勢部材と、
各前記第2転写部材に対応して設けられ、各前記第2転写部材を、対応する前記第2感光体に向かって付勢する複数の第2付勢部材と、
各前記第2付勢部材の付勢力を、前記カラーモードにおいて設定される第1の付勢力と、前記モノクロモードにおいて前記第1の付勢力よりも小さく設定される第2の付勢力とに変更する変更手段と
を備え、
前記第1感光体は、被転写部材の搬送方向において、少なくとも1つの前記第2感光体よりも上流側に配置されており、
前記変更手段は、少なくとも、前記第1感光体の前記搬送方向下流側に隣接配置されている前記第2感光体に対応する前記第2転写部材の付勢力を、変更することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
前記第1感光体は、すべての前記第2感光体よりも、前記搬送方向上流側に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記変更手段は、すべての前記第2転写部材の付勢力を変更することを特徴とする、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
各前記第2付勢部材の付勢力は、前記モノクロモードにおいて、すべて同一に設定されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記モノクロモードにおける前記第1付勢部材の付勢力は、前記カラーモードにおける前記第1付勢部材の付勢力よりも小さく設定されていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記モノクロモードおよび前記カラーモードにおいて、前記第1転写部材、および、すべての前記第2転写部材には、転写バイアスが印加されていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−63596(P2012−63596A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208004(P2010−208004)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】