説明

画像形成装置

【課題】第1液体を貯留する第1液体タンク及び第2液体を貯留する第2液体タンクを有する液体カートリッジを装着する場合に、第2液体が消費し尽くされたときの第1液体の残存量を少なくすることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1が、第1液体残量検出手段67により検出される第1液体の残量と第2液体残量検出手段68により検出される第2液体の残量に基づき第1液体の残量よりも第2液体の残量が少ないとの所定条件が成立しているか否かを判断する条件判断手段81を備える。条件判断手段81により所定条件が成立していると判断された場合、画像形成領域内に吐出される第2液体の量が、条件判断手段81により所定条件が非成立であると判断される場合に当該画像形成領域内に吐出される第2液体の量よりも少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の画像形成用の第1液体を記録媒体に吐出するよりも前に、第1液体の成分を凝集又は析出させる処理液等の画質向上用の第2液体を記録媒体に吐出するように構成された画像形成装置に関する。特に、第1液体を貯留する第1液体タンク及び第2液体を貯留する第2液体タンクを有する液体カートリッジを装着可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画質向上用の第2液体を記録媒体に吐出した後に、この第2液体が吐出された記録媒体位置に画像形成用の第1液体を吐出する画像形成装置が知られている。これにより、第1液体を記録媒体上に定着させやすくし、裏抜けを防止したり画像濃度を高めたりすることが可能となる。
【0003】
特許文献1は、かかる画像形成装置に適用可能な液体供給源として、単一のカートリッジ本体に第1液体を貯留する第1液体用タンクと第2液体を貯留する第2液体用タンクとを設けて成る、いわゆる一体式の液体カートリッジを開示している。このように一体式とすることにより、液体供給源の簡素化等が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−216391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1液体及び第2液体は、画像を形成するための他、第1液体及び第2液体をそれぞれ吐出する2種のヘッドをメンテナンスするため等、様々な理由で消費されていき、常に一定の割合で消費されるとは限らない。このため、一体式の液体カートリッジにおいては、第1液体又は第2液体のどちらかが先に消費し尽くされて空になることが多い。第1液体が第2液体に先立って空になった場合、第2液体のみでは画像を形成することはできないので、第2液体が残っていたとしても、液体カートリッジを交換する必要がある。
【0006】
逆に、第2液体が第1液体に先立って空になった場合、第1液体は残っているので画像の形成自体は可能であるものの、裏抜けの防止や画像濃度の確保等を目的とした第2液体の使用を必須とする画像の形成を行うには、やはり液体カートリッジを交換する必要がある。しかし、この場合については、第1液体と第2液体とが残存している時の第2液体の使用方法を当初の使用方法から変更することにより改善できる可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、いわゆる一体式の液体カートリッジを装着するように構成された画像形成装置において、第2液体が消費し尽くされたときの第1液体の残存量を少なくすることができる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像形成装置は、画像を形成するための第1液体を貯留する第1液体タンクと、前記第1液体に作用して前記第1液体中の成分を凝集又は析出させる第2液体を貯留する第2液体タンクとを有する液体カートリッジと、前記液体カートリッジが装着される装着部と、前記第1液体タンクより供給される前記第1液体を記録媒体に吐出するための第1液体吐出ヘッドと、前記第2液体タンクより供給される前記第2液体を記録媒体に吐出するための第2液体吐出ヘッドと、記録媒体上に形成されるべき画像に係る画像データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記画像データに基づいて、記録媒体上の前記画像が形成される画像形成領域に前記第1液体が吐出されるように前記第1液体吐出ヘッドを制御する第1液体吐出制御手段と、前記画像データに基づいて、前記画像形成領域内の少なくとも一部に前記第2液体が吐出されるように前記第2液体吐出ヘッドを制御する第2液体吐出制御手段と、を備えた画像形成装置であって、前記第1液体タンクに貯留されている前記第1液体の残量を検出する第1液体残量検出手段と、前記第2液体タンクに貯留されている前記第2液体の残量を検出する第2液体残量検出手段と、前記第1液体残量検出手段により検出される前記第1液体の残量と前記第2液体残量検出手段により検出される前記第2液体の残量に基づき前記第1液体の残量よりも前記第2液体の残量が少ない所定条件が成立しているか否かを判断する条件判断手段と、を備え、前記第2液体吐出制御手段は、前記条件判断手段により前記所定条件が成立していると判断された場合に、前記画像形成領域内に吐出される前記第2液体の量が、前記条件判断手段により前記所定条件が非成立であると判断される場合に前記画像形成領域内に吐出される前記第2液体の量よりも少なくなるように、前記第2液体吐出ヘッドを制御する。
【0009】
前記構成によれば、第1液体と第2液体とが残存しているときに第2液体の消費が第1液体よりも進行しているか否かを、所定条件の成否から判断することができる。そして、第2液体の消費が第1液体よりも進行しており第2液体が第1液体に先立って消費し尽くされるおそれがある場合に、第2液体の吐出量が節約される。これにより、その後、第2液体が消費し尽くされたときの第1液体の残存量をなるべく少なくすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、いわゆる一体式液体カートリッジが装着される画像形成装置において、第2液体が消費し尽くされたときの第1液体の残存量をなるべく少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタの全体的な構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す制御部の全体的な構成を示すブロック図である。
【図3】用紙の記録面に形成されるべき画像の一例を示す図である。
【図4】図3の丸IV周辺における画像データ及び処理液吐出データを示す図である。(a)は、所定条件非成立時のインク吐出データの一例、(b)は所定条件非成立時の処理液吐出データの一例、(c)は所定条件成立時のインク吐出データの一例、(d)は所定条件成立時の処理液吐出データの一例、(e)は所定条件成立時のインク吐出データの変形例、(f)は所定条件成立時の処理液吐出データの変形例、(g)は所定条件成立時のインク吐出データの変形例、(h)は、所定条件成立時の処理液吐出データの変形例である。
【図5】(a)が所定条件成立時における残量差と処理液の吐出率との関係の一例を示すグラフであり、(b)が所定条件成立時における残量比と処理液の吐出率との関係の一例を示すグラフである。
【図6】図2に示す制御部により実行される処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。ここでは、本発明に係る画像形成装置をインクジェットプリンタ(以下、単に「プリンタ」と称す)に適用して説明する。なお、全図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタ1の全体的な構成を示す概略図である。図1に示すように、プリンタ1は、略直方体状の筐体2を有している。筐体2の外上部には、画像形成済みの用紙Mを貯留しておくための排紙部3が設けられている。筐体2内には、主として、給紙機構5、搬送機構7、2つのヘッド8及び制御部9が設けられている。制御部9は、給紙機構5、搬送機構7及びヘッド8の動作を制御する。
【0014】
給紙機構5は、給紙トレイ11及び給紙ローラ12を有する。給紙トレイ11は、筐体2の内部に取外し可能に設けられ、上部に開口を有する箱状に形成されている。給紙トレイ11内には、ユーザにより複数の用紙Mが上下に積層された状態で収納される。給紙ローラ12は、給紙トレイ11に収納された用紙のうち最上層の用紙Mに上側から接触する。給紙ローラ12が回転すると、最上層の用紙Mが給紙トレイ11の上方開口から搬送経路に送り出される。搬送経路は、まず給紙トレイ11の上方開口から上方に延び、次に筐体2内の図1中右方向に向けて水平に直線的に延び、更に上方に延びており、搬送経路の終端は、筐体2の上部に形成された排出口2aを介して排紙部3に繋がっている。搬送機構7は、複数のローラ対21を備え、これらローラ対21は、搬送経路の延在方向に沿って間隔をおいて設けられている。各ローラ対21は、用紙Mを記録面に接触しうるローラとその裏面に接触しうるローラとの2つのローラから成り、ローラの少なくとも一方は、モータ(不図示)からの回転力が入力されて回転駆動される駆動ローラである。駆動ローラが回転駆動されると、給紙トレイ11の開口より送り出された用紙Mが、搬送経路に沿って各ローラ対21を順次通り抜け、排紙部3まで搬送される。以下、用紙Mが搬送される方向を「搬送方向」と称して説明する。
【0015】
2つのヘッド8は、画像を形成するためのインクを吐出する記録ヘッド8aと、インクに作用して画質を向上させるための処理液を吐出する処理液ヘッド8bとから成る。各ヘッド8は、搬送経路のうち用紙が水平に直線的に搬送される部分の上方に配置されている。処理液ヘッド8bは、記録ヘッド8aよりも搬送方向の上流側に配置されているので、用紙Mの記録面上には処理液がインクに先立って着弾する。
【0016】
このプリンタ1では、記録ヘッド8aより吐出されるインクに顔料インクが使用され、処理液は、顔料インクの着色材である顔料を凝集させる性質を有し、カチオン性化合物(とりわけ、カチオン系高分子やカチオン性界面活性剤)、カルシウム塩、マグネシウム塩等の多価金属塩を含有する液体等からインクの性質に応じて適宜選択される。かかる処理液が予め塗布された用紙Mの記録面にインクが着弾すると、多価金属塩等が顔料に作用し、不溶性又は難溶性の金属複合体等が凝集により形成される。その結果、着弾したインクの用紙M内への浸透度が低下し、インクが用紙Mの記録面上に定着しやすくなるので、裏抜け防止や画像濃度向上等の効果を得て画質が高くなる。染料インクが使用される場合は、同様の効果を得るべく、染料インクの着色剤である染料に作用して染料を析出させる性質を有した処理液が適宜利用される。
【0017】
本実施形態に係るプリンタ1はいわゆるラインプリンタであり、各ヘッド8は互いに同様にして構成され、幅方向(図1において紙面と直交する方向)に長尺な略直方体形状に形成されている。各ヘッド8は、液体を通流させるヘッド本体41を有している。ヘッド本体41の下面は、搬送経路に沿って水平に搬送される用紙Mの記録面と上下に間隔をおいて対向するよう配置される吐出面42を成している。吐出面42には複数の吐出口が幅方向に配列され、ヘッド本体41内を通流する液体は、各吐出口を介して下方に吐出される。ヘッド本体41は、液体に吐出エネルギーを付与するヘッドアクチュエータ61(図3参照)を備えている。制御部9がヘッドアクチュエータ61の動作を制御することにより、搬送される用紙Mの記録面に液体を着弾させて画像を形成すべく、適宜量の液体が適宜タイミングで複数の吐出口より選択的に吐出される。
【0018】
本実施形態に係るヘッド8は、搬送方向及び幅方向に600dpiの解像度で画像を形成可能に構成されている。そのため、用紙Mの記録面には、幅方向及び縦方向に夫々1/600インチ間隔の格子状に区画された複数の単位領域(画素領域)が規定され、また、吐出面42には、用紙Mに規定される幅方向1列分の単位領域数に対応する数の吐出口が、幅方向に1/600インチ間隔で配列される。この微小間隔での配列を実現するために、複数の吐出口が千鳥配列されていてもよい。すなわち、複数の吐出口の一部が、他の吐出口に対して搬送方向に異なる位置に配置されていてもよい。
【0019】
各ヘッド8の下方には、ヘッド8をメンテナンスするためのメンテナンス装置45が設けられている。メンテナンス装置45は、キャップ46及びポンプ47を有している。例えば、キャップ46は、搬送経路よりも下方に退避した退避位置と、搬送経路よりも上方に突出した突出位置との間で昇降可能であり、キャップ46が退避位置に位置しているときには用紙Mがメンテナンス装置45と干渉せずに搬送され得るようになり、キャップ46が突出位置に位置するときには吐出面42がキャップ46に密着してヘッド8の吐出口がキャップ46内に封止される。ポンプ47は、吐出口が封止されているキャップ46の内部に負圧を印加し、ヘッド本体41内の液体を強制吸引する。これにより、ヘッド本体41内に進入した気泡を取り除いたり、吐出口周辺で乾燥により固化した液体滓を取り除いたりすることができる。液体の揮発性等に応じて、1回のメンテンナンスにおけるインク吸引量と処理液吸引量とを異ならせてもよいし、記録ヘッド8aのメンテナンス周期と処理液ヘッド8bのメンテナンス周期とを異ならせてもよい。
【0020】
筐体2の内底部には、液体供給源としての液体カートリッジ50を着脱可能に装着するための装着部2bが設けられている。ただし、装着部2bの配置位置は適宜変更可能である。
【0021】
液体カートリッジ50は、略直方体状のカートリッジ本体51を有している。本実施形態に係る液体カートリッジ50は、いわゆる一体式であり、カートリッジ本体51内にインクを貯留するインクタンク52と、処理液を貯留する処理液タンク53とを設けて成る。画像の形成及びヘッド8のメンテナンス等の理由でインクが消費されると、インクタンク52内のインクがインク供給系統(図示せず)を介して記録ヘッド8aへと供給される。また、処理液が消費されると、処理液タンク53内の処理液が処理液供給系統(図示せず)を介して処理液ヘッド8bへと供給される。
【0022】
なお、これらインク供給系統及び処理液供給系統は、樹脂製チューブを備えて成り、液体カートリッジ50をヘッド8に機械的に接続し、且つ、各液体タンク52,53の内部空間を各ヘッド8a,8bにおける液体が通流する部分に連通させる。インク供給系統には、インクタンク52よりも小容量のインクサブタンクが備えられることがある。かかるインクサブタンクは、ヘッドに取り付けられるものや、筐体2に支持されるものがある。この場合、インク消費に応じてインクサブタンクからヘッド本体41にインクが順次供給され、インクサブタンク内のインクが空になるとインクタンク52内のインクがインクサブタンクに補充される。このため、インクタンク52内のインクの残量が、記録ヘッド8aでのインク消費と実時間で対応して変化しない。以下では、特に説明しない限り、用語「インク残量」は、液体カートリッジ50のインクタンク52内のインクの残量であるとする概念のみならず、インクサブタンクをインク供給系統に設けた場合においてインクタンク52内のインクの残量とインクサブタンク内のインクの残量との和であるとする概念、更にはチューブ内に存在するインク量も加算されるとする概念を含むものとしている。言い換えれば、「インク残量」は、液体カートリッジ50の初期貯留量から新品装着後のインク消費量を減算した値であるとの概念を含む。処理液に関しても同様である。
【0023】
図2は、図1に示す制御部9の全体的な構成を示すブロック図である。図2に示す制御部9は、CPUと、CPUが実行する制御プログラム及びそれに使用されるデータを書き替え可能に記憶するEEPROMと、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAMとを含む。制御プログラムがCPUで実行されることにより、図2に示す制御部9を構成する各機能部71〜85が実現される。なお、制御プログラムは、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM及びメモリカード等の各種記録媒体に記録され得るものであって暗号化されたり圧縮されたりしていてもよく、また、記録媒体に記録された制御プログラムは、制御部9で直接実行可能でもよいしEEPROMにインストールして初めて実行可能となるものでもよい。
【0024】
図2に示すように、制御部9は、記録ヘッド制御部71、処理液ヘッド制御部72、給紙搬送制御部73、表示制御部74、画像データ記憶部75、インク吐出データ作成部76、インク吐出データ記憶部77、処理液吐出データ作成部78、処理液吐出データ記憶部79、メンテナンス制御部80、条件判断部81、抽出部82、画像データ補正部83、処理液吐出データ補正部84及び媒体種別判断部85を有している。
【0025】
給紙搬送制御部73は、印刷指令が有ったとき等の必要に応じて、用紙Mを搬送経路に送り出すように給紙機構5を制御し、且つ送り出された用紙Mを排紙部3まで搬送するように搬送機構7を制御する。表示制御部74は、ユーザにプリンタ1に関連する各種情報を表示させるように表示装置64を制御する。表示される情報には、例えば、液体カートリッジ50内のインク又は処理液が消費し尽くされたために液体カートリッジ50の交換を要する旨を表す情報が含まれる。表示装置64は、ユーザが視認可能な環境に設けられており、例えば、プリンタ1と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ65(以下、単に「PC65」と称す)のモニタであっても、筐体2の外面に備え付けられたディスプレイ(不図示)であってもよい。メンテナンス制御部80は、ヘッド8のメンテナンスの要否を判断し、必要に応じてヘッド8がメンテナンスされるようにメンテナンス装置45を制御する。
【0026】
画像データ記憶部75は、PC65等から転送されたデータであって用紙M上に記録されるべき画像に係るデータである画像データを記憶する。インク吐出データ作成部76は、画像データ記憶部75に記憶された画像データに基づいて各記録ヘッド8aから用紙M上に区画される各単位領域にそれぞれ吐出するインクの量(例えばゼロ、小滴、中滴、大滴の4段階のいずれか)を規定するインク吐出データを作成する。インク吐出データ作成部76で作成されたインク吐出データは、インク吐出データ記憶部77に記憶される。なお、画像データの値が、各記録ヘッド8aから用紙M上に区画される各単位領域にそれぞれ吐出するインクの量(例えばゼロ、小滴、中滴、大滴の4段階のいずれか)を示していてもよく、そのような形態においては、インク吐出データ作成部76及びインク吐出データ記憶部77が省略される。
【0027】
図3は、用紙M上に記録されるべき画像の一例を示している。図示の画像は、全体的には濃淡が付けられた星形状の画像であり、5つの稜部の一つは白抜きされ、白抜きの稜部内に細線が引かれている。図3の紙面上、白色の領域にはインクの吐出を要しない。ここでは、白抜きの稜部も星形状の画像の一部を成すもののインクを吐出して形成される画像ではないことに照らし、黒色又は灰色に塗られる領域、当該領域を縁取りする縁部、白抜きの稜部を縁取りする縁部及び当該稜部内の細線等、インクの吐出によって記録面に形成される領域を「画像形成領域」と称して説明する。
【0028】
図3の点線IV内には、上記黒色又は灰色に塗られる領域と、それを縁取りする縁部とが含まれている。図4(a)は、当該図3の点線IV内の画像部分に対応する単位領域群に係るインク吐出データの一例を示している。図4(a)において、正方形一つ一つが単位領域を模擬的に表しており、各正方形内における小、中及び大との記載は、対応の単位領域に小滴、中滴及び大滴それぞれのインクが吐出されることを意味し、かかる記載がない領域にはインクが吐出されないことを意味する。図4(b)〜(h)も同様要領で示されている。
【0029】
処理液吐出データ作成部78は、画像データ記憶部75に記憶された画像データ又はインク吐出データ記憶部77に記憶されたインク吐出データに基づいて処理液吐出データを作成する。処理液吐出データには、用紙M上に区画される単位領域にそれぞれ吐出する処理液の量(例えばゼロ、小滴、中滴及び大滴の4段階のいずれか)を示すデータが含まれる。処理液吐出データ記憶部79は、作成された処理液吐出データを記憶する。図4(b)は、図4(a)に対応する処理液吐出データを示している。
【0030】
記録ヘッド制御部71は、単位領域にインクが吐出されて画像ドットが形成されるように、画像データ記憶部75に記憶された画像データに基づき、記録ヘッド8aからのインクの吐出を制御する。処理液ヘッド制御部72は、処理液吐出データ記憶部79に記憶された処理液吐出データに基づき、処理液ヘッド8bからの処理液の吐出を制御する。
【0031】
条件判断部81は、インク残量センサ67により検出されるインク残量と、処理液残量センサ68により検出される処理液残量とに基づいて、インク残量よりも処理液残量が少ないとの所定条件が成立しているか否かを判断する。インク及び処理液のいずれか一方が空であれば、上記例示の情報を表示するよう表示装置64が制御されるので、条件判断部81による判断は、インク及び処理液が残存しているときに行われることとなる。
【0032】
所定条件には、インク残量から処理液残量を減算して得られる減算値が第1閾値よりも大きいとの第1条件と、処理液残量が第2閾値未満であるとの第2条件とが含まれている。具体的には、条件判定部81は、下記式(1)を満たすとの第1条件と、下記式(2)を満たすとの第2条件とが両方とも成立しているか否かを判断し、両方とも成立しているときに所定条件が成立したものとされ、そうでないときには所定条件が非成立とされる。
【0033】
A−B>T1 …(1)
B<T2 …(2)
ここで、上記式(1)又は(2)において、Aはインク残量、Bは処理液残量、T1は第1閾値、T2は第2閾値である。第1閾値T1は0以上の値に設定される。第2閾値T2は、例えば処理液タンク53内における処理液の初期貯留量の50〜75%程度の値に設定される。
【0034】
なお、第1条件は、インク残量を処理液残量で除算して得られる除算値が第1閾値よりも大きいとの条件に変更されてもよく、このとき、上記(1)が下記式(3)に変更される。
【0035】
A/B>T1′ …(3)
ここで、上記式(3)において、T1′は変更後の第1条件における第1閾値であり、1以上の値に設定される。
【0036】
そして、条件判断部81により所定条件が成立したと判断されると、後に詳述するように、処理液吐出データ補正部83及びその他の機能部により、画像形成領域内への処理液の総吐出量が、所定条件が非成立と判断される場合に当該画像形成領域内への処理液の総吐出量よりも少なくなるように補正される。処理液ヘッド制御部72は、所定条件が成立している場合には、このようにして補正された処理液吐出データに基づき、当該処理液吐出データにより決められた量の処理液が画像形成領域内に吐出されるように処理液ヘッド8bを制御する。
【0037】
所定条件を成す第1条件は、式(1)に準ずるときも式(3)に準ずるときも、処理液の消費がインクの消費よりも進行している場合に成立する。このため、第1条件の成否を判断することによって、処理液がインクに先立って消費し尽くされてしまうおそれがあるか否かを好適に判断することができる。そして、このような第1条件が成立する場合に、処理液の吐出量が節約されるようにしているので、その後、処理液が実際に消費し尽くされてしまったときには、インクの残量がなるべく少なくなる。
【0038】
そして、処理液の節約は、第1条件と共に所定条件を成す第2条件も同時に成立しなければ実行されない。この第2条件は、処理液がある程度消費された場合(前述した例示によれば処理液が初期貯留量の50〜75%程度消費された場合)に成立する。逆に言えば、第2条件が非成立である場合、すなわち、処理液残量が十分に大きい場合、第1条件が成立するような状況であっても(なお、この状況では、インクの残量は更に大きな値となる)、処理液の吐出量が節約されるのを良好に抑制することができる。特に、処理液の初期貯留量がインクの初期貯留量よりも少ない液体カートリッジにおいては、液体カートリッジの交換直後に処理液が節約される事態を好適に避けることができる。
【0039】
以下、条件判断部81により所定条件が成立していると判断されたときの処理液及びインクの吐出量の補正方法について説明する。まず、本件発明者が処理液を節約する補正を行おうとするうえで着眼した点のうち幾つかを簡単に説明する。
【0040】
仮にインクの吐出量を変更することなく処理液の吐出量が節約されると、処理液の吐出量を節約しない場合(すなわち所定条件の非成立時)と比べ、インクに含まれる顔料が処理液と作用しにくくなるので、顔料が記録面上に定着しにくくなり用紙M内に浸透しやすくなる可能性がある。これにより、画像濃度の低下、滲み又は裏抜けを招く可能性がある。
【0041】
細線及び縁部に滲みが発生すると、細線が太く見えたり、縁部が不鮮明に見えたりし、その滲みが目立ちやすい。当該部分における滲みの有無は、画像全体の画質の良否に影響を及ぼす。
【0042】
仮に予め多めにインクを吐出するように設定されている単位領域(前述の例示によれば、大滴を吐出するように設定されている単位領域)において処理液の吐出量が節約されると、用紙M内への浸透量がその分多くなり、滲み及び裏抜けが顕在化する可能性がある。また、明度が低い領域は元々裏抜けが目立ちやすく、当該領域において処理液の吐出量が節約されると、裏抜けが顕在化する可能性がある。
【0043】
処理液を使用して画像を形成することによってOD値及び階調値を向上させることができるという効果を奏するが、単位領域の中には、所望のOD値及び階調値を得るために処理液を使用することが前提となる単位領域(定められた処理液が使用されなければ所望のOD値又は階調値を得ることができない単位領域)が存在する。
【0044】
プリンタ1は、種々の材質及び厚さの用紙に画像を形成するために供される。同一量のインク及び処理液を吐出しても、用紙の材質及び厚さが異なっていれば、滲み及び裏抜けの程度も異なる。液体浸透度が高い材質から成る用紙は滲みや裏抜けが発生しやすい。薄い用紙も同様である。
【0045】
そこで、本実施形態に係る制御部9の抽出部82は、画像データ記憶部75に記憶される画像データ又はインク吐出データ記憶部77に記憶されるインク吐出データに基づいて、画像の一部を特定部分として抽出する。この特定部分は、仮に単純に処理液を節約してしまえば画質の低下が顕在化する可能性がある部分又は当該部分の画質低下が画像全体の画質の良否に影響を及ぼすと想定される部分である。例えば、前述のとおり、細線、画像の縁部、インクを多めに吐出することが予め設定されていた部分、明度が所定値未満である部分、OD値が処理液の使用を前提として定められている部分、及び階調値が処理液の使用を前提として定められている部分等を含む。逆に言えば、画像形成領域は、抽出部82により抽出された特定部分と、抽出されなかった非特定部分とを含むこととなる。
【0046】
図4(a)及び(b)を参照すると、縁部に対応する部分の単位領域群が太枠長方形で示されており、抽出部82は、このように図示されている単位領域群を特定部分として抽出する。図4(a)及び(b)において四辺全てが太線となっていない正方形で示された単位領域群は非特定部分に対応する。
【0047】
抽出部82による抽出結果に基づいて、制御部9は、特定部分における画像濃度の低下、滲み及び裏抜けを防止することによる画質の維持と、非特定部分も含めた画像形成領域全体に吐出される処理液の節約とを両立すべく、特定部分及び非特定部分における処理液吐出量及びインク吐出量を補正する。処理液吐出量の補正は、処理液吐出データ補正部84が処理液吐出データ記憶部79に記憶されている処理液吐出データを補正することにより行われる。処理液吐出データ記憶部79は、補正後の処理液吐出データを記憶し、処理液ヘッド制御部72は、処理液吐出データ記憶部79に記憶されている補正後の処理液吐出データに基づいて処理液が吐出されるように処理液ヘッド8bのヘッドアクチュエータ61の動作を制御する。インク吐出量の補正は、インク吐出データ補正部83がインク吐出データ記憶部77に記憶されているインク吐出データを補正することにより行われる。インク吐出データ記憶部77は、補正後のインク吐出データを記憶し、記録ヘッド制御部71は、インク吐出データ記憶部75に記憶されている補正後のインク吐出データに基づいてインクが吐出されるように記録ヘッド8aのヘッドアクチュエータ61の動作を制御する。以下、補正方法に含まれ得る観点について説明する。なお、図4(c),(e)及び(g)は、所定条件が成立したときの補正後のインク吐出データの一例を示し、図4(d),(f)及び(h)は、図4(c),(e)及び(g)に対応する補正後の処理液吐出データの一例を示している。
【0048】
第一の観点は、処理液をどのように減少させるのかに関するものであり、予め処理液を吐出するとされていた単位領域のうち一部については所定条件の成否に関わらず処理液の吐出量を不変とし、残りは処理液を吐出しないようにする(すなわち、処理液の吐出を間引く)、というものである(図4(d)の非特定部分を表す単位領域群及び図4(f)の特定部分を表す単位領域群を参照)。第二の観点は、処理液をどのように減少させるのかに関するものであり、予め処理液を吐出するとされていた単位領域の少なくとも一部について処理液の吐出量を当初設定されていた吐出量よりも少なくなるように補正する、というものである(図4(f)の非特定部分を表す単位領域群を参照)。第三の観点は、処理液をどのように減少させるのかに関するものであり、第一の観点のように一部の単位領域の吐出を間引いたうえで、第二の観点のように吐出することとなった単位領域のうち少なくとも一部についてその処理液の吐出量を当初設定されていたと吐出量よりも少なくなるように補正する、というものである(図4(h)を参照)。処理液吐出データ補正部85は、処理液を節約すべく、これら第一〜第三の観点のいずれかの観点に従った補正方法により処理液吐出データを補正する。
【0049】
第四の観点は、処理液をどの程度減少させるのかに関するものであり、インク残量に対する処理液残量の差に関わらず一定の割合で処理液の吐出量を減少させる、というものである。なお、「差」は、減算値(差分)でも除算値(比)でもよい。第五の観点は、処理液をどの程度減少させるのかに関するものであり、インク残量に対する処理液残量の差が大きいときほど処理液の吐出量を少なくさせる、というものである。これにより、処理液がインクと比べて消費の程度が大きいときに、それに合わせて処理液がより厳しく節約されるので、画像を形成した後のインク残量を処理液残量になるべく近づけることができる。
【0050】
図5(a)は、残量差と処理液の吐出率との関係の一例、図5(b)は、残量比と処理液の吐出率との関係の一例を示すグラフである。図5(a)の横軸に表される「残量差」は、前述のインク残量に対する処理液残量の差の一例であり、前述のインク残量から処理液残量を引いて得られる値である。所定条件が成立している場合、前述したT1より大きい値をとる。図5(b)の横軸に表される「残量比」は、前述のインク残量に対する処理液残量の差の一例であり、処理液残量をインク残量で除算して得られる比である。所定条件が成立している場合、残量比は0より大きく1未満の値をとる。図5の縦軸に表される「吐出率」は、所定条件成立時の処理液総吐出量を所定条件非成立時の処理液総吐出量で除算して得られる比であり、例えば0.75の吐出率は、補正後の吐出量が補正前の吐出量の75%となるように減じられる(すなわち、処理液の吐出量が25%節約される)ことを意味する。
【0051】
図5(a)の例示によれば、処理液吐出データ補正部85は、まず残量差を求め、残量差を複数の閾値と比較して、残量差が複数の閾値によって規定される数値範囲のうち何れの範囲内に属するのかを判断する。ここでは、T1と、2T1(T1の2倍の値)と3T1(T1の3倍の値)と、4T1(T1の4倍の値)の4つの閾値が定められており、それにより、T1〜2T1と、2T1〜3T1と、3T1〜4T4と、4T1以上との4つの数値範囲が規定されている。処理液吐出データ補正部84は、吐出率を、求められた残量差が属する数値範囲を規定している2つの閾値のうち値が大きい側の閾値と等しくなるように設定してもよい(T1〜2T1の数値範囲、2T1〜3T1の数値範囲、3T1〜4T1の数値範囲を参照)。このようにして吐出率が設定されると、画像を形成した後に、インク残量を処理液残量に好適に近づけることができる。また、処理液吐出データ補正部84は、吐出率を求められた残量差に応じて線形に変化するようにして設定してもよい(4T1以上の数値範囲を参照)。
【0052】
図5(b)の例示によれば、処理液吐出データ補正部85は、まず残量比を求め、残量比を複数の閾値と比較して、残量比が複数の閾値によって規定される数値範囲のうち何れの範囲内に属するのかを判断する。ここでは、0〜0.25と、0.25〜0.5と、0.5〜0.75と、0.75〜1との4つの数値範囲が規定されている。処理液吐出データ補正部84は、吐出率を、求められた残量比が属する数値範囲を規定している2つの閾値のうち値が小さい側の閾値と等しくなるように設定してもよい(0.25〜0.5の数値範囲、0.5〜0.75の数値範囲、0.75〜1の数値範囲を参照)。また、処理液吐出データ補正部84は、吐出率を求められた残量比と同じ値に設定してもよい(0〜0.25の数値範囲を参照)。
【0053】
第六の観点は、インク吐出データ補正部83が、処理液が減少された単位領域においてインクの吐出量を増加する、というものである(図4(c)、図4(e)及び図4(f)各々の非特定領域を表す単位領域群を参照)。この場合、処理液の減少に伴い生じ得る画像濃度の低下をインクの増量により抑制することができる。また、インクの消費が大きくなるので、インク残量を好適に処理液残量に近づけていくことができる。
【0054】
第七の観点は、インクの吐出量に関するものであり、媒体種別判断部85が、所定条件が成立したときに、搬送される用紙の種類が第1種の用紙であるか、当該第1種よりも液体の浸透性が高い第2種の用紙あるかを判断し、インク吐出データ補正部83が、第2種の用紙である場合に、第1種と比較して、処理液の吐出量が減少される単位領域に対するインクの吐出量を少なくする、というものである。この場合、滲みを生じやすい性質を有する用紙について、滲みが発生するのを良好に抑制することができる。なお、用紙の種別の判断に関し、ユーザは印刷指令を制御部9に入力するに際して、画像を記録しようとしている用紙の種類を入力することができる。媒体種別判断部85は、印刷指令と共に入力される用紙の種類に関する情報に基づき、その用紙の種類を液体の浸透性に応じて判断する。例えば、厚さが所定値以上のものを第1種、所定値未満のものを第2種と分類する。
【0055】
第八の観点は、非特定部分に対して特定部分を差別化する点に関し、処理液及びインクの吐出量を補正せず所定条件の成否に関わらず特定部分に対する吐出量を不変とし、非特定部分における処理液の総吐出量を減少させる、というものである(図4(c)及び図4(d)各々の特定部分を表す単位領域群を参照)。この場合、特定部分の画質を所定条件の成否に関わらず高く維持することができ且つ処理液を節約することができる。特に、OD値が所定値以上と設定されている部分については、処理液の吐出量が不変となることで、当該部分の画質の低下を良好に抑制することができる。
【0056】
第九の観点は、非特定部分に対して特定部分を差別化する点に関し、処理液吐出データ補正部84が、特定部分のうち少なくとも一部において処理液の吐出量を減少させ、且つ、インク吐出データ補正部83が、特定部分のうち吐出量が減少した単位領域についてインクの吐出量を減少させるというものである。(図4(e)〜(h)各々の特定部分を表す単位領域群を参照)。この場合、処理液の減少と合わせてインクの吐出量を減少させるので、滲みや裏抜けを良好に抑制することができる。例えば、細線においては、線が太くなるのを良好に抑制し、縁部においては、画像の縁が不鮮明になるのを良好に抑制することができる。なお、当該第九の観点において、特定部分における処理液の吐出量を減少させる手法として、第一〜第三の観点のうちいずれかの観点に従った補正方法を選択することができる。このときの特定部分に対して採用される処理液の補正方法と、非特定部分に対して採用される処理液の補正方法とが異なっていてもよい。
【0057】
第十の観点は、第六及び第八の観点に付加されるものであり、画像形成領域内におけるインクの総吐出量が所定条件非成立時と比較して減少するような場合、その減少量を、処理液の減少量よりも少なくする、というものである。この場合、処理液残量とインク残量とを確実に近づけることができる。
【0058】
このような観点を踏まえた具体的な補正方法の一つとして、例えば、第五、第七及び第十の観点に従った補正方法を前提として行い、第八の観点に従った補正方法を採用し、非特定部分についてのインク及び処理液の吐出量を補正するにあたって第一の観点及び第六の観点に従った補正方法を採用してもよい。この場合、第一及び第五〜八及び第十の観点に従った補正を行うことで奏する前述した作用効果を得ることができる。
【0059】
図6は、制御部9により実行される処理の手順を示すフローチャートである。図6に示す処理の手順は、主電源がオンとなり所定の初期処理を終了した後に実行される。まず、印刷指令があるか否かが判断され(S1)、無い間(S1:NO)は印刷指令を待機する。印刷指令が有れば(S1:YES)、PC65等から転送される画像データを記憶し(S2)、画像データに基づいてインク及び処理液吐出データを生成し(S3)、それを記憶する(S4)。次いで、インク残量と処理液残量とに基づき所定条件が成立しているか否かを判断する(S5)。所定条件が非成立のときには(S5:NO)、ステップS2にて記憶されたインク吐出データに基づいてインクの吐出を行うとともにステップS3にて記憶された処理液吐出データに基づいて処理液の吐出を行う(S7)。指令された全ての印刷ジョブが完了すると(S8)、別の印刷指令を待機する(S1)。
【0060】
所定条件が成立しているときには(S5:YES)、印刷指令と共に入力した用紙の種類を表す情報に基づき用紙の種別を判断し(S11)、インク残量に対する処理液残量の差に応じて処理液の吐出率を決定する(S12)。次いで、画像データ記憶部75に記憶される画像データ又はインク吐出データ記憶部77に記憶されるインク吐出データに基づいて、特定部分を抽出する(S13)。次いで、ステップS11にて判断された用紙の種別及びステップS12にて決定された処理液の吐出率に基づき、処理液吐出データ記憶部79に記憶されている処理液吐出データとインク吐出データ記憶部77に記憶されているインク吐出データとが補正される(S14)。このステップS14においては、画像形成領域のうちステップS13にて抽出された特定部分については、画質を維持すべく前述したようにして補正される。
【0061】
次いで、補正後のインク吐出データがインク吐出データ記憶部77に記憶されるとともに、補正後の処理液吐出データが処理液吐出データ記憶部79に記憶される(S15)。そして、ステップS15にて記憶された補正後のインク吐出データに基づいてインクの吐出を行うとともに、ステップS15にて記憶された処理液吐出データに基づいて処理液の吐出を行う(S6)。指令された全ての印刷ジョブが完了すると(S7)、別の印刷指令を待機する(S1)。
【0062】
このように本実施形態に係る処理の手順においては、所定条件が成立しているとして画像を形成し始めたときであっても、所定条件が非成立であるとして画像を形成し始めたときであっても、一旦画像を形成し始めれば、全ての印刷ジョブが完了するまでの間、所定条件の成否を判断しない。これにより、印刷の途中で処理液の吐出割合が変化するようなことがないので、画質を均一にすることができる。また、印刷の途中で処理液吐出データ及びインク吐出データを補正する処理を行わないので、タクトタイムが長くなるのを避けることもできる。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能である。ヘッドアクチュエータ61はユニモルフ型のピエゾアクチュエータやバイモルフタイプのアクチュエータであってもよいし、サーマル式等、他の方式で吐出エネルギー付与するアクチュエータであってもよい。つまりアクチュエータは電力を変位に変換する機構(素子)に限定されるものではない。また、上述した実施例では、ライン式のインクジェットヘッドを用いるものであるが、ヘッドが幅方向に移動するシリアル式のインクジェットヘッドにも適用可能である。なお、本発明は、インク以外の液体を吐出する液体吐出装置にも適用可能である。さらに、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機などにも適用可能である。また、インクへの処理液の作用としては、インクと処理液が混ざることで化学反応してインク中の成分(顔料や染料)を凝集又は析出することも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、いわゆる一体式液体カートリッジが装着される画像形成装置において、第2液体が消費し尽くされたときの第1液体の残存量をなるべく少なくすることができるという作用効果を奏し、画像形成用の第1液体と画質向上用の第2液体とを記録媒体に吐出して当該記録媒体の記録面に画像を形成する画像形成装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 インクジェットプリンタ(画像形成装置)
2b 装着部
8a 記録ヘッド(第1液体吐出ヘッド)
8b 処理液ヘッド(第2液体吐出ヘッド)
9 制御部
45 メンテナンス装置
50 液体カートリッジ
51 カートリッジ本体
52 インクタンク(第1液体タンク)
53 処理液タンク(第2液体タンク)
67 インク残量センサ(第1液体残量検出手段)
68 処理液残量センサ(第2液体残量検出手段)
71 記録ヘッド制御部(第1液体吐出制御手段)
72 処理液ヘッド制御部(第2液体吐出制御手段)
75 画像データ記憶部(記憶手段)
77 インク吐出データ記憶部(記憶手段)
79 処理液吐出データ記憶部(記憶手段)
81 条件判断部(条件判断手段)
82 抽出部(抽出手段)
85 媒体種別判断部(媒体種別判断手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成するための第1液体を貯留する第1液体タンクと、前記第1液体に作用して前記第1液体中の成分を凝集又は析出させる第2液体を貯留する第2液体タンクとを有する液体カートリッジと、
前記液体カートリッジが装着される装着部と、
前記第1液体タンクより供給される前記第1液体を記録媒体に吐出するための第1液体吐出ヘッドと、
前記第2液体タンクより供給される前記第2液体を記録媒体に吐出するための第2液体吐出ヘッドと、
記録媒体上に形成されるべき画像に係る画像データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記画像データに基づいて、記録媒体上の前記画像が形成される画像形成領域に前記第1液体が吐出されるように前記第1液体吐出ヘッドを制御する第1液体吐出制御手段と、
前記画像データに基づいて、前記画像形成領域内の少なくとも一部に前記第2液体が吐出されるように前記第2液体吐出ヘッドを制御する第2液体吐出制御手段と、を備えた画像形成装置であって、
前記第1液体タンクに貯留されている前記第1液体の残量を検出する第1液体残量検出手段と、
前記第2液体タンクに貯留されている前記第2液体の残量を検出する第2液体残量検出手段と、
前記第1液体残量検出手段により検出される前記第1液体の残量と前記第2液体残量検出手段により検出される前記第2液体の残量に基づき、前記第1液体の残量よりも前記第2液体の残量が少ない所定条件が成立しているか否かを判断する条件判断手段と、を備え、
前記第2液体吐出制御手段は、前記条件判断手段により前記所定条件が成立していると判断された場合に、前記画像形成領域内に吐出される前記第2液体の量が、前記条件判断手段により前記所定条件が非成立であると判断される場合に前記画像形成領域内に吐出される前記第2液体の量よりも少なくなるように、前記第2液体吐出ヘッドを制御する、画像形成装置。
【請求項2】
前記所定条件には、前記第2残量検出手段により検出される第1液体の残量から前記第2残量検出手段により検出される第2液体の残量を減算して得られる減算値が第1閾値よりも大きいとの条件が含まれる、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2液体吐出制御手段は、前記所定条件が成立していると判断された場合に、前記減算値が大きいほど、前記画像形成領域内に吐出される第2液体の量を少なくさせるように前記第2液体吐出ヘッドを制御する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記所定条件には、前記第2残量検出手段により検出される第2液体の残量が第2の閾値未満であるとの条件が含まれる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第2液体吐出制御手段は、前記所定条件が成立していると判断された場合に、前記画像形成領域内に第2液体が吐出される被吐出部と第2液体が吐出されない間引き部とを規定することにより、前記画像形成領域内に吐出される第2液体の量を、前記所定条件が非成立であると判断される場合に前記画像形成領域内に吐出される第2液体の量よりも少なくさせる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2液体吐出制御手段は、前記所定条件が成立していると判断された場合に、前記画像形成領域内に第2液体が吐出される被吐出部を規定して、当該被吐出部の少なくとも一部に吐出される第2液体の量を、前記所定条件が非成立であると判断される場合に当該少なくとも一部に吐出される第2液体の量よりも少なくさせる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1液体吐出制御手段は、前記所定条件が成立していると判断された場合に、前記画像形成領域内に吐出される第1液体の量を、前記所定条件が非成立であると判断される場合に前記画像形成領域内に吐出される第1液体の量よりも多くなるように、前記第1液体吐出ヘッドを制御する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像データに基づき、前記画像の一部を特定部分として抽出する抽出手段を備え、
前記第1液体吐出制御手段は、前記所定条件が成立していると判断された場合に、前記画像形成領域のうち前記特定部分に対応した第1領域内に吐出される第1液体の量が、前記所定条件が非成立であると判断される場合に前記第1領域内に吐出される第1液体の量よりも少なくなるように、前記第1液体吐出ヘッドを制御する、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記特定部分には、明度が所定値未満である画素領域、画像の縁に対応する画素領域、及び細線に対応する画素領域のうちの少なくとも一つの画素領域が含まれる、請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記画像データに基づき、前記画像の一部を特定部分として抽出する抽出手段を備え、
前記第2液体吐出制御手段は、前記所定条件が成立していると判断された場合に、前記画像形成領域のうち前記特定部分に対応した第1領域内に吐出される第2液体の量を、前記所定条件が非成立であると判断される場合に前記第1領域内に吐出される第2液体の量と等しくなるように、且つ、前記画像形成領域のうち前記特定部分以外の非特定部分に対応した第2領域内に吐出される第2液体の量を、前記所定条件が非成立であると判断される場合に前記第2領域内に吐出される第2液体の量よりも少なくなるように、前記第2液体吐出ヘッドを制御する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記特定部分には、吐出される第1液体の量が所定値以上である画素領域、明度が所定値未満である画素領域、画像の縁に対応する画素領域、及び細線に対応する画素領域のうちの少なくとも一つの画素領域が含まれる、請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
記録媒体が第1種記録媒体であるのか、前記第1種記録媒体よりも液体の浸透性が高い第2種記録媒体であるのかを検出する媒体種別検出手段を備え、
前記第1液体吐出制御手段は、前記所定条件が成立していると判断された場合であって前記媒体種別検出手段により記録媒体が前記第2種記録媒体であると検出された場合に、前記画像形成領域内に吐出される第1液体の量が、前記所定条件が非成立であると判断される場合に前記画像形成領域内に吐出される第1液体の量よりも少なくなるように、前記第1液体吐出ヘッドを制御する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−76280(P2012−76280A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221539(P2010−221539)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】