説明

画像形成装置

【課題】ノズル列が重力方向に沿う方向に配列される形態の画像形成装置において、滴吐出状態の均一化を図り、画像品質を向上する。
【解決手段】ノズル205から液滴を水平方向に向けて吐出するように配置された記録ヘッド24を備え、メインタンクからインクが供給されるサブタンクと、記録ヘッド24の共通液室207の上端部に通じる供給ポート208はヘッドタンク29の液収容部231及び供給チューブ306を介して接続され、共通液室207の下端部に通じる帰還ポート209はヘッドタンク29の帰還経路236及び帰還チューブ308を介して接続され、帰還チューブ308には帰還ポンプが設けられ、記録ヘッド24から滴を吐出させるときに、帰還ポンプを駆動して、共通液室207内のインクに、共通液室207の上端部側から下端部側に向かう流れを生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を水平方向に向けて吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)を記録ヘッドとして用いた液体吐出記録方式の画像形成装置として例えばインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
液体吐出方式の画像形成装置として、被記録媒体を水平方向に搬送し、被記録媒体に対して液滴を垂直方向下方に向けて吐出する記録ヘッドを備える構成(これを「垂直印刷方式」という。)のものと、被記録媒体を垂直方向に搬送し、被記録媒体に対して液滴を水平方向に向けて吐出する記録ヘッドを備える構成(これを「水平印刷方式」という。)のものが知られている(特許文献1、2)。
【0004】
ここで、垂直印刷方式の画像形成装置にあっては、滴吐出方向が重力方向であるため画像に与える個々の画素の影響を最小限にできるという利点があり、水平印刷方式の画像形成装置にあっては、被記録媒体の印字面を下側にして排紙するいわゆるフェイスダウン排紙が容易にでき、あるいは、用紙の両面に対向して記録ヘッドを配置して、両面を同時に印字することも容易にできるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4186557号公報
【特許文献2】特開平09−254401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した水平印刷方式の画像形成装置にあっては、水平方向に液滴を吐出する関係で、ノズル列が重力方向に沿う方向に配列される形態となるため、ノズルの位置に高低差が生じることになる。この高低差に伴って、各ノズルの静水圧が異なるため、滴吐出状態が均一にならず、ドット径が不均一になったり、着弾位置がずれたりするという課題がある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、滴吐出状態の均一化を図り、画像品質を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する複数のノズルを配列したノズル列と、前記複数のノズルが通じる複数の個別液室と、前記複数の個別液室に液体を供給する共通液室とを有し、前記液滴を水平方向に向けて吐出するように配置された記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給する前記液体が収容されたインクタンクと、
前記インクタンクと前記記録ヘッドとの間で前記液体を循環させる送液手段と、を備え、
前記送液手段は、前記記録ヘッドの前記共通液室の上端部側及び下端部側にそれぞれ接続され、
前記記録ヘッドから滴を吐出させるときに、前記送液手段を駆動して、前記共通液室内の液体に、前記共通液室の上端部側から下端部側に向かう流れを生じさせる制御をする制御手段を有している
構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る画像形成装置によれば、滴吐出状態の均一化を図り、画像品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の機構部の側面説明図である。
【図2】図1を矢示A方向から見た説明図である。
【図3】記録ヘッドのノズル面の説明図である。
【図4】同記録ヘッドの一例を説明する断面説明図である。
【図5】同装置におけるインク供給循環系の説明図である。
【図6】記録ヘッド及びヘッドタンク部分の断面説明図である。
【図7】図6のB−B線に沿う断面説明図である。
【図8】制御部のブロック説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態における記録ヘッド及びヘッドタンク部分の断面説明図である。
【図10】図9のC−C線に沿う断面説明図である。
【図11】本発明の第3実施形態における記録ヘッド及びヘッドタンク部分の断面説明図である。
【図12】本発明の第4実施形態における記録ヘッド及びヘッドタンク部分の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置について図1及び図2を参照して説明する。図1は同画像形成装置の機構部の側面説明図、図2は図1を矢示A方向から見た説明図である。
【0012】
この画像形成装置は、シリアル型画像形成装置であり、装置本体の内部に画像形成部2、搬送機構部5等を有し、装置本体の下方側に被記録媒体である用紙10を積載可能な給紙トレイ(給紙カセットを含み、給紙部の意味で使用する。)4を備え、この給紙トレイ4から給紙される用紙10を取り込み、搬送機構部5によって用紙10を垂直方向(鉛直方向に沿う方向)に間歇的に搬送しながら、画像形成部2によって水平方向に液滴を吐出させて所要の画像を記録した後、排紙部6を通じて画像が形成された用紙10を更に上方向に搬送して、装置本体の上方側に設けられた排紙トレイ7に用紙10を排紙する。
【0013】
また、両面印刷を行うときには、一面(表面)印刷終了後、排紙部6から反転部8内に用紙10を取り込み、搬送機構部5によって用紙10を逆方向(下方向)に搬送しながら反転させて他面(裏面)を印刷可能面として再度搬送機構部に送り込み、他面(裏面)印刷終了後排紙トレイ7に用紙10を排紙する。
【0014】
ここで、画像形成部2は、左右の側板101L、101R間に架け渡した主ガイド部材21及び従ガイド部材22で、記録ヘッド24を搭載したキャリッジ23を移動可能に保持し、主走査モータ25によって、駆動プーリ26と従動プーリ27間に渡したタイミングベルト28を介して主走査方向に移動走査する。
【0015】
キャリッジ23には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド24a、24b(区別しないときは上記のとおり「記録ヘッド24」という。)を、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を水平方向に向けて装着している。つまり、液滴を吐出するノズルが形成されたノズル面が垂直方向に配置され、水平方向に向けて液滴を吐出する記録ヘッド24を備える水平印刷方式を採用している。
【0016】
ここで、記録ヘッド24は、例えば、図3に示すように、それぞれ複数の液滴を吐出するノズル205が列設された2つのノズル列Na、Nbを有し、記録ヘッド24aの一方のノズル列Naはイエロー(Y)の液滴を、他方のノズル列Nbはマゼンタ(Y)の液滴を、記録ヘッド24bの一方のノズル列Naはブラック(K)の液滴を、他方のノズル列Nbはシアン(C)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0017】
また、記録ヘッド24は、例えば、図4に示すように、発熱体基板202と液室形成部材203から構成され、共通液室207に供給された液体は個別液室206に導かれ、発熱体204が駆動されることにより、液体が膜沸騰して、ノズル205から液滴が吐出されるサーマル方式のものを使用している。
【0018】
なお、記録ヘッドとしては、圧電素子を用いて振動板を変形させ、また、静電力で振動板を変形させて吐出圧を得るものなど様々な方式があり、いずれの方式のものも本発明に係る画像形成装置に適用することができる。
【0019】
また、キャリッジ23には、記録ヘッド24の各ノズル列Na、Nbに対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク29が搭載されている。後述するように、このヘッドタンク29には、装置本体に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ(メインタンク)からの液体が供給されるインクタンクであるサブタンクを介して液体としてのインクが供給される。
【0020】
また、キャリッジ23の主走査方向に沿って両側板101L、101R間に、所定のパターンを形成したエンコーダスケール121を張り渡し、キャリッジ23にはエンコーダスケール121のパターンを読取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ122を設け、これらのエンコーダスケール121とエンコーダセンサ122によってキャリッジ23の移動を検知するリニアエンコーダ(主走査エンコーダ)123を構成している。
【0021】
また、キャリッジ23の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド24のノズル205の状態を維持し、回復するための維持回復機構9を配置している。この維持回復機構9には、フレーム90にて、記録ヘッド24の各ノズル面124(図3参照)をキャピングするための吸引キャップ92a及びキャップ92b(区別しないときは「キャップ92」という。)と、矢示方向に移動してノズル面124をワイピング(払拭)するワイパ部材(ワイパブレード)93が保持され、また増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる予備吐出(空吐出)を行うときの液滴を受ける空吐出受け94などを備えている。吸引キャップ92aには吸引手段としての吸引ポンプ96が接続され、吸引ポンプ96は廃液タンク97に通じている。また、吸引キャップ92aには、吸引キャップ92aで記録ヘッド24のノズル面をキャッピングしたときに形成される密閉空間を大気に開放する開閉可能な大気開放弁98を設けている。
【0022】
給紙トレイ4の用紙10は、給紙コロ(半月コロ)43と分離パッド44によって1枚ずつ分離されて装置本体内に給紙され、搬送ガイド部材45に沿って、搬送機構部5の搬送ベルト51と押えコロ48との間に送り込まれ、搬送ベルト51に吸着されて搬送される。
【0023】
搬送機構部5は、駆動ローラである搬送ローラ52と従動ローラ53との間に掛け渡した無端状の搬送ベルト51と、この搬送ベルト51を帯電させるための帯電ローラ54と、画像形成部2に対向する部分で搬送ベルト51の平面性を維持するプラテン部材55となどを有している。
【0024】
搬送ベルト51は、副走査モータ151によってタイミングベルト152及びタイミングプーリ153を介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって、ベルト搬送方向(副走査方向、用紙搬送方向)に周回移動する。この搬送ベルト51のうち、画像形成部2に対向して用紙10を吸着する搬送ローラ52から従動ローラ53までの領域を正搬送部分51aとし、従動ローラ53から搬送ローラ52までの領域を逆搬送部分51bという。
【0025】
また、搬送ローラ52の軸52aにはコードホイール154を取り付け、このコードホイール154に形成したパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ155を設けて、これらのコードホイール154とエンコーダセンサ155によって搬送ベルト51の移動量及び移動位置を検出するロータリエンコーダ(副走査エンコーダ)156を構成している。
【0026】
排紙部6は、排紙ガイド部材61と、排紙搬送ローラ62及び拍車63と、排紙ローラ64及び拍車65とが配置され、画像が形成された用紙10を排紙ローラ64及び拍車65間から排紙トレイ7上にフェイスダウンで排紙する。
【0027】
また、反転部8は、排紙トレイ7に一部を排出した用紙10をスイッチバック方式で反転して搬送ベルト51と押えコロ48との間に送り込むため、排紙経路と反転経路を切り替える切替爪81と、反転ガイド部材82と、反転ローラ83及び反転コロである拍車84と、従動ローラ53に対向する搬送補助ローラ85と、搬送ベルト51の逆搬送部分51bと、搬送ベルト51の逆搬送部分51bから分離された用紙10を、帯電ローラ54を迂回させて、搬送ベルト51と押えコロ48との間に案内する迂回ガイド部材86などを備えている。
【0028】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ4から用紙10が1枚ずつ分離給紙され、帯電された搬送ベルト51に用紙10が静電吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙10が垂直方向に搬送される。そこで、キャリッジ23を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド24を駆動することにより、停止している用紙10にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙10を所定量搬送後、次の行の記録を行い、記録が終了した用紙10を排紙トレイ7に排紙する。
【0029】
そして、記録ヘッド24のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ23をホーム位置である維持回復機構9に対向する位置に移動して、吸引キャップ92aによるキャッピングを行ってノズル205からの吸引排出を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0030】
また、両面印刷を行う場合には、第1面印刷は上述したとおりの動作を行い、用紙10の後端が反転部分岐(切替爪81)を通過すると、排紙ローラ64が反転駆動されて用紙10がスイッチバックされ、反転ガイド部材82側に案内され、反転ローラ83と拍車84の間で搬送され、搬送ベルト51の逆搬送部分51bと搬送補助ローラ85との間へと用紙10が送り込まれる。
【0031】
これにより、用紙10は搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって搬送され、搬送ローラ52側で搬送ベルト51から分離されて、迂回ガイド部材86で案内され(迂回パスを経由し)、再度搬送ベルト51の正搬送部分51aと押圧コロ48との間に送り込まれて搬送ベルト51に吸着され、再度記録ヘッド24による画像形成領域に吸着搬送されることで第2面印刷が行われた後、排紙トレイ7に排紙される。
【0032】
次に、この画像形成装置におけるインク循環系について図5の説明図を参照して説明する。
【0033】
メインタンク301は、記録ヘッド24に供給する液体であるインク300が収容されている。メインタンク301内のインク300は、供給ポンプ302によって装置本体に据え置きされるインクタンクであるサブタンク303に送液される。
【0034】
サブタンク303は、上部に設けられた大気連通口304によって内部が大気に連通しており、内部の液面が記録ヘッド24よりも下方に保持され、記録ヘッド24の静水圧を所定の負圧に保持している。
【0035】
このサブタンク303には、液面を検知する液面検知手段305が備えられており、液面が下がったことが検知された場合には、供給ポンプ302を作動させて、メインタンク301からインクが補充される。なお、ここでは、液面検知手段305として、電極対を使用し、両者の間の電気抵抗の変化で液面を検知する構成としているが、フロートセンサや光学的に液面を検知する方式も用いることができる。
【0036】
そして、サブタンク303は、供給チューブ306を介してヘッドタンク29に接続されている。また、サブタンク303は、循環ポンプ307及び帰還チューブ308を介してヘッドタンク29に接続されている。
【0037】
ヘッドタンク29からは記録ヘッド24の共通液室207の上端部側から共通液室207内にインクが供給され、共通液室207の下端部側からヘッドタンク29内の帰還経路を通じて帰還チューブ308にインクが排出される。
【0038】
これにより、循環ポンプ307を駆動することで、サブタンク303から供給チューブ306及びヘッドタンク29を介して記録ヘッド24の共通液室207内にインク300が供給され、記録ヘッド24の共通液室207からヘッドタンク29及び帰還チューブ308を介してサブタンク303にインク300が戻されることで、インク300が循環される。
【0039】
次に、記録ヘッド及びヘッドタンクの詳細について図6及び図7を参照して説明する。図6は記録ヘッド及びヘッドタンク部分の断面説明図、図7は図6のB−B線に沿う断面説明図である。
【0040】
記録ヘッド24には、共通液室207の上端部に通じる供給口部(供給ポート)208が設けられるとともに、共通液室207の下端部に通じる帰還口部(帰還ポート)209が設けられている。なお、共通液室207はノズル配列方向(上下方向)と直交する方向の断面の断面積が一定である。
【0041】
ヘッドタンク29には、内部に液収容部231を形成したタンクケース230を有し、タンクケース230の一部には液収容部231の壁面を形成する撓むことが可能なフィルム部材232が設けられている。また、液収容部231内にはフィルム部材232を復元力で外方(液収容部231の容積を拡大する方向)に押すスプリング233が設けられている。さらに、液収容部231内にはフィルタ部材234が設けられている。
【0042】
そして、ヘッドタンク29の液収容部231には供給チューブ306に接続されてインク300が供給される。ヘッドタンク29の液収容部231はフィルタ部材234の下流側が供給口235を介して記録ヘッド24の共通液室207の上端部の供給ポート208に通じている。
【0043】
また、ヘッドタンク29には記録ヘッド24の共通液室207の下端部の帰還ポート209に通じる帰還経路236が設けられ、帰還経路236には帰還チューブ308が接続されている。
【0044】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図8のブロック説明図を参照して説明する。
【0045】
この制御部500は、この装置全体の制御を司る本発明に係る制御手段を兼ねるCPU501と、CPU501に実行させる本発明における制御に必要なプログラムを含む各種プログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505などを備えている。
【0046】
また、記録ヘッド24を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ23側に設けた記録ヘッド24を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ23を移動走査する主走査モータ25、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ151を駆動するためのモータ駆動部510、511と、帯電ローラ54にACバイアスを供給するACバイアス供給部512などを備えている。
【0047】
また、制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0048】
そして、制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0049】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行うことができる。
【0050】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0051】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド24の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド24の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド24を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など滴量の異なる液滴を吐出させて大きさの異なるドットを印刷分けることができる。
【0052】
I/O部513は、主走査エンコーダ123、副走査エンコーダ156、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、511、ACバイアス供給部512の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するためのキャリッジ23に設けられた光学センサ(用紙センサ)や、機内の温度、湿度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
【0053】
例えば、CPU501は、主走査エンコーダ123を構成するエンコーダセンサ122からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ25に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部510を介して主走査モータ25を駆動する。同様に、副走査エンコーダ156を構成するエンコーダセンサ155からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ151対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部511を介して副走査モータ151を駆動する。
【0054】
また、制御部500は、維持回復駆動部534を介して、キャップ92を記録ヘッド24のノズル面に対して進退移動させるキャップ移動機構531を駆動制御し、ワイパ部材94を移動させるワイパ移動機構532を駆動制御し、吸引ポンプ96、大気開放弁98を駆動制御して、維持回復動作の制御を行う。
【0055】
また、制御部500は、供給系駆動部535を介して、供給ポンプ302、循環ポンプ307の駆動制御を行う。このとき、サブタンク303の液面検知手段305によるサブタンク303の液残量の検出結果やセンサ群515に含まれる温度センサで検出したインクの温度などの検出結果を利用する。
【0056】
次に、この画像形成装置におけるインクの循環制御に関して説明する。
【0057】
前述したように、この画像形成装置では、記録ヘッド24からインクの液滴を水平方向に吐出して画像を形成する。したがって、記録ヘッド24に複数設けられたノズル205が重力方向(上下方向)に配列される形態となるため、図6に示すように、ノズル205の位置に高低差hが生じる。この高低差hに伴って、各ノズル205の静水圧が異なると、液滴の吐出状態が均一にならない。
【0058】
そこで、本実施形態では、図6に矢印Qで示すように、インクを循環させることで、記録ヘッド24の各ノズル205の静水圧を等しい状態に調整する。すなわち、記録ヘッド24から液滴を吐出させて画像を形成する画像形成時には、循環ポンプ307を駆動して、インクをサブタンク303と記録ヘッド24の間で循環させる。
【0059】
このとき、記録ヘッド24の共通液室207内で上端部側から下端部側に向かう方向のインクの流れを生じさせる。つまり、インクの流れの方向を記録ヘッド24の上方側のノズル205から下方側のノズル205に向かうようにする。
【0060】
これにより、インクの流れが生じている共通液室207内では、上流側よりも下流側の方が、圧力が低下するので、この圧力差をノズル205の配置の水頭差に等しくなるようにすることで、全てのノズル205の圧力は等しくなり、チャンネル間(ノズル間)での滴吐出特性のばらつきを低減することができる。
【0061】
ここで、各ノズル205間での水頭差を同じにするためには、図6に示すように最上端のノズル205から最下端のノズル205の間までの高低差をh、最上端のノズル205と最下端のノズル205の間の共通液室207の部分における流体抵抗をRとするとき、インク循環の流量Qは、Q=h/R、とすると良い。
【0062】
なお、本実施形態では、インク循環による圧力損失を利用して各ノズル205の水頭差の調整を行うので、共通液室207の流体抵抗Rは、少なくともインクを吐出するノズル205、個別液室206の近傍においては一定であることが好ましい。
【0063】
次に、本発明の第2実施形態について図9及び図10を参照して説明する。図9は同実施形態における記録ヘッド及びヘッドタンク部分の断面説明図、図10は図9のC−C線に沿う断面説明図である。
【0064】
本実施形態では、記録ヘッド24の共通液室207内にフィルタ部材234を配置し、共通液室207を、フィルタ上流室207bとフィルタ下流室207aに分割している。ここで、フィルタ下流室207aは個別液室206に通じ、フィルタ上流室207bは供給ポート208及び帰還ポート209に通じる。
【0065】
このように構成することで、循環ポンプ307によって形成されるインクの流れは、ほぼフィルタ上流室207b内のみになる。これにより、循環ポンプ307の送液のばらつきが生じた場合でも、フィルタ部材234によって主に高周波の圧力変動はカットされるので、ノズル205の圧力をより安定化することができる。また、循環ポンプ307は脈動を生じるものであってもよくなり、簡易なポンプを使用することができる。
【0066】
次に、本発明の第3実施形態について図11を参照して説明する。図11は同実施形態における記録ヘッド及びヘッドタンク部分の断面説明図である。
【0067】
本実施形態では、前記第1実施形態において、ヘッドタンク29に、液収容部231内のインクの温度を検出する温度センサ246が備えられている。
【0068】
インクは一般的に温度によって粘度が変化するが、粘度が変化すると共通液室207を流れた時の圧力損失も変化する。具体的には、粘度が小さいと、インク循環によって発生する共通液室207内での圧力差が水頭差に対して小さくなり、下方位置のノズル205が上方位置のノズル205よりも負圧が小さくなる。逆に、粘度が大きいと、インク循環によって発生する共通液室207内での圧力差が水頭差に対して大きくなり、下方位置のノズル205が上方位置のノズル205よりも負圧が大きくなる。
【0069】
そこで、ヘッドタンク29内のインクの温度を温度センサ246によって検出し、制御部500によって、検出されたインク温度に応じて循環する流量Qを制御することで、インクの温度、粘度によらずに、循環によって形成する圧力差を各ノズル位置(上下方向位置)の水頭差に等しくすることができ、全てのノズル205の圧力を同じにすることができる。
【0070】
次に、本発明の第4実施形態について図12を参照して説明する。図12は同実施形態における記録ヘッド及びヘッドタンク部分の断面説明図である。
【0071】
本実施形態では、前記第2実施形態において、ヘッドタンク29の液収容部231内の天面245を、供給チューブ306を接続する流入口部237から供給口235に向かって下がる方向の傾斜面としている。また、本実施形態では、循環ポンプ307として、チューブポンプやギヤポンプなどの双方向に送液可能なもの(可逆型ポンプ)を使用している。
【0072】
このように構成することで、共通液室207内に侵入した気泡400の排出性が向上する。
【0073】
つまり、インクジェット記録装置では、経時的に記録ヘッド24内に気泡が蓄積し、一定量以上の空気が溜まると、吐出不良の原因になる。個別液室206やノズル205内の空気はノズル205から吸引するなどして容易に排出することができるが、共通液室207内の空気は、共通液室207内の容積が大きいことから、ノズル205からは排出が困難である。
【0074】
ここで、本実施形態に係る画像形成装置においては、前述したように複数のノズル205が重力方向(上下方向)に配列される水平印刷方式としているので、共通液室207の上部(供給ポート208近傍)に空気(気泡400)が溜まることになる。
【0075】
前述したように、印字中は、矢印Q方向にインクを循環させるので、浮力の小さい気泡はインクの流れに乗って個別液室206に入って吐出不良を起こしたり、フィルタ部材234に付着して流体抵抗を増大させたりする不具合を起こすことになる。
【0076】
そこで、本実施形態では、制御部500は、印字していないときには、可逆型の循環ポンプ307を逆転駆動して、記録ヘッド24の共通液室207内に、共通液室207の下端部(帰還ポート209)側から上端部(供給ポート208)側に向かう矢印S方向の流れを生じさせるようにインクを循環させる。
【0077】
これにより、共通液室207内の空気(気泡400)はヘッドタンク29内の傾斜面である天面245を伝って供給チューブ306に入り、サブタンク303の大気連通口304から排出される。
【0078】
このように、非印字時には、インクを印字時とは逆方向に循環させて、共通液室内の空気を容易に排出でき、記録ヘッドの吐出安定性を向上させることができる。
【0079】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0080】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0081】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0082】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0083】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0084】
2 画像形成部
4 給紙部
5 搬送機構部
6 排紙部
7 排紙トレイ
8 反転部
9 維持回復機構
10 用紙(被記録媒体)
23 キャリッジ
24 記録ヘッド
29 ヘッドタンク
51 搬送ベルト
205 ノズル
207 共通液室
300 インク
301 インクカートリッジ(メインタンク)
302 供給ポンプ
303 サブタンク
306 供給チューブ
307 循環ポンプ
308 帰還チューブ
500 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルを配列したノズル列と、前記複数のノズルが通じる複数の個別液室と、前記複数の個別液室に液体を供給する共通液室とを有し、前記液滴を水平方向に向けて吐出するように配置された記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給する前記液体が収容されるインクタンクと、
前記インクタンクと前記記録ヘッドとの間で前記液体を循環させる送液手段と、を備え、
前記送液手段は、前記記録ヘッドの前記共通液室の上端部側及び下端部側にそれぞれ接続され、
前記記録ヘッドから滴を吐出させるときに、前記送液手段を駆動して、前記共通液室内の液体に、前記共通液室の上端部側から下端部側に向かう流れを生じさせる制御をする制御手段を有している
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記共通液室の上端部から下端部までの高低差をh、流体抵抗をRとしたとき、前記共通液室内に生じる液体の流れの流量Qは、Q=h/R、であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記共通液室は、液体の流れの方向と直交する方向の断面の断面積が、液体の流れの方向で一定であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記共通液室と前記個別液室との間に液体の異物をろ過するフィルタ部材を有し、前記フィルタ部材より上流側で液体の流れを生じさせることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記液体の温度を検出する温度検出手段を有し、
前記制御手段は、前記温度検出手段で検出された液体の温度に応じて前記共通液室内の液体の流れの速度を変更することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記送液手段は双方向に送液可能であり、
前記制御手段は、前記記録ヘッドから液滴を吐出させないときには、前記共通液室内の液体に、前記共通液室の下端部側から上端部側に向かう流れを生じさせる制御をする
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−103485(P2013−103485A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251123(P2011−251123)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】